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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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取消2008300287 | 審決 | 商標 |
取消200131305 | 審決 | 商標 |
無効2008890015 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 111 |
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管理番号 | 1148233 |
審判番号 | 取消2003-31209 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2007-01-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2003-09-09 |
確定日 | 2006-11-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2715334号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2715334号商標の指定商品中「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2715334号商標(以下「本件商標」という。)は、「JAWS」の文字を横書きしてなり、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、平成3年11月12日に登録出願され、同8年7月31日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 1 請求の趣旨 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出している。 2 請求の理由 請求人の調査では、被請求人は、本件商標の指定商品中の「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」について、過去3年以上にわたって、我が国において使用していないことが判明した。 3 第1弁駁の理由 被請求人は、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下「日本アイ・ビー・エム」という。)に対して使用許諾を行った旨主張するが、日本アイ・ビー・エムが、被請求人の専用使用権者又は通常使用権者として、本件商標を使用していることを示す証拠は何ら提出されていない。すなわち、被請求人と日本アイ・ビー・エムとの間における使用許諾契約書が提出されていないし、乙第1号証ないし乙第11号証には、日本アイ・ビー・エムが、被請求人の使用権者である旨の記載も一切ない。 4 第2弁駁の理由 乙第1号証の日本アイ・ビー・エムの商品カタログ第2頁に「本製品は、視覚障害者向けソフトウェア開発のリーディング・カンパニーであるFreedom Scientific Inc.と日本アイ・ビー・エムが、Freedom Scientifict米国版スクリーンリーダー「JAWS for Windows」の日本語対応版として共同開発したものです。「JAWS for Windows」は、1995年に米国で発表されて以来、独仏伊等10カ国に対応し、現在世界で約7万8千人以上から利用されている世界で最も普及しているスクリ一ン・リーダーです。」との表記があるように、商標「JAWS」、商品「ソフトウェア」については、日本アイビーエムと請求人との間にライセンス契約があるものであり、被請求人との間には何らライセンス契約は存在しないものである。乙第1号証の日本アイビー工ムの商品カタログ最終頁にも被請求人が商標「JAWS」の商標権者である旨の表示もない。日本アイビーエムが他社の商標をカタログ上に使用する場合には、必ずライセンサーの商標を表示することになっている。 甲第2号証は、日本アイ・ビー・エムと請求人との間のライセンス契約写しであって、3.1 f)項(品質保持条項)に商標「Jaws」が記載してある。 5 第3弁駁の理由 (1)乙第3号証ないし乙第11号証の請求書は、日本アイ・ビー・エムとその取引先の書類であり、日本アイ・ビー・エムが、被請求人の通常使用権者として、本件商標を使用していることを何ら立証するものではない。