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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z0725
管理番号 1137912 
審判番号 無効2004-35065 
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-02-02 
確定日 2006-06-08 
事件の表示 上記当事者間における登録第4620432号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4620432号商標の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4620432号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第7類「高圧洗浄機」及び第25類「作業服,ヘルメット」を指定商品として平成13年12月19日に登録出願、同14年11月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び平成16年4月8日付けの答弁書に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番を含む。)を提出している。
1.請求の理由
(1)Kranzle標章の原始的帰属者について
本件商標は、請求人が商品「高圧洗浄機」に1970(昭和45)年ころより使用している標章(以下「Kranzle標章」という。)と同一である。
ドイツにおいて、Kranzle標章は、1989(平成元)年11月20日に登録第1150055号として商標登録されている(甲第2号証)。該商標権の商標権者であるヨゼフ・クランツレ社の役員ヨゼフ・クランツレは、請求人の役員であって、ヨゼフ・クランツレ社が製造(以下「クランツレ製品」という。)を行い、請求人がその販売を行っている関係にある。したがって、これらは一体とみなされるものである(以下2社を「ドイツクランツレ社」という。)。
また、台湾においては1998(平成10)年4月1日、請求人が登録している(甲第3号証)。
更に、請求人は、平成9(1997)年以前から日本でも高圧洗浄機を販売している。
よって、本件商標について、登録出願をすることのできる正当な立場は、原始的には先ずドイツクランツレ社にある。
(2)本件商標の登録を受けることのできる立場について
被請求人が本件商標の登録出願をすることのできる正当な立場にあるためには、ドイツクランツレ社とは別法人である被請求人は、ドイツクランツレ社と同視し得るものであるか、或は同意を得る必要があることは当然である。
(ア)明示の同意について
ドイツクランツレ社が被請求人に対し、明示の同意を与えた事実はない。すなわち、本件審査時において、被請求人が提出した証拠の何れにも、被請求人が登録出願することを容認する明示の記載はない。更に、本件商標の商標権に基づく商標使用差止請求訴訟(平成15年(ワ)第1119号)において、原告である被請求人は、平成15年9月22日付け準備書面において、「原告はドイツクランツレ社から明示的に登録出願の同意又は承諾を受けていなかった。」と自認している(甲第4号証 第2頁)。
(イ)黙示の同意について
被請求人は、前記準備書面において、「同意または承諾と同視しうる権限を同社から受けている文書を特許庁に提出し、これが特許庁に認められて登録となった。」(甲第4号証)と主張している。一つは、平成14年8月5日付け意見書に添付された請求人より日本国内需要家及び得意先への「クランツレ・ジャパン体制確立の通知書」(甲第5号証)であり、もう一つは「請求人より被請求人に対する委任状」(甲第6号証)と称する文書である。
これら文書のうち、「請求人より被請求人に対する委任状」については、その原文(英文)の表現が曖昧であり、異議の決定においても、「その文章の内容に解釈の余地がある。」(甲第7号証)とも認定されているとおり、ドイツクランツレ社の意思が明確に読み取れるものではない。
異議の決定では、かかる前提の下に、少なくとも文書の表意する内容が明確な「クランツレ・ジャパン体制確立の通知書」と、平成14年12月12日付け認証の被請求人の履歴事項全部証明書(甲第8号証)に記載された役員名「ルッツ・ドロイチェ」(ドイツクランツレ社の役員)を拠り所に、商標権者の主張を覆すことなく商標登録を維持した。
しかし、「クランツレ・ジャパン体制確立の通知書」(甲第5号証)は、出願日(平成13(2001)年12月19日)より3年以上も前の1998(平成10)年10月時点における文書であり、登録出願時点の状況を反映するものではない。
したがって、これら文書は、何ら被請求人が黙示の同意を得ていたことを示すものではない。
(ウ)当事者関係の経緯について
ドイツクランツレ社は、1970(昭和45)年ころよりドイツを始めとして世界各国へ、Kranzle標章の付された高圧洗浄機の販売を行い、日本にも平成9(1997)年にはその輸出を行っていた。これは、高圧洗浄機の取扱い説明書が日本語で1997年時点に作成されていることからも明らかである(甲第9号証)。
このような中で、被請求人は、平成10(1998)年8月7日、馬田を代表者とし、当該高圧洗浄機の輸入やその部品のメンテナンスを主な業務として設立された(甲第8号証)。前述の「クランツレ・ジャパン体制確立の通知書」は、その直後の同年10月に作成された文書であり、このような被請求人の設立経緯と符号するものである。
