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審決分類 審判 査定不服 称呼類似 登録しない Y01
管理番号 1186139 
審判番号 不服2007-24907 
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-10 
確定日 2008-10-07 
事件の表示 商願2006-60707拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「MULTISORB」の欧文字を横書きしてなり、第1類「臭気・揮発性物質・ガス吸収剤,酸素吸収剤,液体吸収剤,乾燥剤,湿気を調節するために用いられる水分吸収・放出剤,化学品」を指定商品として、2005年12月30日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成18年6月29日に登録出願されたものである。

2 引用商標
原審において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用した登録商標は、以下の2件である。
(1)登録第2172171号商標(以下「引用A商標」という。)は、「MALTISORB」の欧文字と「マルチソルブ」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、昭和61年1月30日登録出願、第1類「多価アルコ-ル、その他の化学品、薬剤」を指定商品として、平成1年9月29日に設定登録され、その後、同11年6月8日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第4280260号商標(以下「引用B商標」という。)は、「multiSorp」の欧文字を横書きしてなり、1998年5月8日オーストリア共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成10年5月27日登録出願、第1類「水を浄化するための化学品,その他の化学品」を指定商品として、同11年6月4日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 当審の判断
(1)本願商標と引用A商標との類否について
本願商標は、前記のとおり「MULTISORB」の欧文字を書してなるところ、該文字は、同じ書体、同じ大きさで等間隔に表されていて、視覚上まとまりよく一体的に看取し得るものであり、かつ、その綴りをもって我が国において親しまれた外国語ともいい得ないから、全体として特定の意味を有しない造語と認められるものである。
しかして、一般的には、特定の意味合い又は特定の読みを有しない欧文字にあっては、これに接する取引者、需要者は、我が国において親しまれた外国語である英語読み又はローマ字読みをもって称呼するとみられるものであるところ、本願商標の指定商品は「化学品」を含むものであって、該商品は日常の生活において普通に購入されるものとはいい難く、その取引者、需要者も、化学品についての専門的な知識を有している場合も多いといい得るものであるから、本願商標は、上記した英語読み風等の他に、一般に取引されている化学品の名称の読みに倣って称呼する場合も決して少なくないとみるのが相当である。
そうすると、本願商標は、英語の「sorb」を「ソーブ」、「sort」を「ソート」、「sorption」を「ソープション」と発音する例に倣い「マルチソーブ」の称呼を生ずるとともに、「sorbitol」を「ソルビトール」、「sorbonne」を「ソルボンヌ」、「sorbose」を「ソルボース」と発音する例にも倣い「マルチソルブ」の称呼をも生ずるとみるのが相当である。
ところで、請求人は、本願商標からは「多数の吸着」の意味を生ずると主張している。確かに、本願商標は、「MULTI」と「SORB」の各綴り字に分離し、抽出してみれば、それぞれ「多い、多数の」、「吸着する、吸収する」の各意味(研究社新英和大辞典第6版 株式会社研究社発行)を有することを必ずしも否定するものでないが、前記したように本願商標は、その構成全体が一体不可分に看取されるものであるばかりでなく、請求人の主張する「多数の吸着」の意味も特定の事物、事象を表すものとは俄に認識、理解し得ないとみるのが相当であって、本願商標から生ずると認められる「マルチソーブ」、「マルチソルブ」の各称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであるから、請求人の主張は、採用することができない。
他方、引用A商標は、前記のとおり「MALTISORB」の欧文字と「マルチソルブ」の片仮名文字とを書してなるところ、該文字は何ら特定の意味合いを看取させるものではないから、いずれも特定の語義を有しない一連の造語というのが相当であって、一般に欧文字と片仮名文字とを併記した構成において、その片仮名文字部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識し得るときは、片仮名文字部分より生ずる称呼がその商標より生ずる自然の称呼とみるのが相当である。
これを引用A商標についてみると、その指定商品が「化学品」を含むものであり、前記のとおり、該商品の専門的な知識を有する取引者、需要者においては、下段に表された「マルチソルブ」の片仮名文字は、上段の「MALTISORB」の欧文字から生ずる称呼を特定したものと無理なく認識し得るとみるのが自然であるから、引用A商標は、その構成文字に相応して「マルチソルブ」の称呼のみを生ずると判断するのが相当である。
そうすると、本願商標と引用A商標とは、「マルチソルブ」の称呼を同じくする場合のある類似の商標といわなければならない。
さらに、本願商標と引用A商標とは、前記認定のとおり、観念については共に造語と認められるから比較できないものであるとしても、外観については、両商標は前記のとおりの構成よりなるところ、引用A商標の構成中の「マルチソルブ」と「MALTISORB」の各文字部分は、同じ称呼を生ずる片仮名文字と欧文字とを併記した構成よりなるものと認識されるものであるから、これに接する取引者、需要者においては、たとえ、該欧文字部分が該片仮名文字部分より小さく表されているとしても、引用A商標の欧文字部分のみをもって記憶、想起し、取引に当たる場合も少なくないとみるのが相当である。
