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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 一部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y
管理番号 1137862 
審判番号 無効2005-89006 
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-01-25 
確定日 2006-05-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4749122号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4749122号の指定商品中「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4749122号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成15年4月15日に登録出願、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布」を指定商品として、同16年2月20日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、「つや出し剤,靴クリーム,靴墨,せっけん類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布」についての登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第3条第1項第6号について
本件商標は、皮革業界において国際的に著名な商標として知られた(甲第3号証の1及び2)皮革製品のシンボルマークである。例えば、国際タンナーズ協会(International Council of Tanners)(甲第3号証)が、およそ80年以上にわたって使用してきたものであり、世界各国の皮革協会等に使用を許可し、その結果、皮革業界において通称「レザーマーク」として、今日、世界中の需要者に認識されている。日本国においては、社団法人日本タンナーズ協会(以下「日本タンナーズ協会」という。)が、国際タンナーズ協会(International Council of Tanners)より使用許可を受け、本件商標と同一の商標が、商標登録第2560779号、第18類「皮革(革ひもを除く)」において商標登録(甲第4号証の1)されていることからも周知のところである。
また、レザーマークは、イタリアにおいて革を図案化して創作(80年前)された独創的図形商標であり、決して輪郭等として普通に用いられる三角形や四角形のように容易かつ平易に描けるものではなく、個人の創作性ある表現物である。
よって、本件商標は、特異なものであって、創作性ある表現物からなる商標ではあるが、もはや皮革業界において国際的にも、国内においても、慣用的に使用されているとは断定的に言えないまでも、著名及び周知なものであって需要者及び取引者間の認識度は高く、自他識別能力を失っており、需要者が何人の営業に係る商品及び役務であるかを認識できない。
そのため、本件商標は、皮革をよい状態に保つための商品である「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」の業界においても需要者の認識度が大変高い商標であるということができるから、本件商標を「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」に使用しても、需要者が何人の営業に係る商品であるかを認識することができない商標である。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、日本国においても、日本タンナーズ協会の使用許可を受け、例えば、全国皮革服装協同組合(甲第4号証の3)、日本服装ベルト工業連合会、日本ハンドバック協会、社団法人日本鞄協会、日本手袋工業組合が、品質表示マークとして使用している。
このように、国際的にも国内においても皮革の業界で世界共通のシンボルマークとして称されている「レザーマーク」とほぼ同一の図形からなる本件商標を、皮革をよい状態に保つための商品である「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」に一私人が商標登録をし、独占的に使用することは、適当ではなく、商取引における秩序を乱すおそれがある。
(3)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、皮革をよい状態に保つための商品である「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」の業界においても需要者の認識度が大変高い商標であるということができる。
よって、本件商標を、皮革をよい状態に保つための商品である「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」以外の商品(皮革に関連する商品でない商品)に使用する場合、需要者に商品の品質の誤認を生じさせるから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(4)答弁に対する弁駁
(ア)請求人は、株式会社花田の関連会社として、平成8年12月頃から英国RENAPUR社と協力し、日本の全国各地を行脚し販売活動を行い、平成10年1月より、英国RENAPUR社より、日本国において独占販売許諾を受け「図形(レザーマーク)Renapur」の商標の付された英国RENAPUR社製レザー(皮革製品)用トリートメントの輸入販売を開始し自社販売及び取引会社、販売店等に商品を卸し現在まで販売を行っている(甲第5号証)。
