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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1170877 
審判番号 無効2006-89160 
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-11-13 
確定日 2007-11-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第4720285号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4720285号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4720285号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成14年3月28日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,ベルト,靴下」を指定商品として、平成15年10月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標及び商標は、以下、1ないし5のとおりであり、そのうちの1ないし4の商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第193386号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、大正15年12月23日に登録出願、第48類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和2年9月22日に設定登録され、その後、平成19年6月27日に、第34類「たばこ」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
2 登録第1895815号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和57年9月28日に登録出願、第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和61年9月29日に設定登録され、その後、平成18年11月8日に、第14類「貴金属製喫煙用具」及び第34類「たばこ,喫煙用具(貴金属製のものを除く。),マッチ」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
3 登録第2378499号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、昭和61年8月1日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年2月28日に設定登録され、その後、平成15年4月2日に、第6類「金属製のバックル」、第14類「身飾品,貴金属製コンパクト,宝玉及びその模造品」及び第26類「ボタン類,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,腕止め,頭飾品」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
4 登録第3264403号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、平成6年5月25日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、平成9年2月24日に設定登録されたものである。
5 別掲(6)のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標5」という。)。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第48号証(枝番を含む)を提出した。
(なお、請求人「日本たばこ産業株式会社」と「ワールドワイド・ブランズ・インク」とを併せていうときは、以下単に「請求人」という。また、請求の理由中で、請求人は、その使用に係る商標について、「キャメルブランド」、「らくだ図形」、「らくだ標章」等と様々な名称を使用しているが、非常に煩雑であるので、次のように表示した。請求人のたばこの包装箱に使用される商標を「請求人商標」といい、請求人商標中のラクダの図形を「ラクダ図形」という。また、後記認定のとおり、F1グランプリ・モーターカーレースに使用される車体、あるいは選手等のユニフォーム及びF1関連の被服等に表示される商標は、甲第19号証ないし甲第23号証及び甲第29号証から引用商標5と認められるので、請求の理由中においても、「引用商標5」とした。)
