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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 036
管理番号 1152171 
審判番号 無効2006-89051 
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-21 
確定日 2007-02-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3153914号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3153914号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して、平成4年9月2日に登録出願、第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務とし、特例商標及び重複商標として、平成8年5月31日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張(要点)
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
(1)本件商標は、「株式会社日証」の文字を有するから、商号を表示した商標と認められる。
商号からなる商標は、これに接する取引者、需要者が、その商標が付せられた商品又は役務について、その商号の会社業務に係るものと認識し、取引が行われるのが普通である。
そして、本件商標は、被請求人の商号と異なる法人の名称からなるものであって、被請求人が本件商標をその指定役務に使用する場合には、取引場裡において、商号と商品又は役務の出所とが一体関係にあるものと信じている取引者、需要者をして、あたかも、該商号を有する会社が実在するかのように認識させることがあるといわなければならない。
してみれば、被請求人が、自己の商号と異なる本件商標をその指定役務に使用することは、公共の利益に反し、公の秩序を乱すおそれがあるものといわなければならない。
(2)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第46条の規定により、その登録は無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁(要点)
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
請求人は、本件商標に含まれている商号と商標権者の表示とが相違するから、本件商標は、公序良俗に反する商標である旨を主張する。
しかし、乙第1号証のとおり、本件商標の商標権は、株式会社日証に移転されているから、請求人の主張は理由がない(現商標権者である株式会社日証は、旧商標権者である株式会社T・N・Sの完全子会社である。)。
なお、法人が名称変更後に、旧名称を含む登録商標を保持していることが公序良俗に反することなど有り得ないのであるから、そもそも、請求人が主張する無効理由は、今回の移転に関係なく、もともと無効理由たり得ないものであり、したがって、本件無効審判の請求は、不適法な審判請求であって補正をすることができないものであるから、決定によって却下されるべきである(商標法第56条で準用する特許法第135条)。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号に規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合が含まれ、さらに、その使用が不正な意図をもってされ、国際信義又は公正な取引秩序に反する場合もこれに当たると解される(東京高裁;平成10年(行ケ)第11号及び平成10年(行ケ)第185号判決参照)。
(2)本件商標は、別掲のとおり、図形と「株式会社日証」の文字とを結合した構成よりなるものであるところ、その構成中の「株式会社日証」の文字部分は、法人の名称を表したと認識されるものである。
一方、本件商標の商標登録原簿の記載及び職権による調査によれば、本件商標の査定時における出願人及び設定登録後の商標権者は、以下のとおりである。
(ア)本件商標の査定日である平成7年11月22日の時点における出願人は、大阪府大阪市中央区東心斎橋1丁目7番14号に所在の「株式会社日証」であった。
(イ)本件商標の設定登録後である平成17年8月4日受付の「登録名義人の表示の変更」により、商標権者の名称が「株式会社日証」から「株式会社T・N・S」に変更され、同時に、その所在地も大阪府大阪市中央区東心斎橋1丁目9番24号に変更され、その登録が平成17年8月17日にされた。
(ウ)平成18年6月7日受付の「特定承継による本権の移転」により、本件商標の商標権は、上記「株式会社T・N・S」から大阪市中央区東心斎橋1丁目9番24号に所在の「株式会社日証」に移転され、その登録が平成18年6月20日にされた。
(3)(ア)そこで、まず、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであったか否かについてみるに、同法第46条第1項第1号に規定する無効事由のうち、商標登録が同法第4条第1項第7号に違反してされたものであるか否かの判断の基準時が査定時又は審決時であると解されることは、同法第4条第3項が例外的規定を設けていることからも明らかである。
そうすると、前記(2)(ア)で認定したとおり、本件商標の査定日における出願人は、大阪府大阪市中央区東心斎橋1丁目7番14号に所在の「株式会社日証」であったことからすれば、本件商標中の法人の名称を表す「株式会社日証」の文字部分は、出願人の名称と一致するものであったと認められるから、本件商標をその指定役務について使用しても、その取引者、需要者をして、役務の出所の誤認を生じさせるおそれはなく、商取引の秩序を乱すものではなかったというべきである。他に、本件商標がその査定時において、商標法第4条第1項第7号に規定する公序良俗を害するおそれがある商標に当たるという事実を裏付けるに足る証拠は見出せない。
したがって、本件商標は、その査定時において、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということができないから、その登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものではない。
(イ)次に、本件商標の登録がされた後において、商標法第4条第1項第7号に掲げる商標に該当するものとなっているか否かについてみると、同法第46条第1項第5号に規定する無効事由に該当する時期については、「過去に該当するだけでなく審判請求時においても継続して該当することを審判請求の要件としている」(「工業所有権逐条解説〔第14版〕」;社団法人 発明協会 発行)ところ、前記(2)(イ)によれば、本件商標の商標権者は、設定登録後に、当初の商標権者である「株式会社日証」がその名称を「株式会社T・N・S」に変更(平成17年8月17日登録)し、本件審判の請求日である平成18年4月21日以降の平成18年6月20日までの間、「株式会社T・N・S」が商標権者としての地位を継続していたことが認められ、したがって、本件商標は、その登録がされた後において、その構成中の法人の名称を表す「株式会社日証」の文字部分と商標権者の名称とが異なっていた期間があったと認め得るところである。
しかしながら、法人等の名称等は、他の法律等で使用の禁止がされていない限り、任意に変更され得るものであるうえに、本件商標の商標権者が「株式会社日証」から「株式会社T・N・S」に名称を変更したことが不正な意図をもってされたものと客観的に認めるに足る証拠は見出せない。加えて、「株式会社T・N・S」に名称を変更した平成17年8月17日から現在の商標権者である「株式会社日証」に商標権が移転された平成18年6月20日までの約10ヶ月の間、本件商標中の法人の名称を表す部分である「株式会社日証」と商標権者の名称が異なる時期があったとしても、前記(2)(ウ)のとおり、本件商標の商標権は、特定承継により、「株式会社日証」に移転され、本件商標中の「株式会社日証」の文字部分と商標権者の名称とが一致するに至ったものであり、かつ、これらの会社は、名称が単に変更になったにすぎず、会社そのものは実質的に同一の会社であるか、あるいは、子会社であるといった関係にある(この点に関し、請求人は、争うことを明らかにしていない。)もので、いわば事実上同一組織内の変更であり、これらの一連の事実が社会的妥当性を著しく欠くものとして、商標法第4条第1項第7号に該当するものとなっているとまで認めることはできない。他に、本件商標がその登録がされた後において、商標法第4条第1項第7号に規定する公序良俗を害するおそれがある商標に当たるという事実を裏付けるに足る証拠は見出せない。
(4)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものではなく、また、本件商標の登録がされた後において、商標法第4条第1項第7号に該当するものとなっているものでもないから、同法第46条第1項第1号又は同第5号により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標


審理終結日 2006-12-07 
結審通知日 2006-12-13 
審決日 2006-12-26 
出願番号 商願平4-172269 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (036)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 澁谷 良雄
特許庁審判官 山本 良廣
石田 清
登録日 1996-05-31 
登録番号 商標登録第3153914号(T3153914) 
商標の称呼 ニッショー、ニチショー 
代理人 石井 暁夫 
代理人 西 博幸 
代理人 三宅 始 
代理人 東野 正 
代理人 渡辺 隆一 

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