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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09
管理番号 1186102 
審判番号 無効2007-890142 
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-23 
確定日 2008-09-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第5052558号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5052558号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5052558号商標(以下「本件商標」という。)は、「FUTURE MEDIA VOGUE」の文字を標準文字で表してなり、平成18年9月6日に登録出願され、第9類「金銭登録機,現金自動預金支払機,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子計算機,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,家庭用テレビゲームおもちゃ,家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム,家庭用テレビゲームおもちゃ用ゲームプログラム,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,ダウンロード可能な音楽,録画済みビデオディスク及びビデオテープその他の録画済み記録媒体,ダウンロード可能な画像,電子出版物(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるものを含む。)」を指定商品として、平成19年5月10日に登録査定、同年6月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下の4件である。
1 登録第655209号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和36年10月23日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同39年10月9日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が4回にわたりなされ、さらにその後、平成17年4月6日に第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に書換登録され、現に有効に存続しているものである。
2 登録第967284号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和43年12月20日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同47年6月7日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が3回にわたりなされ、さらにその後、平成14年11月27日に第6類、第9類、第16類、第19類及び第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に書換登録され、現に有効に存続しているものである。
3 登録第4547685号商標(以下「引用商標3」という。)は、「ボーグ」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成11年1月8日に登録出願、第16類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同14年3月1日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
4 登録第4802292号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成16年2月20日に登録出願、第16類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同年9月10日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。(以下、一括していうときは「引用各商標」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第149号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標1は、請求人の所有に係るファッション雑誌の題号として、日本を含め世界的に著名となっている商標である(甲第2号証の1及び2)。
引用商標2は、引用商標1のカタカナ表記の「ヴォーグ」であって、我が国においては第二次大戦以前より現在に至る迄、引用商標1のカタカナ表記として日本国内において使用され、日本国内で周知著名となっている(甲第3号証の1及び2)。
引用商標3は、引用商標1のカタカナ表記として、我が国の新聞社をはじめ、辞典、雑誌等の出版業界で「ボーグ」として使用され、本件商標の登録出願日以前から周知著名性を獲得し、現在に至っているものである(甲第4号証の1及び2)。
この引用商標1及び2からは、「ヴォーグ」の称呼の他に「ボーグ」の称呼も生ずる。
