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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y32 |
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管理番号 | 1182717 |
審判番号 | 取消2007-300934 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2007-07-24 |
確定日 | 2008-08-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4779320号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4779320号商標(以下「本件商標」という。)は、「スマート ウォーター」の片仮名文字と「SMART WATER」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成15年10月9日に登録出願、第32類「清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、同16年6月18日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張の要点 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録は取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。 (1)請求の理由の要旨 請求人の調査したところによると、被請求人が本件商標を全指定商品について使用している事実はないし、過去3年間以上に亘り使用された事実もない。 さらに、本件商標の登録原簿には、専用使用権者、通常使用権者のいずれも設定登録されていない。 したがって、本件商標は、全指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。 (2)答弁に対する弁駁の要旨 (ア)「スマートウォーター」という名称のペット用清涼飲料(以下「ペット用「スマートウォーター」」という。)の販売は、本件商標の使用にあたらない。 被請求人が前商標権者により販売されていたと主張するペット用「スマートウォーター」は、商標法施行令で定められる商品分類のうち別表第31類に含まれるペット用清涼飲料に該当する商品である。よって、ペット用「スマートウォーター」は、本件商標の指定商品である第32類「清涼飲料、果実飲料」とは異なる商品区分に該当するものであることから、仮に本件審判予告登録前3年以内に日本国内で同商品が販売されていたとしても、本件商標の使用にあたらないことは明らかである。 (イ)人間用のラベルデザインの「スマートウォーター」という名称の清涼飲料(以下「人間用「スマートウォーター」」という。)の製造又は販売による本件商標の使用の事実はない。 (a)人間用「スマートウォーター」が製造された事実はない。 被請求人は、平成17年3月頃から、前商標権者によって500mlペットボトル入りの人間用「スマートウォーター」の受注、販売が開始されたと主張する。しかし、被請求人が証拠として提出した500mlペットボトル入り人間用「スマートウォーター」の写真(乙第10号証)は、本件審判予告登録後に撮影されたものであり、撮影対象も、本件審判予告登録後に前商標権者によって新たに印刷されたラベルが貼付されて作成されたサンプルにすぎない(乙第3号証)。したがって、上記写真は、被請求人が主張する時期に500mlペットボトル入り人間用「スマートウォーター」が前商標権者によって製造された事実を証明するものではない。 前商標権者は、人間用「スマートウォーター」の販売に至った経緯として、ペット用「スマートウォーター」を販売する際に、飼い主にも飲めるミネラルウォーターとして宣伝していたところ、愛好家から、屋外で飲用する場合、ペット用のラベルデザインのボトル容器で飲むことは抵抗があると言われたため、ペット用「スマートウォーター」のラベルを人間用のデザインのものに貼り替えて人間用「スマートウォーター」の販売を開始したと述べている(乙第3号証)。しかし、明らかにペット専用の商品であるペット用「スマートウォーター」を販売する際に、人間にも飲用を勧めていたとするのは不自然であり(消費者の常識的感覚からすれば、仮に身体に害なく飲むことが可能であっても、気持ち悪く抵抗感がある。)