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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
管理番号 1175883 
審判番号 無効2007-890033 
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-03-22 
確定日 2008-03-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5010670号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5010670号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5010670号商標(以下「本件商標」という。)は、「ぴあっこおいしいヨード卵」の文字を標準文字で書してなり、平成18年1月11日に登録出願、第29類「ヨウ素を多く含む卵,ヨウ素を多く含む加工卵」を指定商品として、平成18年12月15日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、次の1ないし10である。
1 商願2006-80836に係る商標(以下「引用商標1」という。)は、「ヨード卵」の文字を標準文字で書してなり、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」並びに第3類、第8類、第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第25類、第28類、第30類、第31類、第33類及び第43類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成18年8月31日に登録出願され、その後、第30類に属する指定商品については、平成19年10月1日付けの手続補正書で該手続補正書に記載されたとおりの商品に補正されたものである。

2 商願2006-120805に係る商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」並びに第30類、第33類及び第43類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成18年12月28日に登録出願され、その後、第30類に属する指定商品については、平成19年9月25日付けの手続補正書で該手続補正書に記載されたとおりの商品に補正されたものであるが、本願については、平成19年11月13日に拒絶査定がされたものである。

3 商願2006-79311に係る商標(以下「引用商標3」という。)は、「ヨードラン」の文字と「ヨード卵」の文字を二段に横書きしてなり、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」並びに第30類、第33類及び第43類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成18年8月25日に登録出願され、その後、第30類に指定商品については、平成19年7月6日付けの手続補正書で該手続補正書に記載されたとおりの商品に補正されたものであるが、本願については、平成19年10月2日に拒絶査定がされ、拒絶が確定しているものである。

4 登録第295720号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ヨードラン」の文字を縦書きしてなり、昭和11年11月5日に登録出願、第45類「他類ニ属セサル食料品及加味品」を指定商品として、昭和12年11月2日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

5 登録第2195022号の2商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和62年5月30日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年12月25日に設定登録された登録第2195022号商標を原登録商標とし、その指定商品中の「卵」についての商標登録を分割移転し、その登録が平成8年8月26日にされたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

6 登録第4544957号商標(以下「引用商標6」という。)は、「ヨード卵光」の文字を標準文字で書してなり、平成11年12月14日に登録出願、第29類「ヨウ素を多量に含む卵,ヨウ素を多量に含む卵を用いてなる加工卵」を指定商品として、平成14年2月22日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

7 登録第4544958号商標(以下「引用商標7」という。)は、「ヨード卵・光」の文字を標準文字で書してなり、平成11年12月14日に登録出願、第29類「ヨウ素を多量に含む卵,ヨウ素を多量に含む卵を用いてなる加工卵」を指定商品として、平成14年2月22日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

8 登録第4544959号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成11年12月14日に登録出願、第29類「ヨウ素を多量に含む卵,ヨウ素を多量に含む卵を用いてなる加工卵」を指定商品として、平成14年2月22日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

9 登録第4544960号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、平成11年12月14日に登録出願、第29類「ヨウ素を多量に含む卵,ヨウ素を多量に含む卵を用いてなる加工卵」を指定商品として、平成14年2月22日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

10 登録第4709842号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、平成14年4月12日に登録出願、第29類「ヨウ素を多量に含む卵,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる加工卵,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる乳製品,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる食用油脂,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるスープのもと,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるお茶漬けのり,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるふりかけ,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる油揚げ,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる凍り豆腐,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるこんにゃく,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる豆乳,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる豆腐,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる納豆」及び第30類「ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる穀物の加工品,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるぎょうざ,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるサンドイッチ,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるしゅうまい,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるすし,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるたこ焼き,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる肉まんじゅう,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるハンバーガー,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるピザ,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるべんとう,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるホットドッグ,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるミートパイ,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるラビオリ,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなる即席菓子のもと,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるアイスクリームのもと,ヨウ素を多量に含む卵を加味してなるシャーベットのもと」を指定商品として、平成15年9月12日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第43号証(枝番号を含む。)を提出した(甲号証の枝番号を有するものについて、枝番号のすべてを引用するときは、以下枝番号を省略する。)。
1 請求の理由
(1)「ヨード卵」の語について
ア 「ヨード卵」の語は、品質表示に当たらず識別力を有するものである。
すなわち、請求人の研究開発センター長作成の報告書「一般卵中のヨウ素含量について」(甲第4号証)によれば、一般卵にもヨウ素が微量ながら含まれていることが明らかであり、「ヨウ素を含む」ことを暗示させることは、なんら卵の品質の特定にはつながらない。
また、本件商標の指定商品について、被請求人が「ヨード卵,ヨード卵の加工卵」と補正したところ、商標法第6条第1項の要件を具備しないとの拒絶理由通知を受け(甲第5号証)、「ヨウ素を多く含む卵,ヨウ素を多く含む加工卵」と補正している経緯からも明らかであり、「ヨード卵」自体が品質表示であると判断される場合には、このような拒絶理由はかからない。少なくとも「ヨード」の部分に識別力がある証左である。
さらに、後述するように、「ヨード卵」は、請求人の著名な商品表示として識別力を発揮している。

イ 請求人は、「ヨード卵」の語について、過去に普通の文字での登録を試みたが(商願平10-72067号、審判平11-19966号)、当時は、審判において周知性の立証に十分な証拠を収集することができなかったことと、審決取消訴訟までは争わないという方針のため、登録を断念した経緯がある。
また、当時から2006年以前は、「ヨード卵」の語は、請求人の商品表示として卵の業界において尊重されていたため、請求人も敢えて「ヨード卵」について再度出願することは考えていなかった。
しかしながら、2006年(平成18年)に、本件商標を含め「ヨード卵」の語を含む商標が他人により10件も出願された。
また、請求人の業務に係る商品「ヨード卵」(以下「請求人商品」という。)は、2006年で発売30周年を迎えたところであり、請求人はこの事態に対処するため、引用商標1ないし引用商標3の商標を新たに出願した。
これらの商標は出願中であるが、既に請求人の商標として、30年以上の使用実績がある。
また、登録商標としては、引用商標4ないし引用商標10がある。

(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標構成中の「ぴあっこ」の文字部分は、特定の観念を生じない造語とみられ、「ヨード卵」とは観念上のつながりがないので、「ぴあっこ」の文字と「ヨード卵」の文字は別異に看取される。
また、「おいしい」の文字部分は、識別力を有さない単なる品質表示であり、「ヨード卵」を修飾する関係にある。
そして、本件商標は、その要部たる「ヨード卵」の文字部分より「ヨードラン」の称呼を生ずる。
一方、引用商標4は、その構成文字より「ヨードラン」の称呼を生ずる。
したがって、本件商標と引用商標4は、「ヨードラン」の称呼を同じくする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は、引用商標4の指定商品と同一又は類似の商品である。

(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 「ヨード卵」の語の周知性について
次に述べるとおり、「ヨード卵」の語は、請求人商品を表示するものとして周知である。

(ア)請求人は、昭和6年創業の飼料業界大手であって、一般需要者に、特殊卵として周知の「ヨード卵」で知られる企業である(甲第6号証)。
請求人商品は、請求人の研究開発により、1976年(昭和51年)8月、特殊卵、いわゆるブランド卵の先駆けとして、請求人が最初に販売の開始をした。1977年(昭和52年)に週刊ポストに「慢性難病もこわくない」として紹介された(甲第13号証)のをきっかけに、請求人の支店及びグループ会社(甲第6号証)を通じて全国展開をした。
1980年(昭和55年)には、その年のヒット商品として紹介され(甲第17号証の6)、販売数量も1000万パックとなった(甲第17号証の33)。
その後、1983年(昭和58年)には、CM放送を開始(甲第10号証)し、1996年(平成8年)に発売20周年キャンペーンとして、シールセービングキャンペーンを開始した結果、請求人商品の売上げは大幅に伸び(甲第17号証の63)、2000年(平成10年)の販売数量は4000万を超えている。
2006年は、請求人商品が発売されて30周年にあたり、請求人は「30周年ありがとうプレゼント」のキャンペーンを大々的に行ったところであり、また、「食の学習」作品コンクールなどの記念事業も行った(甲第7号証)。
請求人商品は、生卵だけでなく、「温泉たまご」等の加工卵、「卵スープ」、「玉子どうふ」などの加工食品に至るまで、幅広い商品群となっている(甲第8号証)。
次に、請求人商品の発売開始から今日に至るまで、商品表示としての「ヨード卵」の周知性を示す具体的な証拠を示す。
(a)甲第9号証及び甲第10号証は、請求人商品が、ユニークなテレビコマーシャルでも知られていることを示すものである。
今日のように食の安全が語られることがなかった30年前から「品質と成分に『光』を当ててきた」として、製品の品質を焦点としている。

(b)甲第11号証は、請求人商品が需要者から「ヨード卵」と指称されている事実を示す、需要者から請求人への問い合わせ等である。

(c)甲第12号証は、請求人商品がスーパーマーケット等の大手量販店のレシートに表示された一覧である。
ある店舗では「ヨード卵」と表記され、他の店舗では「ヨード卵・光」と表示されても、需要者に混乱が起きていないのは、請求人商品の他に「ヨード卵」という商品がなかったためであり、「ヨード卵」、すなわち「ヨード卵・光」と需要者に認知されていることを示している。