引用商標1の称呼に関し、「日本語の感覚からすれば『ボーグ』と『ヴォーグ』の称呼の区別はつけにくいところである」点は、東京高裁によるVOGUE関連判決における認定でも明らかである。現に、我が国における「VOGUE」誌の説明においても「ボーグ」と表記している例も多くみられている。しかも、「登録商標の著名度が高い場合には、その著名度の高い部分に世人の注意が集中し当該著名商標の称呼、観念が生じる」ことも裁判所においても明確に認定されているところである。
引用商標4は、我が国において、平成11年(1999年)から専用使用権者(有)日経コンデナスト(平成17年10月1日、社名変更により、(有)コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンとなった)により使用されている「VOGUE」誌の日本語版の標章である。標章の構成は、「VOGUE」の「O」の中に小さく「NIPPON」の文字が附記されているものであり、実質的には引用商標1と同一の標章である。
したがって、引用商標1ないし4は、本件商標の登録出願日以前よりファッション雑誌の題号として周知・著名であると共に、本件商標の登録査定時及び現在に至るまで、周知著名性のある登録商標となっている。
イ これに対し、本件商標は、「FUTURE MEDIA VOGUE」の文字からなるものである。すなわち、本件商標は、標準文字で、横に「FUTURE MEDIA VOGUE」と3つの文字を書してなり、「FUTURE」と「MEDIA」、「MEDIA」と「VOGUE」との各間にワンスペースの空白部がある構成であり、明らかに3つの文字からなる可分的な構成である。
しかも、「FUTURE」及び「MEDIA」は、いずれも英語として、中学校の生徒でも十分に理解できる英語であり、日本語としても「FUTURE」は「フューチャ」と称呼され、一般的には「未来、将来」を意味する語であることは、誰しも明らかに理解できる語である。同様に「MEDIA」なる語も一般的には「メディア」と称呼され、「媒介、媒体、手段」を意味するものであることは明白である。
ウ 被請求人のホームページによれば、「”FUTURE MEDIA VOGUE”は、富士通のデザイナーが考える未来のパーソナルIT機器へのアプローチです。これからのパーソナルIT機器は、ますます多様化する生活の中で、現在のパソコンの枠を越えた”MEDIA”としてその存在を拡張し、よりヒューマンで身近な存在”VOGUE”として変貌していくことになる、と私たちは考えます」(甲第1号証の3)とあり、請求人は、この主張こそが、被請求人による「VOGUE」の世界的著名性へのフリーライドそのものを現わしたものと考える次第である。
本件商標は、上記のように3つの英語からなり、この3つの英語は相互に関連性がないものである。強いて言えば、組み合わせ迄であろう。
エ これに反し、「VOGUE」は、請求人らの所有に係り、先進世界15ヶ国で長い年月にわたり使用されつつ現在に至っている「ファッション誌」の題号である。したがって「VOGUE」は「FUTURE」にも「MEDIA」にも組合せるべき理由はない。
このため、本件商標を看る需要者・取引者らは、請求人の所有に係る引用商標1及び4と同一性のある「VOGUE」に注意が集中する。このため、本件商標の要部は「VOGUE」にあるものと考えるべきである。
オ 以上の点から判断して、本件商標の要部の外観、称呼及び観念は、「VOGUE」の点で上記引用商標1及び4と同一である。さらに、本件商標の要部「VOGUE」は、称呼及び観念において引用商標2及び3と同一である。よって、本件商標と引用商標1ないし4とは、以下の類似関係になる。すなわち、
引用商標1は、外観、称呼、観念が類似し、
引用商標2は、称呼、観念が類似し、
引用商標3は、称呼、観念が類似する。さらに、
引用商標4は、外観、称呼、観念が類似する。
カ 一方、本件商標の指定商品は「第9類」であり、「電子出版物,電子計算機,電子計算機用プログラム等」となっている。
このうち、商品「電子出版物」は、類似群コード「26A01」と「26D01」であり、請求人の引用商標1ないし4の「雑誌」等と明らかに商品が類似している。
キ しかも、被請求人の主要商品たる「電気通信機械器具」、「電子計算機」、「電子計算機用プログラム」、「その他の電子応用機械器具」等の商品は、今や、IT産業の代表的商品である。これら代表的商品であるPC(パーソナルコンピューター)、モバイルフォン等は、世界的強豪が、その戦略を勝ち抜くために、各機種のデザインをより優美にファッション化し、しかも、より合理的に作成するか否かが問われると同時に、その「商品ブランド」を、いかに価値あるプランにするかが問われている商品である。
ク 今や、本件の商品「電子機器等」は、PC(パーソナルコンピューター)やモバイルフォンを含め、ファッション商品そのものか、あるいは、ファッションと極めて深い関連性がある商品となっている(甲第1号証の3ないし6)。
ケ したがって、ファッションについて世界的著名性を有する引用商標1ないし4と、本件商標とは、標章と商品につき、いずれも相互に関連性は極めて深く、明らかに出所について混同を生ずるおそれがあるものである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件の指定商品「電子出版物」は、引用商標1ないし4と、商標と商品が類似する(類似群コード「26A01」と「26D01」)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号にも違反して登録されたものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 商標の類否を判断する上で必須不可欠な基準は、当該商標の外観、称呼、観念にあることはいう迄もない。しかし、重要な点は、当該商標につき紛争が生じた場合、上記の類否判断に加え、「使用の実際」、「具体的な使用態様」、「取引の実際」等を十分に観察した上で、総合的に判断されねばならない点である(甲第1号証の3及び8)。
