• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) Y30
管理番号 1179463 
判定請求番号 判定2008-600007 
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2008-07-25 
種別 判定 
2008-01-23 
確定日 2008-06-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4706965号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「米」に使用するイ号標章は、登録第4706965号商標の商標権の効力の範囲に属する。
理由 第1 本件商標
本件登録第4706965号商標(以下、「本件商標」という。)は、「金蔵米」の文字を標準文字で書してなり、平成15年1月31日に登録出願、第30類「米」を指定商品として、同年9月5日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
被請求人が、商品「米」に使用する標章として示したイ号標章は、別掲のとおり、毛筆風の書体を用いて、「金蔵米」の文字と、その右側に、該文字に較べてやや小さめに「きんぞうまい」の文字とを2行に縦書きした構成よりなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 判定請求の必要性
請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人が商品「米」に標章「金蔵米」を使用していること(甲第1号証)について、平成19年10月10日付けで、被請求人に対し、本件商標の商標権を侵害するものである旨の警告を発した(甲第2号証)。
その後、被請求人は、同年10月22日付けの内容証明郵便にて、本件商標の使用について、正当な理由があるという回答を行なった(甲第3号証)。
請求人は、被請求人の回答に対して承服できず、同年11月9日付けの内容証明郵便にて異議主張の書面を送付した(甲第4号証)。
被請求人は、請求人の異議主張に対する反論を同年12月28日付けの内容証明郵便にて、請求人宛に送付した(甲第5号証及び甲第6号証)。
請求人と被請求人の主張は平行線にあり、請求人は、イ号標章による商標権侵害が存在することの根拠資料とするため、本件判定を求める次第である。
2 イ号標章の説明
被請求人は、平成19年11月1日現在、「金蔵米」の漢字に、ひらがなで「きんぞうまい」と読み仮名を振ったイ号標章をパッケージに付した商品「米」を、株式会社ティーカップ・コミュニケーション社のインターネット上の仮想店舗において、全国販売している(甲第1号証)。
被請求人は、同年10月22日付けの内容証明郵便にて、「当法人は、平成12年9月頃より現在に至るまで継続して、商品『米』を『金蔵米』という名称で販売しています。」と回答している(甲第3号証)ものの、その時期にNPO法人は存在していなかった。また、被請求人は、平成19年12月28日付けで資料(甲第6号証)を、請求人に提供しているものの、「金蔵学校」という社団による販売実績、販売開始時期、販売状況の実態は読み取れない。資料において確認できるのは、「輪島市町野町金蔵の生涯学習グループ『金蔵学校』という社団が、『金蔵米』と名付けて、特産品にしようとPRしている。」という計画段階の記事(同14年3月6日付け)である。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標は、標準文字で「金蔵米」の文字よりなるものである。
イ号標章は、「金蔵米」の文字を使用するもので、外観、称呼、観念の全てにおいて、本件商標と同一の標章である。
また、本件商標の指定商品は、第30類「米」であり、イ号標章の使用にかかる商品「米」とは、同一の商品である。
しかしながら、被請求人は、本件商標の使用について、正当な理由がある旨主張している(甲第3号証及び甲第5号証)ので、以下反論する。
(1)被請求人が主張する理由1は、イ号標章の「金蔵」の文字部分が「商標法第二十6条第3項」で規定する「産地」にあたるということである。
「商標法第3条第1項第3号」の解説を援用すると、産地の要件は「著名な地理的名称(行政区画名、旧国名及び外国の地理的名称を含む。)」と解されるところ、「金蔵」という地域が著名か否かの判断となるが、インターネット検索エンジンGoogleマップで、「金蔵」を検索して該当するのは、京都府内の地名のみ該当し、最高裁第三小法廷判決昭和54年4月10日の判例による「何人もその使用を欲する」という基準からは、外れていること明らかである。