1 請求の理由
(1)利害関係について
請求人の一人である日本たばこ産業株式会社(以下「JT社」という。)は、平成11年(1999年)に、米国の巨大企業グループであるアール・ジェイ・アール・ナビスコ・ホールディングス・コーポレーション(以下「RJR社」という。)の米国以外の海外たばこ事業を買収し、これに伴い、引用商標1及び2の商標権者となった(甲第6号証ないし甲第9号証)。また、他方の請求人である「ワールドワイド・ブランズ・インク」(以下「WBI社」という。)は、JT社の関連会社であり、引用商標3及び4の商標権者である。
したがって、請求人は、各引用商標に関して、出所の混同が生じるおそれのある他人の使用、及びその高い識別力の毀損、希釈化等を及ぼすおそれのある他人の使用等を排除することにつき、利害関係を有する者である。
(2)「ラクダ図形」商標の周知著名性について
(ア)商品「たばこ」について
RJR社は、1913年、世界初のブレンデッドシガレットの開発をし、その包装箱に、別掲(7)のとおり、「CAMEL」の文字と1910年代当時としては独創的であった「ラクダ図形」を使用した(=請求人商標、甲第10号証、甲第11号証の1、甲第16号証、請求人商標を使用したたばこを、以下「請求人商品」という。)。以来、RJR社は、請求人商標をたばこの包装箱に継続して使用して販売、かつ、宣伝広告等をした結果、請求人商標は、需要者の記憶に定着し今日に至っている。
我が国においても、1928年(昭和3年)より今日まで、請求人商標がたばこの包装箱に継続して使用され、販売・宣伝広告等がされた(甲第12号証ないし甲第17号証)。
1999年(平成11年)において、請求人商品の出荷本数は世界第3位であり、たばこ市場において、請求人商品は、世界五大ブランドの一つに数えられるようになっていた(甲第7号証の5及び6)。その後も、請求人商品の販売数量は伸びており、2004年には、588億本で世界第5位となり、請求人商標のトップブランドとしての地位はゆるぎない(甲第18号証の1ないし4)。
以上のことから、請求人商標ないしこれを構成する「ラクダ図形」は、本件商標の出願日には、たばこの分野において高い周知性を獲得し、その周知性は、本件商標の登録日から現在に至るまで保持されていることは明らかである(甲第33号証の1及び2)。
(イ)商品「被服」等について
請求人は、1987年から1993年までF1グランプリ・モーターカーレース(以下「F1」という。)のチームスポンサーであり、また、2003年から現在に至るまでオートバイレース「MotoGP世界選手権」のチームスポンサーであるため、それらのチームのF1カー及びオートバイの車体、並びにレーサー及びメンバーのユニフオーム等には、引用商標5が表されてきた(甲第19号証ないし甲第28号証)。また、1990年から1993年まで、F1関連商品として、引用商標5を使用した被服(帽子を含む)、タオル、バッグ、旗等がWBI社によってF1専門店で販売されていた(甲第29号証)。その他、1996年から2000年まで、引用商標5を使用した被服等がWBI社のライセンス許諾を受けた者により通信販売された(甲第30号証)。
そして、引用商標5は、F1の著名なレーサーらに着用されるユニフォームや車体等に表示されることにより、人々の記憶に刻印されてきた(甲第19号証ないし甲第32号証)。したがって、こういったイメージと関連の強いファッション商品である被服等に、「ラクダ図形」の周知性が及ぶことは明らかである(甲第33号証の1及び2)。
(3)本件商標と各引用商標の類似性について
本件商標と各引用商標は、背中のこぶ、長い四肢、長い首等、動物の「らくだ」の特徴を捉えて描いてなるものであるから、取引者・需要者が、これらをいずれも「ラクダ」と称呼、観念して取引にあたる場合は決して少なくなく、称呼、観念において共通するものである。また、両商標は、外観においても、こぶは一つであり、後ろ足を揃え、前足の片方を一歩前に出している状態であること、顔はまっすぐ前を向いた状態であることなどその基本的部分が共通しているから、構成の軌を一にするものというべきである。
被服等においては、図形商標をワンポイントマークとして使用すること、これらはかなり小さな表示形態となること、及びこれには刺繍をもってすることは、一般的に行われており、上記のように全体から受ける視覚的印象が似通ったものである点からすれば、左右向きの差異は、一層曖昧なものとなり、時と所を異にして離隔的に接する場合は、微差の範囲にとどまるものである。同旨の判断は、過去の審決例においてもなされている(甲第34号証の1ないし11)。
