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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 130
管理番号 1190839 
審判番号 無効2006-89145 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-10 
確定日 2008-12-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第1692144号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1692144号の1の登録を無効とする。 登録第1692144号の2についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1692144号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和51年7月8日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同59年6月21日に設定登録、その後、2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がなされ、平成17年4月27日に指定商品を第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換登録がされ、さらに、該商標権は、同19年2月14日に第30類「菓子及びパン但し、キシリトールを使用したチューインガム,キシリトールを使用したチョコレート,キシリトールを使用したキャンデー,キシリトールを使用したキャラメル,キシリトールを使用したドロップ,キシリトールを使用したビスケット,キシリトールを使用したクッキー,キシリトールを使用したクラッカー,キシリトールを使用したケーキ,キシリトールを使用したカステラ,キシリトールを使用したホットケーキ,キシリトールを使用したパイ,キシリトールを使用したドーナツ,キシリトールを使用したワッフル,キシリトールを使用したシュークリーム,キシリトールを使用したマシュマロ,キシリトールを使用したウエハース,キシリトールを使用したボーロ,キシリトールを使用したフルーツゼリー,キシリトールを使用したアイスクリーム,キシリトールを使用したアイスキャンデー,キシリトールを使用したシャーベット,キシリトールを使用したフローズンヨーグルト,キシリトールを使用したコーンカップ,キシリトールを使用したあめ,キシリトールを使用したかりんとう,キシリトールを使用しただんご,キシリトールを使用したもなか,キシリトールを使用したようかんを除く」を指定商品とする登録第1692144号商標の1と、第30類「キシリトールを使用したチューインガム,キシリトールを使用したチョコレート,キシリトールを使用したキャンデー,キシリトールを使用したキャラメル,キシリトールを使用したドロップ,キシリトールを使用したビスケット,キシリトールを使用したクッキー,キシリトールを使用したクラッカー,キシリトールを使用したケーキ,キシリトールを使用したカステラ,キシリトールを使用したホットケーキ,キシリトールを使用したパイ,キシリトールを使用したドーナツ,キシリトールを使用したワッフル,キシリトールを使用したシュークリーム,キシリトールを使用したマシュマロ,キシリトールを使用したウエハース,キシリトールを使用したボーロ,キシリトールを使用したフルーツゼリー,キシリトールを使用したアイスクリーム,キシリトールを使用したアイスキャンデー,キシリトールを使用したシャーベット,キシリトールを使用したフローズンヨーグルト,キシリトールを使用したコーンカップ,キシリトールを使用したあめ,キシリトールを使用したかりんとう,キシリトールを使用しただんご,キシリトールを使用したもなか,キシリトールを使用したようかん」を指定商品とする登録第1692144号商標の2に分割の登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第4条第1項第16号の規定に違反して登録された本件商標の全部を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第26号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)被請求人の所有に係る登録第4954931号商標(甲第1号証)は、審査に継続中に以下の通りの拒絶理由(甲第2号証)が示されている。
「この商標登録出願に係る商標は、『XYLITOL』の欧文字を書し、その文字の周辺を囲むように四角形を表してなるところ、その構成中『XYLITOL』の文字、『糖類の一種で甘味料として使用されている物質』である『キシリトール』を表していると認められ、近年の健康志向を受け、虫歯予防効果のある甘味料として実情もあるので、これを本願指定商品に使用しても、『キシリトールを使用した商品』程の意味合いを認識させるに留まり、単に商品の品質、原材料を表示するにすぎないものと認める。
また、その構成中『XYLITOL』の『O』の文字部分を図案化してあるが、前後の文字との関係において容易に『O』の文字を図案化したものと想起されうる程度のものと認められ、また、四角形の文字全体を囲んでいるが、その態様も特別顕著なものではなく、独立して自他商品の識別機能を果たすものとは言い難いものと認める。
そうすれば、本願商標は、構成文字、図形、また全体としても格別に自他商品の識別標識としての機能を果たすものではなく、これを指定商品に使用しても需要者は何人かの業務に係る商品であることを認識することが出来ない商標であると認めるのが相当である。
したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」
これに対し、被請求人は、意見書と手続補正書を提出し、指定商品を「キシリトールを使用した菓子及びパン」と補正している(甲第3号証及び同第4号証)。
ところで、この意見書で「本願商標は、出願人が権利者とする本件商標の欧文字部分を図案化したものである。」と主張している。
この指定商品の変更を行なった経緯と事実により、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり、本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当することを自ら認め、証明したものである。
(2)請求人は、商願2005-85895(甲第6号証)及び商願2005-76128の出願人であるが、この両出願に対して被請求人は、刊行物等提出書(甲第7号証)を提出した経緯がある。
この刊行物等提出書において、被請求人は、商標法第3条第1項第6号が適用された審決2例(甲第8号証及び同第9号証)を添付している。
そのため結果的には、請求人がフィンランドのキシリトール・ガムメーカーと共同してキシリトール・ガムの日本国内での製造・販売を開始するための新規参入への妨害、ならびに、国内メーカーからのOEM調達によるキシリトール・ガムの製造販売による新規参入への不公正な妨害をもたらしている。
(3)甲第12号証は、商願2005-85895に対する拒絶理由通知書である。
その理由は「この商標登録出願に係る商標は、登録第1692144号商標と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」とされている。
この拒絶理由に引用されている、商標法第4条第1項第16号に違反して登録された本件商標が、他に拒絶理由の存在しない、請求人若しくは第三者の商標まで拒絶されるという不条理を排除する必要がある。
(4)さらに、本件商標の無効審判が確定した場合、他に「XYLITOL」の商標が登録されない限り、多くの他のガムメーカー、例えば、グリコ、キャドバリー・ジャパン等が一斉に極めて似通ったデザイン容器に“XYLITOL”と表示することになるのでキシリトール・ガム市場の活性化と需要者に選択の幅を広げる機会を与えることは確実である。
被請求人のキシリトール・ガム市場の独占化を排除する結果をもたらす筈である。
被請求人のキシリトール・ガムの売上は従来と比較して半減以下となる筈であるが、その減少分は、他のメー力ー、グリコ、キャドバリー・ジャパン等の売上増加に繋がることになり、より健全な市場構造となることが期待される。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき無効とすべきである。