また、被請求人は、イ号標章の「金蔵」の文字部分が「かなくら」という称呼の地理的名称であるにもかかわらず、「きんぞう」という読み仮名を並列して表記して使用しており、地名としての出所表示機能を果たしていない。
地名は、読み替えをすることで異なった概念が生じ、例えば、漢字「神戸」を「こうべ」と読めば、「兵庫県神戸市」の地域を示し、「ごうど」と読めば、「岐阜県安八郡神戸町」などの11地域を限定し、その他にも「こうど」、「ごうと」、「かのと」、「かんべ」などと読み方により異なった地域が識別されることになる。
地域名を特定するにあたり、称呼は重要な要素であり、また、商標としては「識別能力」に直結するものであるから、地名の読み替えを作為的に行うことは、地域名を否定することになる。
ちなみに、漢字「金蔵」の文字を使って、「きんぞう」と読む地理的名称は、愛知県安城市古井町金蔵塚(きんぞうづか)となり、イ号標章をもって、産地名表示ということであれば、消費者に対して誤った情報をもたらすことになる。
また、「商標法第二十6条第3項」では、「普通に用いられる方法で表示する商標」と規定しているところ、工業所有権法逐条解説によると、「普通に用いられる方法」とは、「商標としての識別機能を発揮しない使用の仕方」と解説しており、これは、特殊な書体等を使用せず、包装の端に小さなポイントで表示したり、JAS法による表示の中で使用したり、ネーミングとしてアピールしないような使用の仕方が「普通に用いられる方法」と考えられるため、イ号標章は「普通に用いられる方法」という条件も充足していない。
(2)被請求人が主張する理由2は、「商標法第三十2条」の「先使用による商標の使用をする権利」である。
被請求人が、請求人に提出した平成19年12月28日付けの資料(甲第6号証)においては、被請求人の主張する事実は確認できない。
この権利の主張には、「金蔵米」という商品が、同15年1月31日以前に販売されていたという事実、輪島市町野町金蔵の生涯学習グループ「金蔵学校」(読売新聞同14年3月6日記事記載団体)と「NPO法人やすらぎの里金蔵学校」に継続性があるという根拠、「金蔵米」という商品が「NPO法人やすらぎの里金蔵学校」によって販売されているという状況が、一般消費者や取引先業者に相当程度周知されていたという検証が必要である。
請求人が提出を受けた資料では、同14年3月6日付けで販売されている実績はない。この時点以降でイ号標章を付した商品を発売して、同15年1月31日までに、「金蔵学校」という社団による「金蔵米」という商品が販売されている状況が、「需要者の間に広く認識されている」ためには、相当の宣伝広告が行われているはずである。
請求人は、商標登録出願前に商標調査として、特許庁の「特許電子図書館」、インターネット検索エンジンによるWeb検索(5社以上)、日経テレコン21による過去30年分の新聞記事の検索等を実施しているが、該当する情報はなかった。
また、商標登録の審査時には、特許庁の審査官によっても、相当の調査が行われているはずである。こうした調査において判明しない状況で、販売実績と販売者変更の周知性が確保されていたということは、「米」の需要者として考えらず、インターネット販売による全国を対象とした「米」の販売において、全国の消費者が認識できていたものかと考えると、少なくとも周知性は確保できていないと考えるのが妥当である。
こうした状況を鑑みると、本件商標を使用するための正当な理由にはあたらない。
(3)被請求人が主張する理由3は、本件商標が「商標法第3条第1項第3号」に違反して登録されたというものだが、この理由については、権利自体の無効を主張したのもので、不問とする。
上述のように、被請求人による本件商標の使用を正当化する根拠は乏しく、イ号標章は、本件商標の効力の範囲に属するものである。
(4)結び
よって、請求人は、請求の趣旨のとおりの判定を求める。
(5)証拠方法
(ア)甲第1号証 平成19年11月1日インターネットの仮想ショッピングモール
(イ)甲第2号証 同年10月10日付け郵便物 請求人発信警告書
(ウ)甲第3号証 同年10月22日付け郵便物 被請求人発信回答書
(エ)甲第4号証 同年11月9日付け郵便物 請求人発信異議回答書
(オ)甲第5号証 同年12月28日付け郵便物 被請求人発信回答書
(カ)甲第6号証 同年12月28日付け郵便物 被請求人発信別送書類
4 本件判定請求前に、被請求人が請求人宛に提出した回答書(甲第3号証)に対する請求人の反論(甲第4号証)
(1)平成19年11月9日付け「請求人発信異議回答書」(甲第4号証)
