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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y36
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y36
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y36
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y36
管理番号 1152099 
審判番号 無効2005-89130 
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-10-04 
確定日 2007-02-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第4877207号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4877207商標(以下「本件商標」という。)は、「ワンショットコース」の文字を標準文字で書してなり、平成16年12月9日に登録出願、第36類「前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,税務相談・税務代理に関する情報の提供,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与」を指定役務として、同17年7月1日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4839373号商標(以下「引用商標」という。)は、「ワンショット手数料」の文字を標準文字で書してなり、平成16年7月5日に登録出願、第36類「通信ネットワークを通じてオンラインによって行われる有価証券の売買,通信ネットワークを通じてオンラインによって行われる有価証券の売買の仲介・媒介・取次ぎ・代理,通信ネットワークを通じてオンラインによって行われる投資に関する助言,通信ネットワークを通じてオンラインによって行われる株式市況に関する情報の提供,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与」を指定役務として、同17年2月18日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第34号証(枝番を含む。)を提出した。
請求人は、審判事件弁駁書の証拠方法として甲第1号証ないし同第6号証の記号を付した証拠を提出しているが、甲第1号証ないし同第28号証の証拠は既に審判請求時に提出済みであるから、該弁駁書において提出した証拠は、甲第28号証に続く証拠として記号を順次繰り下げ、甲第29号証ないし同第34号証として以下表記する。
(1)請求の理由
本件商標は、以下に述べる理由により、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
ア 商標法第4条第1項第11号について
(ア)商品の類似性
本件商標及び引用商標の各指定役務は前記のとおりであるから、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似する役務である。
(イ)商標の類似性
本件商標「ワンショットコース」は、「一打、一撃、一杯」の意味を有する「ワンショット」と、「コース」の各語を結合させたものと解される。このうち「コース」の語は、ゴルフコースやフランス料理のコースなどのように行路や行程あるいは単位を示す語として広く認識されているのみならず、各種サービス業界においては、「月額定額コース」などの形でサービスの種類や料金体系を示すものとして、広く一般に用いられているものである(甲第3号証及び同第4号証)。
また、本件商標の指定役務である第36類の金融・不動産関連サービスの分野においても、一般に「コース」を「○○コース」といった名称に使用して、選択可能な金融商品や金融サービスの一つを示す語として用いられているものである(甲第5号証及び同第6号証)。
特に、本件商標の指定役務の属する証券業界、とりわけインターネットによるサービスに特化したいわゆるネット証券業界においては、「コース」の文字を「一日定額コース」などのように「○○コース」といった名称に使用して、選択可能な手数料体系の一つ等を示す語として、極めて一般的に用いられているものである(甲第7号証ないし同第12号証)。被請求人においても、本件商標を、「一日定額コース」と並んで選択可能な株式取引の手数料体系を表す商標として使用を開始しており(甲第13号証)、被請求人が提供する二者択一の手数料体系は、いずれも「コース」部分を共通にしている。このため、本件商標に触れる需要者は、「ワンショット」という金融商品、又は手数料等の料金体系によるサービスと認識するのが通常である。
したがって、本件商標において指定された金融サービス関連の役務において、本件商標が使用される場合、「コース」部分からは選択的なサービスの一つであることを示すことが認識されるにすぎないのが通常であって、需要者は、「コース」以外の「ワンショット」の部分において役務の出所を認識することが通常であり、本件商標を各指定役務に使用する場合には、「ワンショットコース」のみならず「ワンショット」も要部となるものと解するべきである。