しかし、この時点においても、被請求人以外にも株式会社ワールド通商(以下「(株)ワールド通商」という。)など複数の輸入業者との間で取引事実があった(甲第10号証)。
その後、被請求人の代表者は松井、武田、柴田と変更され、登録出願のされた平成13(2001)年の8月に、被請求人は2回の手形不渡を出した(甲第4号証 第1頁)。かかる事実は当然ながらドイツクランツレ社にも伝わり、信用能力の低下した被請求人に代わって日本での輸入業務を進めていた株式会社出石(以下「(株)出石」という。)に対し、請求人が同年11月19日付けで送った文書には、被請求人との取引の停止を行う意思が明確に表明されている(甲第11号証)。
登録出願はこの直後である同年12月19日、被請求人代表者である柴田によってなされたものであって、被請求人が本件商標の登録を受けることについて、ドイツクランツレ社が黙示にせよ暗示にせよ同意を与える状況にないことは明らかである。
(エ)請求人より被請求人に対する委任状について
請求人より被請求人に対する委任状(甲第6号証)の内容は、異議申立手続きにおいて請求人が主張した如く、「請求人は、必要な場合には、被請求人の名目で、直接請求人に対し、以下の販売者が信任状を開設することを、被請求人社長の柴田氏に容認する。」とする意と解釈すべきものである。
(3)被請求人履歴事項全部証明書について
被請求人は、被請求人の履歴事項全部証明書(甲第8号証)にドイツクランツレ社役員であるルッツ・ドロイチェが記載されていることを、本件商標の登録を受けることについて正当な立場にあったことの根拠にしている。
しかし、ルッツ・ドロイチェ本人は、被請求人の役員に就任することについて何ら同意を与えたことはない。被請求人の履歴事項全部証明書ではルッツ・ドロイチェは、設立時(平成10年8月7日)取締役として記載され、その後平成11年5月31日に退任した後、平成12年9月1日に再び取締役に就任したこととなっているが、その表記のみをもって被請求人がドイツクランツレ社と同視し得るもの(日本法人など)と見ることはできない。
(4)ドイツクランツレ社役員の宣誓書について
甲第12号証に宣誓されたとおり、ルッツ・ドロイチェは被請求人の役員就任に同意した事実はなく、登録出願を被請求人が行うことにドイツクランツレ社が同意した事実もない。また、登録出願日及びその後においてドイツクランツレ社と被請求人とは何ら営業上の関係もないのである。
(5)商標法第4条第1項第7号について
以上の如く、Kranzle標章について、登録出願時及びその後において、被請求人がその登録を受けることのできる正当な立場になかったことは明白である。
したがって、そのような被請求人が、Kranzle標章と同一の本件商標を高圧洗浄機を含む本件指定商品に、自己の商標として採択・使用することは商取引の秩序を乱すおそれがあり穏当ではない。
(6)商標法第4条第1項第10号、同第15号について
請求人と被請求人とは、上述のとおり、本件商標登録出願当時、親子会社や系列会社又は商品化事業グループ等の緊密な営業上の関係がある者ではなく、同号の「他人」に相当する。
また、本件商標とKranzle標章とは、同一又は類似するものであり、その指定商品と請求人の使用する商品も抵触するものである。
2.答弁に対する弁駁
答弁は、被請求人、請求人及び件外(株)出石の三者の今日に至る複雑な事情に絡めてなされており、Kranzle標章の帰属に関する問題を不明確にするおそれがあるので、その帰属という点に関する事実に絞って弁駁を行う。
(1)本件商標の帰属について
被請求人は、答弁書で、「(日本において)「Kranzle」ブランドを周知してきたのは被請求人のみである」と答弁しているが、このような主張を商標権帰属の根拠とすること自体そもそも失当である。何故なら、仮にこのような主張が成り立つのであれば、外国の周知著名ブランドを日本国内に広めた輸入代理店などは自由にその商標権を取得できることになってしまい、パリ条約第6条の7を始めとして外国商標を保護する種々の規定の趣旨に反するものである。
(2)本件商標の登録を受けることのできる立場について
答弁書では、請求人代表者であるルッツ・ドロイチェが被請求人の履歴事項全部証明書上、役員とされていることや、被請求人の役員会と称する会議に出席したことなどを以って、被請求人が商標権者であることは当然であるとしているが、事実関係は別としても、この主張自体も失当である。
答弁書において被請求人が主張する事実の何処にも、請求人が被請求人に「商標登録出願をすること」を認めたとする明示の事実はなく、その証拠があるとするなら、被請求人は先ずこれを書証として提出すべきである。
被請求人のこれまでの主張は、総て被請求人設立当時から現在に至る事情に関するものであって、登録出願について明示の記録はおろか、その可否に関する黙示の内容に関係するものもは提出されていない。
これに対し、請求人は、審判請求書のドイツクランツレ社役員の宣誓書(甲第12号証及び甲第13号証)において、被請求人が本件商標を登録出願する権限や同意を与えたことがないことを明示する証拠を提出している。
(3)被請求人の取締役就任承諾書等について
被請求人の取締役会議事録写し(乙第3号証(1))、就任承諾書の写真コピー(乙第3号証(2))が提出されており、このルッツ・ドロイチェの署名は本人の自筆になるものと思われるが、ルッツ・ドロイチェは、当時の被請求人取締役より、被請求人の株式引き受けのために署名が必要であるとの説明を受けてかかる署名をしたものにすぎない。
なお、ルッツ・ドロイチェに関する被請求人の最新の履歴事項全部証明書(甲第14号証)では、平成14年11月30日、取締役の退任記録があり、少なくとも現在においては被請求人とは何らの関係はない。