以上により、本件商標と各引用商標は、称呼、観念及び外観上類似するものであることは明らかである。
(4)被請求人の不正の目的について
被請求人は、過去に、甲第33号証の1及び3に示す商標aないしeを使用した商品を、多数のディスカウントストアで販売等していたため、RJR社の関連会社は、引用商標5と同一の商標を引用して、登録第1588062号商標に対し、商標法第53条第1項による審判を請求した結果、上記登録商標の商標登録は取り消された(甲第33号証の1及び2)。
それにもかかわらず、被請求人は、上記商標aないしeに係る商標と構成の軌を一にする本件商標を採択し、さらに、RJR社が1913年当時から一貫して取り入れている「INCA」の文字と「CAMEL」の文字を結合させた商標を使用している。かかる態様は、「INCA」を上段に、「CAMEL」を下段に書してなるものであり、「CAMEL」が容易に抽出し得る態様であると認められる。
以上の事情から、本件商標の出願は、請求人商標又は「CAMEL」の文字若しくは「らくだ図形」の顧客吸引力への只乗り行為により、不正の利益を得る目的等の不正の目的があったと推認せざるを得ない。なお、被請求人の不正の目的の意図は、甲第35号証によっても推認できる。
(5)商標法第4条第1項第10号及び同第11号について
前記のように、引用商標3ないし5は、本件商標と外観、称呼及び観念上類似するものであり、引用商標3及び4の指定商品及び引用商標5の使用商品は、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。また、引用商標3及び4は、本件商標の出願日前に出願され、引用商標5は、少なくとも1987年から現在まで、国内外の被服等の需要者、取引者に、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品について、高い周知性を獲得しているものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号又は同第11号に該当するものである。
(6)商標法第4条第1項第15号について
各引用商標は、本件商標と類似し、かつ、本件商標の出願日までに、商品「たばこ」のみならず、商品「被服」等の分野の需要者、取引者において高い周知性を獲得し、本件商標の登録日及び現在までその周知性を保持し続けているものである。
したがって、本件商標をその指定商品に使用すると、需要者、取引者は、請求人又はこれと組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第19号について
各引用商標と本件商標は、外観、称呼及び観念上類似し、かつ、各引用商標は、本件商標の出願日までに、たばこ及び被服等の分野の需要者・取引者の間に高い周知性を獲得しているものである。また、前記のように、本件商標は、不正の目的をもって使用することを意図して出願されたことが推認される。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、乙第1号証(本件商標に対する登録異議の申立て(異議2004-90061)における決定)を提出し、ラクダのシルエット図形が既に特許庁により認められている旨主張する。
しかし、同じ商標登録に対して申し立てられた異議にかかる決定をもって無効審判請求を否定するのは、異議制度と無効審判制度とが並立すること自体を否定しているにも等しく、到底有効な反論とはいえない。
(2)被請求人は、商標法第4条第1項第15号に関し、ラクダのシルエットは、請求人が引用商標2、4に使用するはるか前から世界中に知られていたことからして、請求人の創作したシルエット図形ではなく、一般的なラクダのシルエット図形であることから認められない旨主張する。
確かに「ラクダ」や「シルエット」の技法が、請求人が業を開始する前から存在していた動物や技法であるとしても、「ラクダ」やその「シルエット」を商標として長年たばこやファッション関係の商品に使用し、その営業上の信用を蓄積させてきたのは、請求人であり、被請求人の上記主張は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない旨の根拠ある反論を何らしていない。
(3)被請求人は、「出所の混同の不存在」として、「CAMEL」は普通名詞であり、請求人の製造販売する衣類等と結びつくことはあり得ない旨主張し、さらに、「CAMEL」などの普通名詞が特定商品(本件ではたばこ)に使用され、特定の商品の出所を示すとしても、それ以外の商品では何人も「CAMEL」の標章、称呼、ラクダの図形を使える旨主張する。