一方、引用商標「ワンショット手数料」は、「一打、一撃、一杯」等を意味する「ワンショット」の文字と、「手数料」の文字を結合させた商標である。当該文字の構成は、「ワンショット」は片仮名文字で記載され、また「手数料」は漢字で表されている。このため「ワンショット」と「手数料」は分離されやすいものである。また、「手数料」の語は、売買の仲介等の代償として受け取る代金を意味するものと認識されるものである。このため、有価証券の売買等各指定役務について「手数料」の語は、自他商品識別力がないか極めて弱いと解され、引用商標を各指定役務に使用する場合には、「ワンショット」も要部となると解すべきである。
したがって、本件商標と引用商標は、共に「ワンショット」を要部とするものであり、その称呼、観念を共通にするものであることから、両商標が類似することは明らかである。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、同一又は類似の指定役務を指定するものであり、商標については、要部を共通にし類似するものであることから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
イ 商標法第4条第1号第10号について
(ア)引用商標の周知・著名性について
請求人は、2002年11月20日より新たな手数料体系を導入し、その名称を「ワンショット手数料」として、使用を開始した(甲第14号証)。
この手数料体系は、「複数日にわたる内出来約定を1件の注文として手数料を計算する」(例えば2株の買い注文が2日にわたって1株ずつ約定した場合、通常は2件分の手数料がかかるところを1件の手数料として取り扱う。)という、これまで証券業界になかった全く新規な手数料体系であり、かかる新たなサービスを需要者に認知させるために、「ワンショット手数料」と銘打ってパンフレットに大きく掲載したほか(甲第15号証)、全国紙や雑誌へも幾度となく広告を行った(甲第16号証及び同第17号証)。
なお、請求人は、ネット専業証券の大手5社の一角を占めていて(甲第18号証及び同第19号証)、本件商標の登録出願前である2004年11月末において20万弱、登録査定直前の2005年6月末においては26万強の口座数を有する、ネット投資家の間では広く知られた存在であり、出願人の提供するサービスである株式取引における手数料体系を示す商標として、継続的に引用商標を使用している(甲第20号証)。ネット専業証券という業務の性質上、ホームページにおける広告が利用者に与える影響は、他の商品分野に比べ大きいといえる。
また、近年のインターネットを通じた株式取引ブームと相まって、複数のネット専業証券に口座を持ち、異なるサービスを利用する需要者も増加している。2004年11月末において、請求人は、主としてインターネット経由で1営業日平均54,000件強の売買注文を受け付けており、請求人のホームページにおける使用によって、引用商標がネット証券を利用する需要者の間で広く知られる状況にあったことは明らかであり、引用商標は、需要者であるネット証券業者及びその利用者間では、少なくとも本件商標の登録出願時において広く知られた周知著名となっているものである。
(イ)引用商標と本件商標の類似性
先に述べたとおり、引用商標と本件商標は、要部「ワンショット」において同一であり、共通の称呼、観念が生ずるものであるため、両者が類似することは明らかである。
(ウ)指定役務の類似性
引用商標は、前述のとおり、請求人が、その主たる業務であるインターネットを通じてオンラインによって行われる有価証券の売買の媒介等において使用している(甲第20号証)。
他方、本件商標は、前記のとおり「有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理」を含む役務を指定していることより、本件商標は、引用商標が使用されている役務と同一の役務(少なくとも類似する役務)を指定していることは明らかである。
以上のとおり、本件商標は、その登録出願時において需要者であるネット証券業者及びその利用者間においてその役務を識別するものとして広く認識されている被請求人の引用商標と類似する商標について、その引用商標の役務と同一又は類似する役務を指定するものである。このため本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
ウ 商標法第4条第1項第19号について
(ア)引用商標の周知・著名性
先に述べたとおり、引用商標は、少なくとも本件商標の登録出願日においては、請求人の役務を表示するものとして需要者の間に広く知られていたといえる。
(イ)引用商標と本件商標との類似性
先に述べたとおり、引用商標と本件商標は、共通の称呼、観念が生ずるため、両者が類似することは明らかである。
(ウ)被請求人の不正の目的の存在
請求人は、上述のとおり「ワンショット手数料」の使用を開始している。同商標を使用したサービスは、独自の手数料体系よりなるものであり、これまで証券業界になかった全く新規なサービスである。
このサービスの名称である「ワンショット手数料」は、請求人の継続的使用により高い業務上の信用が化体している。請求人は当該商標の業務上の信用を保護すべく、混同を生じさせるような類似商標について監視し、必要な場合には第三者に対し問題となる商標の使用中止を要請するなど、引用商標に化体した業務上の信用の維持向上のために鋭意努力をしている。
