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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
管理番号 1137869 
審判番号 無効2003-35279 
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-04 
確定日 2005-11-09 
事件の表示 登録第4553203号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4553203号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4553203号商標(以下「本件商標」という。)は、「メバスタン」の片仮名文字と「MEVASTAN」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成13年3月16日に登録出願され、第5類「薬剤」を指定商品として、平成14年3月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2049558号商標(以下「引用A商標」という。)は、「メバロチン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和61年1月20日に登録出願され、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和63年5月26日に設定登録されたものである。
同じく、登録第2069627号商標(以下「引用B商標」という。)は、「MEVALOTIN」の欧文字を横書きしてなり、昭和61年1月20日に登録出願され、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和63年8月29日に設定登録されたものである。
同じく、登録第2448922号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成1年10月27日に登録出願され、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年8月31日に設定登録され、その後、その指定商品については、平成14年3月22日に書換登録申請がされ、平成14年4月17日に、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類」、第2類「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,セラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用海草のり,洗濯用コンニャクのり,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり」、第4類「固形潤滑剤」、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」、第8類「ピンセット」、第9類「耳栓」、第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。)」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」、第19類「タール類及びピッチ類」、第21類「デンタルフロス」及び第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤」と書換登録されたものである。
同じく、登録第2448923号商標(以下「引用D商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成1年10月27日に登録出願され、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年8月31日に設定登録され、その後、その指定商品については、平成14年3月22日に書換登録申請がされ、平成14年4月17日に、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類」、第2類「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,セラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用海草のり,洗濯用コンニャクのり,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり」、第4類「固形潤滑剤」、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」、第8類「ピンセット」、第9類「耳栓」、第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。)」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」、第19類「タール類及びピッチ類」、第21類「デンタルフロス」及び第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤」と書換登録されたものである。
