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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y14
管理番号 1179249 
審判番号 無効2006-89091 
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-07-10 
確定日 2008-06-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4795941号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4795941号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4795941号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成16年1月30日に登録出願、第14類「時計」を指定商品として、同年8月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標
(ア)請求人が引用する登録第2024747号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和57年11月10日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同63年2月22日に設定登録、その後、平成10年3月17日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(イ)同じく、国際登録第695685号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)に表示したとおりの構成よりなり、第9類、第14類、第16類、第18類及び第25類に属する国際登録において指定された商品を指定商品として、2001年11月6日に我が国を事後指定し、その後、指定商品については、2002年(平成14年)7月10日付けの手続補正書により、第9類に属する「sunglasses, corrective glasses and sports glasses; spectacle frames, spectacle glasses, spectacle cases, eyeglasses chains, pince-nez.」他、第14類に属する「horological and chronometric instruments.」他、第16類、第18類及び第25類に属する商品に補正され、同年9月6日に設定登録されたものである。
(ウ)同じく、登録第2653840号商標(以下「引用商標3」という。)は、「ARMANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和63年2月10日に登録出願、第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年4月28日に設定登録、その後、同16年2月10日に商標権存続期間の更新登録、さらに、同17年8月10日に指定商品を第9類「眼鏡」及び第14類「時計」とする書換の登録がされたものである。
(エ)同じく、登録第4076267号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ARMANI」の欧文字を横書きしてなり、平成5年3月4日に登録出願、第14類に属する「時計」他の商品を指定商品として、同9年10月31日に設定登録されたものである。
(オ)同じく、国際登録第782614号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(4)に表示したとおりの構成よりなり、2002年3月26日にSwitzerlandにおいてした商標登録に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して同年6月6日に国際登録、その後、指定商品及び指定役務については、2003年(平成15年)3月17日付けの手続補正書により、第14類に属する「horological and chronometric instruments.」他、第9類、第18類に属する商品、第35類に属する「advertising services on behalf of third parties in connection with marketing and sale of timepieces; commercial management and administration, in particular of shops retailing timepieces.」他、第43類に属する役務に補正され、同年5月30日に設定登録されたものである。
(カ)同じく、登録第1636037号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(5)に表示したとおりの構成よりなり、昭和55年9月30日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同58年11月25日に設定登録、その後、平成6年4月27日及び同15年7月8日の2回にわたる商標権存続期間の更新登録、さらに、同16年8月18日に指定商品を第6類、第14類、第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換の登録がされたものである。
(キ)同じく、登録第1650964号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(6)に表示したとおりの構成よりなり、昭和55年9月30日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同59年1月26日に設定登録、その後、平成6年7月28日及び同16年1月20日の2回にわたる商標権存続期間の更新登録、さらに、同年8月18日に指定商品を第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換の登録がされたものである。
(ク)同じく、登録第1670740号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(5)に表示したとおりの構成よりなり、昭和55年9月30日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同59年3月22日に設定登録、その後、平成6年7月28日及び同16年2月10日の2回にわたる商標権存続期間の更新登録、さらに、同年12月8日に指定商品を第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換の登録がされたものである。
(ケ)同じく、登録第2450396号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(5)に表示したとおりの構成よりなり、昭和62年2月23日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年8月31日に設定登録、その後、同14年6月18日に商標権存続期間の更新登録、さらに、同15年1月8日に指定商品を第20類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換の登録がされたものである。
(コ)同じく、国際登録第788498号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲(7)に表示したとおりの構成よりなり、2002年5月17日にSwitzerlandにおいてした商標登録に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して同年9月18日に国際登録、その後、指定商品及び指定役務については、2003年(平成15年)5月16日付けの手続補正書により、第16類、第20類、第21類、第24類及び第26類に属する商品、並びに第35類及び第43類に属する役務に補正され、同年8月15日に設定登録されたものである。
(以下、これらをまとめていうときには、単に「引用商標」という。)

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第76号証を提出した。
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第7号及び同第19号に該当するから、商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