(d)甲第13号証は、請求人商品が全国展開するきっかけとなった、1977年に「週刊ポスト」に掲載された記事である。

(e)甲第14号証は、請求人商品の特殊卵市場におけるシェアを示すものであって、甲第14号証の1は、ABC分析によりAクラスと判定された特殊卵銘柄のシェアであり、「ヨード卵」が首位で10.7%となっている。
また、甲第14号証の2は、2006年11月調べの特殊卵配荷率の統計であり、特殊卵販売金額上位20銘柄のうち、「ヨード卵」が首位で83.8%となっている。

(f)甲第15号証は、「ヨード卵」に関する各種アンケート結果抜粋である。
甲第15号証の1(「『ヨード卵光』の購買意識及び『ノーサングループ』に関する基礎調査」:2006年1月実施)の商品認知度状況(4頁)及び年代別(5頁)によれば、各世代とも80%以上の者が「知っている」と回答しており、世代を問わずに広く認知されていることが伺える。
甲第15号証の2(「『ヨード卵・光』ギフト券プレゼント当選者」への卵に関する調査:2005年9月実施)は、わが国最大のインターネット上の女性口コミサイトである「ベネッセウィメンズパーク」で、同サイトのプレゼント企画に当選した332名を対象に、「ヨード卵・光」に関するアンケートを実施したものであり、「ヨード卵・光」について、79%の者が「ヨード卵」と表記した。
甲第15号証の3(「『ヨード卵・光』街頭アンケート調査(第1回):2003年7月実施)の結果報告書(18頁)によれば、「ヨード卵・光」を「よく知っている」、「少しは知っている」と答えた者が84.8%であることを示している。
甲第15号証の4(「『ヨード卵・光』街頭アンケート調査(第2回):2003年11月実施)の結果報告書(6頁)によれば、ブランド卵といって想起するブランド名として「ヨード卵・光」が55.7%と圧倒的に高い比率を示している。

(g)甲第16号証は、請求人商品の広告掲載紙一覧であり、甲第17号証は、販売開始後間もない1980年代を中心とする掲載広告、取材記事等、甲第18号証は、2006年の掲載広告、取材記事等である。

(h)請求人商品は、発売後間もない1980年代は、1個50円という当時としては高価格の卵として注目されており、紹介記事の中では「ヨード卵」として表記されている。
現在の鶏卵市場では、「一般卵」と「特殊卵(ブランド卵)」に分けられているが、請求人商品の発売当時はこのような特殊卵という分類はなく(甲第19号証)、特殊卵の先鞭をつけたのが請求人商品であり(甲第20号証)、相場に応じて価格が変動する一般卵に対して、1個50円の固定価格を設定した始めての卵である。
請求人商品は、大手食品会社の代表的製品を紹介する「創業の逸品(日本の食文化を彩る厳選88品)」(甲第21号証)において、「それまで日本には名前が付いた卵というものは存在していなかった」と我が国初のブランド卵として紹介され、また、鶏卵業界紙の「鶏卵肉情報」(甲第22号証)のブランド卵特集において、特殊卵の定番ブランドとして紹介され、その表紙にも「ヨード卵」の写真が使用されている。
さらに、請求人商品は、スーパー等の流通業者向けの雑誌「ChainStoreAge」(甲第23号証)のブランド卵特集において、「日本のブランド卵の先駈け」と紹介され、「卵に特定のブランド名を付けて売り出したのは『ヨード卵・光』が業界でも初めてだった」と記載されている。

(i)「ヨード卵」が請求人の商標として需要者に広く認識されていることは、特許庁の過去の判断でも認められている(甲第24号証)。

(イ)以上のように、「ヨード卵」は、請求人の全国での販売、広告宣伝、さらに、2006年の発売30周年キャンペーンにより、請求人の商標として、同業界においてはいうまでもなく、一般需要者の間で、広く知られるに至っているものである。

イ 出所の混同
以上の事情から、「ヨード卵」の語を含む本件商標がその指定商品に使用された場合には、本件商標の登録出願時及び登録時において、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標5ないし引用商標10と誤認混同されるおそれがあるか、又は、本件商標を使用した商品が請求人と経済的、組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同誤認を生じさせるおそれがある。

(4)商標法第4条第1項第16号について
請求人商品の品質は、需要者に定評のあるところ、他人が「ヨード卵」の語を含む商標を使用すると、請求人商品と品質の異なる商品が請求人商品の品質を有するがごとく、商品の品質誤認を生ずるおそれがある。
すなわち、請求人商品には、体内でアレルギーの原因になる物質(ヒスタミンやロイコトリエン)を抑える抗炎症作用や抗アレルギー作用があり、その機能性商品としての効果については、多くの学術研究や論文が発表されている(甲第25号証)。
特に、食物アレルギーやアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の人に注目されており、その効果について需要者の信頼が寄せられている(甲第26号証)。
このような請求人商品に対する需要者の信頼のもと、もし「ヨード卵」の品質を期待して誤って「ヨード卵」の語を含む請求人商品と紛らわしい商品を食した場合、健康を害する可能性がある。

(5)「ヨード卵」の一般名称化の防止の必要性
前記(1)イで述べたように、過去に請求人が出願した商標「ヨード卵」は、一般名称であるとの理由で拒絶された。
「ヨード卵」の語は、請求人商品の発売を開始した30年前には、一般には使用されていなかった語であるが、請求人が30年前から、長年にわたって多額の費用を投入し、広告宣伝活動及び販売促進活動をし、需要者、取引者に浸透させてきた結果、「ヨード卵」があたかも一般名称であるがごとく認識されるに至ったものである。
しかしながら、「ヨード卵」は、「ヨードを多く含む卵」ということで周知されているわけではなく、請求人商品である「ヨード卵」の「光」ブランドの品質によって商品表示として周知されてきたものであり、商品表示「ヨード卵」とブランド名「ヨード卵・光」は同義語として、一般消費者及び流通業者に認知されている。
1976年(昭和51年)の発売から約20年間は、ヨウ素を強化した卵の生産方法の特許、ヨウ素を強化した卵を生産するための配合飼料の特許など(甲第27号証)により、特許に係るヨウ素強化卵について他社の市場参入は阻止され、実質的に請求人が独占的に販売してきた。
この期間に、請求人が「ヨード卵」を「光」ブランドで継続的に販売してきた結果、「ヨード卵」が請求人商品を指称する商品表示として需要者に周知されたので、特許の存続期間が満了した最近10年間でも、他人の「ヨード卵」の商品表示は存在しない状況が続いていた。
また、「ヨード卵」の語は、請求人が自らの商品の発売に際して創作した造語である。
このように、商品として先駆的であるがゆえに、当該品質の商品の一般名称であるかのごとく、商標が希釈化する例は多々あるが、請求人は、「ヨード卵」の商品表示については、過去30年間、ブランド管理を怠ったことがなく、権利化の努力、自社製品を「ヨード卵」の語を含む唯一のブランドとして、そのグッドウィルを維持する努力をしてきたものである。
請求人の企業努力により「ヨード卵」の商品表示に化体した多大な信用を保護することこそ、商標法の目的であると考える。

(6)使用態様「ヨード卵・光」と「ヨード卵」
ア 請求人商品の商標の使用態様は、甲第28号証に示すとおりである。
また、広告等における文章中に表記する場合には「ヨード卵・光」のように使用している(甲第17号証ほか)。
上記使用態様は、「ヨード卵」の商品表示とブランド名(いわゆるペットネーム)である「光」の二つの商標を結合したものであり、請求人商品については「ヨード卵」の部分がハウスマーク的な総括名称として機能しているものである。

イ 同様の使用態様により、通常は一般名称といえる部分に識別力が認められたサントリーの商標「角瓶」事件について、判決は、使用事実から「ウイスキーについての取引者、需要者においても、本願商標はそれ自体が単独で使用されるものと理解し、たとえハウスマークである『サントリー』等の文字と『角瓶』の文字とが連続して表示されている態様であっても、ハウスマークと結合して一体化した『サントリー角瓶』等の構成よりなる商標が使用されているのではなく、『角瓶』の文字からなる本願商標自体が使用されていると認識するものと認めるのが相当である。」と判断した(甲第29号証)。
本件についても、「光」の部分が独自に識別力を発揮していることはもちろんであるが、「ヨード卵」の部分も、商品表示あるいはハウスマーク的な総括名称部分として、独自に識別力を発揮しているものである。
請求人が「光」の部分を「ヨード卵」とは別個の商標として使用していることは、請求人の登録商標及びその使用例から明らかである(甲第30号証ないし甲第33号証)。

ウ また、「ヨード卵」を使用した加工食品には、「光」のロゴが単独で、「玉子スープ」、「味噌汁」、「マヨネーズ」などの普通名称とともに使用されている(甲第8号証)。
このように、請求人の「ヨード卵」製品は、「ヨード卵」という総括商標のもと、個々の商品についている商標が「光」であるといえる。
需要者は、「ヨード卵」を請求人商品と認知している一方、赤いロゴやシール上に表示された「光」は、商品を探す際の、いわば目印として機能している(甲第17号証の48)。

エ 以上のとおり、請求人商品には、著名な商品表示である「ヨード卵」と、ブランドの目印としての「光」という、二個の商標が付されているといえ、それぞれが識別力を発揮していると同時に、全体としても識別力を発揮している。