同じく、登録第2112919号商標(以下「引用E商標」という。)は、「メバスチン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和62年6月12日に登録出願され、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成1年2月21日に設定登録されたものである。
同じく、登録第2112920号商標(以下「引用F商標」という。)は、「MEVASTIN」の欧文字を横書きしてなり、昭和62年6月12日に登録出願され、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成1年2月21日に設定登録されたものである。
そして、いずれも現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証を提出している。
請求の理由
(1)本件商標と引用A商標ないし引用D商標とを比較検討してみるに、両者の構成は、それぞれ上述の通りであって、それぞれの構成上、前者からは、「メバスタン」の称呼を生ずるものであるというを相当とするのに対して、後4者からは、「メバロチン」の称呼を生ずるものであるというを相当とするところである。
しかして、本件商標より生ずる「メバスタン」の称呼と各引用商標より生ずる「メバロチン」の称呼とは、共に5音構成より成るうち、語頭からの「メ」、「バ」及び語尾の「ン」の3音を全く同じくしているところ、文字により構成された商標における、自他商品を識別するための標識としての機能を果す場合において、最も重要な要素となる語頭部分に存する音であるばかりでなく、語尾における「ン」音をも共通にしているものであるから、語中央部において、「スタ」と「ロチ」の音の差異を有するものではあるが、両商標が、薬剤について使用される場合には、その構成中の語頭部分の「メバ」の文字部分は、後半部の「スタン」及び「ロチン」の文字部分に比して、自他商品の識別力を果す最も重要な部分、所謂、商標の要部若しくは商標の基幹部分というべきものである。
更に、薬剤等の商標として、「メバ」の音で始まるものは、引用A商標ないし引用D商標のみであることからも、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用をするときは、観念的な連想を惹きおこし易い、その基幹部分「メバ」を共通にし、しかも、薬剤の商標の接尾語として、我国においては、比較的好まれてありふれて採択使用されている「ン」をも共通にしている点からも、請求人の製造・販売する商品「高脂血症薬剤」に使用する引用A商標ないし引用D商標を連想させ、これに接する取引者・需要者は、請求人のシリーズ商標若しくは姉妹商品として、請求人の製造・販売に係るものと誤認し、その商品の出所につき、混同を生じさせるおそれの充分にある、彼此相紛らわしい商標であるといわなければならないところである。
(2)更に、引用A商標ないし引用D商標は、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」(動脈硬化用薬剤)に付されて使用され、平成1年の発売以来、その売上高は、当初の70億円(市場占有率17.5%)から、その売上を延ばし、平成11年度には、1288億円(市場占有率53.9%)にものぼり、「高脂血症用薬剤」の単品商品が、売出しからの僅か11年間で、何と1兆59億円にも達している事実がある(甲第11号証)。
また、上記商品の宣伝広告活動も、広告代理店、株式会社丹水社を通じて、活発かつ盛大に行っており、その宣伝広告費も、単品商品「高脂血症用薬剤」の金額としては、平成1年に1600万円台であったものが、平成14年は10月までに2100万円台を投じ、発売以来の14年間で、何と4億3000万円以上もの広告費をかけているものである(甲第12号証及び甲第13号証)。
その他にも、「メバロチン」に関して、株式会社医薬広告社を通じて平成7年4月から同14年10月までの広告出稿一覧表(甲第14号証)、協和企画株式会社を通じて1995年度から2001年度にかけての広告出稿一覧表(甲第15号証)及び株式会社東宣を通じて1995年度から2002年度にかけての広告出稿一覧表(甲第16号証)がある。
したがって、引用A商標ないし引用D商標は、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するためのものとして、この種商品を取り扱う業界における取引者及び需要者の間において、広く認識されている、周知、著名な商標であるから、これと相紛らわしい本件商標を、その指定商品である「薬剤」について使用をするときには、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の業務に係る商品であるかの如く誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれの充分にあるものといわなければならない。
請求人の上記主張理由の正当性を立証すべく、本件事案と判断の軌を一にする、審決例及び判決例(甲第17号証ないし甲第20号証)を挙げて、請求人は、これを自己の主張理由に、有利に援用することとする。