(ア)本件商標
(a)本件商標は、等間隔の横線を有する翼を左右に広げ、右向きの頭部に冠を配した猛禽類を表示してなる図形と、その下部に「ROYAL ARMANY」の欧文字を書した構成よりなるものである。
(b)本件商標の文字部分「ROYAL ARMANY」からは、「ロイヤルアルマニ」及び「ロイヤルアルマニイ」の称呼を生ずるほか、該文字中の「ROYAL」が「極上(の)」等の意を表す語であるため、それに続く「ARMANY」の文字が要部として認識され、それより「アルマニ」、「アルマニイ」若しくは「アルマーニ」の称呼も生ずるから、引用商標3及び4から生ずる称呼「アルマーニ」と称呼において類似する。
したがって、本件商標と引用商標3及び4とは、称呼上互いに相紛れるおそれのある類似の商標である。
「ROYAL」の語は、例えば、商品「被服」との関係において、自他商品識別力がないか又は弱い語とされており(甲第22号証)、本件商標の指定商品「時計」にも、そうした慣行がある。例えば、時計の製造・販売会社として周知なオリエント社は、自社最高級ブランドとして「ROYAL ORIENT」という時計を販売している(甲第23号証)。
よって、「ROYAL ○○」という商標を時計に使用した場合、「ROYAL」の文字部分は、「○○」という高級ブランドであるといった意味合いを示唆するにすぎず、商標の要部は、「○○」の部分にある。
(c)被請求人若しくはその関連会社は、本件商標中の「ARMANY」の文字部分を「アルマーニ」と認識し、本件商標を付した商品「時計」に「ロイヤル アルマーニ」、「アルマーニ マークがレザー刻印」等と表示している(甲第24号証)。
したがって、被請求人自ら本件商標を「アルマーニ」と称呼し使用していることから、本件商標と引用商標3及び4は、いずれも「アルマーニ」の称呼を生ずる称呼上同一又は類似の商標である。
(d)本件商標中の図形部分からは、頭部に冠を配した右向きの猛禽類の図形の観念が想起される。他方、本件商標中の文字部分の「ARMANY」からは、請求人の著名な略称「ARMANI」、「アルマーニ」の観念を生ずる。
(イ)引用商標
引用商標1及び2並びに5ないし10は、頭部を右向きにし、翼を左右に広げた猛禽類の図形を有してなり、また、引用商標2,5及び6並びに8ないし10は、該図形の下部を平らにし、世界的に著名なイタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオアルマーニ)のイニシャル「GA」をその内部に配した構成よりなるものである。
特に、引用商標2及び10は、本件商標と同様に、翼部分に等間隔の横線を有する。
また、引用商標5は、欧文字「EMPORIO ARMANI」と前記「欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」からなる。
そして、該図形と文字との結び付きは、強いものとはいえず、これらを常に一体のものとして見なければならない特段の事情も見出せないから、それぞれが独立して自他商品識別標識としての機能を発揮する。
してみると、引用商標5の図形部分は、単独で自他商品識別標識としての機能を発揮し得るので、本件商標中の図形部分との類否判断においては、全体観察のみならず、図形と文字とを分離観察し、それぞれを要部として判断すべきである。
また、引用商標5の文字部分から生ずる称呼は、「エンポリオアルマーニ」の全体称呼のほか、「エンポリオ」及び「アルマーニ」のそれぞれの称呼を生じ、かつ、該「ARMANI」の文字部分からは、請求人の著名な略称「アルマーニ」の観念を、及び引用商標5の図形部分からは、「右向きの猛禽類の図形」の観念を生ずる。
さらに、引用商標3及び4は、欧文字「ARMANI」を一連に書してなるから、これよりは「アルマーニ」の称呼及び世界的に著名なイタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の略称「アルマーニ」の観念を生ずる。
(ウ)本件商標と引用商標との類否
(a)外観類似について
本件商標中の図形部分と引用商標1及び2並びに5ないし10における右向きの猛禽類の図形との類否についてみるに、両者は、ともに頭部を右向きにし、ともに翼を左右に広げた猛禽類の図形である点において、基本構成を一にし、その着想、構図等も共通する。
さらに、本件商標中の図形部分と引用商標2及び10とは、上記猛禽類の翼が等間隔の横線を有し、V字状になっている点で共通の外観を有する。
したがって、両者を時と所を異にして離隔的に観察した場合には、外観上相紛れるおそれがある。
このことは、別件登録異議申立事件(甲第25号証ないし甲第28号証)においても認められている。
よって、本件商標中の図形部分と引用商標1及び2並びに5ないし10の図形とは、外観上相紛れるおそれのある類似の商標である。
(b)称呼類似について
本件商標中の文字部分「ROYAL ARMANY」と、引用商標3及び4の文字「ARMANI」及び引用商標5の文字部分「EMPORIO ARMANI」とは、次の理由から、称呼上類似する。
本件商標からは、「ロイヤルアルマニ」、「ロイヤルアルマニイ」及び「ロイヤルアルマーニ」の称呼を生ずるほか、上述(2)(ア)(b)の理由により、「アルマニ」、「アルマニイ」若しくは「アルマーニ」の称呼をも生ずる。
そして、引用商標3及び4は、その欧文字の表記よりして、「アルマーニ」の自然称呼を生ずる。
また、引用商標5の文字部分からは、全体として「エンポリオアルマーニ」の称呼を生ずるほか、「EMPORIO」の文字部分と「ARMANI」の文字部分との間に、右向きの猛禽類の図形があることよりして、上記全体称呼とは別に、「エンポリオ」及び「アルマーニ」のそれぞれの称呼をも生ずる。
一方、本件商標中の「ARMANY」の文字部分から生ずる「アルマニ」、「アルマニイ」の称呼と、上述のとおり、引用商標3ないし5から生ずる「アルマーニ」の称呼とは、「マ」の音に続く長音(「ー」)の有無と末尾音の相違(「ニイ」と「ニ」)にすぎず、しかも、該末尾音「ニイ」と「ニ」は、母音(i)を共通にする極めて近似した音である。
よって、本件商標中の「ARMANY」の文字部分から生ずる「アルマニ」及び「アルマニイ」の称呼は、引用商標3ないし5から生ずる「アルマーニ」の称呼と全体の音調、音感が近似し、称呼上類似する。
(c)観念類似について
本件商標中の図形部分と引用商標1及び2並びに5ないし10の図形とは、頭部を右向きにし、翼を左右に広げた猛禽類の図形のイメージを共通にする観念上類似の商標である。
また、本件商標中の図形部分と引用商標1及び2並びに5ないし10の図形とは、ともに「右向きの猛禽類の図形」と認識されるから、取引者・需要者が時と所を異にして、これに接する場合には、観念上類似する。
(エ)指定商品の類否について
本件商標の指定商品は、第14類「時計」であるのに対し、引用商標1,3及び4は、その指定商品中に「時計」を含んでいる。
また、引用商標2及び5は、その指定商品中に「時計」と類似する商品「計時用具」を含んでいる。
よって、本件商標の指定商品は、引用商標1,3及び4の指定商品と「時計」において同一であり、引用商標2及び5の指定商品中の「計時用具」と類似する。
(オ)小括
以上の点から、本件商標は、その登録出願日(平成16年1月30日)前の商標登録出願に係る請求人の引用商標1ないし5と類似し、引用商標1ないし5の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
(ア)引用商標の著名性について
請求人は、世界的に著名なイタリアのデザイナーである「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の設立した会社であり、そのデザインに係る商品の取り扱い及び商標権等の知的所有権の管理をしており、引用商標の権利者である。
「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)は、1975年にイタリアで紳士・婦人物既製品を扱うファッション・デザイン会社「ジョルジオ アルマーニ社」を設立して以来、「GIORGIO ARMANI」のブランドを付した紳士・婦人用既成服を製作、販売するとともに、1981年には、ヤングブランドとして「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)を発表した。これらの他に、手がけたブランドとしては、カジュアルウェアの「ARMANI JEANS」、婦人服の「MANI」、その他「ARMANI」、「A/X ARMANI EXCHANGE」、「GIO」等がある(甲第29号証ないし甲第31号証及び甲第44号証)。