現実に、ネット専業証券大手の一角である日興ビーンズ証券(現マネックス・ビーンズ証券)が、2004年7月2日に従来から存在する極めて一般的な1約定ごとの手数料体系を「1ショット」として提供することを明らかにした際(甲第21号証)には、同社に対して「1ショット」の使用中止及び名称の変更を申し入れ、速やかに名称の変更が行われることとなった(甲第22号証ないし同第24号証)。請求人の申し入れにより「1ショット」の使用が中止され、出所の混同が防止されるのみでなく、サービス内容の誤認を防止することにも成功している。
請求人と被請求人とは共にネット専業証券の大手5社に含まれ、業界における競業者である(甲第18号証及び同第19号証)。被請求人が競業者である請求人の引用商標やそのサービス内容に関する情報を了知していたのは、疑いのないところである。
このような状況下において、被請求人は、本件商標の登録出願を行っている。被請求人が本件商標と併せて「ワンショット」の商標の商標登録出願を行っていたことを考慮すると(甲第25号証及び同第26号証)、株式取引の仲介を含む指定役務の範囲において、被請求人が好ましくは「ワンショット」の語を独占的に使用しようという意思があったことは明白である。
このように、手数料体系を表す名称には他に多くの選択肢がある中で、引用商標と類似する「ワンショット」又はこれに類似する本件商標を登録出願した請求人には、引用商標に化体した請求人の業務上の信用にフリーライドしようとする意図があることが窺える。
このように、請求人の業務上の信用を利用しようとする意図が本号にいう「不正の目的」に該当することは明らかであり、被請求人は「不正の目的」をもって本件商標の登録出願を行ったものである。
以上のとおり、被請求人が引用商標と類似する商標について不正の目的をもって登録出願したことは明らかである。このため本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
エ 商標法第4条第1項第7号について
(ア)本件商標の登録の経緯
上述のとおり、請求人と被請求人とは共にネット専業証券大手であり、被請求人は、請求人の引用商標の使用について把握することが当然に可能であり、また請求人の引用商標の登録出願の事実についても、これを知り得る状況にあったものと理解される。
このような状況から、有価証券の売買の媒介等を含む指定役務の範囲において、好ましくは「ワンショット」の語を独占的に使用しようという意図、さらには請求人の業務上の利益を利用しようとする意図のもと、本件商標を登録出願したものと考えられる。このような登録出願は、社会一般の道徳観念に反したものといわざるをえない。
(イ)本件商標の使用状況
本件商標は、被請求人のホームページ等において、インターネットを用いた有価証券の売買等の役務について既に使用が開始されている。同ホームページによると、被請求人は、「一日定額コース」と並んで従来から存在する極めて一般的な手数料体系である「取引1回ごと」に手数料を課金するサービスに使用することを明らかにしている(甲第13号証、同第27号証及び同第28号証)。請求人の「ワンショット手数料」と内容は明らかに異なるものである。
このように、被請求人は、本件商標を請求人とは異なる極めて一般的なサービスについて使用しているものであり、サービスの出所について混同を生じさせるばかりか、被請求人のサービスを利用する需要者にはあたかも従来にはない新規なサービスを提供しているかのような誤認を生じさせ、逆に請求人のサービスを利用する需要者には従来にはない新規なサービスがごく一般的な普通のサービスであるかのような誤認を生じさせるなど、需要者にサービスの内容について誤認を生じさせる結果を導くものである。かかる本件商標の指定役務についての使用は、現実に需要者に大きな混乱をもたらしており、商標秩序や取引秩序を害するものであり、社会公共の利益に反しているものといえる。
以上のとおり、本件商標を指定役務について使用することは社会公共の利益に反し、又は社会一般の道徳観念に反するものであるため、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に反して登録されたものである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 商標法第4条第1項第11号について
(ア)「ワンショットコース」としてのみ出所が認識されるとの主張について
被請求人は、「ワンショット」の語は、証券業界において日常的に用いられる語であって、識別力を有しないと説明しているが、「ワンショット」の語は、東京証券取引所のホームページ(甲第29号証)、日本証券業協会のホームページ(甲第30号証)においても使用されておらず、幅広い株式用語を解説する書籍にすら掲載されていない(甲第31号証)。被請求人は、上申書を証拠方法として提示しているが、被請求人の執行役員から提示された証拠のみでは、かかる用語が被請求人の社内において使用されている証拠として用いられることはあっても、業界内において、さらには広く需要者において、「ワンショット」の語が「一回の注文」あるいは「一回の約定」といった意味で理解されることを、何ら証明し得るものではない。
上述のとおり、「ワンショット」は、指定役務との関係において十分に識別力を発揮しうるものといえる。なお、「注文」と「約定」は、英語では「order」と「Execution」と表されるのが通常であり、これを「Shot」と訳することはない。