上記の事実を勘案するとき、薬剤の商標として「メバ」の音で始まるものは、各引用商標の外には存在しないことから、これに、薬剤の商標の接尾語として、我国においては、比較的好まれてありふれて使用されている文字の「ン」を共通にする本件商標は、被請求人の創作に係る商標であるというよりは、むしろ、各引用商標の著名性に、明らかに只乗りする意図の下に出願された商標であると断ぜざるを得ない。
請求人は、このような事実を立証するものとして、平成15年6月30日発行の「読売新聞」(朝刊)に掲載された記事を、甲第21号証として、提出する。
(3)更に、請求人は、各引用商標の周知、著名性を立証すべく、宣伝広告を掲載した具体的な誌名等について、その証拠方法(甲第23号証ないし甲第32号証)を提出するものである。
以上の証拠方法によって、先に述べた通り、請求人は、各引用商標を、斯界における、最も有効な媒体(雑誌等)を用いて、継続的、かつ、定期的に反復した宣伝広告に努めた結果、各引用商標は、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識された周知、著名な商標であるといわなければならないところである。
(4)更に、また、請求人は、自己の所有に係る、引用E商標及び引用F商標を引用するものである。
そこで、本件商標と引用E商標及び引用F商標とについて、比較検討してみるに、前者からは、「メバスタン」の称呼を生ずるものであるというを相当とするのに対し、後2者からは、「メバスチン」の称呼を生ずるものであるというを相当とする。
しかして、本件商標より生ずる「メバスタン」の称呼と両引用商標より生ずる「メバスチン」の称呼とは、共に5音構成中、文字により構成された商標における識別標識としての機能を果す最も重要な語頭部の「メ」、「バ」、「ス」及び語尾の「ン」音を全く共通にしているものであり、僅かに、第4音において、「タ」音と「チ」音の差異を有するものではあるが、該差異音とても、共に子音の「t」を共通にするタ行同行音であって、調音方法等を同じくする近似した音であるから、該差異音が、両者の全体的称呼に及ぼす影響は、決して大きなものではなく、したがって、両者を全体として、一連に称呼した場合には、その全体の語調、語感が近似したものとなり、これらに接する聴者をして、彼此の称呼を、聞き誤らせるおそれの充分にある、互いに相紛らわしい称呼であるといわざるを得ないばかりでなく、本件商標の指定商品である「薬剤」は、両引用商標のそれに完全に包含されているものである。
してみれば、本件商標は、引用A商標ないし引用F商標と称呼の点において、互いに彼此相紛らわしい類似の商標であるといわなければならず、かつ、本件商標の指定商品である「薬剤」は、各引用商標のそれに包含されていること明らかなところであり、かつ、引用A商標ないし引用D商標が、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識されている周知、著名な商標であるから、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用をするときは、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の取り扱いに係る商品と誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれの充分にある商標であるから、結局、本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同法第4条第1項第15号の各規定に違反して登録されたものである。
(5)したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号の規定に基づいて、その登録は、無効とされるべきものである。
(6)平成15年10月29日付け弁駁
被請求人は、平成元年度価格表中に「メバポン」なる薬剤が記載されているので、「メバ」で始まる薬剤は谷も存在していた旨主張するが、それらの殆どは請求人の製造に係る「メバロチン」の特許権が存続期間の満了により消滅した後に販売する後発品のものである。
さらに、被請求人は、同薬剤は医師向け専用の医薬品であることも、本件商標が引用商標と彼此混同されることの一因である。・・したがって、本件商標と引用商標の如く明確な差異を有する両商標が細心の注意をもって医薬品を選別する医師・薬剤師に混同されるおそれは皆無である旨述べているが、医療機関の患者数の激増により、特に最近は、医療用医薬品の後投薬などによる医療事故が多発しており、これらの事実を真剣に考慮して、平成12年日本製薬団体連合会(日薬連)で製薬企業全体で統一的な改善に取り組んでいる現況である(甲第38号証)。
また、現在、厚生労働省でも医療安全対策検討対策会議を立ち上げ、医薬品・医療用具等対策部会の名称類似ワーキンググループで類似販売名に起因する医療事故防止策の検討を進めているところである。
このように、厚生労働省、製薬会社が医療事故防止策に必死に取り組んでいる中、被請求の主張は上記実情を全く解していない主張である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第32号証を提出ている。
(1)その構成から明らかなように、本件商標からは「メバスタン」の称呼が、引用A商標ないし引用D商標からは「メバロチン」の称呼が生ずるものである。