、また、ラベルの貼り替えのみで、ペット用商品を人間用として販売することは、一般的な感覚では考えにくく、前商標権者の上記説明は、到底信用し難い。 また、被請求人から、人間用「スマートウォーター」が製造、販売されていたことを裏付ける証拠として、事実確認書(乙第8号証)が提出されているが、当該事実確認書に添付された写真は、ペット用「スマートウォーター」のものであり、ペット用の飲料に「スマートウォーター」という名称を使用していたことを示すに留まるものである。また、同事実確認書において「スマートウォーター」という名称を付した飲料を製造したとされる富士サンスイ株式会社の製造ライン、製造商品を撮影した写真(乙第9号証)には、人間用「スマートウォーター」は一切写っていない。同事実確認書において述べられている事実も、ラベルの貼り替えを「承認」した事実のみであり、実際に「スマートウォーター」という名称が人間用清涼飲料について使用された点についての記載は全くない。 さらに、上記事実確認書には、ペット用「スマートウォーター」のラベルを貼り替えて販売することを承認した時期につき、平成16年2月頃と記載されている。これに対し、前商標権者によると、平成16年3月頃から500mlペットボトル入りのペット用「スマートウォーター」の販売を開始したところ、同商品の顧客からの要請があったため、人間用「スマートウォーター」の販売を決意したとされている(乙第3号証)。かかる内容を前提とすると、ペット用「スマートウォーター」の販売を開始した以前から、ラベルの貼り替えを承認していたことになり矛盾する。かかる矛盾は事後に作成されたこれらの証拠の信用性が小さいことの証左である。 被請求人が、前商標権者によって平成17年3月頃からペット用「スマートウォーター」を購入した顧客に対して頒布されたと主張するパンフレット(乙第11号証)や注文書(乙第12号証)についても、本件審判予告登録後に前商標権者から被請求人に渡されたものにすぎず、本件審判予告登録前3年以内に作成され、かつ頒布された事実を示すものではない。上記パンフレット等には作成日の記載がなく、前商標権者のみによって作成可能な書類であるから、本件審判予告登録後に作成された可能性もある。したがって、当該パンフレットや注文書の写しによって、本件審判予告登録日前3年以内に前商標権者が本件商標を使用したことを証明できるものではない。 (b)2lペットボトル入り人間用「スマートウォーター」が販売された事実はない。 前商標権者が2lペットボトル入り人間用「スマートウォーター」を本件審判予告登録日前3年以内に販売した証拠として、請求書(乙第13号証)が被請求人から提出されている。しかし、同請求書の品名の欄には、「スマートウォーター」としか記載されていないが、前商標権者によれば、同請求書に記載されている平成17年8月3日当時には、2lペットボトル入りのペット用「スマートウォーター」も販売されていたというのであるから(乙第3号証)、同請求書の記載をもって、人間用「スマートウォーター」が販売されたことを証明できるものではない。 また、同請求書は、宛名が隠されており、請求の相手方と前商標権者との関係が全く不明であるのみならず、請求の相手方の署名、押印等もなく、前商標権者が単独で作成することのできる書面であるため、客観性を欠き、証拠価値は低い。仮に、真に当該請求書記載の商品が販売されたならば、顧客からの注文書や、前商標権者の帳簿上の記載等、請求書記載の販売の事実を客観的に裏付けるものが当然あるはずであるが、それらの具体的資料は証拠として提出されていない。さらに、商品代金計1716円に対し送料600円であるが、商品の3分の1以上に送料を費やすという取引自体も不自然極まりない。 (c)500mlペットボトル入り人間用「スマートウォーター」が販売された事実はない。 500mlペットボトル入り人間用「スマートウォーター」が顧客により購入された証拠として、被請求人から提出された、中村政弘氏名義の陳述書(乙第14号証)は、本件審判予告登録後に作成されたものである。これには別添黄色のラベルに「スマートウォーター」と表示された清涼飲料を購入したとの記載があるのみで、そのものが「人間用」の「スマートウォーター」であったのかについては言及されておらず、別添の写真を見ても、そこに写る製品が人間用「スマートウォーター」なのか、不明である。また、中村氏なる者と前商標権者との関係が全く不明であるのみならず、真に同商品を購入したならば当然作成されたであろう納品書や領収書等、同氏の陳述書の記載を裏付ける他の具体的資料が証拠として何も提出されていない。