また、「ワンショット」の用語が指定役務との関係で識別性を有する客観的事実として、請求人が請求書において述べたマネックス・ビーンズ証券の「1ショット」の使用中止の件が挙げられる。仮に、被請求人の主張するように、「ワンショット」の用語が証券業界において日常的に使用される用語であって、識別力を有しないものとするのであれば、同社は使用を中止することなく、普通名称又は慣用商標の使用であること等を主張することも選択し得たところを、直ちに使用を停止した行為は、証券業界に属する同社が「1ショット」をして識別標識となり得ることを認めていることの証となるものである。
以上のように、「ワンショット」の用語が証券業界において日常的に使用される用語ではなく、「ワンショット」から需要者が役務の出所を認識し得る、識別力を有する語であることは明らかであり、被請求人の主張は根拠を欠くものである。
(イ)「ワンショット」の語が本件商標の要部となり得るか否かについて
被請求人は、「『ワンショットコース』という商標に触れた需要者が、『ひとつき割引コースとか、いちにち定額コースとか、デイパックコースではなく、一回当たりの注文や約定の手数料を支払うことを選択するコースだな。』という認識を持つ」と説明しているが、この説明によると、需要者は、数あるコースの中から「ワンショットコース」を選択していることになる。ここにおいて需要者が比較の対象としているのは、「コース」以外の「ひとつき割引」「いちにち定額」「デイパック」「ワンショット」の部分であることからも、被請求人の主張によって、とりも直さず「ワンショット」部分によって他の商標と識別されていることが示されており、需要者が「ワンショット」と「コース」を分離観察し、「ワンショット」部分から商標を識別することを示している。
また、被請求人は、「ワンショットコース」は一連に称呼しても格別冗長ということはないと主張しているが、8音の音節からなる本件商標を冗長でないと断ずることはできないと考えられる。
以上のように、本件商標は、「ワンショット」部分を識別力を有する要部と認定して、引用商標との類否を判断すべきものである。
したがって、「ワンショットコース」としてのみ出所が認識されるとの被請求人の主張には理由がない。
(ウ)登録例について
被請求人は、指定役務が類似する範囲において「コース」の有無のみが相違しながら併存して登録された商標が存在している例を挙げ、これを根拠に本件商標は登録されるべきであることを主張している。
しかしながら、「コース」以外の他の構成部分が異なり、かつ指定役務が異なる他の事案の登録例が、本件商標と引用商標の類否判断の基礎となり得ないものであることは、改めて述べるまでもない。過去の登録例から種々述べている被請求人の主張には理由がない。
(エ)本件商標を「ワンショットコース」全体で認識した場合について
本件商標に含まれる「コース」の語は、本件商標の指定役務、とりわけ証券会社の主要な業務である「有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理」において用いられた場合、需要者には「手数料」に関するものであることを想起させるのが通常である。なぜならば、証券会社の提供する役務の内容は、いずれも取引の対象となる銘柄に差異が生じることは少ないため、各社間で必然的に均質なものとなる。その中で、証券会社が様々な「コース」を設けて役務を提供しようとすれば、各々の「コース」における役務の内容の差異は、必然的に取引仲介の委託手数料の差異に収斂せざるを得ない(甲第32号証ないし同第34号証)。したがって、証券会社が上記役務について「○○コース」なる商標を用いる場合、選択可能な手数料の一つを示すものとして使用していることがほとんどであって(甲第7号証ないし同第13号証)、需要者は「コース」から手数料を示す商標であると認識するのが通常である。
いい換えれば、需要者が「ワンショットコース」の商標に触れた場合、「(何らかの意味を表象する)ワンショットの手数料」を選択するものであると認識するのが通常であって、このことは被請求人が「ワンショットコース」について「一回当たりの注文や約定の『手数料』を支払うことを選択するコースだな。」と認識すると説明していることと、まさに合致するものでもある。
一方、引用商標「ワンショット手数料」は、文字通り「手数料」を選択させるための商標である。証券会社の主要業務である指定役務との関係を考慮すると、この手数料が選択可能な様々な手数料の一つであるのは、当然に想起し得るものである。
本件商標と引用商標は、上記のとおり取引の実情を考慮すると、いずれも様々な手数料の中から選択し得る「(何らかの意味を表象する)ワンショットの手数料」の観念を想起させるものである。したがって、両商標を総合的に判断すると、需要者が出所の混同を招く程度に類似するものであることは明らかである。
以上のとおり、答弁書における被請求人の主張は、明らかに理由のないものである。
イ 商標法第4条第1項第10号について
被請求人は、請求人の提示した証拠資料からは、請求人が周知・著名であることを示すことはあっても、引用商標が周知・著名であったことを示すものではないことを主張している。
しかしながら、需要者であるネット証券業者及びその利用者間において、ネット証券業者のサービスを比較する上で手数料は極めて重要な要素となっている(甲第32号証ないし同第34号証)。かかる状況下において、周知・著名である請求人の主要な手数料の一つを示す引用商標が、請求人同様に本件商標の登録出願時において周知・著名であったことは、サービスの対比において手数料が極めて重要であるという取引の実情を考慮すると明らかである。
したがって、被請求人の上記主張には理由がない。
ウ 商標法第4条第1項第19号について