而して、両称呼は共にわずか5音構成よりなるところ、両者は5音中2音において相違しており、これは割合としては称呼全体における40%もの部分において音の相違を有することになる。
しかも、両者の差異音である「スタ」と「ロチ」は発音上、「ス」と「ロ」は母音において「u」と「o」に、又、子音においては摩擦音で歯音の「s」と、弾音で歯茎音の「r」とに相違し、何れにおいても共通するものでなく、よって当然ながら調音方法及び調音位置を全く異にする音であり、「タ」と「チ」は母音において「a」と「i」の非近似母音に相違するため、、彼此は語調、語感を異にし、よってこれらの音の差異は聴取者に明確に聴別されるものである。
したがって、本件商標と引用A商標ないし引用D商標とは語頭における「メバ」の2音、語尾の「ン」の1音を共通にするとはいえ、「スタ」と「ロチ」の音の差異が称呼全体に与える影響は極めて大きいものであり、これらの音の差異により両者は全体としても語調、語感を異にする、称呼上も明らかに非類似の商標であることは明らかである。
(2)請求人は、薬剤等の商標として、「メバ」の音で始まるものは引用A商標ないし引用D商標のみである旨主張し、その証拠として甲第32号証等を提出している。
しかしながら、甲第26号証、甲第32号証の平成元年度価格表中には「メバポン」なる薬剤が記載されているので、平成元年当時、「メバ」の音で始まる薬剤が他にも存在していたことが明らかである。
加えて、被請求人が保険薬事典、インターネット等で調査したところでは、請求人製造に係る「メバロチン」、被請求人製造に係る「メバスタン」以外にも「メバ」の音で始まる薬剤は、「メバスロリン」、「メバトルテ」等多数発見された(平成15年8月時点。乙第1号証ないし乙第4号証)。
さらには、本件商標以外にも「薬剤」等を指定商品とする、「メバ〇〇」といった構成の商標が、「メバコア/MEVACOR」、「メバチノン/MEVATINON」等多数登録されている事実が存する(乙第5号証ないし乙第17号証)。
よって、請求人の主張は明らかに失当である。
(3)請求人は、本件商標と引用A商標ないし引用D商標とは「メバ」を共通にし、「メバ」の部分が両商標の観念的な連想を引き起こしやすい基幹部分であり、しかも薬剤の商標の接尾語として、我が国においてありふれて採択使用されている文字の「ン」をも共通にしていることを称呼上類似であることの根拠の一つに挙げている。
しかしながら、上述の通り「メバ」で始まる薬剤が複数存在していることからも、「メバ」の部分が両商標の観念的な連想を引き起こしやすい基幹部分であるという、請求人の主張は誤りであることが明らかである。
加えて、「メバ」の文字部分が引用A商標ないし引用D商標における基幹部分であるといった請求人の主張は、引用A商標ないし引用D商標「メバロチン」が採択された由来からも否定しうるものである。
即ち、引用A商標ないし引用D商標中の「メバロ」の文字部分は請求人製造に係る薬剤の薬理作用(メバロン酸の合成酵素阻害)を表す「メバロン酸」(乙第31号証)から「メバロ」の部分を抜き出して採択されたことは「日本病院薬剤師会」のIF記載要領に準拠して請求人自ら作成した「医薬品インタビューフォーム」(乙第18号証)に『本剤の薬理作用(メバロン酸の合成酵素阻害)を表す「メバロン酸」と「一般名(プラバスタチンナトリウム)」から引用してメバロチンとした』と記載されている通りである。よって、引用A商標ないし引用D商標は「メバロ」の語尾に医薬品に慣用されている「チン」を組み合わせたものと一般に認識されるものであるから、「メバロチン」中の「メバ」の文字部分を分離抽出して基幹部分であるとするのは、上記「メバロチン」の採択理由と異なる主張であり到底容認できない。加えて、「メバロ」は効能表示的な意味合いをも有する、識別力の乏しい文字部分であるといえる。
なお、被請求人使用に係る薬剤「HMG-CoA還元酵素阻害剤(高脂血症治療剤)メバスタン」も『「メバロン酸」の合成阻害作用と一般名「プラバスタチンナトリウム」』から採択されたことは乙第20号証に記載されているとおりである。同様に、上記他社製造に係る薬剤「メバスロリン」等の商標も効能表示である「メバロン酸」に由来して採択されたものと思料する。
一方で、薬剤の商標の接尾語として「ン」はありふれて採択・使用されている事実は被請求人もこれを否定するものではない。そして、このことはむしろ本件商標と引用A商標ないし引用D商標がより明確に聴別されることを証する一証左である。
即ち、そもそも語尾音「ン」は称呼上も極めて弱い音といえるところ、「薬剤」の商標としては語尾音に「ン」が好んで採択されているのであるから、語尾の「ン」は商標の識別上、極めて弱い文字(音)である。
よって、本件商標と引用A商標ないし引用D商標とが語尾音「ン」を共通にする点は、「薬剤」の商標についての識別上、重要な位置を占めるものではない。
したがって、本件商標と引用A商標ないし引用D商標とをより正確に対比するには、識別上特段重要ではない語尾の「ン」を除いた「メバスタ」の部分と「メバロチ」の部分との対比によりなされるべきである。してみれば、両者はわずか4音中「スタ」と「ロチ」の2音において相違するのであるから、彼此相紛れるおそれは皆無であること明らかである。
(4)平成10年審判第35358号審決、昭和50年(行ケ)第74号判決と本件とは事案を著しく異にするものであるから、これらの審決、判決を採用することはできない。