2 答弁に対する弁駁
(1)商標「ヨード卵」の識別力
ア 請求人は、一般需要者が「ヨード卵」の表示から「ヨードという成分が入った卵」ではないかと認識することについて否定するものではない。
しかしながら、卵や食品成分についての専門知識を持たない需要者は、「ヨード」が「ヨウ素」を意味するのか、「ヨード」という成分が何に由来するのか、「ヨード」が入った卵というのは具体的にどのような品質のものをいうのか、についてまで理解できるものではない。
「原料・成分とみられる語+卵」の組み合わせの商標は、「柿酢卵」、「しその実卵」、「ぎんなん卵」、「緑茶卵」、「麦卵」、「玄米卵」のように多くみられる(甲第34号証)が、これらの商標から具体的な品質等が理解できるものではないので識別力があるものとして登録されたと考えられる。
例えば、「玄米卵」は、玄米を飼料として肥育した鶏の卵であり(甲第35号証)、一般需要者もその意味を想像できるが、具体的な品質について理解できるものではない。また、「ビタミンランE」(甲第36号証)は、「ビタミンE」を強化した卵であると無理なく解釈できる。
このように、一見識別力のない成分表示と理解できる語の結合であっても、特定の出所から出た商品を指称するものとして機能しているのであれば、商標として識別力があるといえる。

イ 被請求人は、ヨードについて、「ヨウ素」の別名を持ち、高血圧、動脈硬化の予防によいとされる物質として広く世間一般に知られている旨主張する。
しかし、「ヨード卵」においては、強化成分であるヨード分と卵の卵黄脂質が結び付くことにより、ヨード単体では見られないアレルギー体質の改善やアンチエイジング等の効果が確認されている(甲第37号証)。
「ヨード卵」の機能性についての研究は、そのほとんどが請求人及びその委託研究機関が行ったものであり、研究に使用されたのは、請求人商品である。
これらの研究報告書において、「ヨード卵」と記載しているとしても、それは一般名称として記載しているのではなく、「ヨード卵」というブランド名が対象となる商品そのものだからであって、「ヨード卵」の語を品質表示又は普通名称として使用しているのではない。
そして、「ヨードを多く含む卵」をはじめとする他の特殊卵については、その機能性食品としての効果について学会発表されているものは、ほとんど存在せず、需要者においても、被請求人が主張する「栄養素名+卵」として、単にヨード分を摂取することが目的ではなく、請求人の研究によって証明された「ヨード卵」独自の機能を期待して商品を購入しており、請求人商品の販売数量が順調に拡大し、需要者に支持された背景には、研究成果に裏付けられた「ヨード卵」の持つ機能性、効果効能があることに他ならない。
被請求人が挙げる「DHA卵」、「ビタミン卵」等については、DHA、ビタミンを多く含むことを商品の特長としているにすぎず、「○○卵」の「○○」を多く含むことで、健康イメージを強調している。
一方、「ヨード卵」は、前述のとおり、「ヨード」を多く含むことを特長とした商品ではなく、「ヨード卵」の持つ機能性を特長とした商品である。 この点が、「DHA卵」、「ビタミン卵」等とは基本的に異なっており、成分を示す「○○」を付けた「○○卵」を、一律に一般名称と断定する主張は成り立たない。

ウ 一般需要者は、商品に付された商標とみられる表示に接した場合、その表示のうち、どの部分が識別力がある部分であるか、どの部分が品質に関する部分であるかを明確に区別することなく、一つの表示としてみるのみである。
請求人商品が「ヨードの含有量を高めた卵」のパイオニア的製品であることは、甲第13号証等から明らかであるところ、請求人の広報活動によって、また、請求人商品の発売開始から今日まで「ヨード卵」との表示の商品が他に存在しなかったことによって、「ヨード卵」といえば、請求人商品という認識が一般需要者に刷り込まれている。
一方、被請求人の指摘する「アルギットヨード卵」の販売個数は少量であり、甲第14号証の1(特殊卵シェアー)にも載っていない。
また、被請求人は、様々な文献、販売店の扱い商品を例にあげて、「ヨード卵」は「ヨードを多く含むだけの卵」という一般名称である旨主張するが、現在、一般に量販店等で販売されている「ヨード卵」のほとんどが「ヨード卵・光」であり、需要者の認識は、「ヨード卵」すなわち「ヨード卵・光」であることは明らかである。

エ 被請求人は、本件商標の識別力ある部分は「ぴあっこ」であって、「ヨード卵」の部分に識別力はない旨主張するが、本件商標に接する一般需要者は、見慣れた「ヨード卵」の文字に目を引かれるのは必至であり、その意味で、「ヨード卵」の部分が本件商標において最も識別力を発揮していると考えられる。

(2)品質誤認のおそれについて
被請求人は「本件商標中の『ヨード卵』の語は『ヨードの含有量を高めた卵』を表す商品の品質表示あるいは普通名称として需要者に認識されるものであるから、本件商標が使用される商品が『ヨードの含有量を高めた卵(ヨウ素を多く含む卵)』やその加工卵である限り、需要者が商品の品質誤認を生ずるおそれはない。」と主張するが、請求人商品は、単なる「ヨードの含有量を高めた卵(ヨウ素を多く含む卵)」ではない。
例えば、甲第37号証の学術研究集3頁に記載されているとおり、請求人独自のノウハウによる一定品質の飼料により一定品質の請求人商品が生産されるものであり、請求人のノウハウによってのみ請求人商品の品質があるのであって、他社の「ヨードの含有量を高めた卵(ヨウ素を多く含む卵)」と同じ品質ではあり得ないものである。

3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第16号に違反してされたものであるから、商標法第46条により、無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第36号証を提出した。
1 本件商標の要部について
(1)「ヨード卵」の語が自他商品の識別力を持たないことについて
ア 「ヨード卵」の語は、本来的に「ヨード(ヨウ素)が原料・成分として入った卵」という意味で無理なく解釈されるものである(乙第1号証)。
これは、日本語の一般的な用例として、「茶そば」や「チーズケーキ」など、「原料・成分+普通名称」という構成をした語が、特定の原料・成分の含まれた食品を指し表す用法があることによる。
「ヨード卵」の語は、日本語として、本来的に商品の品質表示等として受け取られやすく、もともと自他商品識別機能を発揮しにくいという特質をもっている。

イ 我が国の卵の取引市場においては、ある栄養素の含有量を人為的に高めた卵が特殊卵や高機能卵等と称され多く出回っており、「DHA卵」、「ルテイン卵」、「カロチン卵」、「カルシウム卵」、「α-リノレン酸卵」、「ミネラル卵」のように、「栄養素名+卵」という普通名称(又は品質表示)のもとで取引されているという実情がある(乙第2号証ないし乙第7号証)。
このように、卵については、上記アの「原料・成分+普通名称」という用法から派生して、「(含有量を高めた)栄養素名+卵」という構成の語が商品の普通名称等として広く一般的に使用されている。
そして、「ヨード卵」の語は、「栄養素名+卵」という構成をしている。 また、「ヨード」は「ヨウ素」の別名を持ち、高血圧・動脈硬化の予防等によいとされる、我が国において広く世間一般に知られた物質である(乙第1号証)。
したがって、「ヨード卵」の語は、上記卵の分野の取引実情等から、「ヨードの含有量を高めた卵」を表した語として、商品「卵」(あるいは加工卵)について、商品の品質表示又は普通名称と認識される。

ウ 乙第8号証ないし乙第17号証は、インターネット上のウェブサイトの抜粋印刷であり、乙第18号証は、「日本家禽学会誌」(写し)である。
これらによれば、「ヨード卵」の語が、特殊卵の一種を示す語として「DHA卵」等の語と並列的に用いられていることや「ヨード卵」が「ヨードを多量に含む鶏卵」の一般的な名称として実際上も使用されており、これにより「ヨード卵」の語が商品の品質表示又は普通名称として広く世間一般に用いられていることが認められる。
この点に関し、審判事件(平成11年審判第19966号:乙第19号証)や請求人の出願に係る商標(平成11年商標登録願第114425号:乙第20号証)についても同様の認定がされている。

(2)「ぴあっこ」が強い自他識別力を発揮する要部であることについて
「ヨード卵」の語が上記(1)のように理解されるのに対し、本件商標中の「ぴあっこ」は造語であり、指定商品の品質等と何の関連性もないから、商品「卵」に使用された場合に、自他商品の識別標識として機能することは明らかである。
さらに、「ぴあっこ」の語は、被請求人の登録商標(乙第21号証)として、1991年(平成3年)から20年近くにわたり、卵について使用され、卵市場で大きなシェアを占めている(甲第14号証)。
また、「ぴあっこ」ブランドの卵の発売当初の数年間は、新聞紙上やテレビ・雑誌で広告宣伝活動を大々的に展開し、また、親鶏の孵卵・飼育から産卵、商品の生産・配送まで一貫して卵を管理する生産体制や卵の安全性が鶏卵新聞やその他の日刊新聞・雑誌誌面において大きく取り上げられ、遅くとも1995年(平成7年)ころには市場において広く知られるようになっていた(乙第22号証ないし乙第34号証)から、「ぴあっこ」には強い自他商品識別力が備わっている。

(3)前記(1)及び(2)で述べたように、本件商標中の「おいしい」は、商品の味がよいことを示す品質表示語であり、「ヨード卵」も「ヨードの含有量を高めた卵」を表す品質表示語又は普通名称として需要者に捉えられるのに対し、「ぴあっこ」は、強い自他識別性を発揮するものであるから、本件商標の要部は、「ぴあっこ」の部分であることは疑いがない。

