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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 1031825 |
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管理番号 | 1181159 |
審判番号 | 取消2007-300749 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2007-06-08 |
確定日 | 2008-07-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2330425号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2330425号商標の指定商品中、第3類「全指定商品」、第18類「全指定商品」及び第25類「全指定商品」については、その登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第2330425号商標(以下、「本件商標」という。)は、「コイーバ」及び「COHIBA」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成元年4月6日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同3年8月30日に設定登録されたものである。その後、同13年4月3日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、同年10月17日、第3類「つけづめ,つけまつ毛」、第6類「金属製のバックル 」、第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,マニキュアセット」、第10類「耳かき」、第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」、第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」に書換登録がなされたものである。 2 請求人の主張 請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 (1)請求の理由 本件商標の指定商品中、第3類の全指定商品、第18類の全指定商品及び第25類の全指定商品については、商標法第50条第1項に該当するものであるから、同規定によって当該登録は取り消されるべきものである。 請求人が調べたところ、本件商標は設定登録を受けてから既に3年以上が経過しているにもかかわらず、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標が、本件審判請求に係る指定商品に関し、本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、被請求人によって商標法第2条第3項各号に規定する使用がなされた事実を発見することはできなかった。 また、商標登録原簿には使用権者に係る記録は存在しないから、専用使用権者が本件商標に存在しないことは、商標法第30条第4項で準用する特許法第98条第1項第2号の規定から明らかである。 更に、登録された通常使用権者が存在しないことは甲第2号証から明らかであり、上記使用調査を行った際に、通常使用権者が存在する事実を確認することができなかったことから、本件商標について未登録の通常使用権者も存在しないものと信じる。これらの事実に加え、地震、台風その他の天災地変、類焼、放火、破壊その他の第三者の故意又は過失、法令による全面禁止、許認可手続の遅延その他の公権力の発動等の理由で、被請求人等が本件審判請求に係る各指定商品について、本件商標と同ー又は社会通念上同一の商標を使用できなかったという事情が存在することを請求人は知らないし、本件審判請求に係る各指定商品の性質に鑑みて、このような事情による3年間もの不使用は通常考えられないから、本件商標について商標法第50条第2項但書の規定が適用されるとは考えられない。 (2)弁駁 「コイーバ/COHIBA」のタグが付いたサスペンダーの写真(乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証、乙第10号証)について、乙第1号証の1ないし3のうち、乙第1号証の3のサスペンダーに注目すると、包装容器には、多少ぼけてはいるものの、円からはみ出した大きな角を持つトナカイの絵が表示されており、そのすぐ下に「ALBERT THURSTON」の文字が読み取れる。よって、乙第1号証のサスペンダーは、ALBERT THURSTON社製のものと推察される。 次に、乙第3号証の3にも「ALBERT THURSTON」の文字がサスペンダーの包装容器に表示されているので、乙第3号証のサスペンダーもALBERT THURSTON社製のものと推察される。 一方、乙第5号証のサスペンダーの写真には「ALBERT THURSTON」の文字は確認できないが、請求人提出に係る甲第3号証のALBERT社のサスペンダーをみると、先端部のボタンループが 2枚の葉をアルファベット文字の「X」のように斜めに交差させたような形態的特徴が認められ、乙第1号証及び乙第3号証と同様に、この特徴的形態が乙第5号証のサスペンダーにも認められる。該特徴はALBERT社のサスペンダーに共通するものである(甲第3号証)。 さらに、乙第9号証のたな卸しリストの3頁目の商品名の欄の上から9行目に「サウストン サスペンダー」の文字が表示され、次の4頁目では、ブランド名の欄の1行目に「サウストン」の文字が認められる。被請求人の内部書類からも「ALBERT THURSTON」社のサスペンダーを扱っていることが示されているから、乙第5号証のサスペンダーも、「ALBERT THURSTON」のサスペンダーと推察される。 被請求人の主張及び上記の各証拠から、被請求人サスペンダーはマルゼン商事から仕入れた英国製の「ALBERT THURSTON」社のものであり、それに本件商標を表示したタグを付していると解される。このような場合、タグは該サスペンダーが店頭に陳列される際に付されると解されるので、本件商標のサスペンダーに係る使用を立証するには、被請求人顧客に該サスペンダーを販売したことを示す証憑書類が必要と考える。このような観点から、乙第9号証は店頭に並ぶ前のサスペンダーも当然含まれていると思われ、これらの商品は本件審判事件と何ら関係のないものであるから、被請求人のタグが付される以前の商品を含む書類は、本件取消審判事件における使用証拠としては不適切であることは明らかである。 乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証、乙第10号証には、登録商標と同一商標を表示したタグを付けたサスペンダーが写っているが、各証拠からは時期も場所も特定することはできない。