しかし、商標法は、商標を保護することにより商標を使用する者の業務上の信用を維持し、取引秩序を守るためにある。そこにおいて、著名商標として保護されるかどうかを検討するにあたり考慮されるべきは、どれほど独創的な標章が考案されたかではなく、その長年の使用・広告等の行為によりその標章に化体した信用、いわゆるグッドウィルがどれほど蓄積されているかである。
被請求人の述べるとおり、著名商標であってもその特定商品以外では何人もその商標という標章・称呼を使えるとすれば、それはそもそも商標法においては専用権のみしか保護されないという結論にも等しく明らかに失当である。また、仮に専用権及び禁止権のみしか保護されないという趣旨だとしても、商標法が不登録事由につき第4条第1項第10号、同第15号、同第19号等を認めていることと明らかに矛盾するものである。
(4)被請求人は、「不正目的の不存在」として、甲第33号証の1ないし3及び甲第35号証について種々述べているが、前述したとおり、被請求人の一連の行為には、請求人の著名商標の信用に便乗しようとする不正の意図がうかがえる。被請求人による「ラクダ」をモチーフにした標章の使用は、甲第33号証の2として示した商標登録の不正使用に始まる。そして、被請求人は、少なくともこの登録が不正使用取消審判により取り消される可能性のあることを認識して以降、「INCA CAMEL」なる商標を出願し始めたものである。この「INCA CAMEL」の出願以降、被請求人は、「CAMEL」の部分が特に抽出されやすい態様での出願もしているほか(甲第42号証の1ないし3)、「US CAMEL」(甲第43号証)、「CAMEL STAR」(甲第44号証)等様々な態様で「CAMEL」を含む商標を出願している。これら一連の事実に鑑みれば、被請求人に「CAMEL」という著名商標の使用・価値に便乗しようという不正の目的が存在していた蓋然性が極めて高いというべきである。
また、被請求人の登記簿謄本(甲第47号証)によれば、その事業目的には、衣料品の販売の記載はなく、さらに、本件商標に対する異議申立て(乙第1号証)において、被請求人が提示した乙第2号証(同異議申立てにおける証拠番号)に示されている本件商標(甲第48号証)の背景部分に用いられている色は、F1レーシング・チームのスポンサーにより確立されたキャメル・カラーである黄色に類似する。これらの点からも、被請求人に不正の目的が存在する蓋然性が高いというべきである。
3 むすび
以上のように、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号又は同第19号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項により無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第24号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、引用商標1、3、5とは明らかに同一でも類似でもない。これら引用商標は、いずれも普通名詞の「CAMEL」の文字とラクダのシルエット図形の結合商標だからである。
したがって、本件商標との類否が問題になるのは、ラクダのシルエット図形よりなる引用商標2、4である。
(2)本件商標と引用商標4との比較(引用商標2は、引用商標4に類似する商標であるから、引用商標4と本件商標とが非類似であれば、本件商標との要部を比較するまでもなく非類似となる。)
(ア)外観
本件商標と引用商標4は、いずれもシルエットであるところ、本件商標は、ラクダと認識される明確な輪郭を持っているが、引用商標4は、輪郭がぼけ一見してラクダとは必ずしもいえない。さらに、両者の輪郭の具体的違いを比較すると、頭部・背中・脚・首の輪郭が違い、頭の形が違い、尾が本件商標にはなく引用商標2にはある。尿受けが本件商標にはあり引用商標4にはない、という風に明らかな違いがある。また、本件商標は右向き、引用商標は左向きであり、ラクダの向きが異なる。
(イ)称呼
引用商標4は、キャメルという名前のたばこを印象付ける標章の一つして日本では消費者に知られているから、これより生ずる称呼は、「ラクダ」ではなく、「キャメル」である。
これに対し、本件商標は、日本の消費者には、たばことの関連を連想させることはないので、「ラクダ」と称呼される。
したがって、本件商標と引用商標4は、称呼において同一ではない。
(ウ)観念
引用商標4は、キャメルのたばこの標章として日本の消費者に印象付けられ記憶されているが、衣類の出所を表示する標章として日本の消費者に印象付けられていないし、記憶されてもいない。何故なら、引用商標4の衣類は、一般の消費者を取引の対象とする商品として、市場に流通していないからである。
