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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14行ケ555審決取消請求事件 判例 商標
無効200235336 審決 商標
平成19行ケ10042審決取消請求事件 判例 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
管理番号 1143403 
審判番号 無効2004-89090 
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-25 
確定日 2006-09-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第4788761号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4788761号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4788761号商標(以下「本件商標」という。)は、「源気ウコン」の文字を標準文字により表してなり、平成16年4月23日に登録出願、第29類「ウコンを主原料とする粉末状・錠剤状・顆粒状・粒状・カプセル状・液状の加工食品」を指定商品として、同16年7月23日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第4371626号商標(以下「引用商標」という。)は、「源気」の文字を大きく横書きし、その上段に「げんき」の文字を振り仮名風に小さく横書きした構成からなり、平成10年8月6日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同12年3月31日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)本件商標及び引用商標の称呼の特定
本件商標中の「ウコン」の文字部分については、本件指定商品が「ウコンを主原料とする粉末状・錠剤状・顆粒状・粒状・カプセル状・液状の加工食品」であることから、単に商品の原材料を示した部分にすぎない。更に「ウコン」を原材料とする健康食品の多くは「ウコン」及び「○○ウコン」なる名称で販売されている(甲第3号証)。
一方、「源気」の文字は「元気」に通ずるとしても、辞書にも掲載されておらず(甲第4号証)、語義を特定し得ない造語であるといえる。ここで、「ウコン」の文字部分が原材料を表し、また、ウコンを原材料とした健康食品につき一般に使用される言葉であることも考慮すると、需要者の注意は「源気」の部分に集まり、したがって、本件商標が付された商品が「源気」印の商品であると認識され、「ゲンキ」なる称呼をもって取引に資される場合は決して少なくないものと思料する。
(2)本件商標と引用商標の対比
上述のとおり、本件商標については、構成中の「源気」の文字部分が識別力を有する部分となり得る一方、引用商標は、「げんき」「源気」をそれぞれ二段に書してなるものであり、両者は、「源気」なる文字部分において同一である。
(3)本件商標と引用商標の指定商品の対比
本件商標の指定商品は、第29類「ウコンを主原料とする粉末状・錠剤状・顆粒状・粒状・カプセル状・液状の加工食品」という、いわゆる「健康食品」の一種である。
一方、引用商標の指定商品は、第5類「薬剤」であり、この中には医薬品が含まれるが(甲第5号証)、医薬品の中には、更に医師等の処方箋、指示なしで使用できる「一般大衆薬」が含まれる。引用商標は、請求人によって生薬を原料とした「一般大衆薬」、特に「滋養強壮剤」について継続的に使用されているものである(甲第6号証)。
ところで、商品の類否判断は、特許庁編「商標審査基準」において示された各基準を総合的に考慮して判断されるものであるが(甲第7号証)、全審査官の判断の統一的基準を示す目的で類否関係を類型的に表したものが「類似商品・役務審査基準」であり、「類似商品・役務審査基準」に基づくと、「健康食品」と「薬剤」とは、確かに類似群コードを異にし、形式的には非類似と判断されるものである。しかし、類似の判定が根本的には商取引の実情、経済界の現状に即応して行われるべきものであることは、「類似商品審査基準作成の趣旨」中でも明らかにされている。また「類似商品・役務審査基準の運用」において、「審査基準上の商品・役務の類否はあくまで推定にすぎず、経済界等の実状の推移から本基準により非類似と推定される商品が類似と認められる場合もある」旨述べているのは、同観点によるものと思料する(甲第8号証)。そこで、以下「薬剤」、特に「滋養強壮剤」と「健康食品」の今日の商取引の現状を具体的に検討する。