2 「ヨード卵」が自己の周知商標であるとの請求人の主張について
請求人は、「ヨード卵・光」という商標を約30年間、商品「卵」に使用し続けてきたから、「ヨード卵・光」のみならず「ヨード卵」という語も、請求人の商標として広く知られるようになったかのように主張するが、以下の理由により、その主張は失当である。
(1)「ヨード卵」の語は、上述のように、商品の品質表示又は普通名称としてごく自然に捉えられる言葉であるから、「ヨード卵・光」という構成で商品に使用された場合は、「ヨード卵・光」は、その構成全体で自他商品識別力を発揮するか、又は、その構成中、商品の品質等との関係が薄い「光」の部分によって識別力を発揮するものである。
この点に関し、請求人は、「ヨード卵・光」の使用によって「ヨード卵」に自他商品識別性が生ずるとし、「角瓶」事件の判決(甲第29号証)を引用する。
しかし、上記判決においては、サントリー株式会社の商標は「サントリー角瓶」という一体的な構成で使用されるほか、「角瓶」商標単独が目立つ構成態様で商標が使用されており、それを前提に、「サントリー角瓶」と一連に表した商標の使用も「角瓶」商標の使用として見てよいと裁判所が判示したにすぎず、請求人が主張するように、一連に表された商標の中に含まれる品質表示語や普通名称がどのように使用されたものであっても、ブランドとして周知になる、との判示をしたわけではない。
また、請求人は、「ヨード卵・光」という構成態様でしか使用しておらず、かつ、「ヨード卵」の部分よりも「光」の部分の方が目立つ態様で使用している。
また、「光」以外の「ヨード卵」を使用して請求人が販売してきた事実もない。
よって、「ヨード卵・光」は、「角瓶」が顕著に表れた構成態様でも「サントリー角瓶」という構成態様でも商標が使用されていた「角瓶」事件とは全く異なり、「ヨード卵・光」をこの事件と同等に扱うことには無理がある。

(2)甲第6号証ないし甲第28号証について
ア 「ヨード卵」という文字が単独で表れる上記各書証のほとんどは、「ヨード卵」という、商品そのものが健康によいことや販売が好調なことなどを紹介しているものであり、商品そのものを指す意図で「ヨード卵」の語を使用しているにすぎず、請求人の商標として「ヨード卵」に言及したものではない。
また、請求人のブランドを指し示す意図で言及するときは、ほとんどが「ヨード卵・光」のように「光」の文字と一連に組み合わせた表記が使用されている。
このような「ヨード卵」の語を商品そのものを表すために使用している書証は、「ヨード卵」単独が需要者において請求人の商標として自他商品識別力を備えるに至ったかどうかということを判断するに際して考慮されるべきではない。

イ 請求人は、これまで大々的に宣伝広告活動を行っているとのことであるが、広告物の内容は、あくまで「ヨード卵・光」という商標に関するものであり、この商標の使用によって「ヨード卵」単独のブランドとしての知名度が上がったと認められないのは上述のとおりである。
また、請求人は、2006年に、「ヨード卵・光」について30周年記念の大々的な宣伝広告キャンペーンを行ったと主張するが、それらの資料によっても、「ヨード卵・光」が使用されており、テレビコマーシャル等においても「ヨードランヒカリ」と称されているのみであって、「ヨード卵」単独の商標が記載されたり、「ヨードラン」とは称されていない。
なお、請求人は、「ヨード卵」単独が請求人の商標として自他商品識別力を備えたことを示す例として甲第12号証を提出するが、スーパーマーケットのレシートの表記は、これらスーパーマーケットが取り扱う商品名等を端的に記載するものであり、短ければ短いほどよいという事柄の性質上、どの部分が商標か商標でないか、あまり厳格な配慮は払われていないものである。
また、請求人は、甲第15号証(アンケートの回答票)において、一般消費者が「ヨード卵・光」のことを「ヨード卵」と略記していると主張するが、それは「ヨード卵・光」と書くべきところ、語頭部の「ヨード卵」部分で略したものにすぎず、そこにどの部分をブランドとして捉えるかどうかといった深い意味はない。

ウ したがって、これら書証によっては、「ヨード卵」単独が商標として周知になっているとは認められない。

(3)請求人は、今まで、「ヨード卵」の語は、自社にしか使用されてこなかったと主張するが、かなり以前から「アルギットヨード卵」や「アルギット・ヨード+ビタミンE卵」なる商標を付した商品「卵」が他の複数の業者によって販売されている(乙第34号証ないし乙第36号証)。
なお、この商標が使用される際に「ヨード卵」の部分が小さく表され、「アルギット」の部分と一体性のない構成態様で使用される場合もある(甲第35号証(審決注:「乙第35号証」の誤記と認める。))。
また、「ヨード卵」の語が商品の品質表示又は普通名称として使用されている(乙第36号証)。
上記の事実は、他の業者にも商品の品質表示又は普通名称として「ヨード卵」を使用せざるをえないニーズがあり、これを一企業の独占させることが適当でないことを示しているものであり、「ヨード卵」という語はすでに卵の需要者に「ヨードの含有量を高めた卵」の品質表示又は普通名称として理解され、そのような意味で世間一般に使用されているのである。

(4)請求人の広報活動によって、「ヨード卵」という「ヨードの含有量を高めた卵」の「商品そのもの」の認知度が上がったことを被請求人は否定するものではない。
しかしながら、それは、「ヨード卵」が請求人の商標として認知されているか否かとは別問題である。
上記のように、請求人提出の証拠により、「ヨード卵・光」あるいは「光」が請求人の商標として周知になったことは認められるとしても、「ヨード卵」単独が請求人の商標として周知になったとは到底認められないものであり、「ヨード卵」が自他商品識別標識として機能するとの請求人の主張は認められるべきものではない。

3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、全体で「ピアッコオイシイヨードラン」と称呼されるか、又は、その要部「ぴあっこ」より「ピアッコ」と称呼されるものである。
一方、引用商標4は、その構成文字に相応して「ヨードラン」と称呼される。
また、その他の引用商標は「ヨードランヒカリ」又は「ヒカリ」と称呼される。
よって、両商標は称呼上紛らわしいところがない。

(2)本件商標は、「ぴあっこおいしいヨード卵」という標準文字からなるものであり、引用商標4は、特徴的な文字「ヨードラン」からなり、その他の引用商標は「ヨード卵」と「光」とを組み合わせた構成からなるものであるから、両商標とが、外観上相紛れるおそれは全くない。
さらに、本件商標からは、「『ぴあっこ』という、味がよくヨードの含有量を高めた卵」といった観念が生ずるのに対し、引用商標4からは何ら具体的な観念は生じない。また、その他の引用商標からは、「『光』というヨードの含有量を高めた卵」という観念しか生じない。

(3)したがって、本件商標と各引用商標とは、称呼、外観、観念のいずれにおいても非類似の商標である。

4 商標法第4条第1項第15号について
上記のように、需要者は、本件商標中の「ヨード卵」の部分は商品の品質表示又は普通名称であると捉え、これを自他商品の識別標識とみることはなく、一方で、強い識別力を発揮する「ぴあっこ」の文字から、本件商標の付された商品の出所が被請求人、又は少なくとも「ヨード卵・光」を販売する請求人とは別異の業者であると捉える。
よって、本件商標が「ヨード卵」の文字を含むとしても、これをその指定商品に使用したときは、需要者は請求人の業務との関係で出所の混同を生ずることはない。

5 商標法第4条第1項第16号について
本件商標中の「ヨード卵」の語は、「ヨードの含有量を高めた卵」を表す商品の品質表示又は普通名称として需要者に認識されるものであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、需要者が商品の品質誤認を生ずるおそれはない。

6 むすび
以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第16号のいずれにも違反しないものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効にされるべきでない。

第4 当審の判断
1 「ヨード卵」の語について
甲第10号証、甲第13号証、甲第15号証ないし甲第23号証及び甲第27号証(但し、甲第10号証の3ないし6及び甲第18号証の5は除く。)によれば、次の事実が認められる。
(1)雑誌、新聞等における請求人商品の紹介記事について
ア 「週刊ポスト」(1977年5月13日号、甲第13号証の1)の「慢性難病もこわくない/高血圧、ゼンソクに効く、話題の“卵利用法”/芸能人にもサラリーマンにも大評判のヨード入り卵の驚異の実績点検」との表題のある特集記事には、「卵に含まれているコレステロールが高血圧や心臓病の原因となる動脈硬化を促す危険があることも、アレルギーをおこす引きがねになりやすいのが卵であることも、いまや、国民的常識である。ところが、卵は卵でも、その成分に驚くべき違いがある卵が生産されている。商品名『ヨドリノン』(ヨドリノン研究所)と『ヨード卵・光』(日本農産工業)がその卵だ。外見はまったくふつうの卵だが、一箇の卵に含まれるヨード分はなんと三百グラムで、ふつうの卵に含まれているヨード分の十倍以上。」、「この卵の発案者は飼料研究家の朝比奈徳次郎氏だが、朝比奈氏は鶏の飼料に無機ヨードをまぜるという発想を抱き、それを最初に実行に移したのが、宮城県・白石市医師会会長・笆豊二氏で『これはおもしろい、とヨード入り卵を作り、それを十人の妊婦にとらせつづけたら、新生児黄疸に強い赤ちゃんが生まれた。・・・』このテストをきっかけにしてヨード入り卵は各地の病院で、さまざまな患者に与えられ、予想以上の治療効果が認められ始めた。」との記載がある。

イ 「週刊ポスト」(1977年6月3日号、甲第13号証の2)の「本誌19号の記事に問い合わせ殺到!/『ヨード入り卵』の驚異の強精効果を総点検」との表題のある特集記事には、「ヨドリノン研究所の卵(商品名ヨドリノン)をとり続けた人のなかから、その具体的な例をあげると・・・。ヨード入り卵のもう一方の旗手・日本農産工業(株)(商品名ヨード卵・光)側にも、みるべきデータが多い。」との記載がある。