これらの各ブランドに係る商品は、大変に優れていたことから、イタリア国内のみならず、日本を含む世界各国に輸出されるようになったが、その中でも男性用の衣服は、世界的に注目を浴びるようになり、世界のファッションショーの桧舞台というべきミラノコレクション、パリコレクション、ニューヨークコレクション、東京コレクションで次々に発表され、1979年には、「ニーマン・マーカス賞」を受賞した。また、1980年、1981年、1984年、1986年、1987年の5度にわたり「カティ・サーク国際トップ・ファッション・メンズ・デザイナー賞」を受賞、その後も数多く受賞し、その名を世界中に知られるに至った。
「GIORGIO ARMANI」のブランドの1つ「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)は、著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」の手がけるヤングブランドとして1981年に発表され、主に引用商標2,5及び6並びに8ないし10の態様で「欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」とともに使用され、年齢、職業、クラスを問わないデザインコンセプトにより瞬く間に世界中で人気を集め、他の「GIORGIO ARMANI」ブランドと同様、世界的に知られるようになり、確固たる地位を築くに至った。
「『EMPORIO ARMANI』及び欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」よりなる引用商標5を付した商品は、時計及び紳士・婦人服だけでなく、ネクタイ・靴下・帽子・手袋・傘・眼鏡等のほか、同一の流通経路、販売店で取り扱われるハンドバック、革小物等、さらには、香水をはじめとする化粧品も含んでおり、非常に広範囲にわたっている(甲第32号証及び甲第33号証)。
そして、いずれの商品も「GIORGIO ARMANI」ブランドの高い信用の下で人気を博している。
また、「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)ブランドに係る商品には、引用商標5「『EMPORIO ARMANI』及び欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」中、単独で自他商品識別標識としての機能を発揮する「欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」又は、引用商標1及び2、引用商標6ないし10のような「右向きの猛禽類の図形」等、様々な態様のものが付され、いずれも、その商品が請求人の「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)ブランドに係る商品であることを表している。
請求人は、「ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社」の直営店「エンポリオ アルマーニ」を、東京、大阪、名古屋、神戸、横浜、札幌等の日本各地に設け、引用商標5「『EMPORIO ARMANI』及び欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」を付した上記各商品の販売を継続している(甲第32号証)。
さらに、請求人は、我が国において、ブランド「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)の宣伝広告にも力を入れ、雑誌等の媒体に引用商標5「『EMPORIO ARMANI』及び欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」を付した広告を盛大に行っており(甲第34号証ないし甲第41号証)、その広告費は、平成11年に86,248ユーロ(約1,162万円)、同12年に89,863ユーロ(約1,212万円)、同13年に101,225ユーロ(約1,360万円)、同14年に111,000ユーロ(約1,495万円)、及び同15年に189,000ユーロ(約2,547万円)に達している(甲第43号証)。
それに加えて、請求人は、1987年(昭和62年)から広告宣伝を目的として、顧客に対し、イタリアの本社が発行する「EMPORIO ARMANIマガジン」を1年に2度、それに日本語で記載したプライスブックを添付して、「EMPORIO ARMANI」の店舗等で盛大に配布しており、その中にも、引用商標5「『EMPORIO ARMANI』及び欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」が見られる(甲第32号証)。
請求人による、このような信用蓄積のための広告宣伝努力の結果、引用商標は、上記各種ファッション雑誌等により紹介され、取引者・需要者間に広く知られるようになった。
それにより、日本における「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)ブランドの売上げは、平成13年度に約1,800万ユーロ(約24億万円)、同15年度には約1,640万ユーロ(約22億円)に達した(甲第43号証)。
なお、「GIORGIO ARMANI」のブランドが世界的に著名で、その模倣が数多くあることから、請求人が世界的な保護活動を行っていることは、フランス国公益社団法人ユニオン デ ファブリカンも認めている。
また、請求人の商標は、特許庁発行の「外国周知商標集(イタリア編)」にも掲載されている(甲第45号証及び甲第50号証)。
そして、引用商標の著名性は、平成11年異議第90437号事件等においても認められている(甲第27号証)。
(イ)出所混同のおそれについて
引用商標2,5及び6並びに8ないし10の図形部分の「欧文字『GA』を内部に配してなる右向きの猛禽類の図形」は、それのみでも自他商品識別標識としての機能を発揮し得る。
また、上述のように、これらの図形は、請求人の継続使用及び企業努力により、いずれも著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」のデザインに係る請求人のブランド「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)若しくは略称「ARMANI」(アルマーニ)に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間で、極めて広く知られるに至っている。
したがって、本件商標中の「ROYAL ARMANY」の文字及び前記図形が付された商品に接した取引者・需要者は、その商品が著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」の手がける「ARMANI」(アルマーニ)ブランド、すなわち、上述の「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI JEANS」、「MANI」、「ARMANI」 、 「A/X ARMANI EXCHANGE」等の兄弟ブランドであるかの如く認識する可能性が高く、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号及び同第19号該当性について
(ア)商標法第4条第1項第19号
本件商標は、引用商標と、その構成及び態様が極めて酷似するものと認識されるおそれがある。すなわち、本件商標は、その構成中に、請求人の著名な引用商標1及び2並びに5ないし10中の「右向きの猛禽類の図形」と類似する図形を有し、かつ、著名な引用商標3ないし5の文字部分から生ずる「アルマーニ」の称呼と同一又は類似する「ARMANY」の文字を含むので、被請求人は、著名な引用商標を意識して本件商標を出願したものと推認し得る。
引用商標は、請求人による多年にわたる努力の結果、需要者間において広く知られ、高い名声・信用・評判を獲得するに至っており、本件商標の出願時には、すでに極めて広く知られていた。
さらに、本件商標の指定商品は、引用商標1,3及び4と同一の商品であり、引用商標2及び5と類似する商品である。
以上のことから、被請求人は、その出願時に著名な引用商標の存在を認識していたと推認され、偶然に著名な引用商標と同一又は類似する本件商標を出願したとは考え難い。
したがって、被請求人は、本件商標と印象を同じくする著名な引用商標の存在を知った上で、引用商標の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で本件商標を出願したものである。
また、被請求人若しくはその関連会社は、本件商標を付した商品を販売する際、「アルマーニ マークがレザー刻印」、「ロイヤル アルマーニ」等と表示している(甲第24号証)。