まず、いわゆる「健康食品」とは、健康の増進を目的とした食品であって、「特定保健用食品」、「栄養機能食品」をはじめ、保健目的で用いられる食品は、この範疇に含まれるものと考えられる。これら「健康食品」は薬局、薬店を通じた、いわゆる薬系販売ルートで販売がされることも多く(甲第9号証の1)、昨今の健康ブームを受けて薬系販売ルートにおける販売は、ますます拡大すると見込まれている(甲第9号証の2)。また、製造業者についても、食品業者のみならず製薬会社の健康食品市場への参入の動きがあり(甲第10号証)、このことは、国内の大手の製薬会社各社が「健康食品」につき商標出願を行い、登録を受けていることからも分かる(甲第11号証)。
一方、「滋養強壮剤」も健康増進・体力回復の目的で使用されるものであり、これらは製薬会社により製造され、薬局、薬店を通じて一般需要者に販売されるものである。また、甲第6号証にも示したとおり、引用商標は、健康増進・体力回復を目的とするカプセル状の薬剤及び滋養強壮剤について現実に使用されており、当該商品は請求人たる田辺製薬株式会社により製造され、薬局、薬店を通じて一般需要者に販売されている。
そこで、「審査基準」上の基準に基づき「健康食品」と「薬剤」、特に「滋養強壮剤」を比較すると、両商品は、一般需要者を販売の対象としている点で、審査基準上の「(ホ)需要者の範囲が一致する」に該当し、健康を増進し体力を回復するという点で「(ニ)用途が一致する」にも該当する。また、昨今製薬業者の健康食品市場への参入の動きもみられるため、「(イ)生産部門が一致する」に該当する可能性も否めない。更に両者は薬局、薬店を通じて販売されるという点で販売経路が同一であり、これは「(ロ)販売部門の一致」に該当する。商標の機能が商品の流通段階での自他商品識別にあると考えると、この流通経路における近似性は、商品の類否判断において特に重視されるべきものであると思料する。
以上を考慮すると、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品に同一又は類似の商標が付された場合、実質的には取引上誤認混同が生じるおそれがあり、よって、それぞれの商品は互いに類似のものであるといえ、このように判断することは、特許庁における商品の類否判断の趣旨に反するものではないと思料する。なお、平成15年5月22日東京高裁平成14(行ケ)第555号審決取消請求事件においても同内容の判断がなされている(甲第12号証)。
さらに、上述したとおり、本件商標及び引用商標の指定商品は、それぞれ生薬を原料とし、体力増進を目的としたものであり、実質的に商品の内容は、ほぼ同一であるといえるが、前者は厚生労働省による医薬品の承認を受けていないために「健康食品」として扱われるのに対し、後者は同省の承認を受けているため「医薬品」として扱われるという点で相違する。
当該相違点は、特許庁での審査において異なる類似群コードが与えられる、という形となって表れるが、「医薬品」と「健康食品」を一律に非類似商品として扱うとすると、既に指定商品「薬剤」について登録を受けている商標と同一・類似の商標について、第三者が当該先行登録との抵触を避けるために、実質的に同一の商品について、あえて厚生労働省の承認を受けることなく「健康食品」として出願を行った場合、登録が認められるという事態が生じ得る。このような事態が妥当でないことは、言うまでもなく明らかであると思料する。
(4)まとめ
叙上に徴し、本件商標は、引用商標と互いに相紛れるおそれのある類似の商標であり、また、その指定商品も互いに相紛れる類似の商品である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1号の規定により、無効とされるべきものである。
(5)答弁に対する弁駁
(ア)商標の一体性について
a 被請求人が乙第1号証ないし乙第5号証として掲げる登録例は、いずれも「源気」と他の文字部分とが一連一体にとらえられるものであり、いわゆる健康食品の分野において、「源気」なる文字のみが一般的に使用されていることを示すものではない。