この点に関し、請求人は、衣類を製造販売しているかのごとく主張する。しかし、請求人の衣類の製造販売は、たばこの販売促進のために販売される衣類品であり、引用商標4に接する消費者の受ける印象、連想、記憶もたばこから離れることはないのである。
これに対して、本件商標を付した商品(衣類)は、安価な商品として一般の消費者を対象に市場に流通している。その結果、本件商標は、たばこと関連を印象付けられ、記憶されることはない。
そして、本件商標と引用商標4とが非類似であることは、乙第1号証(異議2004-90061)により明らかである。したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するという請求人の主張は、成り立たない。上記判断は、引用商標2にも当てはまる。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの点については、ラクダのシルエットが、引用商標2、4が使用されるはるか前から世界中に知られていたことからして、請求人の創作したシルエット図形ではなく、一般的なラクダのシルエット図形であることから認められない。
(2)出所の混同の不存在
ラクダは、4000ないし6000年前に家畜化され、運搬手段等として利用されてきている。その名称は一貫して「CAMEL(キャメル)」であり、普通名詞である。また、本件商標又は引用商標2、4にあるラクダの像を白黒で描画したのが請求人が最初でもない。日本人で中学1年生の英語を履修した者は、「CAMEL」という単語を学び、「キャメル」と発音(呼称)し、砂漠と結び付けた漠然としたキャメルの像を連想する。請求人が製品の標章として、ラクダの図を選ぶ前から、ラクダは存在し、英語圏の人々は「キャメル」と称呼し、日本人は、江戸時代から「ラクダ」と称呼してきたのである。CAMELという動物に対するネーミングは、請求人の行った造語ではない。したがって、「CAMEL」の文字・称呼だけで、全て引用商標2を付して請求人が製造販売する衣類その他の物と結びつくということはあり得ない。
仮に、「CAMEL」などの普通名詞が特定商品(請求人のたばこ)に使用され、周知著名性を獲得している場合、特定商品での「CAMEL」の使用が特定の商品出所を示すとしても、その商品以外では、何人も「CAMEL」の標章、称呼、ラクダの図形を使える。そうでなければ、万人に等しく認められるべき「CAMEL」という文字の使用が営業で禁止されることになる。ラクダをシルエットで表現する方法は万人に認められている(乙第3号証)。
3 商標法第4条第1項第19号について
(1)商標法第4条第1項第19号不正の目的の存在が出願時か審査時か審決取消訴訟における口頭弁論終結時かの問題があっても、不正の目的の有無は、問題となる商標の出願人の内心に求められる。
請求人は、被請求人が商標権者であった商標「LONGCHAMP」(馬のマーク 甲第35号証)が、無効審判により登録無効となったことをもって、不正の目的の徴表のごとく主張する。
しかし、無効とされた上記商標は、被請求人が他人より譲り受けた商標で被請求人が出願したものではない(乙第8号証)。譲り受けた商標に関し、無効審判を請求されれば、譲受人が当事者とされる以上争うのは当然であり、不正目的とは関係がない。
また、甲第33号証の1ないし3に示す不正使用による取消審判請求事件に被請求人が補助参加人として参加し、商標権者の主張を擁護したのは、当然の権利行使である。何故なら、被請求者は、商標使用許諾につき、一次契約者と二次の使用許諾契約を行っており(乙第4号証ないし乙第6号証)、使用標章については、当時可能であった連合商標出願をしていて、合法的に被請求人は使用可能と考え、指定商品に請求人の指摘する標章を使用していたからである。この被請求人の標章使用には不正目的はない。
請求人は、甲第33号証の3で本件商標をYシャツに付して使用しているのを出所の混同があると主張するが、被請求人が補助参加人として争った事件と本件審判事件の商標は別であり、補助参加人の事件で混同があったか否かは、本件には影響しない。
(2)請求人は、被服分野において、引用商標5は、周知著名であると主張し、甲第19号証ないし甲第28号証を提出する。
しかし、例えば、甲第19号証(85頁No.1、2、21、22及び103頁)において同時に掲載されている商標は、MARLBOROの商標であり、甲第23号証(5枚目)に掲載されている商標は、CABINの商標であり、いずれもたばこの商標である。スポーツカーのスポンサーとして引用商標5が使用されても、日本の一般消費者には、たばこの標章としか認識されない。
(3)除斥期間の経過