そのため、被請求人は乙第8号証のチラシを提出して該証拠に係る場所と時期を証明しようとしているが、乙第8号証に表示された商標は筆記体のもので、本件商標と同一でも社会通念上同一の範囲にもない。登録商標の使用を立証する目的で提出する書類は、少なくとも書類に表示されている商標が登録商標と同一の範囲内でなければならないはずであるから、乙第8号証の商標は登録商標と同一性がない以上、価格の一致でもって乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証、乙第10号証との関連性を肯定することは無理である。そもそも商品の価格は、商品番号と異なり、物価の上昇や競合製品との価格競争あるいは需給関係の変化といった様々な外部要因で変動するものであり、価格の一致を商品の同一性の根拠にするのは聞いたことがない。乙第8号証は登録商標と同一性のない、本件審判の使用証拠として証拠能力を根本的に欠くものであるから、使用証拠として乙第8号証を提出すること自体、失当である。 また、乙第8号証は社販オーダー会とあり、社販とは社員を対象とした販売を意味することは、インターネットのGoogleで「社販」を検索すれば簡単に確認できる。被請求人の組織内部での販売行為に本件商標を使用したとしても、該商標は商標として機能することはないのであるから、商標法第2条第3項に係る使用に該当しないことは、今更指摘するまでもない。乙第8号証は商標の使用にすら該当しない、不使用取消審判において何ら価値のない書類である。 そして、乙第2号証、乙第4号証、乙第6号証、乙第7号証のオーダーフォームは乙第8号証の社員向け販売の際に作成された書類であるから、乙第8号証が示す行為が商標の使用に該当しない以上、商標の使用に該当しない行為の存在を証明する書類に過ぎず、商標の使用証拠にはならない。 このように、被請求人は商標法第2条第3項の使用に該当しないことが明らかな資料を提出しており、販売がなされれば必ず作成され、税法あるいは商法において7年又は10年の保管義務がある証憑書類を提出していないことも考え合わせると、乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証、乙第10号証の各写真は3年以内のものではない可能性が濃厚である。 例えば、乙第8号証に表示されている日付である9月25日(月曜日)に着目すると、被請求人によれば、被請求人は平成2年4月から都内において「COHIBA」なる店舗でスーツ等の小売を開始し、平成13年12月から現在の店舗の「crossover」が業務を引き継いでいることになるが、平成2年から平成18年までの間で9月25日が月曜日の年は、平成7年、平成12年、平成18年の3回存在する。被請求人の直営店「COHIBA」が平成13年11月まで存続していることと、乙第12号証の「MEN‘S CLUB」(1990年10月)には、乙第8号証の「COHIBA」と同じ態様の商標が表示されていることを考え合わせると、乙第8号証は平成18年9月25日ではなく、平成7年か平成12年の9月25日である可能性は十分にある。 この様に解することは、被請求人が店舗名を「COHIBA」から「crossover」に変更しているにもかかわらず、「COHIBA」を使用し続けることが不自然なことと整合する。被請求人によれば、平成2年4月から都内において「COHIBA」なる店舗でスーツ等の小売を開始し、平成13年12月から現在の店舗の「crossover」が業務を引き継いでいるとし、併せて、直営店「COHIBA」は徐々にこだわりの商品を求めるこだわりの客から贔屓される店となり、それとともに宣伝広告をほとんど行わなくなっている、という。また、被請求人は、平成19年6月25日付の取消2006-31046に係る審判事件答弁書において、被請求人は店舗を数次移転し、平成13年12月から現在に至るまで、引き続き現在の世田谷区下馬二丁目にて「crossover」の商号の店舗で・・(中略)・・小売販売している、と述べている。被請求人のこれらの説明によれば、「COHIBA」なる直営店は営業場所を転々とした後に現在の店舗名に名称を変更し、この間、広告活動をしていないことになる。 一般的に営業場所を変更したときは、移転の事実を知らせる上でも広告を行うものである。そうしなければ、客が来店できなくなると同時に、業務上の信用を獲得する上で非常に不利にもなるからである。被請求人の直営店は広告活動を行っていた時期でも、提出された証拠から積極的な宣伝活動をしていたとは認められず、営業場所を転々としながらも広告を行っていなかったことから、徐々に贔屓されるようになったという被請求人の主張は極めて不自然で、矛盾しているといわざるを得ない。被請求人は「COHIBA」に業務上の信用が獲得できていると主張することで、新店舗においても「COHIBA」の商標を継続して使用する動機があるといいたいのかもしれないが、「COHIBA」が業務上の信用を蓄積してきたは思えない行動を被請求人自身がとっているから、被請求人が新店舗において「COHIBA」の商標を新店舗において6年も継続使用しているというのは不自然である。 この見解を裏付けるように、乙第11号証の各写真には、被請求人の店舗において「crossover」の表示が至るところに示されている様子が写し出されており、その一方で、「COHIBA」の表示は全く見当たらず、「COHIBA」のブランドを扱っている旨の表示もない。被請求人は現店舗でも業務を承継している旨を述べているが、「COHIBA」の業務を承継しているといっても、英国製の服やアクセサリーの販売業務を現在の店舗名で業務を継続することはごく普通にみられるものであり、被請求人の現店舗において「crossover」の表示を積極的に行う一方、「COHIBA」の表示や「COHIBA」ブランドを引続いて扱っている旨の表示を全く行っていない事実からすれば、被請求人は「COHIBA」時代の業務を承継していないか、承継したとしても「COHIBA」の商標に代えて採用した新しい名称の下で英国製商品を販売していると解するのが相当である。 この他、被請求人は乙第11号証及び乙第12号証も提出しているが、乙第11号証は「crossover」の営業事実を示すものでしかないから、本件商標の使用にはなり得ず、乙第12号証は1990年10月号の雑誌で使用証拠としての適格性を欠くものであるから、被請求人の使用の立証に何ら貢献するものではない。 被請求人の事業態様に鑑み、登録商標は被請求人の直営店の顧客に対する販売の段階で商品に付されると解されるから、店舗に並べられる前の商品は、「crossover」のタグを付されて店頭に並ぶものも区別されずに含まれていると考えられ、そのような在庫資料である乙第9号証は本件商標の使用証拠としての適格性はない。乙第8号証、乙第2号証、乙第4号証、乙第6号証、乙第7号証も商標の使用には該当しない行為に関連する書類であり、乙第11号証は本件商標の使用と関係のない事実を示すものであり、乙第12号証は17年前の雑誌の写しに過ぎない。 