答弁書においては、被請求人が請求人の引用商標やそのサービス内容を了知していたことが明らかな状況下において、手数料を表す名称には他に多くの選択肢がある中、敢えて「ワンショットコース」又は「ワンショット」の商標について被請求人が商標権を取得しようとした意図について、不正の目的をもったものでないことについて何ら説明がされていない。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであることは明らかである。
エ 商標法第4条第1項第7号について
(ア)被請求人が本件商標を登録するまでの経緯について
a 被請求人の業務展開の規模が請求人を上回ることについて
被請求人は、被請求人の業務展開の規模が請求人を上回ることについて種々の数値を示して説明しているが、業務上の利益の利用は、事業規模全体の大小によって決せられるべき問題ではなく、全体の顧客数が上回るからといって、業務上の利益を利用する意図がないとはいえない。業務上の利益を利用する意図の有無については、対象となる個々の役務において、事業者全体の規模の如何にかかわらず先行する競業者の業務上の利益を利用しようとする意図は当然に生じ得るものであり、各々の役務の内容について判断されるべき事項である。よって、この点についての被請求人の主張には理由がない。
b 「ワンショット」の登録出願に深い意図がないことについて
請求書における請求人の問いは、被請求人の競業者である請求人が、すでに株式取引の委託手数料において「ワンショット手数料」の商標を用いている状況下において、手数料を示す商標として、例えば「ワンタイム」「ワンオーダー」「ワンリクエスト」「ワントレード」「シングルオーダー」など、他にも多くの選択肢が存在するにもかかわらず、なぜ敢えて需要者の混乱を招き得るような「ワンショット」を含む商標を選択したのかという点である。
請求人が「ワンショット手数料」を使用していることを当然に了知し得る状況下において、被請求人が敢えて「ワンショット」を選択した経緯について、答弁書において何ら説明を行っていない。
被請求人は、「ワンショットコース」と併せて「ワンショット」の商標を登録出願した理由について、特に深い意図がないとの説明をしている。一方で、「ワンショットという語が証券業界では比較的日常的に使用されている語である」とも説明しており、被請求人が「ワンショット」の語を識別力がないことを認識しながら敢えて登録出願を行ったということになる。このような登録出願を行った行為は、被請求人が「ワンショット」を識別力があるものと認識していたことの証でもあり、被請求人の主張は、この点において明確に相矛盾するものとなっており、不正の意図を推認するに十分なものである。
様々な選択肢がある中で敢えて「ワンショット」の語を選択して登録出願した被請求人の行為からは、「特に深い意図がない」とは到底考えられず、被請求人の商標選択の経緯には請求人の業務上の利益を利用せんとする意図が窺えることは明らかである。
以上より、被請求人の主張は採用することができない。
(イ)本件商標の使用状況について
a 「ワンショットコース」の商標を現実に使用していないことについて
被請求人は、「ワンショットコース」の商標に対応するサービスが未だ導入されていないことを理由に、需要者に混乱が生じることがないと説明している。しかしながら、サービスが導入されていなくても、被請求人が「ワンショットコース」について大々的に広告宣伝を行っている事実をもって、請求人のサービスの利用者には十分に混乱が生じ得るものである。仮に、現実には混乱が生じていないとしても、例えば出所の混同を防止する商標法第4条第1項第15号にある「混同を生じるおそれ」の文言からも明らかなように、商標法による保護は、将来的な混同防止のためにも与えられるものであるので、この点についての被請求人の主張には理由がない。
b 誤認が生じないように互いに役務の内容を説明すれば足りること
被請求人は、請求人に対して、「自らのサービスの内容に誤認が発生すると危惧するのであれば・・・自らのサービスの内容を自ら正確にわかりやすく顧客に説明すれば足りるだけのこと」との主張を行っている。
しかしながら、商標は、それ自体が識別標識として出所表示や品質保証の機能を果たすものであるから、需要者が誤認することを防止するために商標に役務の内容を併記しなければならないようであれば、そもそも商標としての機能を果たし得ないこととなってしまう。このような主張は、社会公共の利益に反しないことの根拠になり得ないことは当然である。よって、この点についての被請求人の主張には理由がない。
(3) むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、及び同第19号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第17号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項11号について
ア 本件商標は「ワンショットコース」としてのみ出所が認識されること
請求人が主張するように、コースという用語は、サービスの種類や料金体系、選択可能な金融商品や金融サービス、また、選択可能な手数料体系の一つ等を示すものとして、一般的に用いられているものであることは否定できない。しかしながら、証券業界では、「ワンショット」という用語は、正式な用語ではないものの、請求人が主張しているような「一打、一撃、一杯」という意味合いではなく、(顧客による株式等の)「一回の注文」あるいは(顧客との株式等の)「一回の約定」といった意味で、比較的、日常的に使用されているものであり(乙第l号証)、請求人が主張するように「ワンショット」それ自体から、需要者が役務の出所を認識することはおよそ考えられない。