また、乙第6号証のインターネット上での検索結果60件中には、人名等、「健康増進薬・滋養強壮用薬剤ないしいわゆる健康食品」とは関係のないものが40件もあり、「健康増進薬・滋養強壮用薬剤ないしいわゆる健康食品」に関するものはわずか20件にとどまる。このうち、請求人の使用する「源気」に関するホームページが13件である。残る7件は、それぞれ「源気ウコン」(2件)、「強源気」(2件)、「八穀源気」(2件)、「八仙堂薬局の商品:源気」(1件)に関わるものである。すると、請求人と被請求人以外による使用例は、わずか2社によるものにすぎない。更に「強源気」と「八穀源気」は、「源気」と他の文字部分とが一連一体にまとまったものであるため「源気」のみの使用であるとはいい難い。よって、これらの使用例は、「源気」なる語がいわゆる健康食品の分野で一般的に使用されていることを示す証拠にはならない。
このように、被請求人から提出された証拠は、「源気」が「気力の源」なる意味合いを表すものとして、健康食品の分野において、一般に使用されることを直接的に示すものとはいい難いといわざるを得ない。
b 被請求人は、答弁書において、「『ウコン』は『健康食品』の代表的なものであり・・・」と認めた上で、「需要者が健康食品を購入する際、特に注目するのは、その主材料である」とし、これを根拠に「ウコン」に需要者の注意が集まり、「ウコン」は「源気」と軽重の差なく認識される旨主張している。
しかしながら、「ウコン」の部分が単に指定商品の原材料を示すにすぎないことは、被請求人も認めるとおりであり、このような場合は、「ウコン」以外の部分が自他商品識別力を発揮する部分としてとらえられることも少なくない。更に、単に指定商品の原材料を示すにすぎない部分である「ウコン」と「源気」が一連一体に結合する、との被請求人の主張は、最高裁判決(最高裁小判昭36年6月27日判決)において、昭和分類第38類「清酒及びその模造品」を指定商品とする商標「橘正宗」と昭和分類第38類「焼酎」を指定商品とする商標「橘焼酎」とが類似であるとした判断にも反するものである。
上記からも明らかなように、被請求人は、「源気」がいわゆる健康食品の分野で一般的に使用されていることを立証したとはいえず、さらに「ウコン」は、指定商品の主原料を示すにすぎないということを自認している。簡易迅速を尊ぶ商品取引の場において、需要者は「商品に付された商標の商品識別機能を有する部分を適宜抽出して取引に資する場合がある。」という経験則に照らすと、本件商標が「ゲンキ」なる略称で取引に資される可能性は皆無ではないはずである。
しかしながら、被請求人の答弁は、このような可能性が存在しないことについての立証にはならない。本件においては、「源気」が主となり「ウコン」が従となる可能性が十分考えられるのであるから、「源気」と「ウコン」が軽重の差なく一連にとらえられるとする被請求人の主張は理由がない。
ところで、甲第14号証に示すとおり、被請求人は、本件商標を「源気」の文字部分と「ウコン」を上下に配した態様で表示するのみならず、「ウコン」の文字のみを影付き文字や色違いの文字で表示し、「源気」の文字部分を際立たせるような態様で使用している。本件商標をこのような態様で使用することは、本件商標の一体性の主張とは相容れないものである。更に、甲第15号証に示すとおり、被請求人がアガリクスを含有する、いわゆる健康食品につき「源気アガリクス」なる商標を併用しているという事実も存在する。このような使用態様は、「源気」印の商品として「ウコン」と「アガリクス」が販売されていると認識する需要者も存在することを懸念させる。
c 被請求人は、「源気」から「気の源となる」なる意味合いが生じる旨主張しているが、果たして、需要者一般が必ずその意味に解するといえるであろうか。被請求人がこの主張を維持するのであれば、それを立証すべきである。請求人の思料するところでは、「気」は、「気力」のみならず「心の動き」、「場を包む雰囲気」等広い意味を有することから、全ての需要者が被請求人の主張する「気力の源」なる意味と解するとはいえず、単純に「源気」印の意に解する需要者も存在すると見るべきである。
また、「気力の源」なる意味合いも漠然としたものであり、少なくとも請求人は、その意味を具体的に理解しかねる。一方、答弁書において被請求人も自認するとおり、「源気」は、辞書に掲載されている言葉ではない。このことから「源気」なる語に接した需要者が、当該語につき語義を特定し得ない造語であると認識することは、十分にあり得るのである。「源気」が語義を特定し得ない商標と認識される可能性がある限り、本件商標は、「気力の源となるウコン」となる観念をもって一体的にとらえられるとする被請求人の主張は、理由がない。
d 被請求人の挙げる「○○ウコン」と「○○」の併存登録例は、いずれも本件とは事例を異にするものであるため、本件商標の一連性を主張する根拠にはなり得ない。
e 被請求人は、請求人が引用商標「源気」を単独で使用していないため、本件商標とは非類似であると主張しているが、引用商標「源気」は、「ナンパオ」シリーズの中でも特に若年の需要者向けの商品を表す商品の個別商標として採択したものであるから、引用商標のみでも自他商品識別力を充分発揮するものである。