当社(請求人)は、以下で述べるように、貴NPO法人(被請求人)の当該登録商標の使用理由について、承服できない。
(ア)理由1に対する反論
貴NPO法人(被請求人)が販売している、石川県輪島市町野町金蔵産の米に付した商標「金蔵米」が、「産地名+商品名」という構成であるならば、「かなくらまい」という称呼を使うべきである。貴NPO法人(被請求人)の商標「金蔵米」には、「きんぞうまい」との振り仮名があるため、石川県輪島市町野町“かなくら”の産であるという「出所表示機能」を果たしてない。意図して表示された“きんぞう”という文字によって、産地名を否定していることが明らかである。また、この表示は、商標法第二十6条第3項でいう「普通に用いられる方法で表示する」の要件を具していない。
(イ)理由2に対する反論
「当法人(被請求人)は、平成12年9月頃より現在に至るまで継続して、商品『米』を『金蔵米』という名称で販売している。」という回答を信頼できない。
内閣府NPOホームページ内の「全国NPO法人情報の検索」において、貴NPO法人(被請求人)を検索したところ、特定非営利活動法人としての認証がなされたのが、同15年9月2日と認識される。
また、同年1月31日より以前に、他の団体により「金蔵米」の販売実績があったとするならば、販売者が貴NPO法人(被請求人)に変更になったことに継続性があり、一般消費者や取引業者において相当程度周知されていたという根拠を客観的事実に基づいて示されたい。
(ウ)理由3に対する反論
商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされるのは、何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによると解される(最高裁第三小法廷判決昭和54年4月10日)。
この趣旨に照らせば、本件商標は、商品「米」において、広く需要者に「産地」であると誤認を与えることがなく、かつ、識別性を有すると判断された結果、登録査定になったものである。
「米」は、日本全国で収穫できることを考えれば、「産地」という言葉を、単に米穀の収穫ができるという事実ではなく、広く需要者が(上質の)米を多く産出する土地であるという認識を持っている基準で捉えるべきである。
(エ)まとめ
上述のように、貴NPO法人(被請求人)による当該登録商標の使用は、正当な理由を欠いており、当社(請求人)の商標権を侵害するものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件判定請求は成り立たない。」旨答弁し、その理由を、「現時点では、提出された資料のとおり。」と述べた。
そこで、本件判定請求前に、被請求人が請求人宛に提出した資料(回答書)(甲第3号証及び甲第5号証)について、以下に記載する。
(1)平成19年10月22日付け「被請求人発信回答書」(甲第3号証)
当法人(被請求人)が商品「米」について使用している商標「金蔵米」が、貴社(請求人)所有の登録商標を侵害するため、当法人(被請求人)における米販売で「金蔵米」の名称の使用中止を求めるとのことだが、以下の理由により、応じることはできない。
(ア)理由1
商標法第二十6条において、商品の普通名称、産地・・・を普通に用いられる方法で表示する商標には、商標権の効力が及ばない、と規定している。
当法人(被請求人)の販売している商品「米」は、石川県輪島市町野町金蔵産の米である。すなわち、当法人(被請求人)が使用している商標「金蔵米」の「金蔵」は産地の表示であり、「米」は商品の普通名称である。そして、商品「米」について、産地を示す地名「○○」に続けて一連に「○○米」と表示することは普通に行われていることである。したがって、当法人(被請求人)の商標「金蔵米」には、貴社(請求人)の商標権は及ばない。
(イ)理由2
商標法第三十2条において、先使用による商標の使用をする権利を規定している。
当法人(被請求人)は、平成12年9月頃より現在に至るまで継続して、商品「米」を「金蔵米」という名称で販売している。そして、販売開始当初から、当法人(被請求人)の商品「金蔵米」は、NPOが販売する米として新聞等にたびたび報道され、貴社(請求人)の登録商標の出願日である同15年1月頃には周知となっている。したがって、当法人(被請求人)は、商品「米」について商標「金蔵米」を使用する権利を有している。
(ウ)理由3
商標法第3条第1項第1号で、その商品の普通名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、登録を受けることができないとし、同法第3条第1項第3号は、その商品の産地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、登録を受けることができないとされている。