また、被請求人は、乙第27号証を提出し、「ルッツ・ドロイチェが2000(平成12)年9月14、15日に来日し、被請求人の役員会に取締役として出席し発言している」と主張しているが、この期間来日し、被請求人の役員と会議を行ってはいるものの、その目的は、請求人に対する被請求人の未支払金の督促・回収を行うことにあり、この点が同号証では明確にされていない。また、ルッツ・ドロイチェが、この会議で被請求人の取締役に再任(選任)されることや被請求人が日本の総輸入代理店となることに承諾を与えることもない。
(4)被請求人の今後について
請求人は、現在、被請求人に対し、請求人の製造に係る高圧洗浄機を供給する意思は有していない。したがって、被請求人が商標権を保有し続ければ、いずれはクランツレ製品とは異なる製品にKranzle標章を付すことになり、出所の混同を生じさせる。
また、かかる行為は、Kranzle標章に化体している国際的な信用を毀損し、あるいは許可なくこれを利用することでもあり、商取引上許されるものではない。
(5)結び
以上のとおり、被請求人は本件商標の登録を受けることのできる正当な立場になかったことは明白であり、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものである。また、被請求人は、Kranzle標章の原始的な帰属者である請求人とは何ら関係のない者であって、同法第4条第1項第10号及び同第15号の「他人」に相当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第28号証(枝番を含む。)を提出している。
1.答弁の理由
(1)請求人は、「1997(平成9)年以前から、日本でも高圧洗浄機を『輸入販売』している。」と述べているが、Kranzle標章でなく、OME(昭和・タナカブランド)製品を2ないし3機種輸出していた。甲第9号証は、1998(平成10)年8月7日以降に被請求人が、日本市場用として選定・仕様決定した製品の一つであり、その取扱説明書である。最後から2項目のBielfeld 10.10.97は、ドイツ国内向けの取扱説明書の原稿を作成した年月日である。その証拠に被請求人設立時に作成した1998(平成10)年9月1日 日本仕様の製品取扱説明書(乙第1号証)及び2000(平成12)年10月31日以降発表した新製品の取扱説明書(乙第2号証)にも同年月日(10.10.97)の日付が印刷されている。
(2)請求人の提示した甲第10号証の1の示すとおり、(株)ワールド通商なる企業が請求人より日本の昭和電機にOMEブランド(昭和ブランド)で、2機種の輸入を行っていた事実はあった(乙第4号証(3)(4))。甲第10号証の2及び3の製品は全てshowaのブランドであって、タナカ工業(株)向OMEも同様である(乙第4号証(4)、乙第5号証(1))。
(3)被請求人は、被請求人が既に商標権取得時に提出した証拠書類のとおり、ドイツクランツレ社の方針決定の上、50%の出資を受け、ドイツより取締役を一名選任の上、設立された日本法人である。
そして取扱製品は、日本独自の製品仕様(電気仕様)を被請求人にて設定し、かつ、日本市場に適合した製品を新開発し、市場シェアーを取る為に1998(平成10)年8月7日に登記され、同年10月の「洗浄展」より販売を開始している。上記の日本独自の製品を日本市場に広く取引業者・需要家に展開するにおいて、被請求人の独自の販売戦略手法で社名及び製品販売・促進物・広告に現商標を活用し、広く、Kranzle標章を周知してきたのは被請求人のみである。
(4)請求人の提出した甲第2号証の1は、製造開発会社ヨゼフ・クランツレ社のドイツ国内商標登録であり、また、甲第3号証の1は、販売会社(請求人)の台湾における商標登録である。この事実は台湾の販売の全権の委任を請求人が保持した事を示す。同時に請求人が販売に関してドイツ国内及び海外とも全権利を保有している事は、請求人がヨゼフ・クランツレ社でない事からも明かである。その請求人の代表者ルッツ・ドロイチェが自ら投資を行い自ら取締役に就任し、日本の総輸入販売会社として設立され、自らが重要発表を行った。
商標登録は当時からの合意事項である。故に社名に「クランツレ」を表した。
(5)被請求人設立以前に請求人が日本に対し、まともに事業がなされていないと自認していた事実は1997(平成9)年4月1日ないし1998(平成10)年2月17日の間の請求人から被請求人の現代表者に送付した手紙、FAXからも明かである(乙第6号証(1)ないし(3))。この時も請求人ルッツ・ドロイチェは日本のプロポーズに対応して、日本市場に興味があるとしている。
(6)ここで重要な事実の確認は、乙第6号証(3)の本文の3ないし4行目であり、100V仕様の50/60Hzの製品に全く興味がない事を表現している。
しかし、被請求人は、設立時にK-1120 100V50Hz,K-1120 100V60Hzの2機種を主力製品として発表し販売している。これは、被請求人の企画・開発によるものである(乙第7号証)。後日発生した問題であるが、これを請求人は、被請求人の役員会の同意を得ず2000(平成12)年8月ないし2001(平成13)年12月の間、約1000台を(株)ワールド通商と、昭和電機にOMEで販売を行った。
当件を併せて被請求人はルッツ・ドロイチェを背任罪(取締役競合避止義務違反)で2003(平成15)年2月10日神戸地裁に提訴している(乙第8号証)。
(7)クランツレ・ジャパン体制確立の通知書(甲第5号証)は、単なる通知書ではない。ルッツ・ドロイチェ本人のサインが入っている文書である。彼は重要文書にのみサインをする傾向がある。事実、甲第11号証の1にはサインがない。逆に、請求人より被請求人に対する委任状(甲第6号証)にはサインがある。
