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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z36 |
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管理番号 | 1181226 |
審判番号 | 取消2007-300017 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2007-01-09 |
確定日 | 2008-07-07 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4372475号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4372475号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4372475号商標(以下「本件商標」という。)は、平成10年12月10日に登録出願され、「EXCELSIOR」の欧文字を横書きしてなり、第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供」を指定役務として、同12年3月31日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁の理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 1 請求の理由 〔取消理由〕 本件商標は、その指定役務について継続して3年以上商標権者及び使用権者のいずれによっても日本国内において使用された事実がない。したがって、その登録は商標法第50条第1項の規定によって取り消されるべきである。 2 弁駁の理由 (1)被請求人は、被請求人の通常使用権者が本件商標を使用している事実として、乙第1号証及び乙第2号証を提出している。 しかしながら、乙第1号証及び乙第2号証に示された事実は、商標法第50条第2項に規定する日本国内における商標の使用ではない。また、被請求人は、本件商標を使用していない正当な理由を示していないので、本件商標は請求の趣旨通りにその登録を取り消されるべきである。 (2)被請求人は、本件商標の使用事実を示す証拠として、ウェブページによる広告を提出している。確かに、ウェブページを利用した広告そのものは商標の使用に該当するという一般論については、請求人もこれを否定するものではない。しかしながら、商標法第50条第2項で求められている証明は、「日本国内」における使用である。 この点については、知的財産高等裁判所の平成17年(行ケ)第10098号審決取消請求事件判決(旧事件番号 東京高裁平成16年(行ケ)第397号)が次の通り明確に判断している(甲第3号証)。 (ア)被告は、平成8年12月20日から現在に至るまで、ウェブページによって指定役務である『飲食物の提供』に関する広告を行っている(乙8、9)と主張する。 (イ)確かに、証拠(乙8、9、24)によれば、被告は、インターネットのウェブページ(本訴乙8・審判乙3、本訴乙9・審判乙4)において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示してピザに関する広告を行い、フランチャイジーの募集を行っていること、上記ウェブページには日本からもアクセスが可能であること、上記ウェブページは、日本の検索エンジン『MSNサーチ』、『アップル・エキサイト』等において『papajohns』、『papajohn’s』の語で検索した場合に直ちに検索できる(本訴乙24・審判乙5、6)ことが認められる。 (ウ)しかし、上記ウェブページは、米国サーバーに設けられたものである上、その内容もすべて英語で表示されたものであって、日本の需要者を対象としたものとは認められない。上記ウェブページは日本からもアクセスが可能であり、日本の検索エンジンによっても検索可能であるが、このことは、インターネットのウェブページである以上当然のことであり、同事実によっては上記ウェブページによる広告を日本国内による使用に該当するものということはできない。 被告は、電磁的方法による広告に関する商標法改正は、商標の『使用』にこれが含まれることを明確にするためのものであり、同改正法施行前の広告行為にも当然に適用されると主張する。確かに、ウェブページによる広告は、平成14年法律第24号により改正された商標法2条3項8号のいう、『広告』を『内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為』に該当するものということができる。しかし、同行為を日本国内による使用に該当するものということができないことは上記のとおりであるから、被告の上記主張は理由がない。」 (3)上述した知財高裁判決を本件にあてはめると、被請求人が提出した乙第1号証及び乙第2号証、何れもすべて英語で表示されていること、及びそのウェブページは日本国外のサーバーに設けられていること、日本の需要者を対象としたものとは認められないことは明らかであり、上記知財高裁判決に示された理由がそのまま該当するものである。なお、被請求人は、乙第2号証の一部に「Japan」という英語が存在することを示唆しているようであるが、この部分は、「国際的な資金、これらの資金は主として米国外における発展市場に設立された公平な有価証券に対して投資することによって、成長を求める。米国外とは、西ヨーロッパ、日本、オーストラリア、ニュージーランド及びカナダである。」と記載されているもので、日本は被請求人の投資先であることが示されているだけである。 したがって、乙第2号証に「Japan」の英語が存在することは、なんら使用の事実を示すものではない。 (4)さらに、乙第1号証及び乙第2号証が日本における需要者を直接の対象としていないことは、例えば乙第1号証第4頁において、ドル立て広告しか行っていない($10millionと表記)ことからも明らかである。 なお、請求人は自ら、乙第1号証及び乙第2号証を始めとする被請求人のウェブページを精査したが、日本の顧客を対象としている記載は見当たらず、税金(Tax)の対策について広告した部分も、米国の税制を前提としたもののみであった。 (5)結論として、被請求人は商標法第50条第2項に規定する使用の事実の証明を行っておらず、かつ、使用していないことの正当理由も明らかにしていない。ついては、請求の趣旨とおりの審決を求めるものである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 〔答弁の理由〕 (1)請求人は、本件商標は、その指定役務について継続して3年以上日本国内において、商標権者及び使用権者のいずれによっても使用された事実がないので、本件商標の登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべき旨主張している。 (2)しかしながら、本件商標は、日本国内において本件審判の請求登録前3年以内に、本件指定役務について使用されており、本件審判の請求は成り立たないものであるので、以下に書証を以って、この点を立証する。 (2-1)本件商標の使用状態の概要 本件商標権者(審判被請求人)であるユナイテッド ステイツ トラスト カンパニー,ナショナル アソシエーションは、1853年に設立され、アメリカ合衆国ニューヨーク州に所在する金融関係業務を広く行っている会社である。