前述のように、「金蔵」は、米の産地の一つであり、「米」は普通名称であるから、貴社(請求人)の登録商標「金蔵米」は、同法第3条の規定に違反して登録されたものであり、無効である。
(エ)まとめ
以上の、理由1ないし3のいずれの理由によっても、当法人(被請求人)が商品「米」について「金蔵米」の名称を使用することには、正当な理由がある。
(2)平成19年年12月28日付け「被請求人発信回答書」(甲第5号証)
当法人(被請求人)は、貴社(請求人)の理由1ないし3の主張に対し、次のとおり回答する。
(ア)理由1の反論に対する意見
当法人(被請求人)の所在地近辺に位置する岩倉山から金蔵に、「金の鶴」が舞っているのが見られたという伝説があり、これに関連して白雉年間(西暦650年頃)に岩倉山金蔵寺(かなくらじ)が開かれ、現在の白雉山金蔵寺(こんぞうじ)になったといわれており、こうしたことを背景に、「地域おこし」の一環として、産地を表示する「金蔵」の文字に「きんぞう」の仮名を振ったものである。
商標「金蔵米」は、漢字の「金蔵」によって産地を示しており、「きんぞうまい」と仮名が振ってあったとしても、産地名を示していることに変わりはなく、漢字の訓読みと音読みの混用も、ごく普通におこなわれていることである。
(イ)理由2の反論に対する意見
当法人(被請求人)は、平成12年4月に「やすらぎの里金蔵の村おこし 金蔵学校」の名称で立ち上げた社団を同15年に法人化したもので、組織や事業内容は全て継承しており、社団としての継続性を有するものである。商標「金蔵米」は、上記法人化される前の社団が同12年9月頃から使用しており、そのことは、「やすらぎの里」という文言、「金蔵学校」の名称及び「金蔵米」という商標と共に、広く報道されている。新聞報道の一部を紹介した資料を別送するが、行政当局の支援などもあり、同12年度から同14年度の3年間に約40回の新聞報道がなされている。
(ウ)理由3の反論に対する意見
最高裁第三小法廷判決昭和54年4月10日は、貴社(請求人)の主張とは異なる判断を示している。
また、昭和61年1月23日最高裁昭和60年(行ツ)第68号は、「商標法第3条第1項第3号にいう『商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』に該当するためには、・・現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りる。」と判示している。
これらの判断を参酌すれば、貴社(請求人)の「米についての『産地』は、広く需要者が、米を多く産出する土地であるという認識をもっているという基準で捉えるべき」との主張には賛同しがたく、貴社(請求人)の登録商標「金蔵米」は、無効となる可能性が高い。
(エ)まとめ
以上のように、当法人(被請求人)が商品「米」について「金蔵米」の商標を使用することには、正当な理由がある。

第5 当審の判断
1 本件商標とイ号標章の類否について
本件商標は、前記第1のとおり、「金蔵米」と標準文字で書してなるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で、外観上まとまりよく一体のものとして把握し得る構成よりなるものであるから、これより「カナクラマイ」、「カネグラマイ」、「キンゾウマイ」の称呼を生ずるものである。
そして、たとえ、本件商標の構成中「米」の文字が、その指定商品を表したものであるとしても、かかる構成においては、構成文字全体をもって特定の意味合いを有しない一体不可分の一種の造語として、認識、把握されるとみるのが自然であって、本件商標は自他商品を識別する機能を有しているというべきである。
他方、イ号標章は、別掲のとおり、毛筆風の書体を用いて、「金蔵米」の漢字と、その右側に「きんぞうまい」の平仮名文字とを2行に縦書きしてなるところ、「金蔵米」の文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で、外観上まとまりよく一体のものとして把握し得る構成よりなるものであって、また、平仮名の文字部分は、漢字の読みを特定したものと無理なく認識し得るものであるから、その構成文字全体に相応して、「キンゾウマイ」の称呼を生ずるものである。
そして、その構成中「金蔵」の文字が、被請求人の所在地の地名と同じ漢字よりなるものであるとしても、被請求人も認めているように「きんぞう」の振り仮名は、該地名の本来の読み方である「かなくら」とは相違しているものであって(甲第5号証)、さらに、全国的にみても「金蔵」の文字が地名として存在するのは非常にわずかな程度しか確認できないうえに、加えて、該地名は市町村の単位よりも小さい一地域名を表す文字でしかない。