2 答弁に対する弁駁及び請求人が平成19年1月15日付けで提出した上申書の内容
平成18年10月10日に提出した「無効審判請求書」の「請求の趣旨」を以下のように変更する。
請求の趣旨の変更
(1)「商標法第4条第1項第16号」の規定に違反して登録された無効な商標である。
(2)登録と異なる商標の故意の使用により被請求人の製品の品質の誤認を生じさせており商標法第53条の規定に該当する。また「商標法第51条」に基づき登録商標の無効を求める。
(3)平成16年(2004年)6月8日の「商標登録の更新」の無効。(商標法第3条第1項第1号)「その商品又は役務の普通名称(XYLITOL)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当する他、同第2号・同第3号及び同第6号にも該当する。
よって、平成16年(2004年)6月8日の「商標登録の更新」は無効とされるべき商標である。
本件商標は、上記の各規定に違反若しくは該当して登録された商標であり、登録第1692144号商標の登録の全部を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。
本件商標は、「商標法第4条第1項第16号」の規定に違反して登録されたのみならず、被請求人は故意に登録商標と類似の商標を用いて商品の品質に誤認を生じさせていることから、「同法第51条」に基づき登録商標の取消の審判を併せてここに求める。
1)(品質の誤認)
「商標法第4条第1項第16号」および「商標法第53条の規定に該当する」本件商標は、「商標法第4条第1項第16号」の「商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標」である。
被請求人の類似商品(甘味料の一部にキシリトール含有チューインガム)(甲第13号証の右端)の商品には、“XYLITOL以外の甘味料も含有“しているにも拘わらず、商標「XYLITOL」を使用していることから、この類似商品(キシリトール風菓子)が、需要者にあたかも“100%XYLITOLを甘味料”に使用した「XYLITOLチューインガム」と思わせ、故意に品質に誤認を生じさせている。
甘味料(マルチトール及びアスパラテーム・L‐フェニルアラニン酸)に加え糖衣層に「マルチトール」を甘味料キシリトールの代替品として使用しながら“キシリトールガム”と称して本件商標「XYLITOL」の本件商品(100%キシリトールでない類似商品)についての使用は、需要者をして商品の品質の誤認を生じさせたものであって、かつ、需要者の期待を裏切るものであるから、商標法第53条の規定に該当するものといわなければならない。
被請求人は商品「XYLITOL」ガムが100%キシリトール甘味料でないことを熟知していながら、注意義務を怠ったものというほかなく、本件商標の本件商品についての使用は、需要者をして商品の品質の誤認を生じさせたものであって、かつ、需要者の期待を裏切るものであるから、商標法第53条の規定に該当するものといわなければならない。
本件商標の登録は、商標法第53条の規定により、取消すべきものに該当する。
現在、市場には甘味料の一部に“キシリトール”を使用した、いわゆる“キシリトール・チューインガム”の商品が複数出回っている。ここでは、当該商標を使用している被請求人の代表的な製品を含む任意の3種類の商品をサンプルとして、その“商標”と“品質”の関係についての検証を試みる。甲第13号証の写真の右端の商品が被請求人の商品である(甲第13号証)。
この3種類の各商品の主要原料成分の構成と容器の商標表示を比較すると大変興味のある結果が判明する。
しかし、この3種類の商品(甲第13号証)の左端の商品「マーブルキシリ」のみが、甘味料に100%キシリトールを使用しているのである。このメーカー丸川製菓は、被請求人と比較したら無名の存在のメーカーに過ぎないが、なんと無名のメーカーの商標「マーブルキシリ」が唯一の甘味料“100%キシリトール”の“XYLITOLチューインガム”なのである。
被請求人の商品には、全原材料のうち甘味料として僅か43%若しくは50%前後(乙第2号証の2)しかキシリトールが含まれておらず、需要者は被請求人の製品の商標「XYLITOL」から、被請求人の商品の“品質=100%キシリトールを使用したチューインガム”であると故意に商品の品質に誤認を生じさせている。
このことから、本件商標は「商標法第4条第1項第16号」の「商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標」である。
各製品の内容量はいずれも150g前後で大差はない。請求人が購入した価格は「マーブルキシリ」が399円、被請求人の「XYLITOL」商標を付した商品が約800円、「C1oretsXP」が599円である。
(ア)「指定商品」を「菓子及びパン」から「キシリトール使用した菓子」に変更することにより「商標法第4条第1項第16号」の規定違反が解消するとの被請求人の「審判事件答弁書」での反論は、間違っている。「キシリトールを使用した菓子」に変更しても「指定商品」の品質の誤認を生じさせていれば「商標法第4条第1項第16号」の規定の違反に該当する。
(イ)指定商品が「キシリトールを使用した菓子」で、その商標が「XYLITOL」であれば、その商標を付した被請求人の商品を当然の事ながら需要者はその製品には“100% XYLITOL”を甘味料として使用している製品であると誤認し、信じさせられてしまうと考えるのが妥当である。被請求人の商品の品質は、「XYLITOL」の名称を商標に使用していることから使用甘味料は“100%キシリトール”を使用した製品と品質の誤認を生じさせるものである。
(ウ)被請求人の指定商品を「菓子及びパン」から「キシリトールを使用した菓子」若しくは指定商品が「キシリトールを使用したチューインガム」に変更した場合の被請求人の指定商品の品質の誤認:
(1)被請求人の商品の中で最も売れているボトル容器の製品(甲第14号証)は、甘味料として“100% XYLITOLを原材料”に使用したものではなく、2-3種類の甘味料が混在しており、さらにキシリトールより遥かに原価が廉価なマルチトールにより糖衣加工を行い、真正の100%「XYLITOLチューインガム」とは程遠い紛い品であり、被請求人の商品に使用されている商標は、明らかに“品質に誤認”を生じさせている。
(2)(甲第14号証)の裏面の成分分析表・1パック(150g当り)に甘味料(キシリトール64.3g主要原料の43%に相当)と別の甘味料が含まれていることには驚かされる。しかもキシリトールより遥かに原価が廉価なマルチトールにより甘味を出すために糖衣層としてほぼ同量の50.0gが使用されている。
(3)被請求人の製品には「XYLITOL」を商標としていることから、需要者は同人の「キシリトール風チューインガム」は、主要原材料の全てが“キシリトール100%”のチューインガムである「キシリトール・ガム」だとの先入観で被請求人の製品「XYLITOL」を誤認選択している場合が多い筈である。
(4)健康食品若しくは食品に多少詳しい需要者は、キシリトールが甘味料の一種であり、う蝕性の機能を有することから虫歯予防のために“意識的に”被請求人の「XYLITOL」製品を選択している筈である。裏面の「成分表」を購入前に調べ、肝心の主要原材料の甘味料にキシリトールが何%含有の製品であるか調べる需要者は、絶対居ない筈である。この場合でも成分表の原材料成分の分量を頭の中でその割合を計算して、購入する需要者は完全に“ゼロ”である。店頭で販売する取引業者も被請求人の商品は、甘味料に100%キシリトールを使用したチューインガムと誤認を生じさせられている。
(5)商標「XYLITOL」であるのに、甘味料として“キシリトール以外の甘味料含有”との表示を故意に行っていない:さすると需要者・取引業者の購入・販売のパターンである上記(3)及び(4)のいずれの場合でも、需要者は被請求人の製品の商標「XYLITOL」から、商品の品質=100%キシリトールを使用したチューインガムと誤認して同製品を購入させられていることは明白である。先の「分析表」の数字以外には、被請求人の最も売れている“キシリトール”製品(甲第14号証)の容器パッケージには、どこにもチューインガムの甘味料の一部として“一部キシリトール含有”とはハッキリ言って意図的に“明記”若しくは“表示”すらされていないのである。このことから被請求人の商標「XYLITOL」は、故意に商品の品質に誤認を生じさせるカモフラージュのための絶大な“威力を発揮”していることは明白である。このような極めて巧妙な一種の“詐欺”紛いの表示は許されざるべきものではなく、特許庁はこのような品質の誤認を生じさせている被請求人の商標が「商標法第4条第1項第16号」の規定の違反に該当することから「無効」とする義務を有することには論を待たない。
(6)しかもその“表示”は巧妙である:「保健機能食品」として申請を行い(多額の費用を要するため中小メーカーを申請を躊躇する場合が多く、製品成分には差が無いことから申請すれば大部分のキシリトールガムは認可される基準にある。被請求人の商品のみが保健機能食品として特別の成分や機能を有しているものではない。申請したかどうかに過ぎないのである。)
■「認可表示:2種類の「甘味料」(キシリトール及びマルチトール)を使用しています。」と表示することで許可されている。
ところが、「原材料表示」には、
■甘味料(キシリトール、アスパルテーム・L‐フェニルアラニン化合物)と表示されているが、甘味料とは別に、糖衣層の「マルチトール」が「キシリトール」とほぼ同量が被請求人の商品に使用されているなど需要者には想像もつかないことには疑う余地が無い。
誰が考えても“キシリトール”のみが甘味料として使用されていると思わされることには疑いの余地が無いのである。
キシリトール以外の甘味料も同製品に併せて使用されているなどと裏面の表示を見て理解できる通常の善意の需要者も絶対に居ない筈である。
「マルチトール」は、「甘味料」としてではなく、“糖衣層”コーティング素材として使用されているにも拘わらず「キシリトール」を強調している。一般の消費者は「マルチトール」の名前すら知らないし、何のために使用しているのか商品には説明されていない。それにも拘わらず原材料の一部に過ぎない「キシリトール」を名称に使用していることこそ誤認させようとの意図が明白である。
事実、原材料表示には「マルチトール」と2種類の「甘味料」は独立して表示されている。
このように詳細に被請求人の品質表示を調べていくと、相当に意図的に“品質の誤認”を極めて巧妙に生じさていることには弁解の余地は有り得ない。
被請求人の商品には甘味料(キシリトール、アスパルテーム・L‐フェニルアラン化合物)のほか、キシリトールより遥かに原価の廉価な「マルチトール」が甘味を出すために糖衣層として使用されている意味など需要者及び取引業者・販売者には想像もつかないほど、巧妙に意図的に堂々と行っていることには驚かされる。
■本来、製品の名称に「XYLITOL」を商標に使用している以上、糖衣「マルチトール」や甘味料「アスパルテーム・L‐フエニルアラン化合物」等のキシリトール以外の甘味料など使用せずに、甘味料としては全て「キシリトール」のみを使用すべきなのである。
指定商品の拡大解釈:被請求人は、僅かな微量のキシリトールを製品の原材料の甘味料の一部として混入すれば、商標である「XYLITOL」の使用と「指定商品」を(菓子及びパン)から「キシリトールを配合した菓子」に変更することにより、需要者に誤認を生じさせても“誤認する需要者の方が悪い”と商標の本来の意味の解釈を履き違えているとしか言いようが無い。
被請求人の商標「XYLITOL」を付した商品は誰が考えても全てキシリトールのみが甘味料として使用されていると思わされることには疑いの余地が無いのである。
キシリトール以外の甘味料も同製品に併せて使用されているなどと裏面の表示を見て理解できる通常の善意の需要者は絶対に存在しない筈である。その手口は信じ難いほど、極めて巧妙で悪質であり、他に例を見ない(甲第14号証)。
したがって、本件商標は、「商標法第4条第1項第16号」に該当する「商品の品質の誤認を生じされるおそれがある商標」である。
●デザイン性に顕著な「登録商標」とは異なった、通常の英字書体に過ぎない類似商標「XYLITOL」を商標として使用しており、登録商標と同一の書体を使用しないことから、あたかも“XYLITOL”なる「語」が、被請求人の独占的な”語“の如く誤認させている。
●その「表示」の巧妙さには、余程の知識が無いと見抜けない筈である。たとえば「FDI(国際歯科連盟)賛助商品」である。FDIがいかなる団体か知る者は需要者には皆無である。“賛助商品”の実体も不明である。全体の印象では、被請求人がFDIに寄付を行ったことにより、そのような表現“(賛助商品)”を製品に表示することが見返りに認められている程度の印象である。“賛助=賛助金の寄付”の意味は、その程度の意味と理解される。
●しかし一般の需要者の印象はまったく異なる可能性がある。すなわち、商標「XYLITOL」から「“世界的な権威機関(と思い込み)FDI”が、被告の製品のみが極め優れている製品である事を認証し、その品質を保証している唯一”賛助商品“に選定若しくは推奨を行った。」との印象を抱かせる。被請求人の思惑は正にそのようであると思われる。ここでも商標「XYLITOL」が誤認を生じさせる一翼を担っているのである。
●「LOTTE +2配合」も巧みに使用されているが、その“意味”が不明である。「FN+CP」の意味とは思われる。しかしそのように理解する需要者は皆無である。むしろ何も考えない筈である。「FN+CP」の意味も不明である。しかしながら全体としては、商標「XYLITOL」と併せて見えない“効果”をもたらしていると考えられる。被請求人の「XYLITOL」にだけ配合されている“特別の成分”と思わせる筈である。
●被請求人の製品における品質表示の誤認。
被請求人の登録商標の製品の原材料の一部として2種類の甘味料(キシリトール、アスパルテーム・L‐フェニルアラン化合物)の他、糖衣マルチトールが使用されており、その一部として“XYLITOLが含まれている“とはどこにも明記されておらず、故意に指定商品若しくは類似商品にあたかも“100% XYLITOL甘味料”を使用した真正の「XYLITOLチューインガム」だと需要者に故意に品質の誤認を生じさせている。
●他の有力なメーカーである、例えば、キァドバリー・ジャパン株式会社の製品「C1oret’s XP with XYLITOL」(甲第16号証)では“XYLITOL含有(with XYLITOL)“と明記して、同製品の原材料の一部に、XYLITOLが含有されていることを製品名に明確に表記されていることからすれば、店頭で両製品に接した需要者は明らかに被請求人の類似製品を甘味料“100%XYLITOL”を使用した製品であると誤認する可能性が有り、需要者の全てに”品質の誤認“を与えていることからも被請求人の故意は明白である(甲第16号証)。
被請求人の商標が「XYLITOL」となっている事からその商標の使用は“100%XYLITOLを使用した製品“であるとの“商品の品質の誤認”を現に需要者に生じさせているのである。“商品の品質に誤認”を生じさせていることは、揺るぎの無い事実であることから、このような“登録商標”に名を借りた悪質な“指定商品とは異なる類似商品(「キシリトール風擬似チューインガム」)に“登録商標に類似する商標”を用いていることから「商標法第53条」及び「商標法第51条」に基づき、本件商標を「無効」とし取消しすることを求める。
●被請求人の製品のキシリトール含有量:
(1)まず、「乙第1号証の5」でも明らかなように同製品の場合でも全原料に対して“キシリトール”が僅かに55%ないし60%しか含有していないのである。「乙第2号証の2」に至っては「キシリトールを甘味料中50%以上配合」と大文字で大書して堂々と広告宣伝している。この発想法にはあきれる他は無い。
“キシリトールガム”はこれまでは世界中で甘味料にキシリトール100%を使用しているのが当たり前であるから、「キシリトール・チューインガム」と呼ばれてきたのである。
「キシリトールガム」にキシリトール以外の甘味料を併用した“紛い物”の“粗悪品”である“キシリトールガム”を堂々と「キシリトールガム」として製品化した世界最初の諸悪の根源である“粗悪品メーカー”の元祖こそ被請求人である。
我が国では被請求人のような“粗悪品”の“キシリトール紛いのガム”が、「キシリトール・チューインガム」の標準品として市場に溢れている現状を作り出してしまい、需要者さえもそのような“粗悪品キシリトールガム”が「キシリトール・チューインガム」と思い込まされているのである。
いまや我が国市場では容易に本物の「キシリトール・チューインガム」は入手が殆ど不可能な上に、“粗悪なキシリトール紛いガム”の特に被請求人の価格が異常に高価格のみならず、被請求人の「100%キシリトールガム」は一度買っただけ驚くほどの高価格で、二度と続けて買う気が起こらないほどである。
被請求人以外の他の無名のメーカーの中には甘味料に「100%キシリトール」を使用して、同様の容器のほぼ同容量でありながら399円なのに対し、被請求人の製品は800円で請求人は購入している事実から、被請求人が商標「XYLITOL」を“紛いキシリトールガム」製品に使用し、日本市場の本物の100%キシリトールを使用した「キシリトールガム」の正常な市場を破壊したのは、もはや犯罪である。
(2)「乙第5号証の6」に至ってはその「品質表示」において“キシリトール配合”と表記されているが、実質的には“キシリトール”は殆ど含んでいないのである。
(3)被請求人の主力製品であるボトル型の類似商品(甲第14号証)の裏面表示の「製品分析表」に明記されているように甘味材料には主要原材料全体の僅か43%のXYLITOLしか含まれているに過ぎない。しかも甘味料は2種類を混入しており、甘味料として100%キシリトールを使用した“XYLITOL”純正製品ではないにも拘わらず商標「XYLITOL」が使用されており、完全に商品の品質に誤認を生じさせているのである。
紛れも無く、本件商標は、「商標法第4条第1項第16号」の「商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標」である(甲第14号証)。
(4)通常の需要者は入手が困難であるが、同社が販売する全数量の中の極く一部(出荷数量的には0.1%程度以下であろう)には歯科医用および市販製品(甲第18号証)には、“キシリトール100%”の製品も有ることには有る。
*[(甲第17号証)の“キシリトール100%”の写真は弁駁書提出時に間に合わない場合は追って提出する。]
この「弁駁書」を用意している段階でやっとその「100%キシリトール使用」の被告の製品を入手することができたが、コンビにとか一般の店頭ではまずお目にかかることは出来ない。
その製品(甲第17号証)に赤色の背景の四角形に文字を白抜きに、極めて目立つ形で「100%キシリトール使用(甘味料として)」を強調しているのである。
同じ被請求人の製品である(甲第14号証)と(甲第17号証)を実際に比較しただけでも「100%キシリトール使用(甘味料として)」製品と被請求人の販売量のほぼ全てに近い甘味料の一部としてしかキシリトール使用していない紛い製品とは、極めて品質に大きな違いが有ることが、(甲第14号証)と(甲第17号証)を実際に噛んでの比較だけでも歴然としている。
この事実から被請求人の製品の販売数量全体の大部分は、(甲第14号証)のキシリトールが僅かしか含まれていない著しく“品質の誤認”を与える品質であり、この事実からも本件商標を無効とすべき重大な根拠を有すると考えられることから、審判請求人は「商標法第4条第1項第16号」の規定に違反及び同法第51条に基づき無効審判請求を求めるものである。
●被請求人の商標「XYLITOL」製品は、本場フィンランドのキシリトールガムが、100%キシリトールを使用した“XYLITOL”製品であるのとは、本質的に”品質”ないし“商品”が異なる別の「指定商品」ともいえる商品なのである。
「審判事件答弁書」の12頁目の(6)で被請求人は、
「さらに予備的に「登録第1692144号の商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子」については審判請求が成り立たない。」
と主張しているが、被請求人が10年間の長期にわたり売上の99.9%を占める大部分の製品が“100%キシリトール使用”の“XYLITOLチューインガム”とは異なるものであり「商標法第4条第1項第16号」の規定に違反していることから、その主張に正当性は存在せず、登録商標を無効とすべきものである。
●次に別のチューインガム・メーカーである丸川製菓株式会社の製品の甘味料に“100% キシリトール使用”の“XYLITOLチューインガム”「マーブルキシリ」(甲第15号証)を検証してみる。同社の容器の正面中央の最上部に多少控えめに「XYLITOL」と表示されている。「マーブルキシリ」が“100% キシリトール使用”の“XYLITOLチューインガム”であることから“XYLITOL”を表示していると考えられる。
被請求人の主張に従えば、この商標は被請求人の製品であるとの主張になってしまう。丸川製菓株式会社の製品「マーブルキシリ」の容器の正面中央の「XYLITOL」を見て、被請求人の製品と誤認する需要者は居ない筈である。
しかも“100%キシリトール使用”の“XYLITOLチューインガム”「マーブルキシリ」が極めて良心的な表示を行っており、被請求人とは著しい差を感ずるのは審判官も同様の筈である。
その容器の正面に「キシリトール入り」と極めて目立つように大きく赤地に黄色の文字で表記されているが、”100% キシリトール使用”とは全く強調していないのである。むしろ同製品を店頭でみて100%キシリトールを甘味料を使用している紛れも無い本物の「キシリトール・チューインガム」と理解してくれる需要者が皆無であるのが現実である。この事実(“100% キシリトール使用”の“XYLITOLチューインガム”は購入して成分表を調べて判明した。店頭では“100%キシリトール使用”の“XYLITOLチューインガム”であるかどうかは、被請求人の商品の前例からの先入観で全く分からなかったのである。これも被請求人の製品が遠因である。)
「悪貨(被請求人の製品)は良貨を駆逐する」の例えが、ここでも当て嵌まるのは、良心的な丸川製菓株式会社に対しては同情を禁じざるを得ない。(昨年出荷された新製品のため製品の完成度にはまだ時間を要する。)(甲第15号証)
本来、この「マーブルキシリ」のような表記が当然である。被請求人は、原価削減と収益優先を明らかに優先し、商標「XYLITOL」を用い“100% キシリトール使用”と思わせ、需要者・取引業者を完全に欺いていることには弁解の余地は無い。