上記陳述書は、形式面において、作成日、名前、購入した本数、日付の部分だけが手書きで記載され、署名されていることからすると、被請求人又は前商標権者が作成したひな形に陳述者が形式的に記載し、署名したものである可能性が高い。したがって、上記陳述書の内容は、客観性に欠け、信用性が小さい。 (d)小結 以上のとおり、被請求人の主張する、本件審判予告登録日前3年以内に人間用「スマートウォーター」が前商標権者によって製造・販売された事実はなく、したがって、本件商標が、前商標権者によって、本件審判予告登録前3年以内に使用された事実はない。 (ウ)「スマートウォーター原液」という名称の清涼飲料のもと(以下「スマートウォーター(DP エキス原液)」という。)を製造、販売したことによる本件商標の使用はない。 被請求人は、前商標権者が「スマートウォーター(DP エキス原液)」を販売したことをもって、本件商標が本件審判予告登録日前3年以内に使用された事実があると主張する。しかし、上記主張を裏付ける証拠として提出された請求書(乙第6号証)は、名宛人の部分が隠されており、請求の相手方と前商標権者との関係が不明である。また、請求書という書面の性質上、前商標権者のみで容易に作成できるものであるから、客観性を欠き、信用性は低い。真に請求書記載の商品が注文され、販売されたならば存在するはずの、対応する注文書、納品書等の裏付けのための具体的資料も証拠として提出されていない。 また、被請求人提出の写真(乙第4号証及び乙第5号証)は、本件審判予告登録後の平成19年9月27日に撮影されたものであり、上記撮影された製品が同請求書に記載された「スマートウォーター(DP エキス)原液」と同一であることを示す証拠はない。また、撮影された製品の製造日欄には平成18年7月10日と記載されているものの、かかる点をもって、撮影された同製品が真に製造日欄記載の日に製造されたものであることを示すものでもない。 仮に上記請求書記載の「スマートウォーター(DP エキス原液)」の販売の事実があったとしても、上記写真に写されている製品には、人間とペットの兼用との記載があり、通常の消費者の常識的感覚からすると、当該製品が人間用として市場性があり、現に人間用として取引されているとは到底考えられない。同じ請求書上に記載されている「スマートウォーター」96点はペット用として販売されたものであるから、当事者の意思としては、それに付随して取引されている「スマートウォーター(DP エキス原液)」2点もまたペット用として販売されたと考えるのが自然である。 以上より、前商標権者が、本件審判予告登録日前3年以内に「スマートウォーター(DP エキス原液)」を製造、販売することにより、本件商標を使用した事実はない。 (エ)被請求人主張の事実は、具体的使用状況が明らかでなく、商標の「使用」にあたらない。 仮に、被請求人が主張する、前商標権者による上記各人間用「スマートウォーター」及び「スマートウォーター(DP エキス原液)」の製造又は販売の事実のうちに認められるものがあったとしても、それらは2lペットボトル入り人間用「スマートウォーター」は6本、500mlペットボトル入りの人間用「スマートウォーター」は24本、「スマートウォーター(DP エキス原液)」は2本と、いずれも身元(前商標権者との関係)が全く不明の、ごく限られた範囲の者への非常に少量の製造、販売であるから、その程度の製造、販売では、商取引の対象として不特定多数の需要者の需要に応えるべく市場の流通に供されていたとみるのは甚だ疑問であり、商標登録の不使用取消を免れ、商標の排他的使用を認めるに足りる実質を備えた商標の「使用」とはいえない。 (オ)被請求人主張の事実は、違法な使用であって、商標の「使用」にあたらない。 前商標権者によって製造、販売されたと主張される各製品のうち、人間用「スマートウォーター」については、商品容器自体に「腸内の状態を良い方向に変える」との記載があり(乙第10号証3頁目)、被請求人が顧客に対して頒布されたものであると主張するパンフレット(乙第11号証)において、商品の説明として、「腸内環境をよくするウォーターサプリメント」との記載がある。また、前商標権者は、「便臭が低減する機能性飲料」、「人間にも同じ効果があるので…」とPRしたと述べている(乙第3号証3頁)。さらに、動物・人間の兼用であると主張されている「スマートウォーター(DP エキス原液)」には、商品容器自体に「消臭目的」との記載がある(乙第4号証及び乙第5号証)。 昭和46年6月1日付け厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(甲第3号証)の中で、人が経口的に服用する物について「医薬品の範囲に関する基準」が定められており、製品が医薬品に該当するかどうか判断される。