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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない Y10 |
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管理番号 | 1138093 |
審判番号 | 不服2004-924 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-14 |
確定日 | 2006-06-09 |
事件の表示 | 商願2003- 14801拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願商標 本願商標は、「安産」の文字を標準文字により書してなり、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、平成15年2月26日に登録出願され、その後、指定商品については、同年8月15日付けの手続補正書をもって、第10類「腹帯」と補正されたものである。 2.原査定の拒絶理由の要点 原査定は、「本願商標は、『安産』の標準文字よりなり、妊婦が『無事に子を産むこと』は当然に願っていることであり、本願商標は、『無事に子を出産すること』を意味するものであり、わが国において、妊婦が無事の出産を願って『腹帯』をすることは良く知られているところ(戌の日に水天宮などに参拝し、例えば、『安産』の印の腹帯を授かる。)、本願商標をその指定商品『腹帯』について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、前記意味合いを端的に表すものと認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たさないとするのが相当である。したがって、本願商標は、その指定商品について使用するときは、単に、商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表すにすぎず、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3.請求人への審尋 平成17年12月16日付け審尋書をもって通知した審尋の理由は、次のとおりである。 本願商標は、「安産」の文字を標準文字で書してなるところ、該文字は、「無事に子を生むこと。[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]」の意味を有するものである。 また、本願指定商品である「腹帯」は、「人の腹に巻く帯。はらまき。妊婦の下腹に巻く帯。普通、妊娠5ヵ月目から晒さらし木綿を巻く。いわたおび。[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]」等の商品として販売、使用されているものである。 ところで、日本においてはもともと風習として安産を祈願し、5ヵ月目の戌の日に腹帯を巻く儀式が一般に知られており、誰でもが安産であることを願うものである。そして、安産祈願された腹帯は、神社等で手に入れられるものであるが、最近においては、簡易的なはらまき型の腹帯が製造、販売されていることが認められる。 また、新聞記事データベースやインターネットの情報をみると、例えば、読売新聞西部朝刊(1999.09.24)28頁には、「安産祈願の秋祭り 山江村万江谷 淡嶋神社=熊本」の見だしのもと「境内では安産腹帯や、一歳の誕生祝いでもちを踏む時にはくわらじやぞうりも売られた。」と記載、「gooショッピング」(http://shop.goo.ne.jp/store/mikimura/ctg/000062.jsp)のホームページには、「安産腹帯/妊娠5ヶ月から出産まで、大切な”お腹の保温”と”胎児の安定”のためにお使いください。」と記載、「高野山真言宗/総持寺」(http://www.sojiji.or.jp/cnt_form.html)のホームページには、「日々祈願/○祈願○安産腹帯○初参り」と記載がされている。 以上より、神社等において安産祈願をした安産腹帯を扱っていること、お腹の保温や胎児の安定のために安産腹帯と称して腹帯が製造、販売されていることが認められ、本願商標の指定商品「腹帯」を取り扱う業界においては、「安産」の文字は、「無事に子を産むことを願う」程の意味合いの語として使用され広く浸透している一般的な語と認められる。 そうとすると、本願商標がその指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は前記意味合いを認識するにすぎず、他人の同種商品とを識別するための標識であるとは認識し得ないものとするのが相当である。 したがって、本願商標は、何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない商標といわざるを得ないから、商標法第3条第1項第6号に該当するというべきであって、本願商標はこの理由をもって拒絶すべきものである。 なお、原査定は、本願商標が商標法第3条第1項第3号該当を理由として本願を拒絶したものであるが、前記のとおり、本願商標については、同法第3条第1項第1号から第5号までの総括条項と解される同法第3条第1項第6号をもって拒絶すべきものである。 しかして、商標法第3条第1項は、同一の法律要件(登録要件の有無)に関し、例示的又は総括的に定めたものであって、両条項は、本願商標の登録要件について、実質的に同趣旨の規定をしているものとみて差し支えないものである。 4.請求人の回答(要旨) 上記3の審尋に対して、請求人は、次のように回答を述べている。 本件審尋における内容は、政令で定める拒絶理由を通知できる期間を経過した後の新たなる拒絶の理由の通知に該当するものであり、妥当な内容とは認められない。 本願商標は、審査において、商標法第3条第1項第3号に例示されている品質、用途表示であるとの理由により拒絶されたものであり、審判における前記審尋においては、本願商標が、何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない商標であるとの新たな理由をもって、商標法第3条第1項第6号に該当し、本願商標は、この理由をもって拒絶すべきであるとしている。 