当該被請求人会社とその業務において密接な関連性を有するExcelsior Fundsによって、本件審判の請求登録前3年以内に日本国内で、本件商標「EXCELSIOL」又はこれと社会通念上同一の商標の下、所謂投資信託サービスが提供されている。被請求人は、本件商標の使用証拠として、乙第1号証及び乙第2号証を提出する。 (2-2)乙第1号証 乙第1号証は、前述のExcelsior Fundsに係るウェブサイトの写しである。本ウェブサイトより、Excelsior Fundsなる投資運用ファンドが、被請求人会社と業務上密接な関連性を有していると共に、本件商標と社会通念上同一の商標「Excelsior」を使用して投資信託等を中心とした金融サービス全般を提供していることが窺い知れるものである。 Excelsior Fundsなる投資運用ファンドと被請求人会社とがその業務において密接な関連性を有しており、このような関係は、商標権者と通常使用権者との関係に近似していることに鑑みると、Excelsior Fundsはその商標の使用に関しては、被請求人の通常使用権者であると言い得るものである。 また、本ウェブサイト上で使用されている「Excelsior」なる商標は、本件商標「EXCELSIOR」の語頭の文字以外を小文字にして表したものであり、両者が社会通念上同一の商標であることは明らかである。 したがって、乙第1号証からは、被請求人の通常使用権者と同視され得るExcelsior Fundsによって、本件商標と社会通念上同一の商標である「Excelsior」を付した金融サービス全般が広く提供されているという事実が認識されるものである。 (2-3)乙第2号証 乙第2号証も、Excelsior Fundsに係るウェブサイトの写しであり、当該投資運用ファンドに係る「Excelsior」商標を付した金融サービスは、アメリカ合衆国のみならず世界各国で提供されており、その中にわが国も含まれていることが示されている。 このようなウェブサイトは、わが国からも当然にアクセスすることが可能であり、ウェブサイトを介した広告は、商標法第2条第3項第8号に規定する「役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものである。なお、本ウェブサイトは外国のサーバーに設けられ、英語のみを以って表されているが、外国のサーバーに設けられたウェブサイトを介した広告の行為が商標法2条第3号第8号に規定する標章の使用から積極的に除外されておらず、又インターネット通信の発達した今日において、ウェブサイト上の商品・サービスに関する広告を閲覧する際に、需要者は、特段、それが外国のサーバーに設けられているかという点に注意を払うものでもない。更には、わが国の需要者の英語水準をも考慮すると、乙第1号証及び乙第2号証に示されたウェブサイトが外国のサーバーに設けられ、英語のみで表されているという事実のみを以って、これらの広告が我が国において、或いは我が国の需要者向けに行われているものではないと判断されることがないことは明らかである。 (3)上述の状況を総合的に勘案すると、乙第1号証及び乙第2号証に示されるとおり、被請求人の通常使用権者と同視され得るExcelsior Fundsは、本件商標と社会通念上同一の商標である「Excelsior」を本件指定役務中に含まれる金融サービスについて、我が国において本件審判の請求登録前3年以内に使用していると言い得るものである。 以上のとおり、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標は、商標権者(通常使用件者)によって、本件審判の請求登録前3年以内に日本国内において、本件商標登録に係る指定役務について使用されているのであるから、請求人の主張は理由がないものである。よって、本件審判については答弁の趣旨とおりの審決を求めるものである。 なお、被請求人は、本件商標の使用の事実を示す追加資料を収集しているところであるが、これらの資料を近日中に追って提出する用意がある。 第4 当審の判断 商標の不使用による登録取消の審判請求があった場合、商標法第50条第2項本文は、「前項の審判の請求があった場合においては、その審判請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない」としているから、同項にいう「使用」は日本国内における使用でなければならないものである。 そこで、被請求人の通常使用権者が本件商標を使用しているとして提出された乙第1号証及び乙第2号証をみるに、これらは、インターネットのウェブページにおいて、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示して投資信託を中心とした金融サービス全般を提供していることが認められる。 しかしながら、これら乙第1号証及び乙第2号証がウェブページによる広告であるとしても、いずれも本件取消審判の予告登録日後の2007年5月9日及び2007年5月10日に該ウェブページが検索打ち出しされたものであり、かつ、上記ウェブページは、米国サーバーに設けられたものである上、その内容もすべて英語で表示されたものであって、日本の需要者を対象としたものとは認められない。 被請求人は、上記ウェブページは日本からもアクセス可能であり、日本の検索エンジンによっても検索可能である旨主張するが、そのことは、インターネットのウェブページである以上当然のことであり、上記ウェブページが日本からもアクセス可能であることをもって、直ちに日本国内による使用に該当するものということはできない。 してみれば、本件商標は、その指定役務について審判請求の登録前3年以内に日本国内において被請求人又は通常使用権者によって使用されたと認めることはできない。 また、被請求人が本件商標の使用をしていないことについて、正当な理由があったものとは認めることはできない。 なお、被請求人は、前記第3の答弁書において、「本件商標の使用の事実を示す追加資料を収集しているところであるが、これらの資料を近日中に追って提出する用意がある。」旨述べているが、前記「第2 2」の弁駁書送付後も第2答弁書の提出がない。 したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-02-07 |
結審通知日 | 2008-02-14 |
審決日 | 2008-02-26 |
出願番号 | 商願平10-105430 |
審決分類 |
T
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31・
1-
Z
(Z36)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池田 佐代子 |
特許庁審判長 |
中村 謙三 |
特許庁審判官 |
津金 純子 小畑 恵一 |
登録日 | 2000-03-31 |
登録番号 | 商標登録第4372475号(T4372475) |
商標の称呼 | エクセルシアー、エクセルシオー、エクセルシオール |
代理人 | 濱田 俊明 |
代理人 | 高見 香織 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 本宮 照久 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 臼井 伸一 |