(8)請求人より被請求人に対する委任状の訳文(甲第6号証の2)については、誤訳であり、正しくは、全権「委任状」である。
請求人は、ここに被請求人の代表者柴田に対し下記の販売店が被請求人に対し、被請求人名の下に直接L/C開設する事についての全権限を委任する、となっている。authorizes=権限の複数形は全権限である。
上記を現時点で請求人は「両社の関係の消滅している事を証明している。」としているが、どこの文書をもってこの様な訳が成立するのか、「委任状」のタイトルをつけている文章に「消滅」の意図が介入する余地はない。
この請求人より被請求人に対する委任状(甲第6号証)は、被請求人と請求人の相互の利益の為に内容を決定したものである。
(9)請求人は、「(2)、(ウ)当事者関係の経緯について」において、被請求人に代わって日本での輸入業務を進めていた(株)出石に対し、請求人が平成13年11月19日付けで送った文書には、被請求人との取引の停止を行う意思が明確に表明されている(甲第11号証)旨を述べている。しかし、(株)出石が被請求人に代わって請求人との輸入業務を進めた事実はない。
クランツレ・セールス株式会社仮称設立の件に関する覚書(乙第13号証)の合意をもって被請求人は請求人より被請求人に対する委任状に基づく全権限にて(株)出石とのL/C代行開設を行った(乙第14号証、乙第15号証、乙第16号証)。全て被請求人の指導のもとに行ったのは明白である。当然の如く当件は請求人は100%合意であった(乙第17号証)。
請求人から被請求人宛の書簡である乙第17号証の日付は2001(平成13)年10月25日である。当文意は「(株)出石のL/C開設の条件も了解し、将来に関し相互の間に何も問題はない。」とし、友好的内容に終始しているが、甲第11号証の内容は豹変している。被請求人にはその理由を理解できないが、(株)出石の工作が原因と考えるのが妥当である。しかし、ルッツ・ドロイチェは2001年11月29日付けで、乙第15号証(8)にある様に被請求人に対し契約合意上の70%支払送金を実行している。
(10)現状、請求人との取引は代表者を提訴中につき、さし控えているが、ヨゼフ・クランツレ社製の被請求人日本仕様製品は支障なく入荷し、全国の販売店のオーダー及びユーザーのサービスに対応している。また、被請求人企画/開発の新製品も発表し、新たなる需要開発を推進中である(乙第28号証)。
(11)平成10年8月7日付け被請求人取締役会議事録及び就任承諾書の写真(乙第3号証(1)(2))のとおり請求人代表者ルッツ・ドロイチェは被請求人の取締役に自らサインし就任している。被請求人から請求人ルッツ・ドロイチェ宛の2002(平成14)年4月30日付け「Toshio Shibata」のサインがされた会議録確認書(乙第26号証)でも自認した。かつ、年一回以上はドイツ/日本いずれかで通訳同席の上で役員会(兼株主総会)を行っており、2000(平成12年)9月取締役として発言し、再任も承諾している(乙第27号証)。
よって、ドイツクランツレ社役員の宣誓書(甲第12号証、甲第13号証)は成立しない。また、2001(平成13)年8月16日付けの請求人より被請求人に対する委任状(甲第6号証)は実際に実行され(乙第14証、乙第15号証、乙第16号証)、請求人もサインし、「クランツレ・ジャパン体制確立の通知書」(甲第5号証)も請求人のサインである。
(12)特許庁の審査のとおり、被請求人は設立時点より登録出願する事の出来る唯一正当な立場にあったことは明白である。
2.弁駁に対する答弁
(1)弁駁冒頭の主張に対して
答弁書は、(株)出石/日本クランツレ(株)が深く関与していることの事実証拠を提示し、この審判請求そのものが不当である事実を示している。何ら複雑な理由はない。
(2)弁駁(1)の本件商標の帰属に関して
商標権者の位置付けの確定は、平成10年8月7日の設立登記の事実及び請求人の代表者ルッツ・ドロイチェが自ら日本国内の全顧客に提出した平成10年10月付けの「クランツレ・ジャパンの体制確立」のクランツレ・ジャパン体制確立の通知書(甲第5号証)である。該通知書の存在が商標登録査定時の重要な位置を占めたことは当然である。クランツレ・ジャパン体制確立の通知書の背景には下記の重要な事項がある。
(ア)日本国内ではドイツの製品をそのまま輸入しても販売できないし、製品構成上も不充分であった(ドイツにはない100V 仕様(50HZ/60HZ)の新製品、及び工業用として200V(50HZ/60HZ)のユーザー別、用途別の製品構成を企画)。
故に日本独自の製品の仕様決定→生産→輸入在庫→営業及びアフターサービス体制の完備した上での通知書である。
(イ)また、日本には高圧洗浄機メーカーは70社以上あり(ドイツには7社前後)、非常に競争の激しい業界である。その為最後発であるクランツレ製品でシェアーを取る為には鮮明な差別化を製品/販売の戦略面でとる必要があった。被請求人はその戦略を考案し、実施した(請求人の代表者は当然合意した。)。
(ウ)上記2項の確定の下に平成10年10月13日ないし15日、経済産業省が後援するところの洗浄業界で日本最大の展示会“ 98(平成10)年洗浄総合展“に初めて日本仕様のクランツレ製品を被請求人の総輸入元の名において出展、発表したのである(審査時に特許庁にはこの関連資料及びこれ以降の被請求人の事業・広報活動の資料は提出済)当然、請求人代表者ルッツ・ドロイチェはこれに参画している。
即ち、日本国におけるKranz1e標章の対取引者、需要者間に広く周知した始まりは被請求人設立時よりの広報・営業活動と同体の流れにあることは覆しようのない事実経緯である。