また、該地域が、米の産地として一般に認識させ得るに足る証左も見あたらない。
しかして、これに接する取引者、需要者等が、「金蔵」の文字部分を地名、ひいては米の産地を表した文字であるとは認識し難いと言わざるを得ない。
そうとすれば、たとえ、イ号標章の構成中「米」の文字が、被請求人の使用にかかる商品名を表したものであるとしても、かかる構成においては、構成文字全体をもって特定の意味合いを有しない一体不可分の一種の造語として、認識、把握されるとみるのが自然であって、イ号標章は自他商品を識別する機能を有しているというべきである。
してみれば、本件商標とイ号標章は、外観においては、「金蔵米」の文字を共通にし、観念においては、いずれも特定の意味合いを有しない造語であるから、比較し得ないとしても、本件商標とイ号標章とのいずれからも生じる「キンゾウマイ」の称呼を共通にするものである。
したがって、本件商標とイ号標章とは、外観及び称呼において類似する商標といい得るものである。
また、本件商標の指定商品「米」と、イ号標章の使用にかかる商品「米」とは同一の商品である。
2 商標法第26条第1項第2号について
請求人が主張する商標法第26条第3項、および被請求人が主張する同法第26条については、同法第26条第1項第2号として判断する。
イ号標章は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成中「米」及び「まい」の文字が、商品「米」の普通名称及びその読みであることは認められるとしても、「金蔵」及び「きんぞう」の文字が、商品「米」の産地を表す文字であることは、一般に認識され難く、イ号標章全体として自他商品を識別する機能を十分に有することは上述のとおりである。
そうすると、イ号標章が商品の産地及び普通名称普通に用いられる方法で表示してなるとは言い得ないものであるから、商標法第26条第1項第2号により、イ号標章には本件商標の効力が及ばないとする被請求人の主張は採用し得ないと判断するのが相当である。
3 商標法第32条第1項について
請求人及び被請求人が主張する商標法第32条については、同法第32条第1項として判断する。
請求人の提出に係る甲第3号証、同第5号証及び同第6号証によれば、平成12年頃、石川県輪島市町野町金蔵に存していた、生涯学習グループ「金蔵学校」が、商品「米」について、「金蔵米」の標章を使用し、これを販売していたことは推認し得る。
しかしながら、生涯学習グループ「金蔵学校」の業務を、被請求人が継承したこと、並びに生涯学習グループ「金蔵学校」及び被請求人が使用するイ号標章が、本件商標の登録出願前から日本国内において、需要者の間に広く認識されていることを示す証左としては、充分なものということはできない。
そうとすれば、互いに紛れるおそれのある類似の商標といい得る本件商標とイ号標章において、未登録周知商標の信用の既得権を保護しようとする商標法第32条第1項の規定に照らすと、被請求人の主張は、その要件を具備しているとはいい得ないものである。
4 商標法第3条第1項第3号について
本件商標が、自他商品を識別する機能を十分に有する商標であることは上述のとおりであるから、本件商標が、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたとする被請求人の主張は採用し得ないものである。
5 まとめ
したがって、商品「米」に使用するイ号標章は、本件商標の効力の範囲に属するというべきである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲 イ号標章


(色彩については原本参照)


判定日 2008-05-29 
出願番号 商願2003-7032(T2003-7032) 
審決分類 T 1 2・ 1- YA (Y30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小畑 恵一 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 岩崎 安子
小畑 恵一
登録日 2003-09-05 
登録番号 商標登録第4706965号(T4706965) 
商標の称呼 キンゾーマイ、キンゾーゴメ、カネグラマイ、カネグラゴメ、キンゾー、カネグラ 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