よって、本件商標と「ナンパオ源気」を比較して、両商標が非類似であるとする被請求人の主張には、理由がない。
f 以上のとおり、被請求人は、答弁において、本件商標につき「ゲンキ」なる称呼によって取引が行われる可能性が皆無であるとの立証をなし得ていない。本件商標につき「源気」の部分のみで取引に資され、「ゲンキ」なる称呼が生じる可能性が存在する限り、本件商標は、引用商標と類似するものと判断されるべきである。
よって、本件商標と引用商標とが非類似であるとの請求人の主張には、理由がない。
(イ)商品の類似性について
被請求人は、「薬剤」と「健康食品」とが一部において生産部門及び販売経路に重なる部分があるにしても、なお全体として見た場合、それぞれは、生産部門、販売部門、品質及び用途の全てを異にする商品である旨主張している。
ところで、甲第12号証の判決中では「引用A商標の指定商品である旧別表第1類『薬剤』にはカルシウム剤、タンパクアミノ酸製剤や薬用酒等の『滋養強壮変質剤』等が含まれる」と認定した上で、「滋養強壮変質剤」等といわゆる「健康食品」の用途、流通経路等につき具体的検討を行った上で商品の類否を判断している。
しかしながら、被請求人の主張は、単に「薬剤」といわゆる「健康食品」についての全体としての比較に基づいたものにすぎず、このような主張は、上記判例に沿ったものとはいえない。また、引用商標の指定商品に包含される「滋養強壮剤」と本件商標の指定商品たる「ウコンを含有する加工食料品」とは、それぞれ「生薬」を原材料としているため、商品の内容は実質的には同質であるが、唯一の相違点は、厚生労働省による医薬品の承認を受けたか否かである。また、実質的に内容が同一の商品につき、医薬品の承認を受けないことで、先行登録との抵触を避けられるという事態は、妥当とはいえない。被請求人による商品非類似の主張は、これらの点について何ら言及をしない上でなされているため、理由があるものとはいえない。
以上より、引用商標の指定商品中に包含される「滋養強壮剤」と本件商標の指定商品たる「ウコンを含有する・・・」とは類似する商品といえる。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)本件商標からは、「ゲンキウコン」という不可分一体の称呼を生じ、全体として「気力の源となるウコン」といった観念を暗示するので、本件商標は、引用商標とは外観はもちろんのこと、称呼・観念においても類似しない。また、本件商標の指定商品「ウコンを主原料とする粉末状・錠剤状・顆粒状・粒状・カプセル状・液状の加工食品」は、引用商標の指定商品「薬剤」とは類似しない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。以下、詳述する。
(2)本件商標は、外観・称呼・観念のいずれにおいても、引用商標とは類似しない。
(ア)本件商標は、同書・同大・同間隔にて外観上まとまりよく一体的に構成され、「ゲンキウコン」という称呼も冗長ではなく滑らかに称呼できるので、本件商標からは「ゲンキウコン」という不可分一体の称呼を生じ、全体として「気力の源となるウコン」といった観念を暗示する。これに対して、引用商標は、「源気」の上に「げんき」と振り仮名を付した構成よりなり、これからは、「ゲンキ」という称呼を生じ、「気力の源」といった観念を暗示する。したがって、本件商標は、外観はもちろんのこと、称呼・観念においても、引用商標とは類似しない。
(イ)「源気」という語は、確かに辞書には掲載されていないが「健康食品」の分野では、上記のように「気力の源」といった意味合いを暗示する語として、好んで使用されており、「毛源気」「細胞源気ひざにこし」「強源気」「八穀源気」「源気の赤」等が商標登録されている(乙第1号証ないし乙第5号証)。また、インターネットで「源気」を検索すると、乙第6号証のとおり、多数使用されていることがわかる。
また、現在、多種多様の健康食品が販売されており、需要者が健康食品を購入する際に特に注目するのは、その主材料である。
そこで、健康食品を販売する者も、需要者がすぐにわかり、誤認を生じないように、その商品名の一部に原材料名を付ける場合も多い。
「ウコン」も健康食品の原材料として定着して、その代表的なものとなっており、商品名に「ウコン」や「うこん」が含まれている例も多く、多数のものが商標登録されている。