請求人が本件商標の無効事由とするのは商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号である。実質的にも標章の類否、業務の混同のおそれに関し、本件商標が登録査定を受ける過程で本件商標と引用商標の非類似・業務の混同のおそれがないことは十分に審理がなされている(乙第21号証)。そして、商標法第47条は、同法第4条第1項第10号、同第15号に違反してなされた登録の無効審判請求は、「不正の目的で商標登録を受けた場合」を除き、登録後5年以内に請求しなければならないと規定している。そうすると、請求人の同法第4条第1項第10号、同第15号を理由とする本件請求は理由がないから、同第19号の関係で被請求人(代表者)が本件商標出願時の平成10年4月1日当時不正の目的を有したか否かが本件において問題なのである。
しかし、前記3(1)のとおり、不正の目的はないのである。
4 弁駁に対する再答弁
請求人は、会社の目定の範囲を超えた業務と関連する商標出願をしていると主張する。しかし会社の営業は広く解されるものであって、会社の目的を取り上げてその範囲外であるというのは誤りである。
本件は被請求人が商標法第4条第1項第19号不正の目的をもって本件商標の登録をしたか否かが唯一の争点である。請求人が主張するように市場における混同のおそれの有無(商標法第4条第1項第15号)ということは不正の目的とは何ら関係がないことである。
5 むすび
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号又は同第19号のいずれにも該当しないものであるから、同法第46条第1項に定める無効理由は存在しない。

第5 当審の判断
1 請求人商標等の著名性について
(1)商品「たばこ」について
(ア)甲第6号証ないし甲第18号証の2によれば、米国の大手たばこ会社であった「R・J・レイノルズ社」は、1913年にブレンドシガレットを開発し、その包装箱に、別掲(7)のとおり、やや山なりに横書きした「CAMEL」の文字と「ラクダ図形」とを顕著に表した商標(請求人商標)を使用したこと、その後、1980年代半ばに「R・J・レイノルズ社」と米国の大手食品メーカーである「ナビスコ社」との合併より設立されたRJR社、及び1999年3月に、RJR社の保有する米国以外のたばこ事業を買収したJT社を通して現在に至るまで、これらの会社が取り扱う代表的なたばこの銘柄の一つとして、請求人商標が継続して使用されてきたこと、請求人商標は、通常「キャメル」と称呼され、上記1999年3月の時点で、「世界の五大たばこブランドの一つ」として、我が国の新聞等で報道されていたこと、請求人商品は、我が国においては、昭和24年(1949年)ころから宣伝されはじめ、その後も、一般に市販されている外国産のたばことして、継続して宣伝されていたこと、その売上本数は、2000年(平成12年)4月の時点で全世界で530億本、2002年(平成14年)6月の時点で全世界で589億本であり、請求人商標は、世界のトップ10ブランドの一つに位置づけられていたことなどが認められる。
(イ)上記(ア)で認定した事実によれば、請求人商標は、R・J・レイノルズ社、RJR社及びJT社の取扱いに係る商品「たばこ」を表示するためのものとして、本件商標の登録出願前より、世界的に著名であったといえるばかりでなく、我が国のたばこの需要者の間においても広く認識されていたものということができる。そして、その著名性は、本件商標の査定時である平成15年6月23日の時点においても継続していたものと認められる。
(2)商品「被服」等について
(ア)甲第19号証ないし甲第23号証、甲第29号証及び請求の理由によれば、RJR社(又はR・J・レイノルズ社)は、1987年から1993年までF1のロータスチームのスポンサーであり、上記期間中、引用商標5は、黄色地のF1カーの車体やレーサーのユニフォームに青色で大きく表され、きわめて目立つ態様で表示されたこと、引用商標5は、その構成中の「CAMEL」の文字部分が請求人商標中の「CAMEL」の文字部分と構成態様を同じくし、かつ、該文字の下に描かれたラクダの図形は、ラクダの向き、こぶ、首、四肢、尾などの態様からみて、請求人商標中の「ラクダ図形」をシルエットで表現したものと認められるから、構成全体として、請求人商標にきわめて近似するものであること、また、WBI社は、少なくとも1992年には、F1関連商品として、ジャンパー、トレーナー、Tシャツ、帽子、タオルなどの衣料品に引用商標5を表示して、我が国において販売したことが認められる。