このように、「ワンショット」という用語が、「一回の注文」あるいは「一回の約定」を意味すると証券業界で了解されているからこそ、請求人も引用商標を採用しているのであり、請求人が述べているように、日興ビーンズ証券(当時)も、1約定ごとの手数料体系を「lショット」として提供しようとしたものである(甲第21号証)。
すなわち、「ワンショットコース」という商標に触れた需要者は、「ひとつき割引コースとか、いちにち定額コースとか、デイパックコースではなく、一回当たりの注文や約定の手数料を支払うことを選択するコースだな。」という認識をもつ程度であり、ことさら「ワンショット」を役務の出所として認識することはないと容易に推察される。需要者にとっては、「ワンショット」単独ではなく「ワンショットコース」という全体をもって、はじめてその役務の内容を認識できるのであり、本件商標は、「ワンショットコース」としてのみ出所が認識されるものである。
したがって、この点に関する請求人の主張は成立し得ない。
イ 登録例
被請求人が金融関連の役務(第36類)に関して「コース」を含む商標の調査を行ったところ、銀行業、不動産業等の指定役務について、「ダイヤモンドコース」商標と「ダイヤモンド」商標、「マイスターコース」商標と「マイスター」商標が併存して登録されていた(乙第2号証及び同第5号証)。これらの商標の相違は、「コース」の有無である。
また、金融関連の役務と同様「コース」という言葉が多用される幼児向け受験予備校の年齢別コース、高等学校の進路選択のコース、英会話学校のカリキュラム、服飾専門学校の科目、受験予備校の学年別・志望校別のコース、というように「コース」という言葉が多用されている(乙第6号証の1ないし6)
上記の各商標が併存して登録されたのは、「○○○コース」という商標が「コース」の部分も含め全体として一つの言葉であると判断され、「○○○」のみからなる商標と非類似であると判断されたからにほかならない。
このように、登録例を鑑みれば、要部を「ワンショット」とする引用商標と「ワンショットコース」商標とが併存して登録されている事実は、過去の判断に沿うものである。
ウ まとめ
本件商標は、一連に称呼しても格別冗長ということはなく、「ワンショットコース」という称呼のみが生ずる。一方、引用商標は、「ワンショット」と「手数料」は分離されやすく、引用商標からは「ワンショット」あるいは「ワンショットテスウリョウ」という称呼が生じる。したがって、本件商標と引用商標とは称呼を異にする。
本件商標と引用商標とは、外観が相違する。
また、本件商標は、強いていえば、「一回当たりの注文あるいは約定の手数料を支払うことを選択するコース」という観念が生ずるものであるのに対し、引用商標の観念は、「一回当たりの注文の手数料そのもの」というものであり、本件商標と引用商標の観念は相違する。
以上述べたところから明らかなとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録を無効にすべきであるという請求人の主張には理由がない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、本件商標の登録出願時に、引用商標が既に周知・著名となっていたと主張しているが、甲号証として提出された証拠のみでは、請求人が周知・著名であったことは示すことはあっても、本件商標の登録出願時、引用商標が周知・著名であったという請求人の主張を立証しているものと評価することはできない。
さらに、そもそも、上述したように、本件商標と引用商標は、明らかに非類似の商標であることから、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当し、その登録を無効とすべきであるという請求人の主張には理由がない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
上述したように、本件商標と引用商標は明らかに非類似の商標であり、引用商標が本件商標の登録出願時に周知・著名であったという事実が立証されているとはいい難いのであるから、被請求人において不正の目的を有していたかの点を詳細に反論するまでもなく、本件商標が商標法第4条第1項第l9号に該当し、登録を無効とすべきであるという請求人の主張には理由がない。
(4)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、「ワンショットコース」であり、その構成自体、きょう激、卑わいな文字、図形である場合でないことは明らかである。
また、被請求人は、現在、約43万の口座を有し、顧客預かり資金は1兆1,100億円に達し、一日当たりの平均取引件数は、I7万件に達しており、請求人をはるかに上回る業務を展開しており、被請求人において、請求人の業務上の利益を利用しようなどという意図は全くない。
「ワンショット」を本件商標と併せて登録出願したのも、「ワンショット」の語を独占的に利用しようなどの特に深い意図があってのことではない。仮に、本件商標の登録が無効とされたなら、有価証券の売買の仲介等の役務の分野では、「ワンショット」という語は、請求人の独占使用が許されることになり、「ワンショット」という語が、証券業界では、比較的、日常的に使用されている語であることに鑑みると、むしろ、請求人の意図を疑わざるを得ない。