そして、医薬品とされる成分本質が配合または含有されていない場合であっても、その物の容器、包装、添付文書並びにチラシ、パンフレット、刊行物等の広告宣伝物あるいは演述によって、医薬品的な効能効果を標ぼうするものは、原則として医薬品とみなすとされている。そして、医薬品的な効能・効果等を表現することが薬事法違反になることは、動物用食品(ペットフード)においても同様である(農林水産省消費・安全局 畜水産安全管理課 薬事監視指導班「医薬品的な効能・効果等と判断されたペットフードの表示例」(甲第4号証)参照)。上記記載やPRは人や動物の身体の機能の改善について説明するものであり、人間用「スマートウォーター」又は「スマートウォーター(DP エキス原液)」が仮に被請求人が主張するように販売されていたとすると、人や動物の身体の機能に影響を及ぼすことが目的とされている物として、医薬品にあたる(薬事法第2条第1項第3号、東京都福祉保健局健康安全室薬事監視課監視指導係「薬事法に関わる不適表示・広告事例集」(甲第5号証)参照)。したがって、前商標権者が仮に被請求人が主張するように人間用「スマートウォーター」又は「スマートウォーター(DP エキス原液)」の製造、販売を行っていたとすると、かかる行為は、医薬品の製造販売にあたり(薬事法第2条第12項)、厚生労働大臣の許可及び当該製品の製造、販売について、厚生労働大臣の承認を得なくてはならなかったはずである(薬事法第12条第1項、第14条第1項)。前商標権者が前記承認を得ていない場合(承認を得ている旨の表示はどこにもない。)、上記各表現は、承認を受けていない製品につきその効能、効果又は性能に関する広告をしたものであり、違法である(薬事法第68条)。また、前記許可又は承認を受けずに医薬品である人間用「スマートウォーター」又は「スマートウォーター(DP エキス原液)」の製造、販売を行う行為は違法である。 登録商標の使用とは、適法な使用を言うのであって、法律に違背した使用行為をもって商標権者が不使用による商標登録の取消を免れて商標登録を維持することは許されない。 裁判例においても、東京高裁昭和35年4月11日判決(昭和35年(行ナ)第41号)は、散薬、錠薬を指定商品とする「バナヂン」なる商標を付した医薬品について、製造登録及び公定書外医薬品としての許可がなされたことがない旨の厚生省薬務局による証明書が提出された事案において、「いやしくも本件商標の指定商品の製造については法律による許可を得る必要がある…仮に法律に違背した製造、販売等がなされたとしても、右の行為は、登録商標の正当な使用として顧慮するにあたらない」と判示されている。また、知財高裁平成18年10月26日判決(平成18年(行ケ)第10190号)は、「商標法上の保護は,商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるところ,商標法第50条所定の登録商標の不使用取消審判制度の趣旨は,一定期間登録商標の使用をしない場合には,そのような信用が発生しないか,又は消滅してその保護すべき対象がなくなること及び不使用に係る登録商標に対して排他的独占的な権利を与えておく理由はなく,かつ,その存在により商標使用を希望する第三者の商標選択の余地を狭めることから,そのような商標登録を取り消すことにあると解される。このような制度趣旨に照らせば,その取消しを免れるために被請求人が証明しなければならない審判請求登録前3年以内の日本国内における当該商標の使用は,その使用自体が法的保護に値する正当な行為といえるものでなければならないというべきである」と述べた上、その使用を禁止する仮処分あるいは執行力ある判決に違反してなされた使用について、「そのような違法な状態のもとに信用の蓄積を認めることは許されず,かかる違法な使用は,商標法第50条にいう登録商標の使用に当たるということはできないと解するのが相当である。」と述べている。 以上より、被請求人が主張する前商標権者による人間用「スマートウォーター」又は「スマートウォーター(DP エキス原液)」の製造、販売があったとしても、かかる製造、販売が違法なものであり、あるいは「スマートウォーター」の標章の使用には違法な表示が伴っていたと解される以上、そのような違法な使用をもって、本件商標の「使用」の事実があったとはいえない。 (カ)結論 以上のとおり、被請求人が、本件審判予告登録前3年以内の前商標権者による本件商標が付された商品の製造、販売の事実を示すものとして請求した証拠は、いずれも上記期間内の本件商標使用の事実を示すものではない。