(イ)上記(ア)で認定した事実によれば、我が国をはじめ世界的に注目を集めるF1において、請求人商標にきわめて近似する引用商標5が看者に強い印象を与える態様で使用された事実に加え、前記(1)で認定したとおり、請求人商標が商品「たばこ」を表示するためのものとして、世界的に著名なものであることを考慮すると、F1カーの車体やレーサーのユニフォームに表示された引用商標5に接する需要者は、引用商標5がR・J・レイノルズ社、RJR社及びJT社の取扱いに係る商品「たばこ」を表示する商標であると直ちに認識するといえるばかりでなく、F1関連商品として、引用商標5を表示したジャンパー、トレーナー、Tシャツ、帽子、タオルなどの衣料品が1992年(平成4年)には、すでに我が国で販売されていた事実をも併せ考えれば、被服等の分野における需要者は、引用商標5を使用した上記商品について、請求人商品の関連会社の取り扱う商品であると十分理解していたものとみるのが相当である。
したがって、引用商標5は、請求人商品の関連会社の取り扱う被服を表示するためのものとして、本件商標の登録出願時には既に、上記需要者の間に広く認識されていたものとみるのが相当であり、その著名性は、本件商標の査定時においても継続していたものと認められる。
2 出所の混同について
(1)本件商標は、別掲(1)のとおり、背中のこぶ、首の曲がり、四肢の長さ等から、直ちにラクダのシルエット図形を表したと理解されるものである。
一方、引用商標5は、別掲(6)のとおり、特徴のある「CAMEL」の文字を緩やかな山なりの横書きで表してなり、該文字の下に、背中のこぶ、首の曲がり、四肢の長さ等から、直ちにラクダを表したと理解されるシルエット図形を描いてなるものであるところ、ラクダは、我が国の一般世人に親しまれている動物であるから、引用商標5に接する需要者は、その構成中のラクダのシルエット図形に強く印象付けられるというのが相当である。
そうすると、本件商標と引用商標5中のラクダの図形部分は、ラクダの向きが左右反対である点において差異を有し、また、前肢の位置、頭部の向き、尾など細部において若干の差異を有するものの、いずれもひとこぶラクダをシルエットで描いてなる点において、基本的な構成の軌を一にするものであって、上記のとおり、ラクダが我が国の一般世人に親しまれている動物であることを考えれば、これら商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合は、上記差異点は、両商標を区別する上で決定的なものとはいえない。したがって、本件商標と引用商標5は、互いに相紛れるおそれがある程度に外観上類似するものというべきである。
(2)上記(1)で認定したとおり、本件商標は、被服等について使用され、本件商標の登録出願前より、需要者の間に広く認識されていた引用商標5と外観上類似する商標であり、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する需要者は、直ちに引用商標5、あるいは「キャメル」という銘柄のたばこを想起又は連想し、該商品が請求人又は請求人と業務上何らかの関係のある者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標というべきである。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、引用商標5は、「CAMEL」の文字とラクダのシルエット図形の結合商標であるから、本件商標とは同一でも類似でもない旨主張し、乙第1号証を提示する。
なるほど、本件商標に対する登録異議の申立て事件においては、本件商標と引用商標4とは類似しない旨の決定がされたことは、被請求人主張のとおりである。しかしながら、登録異議の申立て制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであるのに対し、登録無効審判制度は、特許庁が行った登録処分の是非を巡る当事者間の争いを解決することを目的とするものであるから、両制度は、その目的が異なるものである。そして、本件商標に対する登録異議の申立て事件においてその決定は、本件商標と引用商標4とが非類似の商標であるから、本件商標の登録が商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないと認定、判断したのに対し、本件審判においては、提出された証拠により、本件商標が引用商標5との間において、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるとする個別具体的な事情のもとに、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものと認定、判断したものであるから、上記登録異議の申立て事件の判断が本件審判の判断にそのまま当てはまるものではないし、商標の類否に限っていえば、登録異議の申立てにおける決定が唯一正当性のある判断であるとは限らない。したがって、上記被請求人の主張は理由がない。