イ 被請求人は、「デザイン性」なる言葉の意味を、訴求力(すなわち、購買意欲を起こさせる力)の一部である「流行や見た目の要請」と限定した上で反論している。
しかし、「VOGUE」誌は、そのような狭い意味のファッションに留まらず、時代と共に常に変化して行くものを先取りして、「ファッション」として発信しているものである。したがって、その内容は、昔からの伝統的な被服、化粧品、時計、くつ等の商品に留まらず、自動車はもちろんのこと、今や代表的な「電子応用機械器具」としてのモバイルフォン(携帯電話)も、その宣伝・広告の対象となっているのである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
被請求人は、「11号」に関し、外観、称呼及び観念につき、ほぼ前記「15号」において主張したとおりの主張を繰り返している。
本件商標の指定商品中の「電子出版物」は、類似群コード「26A01」と「26D01」であり、引用商標1及び4の「VOGUE」の著名性が明らかであるならば、その類似範囲は拡大されるべきであろう。その結果、本件商標が「11号」に該当することも明らかである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号商にも違反して登録されたものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に加えて、商標法第4条第1項第11号にも違反して登録されたものであるから、その登録を無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 「平成10年(行ヒ)第85号(平成12年7月11日最高裁判決言渡)の判決によれば、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、
(ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度、
(イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、
(ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。
イ これを本件についてみると、次のとおりである。
(ア)本件商標と引用各商標との類似性の程度
本件商標は、「FUTURE MEDIA VOGUE」の文字を同大、同書体にて外観上まとまりよく一体的に看取し得ることから、「FUTURE MEDIA VOGUE」で一連一体のものと認識されるべきと考える。また、これにより生じる「フューチャーメディアボーグ」の称呼も特に冗長とはいえず、全体として澱みなく一連に称呼し得るものであり、語尾に位置する「ボーグ」のみを取り出して看取しなければならない特段の事由もない。したがって、本件商標は、「フューチャーメディアボーグ」全体で称呼認識されると判断するのが妥当である。
次に、本件商標の観念については、以下のとおりである。
本件商標は、「富士通株式会社の近未来の媒体は、生き生きとしたユーザの経験価値を高める」というコンセプトに基づいており、「FUTURE」は「富士通株式会社の近未来」という意味を、「MEDIA」は「媒体」の意味を、そして「VOGUE」は、「生き生きとしたユーザの経験価値」という意味を表す 「VALUE OF GRAPHIC USER EXPERIENCE」から各単語の頭文字を取った構成からなる造語である。したがって、本件商標は、全体として何ら特定の観念を生じさせるものではない。
一方、引用各商標は、流行やファッションといった意味を有することから、本件商標と引用各商標の観念は、明らかに相違する。以上より、本件商標と引用各商標との外観、称呼及び観念の類似の程度は、いずれも非常に限定的なものであるというべきである。
(イ)引用各商標の周知著名性及び独創性の程度
引用各商標が、請求人の著名商標である事実は認め得るとしても、独創性の程度については、「東京高裁平成14年(行ケ)第198号審決取消請求事件(「ゾンボーグ事件」)」(乙第2号証)が、以下のように示している。
「『VOGUE』は、流行やファッションを意味するフランス語に由来する英語の普通名称であるため、造語による商標とは異なり、相当程度低いといわざるを得ない。」
(ウ)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等
本件商標の指定商品は、第9類の「電子計算機,電子計算機用プログラム等」であるところ、これらが、請求人の主張の如くデザイン性を追及した製品であるからといって、それらに関して直ちに「ファッションの一部である」と一般的に認識されるようになっているとまでは認められないと思料する。
昨今、電子計算機等のデザインに訴求力を持たせるのは、ただ単に流行や見た目の要請からではなく、ユニバーサルデザイン(障害の有無、年齢、性別、国籍、人種等にかかわらず多様な人々が気持ちよく使えるようにあらかじめ都市や生活環境を計画する考え方)を重視した形状や操作性、また、地球環境を配慮した環境負荷の少ないデザインを追及するためであり、単にファッション性を求めるためのデザイン設計ではない。