ウ 「毎日グラフ」(昭和55年発行、甲第17号証の1)には、「昭和52年に本格的な販売が開始されて以来、全国の一流デパート、スーパーなどで順調な売れ行きをみせているのがヨード卵。」、「ヨード卵発売元の日本農産工業」、「・・・今や、病気や健康の維持によいというので評判のヨード卵だが、これが市場に出るまでにはかなりの時間を要した。ヨード卵の効果は15年前からすでに知られていたのであるが、なぜよいかという理由がわからなかったからだ。わが国で始めてヨード卵の研究を手がけたのは、東北大学医学部・山形内科である。しかし、その時もまだ、効果は確認されても、その理由が解明されるまでには到らなかった。しかし、その内ヨード卵は体によいという噂が口コミで広まり、消費者の要望に押し切られる形で日本農産工業が販売に踏み切ったのがちょうど3年前。」、「各界の有名人達もこのヨード卵を愛用しているときくが、これはまさに胸のすくような話題を提供してくれた、久々の“ヒット商品”である。」との記載がある。

エ 「週刊読売」(1980年7月13日発行、甲第17号証の2)の「この夏学会で注目されるスタミナばっちりのヨード卵」との表題のある特集記事には、「ヨード卵とは、名前のとおり、からだの新陳代謝に欠かすことのできないヨードをたっぷり含んだ鶏卵のことである。・・・このヨード卵の産みの親は北海道薬大の湊顕学長。今から十八年前の昔のことだった。ヨード、つまり沃素の権威者で、当時千葉大薬学部長だった湊氏は、沃素とアミノ酸を結合させた有機沃素の研究中、ふと鶏に海草を食べさせることを思いついた。・・・結果は氏の考えどおり、有機沃素バッチリのヨード卵が誕生した。・・・東北地方でヨード卵に注目したナンバーワンは、白石市の開業医・笆豊二氏であった。患者に頼まれて、ヨード卵を提供したところ、高血圧とゼンソクに効果があった。・・・一方、湊氏の研究に最初から鶏のエサと海草粉末を提供してきた大手飼料メーカーである日本農産工が、数か所の医大に依頼して得た追試験の結果も上々だった。・・・メーカーである日本農産工が全国のユーザー四千人を対象に、昨年行ったアンケート調査では、さらに幅広い結果が出た。」との記載がある。
また、上記とほぼ同趣旨の内容の記事が「くらしの百科」(昭和55年発行、甲第17号証の5)の「50円で健康を買う/栄養食品ヨード卵」の表題のもと記載されている。

オ 「サンケイスポーツ」(昭和55年8月22日発行、甲第17号証の3)には、「ひと味違うヨード卵」との見出しのもと、「最近、じりじりと人気が出て、生産が売れ行きに追いつかない商品に『ヨード卵』というのがある。海からとれる海藻などに含まれているヨウ素が多く入っている卵なのだ。発売元の日本農産工業では、この二、三年倍増、倍増で生産しているが、需要に応じきれないぐらいというほどの人気がある。」とあり、また、「養鶏場、全国に23/20年も前から研究、開発」との小見出しのもと、「『ヨード卵』は、まったく新しい卵というものではない。二十年前に千葉大学でヨードが卵に移行するかどうかの実験が行われ、そのご宮城県白石市の開業医の間で研究が進められた。・・・日本農産工業では、はやくから『ヨード卵』を手がけていたが東北大学等の医学的データの出そろうのを待って、五十一年夏から生産販売をはじめた。」との記載がある。

カ 「婦人画報」(1980年8月発行、甲第17号証の4)の「『これこそ本物』の企業訪問/ヨード卵の秘密/日本農産工業株式会社」との表題のある特集記事には、「昭和四十年ごろ宮城県白石のある開業医が患者の治療用にヨード卵を提供したのが、そもそものきっかけだという。『日本農産工業』はこの開業医の要望に応えて白石に養鶏場をつくり、臨床実験用にヨード卵の提供を始めた。」、「『ヨード卵の分析をいくつかの大学に依頼した結果、海藻に含まれているヨードは無機ヨードであるのに対し、ヨード卵に含まれているヨードは有機ヨードであることがわかったのです。そして無機ヨードはコレステロールやアレルギー性疾患に効果が期待できないが、有機ヨードは生体内の吸収、代謝が自然に、有効におこなわれ、卵と海藻を一緒に食べるのとは、異る働きがあることが確認されたのです。』つまり、鶏のエサに海藻の粉末や海藻成分から取り出したヨードをまぜて与えると、鶏の体内でアミノ酸と結合して有機ヨードになり、これが成人病やさまざまな疾患に効果があるというわけなのである。」との記載がある。

キ 「日経流通新聞」(昭和55年12月25日発行、甲第17号証の6)には、「55年ヒット商品番付」の見出しのもと、「前頭」の欄に「ヨード卵」の記載があり、「売れ行き」欄には、「飼料に海藻の粉末や添加剤を加えて産ませた卵で、普通の卵に比べ2倍高いが品不足になるほどの売れ行き」との記載がある。

ク 「東京新聞」(昭和56年5月7日発行、甲第17号証の7)には、「自然・健康食品ブームに乗って/売れています”特殊タマゴ”」との見出しのもと、「『ヨード卵』『純卵』『健康卵』など、“ひと味違った”タマゴが売り出されている。」、「消費者の関心が高いのが『ヨード卵』。大手飼料メーカーの日本農産工業が発売しており、スタートの五十二年には一カ月二十万個足らずの販売量だったのが、現在は同六百三十万個以上と短期間に約三十倍も増えている。」との記載がある。

ケ 「ミセスの生活誌/ショッピング」(昭和56年6月1日発行、甲第17号証の8)の「ヨード卵の上手な選び方・使い方/一日一個、ヨード卵で健康な生活を」との表題のある特集記事には、「いったいヨード卵『光』というのはどんな卵なのであろうか。そもそもは、昭和三十年ごろヨウ素の研究をしていた千葉大学薬学部から日本農産工業の研究者に、海草を食べさせた鶏の成育が良く、病気になりにくい、卵の成分も普通の卵と段違い、という情報がもたらされたことが初まり。これは、ヨード卵という世界の食品史上に残る発見なのだが、この時点では注目されることなく見送られ、研究開発が始められたのは昭和三十五年になってからのこと。」、「しかし、ヨード卵という名が付いていればどれでもいいというわけにはいかない。有機ヨードが一定量以上確実に含まれていることを保証したものを選ぶ必要がある。選択の目安は簡単だ。普通卵の十倍以上のヨウ素含有を保証している『光』マークを確かめるだけでいい。日本農産工業のヨード卵『光』は、常に成分分析をしてヨウ素含有量を確認しており、・・・」との記載がある。

コ 「毎日ライフ」(昭和56年6月1日発行、甲第17号証の9)の「ヨード卵の抗高脂血症作用と安全性/ついに、その“本体”が解明された」との表題のある特集記事には、「ヨード卵(日本農産工業社製)はニワトリに、海藻に無機ヨウ素を混ぜた飼料で飼育して産卵させたものです。」との記載がある。

サ 「セブンコレクション」(昭和56年8月1日発行、甲第17号証の10)には、「ヨード卵/日本農産工業」として、「海そうの粉末や、海そうから抽出したヨード分のエキスをエサに与えた鶏から生まれた卵。」の記載がある。

シ 「婦人倶楽部」(昭和56年9月1日発行、甲第17号証の11)の「家中の健康を守る/小児ぜんそくから成人病まで効果がある/ヨード卵の秘密」との表題のある特集記事には、「ヨード卵は昭和三十年ごろ、千葉大学で提案され、昭和四十年ごろから臨床実験が始められたのがそもそものきっかけ。『日本農産工業』が、この開業医の要望にこたえて白石にヨード卵の養鶏場をつくり、供給をはじめたのです。ですから、もう二十年以上もの長い歴史があるわけです。」との記載がある。

ス 「読売新聞」(昭和56年10月25日発行、甲第17号証の12)の「他の鶏卵と一味違う」の項目には、「五十一年八月から売り出した同社(審決注:日本農産工業)のヨード卵“光”を、いま改めてブランド認知キャンペーンにかけたのは、『タマゴも品質で選んでほしい、という企業からの一つの提案であり、これによって、知名度を高め、ほかのタマゴとの差別化を狙っている。』・・・特殊卵の一つに数えられているヨード卵は、鶏の飼料にヨード分の多い海藻や無機ヨウ素を加えている。一般には、鶏のエサにヨード分を加えた添加剤を入れるだけでヨード卵ができるが、同社の“光”の場合、その“製法”は、ちょっと違っている。製法特許、用途特許を含め、十七件の特許を申請中といわれる飼育法は、飼育実験で確かめたもので、海藻からとったヨード分が、鶏からタマゴへ一定量移行していくよう、飼料の配合、与える量を決めている。・・・同社の場合は、『良質のヨウ素とビタミンを一定量移行させる飼料の組み合わせは、一種類しかない。それだけに、ほかのヨード卵とは違うし、品質も保証できる。』という。そのタマゴの生産は、全国三十五か所の直営農場で行っているから、集荷の段階で、普通卵とまぎれることもない。それだけに、品質保証ともいえる“光”ブランドのシールを張って出荷できるわけだ。」との記載がある。