被請求人は、本件商標中の「ARMANY」の文字部分を「アルマーニ」として使用し、需要者等に著名な請求人の商品であるかの如き印象を与えている。
このような使用に係る被請求人による本件商標の出願は、「日本国内又は外国で周知な商標について信義則に反する不正の目的で出願する場合」に当たる。
本件商標は、請求人が永年にわたる営業努力により獲得した商標の名声・信用・評判にフリーライドし、不正に利用するものであり、被請求人が、これをその指定商品に使用することは、引用商標の出所表示機能を稀釈化させ、その名声を毀損させるものであり、不正の目的をもって使用するものである。
以上のことから、本件商標は、請求人の業務に係る商品の表示として日本国内又は外国において、需要者の間に広く認識されている著名な引用商標と相紛れるおそれのある類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(イ)商標法第4条第1項第7号
商標法は、不正競争防止法と並ぶ競業法であって、登録商標に化体した営業者の信用の維持を図るとともに、商標の使用を通じて商品又はサービスに係る取引秩序の維持を目的としている。
同法第4条第1項第7号は、前記目的を具現する条項の1つであり、審決では、「商標の構成自体が矯激、卑隈な文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念にしたがって検討した場合に、当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、あるいは他の法律によって、その使用が禁止されている商標、若しくは国際信義に反するような商標である場合も含まれる。」と解されており(昭和58年審判第19123号、平成年7月24日審決)、また、裁判所の判断においても同様に解されている(昭和27年10月10日 東京高昭和26年(行ナ)第29号)。
また、上記審決には、商標法第4条第1項第7号に規定する「公の秩序」中に、商品又はサービスに関する取引上の秩序が包含されている。
同号の公序良俗に関する解釈として、「我が国において、その名称又は略称をもって著名な外国の団体と無関係の者が、その承諾を得ずに、当該団体の名称又は略称からなる商標又はこれらに類似した商標の設定登録を受けることは、・・・(略)・・・名声を利用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもってなされたものと認められる限り、商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきであるから、商標法第4条第1項第7号によって該商標の登録を受けることができないものと解すべきである。」と判例においても示されている(ユベントス事件:東京高裁 平成10(行ケ)11号・12号判決)。
引用商標は、請求人の使用に係る著名商標であり、高い名声・信用・評判が化体している。引用商標1及び2並びに5ないし10は、「右向きの猛禽類の図形」を有しており、該図形が本件商標中の図形部分と類似することは上述のとおりである。
また、本件商標中の文字部分は、引用商標3ないし5の文字部分から生ずる「アルマーニ」の称呼と同一又は類似する称呼を生ずる「ARMANY」の文字を含んでいる。
さらに、本件商標の指定商品「時計」は、引用商標1ないし5の商品と同一又は類似のものであり、請求人の業務中の根幹をなす商品の一つである。
本件商標の出願時に、引用商標が請求人の業務に係る時計、被服等の商品に使用される著名商標と認識されていたことは明らかであり、同じ業界に属する本件商標の出願人が引用商標の著名性を知らずに、偶然に著名な引用商標と類似する本件商標を採択し、出願したとは考え難い。
引用商標が高い著名性を獲得していることを考慮すると、本件商標は、引用商標に化体した名声・信用・評判にフリーライド(ただ乗り)する意図のもとに出願されたと見るのが相当であり、引用商標の名声・信用・評判を稀釈化させ毀損するおそれがある。
また、被請求人が引用商標と相紛れるおそれある本件商標を登録し使用することは、引用商標の名声・信用・評判を僭用し、それに化体した信用を利用し不正な利益を得ようとするものである。
したがって、上記判例が示すように、本件商標の登録は、商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反し、公序良俗を害する。
また、このような本件商標の登録を維持することは、引用商標に化体した信用力、顧客吸引力を無償で利用する結果を招来し、公正な商品又は役務に関する取引秩序を維持する商標法の目的に合致しない。
以上のように、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるので、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(5)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)本件商標中の「ROYAL」の文字が「時計」について自他商品識別力が弱いことの立証がないとの被請求人の主張に対しては、既に甲第23号証を提出済みであるし、「ROYAL(ロイヤル)」の文字が時計の取引者によって、「高級時計」を誇示するために、名称中に好んで使用されることは、当該商品の業界における一般的取引の実情となっている(甲第54号証ないし甲第62号証)。
(イ)被請求人は、第17類「被服」等に関する審決(甲第22号証)では、「時計」について「ROYAL」の識別力を否定する根拠にはならない旨主張しているが、「被服」と「時計」は、ともにファッション関連商品に属しているし、「ROYAL」は商品の品質を誇示するために用いられる語と共通点を有しているうえ、「被服」に使用される文字が「時計」に使用された場合にも識別力を有しないと判断された事例もある(甲第63号証及び甲第64号証)。
(ウ)インターネットのショッピングサイト(以下、単に「サイト」という。)において、「時計」に「ロイヤル アルマーニ」の表示が使用されていることは、小売業者が独自に行っていることで被請求人は関知していないとの被請求人の主張に対しては、多数のサイトで「ロイヤル アルマーニ」と表示し、時計が販売されていること(甲第24号証)、その中には「ROYAL ARMANI」のように、請求人の著名な商標「ARMANI」と誤認混同を生ずる使用態様のものがあること(甲第65号証)、「ARMANI」の著名性に鑑みれば、時計の取引段階で、被請求人は、小売業者が「ARMANI」の著名性に便乗する目的で「ロイヤル アルマーニ」と表示する蓋然性が高いことを十分に予測し得た筈であることよりして、被請求人は、その事態を放任していながら、関知しないと主張することは、信義に反する。
(エ)被請求人は、登録商標「ROYAL」が存在していても、「ROYAL」の文字を含む商標が多数併存登録されていることを、本件商標との類否判断の参考にすべき旨主張しているが、該登録例のどれもが本件商標と構成を異にするので、それらは本件商標と引用商標とが非類似であることの根拠とはならない。
(オ)被請求人は、引用商標1及び2並びに5ないし10の図形は、「翼をV字状に広げた鳩(あるいは鳥)」と看取され、「猛禽類」とは認められないし、鷲の図形を表示してなる本件商標中の図形部分とは外観の印象が大きく異なる旨主張しているが、引用商標の図形は、「猛禽類」と既に判断されている(甲第28号証)。引用商標1及び2並びに5ないし10の図形と本件商標中の図形部分とは、ともに猛禽類を表示した図形と解され、外観上構成の軌を一にしている。
しかも、本件商標中の図形部分と引用商標1及び2並びに5ないし10の図形とは、頭部を右向きにし、翼を左右に広げた猛禽類の図形である点において共通しており、なおかつ、世界的に著名なデザイナーのジョルジオ アルマーニ又はそのデザインに係る標章「ARMANI」を想起させる点も共通している。
したがって、時と所を異にして離隔的に観察した場合、両商標は、外観上相紛れるおそれがあり、さらに、本件商標中の「ARMANY」の文字部分よりは、「アルマニー」以外に「アルマーニ」の称呼をも生ずるから、本件商標は、「アルマーニ」の称呼を生ずる引用商標3ないし5と称呼上類似する。
以上のことから、本件商標は、請求人の引用商標と類似し、引用商標1ないし5に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものである。
(カ)被請求人は、引用商標のどれが日本で著名かが不明である旨主張しているが、引用商標はデザイナー「GIORGIO ARMANI (ジョルジオ アルマーニ)」のブランド「EMPORIO ARMANI」に係る「時計」や「被服」等の商品に永年使用されている(甲第32号証ないし甲第47号証)。例えば、日本の「EMPORIO ARMANI」の店舗で配布されたもの(甲第32号証)、「GIORGIO ARMANI」の略称「ARMANI」の周知・著名性を立証するもの(甲第33号証)、同一の広告が複数の媒体に掲載されているもの(甲第33号証及び甲第34号証)をその根拠として挙げる。