デザイン性があることを以って、直ちに本件指定商品である電子計算機等とファッション性を結びつけるのは、デザインと関わるあらゆる物とファッションとの間に関連性を認めることになり、決して妥当ではない。
したがって、本件商標の指定商品「電子計算機,電子計算機用プログラム等」とファツンョン雑誌「VOGUE」誌との間のファッションという用途又は目的における関連性は相当弱いものというべきである。
また、このことから、両者の商品の取引者及び需要者についても、共通性は、相当程度弱いものというべきである。すなわち、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品の需要者・取引者については、本件商標の需要者・取引者が、電子計算機や携帯電話を実際に必要とする老若男女であり、このことは、電子計算機や携帯電話の利用層の低年齢化している一方で、高齢者の利用率も年々高まっていることから明らかである。一方、請求人の需要者・取引者は、世界の流行の最先端をいく高級ファッションに興味を持つ女性が主要なターゲットであり、両者の需要者・取引者は明らかに相違している。
その他、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品の販売・流通形態についても以下のとおり相違が認められる。まず、価格及び購入頻度について、一般的に、請求人の「VOGUE」誌は一冊680円で毎月一回発行されているため毎月購入することが可能であり、愛読者であれば、1年?3年間定期購読することもできる形態をとっている。一方、本件商標の指定商品中、特に電子計算機は、値段も高額のため、少なくとも何年かに一回買い換える程度であり、請求人の「VOGUE」誌のように毎月680円で購入したり、3年間毎月定期購読することは現実的でなく、したがって、両者に共通性はない。
販売場所等に関しては、請求人の「VOGUE」誌は、本屋を中心に、スーパーや駅の売店等で販売されており、特にファッションに関する専門知識を有する販売員の説明を受けて購入するわけではない。一方、本件商標の指定商品については、専門知識を有し、商品を説明できる販売員のいる家電専門店などの限られた場所で購入することが主であるため、両者に共通性はない。このように、「VOGUE」を含む商標につき、両商標の指定商品の品質、用途及び取引者・需要者等を異にする場合は、「VOGUE」の文字部分が独立して特に看者に強い印象を与えるものとは認め難く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとは認められないと特許庁で判断された審決例もある(乙第3号証)。
したがって、前記1(1)の(ア)ないし(ウ)に照らし、本件商標の指定商品等の取引者・需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すると、
・本件商標と引用各商標との外観、称呼及び観念の類似の程度は、いずれも非常に限定的というべきで、
・また、引用商標の独創性は相当低く、
・さらに、本件商標の指定商品とファッション雑誌「VOGUE」誌との間のファッションという用途又は目的における関連性は相当弱く、
・両者の商品の取引者及び需要者の共通性、及び販売・流通における共通性の程度も非常に低い、というべきです。
これらの各事情を総合的に考慮すると、本件商標に接した取引者・需要者に対し、引用各商標を連想させて商品の出所につき誤認を生じさせることはない。また、本件商標の登録により、引用各商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリュージョン)を招くという結果が招来されるということもできないというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に規定されている「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には該当しない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、「FUTURE MEDIA VOGUE」の文字を同大、同書体にて外観上まとまりよく一体的に看取し得ることから、「FUTURE MEDIA VOGUE」で一連一体のものと認識されるべきである。また、これにより生じる「フューチャーメディアボーグ」の称呼も特に冗長とはいえず、全体として澱みなく一連に称呼し得るものであり、語尾に位置する「ボーグ」のみを取り出して看取しなければならない特段の事由もない。したがって、本件商標は「フューチャーメディアボーグ」全体で称呼・認識されると判断するのが妥当である。してみれば、本件商標と引用各商標とは、外観及び称呼において、類似しないと判断されるべきである。
イ また、観念については以下のとおりである。
本件商標は、「富士通株式会社の近未来の媒体は、生き生きとしたユーザの経験価値を高める」というコンセプトに基づいており、「FUTURE」は、「富士通株式会社の近未来」という意味を、「MEDIA」は「媒体」の意味を、そして「VOGUE」は、「生き生きとしたユーザの経験価値」という意味を表す「VALUE OF GRAPHIC USER EXPERIENCE」から各単語の頭文字を取った構成からなる造語である。したがって、本件商標は、全体として何ら特定の観念を生じさせるものではなく、「流行」や「ファッション」といった観念を生ずる引用各商標とは明らかに相違する。