(3)被請求人の設立以前には答弁書に示すとおり、3ないし4機種のOME(昭和/タナカ)の製品が輸入販売されていたのみであり、Kranz1e標章の実績は皆無であった。請求人は上記の件(答弁書の証拠証明)に対しても全く弁駁がされていない。
即ち、日本国におけるKranz1e標章の帰属は商標権者である被請求人に請求人自身が自ら位置付けたのである(当然ヨゼフ・クランツレは承知の上)。
これらの事実経緯において請求人が被請求人に対し日本国において唯一商標登録を受ける正当な立場にあることの明示であり、黙示なくして何が正当なものとするか。
(4)ドイツ国内の商標権者はヨゼフ・クランツレ社である。また、台湾の商標権者は請求人であり(台湾には現地法人が存在しない為である。)、登録年月は1998(平成10)年5月1日である。そして、日本国においては被請求人が商標権者であって、請求人は、日本国においては被請求人を設立したので、請求人の名において商標登録をする必要がなかったのである。
台湾における登録年は被請求人設立年と同年である事がその事実を示す。
(5)請求人は、再々平成14年3月12日付の本件商標登録の途中にある拒絶理由通知書の文面の一部を利用提示するが、既に当時の被請求人の意見書提出において当件は終結している。
「クランツレ・ジャパンの体制確立」のクランツレ・ジャパン体制確立の通知書(甲第5号証)及び「クランツレ・ジャパンに対する日本の全権委任状」(請求人より被請求人に対する委任状:甲第6号証)を提示する以前の拒絶理由通知書である。
(6)日本において、Kranzle標章を周知してきたのは被請求人のみであって、この事実は答弁書の証拠において不動の事実であり、被請求人は、既に明かな様に一つの輸入代理店ではなく、現地法人の位置であり総輸入元である。
(7)被請求人の取締役就任承諾書等について
答弁に対する弁駁(3)で請求人が「取締役就任承諾書など」について述べることは詭弁である。別紙(株)ワールド通商 松井恒夫よりの発送済み英文/和文の書類にて明かなとおり、請求人代表者ルッツ・ドロイチェは全ての登記書類を英文にて受理し、合意の上取締役に就任した。また、2000(平成12)年9月14、15日の被請求人の取締役会議事録は、通訳顧問 辻井準一の証言とおり正式な役員会である。そして、請求人代表者ルッツ・ドロイチェが被請求人/3,000万円のスタンドバイを実行していた事実において完全なパートナー、共同経営者の立場にあったことは明白であって、当時未払金云々の議題はなく、議事録のとおりである。
請求人と被請求人の間においての回収問題等は既に解決済であり、逆に被請求人は請求人に支払請求を起こしている。
(8)被請求人の今後に関して
請求人は、販売会社であって、製造会社はヨゼフ・クランツレ社である。請求人の製造に係る高圧洗浄機は存在しない。また、ヨゼフ・クランツレ社の代表者ヨゼフ・クランツレ及び役員は当事件を含め、今だ日本における事件の真相を把握していない。
日本において請求人代表者ルッツ・ドロイチェ自ら被請求人を設立し、自らその運営に深く係り、その経過中に自らの背任行為によりその傘下代理店と不法な契約を行い、日本クランツレ(株)の設立に関与し、被請求人に甚大な損害を与え、片方、日本国内でKranzle標章及び被請求人の名誉を傷つけ、日本国内での信用を殿損せしめたのはルッツ・ドロイチェ自らの背任行為である。商法上も道義上も許されるべきものでなく、弁駁の余地はない。
(9)以上のとおり、本件商標は、商標法第46条第1項に該当せず、答弁の主旨のとおりの審決を求める。

第4 当審の判断
1.問題点の所在について
請求人は、本件商標はドイツクランツレ社がクランツレ製品を表示するのに使用しているKranzle標章と同一であり、被請求人が本件商標について商標登録を受けるためには、ドイツクランツレ社の同意が必要であるのに、被請求人は、その同意を受けずに登録出願をし、登録を受けたものであるから、本件商標の登録は商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである旨を主張している。
これに対し、被請求人は、請求人が被請求人に対し日本における登録出願する正当な立場にあることを明示的及び黙示的に示しているから、本件商標登録に無効理由は存在しない旨を主張している。
そうすると、本件の争点は、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるか否か、特に、本件商標の登録を受けることについて、被請求人が請求人若しくはドイツクランツレ社から同意若しくは承諾を受けたか否か、又は前記以外の正当な理由があったか否かという点にある。そこで、以下これらについて検討する。
2.本件商標の登録を受けるまでの経緯等について
両当事者の主張及び提出した証拠によれば、被請求人が本件商標の登録を受けるまでの経緯等について次の各事実が認められる。
(1)請求人は、クランツレ製品を販売するドイツの会社である(甲第5号証、甲第10号証、甲第12号証)。
ヨゼフ・クランツレ社は、クランツレ製品を製造するドイツの会社である。
(2)ドイツクランツレ社は、クランツレ製品にKranzle標章を付し、ドイツ国内で販売する外、台湾等海外にも輸出をしている。
Kranzle標章は、ドイツにおいてはヨゼフ・クランツレが商標権者として1989(平成元)年11月20日に商標登録(登録第1150055号)され(甲第2号証)、台湾においては請求人が商標権者として1998(平成10)年4月1日に商標登録(登録第799561号)されている(甲第3号証)。