このように、需要者の一番の関心は、その健康食品の主材料が何かということであるから、本件商標においては、当然ながら「ウコン」の部分にも注意が集まる。一方、上記のように「源気」という語は、健康食品の分野ではよく使用されている語であるから、「源気」という語が特別に注目されるということもない。
したがって、「源気」と「ウコン」とは、商品の識別力においては軽重の差がなく、本件商標からは、不可分一体の「ゲンキウコン」という称呼のみ生じ、全体として「気力の源となるウコン」といった観念を暗示する。
(ウ)しかも、本件商標の指定商品は、「ウコン」そのものではなく、「ウコンを主原料とする粉末状・錠剤状・顆粒状・粒状・カプセル状・液状の加工食品」であるので、本件商標は、より一層不可分一体にのみ称呼・観念される。
過去の審決においても、「山海豆」は、豆を原料とする商品を認識させる場合があるとしても、「納豆」のように具体的商品名を表わしたとはいい難く、全体をもって不可分一体と理解されると判断され、「山海」には類似しないとされている(審判昭55-15683号;平成2年12月13日審決)。
菓子関係では、「豆」は「菓子」の原材料になるが、「むすび豆」と「おむすび」(審判昭63-20732号;平成6年2月23日審決)、「里の豆」と「里」(審判昭55-12718号;昭和58年6月29日審決)は、それぞれ類似しないとされている。
また、本件指定商品と同一又は類似する商品において、「Family/ファミリー」と「ファミリーうこん」(乙第7号証の1ないし3)と、「てっぽう」と「てっぽうウコン」(乙第8号証の1ないし3)等が、それぞれ別々に登録されている。
同様に、「ドクター」の登録があるにもかかわらず、「ウコン」を含有する商品に「ドクターウコン」が登録されている(乙第9号証の1及び2)。
これらも、全体で不可分一体の称呼・観念を生じると判断された結果であると推察する。
(エ)したがって、請求人の、本件商標は、「ゲンキ」なる称呼を生じるので、引用商標と類似しているとの主張には理由がない。
(オ)なお、請求人は、引用商標を生薬を原料とした「一般大衆薬」、特に「滋養強壮剤」について継続的に使用しているとして甲第6号証を提出しているが、ここに掲載されているのは、「ナンパオ源気」であり、「源気」だけで使用されているものはない。乙第6号証のとおり、インターネットで検索しても、「ナンパオ源気」で出てくる。
「源気ウコン」は、請求人が実際に使用している「ナンパオ源気」とは、より一層類似しないことは明らかである。
(3)本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品とは類似しない。
(ア)請求人も認めるとおり、商品の類否判断は、特許庁編「商標審査基準」において示された各基準を総合的に考慮して判断されるものであるが、全審査官の判断の統一的基準を示す目的で類否関係を類型的に表したものが「類似商品・役務審査基準」である。したがって、商品の類否判断においては、第一義的に同基準によらなければならない。
この点、本件商標の指定商品である、いわゆる「健康食品」と、引用商標の指定商品である「薬剤」とは、類似群コードを異にしており、非類似とされている。
請求人は、同基準で非類似とされた場合でも、それはあくまで推定にすぎぎないと述べるが、請求人の立論は、「推定」の重大性を殊更覆い隠そうとするもので、妥当ではない。非類似と推定される以上、経済界等の実情の推移から、その推定が覆されるにしても、それには、当然相当の反証が必要とされる。
(イ)引用商標の指定商品である「薬剤」に属する商品は、治療を目的とする商品で、薬事法による認可を必要とし、医薬品メーカーによって製造され、病院で使用され、薬局及び薬品店でのみ販売される商品である。また、商品には、「医薬品」又は「医薬部外品」との明確な表示がされている。
これに対して、本件商標の指定商品である「健康食品」は、あくまでも食品であって、食品メーカー等により製造され、通常、食料品店、健康用品店又は通信販売等によって販売される商品である。また、商品には、「食品」であることが明示されている。健康食品が薬局及び薬品店でも販売されており、あるいは製薬会社が健康食品を製造しているとしても、それは全体からしてみれば、ごく一部にすぎない。それに加え、「薬剤」と「健康食品」双方に商品の属性についての明確な表示があることからして、その一部の生産部門又は販売経路が重なっているものであったとしても、一般の需要者は、その属性を明確に区別できる状況にある。今日の健康食品ブームにあっては、需要者は、「健康食品」であるか「薬剤」であるかには十分注意を払って購入しているし、「健康食品」には、その主原料が大きく表示されている場合が多い。