残る乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証、乙第10号証の写真が唯一、本件商標と本件審判に係る商品の両方が明示されているが、時期や場所を特定することができず、被請求人店舗が「COHIBA」であった頃のものであると疑う合理的理由が存在することから、証拠能力を著しく欠くものである。 このように、請求人が乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証、乙第10号証について3年以内のものではないという疑念をもつ理由は、被請求人が3年以内の「COHIBA」に係る証憑書類を提出していないからであり、被請求人は17年前の雑誌の写し(乙第12号証)を提出しているのであるから、最低でも7年の保管義務のある書類をなぜ提出できないのか、提出できて当然の書類を提出しない理由について、被請求人に説明を強く求める次第である。 3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)請求人は、本件商標の指定商品中「第3類の全指定商品、第18類の全指定商品及び第25類の全指定商品」についての登録は取消されるべきものである旨を主張しているが、この請求人の主張は何ら理由がない。 (2)被請求人は、本件審判請求の登録日前3年以内に、少なくとも、平成16年6月から現在まで引続き、東京都世田谷区下馬二丁目27番13号アビタグリーン74の一階にて被請求人の直営店である商号「crossover」(乙第11号証の1ないし3)の店舗において、本件審判の請求に係る指定商品のうち、商品「ズボンつり」を販売しており、この商品「ズボンつり」は、件外東京都千代田区内神田一丁目17番4号マルゼン商事株式会社が英国から輸入し、被請求人はこのマルゼン商事株式会社から「ズボンつり」を仕入れたものである。そして、この商品「ズボンつり-1」(乙第1号証の1ないし3)、「ズボンつり-2」(乙第3号証の1ないし3)及び「ズボンつり-3」(乙第5号証の1ないし3)の包装箱に本件商標と実質的に同一の商標を表示した値札を取り付けて小売販売しているものである(証人成田武博の証人尋問により立証する。)。 ア 被請求人は、平成2年4月から東京都港区西麻布にて直営店の商号「COHIBA」の店舗で商品「スーツ」を主とし、「ズボンつり」等の小売販売を開始した当初には、こだわりの商品を販売するこだわりの店として雑誌の記事(乙第12号証)で紹介され、雑誌の広告(乙第12号証)も行っていたことから、直営店「COHIBA」は、徐々にこだわりの商品を求めるこだわりの客から贔屓される店となり、それとともに、広告宣伝をほとんど行わなくなっている。 そして、平成13年12月から、この「COHIBA」の業務を現在の直営店の商号「crossover」(東京都世田谷区下馬二丁目27番13号アビタグリーン74の一階)の店舗で引き継ぎ、現在まで引き続いて営業している。 例えば、「COHIBA/恒例秋冬物社販オーダー会のお知らせ」(乙第8号証)には、商標「COHIBA」が使用されている。 イ 直営店「crossover」で販売している商品「ズボンつり-1」の包装箱には、「コイーバ」と「COHIBA」とを上下二段に表示した商標を裏面に表示した値札が取り付けられている。 すなわち、直営店「crossover」で販売している商品「ズボンつり-1」の包装箱に付した値札には、写真(乙第1号証の1ないし3、乙第10号証の1ないし4)に示すように、値札の裏面に「コイーバ」と「COHIBA」とを上下二段に表示した商標が表示され(乙第1号証の1、乙第1号証の3、乙第10号証の1)、この値札の裏面に表示した商標は、本件商標と実質的に同一の商標である。 そして、商品「ズボンつり-1」の包装箱に付した値札の表面には、写真(乙第1号証の2)に示すように、この商品「ズボンつり-1」の価格「税込 ¥7,000/(本体価格 ¥6,666)」が表示されている。 また、この価格「税込 ¥7,000/(本体価格 ¥6,666)」中の「本体価格¥6,666」と、ORDER FORM(乙第2号証)の「PRICE」欄の「¥6,666」とは同一価格である。 そして、上記ORDER FORM(乙第2号証)の左上端及び下端に「PAS CHER.COHIBA」と、右上端「DATE」欄に「2006.9.25」と、「MODEL No.」欄に「サスペンダー」と記載され、さらに、右下端に「『crossover』/〒154-0002 東京都世田谷区下馬2-27-13/アビタグリーン74 1F/TEL/FAX03-3418-2739」と記載されている。 なお「サスペンダー」と、「ズボンつり」とは同義である(岩波書店広辞苑第5版)。 そして、「COHIBA/恒例秋冬物社販オーダー会のお知らせ」のチラシ(乙第8号証)中の「日時:9月25日(月曜日)」及び「・サスペンダー ¥7,350?」の記載と、前記ORDER FORM(乙第2号証)の記載とから、上記商品「ズボンつり-1」(乙第1号証の1ないし3)が、平成18年9月25日に被請求人の社内で催された秋冬物社販オーダー会で販売されたことは明らかである。 上記のことから、直営店「crossover」で販売されている、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている値札が取り付けられた商品「ズボンつり-1」(乙第1号証の1ないし3)が、平成18年9月25日に、被請求人の社内で催された秋冬物社販オーダー会で販売されたことは明らかである。 そして、商品「ズボンつり-1」(乙第1号証の1ないし3)と、ORDER FORM(乙第2号証)に記載された商品とが同じ商品であることは、直営店「crossover」の店舗責任者成田武博の証人尋問により立証する。 ウ 直営店「crossover」で販売している商品「ズボンつり-2」の包装箱には、「コイーバ」と「COHIBA」とを上下二段に表示した商標を裏面に表示した値札が取り付けられている。 すなわち、直営店「crossover」で販売している商品「ズボンつり-2」の包装箱に付した値札には、写真(乙第3号証の1ないし3、乙第10号証の1ないし4)に示すように、値札の裏面に「コイーバ」と「COHIBA」とを上下二段に表示した商標が表示され(乙第3号証の1、乙第3号証の3、乙第10号証の1)、この値札に表示した商標は、本件商標「コイーバ/COHIBA」と実質的に同一の商標である。 そして、商品「ズボンつり-2」の包装箱に表示した値札の裏面には、写真(乙第3号証の2)に示すとおり、この商品「ズボンつり-2」の価格「税込 ¥8,500/(本体価格 ¥8,095)」が表示されている。 また、この価格「税込 ¥8,500/(本体価格 ¥8,095)」中の「本体価格¥8,095」と、ORDER FORM(乙第4号証)の「PRICE」欄の「¥8095」とは同一価格である。 そして、上記ORDER FORM(乙第4号証)の左上端及び下端に「PAS CHER.COHIBA」と、右上端「DATE」欄には「2006.9.25」と、「MODEL No.」欄に「サスペンダー」と記載され、さらに、右下端に「『crossover』/〒154-0002 東京都世田谷区下馬2-27-13/アビタグリーン74 1F/TEL/FAX03-3418-2739」と記載されている。 