セ 「シティ・リビング」(昭和57年1月1日発行、甲第17号証の14)の「いちばん手近な健康法」との表題のある特集記事には、「ヨード卵は、ヨードの研究をしていた千葉大学薬学部が行った、ニワトリにヨード分のいっぱい入った、エサを食べさせたら、どんな卵が生まれるだろう-という実験をきっかけとして生まれました。昭和30年のことでした。それ以来、20年余り、ヨード卵の研究は続けられました。人体への影響、効果、・・ついに完成したのがヨード卵・光です。スーパーの玉子売場など、店頭に並べられたのが昭和52年6月。」との記載がある。

ソ 「日経流通新聞」(昭和57年3月発行、甲第17号証の15)には、「業務用にヨード卵/日本農産工業 ホテルなど開拓」の見出しのもと、請求人商品の販売ルートの多角化推進についての記事の記載がある。

タ 「とらばーゆ」(1982/APR・2、甲第17号証の31)には、「食べながら健康に・・ヨード卵」の見出しのもと、「コレステロールやアレルギーが気になって卵が食べれない人には、ヨード卵“光”をぜひおすすめ。ニワトリに特殊な飼料を与えることによって、普通の卵の約二十倍の良質な有機ヨードを含む卵になった。」との記載がある。

チ 「日経産業新聞」(昭和57年4月発行、甲第17号証の32)には、「日本農産工業/ヨード卵拡販に本腰」等の見出しのもと、「配合飼料の大手、日本農産工業は高付加価値商品のヨード卵の拡販に本格的に取り組む。細胞の新陳代謝を高めるというヨウ素を多く含む同製品が消費者の健康志向を背景に発売以来、順調な売れ行きを示しているためだ。」、「ヨード卵は同社が業界では発売初めて発売(五十二年六月)したもの。」との記載がある。また、「神奈川新聞」(昭和57年4月18日発行、甲第17号証の33)にも、「ヨード卵/1000万個生産へ」の見出しのもと、請求人がヨード卵を海外へ販路拡大をする旨の記事の記載がある。

ツ 「毎日新聞」(昭和58年6月30日発行、甲第17号証の37)には、「急成長 ヨード卵」の見出しのもと、「健康への関心が高まる中で、いま、『ヨード卵』がクローズアップされている。」、「・・・ヨード卵の研究は比較的新しい。『ヨード卵が、普通のタマゴに比べて栄養学的、生理・生化学的にどのような差異があり、効果があるか』をテーマに、筑波大学体育系運動栄養生化学研究室と日本農産工業株式会社中央研究所が共同研究を続け、今年度の日本農芸化学学会、日本栄養・食糧学会、アメリカ栄養学会などで発表した。」などの記事とともに、研究結果として、ヨード卵には、コレステロール等が抑制される働きがあるとのデータが得られた旨の記事の記載がある。

テ 「ニッポン消費者新聞」(昭和58年11月1日発行、甲第17号証の42)には、「新しい食品“ヨード卵”/高まる健康志向で急成長」の見出しのもと、「草分けは日本農産工業」、「食生活の必需品と化している卵だが、ここ十年来需要は横バイである。これとは裏腹に全国のデパートスーパーなどで売り出され一躍脚光を浴びてきたのが“ヨード卵・光”である。これは日本農産工業が五十一年八月から全国展開を始めたもので同時にその名が知られるようになった。」、「いったいこの“ヨード卵”とは何を指していうのか。・・・ヨード卵はタマゴ一個に〇.三ミリグラム以上のヨードを含んでいるものをいうのだが、・・・良質のトウモロコシや牧草を主体とした飼料に海草や海藻から抽出したヨードを加えて飼育した鶏によって産卵させるものである。ヨード卵に含まれるヨード分にはワカメやコンブなどの海草に含まれるヨードには見られない特異的な働きが確認されている。日本農産工業はこの点に着目し早くから開発に取り組んだものである。・・・普通の卵より二十倍もの多くのヨードが含まれているのが特徴。」との記載がある。

ト 「マダム」(昭和58年10月1日発行、甲第17号証の43)には、「光」のシールが張られた卵の写真とともに、「ヨード卵で家族の健康を考えます」の見出しのもと、「・・・『コレステロールの心配のない卵』という目的に開発されたヨード卵の愛用者の幅の広さに改めて驚かされます。」との記載がある。

ナ 「農経新聞」(昭和58年11月28日発行、甲第17号証の44)には、「特殊卵が定着化へ/日本農産工業 ヨード卵・光が注目」等の見出しのもと、「ヨード卵は、いまでこそスーパーの鶏卵売場にはほとんどといっていいくらい置いてあるが、開発されたのは、昭和三十年である。ヨード研究の権威である北海道薬科大学の湊教授とともに共同研究により開発されたもので、・・このような結果を受けて、五十一年に本格的に商品化された。・・発売以前の臨床結果が成人病患者の間に知れわたっており医師の間にも存在はよく知られていた。そのことをある雑誌が大々的に取上げたことによって一般消費者に知られるようになった。それ以来、小売店サイドでも見直され、特殊卵としての地位を確立するようになった。以上のような経緯をたどってヨード卵は世に出てきたわけであるが、ヨード卵が出てきてから、数々の“特殊卵”が出現している。それらの特殊卵とヨード卵はどう違うのであろうか。他の特殊卵は従来の飼料に添加剤を加えてたものであるが、ヨード卵の場合、ヨード(コンブ類を粉末にしたもの)を添加しただけでなく、ヨード卵専用の飼料を用いている。・・・販売量も年々着実に伸びており五十七年の販売量はおよそ一億個にも上っている。いまでは、愛用者は全国に五〇万人もいるとされている。また、消費宣伝にしても、継続的に食べなければならないこと、さらに研究データをすべて公表するなど、一時的に売り込むのではなく、地道な宣伝が実を結んでいるようである。」との記載がある。

ニ 「月刊 theHOTEL」(昭和58年11月1日発行、甲第17号証の45)には、「ヘルシーな朝、いただきます」の見出しのもと、「・・・ヘルシーエッグとして、今ホテルのテイクアウト商品としても堂々と顔を見せ始めているのが、ヨード卵『光』。・・・ヘルシーエッグ、ヨード卵の効用を揚げればきりがないが、・・・」との記載がある。

ヌ 「ぷろむなーど」(1983年12月号、甲第17号証の46)には、「ただ今 売り出し中」の項目の商品紹介に「ヨード卵『光』」と掲載された。

ネ 「日経流通新聞」(昭和59年4月25日発行、甲第17号証の47)には、「栄養成分強化卵/ヨード卵がシェア八割/新規需要の開拓へPR」の見出しのもと、「ヨウ素(ミネラルの一種)、ビタミンE、リノール酸などの栄養成分を強化した卵が、また人気を呼んでいる。・・健康卵、特殊卵と呼ばれる卵は、鶏に与える飼料の中にヨウ素(ヨードともいう)、ビタミンE、リノール酸などを多く含む添加物を混ぜ、栄養成分を強化した商品。・・栄養成分強化卵で圧倒的なシェアを持つのは、日本農産工業のヨウ素入り『ヨード卵・光』だ。・・『ヨード卵・光』以外も各社がいろいろな栄養成分強化卵を販売している。二番手とみられているのは、ヨドノリン研究所の飼料を使って、神奈川、静岡、宮城など各県の大型養鶏業者が生産しているヨウ素、リノール酸入りの『ヨドノリン』。昭和産業も同じ飼料を使って、『DO UPたまご』を売っている。・・このほかは、中部飼料のビタミンE入り『ビタランE』、全農直販のビタミンE、リノール酸入り『全農特選卵G』、東洋鶏卵のビタミンE入り『VEE』などが人気を集めている。」との記載がある。

ノ 「サンケイ新聞」(昭和59年9月19日発行、甲第17号証の50)の「マーケット情報/ブランド卵」欄には、「『ブランド卵』は、ほかに『特殊卵』『栄養卵』といった呼び名がついていますが、要するにビタミン、ミネラル、リノール酸などを強化した卵のこと。・・・ブランド卵で最もよく売れているのは最初に商品化した日本農産工業の『ヨード卵・光』で、シェア八〇%。」との記載がある。

ハ 「婦人生活」(1985年2月号、甲第17号証の52)の「手軽な健康法」の項目には、ヨード卵の紹介記事として、ヨード卵の生産方法、健康に効果があることなどについての記載がある。

ヒ 「サンデー毎日」(1989年5月14日発行、甲第17号証の61)の「サンデーEXPRESS」の項目には、「世界のVIPがたべたヨード卵」の見出しのもと、「サミットを超える要人の来日も話題のひとつだった過日の大喪の礼。VIPの接遇にあたった外務省とともに宿泊先の都内一流ホテルも大変な気の使いようだった。・・・その中のひとつであるホテルニューオータニでは、使用するたまごもすべてヨード卵“光”に替え、『おいしさと健康』への気配りをしたという。ヨード卵“光”は、日本農産工業が20年余の試験研究を経て作ったもの。」との記載がある。