(2)被請求人は、ラクダは、請求人が使用する以前から存在する動物であり、英語圏では「キャメル」と称呼し、日本では「ラクダ」と称呼してきたのであるから、「CAMEL」の文字・称呼だけで、請求人が製造販売する衣類その他の物と結びつくということはあり得ない旨主張し、さらに、仮に、「CAMEL」などの普通名詞が特定商品に使用され、著名性を獲得している場合、特定商品以外の商品は、何人も「CAMEL」の標章、称呼、ラクダの図形を使える旨主張する。
しかし、前記認定のとおり、「R・J・レイノルズ社」が1913年に発売した、たばこの包装箱に請求人商標の使用を開始し、以来継続して使用し、宣伝広告をした結果、「CAMEL」の文字及び「ラクダ図形」を含む請求人商標は、世界的に著名になったのであり、また、請求人商標から派生した引用商標5は、F1関連の被服等に使用され、本件商標の登録出願前より需要者の間に広く認識されているものである。そして、このような著名商標は、顧客吸引力・出所表示機能等が強いものであり、その使用に係る商品又は役務の範囲を超えた商品又は役務についての他人の使用が、商品の出所について誤認混同を生じさせるのみならず、著名商標の主体の取引上の信用を害し、著名商標の財産的価値が希釈化されることになり、著名商標の主体の営業活動においても重大な支障を来す結果を将来するから、商標法第4条第1項第15号により周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護しようとするものである。したがって、特定商品以外の商品は、何人も「CAMEL」の標章、称呼、ラクダの図形を使えるとする上記被請求人の主張は失当である。
(3)被請求人は、引用商標4を表示した衣類は、一般の消費者を取引の対象とする商品として市場に流通しておらず、請求人の衣類の製造販売は、たばこの販売促進のために販売される衣類品であり、引用商標4に接する消費者の受ける印象、連想、記憶もたばこから離れることはない旨主張する。
しかし、甲第19号証ないし甲第23号証及び甲第29号証によれば、WBI社がF1関連の被服等に使用する商標は、引用商標5であると認められる。そして、前記認定のとおり、引用商標5に接する需要者は、直ちに請求人商標を想起又は連想し、引用商標5を表示した被服等について、請求人商品の関連会社の取扱いに係る商品であると認識するというべきであるから、引用商標5と請求人商標とが密接な関係を有することは否定することはできないが、引用商標5が被服等を表示するものとして、本件商標の登録出願前より著名性を獲得していることも否定し得ない事実である。また、引用商標5を表示した被服等が、たばこの販売促進のために販売される商品であって、一般の消費者を取引対象とした商品として市場に流通していないとの主張を認めるに足る証拠の提出はない。したがって、上記被請求人の主張は理由がない。
(4)被請求人は、商標法第47条は、同法第4条第1項第10号、同第15号に違反してなされた商標登録の無効審判請求は、「不正の目的で商標登録を受けた場合」を除き、登録後5年以内に請求しなければならないと規定しているから、請求人らの同法第4条第1項第10号、同第15号を理由とする本件請求は理由がない旨主張する。
しかしながら、商標登録原簿によれば、本件商標は、平成15年10月24日に設定登録されたものであり、本件審判の請求日が平成18年11月13日であるところからすると、本件審判の請求は、設定の登録から5年以内にされたものといわなければならない。したがって、被請求人の上記主張は失当である。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものと認められるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)引用商標1

(3)引用商標2

(4)引用商標3

(5)引用商標4

(6)引用商標5

(7)請求人商標

審理終結日 2007-09-18 
結審通知日 2007-09-21 
審決日 2007-10-05 
出願番号 商願2002-29766(T2002-29766) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 きみえ 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 鈴木 新五
寺光 幸子
登録日 2003-10-24 
登録番号 商標登録第4720285号(T4720285) 
代理人 山崎 行造 
代理人 杉山 直人 
代理人 山崎 行造 
代理人 杉山 直人 
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