また、上述の「COHIBA/恒例秋冬物社販オーダー会のお知らせ」のチラシ(乙第8号証)の記載と、前記ORDER FORM(乙第4号証)の記載とから、上記商品「ズボンつり-2」(乙第3号証の1ないし3)が、平成18年9月25日に被請求人(株式会社グリーンスタンプ)の社内で催された秋冬物社販オーダー会で販売されたことは明らかである。 上記のことから、直営店「crossover」で販売されている、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている値札を取り付けられた商品「ズボンつり-2」(乙第3号証の1ないし3)が、平成18年9月25日に、被請求人の社内で催された秋冬物社販オーダー会で販売されたことは明らかである。 なお、商品「ズボンつり-2」(乙第3号証の1ないし3)と、ORDER FORM(乙第4号証)に記載された商品とが同じ商品であることは、直営店「crossover」の店舗責任者成田武博の証人尋問により立証する。 エ 直営店「crossover」で販売している商品「ズボンつり-3」の包装箱には、「コイーバ」と「COHIBA」とを上下二段に表示した商標を表示した値札が取り付けられている。 すなわち、直営店「crossover」で販売している商品「ズボンつり-3」の包装箱に付した値札には、写真(乙第5号証の1ないし3)に示すように、値札の裏面に「コイーバ」と「COHIBA」とを上下二段に表示した商標が表示され(乙第5号証の1、乙第5号証の3)、この値札に表示した商標は、本件商標と実質的に同一の商標である。 そして、商品「ズボンつり-3」の包装箱に付した値札の裏面には、写真(乙第5号証の2)に示すように、この商品「ズボンつり-3」の価格「税込 ¥9,800/(本体価格 ¥9,333)」が表示されている。 また、この価格「税込 ¥9,800/(本体価格 ¥9,333)」中の「本体価格¥9,333」と、ORDER FORM(乙第6号証及び第7号証)の「PRICE」欄の「¥9333」とは同一価格である。 そして、上記ORDER FORM(乙第6号証及び乙第7号証)の左上端及び下端に「PAS CHER.COHIBA」と、右上端「DATE」欄に「2006.9.25」と、「MODEL No.」欄に「サスペンダー」と記載され、さらに、右下端に「『cross over』/〒154-0002 東京都世田谷区下馬2-27-13/アビタグリーン74 1F/TEL/FAX03-3418-2739」と記載されている。 また、上述の「COHIBA/恒例秋冬物社販オーダー会のお知らせ」のチラシ(乙第8号証)の記載と、前記ORDER FORM(乙第6号証及び乙第7号証)の記載とから、上記商品「ズボンつり-3」(乙第5号証の1ないし3)が、平成18年9月25日に被請求人(株式会社グリーンスタンプ)の社内で催された秋冬物社販オーダー会で販売されたことは明らかである。 上記のことから、直営店「crossover」で販売されている、本件商標と社会通念上同一の商標が表示された値札を取り付けた商品「ズボンつり-3」(乙第5号証の1ないし3)が、平成18年9月25日に、被請求人の社内で催された秋冬物社販オーダー会で販売されたことは明らかである。 なお、商品「ズボンつり-3」(乙第5号証の1ないし3)と、ORDER FORM(乙第6号証及び乙第7号証)に記載された商品とが同じ商品であることは、直営店「crossover」の店舗責任者成田武博の証人尋問により立証する。 オ 被請求人は、直営店「crossover」において、平成18年(2006年)2月末に、本件商標と社会通念上同一の商標を付して、「ズボンつり-1」(乙第1号証の1ないし3)、「ズボンつり-2」(乙第3号証の1ないし3)及び「ズボンつり-3」(乙第5号証の1ないし3)を販売している。 被請求人は、平成18年2月末に直営店「cross over」の店内在庫の棚下しを行った。そして、「店在庫 メンズ/マルゼン・2006・2月末 crossover COHIBA 棚下し表」(乙第9号証 No.2)に記載されているとおり、「crossover」の店舗に、本件商標を付して販売する「上代7000」の「サウストンサスペンダー」が6個あり、「上代8500」の「サウストンサスペンダー」が2個あり、さらに、「上代9800」の「サウストンサスペンダー」が11個あったことを示すものである。 また、被請求人は、平成18年2月末に直営店「crossover」の小平倉庫の在庫棚下しを行った。そして、「小平倉庫在庫<メンズ>/マルゼン 2006・2月末 crossover COHIBA 棚下し表」(乙第9号証 No.3)に記載されているとおり、「crossover」の店舗に、本件商標を付して販売する「上代7000」の「サスペンダー」が25個あり、「上代8500」の「サスペンダー」が5個あったことを示すものである。 そして、上記「上代7000」と、「ズボンつり-1」(乙第1号証の1ないし3)の「税込 ¥7,000」とは同じ価格であり、上記「上代8500」と、「ズボンつり-2」(乙第3号証の1ないし3)の「税込¥8,500」とは同じ価格であり、また、上記「上代9800」と、「ズボンつり-3」(乙第5号証の1ないし3)の「税込 ¥9,800」とは同じ価格である。 このことから、平成18年2月末に、被請求人の直営店「crossover」において、包装箱に「コイーバ」と「COHIBA」とを裏面に上下二段に表示した値札が付された商品「ズボンつり-1」、「ズボンつり-2」及び「ズボンつり-3」が販売されていたことは明らかである。 また、平成18年2月末に、被請求人の直営店「crossover」の小平倉庫には、包装箱に「コイーバ」と「COHIBA」とを裏面に上下二段に表示した値札が付された商品「ズボンつり-1」及び「ズボンつり-2」の在庫が保管されていたことは明らかである。 カ 上記商品「ズボンつり-1ないし3」は、直営店「crossover」の店舗には、写真(乙第10号証の1ないし4)に示すとおり、少なくとも平成16年6月から今日まで引続き同店舗内で販売されている。 キ 上記商品「ズボンつり-1ないし3」が販売されている直営店「crossover」の店舗には、写真(乙第11号証の1)に示すとおり、店舗入口の扉中段に、赤色の欧文字で「crossover」と横書きされた店舗表示がなされている。 また、直営店「crossover」の店舗には、写真(乙第11号証の2及び3)に示すとおり、店舗の窓(写真中央中段)に、赤色の欧文字で「crossover」と横書きされた店舗表示がなされている。 ク なお、上記「ズボンつり-1ないし3」(乙第1号証の1ないし3、乙第3号証の1ないし3、乙第5号証の1ないし3)に示すように、本件審判請求の登録日前3年以内に本件商標と社会通念上同一の商標が、商品「ズボンつり-1ないし3」の包装箱の値札に表示され、直営店「crossover」の店舗で販売されていたことは、同店舗責任者成田武博の証人尋問により立証する。 