さらに、請求人は、被請求人のサービスは需要者にサービスの内容について誤認を生じさせる結果を導くものであり、かかる本件商標の指定役務についての使用は、現実に需要者に大きな混乱をもたらしており、商標秩序や取引秩序を害するものであり、社会公共の利益に反している旨主張している。 しかしながら、被請求人のホームページ上の「新手数料『ワンショットコース』の概要」(乙第17号証)では、「注文の約定ごとに適用される国内株式の手数料コース」と説明され、また、システム整備・強化のため、本答弁書日付現在、この「ワンショットコース」は、導入されていないのであるから、「現実に需要者に大きな混乱をもたらしており」という請求人の主張は、いわれのないいいがかりである。請求人において、被請求人による本件商標の使用により、自らのサービスの内容に誤認が発生すると危惧するのであれば(その危惧に理由があるものか否かは別として)、自らのサービスの内容を自ら正確にわかりやすく顧客に説明すれば足りるだけのことであり、被請求人を非難するのは筋違いである。
以上のとおりであるから、本件商標それ自体、また、それを指定役務に使用することは、社会公共の利益に反するものではなく、社会一般の道徳観念に反するものでもないから、本件商標が商標法第4条第l項第7号に該当し、登録を無効にすべきであるという請求人の主張には理由がない。
(5)むすび
以上詳述したとおり、本件商標の登録が無効にされるべき理由として請求人の主張するところは、いずれも理由がない。

5 当審の判断
(1)本件商標は、前記のとおり「ワンショットコース」の文字よりなるところ、該文字は、標準文字をもって外観上まとまりよく一体的に構成されていて、全体の文字数も長音符号を含めても9文字と一語を形成しているとみて何ら不自然なものということはできず、また、これより生ずる称呼もさほど冗長というべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、かかる構成においては、全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが自然であるといわなければならない。
してみれば、本件商標は、その構成文字の全体に相応して「ワンショットコース」の称呼のみを生ずるものと認めるのが相当である。
請求人は、「『コース』の語はゴルフコースやフランス料理のコースなどのように行路や行程あるいは単位を示す語として広く認識されているのみならず、各種サービス業界においては、『月額定額コース』などの形でサービスの種類や料金体系を示すものとして、広く一般に用いられている」、「特に、本件商標の指定役務の属する証券業界、とりわけインターネットによるサービスに特化したいわゆるネット証券業界においては、『コース』の文字を『一日定額コース』などのように『○○コース』といった名称に使用して、選択可能な手数料体系の一つ等を示す語として、極めて一般的に用いられているものである。被請求人においても、本件商標を、『一日定額コース』と並んで選択可能な株式取引の手数料体系を表す商標として使用を開始しており」、「したがって、本件商標において指定された金融サービス関連の役務において、本件商標が使用される場合、『コース』部分からは選択的なサービスの一つであることを示すことが認識されるにすぎないのが通常であって、需要者は『コース』以外の『ワンショット』の部分において役務の出所を認識することが通常である。」旨主張する。
しかしながら、例えば、一般的な国語辞典である「広辞苑」(岩波書店発行)に、「コース」について「1.たどるべき道すじ。行路。進路。「登山?」2.競走・競泳・競漕・ゴルフなどで、定められた競技路。3.経過。
順序。「事態が予期した-をはずれる」「出世-にのる」4,課程。「進学- 」5.西洋料理で、順番に出される一連の料理。→フル‐コース。」と記載され、またカタカナ語辞典の「コンサイスカタカナ語辞典」(三省堂発行)には、「コース」についての記述のほか、「【複合語】コース[course]」項目が設けられて「進路,道筋,転じて競走路の意味で複合語をつくる」として「アウト?,イン?」などを挙げ、「また連続する過程,順序の意もある」として「デザート?,ドクター?」などが挙げられて記載されているように、「コース」の語は、他の語と結合して使用されることが多い語ということができる。
請求人の提出に係る証拠においても、例えば「FTTHコース、ADSLコース、ダイヤルアップコース」(甲第4-1号証)、「投資信託30コース」「投資信託50コース(甲第5-1号証)「一日定額コース」、「約定ごとコース」(甲第7-1号証)、「一般コース、ハイパーアクティブコース」(甲第8-1号証)、「アクティブコース」(甲第9-1号証)、「マンスリーコース、デイコース」(甲第10-1及び2号証)、「1取引一律コース、デイパックコース」(甲第11-1号証)、「一日定額コース」(甲第12-1号証)のように、他の語に「コース」の文字を付した文字が使用されており、これらの文字は、表示されている体裁からみて、いずれも全体をもってインターネット関連会社、証券会社等が提供する役務に関する料金体系の名称を示しているということができる。
また、被請求人のウエブサイトのホームページにおいては、被請求人は、「10月からの新手数料」として本件商標を含む「ワンショットコース」及び「いちにち定額コース」(甲第13ー1及び2号証)の各文字を手数料体系の名称として現に使用しており、「ワンショットコース」、「いちにち定額コース」の各文字とも、その全体をもって被請求人の提供する役務に関する料金体系の名称を表しているものということができる。