(キ)被請求人は、「GIORGIO ARMANI」が服飾以外の商品について周知・著名であるとの立証がない旨述べているが、引用商標が「服飾」以外の商品についても周知・著名であるとした審決例から明らかである(甲第66号証:無効2000-35382号)。
(ク)本件商標は、単なる「ARMANY」の文字のみより構成されているものではないから、引用商標と誤認混同を生じないとの被請求人の主張に対しては、以下のように反論する。
(a)本件商標においては、「ROYAL ARMANY」の文字と猛禽類の図形とが外観上分離した態様で表されているだけでなく、該文字と図形とには、観念的なつながりがなく、それらを常に一体のものとして把握すべき特段の事情もないこと、したがって、該文字と図形とは、それぞれが独立して出所表示機能を発揮し得る。
(b)本件商標の「ROYAL ARMANY」の文字部分中、「ROYAL」は、自他商品識別力が弱いのに対し、「ARMANY」は、世界的に著名な請求人の標章「ARMANI」と「ARMAN」の5文字を共通にし、その差は僅かに語尾の「Y」と「I」の違いにすぎず、本件商標に接する取引者・需要者は、「ARMANY」の文字中の「ARMAN」の文字部分に着目し、これよりジョルジオ アルマーニの略称又は同人のデザインブランドの略称として著名な「ARMANI」を容易に想起する。
しかも、本件商標に係る指定商品「時計」の分野では、「ARMAN」の文字を含む登録商標のほとんどが請求人のものである(甲第67号証)。
また、「時計」は、いわゆるファッション関連商品に含まれ、引用商標に係る商品と密接な関連性を有し、かつ、購買者層を共通にしており、しかも、需要者は、ジョルジオ アルマーニが「時計」を含むファッション関連商品に「EMPORIO ARMANI」をはじめとする「ARMANI」の文字を含む標章をサブブランドとして採択していることを熟知している。
したがって、被請求人が本件商標をその指定商品「時計」に使用する場合、これに接する取引者・需要者は、本件商標があたかもジョルジオ アルマーニのサブブランドであるかの如く誤認・想起する蓋然性が高く、当該商品がデザイナー「GIORGIO ARMANI」又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがある。
(ケ)被請求人は、本件商標中の図形部分について、米軍の旗から、そのデザインを想起し、同人が独自に創作した旨主張しているが、立証はなく、その主張を俄かには信じ難い。
(コ)また、被請求人は、本件商標中の文字部分も同人の造語であって、何ら他人の商標には依拠していない旨述べているが、本件商標に係る指定商品「時計」の分野において「ARMAN」の文字から始まる登録商標がほとんど請求人のものであること、「ARMAN」の欧文字は、商品及び役務に使用する商標として、採択しやすい文字とはいい難いこと、さらに、被請求人は、時計・衣料雑貨・かばん・袋物等の卸売業者の代表者でもあることからすると(甲第72号証)、ファッション関連商品の情報に精通していたと推認し得るので、本件商標の採択時に、同人は、引用商標が「時計」を含むファッション関連商品に使用され、周知・著名であったことを認識していた筈である。
そうすると、ジョルジオ アルマーニ又は同人のデザインブランドの略称として著名な標章「ARMANI」と僅か一字違いの「ARMANY」を被請求人が偶然に採用したとの主張は、到底認めることができず、被請求人による本件商標の独自創作の主張は、採用し得ない。
(サ)被請求人は、本件商標をもって他人の名声・信用に便乗する意図は全くなかった旨述べているが、本件商標に係る時計を販売するサイトでは、被請求人の業務に係る時計が、ほぼ一様に「ロイヤル アルマーニ」と表示され、取引に資されているし(甲第24号証)、特に、被請求人の本件商標に係る「正規代理店」であって、「独占販売権」を有するとしている販売会社のサイトでは、本件商標に係る時計を「ROYAL ARMANY ロイヤルアルマーニ商品」と表示して販売しており、被請求人が主張する「ロイヤルアルマニー」の表示は使用されていない(甲第73号証)。
したがって、被請求人は、請求人のブランドイメージに便乗する意図で、本件商標を「ロイヤルアルマーニ」と表示し、小売業者に時計を販売していると推認できるし、前記サイトでは、「ROYAL ARMANY ロイヤルアルマーニ商品」が商標登録を受けた正規品であることを明示する傍ら、ROLEXロレックス・ブルガリなど海外の一流ブランドを押しのけてサイトで人気の「超一流ブランド」と宣伝している(甲第73号証)。
わが国における現在のインターネットショッピングの普及状況に鑑みれば、サイトを閲覧する者の多くが専門的なブランド知識を有しない一般的な取引者・需要者であることから、上記宣伝文句を見た取引者・需要者は、本件商標があたかも請求人のサブブランドであるかの如く誤認混同するおそれが非常に高い。
反面、「ROYAL ARMANY ロイヤルアルマーニ商品」は、多くの電子掲示板やサイトにおいて、「ARMANI(アルマーニ)の偽ブランド」と揶揄されている(甲第74号証ないし甲第76号証)。
以上のことからすると、本件商標は、取引者・需要者に対して、請求人の著名な標章「ARMANI」の「偽ブランド」との疑義を生じさせるものであり、引用商標の信用及び名声を毀損し、出所表示機能を稀釈化しているから、被請求人の主張は、到底採用し得ない。
(シ)小括
本件商標は、引用商標の出所表示機能を稀釈化し、名声を毀損する不正の目的(不正の利益を得る目的を含む。)で出願・登録し使用されていると推認し得るから、被請求人による本件商標の出願・登録及び使用は、公正な競業秩序を阻害し、国際信義に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)無効理由の認否については、いずれも争う。
証拠方法中、甲第1号証ないし甲第22号証、甲第25号証ないし甲第31号証、甲第33号証ないし甲第41号証、甲第45号証、甲第48号証、甲第49号証については、その成立を認める。
他方、甲第23号証、甲第24号証、甲第32号証、甲第42号証ないし甲第44号証、甲第46号証、甲第47号証、甲第50号証ないし甲第53号証については不知である。
請求人は、本件商標の構成態様についての認定判断を誤り、それに基づき主張しているので、その主張には理由がない。
(2)商標法第4条第1項11号該当性について、
(ア)本件商標の外観構成及び態様についての記載は認めるが、その称呼については争う。本件商標中の文字部分の自然称呼は、その欧文字「ROYAL ARMANY」から生ずる「ロイヤルアルマニィ」であり、それ以外の称呼は生じない。
すなわち、本件商標中の文字部分の構成態様は、欧文字で同書、同大、等間隔かつ一連に表示してなるから、あえて、これが分離して略称されるとは認められない。
また、本件商標中の文字部分は、全体として8音構成であり、特に、冗長感はなく、よどみなく一気一連の称呼を生ずる。
さらに、本件商標中の文字部分は、今日の取引業界における欧文字の氾濫等の事情を勘案しても、全体をもって一連のものとして認識され、かつ、特定の意味合いを認識し難い、いわゆる造語と認められ、それ自体まとまりのある一連一体の商標として取引に供される。
請求人は、「ROYAL」の文字部分に拘泥して、それが「被服」について自他商品識別力がないか又は弱いと判断された例(甲第22号証)を挙げているが、仮に、百歩譲って、商品「被服」を取り扱う業界において、「ROYAL」の文字が自他商品識別力を有しないか又は弱いとされたとしても、本件商標の指定商品は「時計」であり、時計を取り扱う取引者、需要者の間において、請求人が主張するような「慣行」があるとすべき取引の事情は認められず、その主張に伴う根拠や証拠もなく、何ら立証がされていない。
また、あえて、甲第23号証について述べると、商標「ROYAL ORIENT」は、登録商標であり、当該商標の商標権者が登録商標を使用しているにすぎない。
そして、請求人主張の「ROYAL」の文字が「商品の極上であること」を表し、商品の品質表示として、当業界において、一般的に多用されていることが認められない。
付言するに、「ROYAL」の文字自体が登録商標第386481号として現存していること、さらに、当業界最大手のセイコーも「ROYAL SEIKO」「ロイヤルセイコー」の態様で登録第4620735号の商標権を有しており、登録商標「ROYAL」が存在していても、それぞれが非類似の商標として登録され、現存している。特に、商標の前半部に「ROYAL」の文字を配してなる登録商標は、多数現存しており、それぞれが商標として機能を果たしている(乙第1号証)。かかる先行登録例は、本件商標における類否判断に参考とすべきである。