なお、上記乙第1号証の1ないし3の商品「ズボンつり-1」の写真、乙第3号証の1ないし3の商品「ズボンつり-2」の写真、乙第5号証の1ないし3の商品「ズボンつり-3」の写真、乙第10号証の1ないし4の店舗内写真、乙第11号証の1の店舗入口の写真及び乙第11号証の2及び3の店舗外観の写真は、平成19年9月12日に、上記直営店「crossover」において、弁理士清澤亮が、「crossover」の店舗責任者の成田武博の立会いの下で撮影したものである。 (3)結び 被請求人(商標権者)は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品「ズボンつり-1」、「ズボンつり-2」及び「ズボンつり-3」について、本件商標及び本件商標と社会通念上同一の商標を使用しているから、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その商標登録を取消されるべきものではない。 4 被請求人に対する審尋 (1)平成19年9月18日付け審判事件答弁書に添付された乙第1号証の1、同第1号証の3、同第3号証の1、同第3号証の3、同第5号証の1、同第5号証の3及び同第10号証の1の「コイーバ」の文字及び「COHIBA」の文字を上下2段書きした商標を表示した下げ札についての取引書類(例えば、注文伝票、納入伝票、請求書、領収書等)を提出されたい。 (2)同日付け審判事件答弁書に添付された乙第1号証の2、同第3号証の2、同第5号証の2及び同第10号証の2ないし4のバーコードが記載された値札について、バーコードに対応する数字が記載されていないのは何故か、数字の代わりに-----となっているのは何故か、また、各バーコードは何の数字に対応するのかについて説明されたい。 (3)同日付け審判事件答弁書に添付された乙第1号証の3、同第3号証の3、同第5号証及び同第10号証について、商標が2つあるのは何故かについて説明されたい。すなわち、「ALBERT THURSTON」の商標が箱に印刷されているにもかかわらず、箱の上に本件商標を表示した下げ札が置いてあるように見えるのは何故かについて説明されたい。 例えば、同日付け審判事件答弁書に添付された乙第10号証の4の「洋服」の包装には、「COHIBA」と思しき文字が確認できるところ、同第1号証の3、同第3号証の3、同第5号証及び同第10号証の外箱に本件商標が印刷されていないのは何故かについて説明されたい。 (4)その他、本件審判の請求の登録(平成19年6月22日)前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者による使用の事実を立証する証拠(例えば、広告等が掲載された新聞、雑誌等の印刷物、カタログやパンフレット、取引の際使用される納品伝票、仕入伝票、請求書等の取引書類等であって、いずれも、使用された年日付、本件商標、使用商品及び発行者等が明確に把握できる資料)を提出されたい。 5 弁駁に対する被請求人の第2答弁及び審尋に対する被請求人の回答 (1)被請求人の商号「crossover」の店舗について 被請求人は、平成2年4月に東京都港区西麻布にて「COHIBA」の商号で営業を開始し、こだわりの商品を販売するこだわりの店として雑誌の記事(乙第12号証第41頁、第46頁、第79頁、第287頁)で多く紹介され、雑誌の広告(乙第12号証第140頁及び第141頁)も行なっていた。そして、商号「COHIBA」の店舗は、徐々にこだわりの商品を求めるこだわりの客から贔屓される店となり、それとともに、広告宣伝をほとんど行なわなくなったのである。 被請求人の商号「COHIBA」の店舗は数次移転して閉店したが、平成13年12月に東京都世田谷区下馬二丁目に商号「crossover」の店舗を新規に開店し、旧商号「COHIBA」の店舗で販売していた商品の在庫品など「COHIBA」の商標を付した商品も販売してきている。そして、商号「crossover」の店舗でも広告宣伝をほとんど行なわないで、人伝に来店する、こだわりの商品を求める顧客を対象として今日まで営業を続けている。 被請求人は、このような通常の形態から異なる営業を行なっているのであって、被請求人は充分に立証責任を果たしており、請求人の主張は理由がない。 (2)下げ札について 被請求人は、被請求人と業務委託契約を締結しているところの、被請求人の関連会社の件外株式会社レイジースーザンプランニング(東京都千代田区丸の内三丁目3番1号 新東京ビル)(本日同日付で提出した審判事件答弁書(第2回)に添付の乙第13号証参照)に、本件商標「コイーバ/COHIBA」を付した下げ札(乙第1号証の1、同第1号証の3、同第3号証の1、同第3号証の3、同第5号証の1、同第5号証の3及び同第10号証の1)の製作を依頼した。 この件外株式会社レイジースーザンプランニングは商品企画・販売・イベント企画事業を行なう会社であって、被請求人との業務委託契約に基づいてカタログ、パンフレット、下げ札等の資材の製作を一括して行なっている。 そして、被請求人から件外株式会社レイジースーザンプランニングへの資材の製作の依頼は、例えば、上記本件商標「コイーバ/COHIBA」を付した下げ札(乙第1号証の1、同第1号証の3、同第3号証の1、同第3号証の3、同第5号証の1、同第5号証の3及び同第10号証の1)のような比較的少量の資材については口頭で行なっているので、個々に取引書類(注文伝票、納入伝票、請求書、領収書等)は発行していない。 このことは、被請求人の商号「crossover」(東京都世田谷区下馬二丁目27番13号アビタグリーン74一階)の店舗責任者(マネージングディレクター)の成田武博氏の証言により立証する。 なお、乙第13号証は、本日同日付で提出した審判事件答弁書(第2回)に添付したものである。 (3)バーコードについて 商号「crossover」の店舗は、本件商標「コイーバ/COHIBA」を付した商品の管理をバーコードにより行なっていない。 そして、商号「crossover」の店舗で販売されている本件商標「コイーバ/COHIBA」を付した下げ礼の裏面には、値段とバーコードを表示した値札(乙第1号証の2、同第3号証の2、同第5号証の2及び同第10号証の2ないし4)が貼付されている。 この値札は商品「ズボンつり」(乙第1号証の1ないし3、乙第3号証の1ないし3、乙第5号証の1ないし3)の値段を表示するために、バーコード印刷機能を有する値段シールの印刷機械を用いて製作したので、機械の設定上、値段のみを表示して印刷することができず、値段の下部にバーコード及び「-----」の表示が自動的に印刷されるものである。 すなわち、本件の値札(乙第1号証の2、同第3号証の2、同第5号証の2及び同第10号証の2ないし4)は、値段とバーコード及び「-----」の表示とは一切対応せず、上述のとおり、商号「crossover」の店舗は商品をバーコードで管理していないので、何ら問題はない。 (4)商標が2つある点について 商号「crossover」の店舗では、本件商標「コイーバ/COHIBA」の商標を付した商品や、件外株式会社レイジースーザンプランニングが企画した商品や仕入商品に「レイジースーザン」若しくは「LAZY SUSAN」の商標を付してそれぞれ店舗の一角で販売しており、商号「COHIBA」の店舗からの贔屓の客はもとより、商号「crossover」の店舗を訪れた客に本件商標「コイーバ/COHIBA」を付した商品を販売している。 