結局、請求人が本件商標と引用A商標ないし引用D商標とは称呼上類似する旨の主張の根拠はいずれも失当なものである。本件商標と引用A商標ないし引用D商標とは「スタ」と「ロチ」の音の差異により称呼上も彼此相紛れるおそれのない、非類似の商標であること明らかであり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(5)本件商標を「薬剤」について使用した場合においても、これが請求人の業務に係る商品であると出所について混同を生じさせるおそれは皆無である。
請求人は引用A商標ないし引用D商標は請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」の商標として周知、著名であるから本件商標を「薬剤」について使用した場合にはその出所につき混同を生じさせるおそれがある旨主張し、同商品の販売実績、宣伝広告費、宣伝広告例等を提出している。
しかしながら、そもそも本件商標と引用A商標ないし引用D商標とは彼此相紛れるおそれのない商標であること上記で述べたとおりであるから、本件商標使用に係る商品が請求人の業務に係る商品であると出所について混同を生じさせることはあり得ないものである。
さらに、被請求人は薬剤の商標として「メバ」の音で始まるものは引用A商標ないし引用D商標以外に存在しないことをその論拠としているが、「メバ〇〇」なる薬剤は多数存することも上述の通りであるので、これは誤った事実認定に基づく主張であるから到底認めることはできない。
一方、被請求人は本件商標を「薬剤」について実際に使用しているものであり、その使用実績を示すものとして乙第20号証ないし乙第26号証を提出する。
乙第20号証ないし乙第26号証から明らかなとおり、被請求人は本件商標を「HMG-CoA還元酵素阻害剤(高脂血症治療剤)」について実際に使用しているが、これが請求人の業務に係る商品であると、あるいは又請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると、その出所について混同を生じた事実は一切ないのである。勿論、本件商標が取引上引用A商標ないし引用D商標と誤認混同された事実も全く存しない。
さらには、上述の通り本件商標は「HMG-CoA還元酵素阻害剤(高脂血症治療剤)」について使用しているものであるところ、同薬剤は医師向け専用の医薬品であることも、本件商標が引用A商標ないし引用D商標等と彼此混同されるおそれがないことの一因である。
即ち、医師や薬剤師は誤投薬をさけるべく厳正な注意力をもって薬剤の選別をするのが常であるから、末端の消費者を対象とする商品の商標、あるいは一般に市販される薬剤とは異なり、医師向け専用の医薬品が他の医薬品と混同されるおそれはそもそも少ないものといえる。したがって、本件商標と引用A商標ないし引用D商標の如く明確な差異を有する両商標が細心の注意力をもって医薬品を選別する医師・薬剤師に混同されるおそれは皆無である。
また、医薬品の商標は厚生労働省の承認を要する関係上、今後本件商標が「高脂血症治療剤」以外の薬剤に使用されることはないから、本件商標が医師向け専用の医薬品以外の医薬品に使用されることもないので、上記の如く状況が今後変化するおそれもないといえる。
一方で、投薬、処方を受ける患者は自らの意志で薬剤を選別することはないのであるから、そもそも他の薬剤と混同するということ自体あり得ないのである。
最高裁判所昭和43年2月27日判決(民集22巻2号399頁)に示されるとおり、商標の類否は取引の実情に基づいて具体的な誤認混同を生ずる虞があるか否かによって類否が決せられるべきものであるところ、上述の通り、本件商標と引用A商標ないし引用D商標とは商標自体の明らかな相違に加えて両商標を使用した商品の取引者、需要者の商品並びに商標に対する専門的立場からの高度の注意力、彼此の商品パッケージの外観上の顕著な相違等により、明確に識別されているものである。
よって、被請求人の本件商標が出所について誤認を生じさせるおそれがある旨の主張は現実の取引状況を無視した、的はずれなものと言わざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものでもない。
(6)本件商標は引用E商標及び引用F商標とも称呼上、明らかに非類似の商標である。
引用E商標は片仮名にて「メバスチン」と横書きしてなるものであり、引用F商標は欧文字にて「MEVASTIN」と横書きしてなるものである。
本件商標からは「メバスタン」の、引用E商標及び引用F商標からは上記構成より「メバスチン」の称呼がそれぞれ生じるものであるところ、本件商標と引用E商標及び引用F商標は第4音の「タ」と「チ」の差異により明確に聴別されるものである。
第一に、両者は共に語尾に位置する「ン」を含めて5音と極めて短い構成よりなるものである。しかも、語尾音「ン」はそもそも明確に聴取されにくい音であるばかりでなく、薬剤の商標の接尾語としては「ン」はありふれて採択・使用されており、商標の識別上、極めて弱い音であることは上述の通りであるから、両者の差異は実質上「メバスタ」と「メバスチ」の4音中における1音の差異である。
したがって、本件商標と引用E商標及び引用F商標の称呼上の差異は「タ」と「チ」の僅か1音の差異であるとはいえ、これが称呼全体に与える影響は極めて大きいものである。