(3)被請求人は、平成10年8月7日、クランツレ製品の輸出入及び国内販売を目的として設立された。請求人代表者ルッツ・ドロイチェは、被請求人設立の際、資本金の半額を出資した。そして、被請求人は日本におけるクランツレ製品の販売代理店として、請求人からKranzle標章が付されたクランツレ製品を継続的に輸入し、これを日本国内で販売した(甲第8号証、甲第14号証、乙第27号証、甲第5号証、甲第6号証、審査段階提出時資料、乙第4号証(2)(5)、乙第7号証)。
(4)請求人は、平成10年10月ころ、従前からの日本の取引先に対し、概ね以下の内容の手紙を送付した(甲第5号証)。
(内容)「我々は、平成10年8月7日付けで被請求人を設立したことをお伝えしたい。今後は、被請求人に注文を出してもらうようお願いします。
価格及び納期に関しては、馬田氏あるいは柴田氏にコンタクトして下さい。」
(5)被請求人は、(株)出石との間で、平成12年夏ころから、クランツレ製品の販売交渉を行い、同年12月8日、売買基本契約を締結し、以後、(株)出石に対し、クランツレ製品を販売した(乙第12号証、乙第14号証(3)(5)(7)、乙第15号証(2)(3))。
(6)被請求人は、平成13年8月に2回の手形の不渡りを出した(甲第4号証)。
(7)請求人は、被請求人に対し、平成13年8月16日、被請求人が請求人を代理し、クランツレ製品の販売代理店との間で、信用状の開設手続をすることを認める旨の委任状を送付した(甲第6号証)。
(8)被請求人は、(株)出石に対し、平成13年9月、被請求人に代わって信用状を開設してクランツレ製品を輸入するよう依頼するとともに、被請求人が有するクランツレ製品の総販売代理権限を譲渡することにより、共同してクランツレ製品を販売するための新会社を設立することを提案した(乙第13号証)。
(9)ルッツ・ドロイチェは、嶋本に対し、平成13年11月19日、概ね以下の内容の手紙を送付した(甲第11号証)。
(内容)「貴方の堅実に日本でのビジネスを展開することに興味を持ちました。10年後を見つめたビジネスパートナーをほしかったところです。
被請求人について率直にお話しします。金融関連に非常に不満足です。多額の未払金があり取引の停止をするつもりです。
日本クランツレの設立は結構ですが、柴田氏は営業としてだけで経営に参画させることは勧めません。この意味を理解してください。」
(10)(株)出石の嶋本は、平成13年12月14日、個人名義でKranzle標章と同一の商標を第7類「工業用高圧洗浄機、工業用掃除機」を指定商品として登録出願(商願2001-116884)した。
(11)柴田は、平成13年12月19日、本件商標を登録出願をした(甲第1号証)。
(12)特許庁審査官は、柴田に対し、平成14年3月12日付けで、柴田個人の上記商標登録出願につき、本件商標が、ドイツクランツレ社が高圧洗浄機について使用し、上記商標登録出願前より取引者及び需要者間に広く認識されているKranzle標章と同一又は類似であるなどとして、商標法第4条第1項第10号、第11号及び第15号に該当する旨の、当該登録出願の拒絶理由を通知した(同通知書発送日、同月22日)。
(13)平成14年3月29日、上記商標登録出願について、被請求人及び柴田は、特許庁に被請求人を承継人とする出願人名義変更届を提出した。
(14)特許庁審査官は、被請求人に対し、平成14年6月28日付けで、被請求人の上記商標登録出願につき、本件商標が商標法第4条第1項第7号、第10号及び第15号に該当する旨の拒絶理由及びドイツクランツレ社が本件商標の商標登録出願を同意又は承諾する書面を提出すれば、被請求人が商標登録を受けることができる旨を通知した(同通知書発送日、同年7月5日)。
(15)被請求人は、特許庁に上記拒絶理由に対し、本件商標の商標登録を受けるため、被請求人の登記簿謄本、前記(4)の案内状(甲第5号証)及びL/C開設についての前記(7)の委任状(甲第6号証)を提出した。
(16)平成14年9月2日、クランツレ製品の輸入販売のため、日本クランツレ(株)が設立され、嶋本が代表者に就任した(乙第11号証(2))。
(17)平成14年11月15日、本件商標について被請求人を商標権者とする商標登録がなされた(甲第1号証)。
(18)被請求人は、(株)出石及び日本クランツレ(株)に対し、平成15年5月14日、神戸地方裁判所に本件商標に係る商標権に基づき差止及び損害賠償を求める訴え(神戸地方裁判所平成15年(ワ)第1119号)を提起した(乙第9号証、甲第4号証)。
3.本件商標の登録を受けることについての承諾の有無又は正当な理由の存否について
(1)明示的な同意又は承諾の有無
他人の使用する商標について商標権を取得するような重要な事項については、当事者間で書面による契約をするのが一般的であると解されるところ、本件商標の審査手続きにおいて特許庁審査官からドイツクランツレ社が本件商標の商標登録出願を同意又は承諾する旨の書面を提出すれば被請求人が商標登録を受けることができる旨を通知され、本件商標の登録に対する登録異議申し立て及び本件審判請求でも請求人から同意をしていない旨を主張されているのであるから、請求人から本件商標の登録について同意又は承諾を受けていた旨の事実を示す書面が被請求人に存在しているとすれば、提出する機会は十分あったにもかかわらず被請求人からはその旨の書面の提出がないこと、神戸地方裁判所平成15年(ワ)第1119号侵害訴訟事件において、被請求人はドイツクランツレ社から明示的に登録出願の同意又は承諾を受けていなかった旨を主張していること(甲第4号証)、及びドイツクランツレ社は被請求人に対して、本件商標の登録出願することの権限又は同意を明示的又は黙示的に与えていない旨の宣誓供述書(甲第12号証及び甲第13号証)を提出していることの各事実が認められる。これらの認定事実によれば、被請求人は、本件商標の登録出願について請求人若しくはドイツクランツレ社のいずれからも明示的な同意又は承諾を受けていたとは認められない。