このように、仕入れた商品に商標が付され、また、値札を付した下げ札に販売店舗名などの商標を付して商品を販売することは、セレクトショップ、百貨店はもとより、被請求人の商号「crossover」の店舗のように小規模の店舗においても一般的に行なわれている。 したがって、乙第1号証の3、同第3号証の3、同5号証及び同第10号証の写真に撮影されている商品の包装箱に、本件商標「コイーバ/COHIBA」を付した値札が付され、「ALBERT THURSTON」の商標が付されていることは、不自然ではない。 なお、第10号証の4の「洋服」の包装には「COHIBA」の文字が付されている点については、この「洋服」は被請求人の商号「crossover」の店舗のオリジナル商品であり、包装袋は被請求人が注文・製作したものである。 なお、本日同日付で提出した審判事件答弁書(第2回)に添付の証拠説明書のとおり、乙第10号証の1ないし4 、乙第11号証の1ないし3の写真の撮影日時、撮影場所、撮影者を明らかにした。 (5)乙第1号証及び乙第3号証のサスペンダーについて、包装容器に「ALBERT THURSTON」の文字が読み取れ、これらのサスペンダーはALBERT THURSTON社製のサスペンダーであり、請求人が推察するとおりである。 また、乙第5号証のサスペンダーについて、甲第3号証のALBERT社のサスペンダーのボタンループの形態的特徴と共通性が認められ、乙第5号証のサスペンダーもALBERT THURSTON社製のサスペンダーであり、請求人が推察するとおりである。 そして、乙第9号証の第3頁目(右上にNo.2と表示されているもの)の商品名の欄の上から第9行目に「サウストン サスペンダー」の文字が記載され、乙第9号証の第4頁目(右上にNo.3と表示されているもの)のブランド名の欄の第1行目に「サウストン」の文字が記載されており、これらの記載からも乙第5号証のサスペンダーがALBERT THURSTON社製のサスペンダーであることは明らかである。 被請求人は、件外マルゼン商事株式会社が英国から輸入したALBERT THURSTON社製のサスペンダー(乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証)を仕入れて、商号「crossover」の店舗で本件商標「コイーバ/COHIBA」の値札を付して販売しているのである。 (6)請求人は、乙第9号証には店頭に並ぶ前のサスペンダーも当然含まれていると思われ、本件取消審判事件の使用証拠としては不適切であると述べているが、乙第9号証のサスペンダーには、店舗にあるサスペンダーと倉庫にあるサスペンダーとが含まれていることは棚卸しであることより、当然である。 そして、被請求人は、この乙第9号証のみで本件商標「コイーバ/COHIBA」の使用を証明するものではなく、乙第9号証の第3頁目及び乙第9号証の第4頁目の記載と乙第1号証の1ないし3、乙第3号証の1ないし3、乙第5号証の1ないし3とを併せて本件商標「コイーバ/COHIBA」の使用を証明しようとするものであり、乙第9号証は本件取消審判事件の使用証拠としては不適切ではない。 (7)請求人は、乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証、乙第10号証からは時期も場所も特定することはできないと述べているが、被請求人は、証拠説明書の第2頁(1)、(3)及び第3頁(5)の立証の趣旨で、乙第1号証、乙第3号証及び乙第5号証の撮影時期が平成19年9月12日であり、撮影場所が商号「crossover」の店舗である旨明記している。 したがって、乙第1号証、乙第3号証及び乙第5号証の時期及び場所は明らかに特定し得るものである。 なお、別紙添付の証拠説明書のとおり、乙第10号証の1ないし4、乙第11号証の1ないし3の写真の撮影日時、撮影場所、撮影者を明らかにするために、改めて補正した内容の証拠説明書を提出する。 (8)請求人は、乙第8号証に表示された商標は筆記体のもので、本件商標と同一でも社会通念上同一の範囲にもないと述べている。 しかしながら、乙第8号証に表示された商標は筆記体で表示されており、 我が国では英語の筆記体は広く親しまれていることから、これに接した取引者及び需要者は筆記体で表示された商標と本件商標とは社会通念上同一の商標と認め得るものである。 (9)請求人は、乙第8号証の商標は登録商標と同一性がない以上、価格の一致でもって商品との関連性を肯定することは無理であり、商品の価格は物価の上昇などを理由に変動するもので、価格の一致を商品の同一性の根拠にするのは聞いたことがないと述べている。 しかしながら、上述のとおり、第8号証に表示された商標と本件商標とは社会通念上同一と認められる商標であり、被請求人の商号「crossover」の店舗では、商品の価格を適宜に決定しているのであって、被請求人の価格設定について請求人から指摘を受ける理由は一切ない。 乙第8号証の9月25日の日付と、乙第2号証、乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証の2006.9.25とは同一の日付である。 そして、乙第2号証のORDER FORMの価格(サスペンダー \6666)と乙第1号証の2に表示された価格(本体価格 \6,666)とは一致している。 乙第4号証のORDER FORMの価格(サスペンダー \8095)と乙第3号証の2に表示された価格(本体価格 \8,095)とは一致している。 乙第6号証及び乙第7号証のORDER FORMの価格(サスペンダー \9333)と乙第5号証の2に表示された価格(本体価格 \9,333)とは一致している。 したがって、上記のとおり価格の一致をもって商品の同一性を明らかにし得るものである。 (10)請求人は、乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証、乙第10号証の各写真は3年以内のものではない可能性が濃厚であると述べているが、請求人の主張は憶測であり、請求人の主張を立証する根拠を示されたい。 被請求人は、上述(4)の記載のとおり、証拠説明書において、乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証及び乙第10号証の撮影時期及び撮影場所を明記している。 (11)請求人は、乙第8号証の日付に西暦または元号が表示されていないことから、乙第8号証に表示された9月25日(月曜日)が平成7年か平成12年の可能性があると述べ、そのように解する根拠として、被請求人が店舗名を「COHIBA」から「crossover」に変更した後も、「COHIBA」の商標を使用し続けることが不自然であることをあげている。 まず、乙第8号証に表示された日付については、上述(6)の記載のとおり、乙第8号証の9月25日の日付と、乙第2号証、乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証の2006.9.25とは同一の日付であるから、平成18年であることは明らかである。 