第二に、両称呼の差異音「タ」と「チ」を対比するに、母音において「a」と「i」の、誤聴の起こる可能性の少ない非近似母音の相違を有するものである(乙第27号証、乙第28号証)。さらに、「タ」は口を開いて舌尖を前歯のもとに密着して破裂させて発する無声子音と母音との結合した音であるのに対し、「チ」は口を狭めて舌尖と上前歯との間で形成される無声の破擦音と母音との結合した音であり、両者は発音方法において顕著な差異を有するものである。
第三に、「メバスタン」と「メバスチン」は「メバス」の基幹部分と「タン」「チン」の部分で発音上の段落を生じるので、「タ」「チ」は中間音であってもアクセントを生じ、聴取者の印象に残る音である。
第四に、「タ」と「チ」は前者は破裂音、後者は破擦音であって共に明瞭に聴取される音であるところ、それぞれに続く音が語尾音「ン」である構成上の関係から、「ン」を吸収して「タン」、「チン」の如く、同部分にアクセントをおいて強く明瞭に発音されるものである。
よって、「タ」と「チ」の差異がそれぞれの称呼全体に与える影響は極めて大きく、両称呼は全体として語調、語感を著しく異にし十分聴別しうるものである。
因みに、本件と同様「タ」と「チ」の音の差異により非類似と判断された審決例が存する(乙第29号証及び乙第30号証)。
本件商標がこれらの審決例と異なった判断をされるべき合理的な理由は全く見あたらない。特に、昭和60年審判第14793号審決例は語尾に「ン」を伴う5音構成である点において、本件と極めて近似した事例であるといえる。
なお、「保険薬事典」(乙第1号証)、インターネット上の請求人のホームページ内「医療用医薬品一覧」(乙第32号証)中に「メバスチン」なる医薬品は存在しないことから、引用E商標及び引用F商標は実際には使用されていないことが明らかである。
而して、商標の類否判断においては、取引の実情に基づいて具体的な誤認混同を生ずる虞があるか否かによって類否が決せられるべきものであることは上記の最高裁判所昭和43年2月27日判決が示す通りである。
してみれば、引用E商標及び引用F商標は「薬剤」等について使用されていないのであるから、そもそも商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれは皆無であって、引用E商標及び引用F商標の存在を理由として本件商標の登録を無効とすべき合理的な理由は存在しないことを念のため申し添えておく。
以上の通り、本件商標と引用E商標及び引用F商標とは称呼上も明らかに非類似の商標であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(7)したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものでもない。

第5 当審の判断
請求人は、引用E商標及び引用F商標を引用し、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張しているので、この点について判断する。
本件商標と引用E商標及び引用F商標は、上記のとおりの構成よりなるものであって、それぞれの構成文字に相応して前者は「メバスタン」、後者は「メバスチン」の各称呼を生ずること明らかである。
そこで、本件商標より生ずる「メバスタン」の称呼と引用E商標及び引用F商標より生ずる「メバスチン」の称呼とを比較すると、両称呼は共に5音よりなり、そのうち語頭及びこれに続く「メ」「バ」「ス」及び語尾おける「ン」の4音を共通にし、第4音目において「タ」と「チ」の音の差異を有するにすぎない。しかも、該差異音が同行に属する近似音とあることから、この差異が両称呼の全体に及ぼす影響は小さいものであって、両称呼を一連に称呼するときは、それぞれの全体の語感、語調が近似したものとなり、彼此聴き誤るおそれがあるものといわなければならない。
してみれば、本件商標は、引用E商標及び引用F商標とは、外観、観念上の相違点を考慮しても、称呼において相紛らわしい類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品は、引用E商標及び引用F商標の指定商品とは同一又は類似の商品と認められる。
なお、被請求人は、乙第29号証及び乙第30号証の審決例を示し、「タ」と「チ」の各音について種々述べ、「タ」と「チ」の差異がそれぞれの称呼全体に与える影響は極めて大きく、両称呼は全体として語調、語感を著しく異にし十分聴別し得るものである旨主張している。しかしながら、乙第30号は本件商標の指定商品と異なる「建築材料」等を指定商品とするものであって事案を異にするものであり、また、乙第29号証は、本件商標と同じ「薬剤」を指定商品とするものであるが、この例を以て全ての事案に適用されるということはできず、本件商標については上記のとおりに判断するのが相当であるから、この点についての被請求人の主張は採用することはできない。
また、被請求人は、引用商標は実際に使用されていないことが明らかであり、出所の混同が生じるおそれは皆無であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない旨述べるが、引用E商標及び引用F商標が使用されていないとしても、今後使用する蓋然性を否定し得るものではなく、本願商標と引用E商標及び引用F商標が類似の商標であること前記のとおりであるから、