フ 「ヒット商品 ネーミングの秘密」(2000年12月15日発行、甲第19号証)の「ヨード卵・光・・・日本農産工業」の項目には、「一九五〇年代の後半、千葉大学の薬学部長から日本農産工業に一つの開発話が持ち込まれた。『海藻を飼料として与えた鶏が産んだたまごにヨードが多く含有されており、健康によい鶏卵ができるのではないか』という発想だった。当時、現在のような特殊卵(ブランド卵)という分類はなかった。ところが、千葉大学の研究によると、既存のたまごにはない機能性、すなわちたまごを食べて、疾病の改善や健康増進に寄与する可能性が考えられるのだという。思いもかけなかった発想だった。日本農産工業は大いに興味をかき立てられた。だが、同社は焦らなかった。従来の市場にないまったく新しい食品である。拙速に走る必要などない。何よりも、実験室段階での結果を実用規模にするには多くの問題点を解決する必要があったからだ。たとえば、配合飼料の栄養バランス、鶏へのヨードの影響、ヨードを多く含有したたまごの安全性や品質の管理、効能効果の確認のために、慎重な試験と研究が必要だった。この間、高脂血症患者の臨床試験で有効な効果が認められたり、その他、多くの疾病の改善に効果があることも報告されるなど、大学などの研究機関の協力も得ながら研究が進められた。そして、研究に取り組み始めて一〇年余を経た一九七六年八月、ついに商品化に踏み切った。」との記載がある。

ヘ 「imidas’98」(1998年1月1日、甲第20号証)の「特殊卵」の項目には、「飼料を工夫して特定の成分や栄養素を強調した卵や、飼料の特徴などをアピールした卵をいう。この商品の先べんをつけたのは、1976年に発売されたヨードを強化した『ヨード卵・光』(日本農産工業)だが、近年さまざまな商品が発売され、健康志向・安全志向から販売量を伸ばしている。」との記載がある。

ホ 「創業の逸品/日本の食文化を彩る厳選88品」(2004年8月25日発行、甲第21号証)には、「日本初のブランド卵 日本農産工業株式会社/ヨード卵・光」として、請求人商品の誕生の経緯、効能などが紹介されている。

マ 「鶏卵肉情報」(2006年8月10日発行、甲第22号証)の「進化するブランド 現在、そして未来/鶏卵肉産業は日々進化・革新を遂げている 自らのブランドは自ら守り育てるしかない」の特集記事中、「『ヨード卵・光』は進化する」の項目には、「八月十六日に発売三十周年を迎える日本農産工業(株)の『ヨード卵・光』は、今や特殊卵の定番ブランドとして確固たる地位を築いている。」との記載がある。

ミ 「DIAMOND/ChainStoreAge」(2006年6月1日発行、甲第23号証)の「ブランド卵」の特集記事中、「日本農産工業」の項目には、「日本のブランド卵の先駆けである『ヨード卵・光』は、今年で発売30周年を迎えた。・・一般消費者向けの商品である『ヨード卵・光』にも・・長く変わらない品質管理の徹底や、継続的に行われている研究投資として表れている。こうした努力によって、最近では外食や加工食品など業務用としての採用も増えているほか、マヨネーズや卵スープなどの関連商品の販売も好調だ。長期にわたる信頼醸成への努力が、あらためて実を結んできたかたちだ。」との記載がある。

ム 2006年1月11日及び同12日に実施された「『ヨード卵 光』の購買意識及び『ノーサングループ』に関する基礎調査」(甲第15号証の1)の商品認知度状況(4頁)によれば、女性314名中、「認知率30%(「名前まで知っている」を含むと47.7%)のブランド卵7銘柄」において、「ヨード卵 光」を「よく知っている」と回答した者は38.9%で、「知っている」と回答した者は42.4%であり、他の6銘柄を抑えてその認知度は1位であったこと、さらに、2003年7月14日ないし同16日に実施された「『ヨード卵 光』街頭アンケート調査(第1回)」(甲第15号証の3)及び2003年11月25日ないし同27日に実施された「『ヨード卵 光』街頭アンケート調査(第2回)」(甲第15号証の4)によれば、前者において、普段ブランド卵を購入している主婦500名中、「ヨード卵 光」を「よく知っている」と回答した者は49.8%で、「少しは知っている」と回答した者は35%であり、また、後者においては、同様の主婦300名中、ブランド卵の銘柄として「ヨード卵 光」を想起する者は、55.7%であったことなどが認められる。

メ 請求人は、発明の名称を「配合飼料」とする特許出願(昭和52年4月6日出願、公告番号:昭58-14182)、発明の名称を「卵の生産方法」とする特許出願(昭和52年5月14日出願、公告番号:昭58-14181)など、ヨード分が強化された卵に関連する特許出願を行い、本件商標の登録出願前までに我が国で14件の特許を取得した(甲第27号証)。

(2)請求人による請求人商品の宣伝広告について
ア 請求人は、1983年(昭和58年)8月ころより、テレビを通じて宣伝広告し、そのコマーシャルメッセージのユニークさから、視聴者の注目を集めたこと、及びテレビによる宣伝広告は、本件商標の査定前まで継続してされていたこと(甲第10号証の1、2及び7ないし26、甲第17号証の40、41、46、48、甲第19号証)、また、上記(1)のように、新聞や雑誌等で請求人商品が紹介される記事が掲載されたほか、請求人は、昭和56年ころより、新聞等に請求人商品の広告を大々的に行い、請求人商品の健康への効能、安全性などの広報活動を継続的に行ったこと(甲第17号証の13、17ないし30、37、39、51、53ないし56、59、60、62)、さらに、本件商標の査定前においても、請求人商品の販売30周年記念のキャンペーンに関する広告等を盛んに行ったこと(甲第18号証の1、3、4、6ないし11)などが認められる。

イ 請求人商品及びその広告に使用される商標の態様は、次のとおりである。
(ア)卵の一つ一つには、中心部に「光」の文字を大きく表示した円形シールが添付されているところ、当該「光」の文字の周囲に書される文字は、「ノーサンヨード卵」、「HIKARI」であったり(甲第17号証の17)、「これからは、タマゴも品質で選びたい。」、「ヨード卵」であったり(甲第17号証の19ないし23等)、年代によって異なる。

(イ)卵のパッケージには、「ノーサンヨード卵光」(「光」の文字が大きく表示されている。甲第17号証の10)、別掲(6)の構成よりなる商標(甲第17号証の24、26、29、48、54、58、61、62、甲第18号証の3ないし8、以下「使用商標A」という。)が表示されている。

(ウ)広告等に使用される商標は、使用商標A(甲第17号証の29、30、54、56、58ないし60、62、甲第18号証の1、3、4、6ないし11)、別掲(7)の構成よりなる商標(甲第17号証の17、以下「使用商標B」という。)、別掲(8)の構成よりなる商標(甲第17号証の19ないし25、27、28、37、39、53、以下「使用商標C」という。)、などである。

(3)まとめ
ア 上記(1)で認定した事実を総合すると、昭和30年ころより、大学の研究室などにおいて、ヨウ素が多く含まれる海藻等を鶏の飼料に配合することにより、ヨード分が強化された卵が産まれ、健康によい効果があるといった研究が進められていたこと、配合飼料の大手会社である請求人は、その研究開発に関し、飼料や鶏などの提供を行うとともに、配合飼料等の研究開発を積極的に行い、実際にヨード分が強化された卵の生産をして、いわば試験的に供給をしたこと、また、請求人は、実際に生産された卵を食することにより、人体に及ぼす影響、効果、安全性などの研究をするため、大学の研究機関の協力を仰ぎながら、ヨード分が強化された卵の研究開発を進めていったこと、研究の結果、ヨード分が強化された卵は、血液中のコレステロールなどを抑制し、様々な成人病やアレルギー疾患等に効果があることが解明し、各種学会で発表されたこと、このような状況の中で、請求人は、昭和51年8月に「ヨード卵 光」として、ヨード分が強化された卵を市場において販売すると同時に、発明の名称を「配合飼料」(1976年4月特許出願)、「卵の生産方法」(1977年5月特許出願)などといったヨード分が強化された卵に関連する特許出願を行い、特許を取得したこと(甲第27号証)、1977年に発行された「週刊ポスト」(甲第13号証)に、「ヨード入り卵」が高血圧やぜんそくなどに効果があるとして、請求人の生産、販売に係る「ヨード卵 光」及び他社製品である「ヨドリノン」が紹介されたことをきっかけに、請求人商品は、一挙に一般消費者の注目を集め、単に「ヨード卵」の語のみをもって様々な雑誌や新聞で取り上げられたことも少なくなく、また、その販売数量も著しく伸びたこと、その後も、請求人は、新聞や雑誌等を通じて継続的に、「ヨード卵 光」の生産過程(鶏に与える飼料の原材料等)・機能性・安全性などの広報活動を行ってきたことが認められ、その結果、「ヨード卵」なる語も、請求人の取り扱う卵を直ちに想起させる程に、卵の取扱業者をはじめ、一般消費者の間にも広く浸透していったことが認められる(甲第15号証、甲第17号証の7、37、42、44、47等)。
以上によれば、請求人は、請求人商品が市場において販売される以前から、研究が進められていたヨード分が強化された卵の研究開発を大学の研究室等と協同して行った末、実際にその卵の生産をし、他社に先駆けて最初に市場において販売した者であり、その企業努力により、本件商標の登録出願時には既に、「ヨード卵」といえば、請求人商品を直ちに想起又は連想させるほどに一般消費者等の間に広く認識されるに至っていたというべきであって、その著名性は、本件商標の査定時においても継続していたものと認めることができる。