むしろ、甲第2号証として提出した2000年5月12日付け日本アイ・ビー・エムと請求人との品質管理についても詳細に規定した商標「JAWS」、商品「ソフトウェア」に関する契約書に基づく商標の使用を示したものといえる。 本件商標の使用許諾については、日本アイ・ビー・エムと請求人との間に契約があり、被請求人との間には何ら契約は存在しないものである。 また、日本アイ・ビー・エムの販売している商品は、請求人の商品であり、その商品内容については、被請求人はなんら関与していない。このような商品への使用は、商標法50条の商標の使用に該当しないことは裁判所も認めるところである(Cosilan事件・東京高判平成8年10月17日、最判平成9年9月12日もこれを支持)。乙第1号証の日本アイ・ビー・エムの商品カタログ最終頁にも被請求人が商標「JAWS」の商標権者である旨の表示もない。日本アイ・ビー・エムが他社の商標をカタログ上に使用する場合には、必ずライセンサーの商標を表示することになっている。 (2)請求人が開発した視覚障害者向けソフトウェア「JAWS」を日本アイ・ビー・エムに使用許諾していることは、甲第2号証より明らかである。視覚障害者の社会参画の機会を妨害しているのは、まさに自ら使用する意思のない本件商標を登録した被請求人である。日本では、真正に商標を使用していない登録商標は商標法50条に基づき取り消すことができる。請求人は当該制度を利用して、不使用商標を消滅させ、世界的に使用されている商標「JAWS」の使用を確保するものである。本件商標が取り消されれば、請求人と日本アイ・ビー・エムとの間にある商標使用許諾契約は、被請求人に妨害されることなく、実行できる。これにより、視覚障害者の社会参画の機会を確実に確保できる。 6 第4弁駁の理由 (1)甲第2号証として提出した2000年5月12日付日本アイ・ビー・エムとフリーダム・サイエンティフィック・ピーエルブイ・グループ・リミテッド・ライアビリティー・カンパニーとの商標「JAWS」(商品:ソフトウェア)契約書の一部訳文を甲第3号証として提出する。「3.1のライセンス品の説明」より、「JAWS」は、請求人の商標であり、日本アイ・ビー・エムと請求人との間に商標の使用許諾契約があり、被請求人との間には何ら商標の使用許諾契約は存在しないものであることは明らかである。 (2)乙第12号証の証明書は、本件審判請求登録前3年以内に日本アイ・ビー・エムが通常使用権者として、本件商標を使用していることを何ら立証するものではない。けだし、商標の使用許諾といえるためには、商品の品質管理条項を設け、使用許諾をする商品の内容に関与していなければならない。このことは、商標法53条の不正使用取消審判の規定が存在することからも明らかである。昭和34年法ではじめて、商標の使用許諾制度が導入されたが、これは、商標法53条とのセットで導入されたものである。乙第12号証の証明書には、 この点について何らふれられていない。このような品質管理条項がないことは、甲第2号証として提出した2000年5月12日付日本アイ・ビー・エムと本件審判請求人との品質管理についても詳細に規定した商標「JAWS」(商品:ソフトウェア)に関する契約書が別途存在することからも明らかである。日本アイ・ビー・エムの商品の内容には、請求人が関与しているのであり、被請求人はなんら関与していないのである。被請求人は、自ら使用する意思のない空権となった本件商標を日本アイ・ビー・エムに対して振り回そうとしたにすぎない。被請求人が真に日本アイ・ビー・エムに対して使用許諾をしているのであれば、品質管理条項を定めた使用許諾契約書を提出できるはずである。これが提出できないのは、そのような契約関係にないからにほかならない。また、乙第12号証の証明書は、いつから日本アイ・ビー・エムが、被請求人との使用許諾契約に基づき、本件商標を使用しているかについて述べていない。このことからも、乙第12号証の証明書は、本件審判請求登録日前3年以内に日本アイ・ビー・エムが通常使用権者として、本件商標を使用していることを何ら立証するものではないことは明らかである。 製造物責任については、ライセンサーまたはライセンシーの何れに対しても消費者は責任を追求できるとするのが我が国の通説である(製造物責任法2条3項)。 (3)裁判例をみても、「colmar」事件・H11.10.07東京高裁平成10(行ケ)189商標権行政訴訟事件では(甲第4号証)では、以下のとおり、商標権者と美津農株式会社との契約は禁止権行使一部放棄契約であり、通常使用権者の使用に該当しないと判示されている。