(2)正当な理由の存否
(ア)被請求人が挙げる正当な理由の要点は、次のとおりである。
(a)ルッツ・ドロイチェの関与について
ルッツ・ドロイチェは被請求人の設立に際して、資本金の半額を出資し、取締役に就任している。創業時より社名・社章及び商標としてKranzle標章を使用することを決定し、実行しており、本件商標の帰属は商標権者である被請求人に請求人自身が自ら位置付けたものである。
(b)請求人の案内状(甲第5号証)について
ルッツ・ドロイチェが1998年10月に日本国内の顧客に発信した「クランツレ・ジャパンの体制確立」の案内状は、被請求人をクランツレ製品の総輸入販売元として位置付けたものである。
(c)委任状(甲第6号証)について
請求人より被請求人に対する委任状は、L/C開設に関するものである。即ち、日本仕様に係る製品の輸入に関しOEM(相手先ブランド)を含めその全権利を被請求人に委任したものであり、被請求人は、一輸入代理店ではなく、現地法人の位置であり総輸入元である。
(d)Kranzle標章の周知性について
日本において、Kranzle標章の周知性を高めたのは、被請求人である。
(e)特許庁の審査で正当性が認められたことについて
本件商標の審査段階において、特許庁審査官の示した拒絶理由については、既に当時の被請求人の意見書提出において終結している。
(イ)上記(a)ないし(e)に挙げる理由について検討する。
(a)ルッツ・ドロイチェの関与について
ルッツ・ドロイチェが被請求人の取締役会議で商標の選定を行った旨の主張については、それを認めるに足りる証拠はない。ただ、被請求人は、クランツレ製品を輸入、販売することを目的として設立され、ルッツ・ドロイチェがその設立に際し資本金の半額を出資し、取締役にも就任しており、設立以後、特に問題もなくKranzle標章が付されたクランツレ製品を継続的に輸入し、販売をしていたことからすると、少なくともこの限りにおいて請求人からKranzle標章の使用が認められていたものと推認される。
被請求人は請求人からKranzle標章の使用が認められていたとしても、Kranzle標章の使用を許諾することとその標章を商標として登録することを許諾することは、商標管理の観点からみてその重要性の程度が全く異なるものであるから、黙示の承諾または正当な理由があったといえるためには、社会通念に照らし首肯できる事情が認められなければならないと解される。
そこで進んで、このような事情が認められるか否かについて検討する。
ドイツクランツレ社は、クランツレ製品を被請求人以外の日本企業にも販売していたこと(甲第6号証、甲第10号証、乙第4号証(2)ないし(4))、前記2(6)及び(9)で認定したとおり、被請求人が2回目の手形の不渡りを出した以後、ルッツ・ドロイチェは、嶋本に対し、同年11月19日、被請求人について、金融関連に非常に不満足であること及び多額の未払金があり、取引の停止をするつもりであること並びに柴田については日本クランツレの設立に関し営業としてだけで経営に参画させることは勧めない旨を手紙で表明していること、請求人は被請求人に本件商標を登録出願する権限を黙示的にも与えていない旨の宣誓供述書(甲第12号証及び甲第13号証)を提出していること、請求人は、本件商標の登録について登録異議の申立てをし、登録を維持する旨の異議決定がなされると再度無効審判請求をしていることの各事実が認められる。これらの認定事実に照らせば、本件商標の登録出願当時ないし登録査定当時、請求人と被請求人との間に本件商標の登録について請求人が被請求人に黙示の承諾を与えるほどの信頼関係があったと認められる状況にはなかったというのが相当である。
そうすると、ルッツ・ドロイチェの被請求人に対する関与からは、本件商標の登録をすることについて、被請求人に対して黙示の承諾したものとは認められないし、また被請求人に正当な理由があったものとも認められない。
(b)請求人の案内状(甲第5号証)について
請求人の案内状(甲第5号証)は、被請求人の設立に伴い、請求人が従前からの日本の取引先にその利用を促す宣伝を内容とするものであることが認められるものの、被請求人が日本におけるクランツレ製品の総輸入販売代理店であることを内容とするものとまでは認められない。
(c)委任状(甲第6号証)について
委任状(甲第6号証)についても、被請求人が請求人を代理し、クランツレ製品の販売代理店との間で、信用状の開設手続をすることを請求人が被請求人に対して認める旨を内容とするものであって、それ以上に請求人と被請求人との間においてクランツレ製品の総輸入販売代理店契約を内容とするとかクランツレ製品の総輸入販売代理店となることを委任する内容とするものとまでは認められない。
(d)Kranzle標章の周知性について
Kranzle標章が日本において周知であるとの事実について、被請求人はその事実を認めるに足りる立証をしていないばかりか、本件全証拠によってもその事実を認めるに足りない。
仮に、本件商標の登録出願当時ないし登録査定当時、Kranzle標章が日本において周知になっており、その主たる要因が被請求人の設立時からのクランツレ製品の輸入、販売、その他の広報・営業活動などにあったとしても、被請求人は、ドイツクランツレ社の販売代理店としてクランツレ製品を輸入、販売したものであるから、その当時日本においてKranzle標章の使用をしていたのはドイツクランツレ社というべきである。