紛れも無く、本件商標は、「商標法第4条第1項第16号」の「商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標」であり、被請求人に商標「XYLITOL」を引続き商標として認める根拠は存在せず、被請求人の商標の悪質な使用実績からも許されべきではない。
●被請求人の「答弁書」第6頁及び第7頁で「XYLITOL」が「当該製品の原料を表す名称であると認識はなく。」ならびに「被請求人の使用に係る商標として著名の域に達している」との主張は、完全に否定されるべきであり、事実、以下のように否定されている。
被請求人による(甲第18号証)平成10年「異議第90588号」(甲第23号証)の「異議申立」における「商標登録異議の申立に対する決定」(甲第24号証)で示された特許庁の判断により、
(1)「XYLITOL」は「当該製品の原料を表す名称に過ぎない
(2)「XYLITOL」は、商品の原材料表示に過ぎない。
(3)「XYLITOL」は、独立して自他商品の識別標識として機能し得ない。とされている(甲第24号証)。
2)被請求人の商標「XYLITOL」が「当該製品の原料を表す名称に過ぎない。また、商品の原材料表示に過ぎず、独立して自他商品の識別標識として機能し得ない。
として、後述のように、平成10年「異議第90588号」の「商標登録異議の申立に対する決定」で特許庁により明らかにされている。
●被請求人の主張(被請求人の「答弁書」第6頁及び第7頁で「XYLITOL」が「当該製品の原料を表す名称であると認識はなく。」ならびに「被請求人の使用に係る商標として著名の域に達している」)が、全て完全に否定されていることは、これまでに既に証明されている。例えば、
●(甲第18号証)の引用商標の登録商標に対して、被請求人は平成10年(1998年)3月20日付で「異議申立」(甲第23号証)を行っている。
引用商標
登録番号第4080820号(甲第18号証)
上記の引用商標(甲第18号証)は、「連合商標願(9)」として平成5年3月26日に出願されたものである(甲第19号証)。
この出願に対して平成7年6月6日に、
引用商標
登録第1692144号(被請求人の本件商標)
と“類似”であるとの「拒絶理由通知書」(甲第20号証)が発せられている(甲第20号証)。
その「拒絶理由通知書」に対してフィンランドのキシリトールメーカーである出願人「ザイロフィン オイ」の代理人から平成7年9月21日付の「意見書」(甲第21号証)が提出されている。
ちなみにフィンランドのキシリトールメーカーである出願人「ザイロフィン オイ」は世界全体での95%のキシリトール原料の供給メーカーである。
この「意見書」の内容は被請求人の主張を完全に否定する極めて興味のある第一級の資料並びに根拠となっている(甲第21号証)。
まず、登録第1692144号(被請求人の本件商標)とは類似しないとして、以下にその根拠を説明している。
(1)「Xylitol」は19世紀にドイツで発見された化学物質の名称。
(2)う触予防効果のある甘味料である。
(3)歯科学会で抗う触性甘味料と認定されている化学物質名であること。
(4)当時で既に100% XYLITOLを使用した虫歯予防を薬効とする医薬品ガムが発売されている。
(5)この出願商標「Xylitol」の指定商品を製造する工程で使用される甘味料を示す原材料表示と認識されるものであることから、
(6)独占権の及ばない語である。
(7)被請求人(この場合の「異議申立人」と同一)の引用商標「キシリトール」若しくは「XYLITOL」は、商品が含有する甘味料を示す原材料表示に過ぎないこと。
(8)たとえ、被請求人(この場合の「異議申立人」)の引用商標が登録商標であっても、本件のごとき指定商品に対しては、その独占権が及ばない。
(9)「キシリトール」が食品添加物として平成9年4月17日に厚生省が正式認可。「キシリトール」が普通名称として国が認知したとしている。
(10)被請求人の商標が、存在するとしても,本願商標の要部は図形商品にあり、「Xylitol」は商品の原材料表示であり比較すべき要部でないことを意味する。このことは、本願の指定商品を「キシリトールを使用した。」に限定したことによって更に明確になっている。
(11)したがって、本件商標は被請求人(「異議申立人」に同じ)の商標とは商標法第4条第1項第11号に該当せず、登録されるべきものである。
と主張している。
上記の主張は全て被請求人の本件商標に現在も当てはまる内容である。
この「意見書」の主張により平成9年8月28日付「登録査定」(甲第22号証)が出されている(甲第22号証)。
この登録商標に対して、被請求人(異議申立人)は、平成10年3月20日に「商標登録異議申立書」(甲第23号証)を提出している。
その主張は、
(1)「Xylitol」と「XYLITOL」が全体として呼称及び外観並びに観念において類似する。
(2)指定商品「キシリトールを使用した菓子及びパン」等に関する限り、商標法第4条第1項第11号に該当する。
との異議申立である(甲第23号証)。
●平成10年「異議第90588号」の「商標登録異議の申立に対する決定」(甲第24号証)
結論
登録第4080820号商標の登録を維持する。
「キシリトール(Xylitol)」とは、
(1)「白樺の木やその他の樫木のキシラン・ヘニセルロ一スを原料にして作られる糖アルコール。
(2)冷涼感のある甘味質、血糖値に影響を与えない、砂糖の70%のカロリーで同等の甘味度などの特徴の他に、非う蝕性だけでなく初期段階の虫歯を治す抗う蝕性があるという新しい食品甘味料の一つを指称する語であり、
(3)我が国においても食品甘味料として厚生省の認可を受けて一般に使用されているものである。
そうとすれば、本件商標中の「Xylitol」の文字部分は、その指定商品との関係においては
(4)商品の原材料表示と見るのが相当であり、
(5)独立して自他商品の識別標識として機能し得ないものというべきである。
してみれば、本件商標中の「Xylitol」の文字部分が独立して
(6)自他商品の識別標識として機能しえるものと認定し、これにより生ずる呼称、観念若しくは外観が引用商標(被請求人の本件商標)と類似とするという申立人(被請求人)の主張は理由がないものといわざるを得ない。
として「異議申立人」(被請求人)の「異議申立」に対する明快な回答を特許庁は示している(甲第24号証)。
このことから被請求人の「答弁書」の主張はすべて否定され、商標の登録維持の根拠は存在していないことは明白である。
上記の特許庁の判断から、「XYLITOL」の文字部分は、その指定商品(キシリトールを使用した菓子)との関係においては
(4)商品の原材料表示と見るのが相当
(5)独立して自他商品の識別標識として機能し得ない
商標中の「XYLITOL」の文字部分が独立して
(6)自他商品の識別標識として機能しえるものと認定し、これにより生ずる呼称、観念若しくは外観が引用商標(被請求人の本件商標)と類似とするという申立人(被請求人)の主張は理由がないものといわざるを得ない。
との審決からも、被請求人の「答弁書」13頁の「キシリトールを使用した菓子」についての審判請求は退かれるものであり、審判請求が成り立たないとの主張には、根拠が無いことからも「無効審判請求」が成立するものである。
●被請求人の「審判事件答弁書」4頁目「第3 被請求人の主たる主張」の(1)において、「平成16年(2004年)から「キシリトールのど飴」に商標「キシリトール」を使用していると(乙第43号証ないし同第54号証)主張している。これは虚偽の主張である。「キシリトールのど飴」に使用されている商標は、別の異なる“登録商標”(乙第57号証)である。(乙第57号証)に対しても、請求人は「異議申立」を行っているので、登録すべき要件を備えていないことから、この一時的“登録商標”も“登録取消”となる筈である。
●上記の点に関する請求人の調査では、上記の主張内容に限れば、被請求人の登録商標(登録第1692144号)は、「商標法第50条」に該当し、三年以上日本国内においてその商標を使用していないことになり、登録商標・登録第1692144号は「商標登録の取消審判」に該当している。
よほど詳細に観察しなければ分からないことであるが、上記の主張に該当する「キシリトールのど飴」は、「乙第44号証」の右欄の最上部の「のど飴ボトル<うめ>」(甲第25号証)を指しているのである。
このボトル容器には「キシリトールコート」と恰も「商標」のように紛らわしく表示されているが、商標「キシリトール」は全くボトルのどこにも表示されていないことから、登録第1692144号は商標法第50条に基づき「商標登録の取消審判」に該当することになる。
被請求人は「のど飴ボトル<うめ>」(甲第25号証)の場合も、故意に“紛らわしい表現”により堂々とデタラメな違法表示を行っているのである。
「のど飴ボトル<うめ>(甲第25号証)」には、目立つように「ビタミンC 600mmg配合」として、中身の“のど飴”に似たデザインと共に表示している。この間際らしい表示を見た限りの理解では、明らかに“一粒中に600mmgのビタミンC」が”配合“されていると言う意味である。
一粒中には「僅か15mmgしかビタミンCが配合」されていないのである。それを堂々と全体の合計した配合量を恰も“一粒中の配合”と思わせる表現を行っているのである。
このことも登録商標「XYLITOL」が本来有るべき「100%キシリトールを使用した」製品にではなく、「指定商品」とは異なる“甘味料に100%キシリトールを使用したチューインガム”と誤認を生じさせる“紛い物”の製品に使用してきたことに繋がっていると考えられる。(乙第25号証)
*[(甲第25号証)は弁駁書提出の直前に入手できたため、写真の用意が間に合わない場合がある。この場合は、(甲第25号証)を別途提出する。]
■キァドバリー・ジャパン株式会社の製品「Cloret’s XP with XYLITOL」にも“with XYLITOL”と表記されている(甲第16号証)。
この二つの例をみても「XYLITOL」が被請求人の独占すべき商標ではなく「XYLITOL」が単に甘味料の一種である原材料であるとの認識が需要者の全てにあることは否定できない。いまや「XYLITOL」は需要者の間で当該商品の主要原材料若しくは原材料の普通名詞と認識されていると考えるのが妥当な判断の筈であり、引続き被請求人の独占的“登録商標”とすることは、いまや認めるべきでない時代に至っている。
同答弁書7頁の被請求人の主張として“「菓子及びパン」に属する商品については、商品の品質を誤認させないと主張しているが、”商品の品質の誤認“とは、単に「菓子及びパン」とか「キシリトールを使用した菓子」の問題ではない。
被請求人の製品そのものが、現実に指定商品若しくは類似商品にあたかも”100%XYLITOLを原材料”に使用した「XYLITOLチューインガム」と需要者に思わせており、“商品の品質に誤認”を生じさていることからも商標法第4条第1項第16号に該当しているのである。
現実に本場フィンランドのXYLITOLチューインガム・メーカーの製品が XYLITOL 100%を使用していることと比較した場合、とても“XYLITOLチューインガム”とは言えない品質に誤認を与える“XYLITOLチューインガム風菓子”である“類似商品”に商標“XYLITOL”を使用している悪質な実体からも被請求人に今後も引続き当該商標の使用を認めるべきないことは「商標法」の根幹に関る問題である。
同製品の全ての需要者が、当該商標が付された被請求人の商品に接した場合、被請求人の当該商標の製品は故意に“100%キシリトール”を原材料とする“キシリトール・ガム”であるとの“商品の品質の誤認”を生じさせていることからも明らかであることから、本件商標を無効とすべきは「商標法」の精神に則り、社会正義の問題である。
被請求人の製品のような“XYLITOL”が殆ど含まれていないような悪質な製品に「XYLITOL」のような”商標“を認めるべきでないことは明らかである。
■先の例に挙げた丸川製菓の同種の製品にも被請求人と同様の「XYLITOL」が正面に表示されているが、登録商標「マーブルキシリ」と大きく目立つように商標を表示するとともに「キシリトール入り」とこれも“赤色を背景に黄色文字”で極めて目立つデザインとしている。
この商標「マーブルキシリ」に接した需要者「キシリトールを使用したチューインガム(菓子)」と認識ができ、明確に「キシリトール入り」のチューインガムとしており、品質に誤認を与えるような表示でないことは誰が見ても明白である。
■“100% XYLITOL”ではない”が、“キシリトール含有“のチューインガムの商品名表示:
世界中の全てのキシリトール・チューインガムで、その製品に“キシリトールを含むガム”には、「マーブルキシリ」とか「キシリマックス」とか「キシリデント」のような商標をその製品に使用している。
「マーブルキシリ」とか「キシリマックス」とか「キシリデント」のような商標であれば、需要者は“キシリ”から“100%XYLITOL”ではないが”キシリトール含有“のチューインガムなのであろうと認識でき、納得することができるのである。
世界各国の“100% XYLITOL”を使用した製品の「キシリトール・チューインガム」以外の”キシリトール非含有チューインガム“には「マーブルキシリトール」とか「キシリトールマックス」とかの商標が使用されている。
被請求人の類似商品のように「XYLITOL」の商標を付した製品は、世界中どこでも聞いたことも見たことがないことからも、被請求人が粗悪な品質の原材料である”僅か43%しか原材料にキシリトールを含有していない“被請求人の製品に「XYLITOL」を商標と使用させることは絶対に認めるべきでない。
■「商標法第51条」違反(登録とは異なる“類似商標”の使用)
被審判請求人は、登録に際して極めて独自なデザイン性のある“標準文字”とは異なった独自のデザイン性を有する商標である文字書体を「商標」として登録を行っている。
しかしながら、被請求人は、平成9年(1997年)以来、現在に至るまで故意に登録商標(独自のデザイン性を有する商標)とは明らかに異なる極く一般的な欧文字書体「XYLITOL」による類似商標(乙第1号証及びそれ以降の各乙号証)を被請求人の類似商標に「商標」として故意に使用している。
登録されている「商標」とは故意に異なったデザインの普通の英字文字書体を用いているが、この「XYLITOL」の文字は、誰が見ても需要者は、当該商標が付されている被請求人の商品をキシリトールが100%使用されている「キシリトール・チューインガム」であろうとの商品の品質の誤認を故意に生じさせている。
商標法第51条に定められている「商標権者が故意に指定商品についての登録商標に類似する商標の使用であって商品の品質の誤認を生ずるものをしたとき」に該当するものである。
したがって被請求人は、指定商品とは異なる類似商品(「キシリトール・チューインガム」若しくは「キシリトールのど飴」)に登録商標に類似する商標を用いていることからも本件商標は無効とされるべきものである。
登録商標の「XYLITOL」もしくは「キシリトール」の書体は、極めて特徴的な“ロゴ”とも言うべき商標であり、単なる活字や写植等の“印刷文字”ではない独特のものである。
被審判請求人が使用している商標は、本件商標とは著しく異なる文字商標であり、「商標法第51条」違反(類似商標の使用)に該当するものである。
■商標法第53条の規定に該当
極めて酷似した例を挙げる。
引用商標「登録番号第4343270号(登録商標:ヒアロン/HYARON)」(甲第26号証)は、平成17年(2005年)2月25日の「無効審判請求」により「登録後の本件抹消(取消審判の確定)」が成立している(甲第26号証)。
その「指定商品」は第29類「鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉末状・粒状にした加工食品。」である。本件は商標法第53条の規定に該当して「無効審判」が成立している。
その概略は、商標法第53条は「何人も、当該登録商標を取消すことについて審判を請求できる」と規定していると言及している。
「本件商標の本件商品についての使用は、需要者をして商品の品質の誤認を生じさせたものであって、かつ、需要者の期待を裏切るものであるから、商標法第53条の規定に該当するものといわなければならない。」としている。
「むすび」として「本件商標が指定商品に類似する商品「豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料とした健康食品」についての本件商標と類似商標「Hyaron」の使用は、商品の品質の誤認を生じさせるものであって、この点について、本件商標権者は、熟知していたものであり、注意義務を怠ったものというほかなく、本件商標の登録は、商標法第53条の規定により、取消すべきものとする。よって、結論のとおり審決する。
■引用商標「登録番号第4343270号(登録商標:ヒアロン/HYARON)」の審決は、多くの点で被請求人の本件商標の場合に当て嵌まる。
■「本件商標の本件商品についての使用は、需要者をして商品の品質の誤認を生じさせたものであって、かつ、需要者の期待を裏切るものであるから、商標法第53条の規定に該当するものといわなければならない。」としている。これはそのまま被請求人の本件商標の場合に当て嵌まる。
■「本件商標が指定商品に類似する商品『豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料とした健康食品』についての本件商標と類似商標『Hyaron』の使用は、商品の品質の誤認を生じさせるものであって。」は、(本件商標と類似商標「Hyaron」の使用。登録商標は、大文字表記:HYARONである)。被請求人が商標として使用している通常の英字書体「XYLITOL」は、本件商標と類似商標に該当する。登録商標の被請求人が実際に使用している商標とは著しく異なる「XYLITOL」は、独自のデザインとなっている。
■引用商標の「本件商標と類似商標『Hyaron』の使用は、商品の品質の誤認を生じさせるものであって、この点について、本件商標権者は、熟知していたものであり、注意義務を怠ったものというほかなく、本件商標の登録は、商標法第53条の規定により、取消すべきものとする。」についても、被請求人は商品「XYLITOL」ガムが100%キシリトール甘味料でないことを熟知していながら、注意義務を怠ったものというほかなく、本件商標の本件商品についての使用は、需要者をして商品の品質の誤認を生じさせたものであって、かつ、需要者の期待を裏切るものであるから、商標法第53条の規定に該当するものといわなければならない。本件商標の登録は、商標法第53条の規定により、取消すべきものに該当する。
ここでは「豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料」の部分は「キシリトールでない甘味料(マルチトール及びアスパラテーム・L‐フェニルアラニン酸)を甘味料キシリトールの代替品として使用しながら“キシリトールガム”と称して本件商標「XYLITOL」の本件商品(100%キシリトールでない類似商品)についての使用は、需要者をして商品の品質の誤認を生じさせたものであって、かつ、需要者の期待を裏切るものであるから、商標第53条の規定に該当するものといわなければならない。」
このことから、本件商標を「登録後の本件抹消(取消審判の確定)」とすべき商標である。
■平成16年(2004年)6月8日の“商標権の更新登録”の無効
1)「商標法第3条第1項第1号」の規定に違反
本件商標は「商標法第4条第1項第16号」の規定に違反しているのみならず、「商標法第3条第1項第1号」にも該当している。
本件商標は、平成16年(2004年)6月8日に“商標権の更新登録を行っている。この更新に対しては「商標法第3条第1項第1号」にも該当しており、無効とすべき商標に該当する。
すなわち「XYLITOL」若しくは「キシリトール」は「商標法第3条第1項第1号」に定める
「商標法第3条第1項第1号」の規定に違反
「その商品又は役務の普通名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」
に該当することから、元々、商標登録の要件を満たしていない出願商標であることから「商標登録の更新」を無効とすべき商標である。
2)「商標法第3条第1項第6号」に該当
さらに本件商標は、「商標法第3条第1項第6号」に該当するものであり、単に商標が「XYLITOL」の文字による商標から成っており、そのロゴとしての顕著性も全く存在せず、極く一般的な“文字”であり、重要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であることから「商標登録の更新」を無効とすべき商標に該当する。
3)「第1項第1号及び同第6号」に該当
「商標法第3条」は、同法第3条2項で「第3号から第5号」に該当する商標について以外は、商標登録を受けることが出来ないと定めており、当該登録商標は同法第3条の第1項第1号及び同第6号に該当している。
例外を定めた「同第3号ないし第5号」に該当するものではなく「商標法第3条第1項第1号及び同第6号」に該当することにより無効とされるべき商標に該当することから、「商標登録の更新」を無効とすべき商標に該当する。
本件商標は甘味料の一種であるキシリトールを表す「普通名称」に過ぎず、またチューインガムに普通に用いらていることから、最近の最高裁での判決の例を参考にするまでもなく“正露丸”と同様の普通名称に相当する商標に過ぎないことからも登録を無効とすべきものである。
よって、本審判請求者は、
(1)「商標法第4条第1項第16号」の規定に違反して登録された無効な商標である。
(2)登録と異なる商標の故意の使用により被請求人の製品の品質の誤認を生じさせており商標法第53条の規定に該当。「商標法第51条」に基づき登録商標の無効を求める。
(3)平成16年(2004年)6月8日の「商標登録の更新」の無効。
(商標法第3条第1項第1号)「その商品又は役務の普通名称(XYLITOL)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当する他、同第2号・同第3号及び同第6号にも該当。
よって、平成16年(2004年)6月8日の「商標登録の更新」は無効とされるべき商標である。
被請求人の本件商標は、上記の各規定に違反若しくは該当して登録された商標であり、登録第1692144号商標の登録の全部を取り消す。
審判費用は被請求人の負担とする。
との審決を求めるものである。