イ 一方、請求人は、請求人商品について、前記(2)イで認定したように、卵の一つ一つに、「光」の文字を大きく表示した円形シールを張り、また、卵のパッケージや広告等には、主として、使用商標Aないし使用商標C(別掲(6)ないし(8))の構成よりなる各商標を使用しているものであり、その使用態様からすれば、「光」の文字部分と「ヨード卵」の文字部分とが分離して看取され、請求人商品を知らない者にとっては、「光」の文字部分に自他商品の識別機能が有するとみられる場合があることは否定できないが、上記アで認定したように、請求人商品が様々な雑誌や新聞等で紹介され、かつ、請求人が継続して行った宣伝広告・広報活動の結果、獲得し得た「ヨード卵」の語の著名性、さらには、請求人商品が販売される以前には、「ヨード卵」の文字を表示した卵が市場において販売されていた事実を見いだすことができないのみならず、本件商標の登録出願前に至るまで、請求人以外の不特定多数の卵業者により「ヨード卵」の語が使用された事実を見いだすことができない(「アルギットヨード卵」(乙第34号証ないし乙第36号証)については後述する。)ことなどを勘案すれば、「ヨード卵」の語も請求人商品を表示するものとして、自他商品の識別標識として十分機能しているというべきである。

2 出所の混同について
本件商標は、「ぴあっこおいしいヨード卵」の文字を書してなるものであるところ、その構成中の「ぴあっこ」の文字部分は、特定の観念を有しない造語よりなるものであり、また、「おいしい」の文字部分は、指定商品の品質表示語と理解されるものである。そして、「ヨード卵」の文字部分は、請求人商品について使用され、本件商標の登録出願前より、我が国の卵の分野における取引業者、一般消費者の間に広く認識されている「ヨード卵」の語と同一の綴り文字よりなるものである。
そうすると、本件商標に接する取引業者、一般消費者は、その構成中の「ヨード卵」の文字部分に強く印象づけられ、直ちに請求人商品について使用される「ヨード卵」を想起又は連想し、本件商標を使用した商品が請求人又はこれと営業上何らかの関係のある者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標といわなければならない。

3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、卵が「DHA卵」、「ルテイン卵」、「カロチン卵」、「カルシウム卵」等のように、「栄養素名+卵」という普通名称(又は品質表示)のもとで取引されているという実情があり、また、「ヨード」は、「ヨウ素」の別名を持ち、高血圧・動脈硬化の予防等によいとされる、我が国において広く世間一般に知られた物質であるから、「ヨード卵」の語は、「ヨードが原料・成分として入った卵」という意味で解釈され、かつ、「ヨードの含有量を高めた卵」を表した語であると認識され、商品「卵」(あるいは加工卵)について、商品の品質表示又は普通名称として需要者に認識される旨主張し、乙第1号証ないし乙第20号証を提出する。
しかしながら、請求人が昭和51年8月に、ヨード分が強化された卵「ヨード卵 光」を市場で販売し、一般消費者等の注目を浴びて以来、栄養成分を強化した、いわゆる特殊卵といわれる卵が市場に多数出回るようになった(甲第17号証の7、44、47、50、甲第20号証、甲第21号証等)ところであり、請求人商品が市場で販売が開始された当時、被請求人のいうところの「栄養素名+卵」の形式の名称が、特殊卵の名称として、市場において普通に使用されていたという事実を認めるに足る証拠はなく、かつ、本件商標の登録出願前までに、「ヨード卵」の語が特殊卵の名称として、不特定多数の業者により使用され、「ヨード卵」の語のみをもってしては商品の出所表示として機能していなかったという事実を認めるに足る証拠もない。
さらに、「ヨード」の語が辞書に掲載されていることのみをもって、「ヨウ素の別名を持ち、高血圧・動脈硬化の予防等によい物質」を意味するものとして、卵の主たる需要者である一般の消費者が広く理解していたと認めることはできない。
そして、請求人によって継続的に行われた請求人商品の生産過程・機能性・安全性などの広告・広報活動等により、一般の消費者が、「ヨード卵」について、「ヨー素が多く含まれる海藻等を鶏の飼料に配合することにより、ヨード分が強化された卵」を意味するものとして、初めて理解したといえるのであって、請求人が請求人商品を販売した昭和51年8月当初から、一般の消費者が上記意味を理解していたものとは認めることはできず、むしろ、その当時は、特定の意味合いを想起し得ない一種の造語として理解していたものとみるのが相当である。
したがって、請求人が請求人商品について、その生産過程・機能性・安全性などの広告・広報活動等を継続して行った結果、一般の消費者が請求人商品に使用される「ヨード卵」の文字に接したとき、「特別な飼料配合により生産されたヨード分が強化された卵」の意味合いを想起する場合があるとしても、それはあくまでも請求人の企業努力により生じた結果であり、請求人商品に限定されたものといわなければならず、請求人商品に使用される「ヨード卵」の文字より上記意味合いが生ずることをもって、他人が請求人の著名な商標といえる「ヨード卵」の語を使用してよいということにはならない。
また、「日本家禽学会誌」(大会は、1976年4月1日に開催された。乙第18号証)の「産卵鶏へのヨード給与が黄卵の質に及ぼす影響」によれば、「ヨードを多量に含む鶏卵(ヨード卵)の摂取が、高コレステロール症などに有効であるという報告がある。このヨード卵は、ヨード分を成鶏用飼料に添加することによって得られることはすでに確かめられている。」との記載があることが認められる。
しかし、上記認定のとおり、昭和30年ころより、大学の研究室などにおいて、ヨー素が多く含まれる海藻等を鶏の飼料に配合することにより、ヨード分が強化された卵が産まれ、健康によい効果があるといった研究が進められていたところであり、そのような研究に携わる研究者の間では、「ヨード卵」なる語が使用されていた事実があるとしても、卵を取り扱う商取引の分野において、「ヨード卵」の語を広く一般の消費者等の間に浸透させたのは請求人にほかならず、請求人商品の販売開始当時に、「ヨード分が強化された卵」の意味合いをもって、「ヨード卵」の語が商取引上普通に使用されていたと認めるに足る証拠は見出せない。
したがって、上記刊行物のみをもって、「ヨード卵」の語が商品の普通名称(又は品質表示)であり、自他商品の識別機能を有しないとする被請求人の主張は採用することができない。
さらに、審査、審判において、「ヨード卵」の文字よりなる商標が品質表示語であるとして拒絶された事例(乙第19及び乙第20号証)が存在するとしても、これらの事案について、本件審判において提出された証拠(特に甲号証)と同程度の証拠が提出されたものとは認められず、本件は、提出された証拠により、前記のとおり、本件商標の登録出願時おいて、請求人の使用に係る「ヨード卵」の語に高い著名性が備わっていたものと認定したのであるから、上記審査、審判の判断に左右されるものではない。
よって、上記被請求人の主張は理由がない。

(2)被請求人は、甲第6号証ないし甲第28号証に示される商標のほとんどのものは、「ヨード卵・光」のように「光」の文字と一連に組み合わせた表記が使用されており、「ヨード卵」の語は、商品そのものを指す意図で使用されているにすぎず、これらによっては、「ヨード卵」単独が商標として周知になっているとは認められない旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり、請求人は、請求人商品が市場において販売される以前から、研究が進められていたヨード分が強化された卵を、他社に先駆けて最初に市場において販売した者であり、かつ、継続的に行われた請求人商品の生産過程・機能性・安全性などの広告・広報活動等により、本件商標の登録出願時には既に、「ヨード卵」といえば、請求人商品を直ちに想起又は連想させるほどに一般消費者等の間に広く認識されるに至っていたというべきである。
したがって、請求人商品について使用される商標の態様は、確かに「光」の文字部分が看者の注意を強く引くものであるとしても、「ヨード卵」の語の著名性を考慮すれば、「ヨード卵」の語も請求人商品を表示するものとして、自他商品の識別標識として十分機能しているというべきである。
なお、被請求人は、かなり以前から「アルギットヨード卵」や「アルギット・ヨード+ビタミンE卵」なる商標を付した卵が他の複数の業者によって販売されており、「ヨード卵」の語が商品の品質表示又は普通名称として使用されている旨主張し、乙第34号証ないし乙第36号証を提出するところ、商標登録原簿によれば、「アルギットヨード卵」の文字よりなる商標は、昭和56年12月29日に出願され、同60年5月30日に設定登録(登録第1765064号)されていることが認められる。
しかし、乙第34号証ないし乙第36号証によっては、「アルギットヨード卵」や「アルギット・ヨード+ビタミンE卵」なる商標がいつころより使用されたのかは明らかではないし、上記登録第1765064号商標の出願が昭和56年12月29日であるところからすると、請求人商品の販売された昭和51年8月以降の出願であり、請求人商品が一般の消費者等の注目を集めていた時期であることも明らかである。
したがって、乙第34号証ないし乙第36号証の使用例をもって、「ヨード卵」の語が商品の品質表示又は普通名称として普通に使用されているとすることはできない。
よって、上記被請求人の主張は理由がない。

4 結語
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲


(1)引用商標2



(色彩については原本参照)


(2)引用商標5




(3)引用商標8





(4)引用商標9





(5)引用商標10




(6)使用商標A





(7)使用商標B





(8)使用商標C









審理終結日 2008-01-16 
結審通知日 2008-01-22 
審決日 2008-02-05 
出願番号 商願2006-1308(T2006-1308) 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (Y29)
T 1 11・ 272- Z (Y29)
T 1 11・ 271- Z (Y29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 達夫 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 岩崎 良子
渡邉 健司
登録日 2006-12-15 
登録番号 商標登録第5010670号(T5010670) 
商標の称呼 ピアッコオイシイヨードラン、ピアッコオイシイ、ピアッコオイシー、ピアッコ、ヨードラン、ヨードタマゴ、ヨード、ピアッコオイシイヨード 
代理人 西村 雅子 
代理人 稲岡 耕作 
代理人 竹原 憖 
代理人 川崎 実夫 
代理人 松井 宏記 
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