この点についての被請求人の主張は採用することはできない。
次に、請求人は、引用A商標ないし引用D商標を引用し、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する旨主張しているので、この点について判断する。
請求の提出に係る甲第11号証ないし甲第40号証より以下の事実が認められる。
引用A商標ないし引用D商標は、請求人の業務に係る商品「高脂血症治療剤」(動脈硬化治療剤)に使用され、平成1年の発売以来、その売上高は、当初の70億円(市場占有率17.5%)から、その売上を延ばし、売出しからの僅か11年間で、1兆59億円にも達している(甲第11号証)。
さらに、上記商品の宣伝広告費も、発売以来の14年間で4億3000万円以上である(甲第12号証及び甲第13号証)。
その他にも、「メバロチン」に関して、株式会社医薬広告社を通じて平成7年4月から同14年10月までの広告出稿一覧表(甲第14号証)、協和企画株式会社を通じて1995年度から2001年度にかけての広告出稿一覧表(甲第15号証)及び株式会社東宣を通じて1995年度から2002年度にかけての広告出稿一覧表(甲第16号証)のとおり広告している事実がある。
してみれば、請求人の業務に係る商品「高脂血症治療剤」に使用する引用A商標ないし引用D商標は、本件商標の出願時及び登録査定時のいずれの時点においても、医師、薬剤師、病院等の医薬品購入担当者、医薬品取扱業者などのこの種商品を取り扱う業界における取引者及び需要者の間において、広く知られていたものと認められる。
また、請求人が引用する引用A商標ないし引用D商標は前記の通りの構成よりなり、その構成中の「MEVALOTIN」、「メバロチン」の文字より、「メバロチン」の称呼を生ずるものであるところ、本件商標「MEVASTAN」「メバスタン」と、引用商標の構成中の「MEVALOTIN」「メバロチン」とは、その構成文字及び称呼において、比較的印象の強い語頭から2文字である「MEVA」「メバ」の文字及び「メバ」の音を共通にし、「STAN」「スタン」と「LOTIN」「ロチン」の差異を有するものである。そして、該差異中「S」「ス」と「LO」「ロ」の文字及び「ス」と「ロ」音がそれぞれの文字構成及び音構成上中間に位置すること及び「TAN」「タン」及び「TIN」「チン」の文字が医薬品の接尾語として多く使用されていることから、両商標は、「MEVA」「メバ」の2文字及び「メバ」の音部分が取引者及び需要者の注意を引く特徴的な部分といえる。
そうとすれば、本件商標は、請求人が商品「高脂血症治療剤」に使用する著名な商標である引用A商標ないし引用D商標と「MEVA」「メバ」の2文字及び「メバ」の音部分を共通にする外観上及び称呼上近似したものということができるから、これをその指定商品である「薬剤」について使用をするときには、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の業務に係る商品であるかの如く誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれのあるものといわなければならない。
なお、被請求人は、請求人の業務に係る商品「高脂血症治療剤」と被請求人の業務に係る商品「高脂血症治療剤」とが、今まで一度も取り違えられると等の問題は生じていない旨主張する。
しかしながら、本件商標と引用A商標ないし引用D商標が出所の混同を生ずるおそれがあるものであること前記の通りであり、被請求人が本件商標を使用する「高脂血症治療剤」は、請求人が所有していた「高脂血症治療剤」についての特許権が2002年10月に満了した以降に発売(2003年3月製造承認、2003年7月発売開始 乙第20号証)されたいわゆる後発医薬品(ジェネリック医薬品)であり、同一の効果、用途を有するものであり、ジェネリック医薬品の銘柄名が類似することが多く、誤処方、誤調剤を誘発するおそれがあるとの医師の見解も発表されている(甲第40号証)。
以上から、この点についての被請求人の主張は採用できない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同15号に違反して登録されたものあるから、商標法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)引用C商標(登録第2448922号商標)
色彩の詳細については原本を参照されたい。


別掲(2) 引用D商標(登録第2448923号商標)


審理終結日 2005-02-18 
結審通知日 2005-02-24 
審決日 2005-03-09 
出願番号 商願2001-30271(T2001-30271) 
審決分類 T 1 11・ 272- Z (Z05)
T 1 11・ 262- Z (Z05)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 岩崎 良子
小林 薫
登録日 2002-03-22 
登録番号 商標登録第4553203号(T4553203) 
商標の称呼 メバスタン 
代理人 水野 勝文 
代理人 岡野 光男 
代理人 浅村 肇 
代理人 宇佐美 利二 
代理人 岸田 正行 
代理人 浅村 皓 

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