特に、「ウコン」は、「健康食品」の代表的なものであり、しかも、本件商標自体に「ウコン」という語を含むので、「健康食品」や「薬剤」の需要者の年齢層が比較的高いことも考え合わせると、需要者が「ウコン」を主原料とした本件「健康食品」と「薬剤」とを誤認混同するおそれはない。
「薬剤」と「健康食品」のそれぞれの一部において、生産部門及び販売経路に重なる部分があるにしても、なお「薬剤」と「健康食品」を全体として見た場合、やはり生産部門、販売部門、品質及び用途の全てを異にする商品であるといわざるを得ず、また需要者が本件「健康食品」と「薬剤」を誤認混同するおそれもない。
したがって、「薬剤」と「健康食品」の今日の商取引の現状を勘案しても、なお「類似商品・役務審査基準」による非類似との推定を覆すには至っていない。
(ウ)したがって、本件商標の指定商品「ウコンを主原料とする粉末状・錠剤状・顆粒状・粒状・カプセル状・液状の加工食品」は、引用商標の指定商品「薬剤」と類似しているとの請求人の主張には、理由がない。
(4)被請求人は、本答弁書提出と同時に、引用商標に対して無効審判を請求した。
乙第10号証に示すとおり、「玄米を粉状にして酵素で培養して顆粒状あるいはミール状にした食料品」を指定商品として、「元気」が登録されている。
この「玄米を粉状にして酵素で培養して顆粒状あるいはミール状にした食料品」は、いわゆる「健康食品」である(本件商標に対しても、出願中にこの「元気」に類似するとの拒絶理由通知がなされた)。
したがって、請求人が主張するように、いわゆる「健康食品」と「薬剤」、特に「滋養強壮剤」が類似する商品であるのであれば、請求人が「滋養強壮剤」に使用していると主張する引用商標「源気」は、登録第2085510号商標「元気」と商品が類似し、称呼も同一であるので、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
(5)むすび
以上より、本件商標は、引用商標とは外観はもちろんのこと、称呼・観念においても類似しないし、また、その指定商品も類似しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

5 当審の判断
(1)商標の類否
本件商標は、上記1のとおり、「源気」の漢字と「ウコン」の片仮名文字との結合によりなるものであるところ、「源気」と「ウコン」の文字は、漢字と片仮名文字であることにより視覚上分離して看取されるばかりでなく、後半部分の「ウコン」の文字が、その指定商品との関係からして、商品の原材料ないしは品質を表示したものと認識されるというのが自然であって、自他商品の識別力がないか極めて弱いものというべきであるから、本件商標における自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は、その余の「源気」の文字部分にあるといわなければならない。
してみれば、本件商標は、全体から「ゲンキウコン」の一連の称呼を生ずるほか、「源気」の文字に照応する、単に「ゲンキ」の称呼をも生じ、「気の源(みなもと)」のごとき観念を生ずるものというのが相当である。
他方、引用商標は、「源気」の漢字とその表音である平仮名表記の「げんき」の文字よりなるものであるから、その構成文字に照応する「ゲンキ」の称呼を生じ、「気の源(みなもと)」のごとき観念を生ずるものというべきである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において異なるところがあるとしても、「ゲンキ」の称呼及び「気の源(みなもと)」のごとき観念を共通にする全体として類似する商標といわなければならない。
なお、被請求人は、「○○ウコン」よりなる商標と「○○」よりなる商標の併存登録例を挙げて種々主張しているが、該登録例は、本件とは商標の構成を異にするものであるばかりでなく、商標の類否判断は、個別具体的になされるべきであるから、被請求人の主張は、採用することができない。
(2)商品の類否
本件商標の指定商品は、その表示から明らかなように、健康の増進によいとされる「ウコン」を主原料とした加工食品であって、いわゆる「健康食品」の範疇に属する商品と認められる。
そして、健康食品は、健康効果の高い食品であって、栄養補助食品、サプリメント、機能性食品、マルチビタミン、特定保健用食品等様々な名称で呼ばれており、内容的にビタミン剤や滋養強壮変質剤と同質のものも少なくないことが一般に知られている。
他方、引用商標の指定商品である「薬剤」には、肝油ドロップ、総合ビタミン剤、ビタミンA剤ないしビタミンD剤等の「ビタミン剤」及び、王乳、カルシウム剤、薬用酒等の「滋養強壮変質剤」等が含まれていることは、商標法施行規則別表の記載からも明らかである。