3 請求人が平成19年1月31日付けで提出した上申書の内容
平成19年1月15日に提出した審判の番号 無効2006-89145の「弁駁書」の「添付書類又は添付物件」のうち後日提出するとしていた(甲第18号証)及び(甲第25号証)をここに提出する。
被請求人は「審判事件答弁書」で「乙第1号証の1」から「乙第54号証」をもって被請求の商標「XYLITOL」を使用している商品の証拠を提出している。
しかしながら、その大部分は被請求人の商品が、2つの例外(乙第3号証の3)を除いて、「XYLITOL」を商標に使用していながら全て「商品の品質に誤認を生じさせる」商品であることを証明している証拠を自ら提出したものである。
●(甲第18号証の1)キシリトール100ガムボトル<ピュアミント>
■写真上段の(左写真)が「キシリトール100ガムボトル」同(右写真)が通常のボトル製品
■「甲第18号証の1」の上段左写真は、「乙第3号証の3」の被請求人の商品のうち”甘味料“としては”キシリトール100%使用“を使用している僅か2種類の「キシリトール100ガムボトル」である。
■写真下段はその拡大写真であるが、わざわざ製品に目立つように「キシリトール100%使用(甘味料として)と表示しているのが分かる。このことからも、被請求人のその他の全ての製品が「品質の誤認を生じさせる製品」であることを証明している。
「XYLITOL」を商標としている商品が“チューインガム”の場合は、当然のことながら全て”甘味料“としては”キシリトール100%使用“されている筈であるが、被請求人の数百種類の製品には僅か2種類しか100%キシリトールを使用した商品(菓子及びパン)しか存在していない。
このことから被請求人が故意に商標「XYLITOL」の使用をすることにより“商品の品質に誤認を生じさせる”ことを十分認識しながら、意図的に行っていることが分かる。
被請求人の製品の殆ど全て(甲第18号証の1を除く)に(甘味料の一部に“キシリトール”が含まれてるだけで商標「XYLITOL」を使用して“キシリトール・チューインガム”と故意に需要者をして、被請求人の商品が恰も“本物の”キシリトール・チューインガム“だと意図的に需要者をして誤認を生じさていることからも被請求人の「商標法第4条1項第16号」の規定に違反した無効な商標であることには被請求人には弁解の余地は無い。
しかも全国を販売地域としていながら「甲第18号証の1」の”キシリトール100%使用“製品は、実際には入手が不可能と思われるほど店頭では見ることはまず無いのである。やっと入手したその内の1種類が(甲第18号証の1)の写真である。
●(甲第18号証の2):本場フィンランドの”キシリトール・チューインガム“商標の例。
(甲第18号証の2)は、フィンランドのメーカーのキシリトール・チューインガムの例(商標XyliMax)であるが、「100%XYLITOLCHEWINGGUM」と表示されている。
「商標XyliMax」だけでは明確ではないので、“キシリトール100%を使用しているチューインガム“と明記している。
通常は、このように“キシリトール100%“のガムが、“キシリトール・チューインガム“なのである。
ところが被請求人の製品は逆に全ての製品がキシリトール以外の“甘味料”も使用している「品質の誤認を生じさせている製品」であり、商標に相応しくない“贋物”なのである。
●(甲第25号証)被請求人の製品「のど飴ボトル<うめ>」
被請求人が商標を使用していると主張する「のど飴」についてもその商標の使用の実体が相応しいものかどうかについても調査を試みた。
(乙第44号証の2)に「のど飴」が掲載されており、その商品を実際に購入のうえ商標「XYLITOL」がどように表示され、その「甘味料」の成分の構成の調査を試みた。
■「のど飴ボトル<うめ>」に配合されている甘味料の種類:
その結果、判明したことは、この製品の「甘味料」は、「キシリトール及びアセスルファムKの他、スクラロース」の3種類も使用されている。
しかも肝心の“キシリトール”は極めて僅か量が表面に塗られているに過ぎない。すなわち“甘味料”としては「のど飴」全体の中に全く含まれていないのである。このことはボトルの蓋に図解入りで説明されている。(甲第25号証)の最上段の写真。
■「のど飴」の表面のみにコーティングされており、本体のハニーレモンキャンディーには全くキシリトールが甘味料としては使われていないのである。
確かにボトル正面には“キシリトールでコーティングしたのど飴です。”と説明されている。そのためか「キシリトールコート」と恰も商標若しくは商品名のように目立つ表示がされている。
被請求人が商標「XYLITOL」を使用しているとしたこの商品「のど飴」については、商標「XYLITOL」は、寧ろ“商標の不使用”に該当している。
被請求人が実際にその商標「XYLITOL」を使用しているとの主張には「のど飴」は該当していない。
■原材料配合表示の誤認:
被請求人の「のど飴」には別の問題点も存在している。他社の製品名「かむかむヨーグルト」には「1粒にカルシウム30mmg配合」とボトル正面に正しく表示されているが、このような表示が普通である。ところが被請求人の「のど飴」はボトル正面にかなり目立つように、これも意図的に“ビタミンC600mmg配合”と表示されている。明らかにこの表示は需要者に誤認を与えている。
どう考えても“1粒”に“ビタミンC600mmg配合”が含まれている意味のなにものでもない。これは40粒全体での含有量なのである。このように被請求人の製品の全てに意図的に“需要者に著しい品質の誤認を生じさている”のである。
●(乙第44号証の3)にも「キシリトールのど飴(スティック)<グレープフルーツ>が挙げられている。
●(甲第25号証)の写真の最下段が「キシリトールのど飴(スティック)<グレープフルーツ>」である。
この製品に接した需要者は正面に2段に表示されている「キシリトールのど飴」に接した場合、おそらく“甘味料全体にキシリトールを使用した”「のど飴」と誤認して被請求人の製品「キシリトールのど飴」を購入してしまう筈である。
■複数の甘味料が配合された甘味料の種類:
「キシリトールのど飴」のパッケージ裏の原材料名の表示には、甘味料(キシリトール、アセスルファムK、スクラロース)の3種類が、やはり使用されていることが表示されているのである。
今回は「写真」が用意できなかったので提出は行わないが、他社の「キシリトールのど飴」は、甘味料に“キシリトール100%”のみを使用しているのである。
■被請求人の故意による品質の誤認:
被請求人は、商標「キシリトール」を使用している例として挙げているが、誰が見てもここで表示されている“キシリトール”を被請求人の登録商標と認識することは有り得ない。明らかに「のど飴」に使用されている甘味料の種類の表示と考える筈である。
しかも“100%キシリトールのど飴と思い込まされる筈である。やはりここでも被請求人は故意に“需要者に品質の誤認を生じさせている”ことからも被請求人の「商標法第4条第1項第16号」の規定に違反した無効とされるべき商標であることには被請求人には弁解の余地は無い。
■異なる類似商標を使用した製品:
被請求人の主張では商標「XYLITOL」若しくは商標「キシリトール」の使用例として挙げられている筈のこの製品をさらに観察するとパッケージの左横にLOTTEの下に何のことか良く分からない四角に囲まれた「XYLITOL」が観察できる。これは誰が見ても絶対に“商標”には見えないことは明らかである。
ところがこれは、被請求人が(乙第58号証)として引用している登録商標・登録番号4954931号(商願2004-083051)なのである。この登録商標についても請求人が平成18年8月24日に別途「異議申立」(審判番号2006-90406)を行っている商標である。
登録商標(登録番号4954931号)の使用実体は不明であったが、被請求人の“商標”の使用実体から浮かび上がってきたことは、
(1)商標「XYLITOL」は「2種類の甘味料(キシリトール及びアスパラテーム・L‐フェニルアラニン化合物)“を甘味料の主原材料とするチューインガムに使用することにより、「キシリトール・チューインガム」と詐称している。
商標が「XYLITOL」であれば当然“100%XYLITOL”“甘味料(キシリトール)のみを使用すべきである。
被請求人は商標「XYLITOL」を使用していながら、故意に“需要者に誤認を生じさせている”ことからも被請求人の商標は「商標法第4条1項第16号」の規定に違反した無効な商標である。
(2)本件商標と異なる登録商標(登録番号4954931号)を「のど飴」に使用している。「のど飴」にも“3種類の甘味料(キシリトール、アセスルファムK、スクラロース)”を甘味料の原材料として使用されている。
他社の「キシリトールのど飴」は、甘味料に“キシリトール100%”のみを使用しているのである。しかも価格は99円である。
●平成18年1月15日提出の「審判事件弁駁書」の6頁目で言及した、被請求人の売り上げの大部分を占めるボトル製品に「保健機能食品」が表示され、「認可表示:2種類の「甘味料」(キシリトール及びマルチトール)を使用しています。」と認可表示のところに表記されている。この表現もおかしな表示である。
■マルチトールは、“甘味料”ではない。
「認可表示:2種類の「甘味料」(キシリトール及びマルチトール)を使用しています。」には、需要者に甘味料の品質に誤認を与える大変な問題が含まれている。
“マルチトール”は糖衣に使用されるが、マルチトールは原材料表示の“甘味料”ではない。
マルチトールを“甘味料”と表示するのは不適切であり、明らかに故意に“需要者に製品の品質に誤認を生じさせている”。
国内で販売されている“キシリトール”チューインガムでマルチトールを“甘味料”と表示している製品は一つも存在しない。
■キシリトール以外の複数の甘味料を配合:
商標に「XYLITOL」を使用している被請求人の製品には“甘味料”に2種類の甘味料(キシリトール及びアスパラテーム・L‐フェニルアラニン化合物)が使用されている。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、(1)本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。または(2)本件商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第62号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 被請求人の主たる主張
(1)被請求人は、平成9年(1997年)以来、「XYLITOL」の欧文字または/および「キシリトール」の片仮名の商標を付した複数のタイプのチューインガム(以下「XYLITOLガム」という。)およびタブレット(錠菓、以下「キシリトールタブレット」という。)を製造、販売し現在に至っている(乙第1号証ないし同第42号証(枝番号を含む。)参照)。
また、平成16年(2004年)からは同じく「キシリトール」の片仮名の商標を付したのど飴(以下「キシリトールのど飴」という。)を製造、販売し現在に至っているものである(乙第43号証ないし同第54号証(枝番号を含む。)参照)。
(ア)特に、XYLITOLガムについては、その売上が、販売開始1年目にして約150億円を超え、その後は年を追うごとに増額し、ここ数年は年間約400億円もの巨額に達している。
これは、XYLITOLガムの高品質と、年間十数億円をかけて行っている積極的かつ大々的な宣伝広告活動とにより、消費者の潜在的需要を喚起していることによるものと認められる。
被請求人の製造、販売に係る上記XYLITOLガムは、いずれのタイプのものも、その包装の正面中央部等の最も目立つところに「XYLITOL」の欧文字を大きく顕著に表示し、その右肩部分には登録商標であることを表す「マルアール」の記号を表示し、また、宣伝広告においても同様の表示を採用している。
(イ)また、キシリトールのど飴については、その売上が平成16年度10億円、平成17年度23億円、平成18年度(4月から10月)10億円に、宣伝費が平成16年度2.7億円、平成17年度3.3億円、平成18年度(4月から10月)1.8億円である。
(2)上記のとおりの莫大な費用をかけて行っている被請求人の大々的な宣伝広告活動(乙第1号証ないし同第54号証(枝番号を含む。)参照)と積極的な販売活動によって、需要者においては、被請求人の製造、販売に係る商品すなわちチューインガム、タブレット(錠菓)およびのど飴に使用している「XYLITOL」または/および「キシリトール」の文字を、当該商品の原材料を表す名称であると認識することがなく、また他社の同種商品を表す名称と混淆するということもなく、単に、被請求人会社の業務に係る商品(菓子、パン)の商標であるとの認識を持つに至っていると認められる。
換言すると、被請求人は、その宣伝広告活動と販売実績により、商品XYLITOLガム、キシリトールタブレットおよびキシリトールのど飴を通じて、「XYLITOL」または/および「キシリトール」の商標に、既に被請求人会社としての絶対的な信用いわゆるGOOD WILLを確立しているものであり、したがって、需要者においては、被請求人会社の使用する「XYLITOL」または/および「キシリトール」の文字または語を、単純に被請求人会社の業務に係る商品を表示する商標であると認識するのを自然とする状況にあり、これら「XYLITOL」または/および「キシリトール」は、被請求人の使用に係る商標として著名の域に達しているものである。
その故に、被請求人の業務に係る「菓子及びパン」に属する商品について、「XYLITOL」または/および「キシリトール」の文字、語に接した場合、需要者は、これらの文字、語をもって当該商品に含まれる原材料の普通名称と認識するとか、当該商品について品質を混同するというようなことはなく、却って、これら「XYLITOL」または/および「キシリトール」を使用した当該商品を、同業他社の同種商品と明確に区別する標識と看取、認識する現況にあるということができる。
因みに、上記「XYLITOL」、「キシリトール」の語は「菓子及びパン」を指す普通名称でないことは自明である。
(3)以上から明らかなとおり、本件商標は「キシリトールを使用した商品」以外の指定商品に使用した場合に、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある旨の主張とは明らかに相違し、本件商標は、上述したような多大な実績によるGOOD WILLの確立により、「菓子及びパン」に属する商品については、商品の品質という範疇を超え、需要者をして被請求人会社の業務に係る商標であると強く直感させる域に達しており、したがって、需要者に商品の品質の誤認を生じさせるようなおそれはなく、本件商標は、商標法第4条第1項第16号の規定には該当しないと認められる。
(ア)この点に関し、請求人らは、被請求人が商願2004-83051号商標の指定商品を「キシリトールを使用した菓子及びパン」と補正していることを理由に、本件商標を「キシリトールを使用した菓子及びパン」以外の商品に使用するとき商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるのを、被請求人において自認したものである旨の主張をする。
しかし、商願2004-83051号商標は、本件商標とは事例を異にするばかりでなく、もともと、被請求人は、商願2004-83051号商標の指定商品として「キシリトールを使用した菓子及びパン」で十分と考えただけのことにすぎず、請求人の上記主張は杞憂というほかない。
(イ)次に、請求人らは、本件商標が商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたとし、その本件商標を、請求人らの商願2005-85895(甲第6号証)に商標法第4条第1項第11号を適用する引用商標とするのは不条理であり、それを排除する必要性がある旨の主張をする。
しかし、第1に、本件商標が商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたとすることは、請求人らの独自の誤った見解というほかなく、第2に、商標法第4条第1項第11号は、その規定内容からすると、格別適用除外規定がない限り、先願かつ先登録の商標と抵触する出願商標に対しては、例外なく、すなわち、たとえ商標法第3条第1項各号に揚げられている不登録事由を構成要素として内包している場合であっても例外なく適用されなければならないものであり、第3に、もともと、請求人らの主張する上記不条理や排除の必要性なるものは法定の商標登録無効原因に該当しない。
(ウ)さらに、請求人らは、請求人らの商標登録出願に係る商願2005-85895に対する刊行物等提出書の提出は、「業務妨害」「新規参入への不公正な妨害」である旨の主張をするとともに、本件商標の無効審判が確定した場合、より健全な市場構造となることが期待される旨の主張をしているが、これら両主張内容が、その真偽の如何にかかわらず、商標登録の無効理由をなさないことは、商標法の定めを一見すれば誰にも容易に分かることであって、請求人らの主張は、無効審判請求に名を借り身勝手をいうものにすぎず、本件審判においては検討にも値しないことに属する。
因みに、刊行物等提出書による情報提供は、商標法施行規則第19条の規定により特許庁長官に対し何人も行うことができるいわば国民の権利であるから、その刊行物等提出書による情報提供の行為が、業務妨害等に該当するとして、当該商標登録出願人から非難される筋合いは全くない。
(4)小括
以上要するに、請求人らの主張する無効理由の何れにも合理的根拠がないと認められる。