したがって、被請求人の主張する、上記期間内の、前商標権者による本件商標の使用の事実はない。 よって請求人の本件商標登録取消審判請求は認められるべきものである。 3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。 (1)本件商標は、前記のとおり、平成16年6月18日に登録されたものである(乙第1号証)。 その後、本件商標権は、平成19年8月1日に、「青木電器工業株式会社」(以下「前商標権者」という。)から譲渡により被請求人に移転登録されている(乙第2号証)。 (2)前商標権者は、各種電気機器、自動車部品、金属機械機器の製造販売の事業と共に、昭和59年頃より、土壌微生物応用技術を生かした商品の開発をも手がけており、微生物活性土壌である「珪藻泥炭」を由来とする土壌を無菌抽出したものを原料とし、これを希釈して人間や動物が飲用する飲料として、「スマートウォーター原液」の名称で、平成14年11月より販売を開始した(乙第3号証)。 当該「スマートウォーター原液」2000ml容器の商品写真を乙第4号証として、また同原液の100ml容器の商品写真を乙第5号証として示す。なお、これら商品写真は、2006年(平成18年)7月10日に製造され製造元である前商標権者が保管していた商品の写真である。 これら商品には、やや図案化した「スマート ウォーター」の片仮名文字と「Smart Water」の欧文字が商標として使用されており、この使用商標が本件商標と同一性を有することは明らかである。 そして同商品のラベルには、「飲料時の注意」として、「本製品は原液です。飲用する場合は、人間で100倍?300倍、ペット用で(消臭目的)は200倍?250倍に希釈してご使用ください。」「希釈する飲料希釈液は各社ミネラルウォーター・お茶・ジュースで希釈してください。コーヒーへの添加は、コク味が変わる場合があります。」「お米炊き等にも使用できます。お味噌汁等の塩分調理に使用しますと塩分味覚が低減されますが塩分濃度の実質変化はありません」と表示されている。 すなわち、上記商品「スマートウォーター原液」は、ペット用の飲料でもあるが、人が飲む清涼飲料の原液であり、本件指定商品中の「清涼飲料」(特に「清涼飲料のもと」)であることが明らかである。 以上を要するに、本件商標は、その指定商品中「清涼飲料」(特に「清 涼飲料のもと」)に前商標権者によって使用されていた。 (3)次に、上記商品「スマートウォーター原液」が本件審判請求の予告登録日である平成19年8月7日前3年以内に販売されていた事実を立証するため、平成17年3月30日に前商標権者である「青木電器工業株式会社」が同社の顧客である喫茶店(ペット同伴可)宛に発行した「請求書」の写を乙第6号証として示す。なお、同請求書の写は、その宛先人がマスキングされて前商標権者から被請求人に交付されたものであるが、これは、前商標権者は本件商標権を被請求人に譲渡したことにより前記商品の販売を中止したことに伴い前記請求書の宛先人である顧客に多大な迷惑をかけた経緯があり同顧客の名称(氏名)を第三者に開示することにより懸念される更なるご迷惑をかけることはできないという事情によるものである(乙第3号証)。 同「請求書」には、「品名」欄に「スマートウォーター(DPエキス原液)」の記載がある。なお、当該品名「スマートウォーター(DPエキス原液)」の下段に記載されている品名「スマートウォーター」は、後述する原液を希釈したペット用の商品であるが、前記「スマートウォーター(DPエキス原液)」は、前述した前商標権者の商品中、100ml容器の「スマートウォーター原液」であり本件商標の指定商品中の「清涼飲料」である。 以上に述べたように、本件商標は、本件審判の予告登録前3年以内に日本国内において、その指定商品に前商標権者によって使用されていた。 (4)前商標権者は、前記「スマートウォーター原液」を販売するとともに、平成16年3月頃より、市場としての発展性があるペット用飲料水として、原液を希釈した「500mlペットボトル容器入りの飲料」(ペット用飲料)を「スマートウォーター」との名称で、販売を開始した。参考までに、この商品写真を乙第7号証として示す。 前記「請求書」(乙第6号証)において、品名「スマートウォーター(DPエキス原液)」の下段に記載されている品名「スマートウォーター」は、この「500mlペットボトル容器入りの飲料」である。 さらに前商標権者は、市場からの要請で、平成17年6月頃にはペット用の「2000mlペットボトル容器入りの飲料」の販売を開始した。 これら商品は、山梨県所在の「富士サンスイ株式会社」に製造委託し、同社が前商標権者提供の「スマートウォーター原液」を希釈して容器に充填していた。