「これらの契約書の前文には、『(原告と美津濃株式会社とは、原告)の所有に係る第447171号商標『colmar』の類似商標『COLMAR』を乙(美津濃株式会社)に使用許諾するに当り、次の通り取り決め契約を締結する。』と記載されているのであり(ただし、登録第447171号商標の表記方法は年度によって異なる。)、『COLMAR』商標は登録第447171号商標の使用ではなく、それに類似する商標として契約当事者間に認識されていたものであることが明らかである。このような契約上の文言及び当事者の認識からすれば、上記契約は、登録第447171号商標の禁止権を行使することを一部放棄する趣旨のものとして取り交わされたものというべきである。したがって、上記契約による美津濃株式会社の商標の使用の事実をもって、登録第447171号商標の使用があったものとすることはできない。また、上記(1)ないし(3)に認定した事実関係に照らせば、美津濃株式会社が使用してきている『COLMAR』商標は、小文字から成る本件商標の『colmar』と截然と区別して認識されるに至っており、本件商標とは同一の商標と認められないから、上記契約により美津濃株式会社が『COLMAR』商標を使用していたとしても、これをもって、同社が本件商標を使用していたものとすることもできない。」、また、Cosilan事件(東京高判平成8年10月17日・平成5年(行ケ)第129号判決、最判平成9年9月12日)でも、商標権者の関与しない、請求人の商品についての商標の使用を、商標法50条における商標の使用と認めていない(甲第5号証)。 7 第5弁駁の理由 被請求人は、日本アイ・ビー・エムが、被請求人の通常使用権者であり、日本アイ・ビー・エムにより、指定商品に本件商標が使用されていたと主張している。 乙第13号証の契約書(以下、「本件契約書」という)は、平成12年9月12日に株式会社東芝(旧商標権者)と日本アイ・ビー・エムとの間において締結された契約書である。この契約書の第1条をみると、タイトルが「権利不主張」となっており、日本アイ・ビー・エムが、商標「”JAWS for Windows”(IBM Version)」を商品「視覚障害者のための画面情報を音声で読み上げるソフトウェア」に使用することに対して権利を主張しない旨定めている。 日本アイ・ビー・エムの商品についての株式会社東芝(以下「東芝」という。)による品質管理条項は設けられていない。 また、本件契約書第7条の製造物責任の項目では、東芝は、日本アイ・ビー・エムが商標「”JAWS for Windows”(IBM Version)」を使用した商品については、製造物責任を負わない旨記載されている。 このような本件契約書の構成より、東芝と日本アイ・ビー・エムとの間にあった契約は、通常使用権についての契約ではなく、日本アイ・ビー・エムが商標「”JAWS for Windows”(IBM Version)」を使用することについて、本件商標の権利を行使しないことを内容とする契約、すなわち、禁止権行使一部放棄契約にすぎないことは明らかである。 通常使用権の契約であれば、商標の使用の対象は、本件商標の専用権の範囲、すなわち、本件商標と同一である必要があるが、本件契約書では、本件商標「JAWS」ではなく、他人の著名商標「Windows」及び「IBM」の結合からなる 「”JAWS for Windows”(IBM Version)」が契約の対象となっており、本件商標の専用権外の本件商標の禁止権の範囲にある商標となっている。 また、本件契約書の第1条では、「権利不主張」と記載されており、まさに禁止権行使一部放棄契約の体をなすものとなっている。 さらに、通常使用権に関する契約であれば、通常使用権の使用の実績及びそれによる業務上の信用は商標権者に帰属することになるため、商品の品質管理条項が存在する必要があるが、そのような管理条項はなく、また、実際に東芝が日本アイ・ビー・エムの商品の品質等に関与した事実も存在しない。東芝と日本アイ・ビー・エムは競合会社であり、資本関係もなく、また、人事交流もない。親子会社や財閥企業であれば、人事交流があり、また、品質管理等についてもグループ全体で責任を負う体制なっているが、本件のように競合会社の場合には、このようなコントロール関係は一切ないのである。コントロール関係を設ける唯一の手段は、契約書による品質管理条項であるが、本件では、この条項がなく、かつ、実際に品質管理もなされていない。 そして、本件契約書第7条では、東芝は、日本アイ・ビー・エムの商品について責任を一切負わないとされているのである。