2 被請求人の予備的主張
(1)被請求人は、予備的に、本件商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。
(2)請求人は、本件商標がキシリトールを使用した商品以外の「菓子及びパン」に使用された場合、品質に誤認を与えるおそれがあるとし、本件商標は商標法第4条第1項第16号の規定に違反すると主張している。
そこで、被請求人は、無用の論争を避けるとともに、本件商標が「キシリトールを使用しない菓子及びパン」を含むことを理由に、「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」を含む指定商品の全部である「菓子及びパン」について品質誤認のおそれがあるとし、本件商標の登録が無効であるとする認定判断がなされるのを回避するために、「キシリトールを使用しない菓子及びキシリトールを使用しないパン」については登録無効の認定判断を甘受する意思があることを明らかにし、本件商標を使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれがないことが明白であり、かつ、そのことを請求人においても認めていることが明らかな指定商品である「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」については、本件審判請求が成り立たないとする審決を求めるものである。
(3)この「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」が、本件商標の指定商品「菓子及びパン」の中に包含されている商品であることは、疑問の余地がないと認められる。
乙第55号証ないし同第62号証によれば、上記「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」のように、当該商品に含まれる原材料名により指定商品を特定表記する取扱いが普通に行われていること、また、当該商品に含まれる原材料名により特定表記される指定商品が、その上位概念ないしは包括概念により表記されている指定商品に包含されていることを前提とする取扱いも普通に行われていることが明らかであり、したがって、上記「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」が、本件商標の指定商品「菓子及びパン」の中に包含されている商品として問題なく取り扱われて然るべきと考える。
(4)請求人が、その適用を主張する商標法第4条第1項第16号は、一般に、商標の構成要素とその使用商品等との不実関係、すなわち、商標が表す概念と使用商品等とが符合しないために、需要者が誤った商品を購入しまたは役務の提供を受けるなどの錯誤を防止し、需要者の保護を図った公益保護規定と位置付けられている。
しかるところ、本件商標の構成要素と上記「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」との間には、不実関係は存在しないことが明白であり、しかも、被請求人による活発な宣伝広告活動と販売実績により需要者においては、「XYLITOL」または/および「キシリトール」を単純に被請求人会社の業務に係る当該商品を表示する商標であると認識する状況にあり、これら「XYLITOL」または/および「キシリトール」は被請求人の使用に係る商標として著名になっていることを勘案すると、被請求人による本件商標の「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」への使用は、商標法第4条第1項第16号の上記公益保護の趣旨に沿いこそし、何ら公益に反するものではないと認められる。
(5)上記によれば、本件商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする。審判費用は請求人の負担とする。との審決の請求が認められるべきことは明らかであると確信する。
(6)なお、被請求人は、さらに予備的に、本件商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする旨の審決を求める。
(ア)上記のとおり、請求人は、本件商標がキシリトールを使用した商品以外の「菓子及びパン」に使用された場合、品質に誤認を与えるおそれがあるとし、本件商標は商標法第4条第1項第16号の規定に違反すると主張しているものであるが、被請求人は、上記と同様に無用の論争を避けるとともに、本件商標が指定商品の全部である「菓子及びパン」について本件商標の登録が無効であるとの認定判断がなされるのを回避するために、「キシリトールを使用しない菓子及びパン」について、さらには「キシリトールを使用したパン」についても登録無効の認定判断を甘受する意思があることを明らかにし、本件商標を使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれがないことが明白であり、かつ、そのことを請求人においても認めていることが明らかと認められる指定商品「キシリトールを使用した菓子」について、本件審判請求が成り立たないとする審決を求めるものである。
(イ)被請求人会社は、従前からXYLITOLガム、キシリトールタブレットおよびキシリトールのど飴等を製造、販売し現在に至っているものであるが、これらの商品が本件商標の指定商品「菓子及びパン」の中に包含されている商品であることは疑問の余地がない。
(ウ)また、本件商標の構成要素と上記「キシリトールを使用した菓子」との間には、不実関係は存在しないことが明白であるから、上記で述べたところと同様にして、被請求人による本件商標の「キシリトールを使用した菓子」への使用は、商標法第4条第1項第16号の公益保護の趣旨に沿いこそし、何ら公益に反するものではないと認められる。
(エ)上記によれば、少なくとも本件商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする。旨の審決の請求が認められるべきことは明らかであると考える。