次に、被請求人は商号「COHIBA」の店舗に変更したものではなく、新たに商号「crossover」の店舗を開店したもので、「COHIBA」の商標を使用し続けるのは、商号「crossover」の店舗の一角で本件商標 「コイーバ/COHIBA」を付した洋服などを主力商品として販売しており、サスペンダーの在庫が残っていることから継続販売しているのであって、被請求人が商号「crossover」の店舗において本件商標「コイーバ/COHIBA」を付した商品を6年間継続販売していても何ら不自然ではない。 (12)請求人は、被請求人が営業場所を変更したのに、移転の事実を知らせる上でも広告を行なうのが一般的であると述べている。 被請求人は、上述の(1)のとおり平成13年12月に東京都世田谷区下馬二丁目に商号「crossover」の店舗を開店し、広告宣伝をほとんど行なわないで、人伝に来店するこだわりの商品を求める顧客を対象として今日まで営業を続けているものの、店舗移転時には顧客宛てに店舗移転の知らせを通知しているが、この書面は現存していない。 (13)請求人は、被請求人が「COHIBA」時代の業務を承継していないか、承継したとしても「COHIBA」の商標に代えて採用した新しい名称の下で英国製商品を販売していると解するのが相当であると述べている。 被請求人の商号「crossover」の店舗は、商号「COHIBA」の店舗の頃からの贔屓の客を大切にすることから、商号「crossover」の店舗の一角で、上述(1)のとおり、本件商標「コイーバ/COHIBA」を付した商品を販売するとともに、被請求人の関連会社である件外株式会社レイジースーザンプランニング(東京都千代田区丸の内三丁目3番1号 新東京ビル)(乙第13号証参照)が企画した商品や仕入商品に「レイジースーザン」若しくは「LAZY SUSAN」の商標を付して販売している。 また、被請求人は、商号「crossover」の表示を店舗名として使用しているもので、商標として使用していない。 (14)結び 以上のとおり、被請求人(商標権者)は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、指定商品に含まれる商品「ズボンつり」について、本件商標「コイーバ/COHIBA」及び本件商標と社会通念上同一の商標「コイーバ」又は「COHIBA」を使用しているから、商標登録第2330425号の本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その商標登録を取消されるべきものではない。 よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。 6 当審の判断 (1)商標法第50条第1項に基づき、商標登録の取消審判が請求された場合には、被請求人は、取消請求に係る指定商品について、審判請求の登録前3年以内(以下「本件期間内」という。)における当該登録商標の使用の事実を証明するか、あるいは、不使用の場合には、正当な理由のあることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れないものである(同法第50条第2項)。 (2)被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 写真(乙第1号証)には、「コイーバ」と「COHIBA」を二段に表示した札を糸に結んで乗せた包装したズボンつりが写されている。そして、「税込 ¥7,000(本体価格 ¥6,666)」の表示及びバーコードと思しき表示を有する札が、同様に糸に結んで乗せられていることから、これらは値札の表裏と推認される。また、同ズボンつりの包装袋には「ALBERT THURSTON」ほかの表示がプリントされているのが視認し得る。 イ 「ORDER FORM」(乙第2号証)には、DATE欄に「2006.9.25」の記載、MODEL No.欄に「サスペンダー」、TOTAL欄に「1」、PRICE欄に「¥6666」の各記載がある。また、同書類の上段左と下段中央に、「PAS CHER.COHIBA」が印刷されており、その上段の「COHIBA」部分が手書きで囲まれている。 ウ 写真(乙第3号証)には、アと同様に包装されたズボンつりが写されている。そして、「税込 ¥8,500(本体価格 ¥8,095)」の表示及びバーコードと思しき表示を有する札が糸に結んで、包装したズボンつりに乗せられており、包装袋には「ALBERT THURSTON」ほかの表示がプリントされているのが視認し得る。 エ 「ORDER FORM」(乙第4号証)には、DATE欄に「2006.9.25」の記載、MODEL No.欄に「サスペンダー」、TOTAL欄に「1」、PRICE欄に「¥8095」の各記載がある。また、同書類の上段左と下段中央に、「PAS CHER.COHIBA」が印刷されており、その上段の「COHIBA」部分が手書きで囲まれている。 オ 写真(乙第5号証)には、ア及びウと同様に包装されたズボンつりが写されている。そして、「税込 ¥9,800(本体価格 ¥9,333)」の表示及びバーコードと思しき表示を有する札が糸に結んで、包装したズボンつりに乗せられており、包装袋には「ALBERT THURSTON」ほかの表示がプリントされているのが視認し得る。 カ 「ORDER FORM」(乙第6号証及び乙第7号証)には、DATE欄に「2006.9.25」の記載、MODEL No.欄に「サスペンダー」、TOTAL欄に「1」、PRICE欄に「¥9333」の各記載がある。また、同書類も、イ及びエ同様に、「PAS CHER.COHIBA」が印刷されており、その上段の「COHIBA」部分が手書きで囲まれている。 キ 「恒例秋冬物社販オーダー会のお知らせ」のチラシ(乙第8号証)には、別掲に示すとおりの構成からなる商標が表示され、日時を「9月25日(月曜日)」「11:00?19:00」と記し、価格表示部分を黒く塗りつぶした「オーダースーツ」等の記載とともに、「サスペンダー ¥7,350?」の記載が認められる。 ク 「2006.2月末 マルゼン コイーバ棚下し集計表」(乙第9号証)の続葉No.2「店在庫」には、サウストンのサスペンダー在庫として、「個数6」「上代7000」、「個数2」「上代5800」、「個数11」「上代9800」の記載がある。 また、同じく続葉No.3「小平倉庫在庫」には、サウストンのサスペンダー在庫として、「個数25」「上代7000」、「個数5」「上代5800」の記載がある。 ケ 被請求人の直営店舗内に陳列された商品を示すとした写真(乙第10号証)には、「コイーバ」と「COHIBA」を二段に表した商標を表示した札を糸に結んで乗せたズボンつりが、包装されたシャツ等と一緒に並べられているのが認められる。 なお、同じく並べられたシャツの包装には、包装袋にプリントされたと視認し得る「COHIBA」の表示があるのが認められる(乙第10号証の4)が、当該表示は当該ズボンつりの包装にはない。