このような条項からも、本件契約が、禁止権行使一部放棄契約であることは明らかである。 本件商標が使用されている商品が、請求人の開発した商品であることは明らかである。この点は、乙第1号証の商品カタログ第2頁に「本製品は、視覚障害者向けソフトウェア開発のリーディング・カンパニーであるFreedom Scientific Inc.と日本アイ・ビー・エム(株)が、Freedom Scientifict米国版スクリーン・リーダー 「JAWS for Windows」の日本語対応版として共同開発したものです。 「JAWS for Windows」は、1995年に米国で発表されて以来、独仏伊等10カ国に対応し、現在世界で約7万8千人以上から利用されている世界で最も普及しているスクリーン・リーダーです。」との表記があること、請求人のホームページにも、請求人の商標として、「JAWS for Windows」と記載されていること(甲第7号証)、米国において、商標「JAWS」は請求人の商標として、1988年1月1日に使用が開始され、1990年7月17日登録されていることから明らかである(甲第8号証)。日本アイ・ビー・エムは、請求人の開発した商品を、請求人との契約書(甲第2号証、甲第3号証)により、日本語版対応にしたにすぎない。日本アイ・ビー・エムから顧客へ出されている請求書にも、請求人が世界的に使用している「JAWS for Windows」の表記がなされており、本件商標の表示はない(乙第3号証ないし乙第11号証)。 これらの証拠(乙第1号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第2号証、甲第3号証、乙第3号証ないし乙第11号証)より、日本アイ・ビー・エムの使用していた「JAWS for Windows」の部分の表示は、東芝の商標として機能していたのではなく、請求人の商品「視覚障害者のための画面情報を音声で読み上げるソフトウェア」の商標(出所表示標識)として機能していたことは明らかである。 日本アイ・ビー・エムは、「JAWS for Windows」の表示を使用した商品の販売を2005年12月22 日で終了しており(甲第9号証)、現在では、有限会社エクストラが販売している(甲第10号証)。そして、「JAWS for Windows」は請求人の商標(出所表示標識)として現在でも機能して使用されている。 以上により、日本アイ・ビー・エムは、通常使用権者として、本件商標と同一の商標を使用する法律上の地位になく、本件商標が、通常使用権者により、審判請求登録日前3年以内に日本国内において使用されていなかったことは明らかである。 8 結論 以上のとおり、被請求人が提出した答弁書及び証拠からでは、審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者又はその使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品「電子応用機械器具」についての本件商標を使用していることを証明していないことは明らかであるから、商標法第50条第2項の要件を満たさず、その指定商品「電子応用機械器具」に係る商標登録の取り消しを免れることはできない。 第3 被請求人の答弁 1 答弁の趣旨 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証を提出している。 2 第1答弁の理由 (1)被請求人は、東京都港区六本木3丁目2番12号を本店所在地とする日本アイ・ビー・エムに対し本件商標の使用許諾を行っている。 (2)日本アイ・ビー・エムは、被請求人との契約に従い、通常使用権者として、本件審判請求の登録前3年以内に「視覚障害者のために画面情報を音声で読上げるソフトウェア」に本件商標の使用をしている。 (ア)乙第1号証中、「本製品は、視覚障害者向けソフトウェア開発のリーディング・カンパニーであるFreedom Scientific Inc.と日本アイ・ビー・エム(株)が、Freedom Scientific米国版スクリーン・リーダー『JAWS for Windows』の日本語対応版として共同開発したものです。」等の記載から、使用商品は「ソフトウェア」であって、本件商標の指定商品「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」の中に含まれること明らかである。 (イ)そして、乙第1号証は、2003年2月作成を意味する「03-2月版」の記載と「このカタログの情報は2003年2月現在のものです。」