3 被請求人が平成19年2月19日付けで提出した上申書の内容
(1)被請求人は、平成18年12月5日提出の審判事件答弁書で、
(ア)「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」(イ)「登録第1692144号商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする。審判費用は請求人の負担とする。」、または、
(ウ)「登録第1692144号商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする。審判費用は請求人の負担とする。」旨の審決を求めた。
(2)一方、本件登録第1692144号商標権は、平成19年2月14日付けで、商標登録第1692144号の1と同第1692144号の2に分割登録され、それぞれの指定商品は、次のとおりとなった。
(ア)商標登録第1692144号の1
指定商品及び商品の区分第30類
「菓子及びパン但し、キシリトールを使用したチューインガム,キシリトールを使用したチョコレート,キシリトールを使用したキャンデー,キシリトールを使用したキャラメル,キシリトールを使用したドロップ,キシリトールを使用したビスケット,キシリトールを使用したクッキー,キシリトールを使用したクラッカー,キシリトールを使用したケーキ,キシリトールを使用したカステラ,キシリトールを使用したホットケーキ,キシリトールを使用したパイ,キシリトールを使用したドーナツ,キシリトールを使用したワッフル,キシリトールを使用したシュークリーム,キシリトールを使用したマシュマロ,キシリトールを使用したウエハース,キシリトールを使用したボーロ,キシリトールを使用したフルーツゼリー,キシリトールを使用したアイスクリーム,キシリトールを使用したアイスキャンデー,キシリトールを使用したシャーベット,キシリトールを使用したフローズンヨーグルト,キシリトールを使用したコーンカップ,キシリトールを使用したあめ,キシリトールを使用したかりんとう,キシリトールを使用しただんご,キシリトールを使用したもなか,キシリトールを使用したようかんを除く」
(イ)商標登録第1692144号の2
指定商品及び商品の区分第30類
「キシリトールを使用したチューインガム,キシリトールを使用したチョコレート,キシリトールを使用したキャンデー,キシリトールを使用したキャラメル,キシリトールを使用したドロップ,キシリトールを使用したビスケット,キシリトールを使用したクッキー,キシリトールを使用したクラッカー,キシリトールを使用したケーキ,キシリトールを使用したカステラ,キシリトールを使用したホットケーキ,キシリトールを使用したパイ,キシリトールを使用したドーナツ,キシリトールを使用したワッフル,キシリトールを使用したシュークリーム,キシリトールを使用したマシュマロ,キシリトールを使用したウエハース,キシリトールを使用したボーロ,キシリトールを使用したフルーツゼリー,キシリトールを使用したアイスクリーム,キシリトールを使用したアイスキャンデー,キシリトールを使用したシャーベット,キシリトールを使用したフローズンヨーグルト,キシリトールを使用したコーンカップ,キシリトールを使用したあめ,キシリトールを使用したかりんとう,キシリトールを使用しただんご,キシリトールを使用したもなか,キシリトールを使用したようかん」
(3)ついては、上記(1)(ア)、(イ)または(ウ)に加え、これらと選択的に、「商標登録第1692144号の2についての審判請求は成り立たない。商標登録第1692144号の1ついての登録を無効とする。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を賜りたい。
その理由については、平成18年12月5日提出の審判事件答弁書「第4被請求人の予備的主張」を、その趣旨が適合する範囲で援用する。