よって、本件商標中の文字部分の構成態様から生ずる称呼の特定に際し、請求人が主張する観察方法は、明らかに誤りである。
本件商標は、一連一体のものとして認識され、自然称呼のみをもって、取引に資され、自他商品を識別する機能が発揮され、取引者・需要者に認識されるものと認められる。
次に、請求人は、被請求人所有の本件商標の使用について述べているが、請求人提出の甲第24号証は、被請求人が関知しない「小売業者」において独自にデザインし、インターネット上に掲載したものと推定されるところ、請求人指摘の矢印部分は、「マーク」の刻印状態を述べたものである。
なお、当該資料全体をみるに、本件商標の同一性の範囲内の使用と認められる。
(イ)請求人による引用商標に関する主張については、概ね、認めるとしても、引用商標1及び2並びに5ないし10の図形部分については、いずれも看者により「翼をV字状に広げた鳩(あるいは鳥)」と看取され、それが顕著な特徴を有する部分として認識され、取引に供されていると認められる。
特に、上記引用商標の図形部分については、請求人がこだわる「猛禽類」とは到底認め難く、本件商標のデザインの精巧さに比し、稚拙な「鳩(あるいは鳥)が飛び立つ図」のデザインと認められ、その特徴及び印象が感知されるものといわざるを得ない。
(ウ)本件商標と引用商標との類否については、前記のとおり、請求人が本件商標の構成態様から生ずる外観、称呼及び観念の判断を誤り、それに基づき論述していることから、到底認容できるものではなく、請求人独自の希望的見解を主張したにすぎない。
被請求人は、請求理由の各項目につき、以下のとおり答弁する。
(a)外観類似について
本件商標の構成態様は、甲第1号証のとおりであるところ、一瞥一見するとき、その特徴は、鷲(あるいは鷹)の首部を横にし、頭部に冠を配し、翼の形状に丸みを帯びさせて表現してなるものであり、しかも、その首部は、翼の中に位置している。特に、「目」の表現に特徴・印象があるものと認められる。
これに対して、引用商標1及び2並びに5ないし10の図形部分は、いずれも前記(イ)のとおり、鳩(あるいは鳥)の首部を横にし、翼をV字状にしたものと認められる。
また、引用商標2及び10の図形部分は、全体に横線を配してなる商標と認められる。
しかして、両商標については、前述の特徴を比較検討すれば明らかなとおり、本件商標からは、頭部の冠と翼の中に首部があること及び「目」の存在並びに翼の流線型の印象が強く看取し得るが、引用商標には、本件商標の前記特徴が全くなく、単に鳩(鳥)がV字状に翼を広げた図形あるいは檻に入った鳩(鳥)の印象と認められる。
してみると、本件商標と引用商標とは、その視覚的印象における外観上の類否において、明らかに別異の印象があり、その構成上の顕著な相違が商標全体の外観に及ばす影響は大きく、時と所を異にして離隔的に観察しても、彼此誤認混同を生じ難い非類似の商標であることは明らかであり、あえて、事案を異にする甲第25号証ないし甲第28号証を参照するまでもなく、請求人の主張は誤っているといわざるを得ない。
(b)称呼類似について、
本件商標中の文字部分「ROYAL ARMANY」から生ずる自然称呼は、「ロイヤルアルマニィ」であり、他の称呼は生じない。すなわち、今日の欧文字の氾濫した取引界においては、英語読みかローマ字読みとしての称呼を生ずるから、本件商標に接する一般的な取引者、需要者は、自然に「ロイヤルアルマニィ」と称呼する。
そして、該称呼には冗長感がなく、よどみなく一連一体の自然称呼をもって取引に供されるとみるのが合理的であり、あえて、これを分離して略称すべき特段の事情も認められない。
次に、引用商標3及び4から生ずる称呼は「アルマニィ」であり、そして、引用商標5の文字部分から生ずる称呼は「エンポリオ」あるいは「アルマニィ」、又は請求人主張の「エンポリオアルマニィ」の称呼が生ずる場合があるかもしれない。
しかして、本件商標と引用商標3ないし5とは、それぞれを比較検討するまでもなく、その自然称呼の構成音及び音数において、明らかな差異を有するから、何ら誤聴のおそれはなく称呼上非類似の商標である。
(c)観念類似について
本件商標中の図形部分の特徴は、前記したとおりであり、引用商標とは、特徴的イメージ及び印象を異にしており、たとえ、本件商標が看者において、「猛禽類の図形」と印象付けられる場合があり得ても、引用商標に接する一般的な取引者、需要者は、「鳩の飛び立つ様」あるいは「鳥の飛び立つ様」との印象を容易に認識し把握することから、その観念については、比較するまでもなく、誤認混同を生ずるおそれのない非類似の商標である。
(エ)小括
叙上のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、誤認混同を生ずるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
(ア)引用商標の著名性について、
請求人は、イタリア国の服飾デザイナーとして「GIORGIO ARMANI」が周知・著名である旨述べているが、引用商標のどれが(あるいは全部か)日本で周知・著名なのか不明である。
また、引用商標5が著名であることの資料として、請求人が提出した甲第32号証は、請求人の商品カタログとされているが、日本で配布された立証はないし、かつ、甲第33号証は、「Giorgio Armani」による商品「香水」についての「ARMANI」の使用と認められ、主張事実と異なる。
そして、甲第34号証と甲第35号証に掲載の「時計」の広告は同一である。
さらに、甲第44号証は、請求人の日本における総販売管理会社「ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社」の概要に関する記載であるが、その取扱商品には、引用商標3及び4に係る商品の記載はない。
仮に、イタリア国の服飾デザイナーとして「GIORGIO ARMANI」の名前が周知・著名だとしても、それは服飾製品に関することであり、請求人主張の「様々な商品について、日本の取引者・需要者の間において広く知られていること」を肯定すべき特段の証拠はなく、請求人が単に希望的見解を述べているにすぎない。
請求人が日本において周知・著名であるとしているデザイナー名や引用商標5「EMPORIO(図形)ARMANI」の使用に伴う業務上の信用は、デザイナー本人に帰属するものと認められるから、請求人がそれと同様に周知・著名であると解されるべき根拠はなく、また、請求人が引用商標の権利者であることを、一般的な取引者、需要者中にあって知る者は皆無といっても過言でなく、被請求人の本件商標と請求人の引用商標とは、商品の出所について誤認混同を全く生じない。
(イ)出所混同のおそれについて、
請求人は、本件商標が単なる「ARMANY」であるかの如く曲解し、それに基づく持論を繰り返しているが、本件商標の外観からみた構成態様は、前記のとおりであるから、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、誤認混同を生ずるおそれのない非類似の商標であり、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、出所の誤認混同を生じないことは明らかである。
たとえ、商品の出所が請求人であったとしても、請求人は、何ら周知・著名でなく、日本において無名であるから、被請求人の商品と誤認混同を生ずる余地はないし、仮に、商品の出所がデザイナーのジョルジオ アルマーニであったとしても、本件商標と引用商標とは、明らかに非類似の商標であるから、誤認混同を生じないことは明らかである。
(ウ)小括について
請求人は、本件商標の登録出願当時に、紳士服等に使用する引用商標が周知・著名であったこと、時計に表示する商標が小さく表示される取引の実情から、本件商標は、請求人の商品と出所について混同を招来する可能性があると主張するが、本件商標の登録出願当時、既に周知であったと請求人が主張している引用商標を請求人[引用商標の権利者(イタリア国の著名な服飾デザイナーではない。)]の出所に係る商品を表示するものとして誰が認識し、取引するのか、請求人の商品であると認識する者は皆無といっても過言でなく、しかも、取引の事情から混同を招く事態も皆無である。
(4)商標法第4条第1項第7号及び同第19号該当性について、
(ア)商標法第4条第1項第19号
請求人は、被請求人が本件商標の登録出願当時、既に著名な引用商標を意識して出願した意図が推認できるから、不正の目的をもって使用するものであると主張するが、本件商標は、被請求人が米軍の旗から想起し、会社の飛躍と業界のトップを目指して、鷲あるいは鷹の頭部に冠を配し、翼を左右に伸ばして飛躍を表現したデザインを創作し、「ROYAL ARMANY」という造語と一体にして出願し、権利を確保したものである。