の記載から、本件審判請求の登録以前に成立し、使用されたことを示している。 (ウ)次に、乙第2号証にも、「視覚障害者のために画面情報を音声で読上げるソフトウェア」に本件商標の使用をしている。 乙第2号証は、「このカタログに記載されているIBM標準価格および標準使用料金は2002年2月現在」の記載から、本件審判請求の登録以前に本件商標の使用をしたことを示している。 (エ)乙第3号証ないし乙第11号証は、請求書の一部であるが、本件商標を日本の広い範囲で使用したことを証明すべく、その写しを提出する。 かくて、日本アイ・ビー・エムは被請求人との関係において、通常使用権者の立場にあること明白であり、当該通常使用権者が、その権限に基づき、乙第1号証ないし乙第11号証での「JAWS」の使用は、本件商標の使用をしたと言わざるを得ないものと考える。 3 第2答弁の理由 (1)請求人は、弁駁書において、使用許諾契約書が提出されていない、乙第1号証ないし乙第11号証には被請求人の使用権者である旨の記載がないとの主張を行っている。まず、使用許諾契約書が提出されていないとの点について述べる。 被請求人は乙第1号証及び乙第2号証の提示で充分と考えたが、日本アイ・ビー・エムは取消にかかる商標権が消滅し使用できなくなることは、視覚障害者への日本アイ・ビー・エムの社会的存在としての責任、さらに社会に対する貢献を果たし得ないものと判断され、企業として秘すべき重大な取引先情報である請求書の写しの提出に同意した。 契約関係がないのに、企業として秘すべき重大な取引先情報を乙第3号証ないし乙第11号証として被請求人が提出することを認めることはあり得ない。 日本アイ・ビー・エムは被請求人との正当な契約関係があるからこそ、本件商標への攻撃に対する正当な防御として乙第3号証ないし乙第11号証提出を認めたのである。 しかして、被請求人と日本アイ・ビー・エムとの使用許諾契約書を提出するまでもなく、日本アイ・ビー・エムにおける乙第1号証ないし乙第11号証の使用は契約関係によるものと無理なく判断し得るものと思料する。 (2)乙第1号証ないし乙第11号証には被請求人の使用権者である旨の記載がないとの主張を行っている。 当該主張も商標法上何らの根拠を持たないものである。 即ち、第50条の取消審判では、使用権者である旨の記載が要件とはなっていない。商標としての使用がされているか否かで、取消されるかどうかだけである。 この第50条の内容を以ってしては、如何なる想像力を働かせようとも、使用証明資料に使用権者である旨の記載が必要とすることはできない。 商標として使用されているかどうかだけの問題である。 結局、請求人の主張は何ら理由がない。 (3)請求人は、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第11号証の内容については、何らの攻撃を行っていないこと弁駁書を見るに明らかである。 もはや攻撃の余地なきものと判断し、本件商標が商標として使用されていることを認めた証左であると言わざるを得ない。 被請求人は、乙第1号証ないし乙第11号証により、通常使用権者である日本アイ・ビー・エムが、「視覚障害者のために画面情報を音声で読上げるソフトウェア」に真正に使用していることを証明した。 当該商品は、視覚障害者の社会参画の機会を大幅に増やし、我日本社会において高い評価を与えられているものである。 日本アイ・ビー・エムは取消にかかる商標権が消滅し使用できなくなることは、視覚障害者への日本アイ・ビー・エムとしての責任を果たしえなくなるとの懸念を抱いておられる。 4 第3答弁の理由 請求人は、弁駁書において、使用許諾契約書が提出されていない、乙第1号証ないし乙第11号証には被請求人の使用権者である旨の記載がないとの主張を行っている。 これに対し、被請求人は第2回答弁書で考えるところを述べた。 しかしながら、使用立証に供した商品は、視覚障害者の社会参画の機会を大幅に増やし、我日本社会において高い評価を与えられているものである。 日本アイ・ビー・エムは取消にかかる商標権が消滅し使用できなくなることは、視覚障害者への日本アイ・ビー・エムとしての責任を果たしえなくなるとの懸念を抱いておられること、既に述べたとおりである。 そこで、被請求人が日本アイ・ビー・エムに契約の存在証明について、協議を行っていたところ、日本アイ・ビー・エムから乙第12号証の発行を頂いた。 当該乙第12号証は、日本アイ・ビー・エムと被請求人の間には、契約関係が存在し、その契約に則り、日本アイ・ビー・エムが使用していることを証明しているものと考える。 