(e)特許庁の審査で正当性が認められたことについて
商標登録の無効審判は、商標登録が商標法第46条第1項各号の一に該当するときに請求できることとされており(同項柱書)、無効審判を請求できる理由中には、商標登録が同法第4条第1項に違反してされたときが含まれている(同項第1号)。実質的観点からみても、本来審査において拒絶されるべき登録出願に係る商標が誤って商標登録を受けた場合、その商標について商標権として独占排他的な効力を継続させておくべき理由はなく、無効審判請求があったときは、除斥期間を経過したものを除き、無効にすべきは当然である。
したがって、本件審判請求は、無効理由の一として本件商標の登録が同法第4条第1項第7号に違反してされたことを挙げているが、審査において本件商標が同号に該当するか否かが検討され、該当しないと判断された結果その登録がされたとしても、本件商標の登録が同号に違反してされたことを理由とする本件無効審判請求に違法な点はなく、本件審理において前記審査の当否を判断できるというべきである。
以上のとおり、被請求人は、本件商標の登録を受けることについて、正当な理由があったものとも認められない。
4.被請求人の登録出願行為について
本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に違反してされたか否かについて検討する。
前項までの検討結果を総合すると、ドイツクランツレ社の製造する「高圧洗浄機」の輸入販売代理店をしている被請求人代表者柴田は、個人名義で、同製品に使用されているKranzle標章と同一の本件商標を、ドイツクランツレ社が我が国に輸出、販売している商品「高圧洗浄機」及び同商品の使用とは密接な関連を有する「作業服,ヘルメット」を指定商品として、ドイツクランツレ社の同意又は承諾を受けずに、正当な理由もないのに、登録出願をし、被請求人は、その登録出願によって生じた権利を柴田から譲り受け、本件商標の登録を受けたものと認められる。
本件のように、輸入販売代理店を営む者が、製造販売元の使用する商標について該製品及び関連商品を指定商品として出願、登録をし、これを排他的に使用することは、製造販売元である者等の利益を害するものであるから、著しく社会的妥当性を欠き、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべきである(東京高裁平成16年(行ケ)第7号、平成16年12月21日判決参照)。
このことに加え、平成13年8月以後、ルッツ・ドロイチェの被請求人及び柴田に対する信頼関係は低下傾向にあったこと、柴田は、平成13年11月15日、(株)出石常務取締役嶋本及び取締役平間と面談し、被請求人と(株)出石との間になされていた新会社設立が中止されたことを知ったこと(乙第20号証)、被請求人は、本件商標に係る商標権に基づき、設定登録後1ヶ月を経過しない平成14年12月10日、(株)出石に対して警告を発し、同15年5月14日(株)出石及び日本クランツレ(株)に対し侵害訴訟を提起していることの各事実と、被請求人は、柴田が本件商標を同年12月19日に登録出願した理由を「平成13年11月15日の(株)出石常務取締役嶋本/取締役平間の突然(アポイントなし)の来社時の『異常な内容』の口頭提示を受け、出願を決意した(乙第20号証)。」旨主張している(平成16年4月8日付け答弁書8頁9行ないし12行)こととを併せ考慮すると、柴田及び被請求人は、現存又は近い将来のクランツレ製品を輸入販売する競業者対して排他的効力を確保するため本件商標の登録出願をしたものと推認されるから、不正の目的をもって登録出願をしたというのが相当である。
なお、本件商標の出願人が、登録出願によって生じた権利の譲渡により、柴田から被請求人に名義変更されているが、前記各登録出願行為の評価に影響を及ぼすものではない。
したがって、本件商標に係る被請求人の登録出願行為は、著しく社会的妥当性を欠くものであり、また不正の目的をもってされたものであると認められるから、このような登録出願に基づく本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する商標であり、本件商標の登録は、同号に違反してされたものである。

5.結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、請求人のその余の主張について検討するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
本件商標


(色彩については原本参照)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)
本審決に対する訴えは、審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
審理終結日 2005-06-29 
結審通知日 2005-07-05 
審決日 2005-08-02 
出願番号 商願2001-117112(T2001-117112) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Z0725)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 高野 義三
内山 進
登録日 2002-11-15 
登録番号 商標登録第4620432号(T4620432) 
商標の称呼 クランツレ、クランズル 
代理人 徳岡 修二 
代理人 武石 靖彦 
代理人 村田 紀子 
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