独自性が十分に認められる態様であり、他人の標章に依拠したとの請求人の主張は、認められない。
本件商標と引用商標とは非類似であり、審査においても、拒絶理由はなく、登録されたものである。
本件商標については、その登録後に、請求人から本件審判請求と同じ理由の登録異議の申立てを受けたが、登録を維持する旨の異議決定を得ており、何ら商標法第4条第1項第19号に該当する理由はない。
商標選択の自由は、何人にも認められており、しかも、審査において商標の類否判断が的確になされていることから、被請求人に、他人の名声・信用に便乗する意図があったことは、全く認められない。
(イ)商標法第4条第1項第7号
本件商標は、過去の審判決に照らし、公序良俗違反とされるべき理由はない。
本件商標と引用商標とは明確に区別可能な非類似の商標であり、その構成自体及び使用においても、いわゆる「冒用」と認められる事情はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(5)結び
叙上のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であり、かつ、本件商標は、被請求人が独自に創作したデザインに係るものであるから、何ら無効理由に該当しない。
参考までに、被請求人は、商標中の前半部に「ROYAL」を配してなる態様の登録商標の存在を提示する(乙第1号証)。
次に、被請求人は、請求人が主張する態様、すなわち「頭部を右向き(あるいは左向き)にし、翼を左右に広げた猛禽類の図形」と認められる登録商標の存在を提示する(乙第2号証)。
請求人は、本件商標に対し、本件審判請求と同様の理由で登録異議の申立て(異議2004-90702)を行ったが、被請求人は、本件商標の登録を維持するとの異議決定(乙第3号証)を得ている。当該異議事件では、被請求人(商標権者)に対し、取消理由通知の送付(意見書提出の機会が与えられる。)はなく、当該異議の申立てには理由がないとの決定がなされたことを本件の審理においても、充分に参考とすべきである。

5 当審の判断
(1)引用商標の周知、著名性について
請求人提出の証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)「服飾辞典」(昭和54年4月13日文化出版局[第二刷]発行:甲第29号証)の30頁「ジョルジョ・アルマーニ[Giorgio Armani,1935?]」の項には、「イタリア北部のエミリアに生まれる。・・その後、ヒルトンで7年間、高級紳士服の仕事を続け、1975年にはじめて『アルマーニ』という自分の店を開く。紳士物のエッセンスを婦人物にいかし、わずか3年間で、『ジャケットの王様』といわれるほど名がひろまる。・・ミラノに住み、1日8時間から9時間を仕事に費やす。何よりも仕事が好き、というアルマーニである。」との紹介記事が掲載されている。
また、「新・田中千代服飾事典」(1991年[平成3年]10月22日同文書院[第一刷]発行:甲第30号証)の670頁「ジョルジョ・アルマーニ[Giorgio Armani]」の項に、「G.フェレ、G.ヴェルサーチェと共にミラノの3Gの一人で、1980年代の代表的なデザイナーである。」として、紹介記事が掲載されている。
さらに、「英和商品名辞典」(1991年[平成3年]株式会社研究社[第二刷]発行:甲第31号証)の176頁「Giorgio Armani ジョルジオアルマーニ」の項に、「・・。紳士・婦人物の直売チェーン店Armani Emporioもある。近年、価格帯を少し低めに設定したブランドEmporio Armaniを市場化しており人気を得ている。・・」との記述があり、また、22頁「Armani アルマーニ」の項に、「⇒Giorgio Armani」と表示され、これにより、「Giorgio Armani(ジョルジオアルマーニ)」が「Armani(アルマーニ)」と略称されていることが推認し得る。
(イ)本件商標の出願前に我が国において発行されたと認められる以下の各種雑誌には、引用商標に係る宣伝広告が掲載されている。
(a)「世界の特選品’93」(別冊家庭画報版 平成5年発行:甲第33号証)の277頁「Giorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)」の項に、商品(化粧品)が掲載され、その容器には「ARMANI」の文字が表示されている。
(b)雑誌「popeye」(1999年[平成11年]4月25日発行:甲第34号証)、同「Begin ビギン」(1999年[平成11年]5月1日発行:甲第35号証)、同「Oggi オッジ」(1999年[平成11年]7月1日発行:甲第36号証)、同「BAZAAR ハーパース・バザー(2002年[平成14年]1月1日及び同年7月1日発行:甲第39号証及び甲第41号証)及び同「MEN’S CLUB」(2002年[平成14年]6月1日発行:甲第40号証)の各広告には、引用商標5が表示され、文字盤に引用商標2及び5が表示された腕時計が掲載されている。
(c)雑誌「CREA クレア」(2000年[平成12年]12月号:甲第37号証)には、時計の写真と引用商標5が表示された広告が掲載されている。
(d)雑誌「pen」(2001年[平成13年]12月1日発行:甲第38号証)の広告には、引用商標5が表示され、文字盤に引用商標2が表示された腕時計が掲載されている。
(e)請求人の2004年版及び2003年版の各商品カタログ(甲第46号証及び甲第47号証)には、その表紙に引用商標5が表示され(2003年版には、引用商標2も表示されている。)、また、その文字盤に引用商標2及び5が表示された腕時計が掲載されている。
(ウ)2001年[平成13年]4月23日から29日までの間、東京においては、東京駅ほかJRの5駅、銀座ほか営団地下鉄の34駅に、引用商標5を表示し、商品時計を掲載した宣伝用構内ポスターが掲示され、また、大阪においては、JRの大阪駅や地下鉄の8駅、さらに、神戸では、阪急の1駅に、同様のポスターが掲示された(甲第42号証)。
(エ)「外国周知商標集(イタリア編)」(甲第45号証)には、「ARMANI」、「GIORGIO ARMANI」、「EMPORIO ARMANI」等の文字商標のほか、引用商標2及び5並びに引用商標10が掲載されている。
(オ)「EMPORIO ARMANI(エンポリオ アルマーニ)」の日本における売上高は、2001年[平成13年]度で約1836万ユーロ(約24億円)、2003年[平成15年]度は約1640万ユーロ(約22億円)に達した(甲第43号証)。
(カ)「ARMANI」、「アルマーニ」は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)のデザインに係る商品群を表示するブランドとして著名な『GIORGIO ARMANI』、『ジョルジオ アルマーニ』の略称であって、件外登録第4163407号商標の登録出願(平成8年2月16日)前より、わが国のファッション関連商品の分野において広く認識されていた・・・その著名性は、上記件外登録商標の登録査定時(平成10年5月18日)においても継続していた・・・」という認定及び「EMPORIO ARMANI」、「エンポリオ アルマーニ」についても、前記デザイナーのデザインに係る商品群を表示するブランドとしている認定がある(甲第66号証)。
(キ)以上を総合すると、引用商標2及び5は、本件商標の登録出願(平成16年1月30日)前より、イタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)」の「ARMANI」商標群の一つとして、時計(腕時計)に使用され、盛大かつ継続的に宣伝広告された結果、前記「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)」の取り扱いに係る商品を表示する商標として、わが国において、商品「時計」の需要者間において広く認識されていたことが認められ、その周知・著名性は、本件商標の出願時ないし登録査定時(平成16年7月15日)においても継続していたことを認めることができる。
(2)本件商標と引用商標との類似性について
(ア)本件商標
本件商標は、別掲(1)に表示したとおり、等間隔の横線を有する翼を左右に広げ、右向きの頭部に冠を配した猛禽類の図形と、その下に「ROYAL ARMANY」の文字を配した構成よりなるものである。
そして、当該構成中の「ROYAL ARMANY」の文字は、「ROYAL」と「ARMANY」との間に半文字分程の空白(スペース)があり、視覚上分離して認識されるだけでなく、これを常に一体不可分のものとして看取すべき格別の理由も見いだせないものである。