5 平成17年12月20日に行われた口頭審理において、乙第13号証(契約書)及び乙第14号証(覚書)を提出した。 6 結論 以上のとおり、本件審判請求は何ら理由がないものであるから、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。 第4 当審の判断 被請求人が本件商標を使用しているものとして提出した乙第1号証ないし乙第11号証によれば、日本アイ・ビー・エムが、本件審判請求が登録された平成15年10月8日前3年以内に、我が国内において、商品「視覚障害者のために画面情報を音声で読上げるソフトウェア」のカタログ及び請求書に本件商標が付された事実を認めることができる。 しかしながら、請求人は、日本アイ・ビー・エムの本件商標の前記使用について、請求人と日本アイ・ビー・エムとの間のライセンス契約に基づき日本アイ・ビー・エムが本件商標の使用をしているものであり、被請求人との間には何ら契約は存在しない旨主張しているので、この点について検討する。 通常使用権の許諾は、契約書などの書面によらなければできないというわけではないが、被請求人は、乙第12号証によって、日本アイ・ビー・エムと被請求人の間には契約関係が存在し、その契約に則り、日本アイ・ビー・エムが使用していることを証明している旨主張している。また、この乙第12号証には「本件商標に関し、書面で存在する使用許諾契約を基に『視覚障害者のための画面情報を音声で読み上げるソフトウェア』につき使用許諾を受け、使用していることを茲に確認する」旨記載されていることから、平成17年12月20日に行われた口頭審理において、乙第12号証に記載されている「書面で存在する使用許諾契約」である本件契約書を被請求人が提出した。 本件契約書は、平成12年9月12日に東芝(旧商標権者)と日本アイ・ビー・エムとの間において締結された契約書であり、その契約条項をみれば、第1条(権利不主張)甲(被請求人)は、乙(日本アイ・ビー・エム)が「”JAWS for Windows”(IBM Version)」を使用することにつき、甲(被請求人)が所有する本件商標権及び本件商標権に類似する商標を以って権利を主張行使しない」旨の記載があり、他の契約条項に日本アイ・ビー・エムが、被請求人の使用権者である旨の記載は一切ないことから、その契約が通常使用権の許諾についてではなく、日本アイ・ビー・エムが商標「”JAWS for Windows”(IBM Version)」を使用することについて、被請求人は本件商標の権利を行使しないことを内容とする契約であり、本件商標の使用許諾契約とはいい難いものである。 また、契約が通常使用権の許諾であれば、本件商標が契約対象になるが、本件契約書は、「”JAWS for Windows”(IBM Version)」と本件商標の禁止権の範囲にある商標が契約対象になっている。 そうとすれば、日本アイ・ビー・エムによる本件商標の使用が、通常使用権者による使用に該当するということにはならないこというべきである。 してみれば、被請求人が提出した証拠方法によっては、本件商標が、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中の一商品である「視覚障害者のための画面情報を音声で読上げるソフトウェア」について商標権者又は通常使用権者により使用されていたと認められないものである。 また、被請求人は、本件商標を請求に係る前記指定商品に使用しないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。 したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-12 |
結審通知日 | 2006-09-15 |
審決日 | 2006-09-27 |
出願番号 | 商願平3-116731 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(111)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 敏樹、薩摩 純一 |
特許庁審判長 |
中村 謙三 |
特許庁審判官 |
久我 敬史 井岡 賢一 |
登録日 | 1996-07-31 |
登録番号 | 商標登録第2715334号(T2715334) |
商標の称呼 | ジョーズ、ジェイエイダブリュエス |
代理人 | 中田 和博 |
代理人 | 足立 泉 |
代理人 | 柳生 征男 |
代理人 | 堀口 浩 |
代理人 | 美甘 徹也 |
代理人 | 青木 博通 |