ウ 以上より、本件商標と引用各商標は外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似せず、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたとする請求人の請求は成り立たないと考える。
2 第2答弁
(1)本件商標の使用態様について
請求人は、「甲第1号証の3」及び「甲第1号証の8」に示される本件商標の使用態様により、被請求人の「VOGUE」へのフリーライドが明確である旨主張している。しかし、「甲第1号証の3」においては、本件商標が登録された態様、すなわち、同大・同書の態様で使用しており、殊更「VOGUE」部分のみを強調した態様で使用しているのではない。
また、「甲第1号証の8」においては、三段表記をしているものの、同大・同書、そして各語間の上下の間隔も同一であり、三段表記ゆえに「VOGUE」部分を独立させて使用しているものではない。
したがって、本件商標の使用態様により、本件商標が「VOGUE」にフリーライドしているという請求人の主張は誤りである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、乙第1号証にあるとおり、
(ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度
(イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度
(ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきであるのは、平成19年10月22日付答弁書にて答弁したとおりである。
イ これを本件について見ると、次のとおりである。
(ア)本件商標と引用商標1ないし4との類似性の程度
本件商標は、「FUTURE MEDIA VOGUE」の文字を同大、同書体にて外観上まとまりよく一体的に看取し得ることから、「FUTURE MEDIA VOGUE」で一連一体のものと認識されるべきと考える。
これに対し、請求人は、『外観において、本商標のように、三つの文字をワンスペースを置いて並べた文字商標に対しては、商標類否判断上「一連一体のもの」とは云えない』と主張している。しかし、過去、特許庁において、例えば、次のような商標が併存して登録されている。
登録第4593272号「Material System Solution」(乙第4号証)
登録第4941102号「§MATERIAL」(乙第5号証)
両者が併存して登録されているのは、乙第4号「Material System Solution」について、「Material」「System」「Solution」をそれぞれ分離せず、一連一体のものと認識されたからであり、請求人の上記の主張は誤りであると考える。
また、本件商標の称呼については、「フューチャーメディアボーグ」の称呼は特に冗長とは言えず、全体として澱みなく一連に称呼し得るものであり、語尾に位置する「ボーグ」のみを取り出して称呼しなければならない特段の事由もない。したがって、本件商標は「フューチャーメディアボーグ」全体で称呼認識されると判断するのが妥当である。
(イ)これに対し、請求人は『このような相互に関連性のない三つの文字につき、「冗長」や「澱みなく一連に」という判断は事実誤認である』と主張しているが、相互に関連性のない三つの文字からなる造語であっても、区切って読む特段の事情のない、一気に発音できる語であるため、本件商標は冗長とは言えず、全体として澱みなく一連一体に称呼し得る。
次に、本件商標の観念は、答弁書に記載のとおり、本件商標と引用商標の観念は明らかに相違する。
以上より、本件商標と引用商標1ないし4との外観、称呼及び観念の類似の程度は、いずれも非常に限定的なものであるというべきである。
ウ 引用商標の周知著名性及び独創性の程度
引用商標1ないし4が、被請求人の著名商標である事実は認め得るとしても、独創性の程度については、乙第2号証の東京高裁判決によって示されているように、『「VOGUE」は、流行やファッションを意味するフランス語に由来する英語の普通名称であるため、造語による商標とは異なり、相当程度低いといわざるを得ない。』と思料する。
エ 本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等
本件商標の指定商品は、第9類の「電子計算機,電子計算機用プログラム等」であるところ、これらが、請求人の主張の如くデザイン性を追及した製品であるからといって、それらに関して直ちに「ファッションの一部である」と一般的に認識されるようになっているとまでは認められないと思料する。
これに対し、請求人は、時代と共に常に変化するものを先取りするのが「ファッション」であり、宣伝・広告の対象となるものが、即ち「ファッション」とし、本件商標の指定商品の一つである携帯電話がVOGUE誌に掲載されていることを以って、携帯電話とファッションを関連づけている。
しかし、VOGUE誌に掲載される主な商品は、洋服や化粧品などであり、当該商品がVOGUE誌に占める割合に比べ、本件商標の指定商品がVOGUE誌に掲載される割合は明らかに低く、看過できる程度にすぎないと考える。このことから、携帯電話がVOGUE誌に掲載されていることを以って、直ちに携帯電話とファッションを結びつける請求人の主張は妥当ではない。
したがって、本件商標の指定商品「電子計算機,電子計算機用プログラム等」とファツンョン雑誌「VOGUE」誌との間のファッションという用途又は目的における関連性は相当弱いものというべきである。