なお、同社は、富士山の伏流水を採水しミネラルウォーター等の飲料水の製造・ボトリングを業とする会社であるところ、前記製造委託に係る商品が「人間・動物ともに飲料可能な飲料水」としてボトリングしていた(乙第8号証及び乙第9号証)。 上記ペット用飲料の発売当初は、ペットショップ、DIY店或いは各種イベントで拡販員を使い主として対面販売で、「ボトルのラベルには『ペットのミネラルウォーター』と書かれており、ペット用のラベルデザインだが、市場的には、ペット(愛玩動物)と言えども、飼い主は人間の子供と同じ認識で、人間も飲用して良いミネラルウォーター」として展開した。そしてデモ販売時には飼い主も飲めるミネラルウォーターとして紹介し、デモ会場ではペットに飲ませると同時にペットの飼い主にも試飲してもらい、味とノドゴシを確かめてもらって「便臭が低減する機能性飲料」「人間も同じ効果があるので飼い主さんも一緒に飲んではいかがですか」とPRして販売を展開していた(乙第3号証)。 (5)その後、前記商品「スマートウォーター」愛好家から、屋外で飲用する場合、ペット用のラベルデザインのボトル容器で飲むことは抵抗があるとの声があり、前商標権者は、平成17年3月頃より同じく「スマートウォーター」の名称で、人間用のラベルデザインの「500mlペットボトル容器入りの清涼飲料」の受注・販売を開始した。 この人間用のラベルデザインの「500mlペットボトル容器入りの清涼飲料」の商品サンプル写真を乙第10号証として示す。この商品ラベルには、前記「スマートウォーター原液」及びペット用「スマートウォーター」のラベルと周囲の表示を除いて同様に、やや図案化した「スマート ウォーター」の片仮名文字と「Smart Water」の欧文字が商標として使用されている。 当該商品の販売方法は、ペット用飲料を購入されたペットの飼い主に対して、「飼主さん用」と表記したパンフレット(乙第11号証)や注文書(乙第12号証)を、一部配送する商品の中に同封する方法で、商品を案内し、販売していた。そして、お客様からの要望もあり、平成17年6月頃から、「2Lペットボトル容器入りの清涼飲料」の販売を開始した(乙第3号証)。 なお、これら商品は、少量販売であったため製造委託することなく前商標権者が前記ペット用飲料のラベルを自社で制作した人間用のものに貼り替える方法で製造し販売していた(乙第3号証及び乙第8号証)。 乙第13号証として示す請求書において、品名「スマートウォーター」とあるのは、この人間用の「2Lペットボトル容器入りの清涼飲料」であり、この請求書は平成17年8月3日に前商標権者から個人の顧客に発行されたものである。同請求書の写は、その宛先人がマスキングされて前商標権者から被請求人に交付されたものであるが、これは、前述したのと同様の事情による(乙第3号証)。 上述した人間用清涼飲料の商品販売の際の「請求書」や「領収書」の控書類は前記請求書の他は紛失している(乙第3号証)ので提出できないが、人間用のラベルデザインの前記商品「500mlペットボトル容器入りの清涼飲料」(乙第10号証)が販売された事実を示す一例として、東京都練馬区所在の「中村政弘」氏が平成17年5月頃に同商品を前商標権者から購入したことを示す同氏の「陳述書」を乙第14号証として提出する。 以上に述べたところから明らかなように、本件商標は、前述した「スマ一トウォーター原液」(清涼飲料のもと)の他にも、それを希釈した「清涼飲料」について、本件審判の予告登録前3年以内に日本国内において、前商標権者によって使用されていた。 (6)したがって、本件商標は、その指定商品について、日本国内において本件審判請求の予告登録前3年以内に、その予告登録前の商標権者によって使用されていたものであるから、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきではない。 4 当審の判断 (1)被請求人の提出に係る証拠についてみれば、以下の事実が認められる。 (ア)乙第2号証の商標登録原簿によれば、本件商標権は、平成19年8月1日に、前商標権者である「青木電器工業株式会社」から譲渡により被請求人に移転登録されていることが認められる。 (イ)乙第3号証は、前商標権者の事情説明書と認められるところ、前商標権者は、各種電気機器、自動車部品、金属機械機器の製造販売の事業と共に、昭和59年頃より、土壌微生物応用技術を生かした商品の開発をも手がけており、微生物活性土壌である「珪藻泥炭」を由来とする土壌を無菌抽出したものを原料とし、これを希釈して人間や動物が飲用する飲料原液(以下「使用商品」という。)