第4 本件商標に対する無効理由通知
1 登録第1692144号の1に係る商標は、次の理由により、商標法第46条第1項第5号に規定する「商標登録がされた後において、同法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっている商標」と認める。

2 請求人の提出に係る証拠及び職権による調査によれば、以下の事実が認められる。
甲第2号証及び同第7号証によれば、「XYLITOL」の文字は、「糖類の一種で甘味料として使用されている物質」であることが認められる。
甲第13号証ないし同第16号証及び同第18号証(枝番号を含む。)によれば、「キシリトール入り」の文字及び「XYLITOL」の文字が、商品「チューインガム」に使用されていることが認められる。
甲第14号証によれば、商品「チューインガム」の成分分析表において、1パック(150g)当たり「キシリトール」が64.3g含有されていることが認められる。
甲第25号証によれば、「キシリトールでコーティングしたのど飴です。」の文字、「キシリトールコート」の文字及び「キシリトールコーティング」の文字が、商品「のど飴」に使用されていることが認められる。
また、株式会社集英社が平成10年(1998年)1月1日に発行した「情報・知識imidas1998」の564頁の「キシリトール〔xylitol〕」の項には、「天然素材の甘味料。…低吸収性の甘味料として糖尿病など医薬用に限定されていたが、1997年4月17日から食品への使用が許可された。…まず、チューインガムに使用され、さらに、低吸収による肥満防止などから、各種の菓子類に利用されている。」と記載されている。
丸善株式会社が平成10年(1998年)3月25日に発行した「丸善食品総合辞典」の270頁の「キシリトール〔xylitol〕」の項には、「甘味度はショ糖と同程度で、口中では清涼感がある。インスリンを必要とせず代謝され、血糖値を上昇させないため、糖尿病患者の甘味料として有用。」と記載されている。
自由国民社が平成11年(1999年)1月1日に発行した「現代用語の基礎知識1999」の1242頁の「キシリトール入りガム」の項には、「1997年ヒット商品。砂糖に近い甘味を持ちながら、カロリーは砂糖の約75%。虫歯の予防効果も高いというキシリトール入りガムが大ヒット。」と記載されている。
株式会社三省堂が平成14年(2002年)1月1日に発行した「コンサイスカタカナ語辞典 第2版」の251頁の「キシリトール〔xylitol〕」の項には、「天然に存在する五炭糖アルコールで、砂糖に代わる甘味料として用いられる。虫歯予防やダイエットに効果があるといわれる。」と記載されている。
株式会社三省堂が平成17年(2005年)1月10日に発行した「新明解国語辞典 第六版」の337頁の「キシリトール」の項には、「〔xylitolの文字読み〕糖類を還元して得られるアルコールの一種。砂糖の代用になり、虫歯の予防に役立つ。」と記載されている。

3 以上の事実によれば、本件商標は、商標登録された後において、その指定商品中「キシリトールを使用しない商品」に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標に該当するものとなっているといわなければならない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

4 本件商標を分割した登録第1692144号の1に係る商標は、その指定商品中からキシリトールを使用した商品が除かれていることから、商標登録がされた後において、商標法第4条第1項第16号に該当するものとなっている商標ということができる。
したがって、登録第1692144号の1に係る商標の登録は、同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第5号の規定により無効とすべきものである。

第5 無効理由通知に対する請求人の意見書の要旨
1 平成19年7月18日に被請求人に対して「無効理由通知書」が本件審判長名義で発せられていることが、請求人が指摘するまでその「無効理由通知書」(副本)が請求人に対して通知されなかったは、審判側の重大な過誤である。
2 請求人が「無効審判請求」を行ったのは平成18年10月10日であり、平成19年2月14日に分割登録される以前である。
商標登録第1692144号の1及び商標登録第1692144号の2は、平成18年10月10日時点にはいずれも存在していない。
「無効審判請求」は(商標登録第1692144号)に対してであり、平成19年2月14日に分割登録された商標登録第1692144号の1及び商標登録第1692144号の2号に対する「無効審判請求」ではない。
「無効審判請求」の対象となっている(商標登録第1692144号)の「指定商品」 は、商標登録第1692144号の1及び商標登録第1692144号の2号の各「指定商品」の全てを包括していることから、(商標登録第1692144号)の「指定商品」は“商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標”も包括していることになる。
したがって、(商標登録第1692144号)についても商標登録第1692144号の1に係る商標の登録と同様に同じ「無効理由」により同法第4条第1項第16号が適用され、同法第46条第1項第5号の規定により無効とされるべきものである。