そして、請求人の提出に係る証拠には、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、上記のような「コース」の文字を含む文字で構成された料金体系の名称を「コース」の文字部分を省略して略称する取引の実情にあると認め得る証拠はないから、請求人のこれらの点に関する主張は、上記判断を左右するものではない。
これに対し、引用商標は、「ワンショット手数料」の文字よりなるものであり、「手数料」の文字部分は役務の提供に関する手数料を表すものと容易に理解されるものということができるから、引用商標がその指定商品に使用された場合、取引者、需要者はこれを「ワンショット」という「手数料」の名称を表したものと認識し、「ワンショット」の文字部分より生ずる称呼をもって取引にあたる場合も少なくないとみるのが相当である。
してみれば、引用商標は、全体の構成文字に相応して「ワンショットテスウリョウ」の称呼のほか、「ワンショット」の文字部分に相応して「ワンショット」の称呼をも生ずるものと認められる。
そうとすれば、本件商標より生ずる「ワンショットコース」の称呼と引用商標より生ずる「ワンショットテスウリョウ」、「ワンショット」の称呼とは、構成音数の差異及び相違する音の音質の差異により明瞭に区別し得るものというべきであるから、本件商標は、引用商標と称呼上相紛れるおそれのない非類似のものといわなければならない。
それぞれの構成よりして、両商標は、外観及び観念においても類似するものではない。
(2)請求人の提出に係る証拠によれば、請求人のウエブサイトのプレスリリース」のページに、「ワンショット手数料&出合注文を3週間に延長」として「カブドットコム証券株式会社は、複数日にわたる内出来約定でも一つの注文として計算する独自の手数料計算方式を『ワンショット手数料』という名称で提供することとしました。」と記載され(甲第14-1及び2号証)、同じく「お取引に関する手数料 現物取引の手数料」のページには、他社の手数料と比較するなどして「ワンショット手数料」について記載されており(甲第20-1及び2号証)、また、請求人のパンフレットにも、「手数料体系」のページが設けられて「ワンショット手数料」などについて詳述されていることが認められる(甲第15号証)。
また、新聞及び雑誌に掲載されたものと推認し得る広告に、「【リスク管理】をとことん追求して、手数料を引き下げます」として請求人の手数料体系について記載されており、「しかも、カブドットコム証券の独自のワンショット手数料での計算だから、約定が複数日にまたがる内出来でも、手数料は最初の一回のみ!まとまった単位のご注文時も安心」と記載されている(甲第16号証及び同第17号証)。
これらの記載からすると、「ワンショット手数料」の文字は、請求人の手数料の料金体系を端的に表現したものであろうと理解するに止まるものというべきである。
請求人の提出に係る証拠には、これら以外に請求人が「ワンショット手数料」の文字を使用している事実を示すものはない。
してみれば、請求人はネット専業証券の大手5社の一角を占めており、その業務の性質上、ホームページにおける広告が利用者に与える影響が他のサービス分野に比べ大きく、またネット証券業者のサービスを比較する上で手数料が極めて重要な要素となっている点を併せ考慮しても、請求人の提出したこれらの証拠によっては、本件商標の登録出願時あるいは登録査定時において、「ワンショット手数料」の文字からなる商標が請求人の提供に係る証券業務に関する役務を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。
(3)そうとすれば、本件商標は、「ワンショット手数料」の文字からなる引用商標に類似するものではなく、引用商標が請求人の提供する役務を表示する商標として取引者、需要者間に広く認識されているものとも認められないから、本件商標をその指定商品に使用しても、該役務が請求人の業務に係るものであるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
また、本件商標は、引用商標に化体した請求人の業務上の信用にフリーライドし不正に使用する商標ではなく、さらに、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とも認められない。
(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものではない。
したがって、本件商標は、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-06-05 
結審通知日 2006-06-08 
審決日 2006-06-22 
出願番号 商願2004-112642(T2004-112642) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Y36)
T 1 11・ 222- Y (Y36)
T 1 11・ 26- Y (Y36)
T 1 11・ 25- Y (Y36)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 寺光 幸子
小林 薫
登録日 2005-07-01 
登録番号 商標登録第4877207号(T4877207) 
商標の称呼 ワンショットコース、ワンショット 
代理人 笠原 英美子 
代理人 土生 哲也 
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