拒絶の理由の変更に伴う適用条文の変更は、政令で定める期間内における拒絶理由の通知の範囲を逸脱しており、該政令に違反するものである。 すなわち、本願商標は、品質、用途表示であるとして拒絶されたので、この判断は妥当なものではなく承服できないため、審判請求をしたものであり、その点についてのみ争っているものである。 したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第6号をもって、拒絶すべきものとの審尋の理由は、商標法第16条に規定する「政令で定める期間」(商標法施行令第2条第1項)内に拒絶の理由を発見しない限り登録しなければならないとの規定に反するものであり、承服できない。 しかも、審尋の内容においては、商標法第3条第1項第3号に該当するとした原査定の理由を撤回し、新たな理由を提示して商標法第3条第1項第6号に該当するとし、この内容は、当初の拒絶理由とは異質のものであり、新たな拒絶理由に該当するものであり、この点においても承服できない。 5.当審の判断 (1)商標法第16条違反について 請求人は、本願商標が、審査において、商標法第3条第1項第3号に例示されている品質、用途表示であるとの理由により拒絶されたものであり、審判における上記3の審尋の内容は、本願商標が、何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない商標であるとの新たな理由である商標法第3条第1項第6号に該当するとするものであり、前記審尋の理由は、商標法第16条に規定する「政令で定める期間」(商標法施行令第2条第1項)内に拒絶の理由を発見しない限り登録しなければならないとの規定に反する旨、主張する。 そこで検討するに、商標法第3条は、商標登録の要件を定めたものであって、同条第1項は、自己の業務に係る商品又は役務についての識別力、或いは出所表示機能を欠く商標を列挙するものであるところ、その規定の体裁及び内容等からみて、同項第1号から5号までの規定は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を例示的に列挙するものであり、同項第6号の規定は、同項第1号から第5号までにおいて例示的に列挙されたもの以外に、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を総括的、概括的に規定しているものである。そして、商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標が、当該商品の「産地、販売地」やその他の特性を表示記述する標章であって、特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによる。(最高裁判所第3小法廷昭和54年4月10日判決・判時927号233頁参照。) 本願においては、前記のとおり、原査定では、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとし、当審における審尋において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものとしているところ、商標法第3条第1項の該当性の判断に関しては、当該商標の「安産」が、「無事に子を出産する(ことを願う)」の意味合いを生じることを前提として自他商品の識別標識としての機能を果たさないとし、当審における審尋においては、指定商品「腹帯」を取り扱う業界では、「安産」の文字は、「無事に子を産むことを願う」程の意味合いの語として使用され広く浸透している一般的な語であるから、本願商標がその指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は前記意味合いを認識するにすぎず、他人の同種商品とを識別するための標識であるとは認識し得ないものとするのが相当である。 そうすると、原査定と当審における審尋とは、いずれも本願商標から「無事に子を産むことを願う」という共通の認識が生ずることを前提として、これを本願指定商品に使用しても、自他商品識別標識としての機能を有するものではなく、商標法第3条第1項所定の商標登録の要件を欠く商標に該当するという結論にいたるものであるから、両者は、その判断の内容において実質的に相違するものではなく、当審における上記審尋の内容は、新たな拒絶理由を示したものでないことは明らかである。(平成16年(行ケ)第369号判決[平成17年1月26日言渡]参照。) (2)商標法第3条第1項第6号について 本願商標は、前記のとおり「安産」の文字よりなるものであるところ、本願商標の指定商品「腹帯」を取り扱う業界においては、「安産」の文字は、「無事に子を産むことを願う」程の意味合いの語として使用され広く浸透している一般的な語と認められる。 そうすると、本願商標がその指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は「無事に子を産むことを願う」意味合いを認識するにすぎず、他人の同種商品とを識別するための標識であるとは認識し得ないものとするのが相当である。 したがって、本願商標は、何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当するといわざるを得ないから、本願商標はこの理由をもって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-11 |
結審通知日 | 2006-04-12 |
審決日 | 2006-04-26 |
出願番号 | 商願2003-14801(T2003-14801) |
審決分類 |
T
1
8・
16-
Z
(Y10)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石田 清 |
特許庁審判長 |
小林 薫 |
特許庁審判官 |
寺光 幸子 長柄 豊 |
商標の称呼 | アンザン |
代理人 | 岡村 憲佑 |