第6 無効理由通知に対する被請求人の答弁
被請求人は、無効理由通知に対して何等答弁していない。

第7 当審の判断
1 請求人は、請求の趣旨において「商標法第4条第1項第16号の規定に違反して登録された本件商標の全部を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」旨の審決を求め、請求の理由において「本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当し、取り消されるべき商標である。」旨、主張しているが、審判請求書の審判事件の表示が、「商標登録第1692144号の無効審判事件」となっていること及び請求の理由において、「本件商標は、商標法第46条の『商標登録の無効審判』請求に基づき」となっていることから、「取り消す」の部分は、「無効とする」との審決を求めたものと判断する。

2 株式会社集英社が発行した「情報・知識imidas1998」並びに「明治製菓、キシリトール使用ガムなど5月下旬発売へ」と題する1997年4月30日に発行された日本食糧新聞及び「ロッテ、デンタルケア配合『キシリトールガム』など6月上旬発売」と題する1997年5月16日に発行された日本食糧新聞の新聞記事情報によれば、当時の厚生省が、本件商標の登録後の1997(平成9年)4月17日に天然甘味料キシリトールの食品への添加を認可したものと認められる。
甲第24号証は、図形中に白抜きされた「Xylitol」の文字を含み、「キシリトールを使用した菓子及びパン」等を指定商品とする登録第4080820号に対する平成10年8月18日付けの異議決定であるところ、この異議決定は、「キシリトール(Xylitol)とは、新しい食品甘味料の一つを指称する語であり、我が国においても食品甘味料として厚生省の認可を受けて一般に使用されている。そうとすれば、『Xylitol』の文字部分は、その指定商品との関係においては商品の原材料表示とみるのが相当である。」旨認定している。
乙第8号証は、平成15年6月2日付けの朝日新聞夕刊に被請求人ロッテが掲載した新聞広告であるところ、「厚生労働省認可保健機能食品(特定保健用食品)」の表示とともに、「ロッテ キシリトールガム+2は、むし歯の原因となる酸を作らない天然素材甘味料キシリトールを使用しています。」と記載されている。
乙第9号証は、平成15年10月16日付けの毎日新聞に被請求人ロッテが掲載した新聞広告であるところ、「厚生労働省認可保健機能食品(特定保健用食品)」の表示とともに、「ロッテ キシリトールガム+2は、むし歯の原因となる酸を作らない天然素材甘味料キシリトールにフノランとリン酸カルシウムを配合。」と記載されている。
乙第10号証は、平成16年4月29日付けの日経MJに被請求人ロッテが掲載した新聞広告であるところ、「厚生労働省認可保健機能食品(特定保健用食品)」の表示とともに、「ロッテ キシリトールガム+2 むし歯の原因となる酸を作らない天然素材甘味料キシリトールにフノランとリン酸カルシウムを配合。」と記載されている。
乙第11号証は、産経新聞社営業局が企画・制作し、被請求人ロッテが取材協力した「くらしの玉手箱」と題する平成16年11月8日付けの産経新聞に掲載された記事であるところ、「キシリトールは、白樺などから採れる天然素材甘味料で、むし歯の原因となる酸の働きを抑えるもの。」と記載されている。
そうとすれば、本件商標は、登録後、遅くとも本件審判請求時には、商標法第46条第1項第5号に規定する「商標登録がされた後において、同法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっているとき(商品の品質を生ずるおそれがある商標)」になっていたものと認められる。そして、審決時においても、商品の品質を生ずるおそれがある商標になっているものと認められる。
してみれば、本件商標は、審判請求時及び審決時において、指定商品中、「キシリトールを使用しない商品」との関係において、商標法第46条第1項第5号に規定する商標になっているものとみるのが相当である。

3 しかしながら、本件商標に係る商標権は、商標登録第1692144号の1と商標登録第1692144号の2とに分割されているものである。
商標権の分割は、その指定商品又は指定役務が2以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとにすることができる(商標法第24条第1項)。同項の趣旨は、商標権について、審判請求があった場合に、例えば、請求に係る指定商品又は指定役務についての商標権と、請求に係らない指定商品又は指定役務についての商標権とに分割することにより、権利の有効性について争いのない商標権については安心して権利行使できることにある。また、商標権の分割は、商標権の発生から消滅するまでの期間については特段の定めなく認められる。なお、商標権の分割は、商標権の消滅後においても、商標法第46条第2項の無効審判の請求があったときは、その事件が審判又は訴訟に継続している場合に限り、することができる(特許庁編「工業所有権法逐条解説」商標法第24条参照)。
してみれば、商標権の分割は、商標法が予定する適正な手続きとみることができ、被請求人(商標権者)側がとることができる効果的な手段いうことができる。そして、本件商標に係る商標権が、商標登録第1692144号の1と商標登録第1692144号の2とに分割されたことに違法性はない。

4 また、本件商標が、審判請求時及び審決時において、指定商品中、「キシリトールを使用しない商品」との関係において、商標法第46条第1項第5号に規定する商標になっているとしても、審決時には、本件商標に係る商標権は、商標登録第1692144号の1と商標登録第1692144号の2とに分割され、商標登録第1692144号が存在しないことから、商標登録第1692144号の登録を無効とすることはできない。

5 本件商標は、別掲のとおり「キシリトール」の文字及び「XYLITOL」の文字を書してなるものであり、以下の二つの商標権に分割されている。
(1)商標登録第1692144号の1
第30類「菓子及びパン但し、キシリトールを使用したチューインガム,キシリトールを使用したチョコレート,キシリトールを使用したキャンデー,キシリトールを使用したキャラメル,キシリトールを使用したドロップ,キシリトールを使用したビスケット,キシリトールを使用したクッキー,キシリトールを使用したクラッカー,キシリトールを使用したケーキ,キシリトールを使用したカステラ,キシリトールを使用したホットケーキ,キシリトールを使用したパイ,キシリトールを使用したドーナツ,キシリトールを使用したワッフル,キシリトールを使用したシュークリーム,キシリトールを使用したマシュマロ,キシリトールを使用したウエハース,キシリトールを使用したボーロ,キシリトールを使用したフルーツゼリー,キシリトールを使用したアイスクリーム,キシリトールを使用したアイスキャンデー,キシリトールを使用したシャーベット,キシリトールを使用したフローズンヨーグルト,キシリトールを使用したコーンカップ,キシリトールを使用したあめ,キシリトールを使用したかりんとう,キシリトールを使用しただんご,キシリトールを使用したもなか,キシリトールを使用したようかんを除く」
(2)商標登録第1692144号の2
第30類「キシリトールを使用したチューインガム,キシリトールを使用したチョコレート,キシリトールを使用したキャンデー,キシリトールを使用したキャラメル,キシリトールを使用したドロップ,キシリトールを使用したビスケット,キシリトールを使用したクッキー,キシリトールを使用したクラッカー,キシリトールを使用したケーキ,キシリトールを使用したカステラ,キシリトールを使用したホットケーキ,キシリトールを使用したパイ,キシリトールを使用したドーナツ,キシリトールを使用したワッフル,キシリトールを使用したシュークリーム,キシリトールを使用したマシュマロ,キシリトールを使用したウエハース,キシリトールを使用したボーロ,キシリトールを使用したフルーツゼリー,キシリトールを使用したアイスクリーム,キシリトールを使用したアイスキャンデー,キシリトールを使用したシャーベット,キシリトールを使用したフローズンヨーグルト,キシリトールを使用したコーンカップ,キシリトールを使用したあめ,キシリトールを使用したかりんとう,キシリトールを使用しただんご,キシリトールを使用したもなか,キシリトールを使用したようかん」

6 請求人が証拠として甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、「商願2004-83051号商標(登録第4954931号商標)の指定商品を『キシリトールを使用した菓子及びパン』と補正していることを理由に、本件商標を『キシリトールを使用した菓子及びパン』以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり、本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当することを自ら認め、証明したものである。」旨主張しているように、被請求人は、商願2004-83051号において指定商品を補正していた事実を認めることができる。
また、被請求人は、「(1)本件商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子及びキシリトールを使用したパン」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。(2)本件商標の指定商品中「キシリトールを使用した菓子」についての審判請求は成り立たない。その余の商品についての登録を無効とする旨の審決を求める。」のように二つの予備的主張に加え、選択的に「(3)商標登録第1692144号の2についての審判請求は成り立たない。商標登録第1692144号の1ついての登録を無効とする。審判費用は請求人の負担とする。」審決を求めているところである。

7 そして、上記第4の無効理由通知で述べたように、商標法46条第1項第5号に規定する「商標登録がされた後においてその登録商標が商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっているとき」といえるのは、「キシリトール」の文字及び「XYLITOL」の文字を書してなる本件商標を「キシリトールを使用しない商品」について使用したときと認められる。
「キシリトールを使用しない商品」とは、キシリトールを使用した商品が除かれた商標登録第1692144号の1の指定商品である。
したがって、商標登録第1692144号の1の登録は、商標法第46条第1項第5号により、無効とすべきものである。

8 商標登録第1692144号の2の指定商品は、いずれもキシリトールを使用した商品であるから、「キシリトール」の文字及び「XYLITOL」の文字を書してなる商標登録第1692144号の2に係る商標をその指定商品に使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標ということができない。また、特許庁編「工業所有権法逐条解説」によれば、商標法第4条第1項第16号に規定する商品の品質の誤認については、商品の品質の劣悪には関係ないものとされている。
したがって、商標登録第1692144号の2が、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたとする審判請求は成り立たない。

9 なお、請求人は、平成19年1月15日付け審判事件弁駁書及び同日付け上申書において、請求の趣旨を「(1)『商標法第4条第1項第16号』に違反して登録された無効な商標である。(2)登録と異なる商標の故意の使用により被請求人の製品の品質の誤認を生じさせており商標法第53条の規定に該当する。また『商標法第51条』に基づき登録商標の無効を求める。(3)平成16年(2004年)6月8日の『商標登録の更新』の無効。(商標法第3条第1項第1号)『その商品又は役務の普通名称(XYLITOL)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』に該当する他、同第2号、同第3号及び同第6号にも該当する。よって、平成16年(2004年)6月8日の『商標登録の更新』は無効とされるべき商標である。被請求人の本件商標は、上記の各規定に違反若しくは該当して登録された商標であり、本件商標の登録の全部を無効とする。」と変更する旨主張しているが、これは請求の理由の要旨を変更するものであるから、商標法第56条第1項で準用する特許法第131条の2第1項の規定により認められない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標






審理終結日 2007-11-14 
結審通知日 2008-01-11 
審決日 2008-01-22 
出願番号 商願昭51-45356 
審決分類 T 1 11・ 272- ZC (130)
最終処分 一部成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 鈴木 修
渡邉 健司
登録日 1984-06-21 
登録番号 商標登録第1692144号(T1692144) 
代理人 原田 信市 
代理人 原田 敬志 

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