また、両者の商品の取引者及び需要者についても、共通性は、相当程度弱いものというべきである。この点は、すでに平成19年10月22日付答弁書で述べたとおりである。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に規定されている「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には該当しないというべきである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上述のとおり、「FUTURE MEDIA VOGUE」の文字を同大、同書体にて外観上まとまりよく一体的に看取し得ることから、「FUTURE MEDIA VOGUE」で一連一体のものと認識されるべきである。
また、これにより生じる「フューチャーメディアボーグ」の称呼も特に冗長とは言えず、全体として澱みなく一連に称呼し得るものであり、語尾に位置する「ボーグ」のみを取り出して看取しなければならない特段の事由もない。したがって、本件商標は「フューチャーメディアボーグ」全体で称呼認識されると判断するのが妥当である。
してみれば、本件商標と引用商標1ないし4とは、外観及び称呼において、類似しないと判断されるべきある。
また、観念についても、本件商標は、全体として何ら特定の観念を生じさせるものではなく、引用商標とは明らかに相違する。
以上より、本件商標と引用商標は外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似せず、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたとする請求人の請求は成り立たないと考える。
(4)まとめ
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 「VOGUE」誌の著名性について
(1)請求人が提出した甲第12号証、甲第14号証ないし甲第64号証、甲第66号証ないし甲第111号証、甲第114号証、甲第117号証ないし甲第119号証、甲第131号証ないし甲第137号証、甲第143号証及び甲第145号証ないし甲第149号証を総合すると、以下の事実が認められる。
ア 「VOGUE」誌は、1892年に創刊された服飾雑誌であり、2001年10月現在、アメリカをはじめ、イギリス、フランス、イタリア等世界の15カ国で、それぞれの国語で発刊されている(甲第66号証)。
我が国においても1999年9月1日に「VOGUE NIPPON」が発行されたが(甲第70号証)、それ以前にも海外版の「VOGUE」誌が輸入されていた(甲第67号証ないし甲第69号証)。
イ 本件商標の登録出願前に、我が国において発行された百科事典類には、「ヴォーグ又はボーグ(Vogue)」について、「フランスの服飾雑誌。」、「婦人服飾流行雑誌。・・・ファッション雑誌としては高水準のものを紹介している・・」、「最も知られた流行服飾雑誌の名。」などのように記載されている(甲第55号証ないし甲63号証及び甲第72号証ないし甲第84号証)。
ウ また、服飾関係の事典類等にも、「ヴォーグ(Vogue)」に関し、著名なファッション雑誌である旨の記載がある(甲第85号証ないし甲第88号証)。
さらに、我が国の著名な週刊誌、全国紙等にも、「VOGUE」誌は、「世界的なハイファッション誌、フランスの『ボーグ』が・・〈パリモードを魅惑の日本で・・〉という・・日本特集を企画。」などのように、その時々の話題として記事が掲載されたほか、「ヴォーグ60年展」の関する記事も多くの新聞、雑誌で特集された(甲第89号証ないし甲第109号証)。
エ そして、「VOGUE」誌に関する上記事典類、新聞、雑誌等においての掲載は、「VOGUE」、「vogue」、「Vogue」の文字と共に「ヴォーグ」又は「ボーグ」の文字が記載されていたり、あるいは「VOGUE」、「vogue」、「Vogue」の文字が単独で使用されている。
オ 「VOGUE」誌は、主として、世界的に著名なブランドを使用した被服や靴、かばん、時計、宝飾品等の服飾、いわゆるファッション関連商品の広告を掲載する雑誌であるが、「VOGUE NIPPON」には、その創刊当初から、上記ファッション関連商品のほか、昨今では携帯電話、パーソナルコンピュータについての広告も掲載している(甲第149号証)。
(2)前記(1)認定の事実によれば、「VOGUE」誌は、世界的に著名なファッション関連商品の広告を掲載する服飾雑誌として、本件商標の登録出願時(平成18年9月6日)及びその査定時(平成19年5月10日)において、我が国の服飾を中心としたファッション関連分野の取引者、需要者の間に広く知られていたものと認めることができ、したがって、「VOGUE」の表示及びその片仮名表記である「ヴォーグ」又は「ボーグ」の表示に接する上記ファッション関連分野の取引者、需要者は、これより直ちに請求人の発行に係る「VOGUE」誌を想起又は連想するものとみるのが相当である。
2 本件商標と引用各商標との類似性の程度及びこれらが使用される商品について
(1)本件商標は、前記のとおり、外観構成上「FUTURE」、「MEDIA」、「VOGUE」の間に一字程度の間隔があり、「FUTURE」の文字が「未来、将来」の意味を、また、「MEDIA」の文字が「媒介、媒体、手段」を意味する英語として、一般に良く知られているものである。
また、「VOGUE」の文字も、上記のとおりファッション関連分野の取引者、需要者には「VOGUE」誌として広く認識されているものである。