これよりすれば、ズボンつりの展示等の際に、「コイーバ」と「COHIBA」を二段に表した商標を表示した値札が適宜付けられるものと推認される。 コ 被請求人の直営店舗の窓に「crossover」の表示が掲げられている(乙第11号証)。しかし、当該乙11号証の写真には、「COHIBA」や「コイーバ」に係る表示は見当たらない。 サ 雑誌「MEN’S CLUB(1990年10月1日発行)」(乙第12号証)には、「COHIBA」や「コイーバ」の表示とともに、ブレザーやヴエストの現物写真が掲載され、また、当時の店舗内の様子とともに、別掲に示すものと同様のやや図案化された文字を楕円二重輪郭内に配した標章が示され、さらに同標章が店舗の看板として使用されているのが認められる。 (3)本件商標は、「コイーバ」と「COHIBA」の文字を上下二段に横書きしてなるものであるところ、前記(2)において使用に係る商標として示されたものは、本件商標と同一の構成のもの及び別掲に示すとおりの構成からなる商標であり、本件商標とは構成を同一にするか、構成欧文字及び称呼を共通にするものであるから、本件商標あるいはこれと社会通念上同一の商標と認め得るものである。 そして、当該商標の使用に係る商品「ズボンつり」が、「サスペンダー」と同義のものであり、本件の取消請求に係る指定商品の一に該当するものであることは明らかである。 (4)しかしながら、上記(2)の写真の商品が、いずれも、本件期間内のものを示すものでないことは、撮影日についての被請求人の主張からも明らかであるうえ、当該写真に写された商品と同様に本件商標を付した商品について、その譲渡や展示等が、本件期間内において現になされたと認め得る的確な証拠はない。 被請求人は、写真に示された価格と「ORDER FORM」における価格が一致することから、本件商標が表示された商品で一致するという。しかし、唯一価格表示の一致をもって、当該書類に表された年月日の当時、本件商標が付された商品の展示等が現に行われたと推認することまではできないというべきである。 また、被請求人は、「社販オーダー会」に係るチラシ(乙第8号証)に表示された「9月25日(月)」によって、本件期間内に本件商標の表示された商品が販売されたことは明らかであるという。 しかし、当該チラシには該当年を知り得る直接的な記載はなく、また、被請求人が別掲に示すとおりの構成からなる商標を店名としても使用していたと認められる平成2年10月(乙第12号証)以降において、「9月25日」が月曜日に当たる年は、平成7年、平成12年及び平成18年と複数あること、被請求人が店名を変更した後の直営店「crossover」(乙第10号証及び乙第11号証)には別掲に示すとおりの構成からなる商標と同様の構成の表示が見当たらないこと等を併せ勘案すると、前記月日が、明らかに本件期間内の月日として特定されると断じるまでには至らないといわざるを得ない。そして、価格表示のみをもって前記年月を推認できないのは上記同様であるが、同日付という「ORDER FORM」の記載と乙第8号証のサスペンダーとは、価格の数字が必ずしも一致したものともいえない。他に乙第8号証が平成18年のものであることを推認させるのに的確な資料(取引資料等)もない。 また、在庫調べの際にサウストンに係る「サスペンダー」の在庫があったとして、それをもって直ちに、それが本件商標を付した商品であること、あるいは本件商標を付して展示した商品であることを明らかにするものであるとまではいえない。 以上のとおり、提出の証拠によって示された商標の使用については、いずれも使用の時期が明らかであるとはいえないから、本件期間内における本件商標の使用を証明したと認めることができない。 (5)被請求人は、直営店の店舗責任者の証人申請及び「ズボンつり-1ないし3」の検証の申請をしている。 しかしながら、本来、この種の事実関係については、商品の価格にとどまらず、取引数量、販売実績等の取引の事実を裏付けるものが必要であり、取引の際に通常用いられる納品伝票等における品名や品番等の記載などの客観的資料をもって明らかにされるべき性質のものであって、かかる要請は、商取引を現に行っている当業者に対し、決して過度の負担を強いるものでもない。 しかるところ、本件においては、この種の事実関係について、被請求人の内部資料に止まると認められる資料(ORDER FORM、棚下ろし表)のほか、この種の取引に関係する資料は提出されていない。そして、他の客観的資料を伴うことなく内部資料の作成者の証言によって写真の商品と取引対象とされた商品との一致を明らかにしようとした場合、商品の一致に限ってみれば、価格表示を唯一のより所にした証言の有用性には疑問なしとし得ず、また、「尋問事項」の項目に照らしても、当該証言によって直ちに、上記事実関係が客観的に明らかになるとは推察し難いから、その限りにおいて、証人調べを行わねばならない必要性が認められない。なお、写真撮影の日時や場所については、被請求人の主張に照らせば、写真に写された状況が本件期間内のものでないことが明らかである以上、改めて証言を必要とはしない。したがって、証人尋問の申し出は採用しない。 また、検証については、当該検証物が、本件商標を表示した値札の付けられた「ズボンつり-1ないし3」であるとしても、本件期間内の物であるならば格別、そうではない以上、検証時の使用状況を示し得るにすぎず、本件期間内のものとしての検証物とはなり得ないから、本件期間内の商標の使用との関係において検証を行う必要性は認められず、これを採用しない。 (6)以上のとおり、被請求人の提出した証拠によっては、本件商標が本件期間内に取消請求に係る指定商品について使用をされたことを明らかにしたものということはできない。 ほかに、本件商標が取消請求に係る指定商品について使用をされた事実を認め得る証拠はなく、不使用についての正当理由に係る主張及び立証はない。 したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、取消請求に係る指定商品について、その登録の取り消しを免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2008-05-01 |
結審通知日 | 2008-05-08 |
審決日 | 2008-05-21 |
出願番号 | 商願平1-39265 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(1031825)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 謙三 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
渡邉 健司 岩崎 良子 |
登録日 | 1991-08-30 |
登録番号 | 商標登録第2330425号(T2330425) |
商標の称呼 | コイーバ、コヒバ |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 樺澤 聡 |
代理人 | 山田 哲也 |
代理人 | 樺澤 襄 |
代理人 | 高原 千鶴子 |
代理人 | 根本 雅成 |
代理人 | 浅村 皓 |