しかして、そのうちの「ROYAL」の文字部分は、それに続く語を「極上(の),高級(な)」等の意味合いで形容する語と看取される結果、自他商品識別標識としての機能を果たす主要部は、「ARMANY」の文字部分にあり、本件商標に接する取引者、需要者は、該「ROYAL ARMANY」中の「ARMANY」の文字部分に着目して取引に資する場合も決して少なくないというのが相当である。
してみると、本件商標からは、該「ROYAL ARMANY」の全体文字に相応して生ずる「ロイヤルアルマニイ」の称呼とは別に、「ARMANY」の文字部分より「アルマニイ」の称呼をも生ずるというべきである。
また、本件商標の構成からは、第一義的には特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標
引用商標2は、頭部を右向きにし、等間隔の横線を有する翼を左右に広げた猛禽類の図形の下部に欧文字「GA」を白抜きで表示した構成よりなるものである。
引用商標5は、「EMPORIO」と「ARMANI」との文字間に、前記引用商標2の図形を配した構成よりなるものである。
そして、引用商標5からは、「EMPORIO ARMANI」の文字部分の全体に相応して「エンポリオアルマーニ」の称呼を生ずるほか、前記著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)」の略称であり、同人の取扱いに係る商品を表示する標章として知られ、強い印象力を有する「ARMANI」の文字部分に相応して「アルマーニ」の称呼をも生ずる。
(ウ)商標の類似性
本件商標中の文字部分「ROYAL ARMANY」の構成中にあって、取引上ひときわ強く着目される「ARMANY」の文字部分と著名なイタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)」の略称であって、同人の取り扱いに係る商品を表示する標章として広く知られ、強い印象力を有する「ARMANI」の文字部分とを対比するに、両者は、冒頭からの「ARMAN」の5文字を共通にし、その異なるところは、末尾における「Y」と「I」の文字の差にすぎない。
しかるに、「Y」と「I」は、ともに「イ」の音、母音(i)を共通にする近似した文字といえるだけでなく、その前段にあって圧倒的な比率を占める「ARMAN」の各文字にいずれも続くことから、双方を誤り又は綴り字を取り違えるおそれが十分にあるものとみるのが相当である。
ちなみに、甲第65号証における時計の文字盤には、「ROYAL ARMANY」と表示されているが、その時計についての小見出しには、「ROYALARMANIロイヤルアルマーニ」と表記されていることは、その一例として十分に認め得る。
また、本件商標中の「ROYAL ARMANY」の文字における「ARMANY」より生ずる称呼「アルマニイ」と、著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)」の略称であり、同人の取り扱いに係る商品を表示する標章として広く知られ、強い印象力を有する「ARMANI」より生ずる称呼「アルマーニ」とを対比すると、両者は、称呼の識別上重要な要素を占める語頭からの「ア」「ル」「マ」「ニ」の各音を同じくし、その異なるところは、後者の第3音目の「マ」に長音(「ー」)を伴うことと、前者の第4音「ニ」(ni)に同母音「イ」(i)を伴うことの微差にすぎない。
しかるに、長音は、前音「マ」をやや伸ばすにすぎず、音調・音感を同じくするし、また、「ニ」に続く「イ」も前音「ニ」の母音(i)を若干伸ばす程のものであって、これまた「ニ」と音調・音感を同じくするものであるから、両者を全体として、それぞれ一連に称呼するときは、彼此聴き誤るおそれのある類似の商標と認め得る。
さらに、本件商標中の図形部分と引用商標2及び5並びに10の図形部分とは、双方を仔細にみれば、王冠や目の有無及び首の部分に差異があるとしても、いずれも頭部を右向きにし、等間隔の横線を有する翼を左右に広げた基本構図を同じくしていること、また、種類は定かでないとしても、嘴の鋭利さから、いずれも猛禽類の図形を看者にイメージさせる点において、共通している。
しかも、文字や図形の商標が時計(殊に、腕時計)に使用されるときには、当該商標は、文字盤内に小さく表示されるのが一般的であり、そうした取引の実情よりすると、本件商標中の図形部分と引用商標2及び5並びに10の図形部分の些細な異同は、需要者にとって、「頭部を右向きにし、等間隔の横線を有する翼を左右に広げた猛禽類の図形」という基本構図の共通性に比べ、さほど気にもされず、優に捨象して看取される場合が多いとみるのが相当であるから、両商標は、外観上及び第二義的には観念上も極めて近似したものとして看取し把握され、あるいは記憶して取引に資される場合が決して少なくないというべきである。
以上のとおりであるから、上記称呼、外観及び観念上の近似性を含めて総合勘案すると、本件商標と引用商標とは、その類似性の程度が決して低いものということはできない。
(3)商品の関連性
本件商標の指定商品が「時計」であるのに対し、引用商標は、前記1のとおり、被服をはじめとして、時計を含む各種商品に使用されているものであり、特に、引用商標1,3及び4は、その指定商品中に「時計」を包含しており、また、引用商標2及び5は、その指定商品中に「時計」と類似する商品「計時用具」を含んでいるものである。
してみると、本件商標の指定商品は、引用商標の使用に係る商品と同一又は類似するか、あるいは、ともにファッション関連商品同士であって、その関連性が相当に高いものというべきであり、しかも、その需要者層を共通にするものである。
(4)出所混同のおそれについて
引用商標の周知・著名性の程度、本件商標と引用商標との類似性の程度、使用に係る両商品間の密接な関連性、需要者層の共通性等を総合勘案すると、本件商標の登録出願時ないし査定時において、被請求人が本件商標をその指定商品「時計」に使用した場合、これに接する需要者等は、引用商標を想起し連想して、該商品を前記デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)」の取り扱いに係る商品、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者(例えば、請求人等)の業務に係る商品であるかの如く誤信し、その出所について混同を生ずるおそれが十分にあったものといわなければならない。
ところで、一般的な需要者は、周知・著名な商標について、多少は知り得ても、それが果たして、正当権利者の出所に係る商品か否かということまでは、明確に認識していないというのが相当であるところ、時計の文字盤に、たとえ、「ROYAL ARMANY」の表示がなされているとしても、著名な「ARMANI」又は「アルマーニ」の文字を含む商標に本件商標の文字部分の一部を変更使用したと認められるもの(ROYALARMANIロイヤルアルマーニ:甲第65号証及び甲第24号証)がサイト上とはいえ、現に使用されている事実があり、その使用商標との関係において、他人の周知・著名な商標の出所を表示する商品と誤認混同を生ずるおそれが優にあるものと認められる以上、需要者保護という商標法上のもう一つの目的からしても、そのような商標登録の確保が許されないことは明らかである。
そして、本件にあっては、上記のとおり、商品の出所について混同を生ずるおそれがあったと判断し得るから、本件商標と引用商標との間に、商品の出所について混同を生ずるおそれがないとの被請求人の主張は、必ずしも現実には妥当でなく、これを採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものと認められるから、請求人の主張するその余の無効理由について判断を示すまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)引用商標1


(3)引用商標2


(4)引用商標5


(5)引用商標6及び8並びに9


(6)引用商標7


(7)引用商標10


審理終結日 2007-02-14 
結審通知日 2007-02-19 
審決日 2007-03-14 
出願番号 商願2004-12078(T2004-12078) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y14)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 鈴木 新五
久我 敬史
登録日 2004-08-20 
登録番号 商標登録第4795941号(T4795941) 
商標の称呼 ロイヤルアーマニー、ロイアルアーマニー、ローヤルアーマニー、ロイヤルアルマニー、ロイアルアルマニー、ローヤルアルマニー 
代理人 三嶋 景治 
復代理人 佐藤 俊司 
代理人 稲葉 良幸 
復代理人 宮川 美津子 
復代理人 石田 良子 
代理人 田中 克郎 
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