しかしながら、本件商標「FUTURE MEDIA VOGUE」は、その構成文字全体をもって、特定の語意を有するものとして一般に親しまれているものでなく、また、常に構成文字全体をもって一体のものとしてのみ把握しなければならない格別の事由も見当たらないものである。
さらに、本件商標は、その構成文字全体から生ずると認められる「フューチャーメディアボーグ」の称呼も、比較的冗長なものである。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中に請求人の取扱いに係るファッション誌の題号を表示するものとして我が国において著名な「VOGUE」の文字部分に注意を強く惹きつけられ、ファッション雑誌「VOGUE」誌を連想、想起するというべきである。
したがって、本件商標と引用各商標との類似性の程度は、極めて高いというべきである。
(2)ところで、本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、第9類の商品であるところ、この指定商品中には「電子出版物」が包含されているため、引用各商標と指定商品中の「雑誌」とは、流行のファッションを含めた情報の伝達等、用途、目的等を共通にする類似の商品ないしは類似性の極めて高い商品同士といえるものである。
また、甲第149号証よりすると、請求人は、ファッション雑誌「VOGUE」誌中にファッション性の強いデザインの「携帯電話」、「パーソナルコンピュータ」の広告、宣伝を掲載していることからして、たとえ、請求人が上記商品を製造販売していないとしても、何らかの関連性を有するのではないかと認識し、把握される場合があるものである。
3 出所の混同について
(1)上記1及び2で認定したとおり、「VOGUE」、「vogue」、「Vogue」、「ヴォーグ」又は「ボーグ」の表示は、請求人の取扱いに係るファッション誌の題号として本件商標の登録出願前より、我が国においてファッション関連の取引者、需要者の間で広く認識されているものであり、かつ、本件商標は、その構成中に他人の業務に係る商品を表示するものとして著名な「VOGUE」の文字を含んでなるものである。
(2)請求人の業務に係る前記ファッション誌の主たる掲載内容は「婦人服飾関係をはじめ、ファッション全般にわたる記事」であるところ、上記類似する商品及び類似性の程度の高い商品、並びに近時の経営の多角化により、企業が異業種分野に進出する例を参酌すれば、被請求人が本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
4 被請求人の主張について
(1)被請求人は、他の判決例を挙げ、本件商標「FUTURE MEDIA VOGUE」は、全体で「フューチャーメディアボーグ」と称呼認識され、観念については、同人のコンセプトに基づいて「VOGUE OF GRAPHIC USER EXPERIENCE」から各単語の頭文字を取った構成からなる造語であるから、本件商標と引用商標1ないし4との外観、称呼及び観念の類似の程度は、いずれも非常に限定的なものである旨、及び本件商標の指定商品「電子計算機,電子計算機用プログラム等」と「VOGUE」誌の価格及び購入方法等の相違点を挙げ、本件商標の上記指定商品とファツンョン雑誌「VOGUE」誌との間の関連性は相当弱いから、被請求人が本件商標をその指定商品について使用しても、その商品の出所について混同を生ずるおそれがない旨主張している。
しかし、被請求人の挙げる判決例は、商標の構成、態様、及び指定商品又は指定役務も異なるものであるし、また、被請求人の本件商標についての採択の意図と、本件商標の指定商品に係わる取引者、需要者がどのように認識、把握するかは別の問題といえ、本件については上記のとおり認定、判断されるものであるから、これらの点に関する被請求人の主張は、採用の限りでない。
(2)また、被請求人は、「本件商標は『富士通株式会社の近未来の媒体は、生き生きとしたユーザの経験価値を高める』というコンセプトに基づいており、・・・そして『VOGUE』は『生き生きとしたユーザの経験価値』という意味を表す『VALUE OF GRAPHIC USER EXPERIENCE』から各単語の頭文字を取った構成からなる造語である。」旨述べている。
しかしながら、本件商標の採択の意図が何であれ、それを特定の商品について商標として採択・使用したときに、当該商品に接する取引者、需要者がどのように認識、把握するかはまた別の問題であって、本件商標については、上記のとおり認定、判断されるものであるから、被請求人の主張は、採用の限りでない。
5 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(引用商標1)

別掲2(引用商標2)

別掲3(引用商標4)




審理終結日 2008-07-30 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-18 
出願番号 商願2006-83168(T2006-83168) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小川 きみえ
佐藤 達夫
登録日 2007-06-08 
登録番号 商標登録第5052558号(T5052558) 
商標の称呼 フユーチャーメディアボーグ、ヒューチャーメディアボーグ、フユーチャーメディア、ヒューチャーメディア、メディアボーグ 
代理人 横山 淳一 
代理人 島田 義勝 
代理人 水谷 安男 

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