しかして、本願商標と引用A商標の欧文字部分とは、いずれも文字を普通に用いられる態様で表してなるにすぎないものであって、第2文字において「U」と「A」の相違を有するにすぎず、他の文字の綴りを同じくするものであるから、時と所を異にした場合にあっては、その差異が明確に印象に残るともいえないものであり、両商標は前記のとおり称呼において相紛れるおそれのあることを併せ考慮すると、両商標は互いに類似するというべきであり、かつ、本願商標の指定商品は、引用A商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。
(2)本願商標と引用B商標との類否について
本願商標は、前記3(1)の認定のとおり、造語と認められるものであり、これよりは、「マルチソーブ」、「マルチソルブ」の称呼を生ずるといい得るものである。
他方、引用B商標は、前記のとおり「multiSorp」の欧文字を書してなるところ、該文字も特定の意味を有しない造語と認められるものであって、これよりは、我が国において一般に親しまれた英語の「sorb」を「ソーブ」、「sort」を「ソート」、「sorption」を「ソープション」と発音する例に倣い、英語読み風に「マルチソープ」の称呼を生ずるとみるのが相当である。
そこで、本願商標より生ずる「マルチソーブ」の称呼と、引用B商標より生ずる「マルチソープ」の称呼とを比較すると、両称呼は、共に長音を含む6音構成よりなるところ、称呼における識別上重要な要素を占める語頭音を含む5音を同じくし、異なるところは語尾においての前者が「ブ」、後者が「プ」の音に差異を有するのみである。
しかして、該差異音である「ブ」と「プ」の音にしても、「ブ」の音は、両唇を合わせて破裂させる有声子音(b)と母音(u)との結合した音節であるのに対し、「プ」の音は、両唇を合わせて破裂させる無声子音(p)と母音(u)との結合した音節であって、両音は子音こそ異なるものの母音(u)を同じくし、その調音方法、調音位置をほとんど同じくするものであるから、比較的聴取され難い語尾に位置する該差異音が称呼全体に及ぼす影響は決して大きいものとはいえず、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときには、全体の語調、語感が近似し、互いに聞き誤るおそれがあるというのが相当である。
次に、本願商標と引用B商標とは、観念については共に造語と認められるから比較できないものであるとしても、外観については、両商標は前記のとおり、共に普通に用いられる態様で欧文字9字を配列した構成よりなるところ、前者は各文字を大文字で表し、後者は「S」の文字を除き他の文字を小文字で表し、語尾において前者が「B」、後者が「p」の各文字が相違するにすぎないものであり、前者の「M」、「U」、「L」、「T」、「I」、「S」、「O」、「R」と後者の「m」、「u」、「l」、「t」、「i」、「S」、「o」、「r」とはそれぞれ綴りを共通にするものであるから、時と所を異にした場合にあっては、その差異が明確に印象に残るともいえないものであるから、前記のとおり称呼において相紛れるおそれのあることを併せ考慮すると、両商標も互いに類似するというべきであり、かつ、本願商標の指定商品は、引用B商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。
(3)請求人の主張について
請求人は、他の登録例及び審決例を挙げて、本願商標は登録されるべきであると主張するとともに、引用B商標との抵触関係が解消した後に、本願商標を引用A商標の商標権者に譲渡することを該商標権者と合意したので本願商標と引用A商標との抵触関係についての審理を猶予し、本願商標と引用B商標との類否についての判断を伺いたい旨主張している。
しかしながら、請求人の挙げた登録例及び審決例は、いずれも商標の構成等において本願とは事案を異にするものであって、出願された商標と引用商標との類否判断は、両商標について個別具体的に行えば足り、過去の登録例の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、この点についての請求人の主張は採用することができない。
また、請求人が引用A商標の商標権者と本願の譲渡交渉を行い、その合意がなされたことを窺わせるに足りる証拠の提出がないものであり、本願商標の名義を変更する手続き等もなされていないため、さらに、審理を遅滞させるべき理由はないものと認め、前記のとおり本願商標と引用A商標との類否についても判断することとした。
(4)むすび
したがって、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものと認められるから、これを登録することができない。
なお、商標法第56条第1項において準用する特許法第158条の規定によれば,審査においてした手続は,拒絶査定不服審判においてもその効力を有するものであるから,本願商標が引用B商標と同一又は類似であって商標法第4条第1項第11号に該当する旨の審査における拒絶の理由は,審判においてもその効力を有するというべきである。
そして、当審において、本願商標は、引用B商標を引用して商標法第4条第1項第11号に該当すると判断しても、請求人は、審判請求書の請求の理由を補正する平成19年11月14日付け手続補正書において、本願商標と引用B商標との類否について意見を述べているので、あらためて、本願商標が同法第4条第1項第11号に該当することに関して、意見を申し立てる機会を与えることもないとして審理を進めた。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-05-09 
結審通知日 2008-05-12 
審決日 2008-05-28 
出願番号 商願2006-60707(T2006-60707) 
審決分類 T 1 8・ 262- Z (Y01)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 亮一鈴木 斎 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 末武 久佳
前山 るり子
商標の称呼 マルチソルブ、マルチソーブ 
代理人 柳生 征男 
代理人 青島 恵美 
代理人 足立 泉 
代理人 中田 和博 
代理人 青木 博通 

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