そして、取引の実際においては、「健康食品」は、昨今の健康ブームを反映して、食料品店や通信販売で販売されているほか、薬局、薬店を通じて販売されることも多く、また、食品業者のみならず製薬会社が健康食品市場に参入する動きも見られ、国内の有力な製薬会社が健康食品を指定商品に含む登録商標の出願をし、登録を受けている事実もある(甲第3号証、甲第9号証ないし甲第11号証)。
他方、「滋養強壮変質剤」も健康増進・体力回復の目的で使用されるものであり、製薬会社により製造され、薬局、薬店を通じて一般需要者に販売されているものといえる(甲第6号証)。
この点に関し、東京高等裁判所平成14年(行ケ)第555号審決取消請求事件の判決(平成15年5月22日言渡)において、健康食品あるいは栄養補助食品(サプリメント)と医薬品としてのビタミン剤あるいは滋養強壮変質剤とは、いずれも薬品店、ドラッグストア、薬局等において多数の種類のものが販売されていること、その商品の内容、用途が類似していること及び販売店舗ないし販売方法が類似していることから、一般の需要者にとってその区別が付きにくく、紛らわしい商品群になっていることが明らかであるとし、「加工食料品」に含まれる健康食品や栄養補助食品(サプリメント)と「薬剤」中のビタミン剤や滋養強壮変質剤とは、その商品の内容、用途、販売店舗及び販売方法が共通しており、商品として類似しているものである旨判示されているところである。
以上を総合すると、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品中の滋養強壮変質剤とは、商品の内容、用途、販売店舗、販売方法、需要者層等を共通にする類似の商品といわざるを得ない。
被請求人は、「薬剤」が治療を目的にする商品で、薬事法による許可を必要とし、医薬品メーカーによって製造され、薬局及び薬店でのみ販売される商品であり、商品には「医薬品」又は「医薬部外品」との明確な表示がされているのに対し、「健康食品」は、あくまで食品であって、食品メーカー等により製造され、食料品店、健康用品店又は通信販売等によって販売される商品であり、商品には「食品」であることが明示されている旨主張している。
確かに、薬剤が薬事法による許可を必要とするものであり、「医薬品」又は「医薬部外品」の表示がなされているものであるとしても、多数の有力な製薬会社が健康食品の分野に進出してきていることは、前示のとおりであり、薬品店やドラッグストア等においては、医薬品、医薬部外品、健康食品から化粧品及び洗剤その他種々雑多な生活用品を陳列販売する方法がとられており、とりわけ、滋養強壮変質剤と健康食品とは店舗内の同じコーナーで販売されることも多いこと、また、滋養強壮変質剤は、治療を目的とするというよりは、むしろ、健康増進・体力回復の目的で使用され、健康食品と内容において実質的に変わらないものも多いことから、この種商品の一般的需要者は、薬事法の許可を受けたものか否かに必ずしも固執することなく、商品を選択することも少なくないものといえる。
そうすると、「薬剤」全般についてはさておき、この種商品の一般的需要者は、少なくとも滋養強壮変質剤と健康食品とは、実質的に同質の商品について、薬事法による許可の有無やその表示の有無により直ちに区別し得ないというべきであるから、被請求人の主張は、採用することができない。
(3)結び
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのある類似する商標であり、その指定商品も類似するものと認め得るところである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-08-25 
結審通知日 2005-08-31 
審決日 2005-09-21 
出願番号 商願2004-39196(T2004-39196) 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (Y29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 幸一 
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 柳原 雪身
鈴木 新五
登録日 2004-07-23 
登録番号 商標登録第4788761号(T4788761) 
商標の称呼 ゲンキウコン、ゲンキ 
代理人 堤 隆人 
代理人 八尋 光良 
代理人 西津 千晶 
代理人 小堀 益 
代理人 樋口 豊治 

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