として、「スマートウォーター原液」の名称で、平成14年11月より販売を開始したと記載されていることが認められる。 (ウ)乙第4号証及び乙第5号証は、使用商品の写真と認められるところ、該使用商品のラベルには、名称:スマートウォーター原液、賞味期限:2007年7月9日(製造日2006年7月10日)、製造元:青木電器工業株式会社及び飲食時の注意として「本製品は原液です。飲用する場合は、人間で100倍?300倍、ペット用で(消臭目的)は200倍?250倍に希釈してご使用ください。」「希釈する飲料希釈液は各社ミネラルウォーター・お茶・ジュースで希釈してください。コーヒーへの添加は、コク味が変わる場合があります。」等と表示されていることがいずれも認められ、また、該ラベルには、やや図案化した「スマート ウォーター」の片仮名文字と「Smart Water」の欧文字(以下「使用商標」という。)が表示されており、該使用商標は本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということができる。 そして、該使用商品は、前記ラベルに表示されている如く、ペット用の飲料でもあるが、人が飲む清涼飲料の原液であり、本件商標の指定商品中の「清涼飲料のもと」であるとみるのが相当である。 さらに、該使用商品の写真の撮影日は、本件審判の請求の登録後の平成19年9月27日であるとしているが、該使用商品は、前記ラベルに賞味期限:2007年7月9日(製造日2006年7月10日)と表示されていることからも、本件審判の請求の登録前3年以内に製造され、販売されたと推認し得るものといえる。 (2)使用商品について 使用商品は、人が飲む清涼飲料の原液を含むものであり、該原液が本件商標の指定商品中の「清涼飲料のもと」であるといえるから、本件審判の取消請求に係る指定商品の範疇に属する商品であると認められる。 (3)以上の認定事実を総合すると、前商標権者は、少なくとも、本件審判の請求の登録日(平成19年8月7日)前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件商標の指定商品に含まれる使用商品について使用をしていたことを証明したものと認めることができる。 (4)請求人は、被請求人提出の写真(乙第4号証及び乙第5号証)は、本件審判予告登録後の平成19年9月27日に撮影されたものであり、撮影された製品が同請求書に記載された「スマートウォーター(DP エキス)原液」と同一であることを示す証拠はない。また、撮影された製品の製造日欄には平成18年7月10日と記載されているものの、かかる点をもって、撮影された同製品が真に製造日欄記載の日に製造されたものであることを示すものでもない旨主張している。 しかしながら、前記したとおり、使用商品は、本件審判の請求の登録前3年以内に製造され、販売されたと推認し得るものといえるから、この点に関する請求人の主張は採用することはできない。 (5)被請求人主張の本件登録商標の使用の事実は、違法な使用であって、商標の「使用」にはあたらないとの主張について 請求人は、「使用商品のラベル(乙第4号証、乙第5号証)に記載された「消臭目的」及び商品販売のためのパンフレット(乙第11号証)等に記載された商品説明等は薬事法に違反するものである。したがって、その商標の使用を違法である。」旨主張するが、請求人の提出にかかる証拠(甲第3号証ないし同5号証)からは、被請求人の本件商標の使用が直ちに違法であるとは言い難いものであるから、請求人のこの主張についても採用することができない。 (6)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-12 |
結審通知日 | 2008-03-14 |
審決日 | 2008-03-26 |
出願番号 | 商願2003-88730(T2003-88730) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(Y32)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 栄二 |
特許庁審判長 |
伊藤 三男 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 藤平 良二 |
登録日 | 2004-06-18 |
登録番号 | 商標登録第4779320号(T4779320) |
商標の称呼 | スマートウオーター、スマート |
復代理人 | 宮内 知之 |
代理人 | 石田 良子 |
代理人 | 田中 克郎 |
復代理人 | 福島 栄一 |
代理人 | 志村 直子 |
復代理人 | 菅 尋史 |