上記商品の売上個数は、平成17年1月25日現在で160万個を超えている。平成8年12月頃から、全国各地を行脚し、展示ブースを設けて販売活動を行い(甲第6号証の1及び2)、また、全国放送のテレビショップにおいても販売を行い、その放映回数は、平成16年12月31日現在で70000回を超え、販売個数は70万個を超えている(甲第7号証)。
そして、平成15年11月22日から同30日にかけて全国紙である読売新聞、朝日新聞、毎日新聞で連日の新聞広告を大々的に行っている(甲第8号証)。加えて、インターネットサイト販売も行っており、例えばインターネットのサーチエンジンであるヤフー(http://www.yahoo.co.jp)を使用し「ラナパー」と入力するだけで、容易にインターネット販売サイトに行きつくことができ、商品を購入することができる(甲第9号証)。また、正規販売会社は、日本全国数百社にのぼり、売上販売個数160万個超を支える源泉となっている(甲第10号証)。
皮革をよい状態に保つための商品は、社会通念上、皮革と主従関係にある。よって、これらの製品を購入する需要者等は、皮革を所有している人、購入を考えている人等に限られてくる。そのためこの業界の市場は、それほど大きいものではない。また、皮革は、それほど安価なものではない。そのため皮革を利用する人は、皮革をよい状態に保つための商品を商標だけでなくその用途及び効能、若しくは、販売元や製造元等を入念に識別し購入することが推測される。その点で、悪品であると需要者及び取引者に判断されれば、売上を積み上げることができない非常にシビアな業界でもある。
よって、この請求人の売上数は、請求人の多大な努力の賜物であり、この売上数が、「図形(レザーマーク)Renapur」の商標に対する需要者及び取引者の信用を得ている裏づけになる。
ところで被請求人は、「後発商品である・・・『ラナパー』との間で混同される事態が生じた。特に平成14年から平成15年頃にかけて、レザーマークを使用した第三者の後発商品に関する質問や苦情が頻繁に被請求人等に寄せられる時期があり・・。」と主張するが、平成8年〜平成14年及び平成15年迄には、請求人の上記商品は、毎年コンスタントに売上を上げており、およそ100万個を売上している。加えて前述の通り請求人の商品売上販売個数は、今日までに160万個を超えており、もし、そのような状態が生じていれば、このような膨大な売上を残すことはできない(甲第11号証の1及び2)。
よって、混同を生じているとは考えられず被請求人の主張は、到底認めることはできない。
また、請求人が、商品のパッケージに使用している「図形(レザーマーク)」は、英国RENAPUR社が、イギリス国において商標権を取得し、請求人が日本国において独占的に使用することを認められたものである(甲第12号証)。
(イ)本件商標が、皮革業界において、国際的にも日本国内においても著名及び周知な商標であって、いわゆる皮革の世界共通のシンボルマークとも称される「レザーマーク」とほぼ同一であるにも関わらず、一個人において商標権を独占的に所有していることに対して無効を請求するものである。
本件商標は、例えば国際タンナーズ協会が、およそ80年以上にわたって使用してきたものであり、世界各国の皮革協会等に使用を許可し、その結果、皮革の業界において通称「レザーマーク」として、日本国内のみならず世界中の皮革の需要者及び取引者に認識されているものである。
(ウ)被請求人は、兵庫県姫路市八代723番地所在の株式会社ユニタスジャパン(以下「ユニタスジャパン」という。)及びユニタスファーイースト株式会社(以下「ユニタスファーイースト」という。)の代表者である。
被請求人は、レザーマークを含むものとして、「図形(レザーマーク)レザーマスター\Leather Master」よりなり、第3類「せっけん類」を指定商品とする登録第3103684号商標(甲第13号証)、「図形(レザーマーク)Leather\CARE\Developed by Dr.TORK」よりなり、第3類「せっけん類,つや出し剤,香料類,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨」及び第37類「革製品の手入れ・修理」を指定商品及び指定役務とする登録第4614306号商標(甲第14号証)、「図形(レザーマーク)」よりなり、第3類「・・・靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布」を指定商品とする登録第4749122号商標(甲第15号証)を有しているほか、「図形(レザーマーク)レザーマスター\Leather Master」よりなり、第3類、第4類及び第37類を指定商品及び指定役務とする商願2004-116101を商標登録出願している(甲第16証)。
(エ)本件商標は、前述のとおり平成15年(2003年)4月15日に出願を行い、平成16年(2004年)2月20日に登録となったものであるが、いわゆる皮革製品の世界共通のシンボルマークと呼ばれる「レザーマーク」は、本件商標の登録査定日(平成15年(2003年)4月15日)には、皮革の業界においてはもはや国際的に著名な商標であって、需要者及び取引者に認識され、ほぼ同一の商標(登録第2560779号、第18類「皮革(革ひもを除く)」)が日本タンナーズ協会において登録されているにもかかわらず、上記商標とほぼ同一の商標でありながら登録査定となった明らかに瑕疵ある商標である。
また、被請求人は、「今まで約17年間継続使用してきたものであり、遅くとも平成10年頃には業界において被請求人等の業務に係る商品を表示するものとして一定の周知性を獲得している自他商品識別標識である。」旨主張しているが、本件商標である図形(レザーマーク)のみで使用されているものは提出されていない。提出書類の中で使用されている商標は、「図形(レザーマーク)レザーマスター\Leather Master」の結合商標である。
(オ)また、被請求人は、「17年間にわたり業界において淘汰されることなく平穏無事に使用されてきたもの・・・。」と主張するが、提出の書類の多くが地方限定(被請求人が代表を勤める会社の地域等)での広告記事であり、加えて売上数等客観的な証拠書類はなんら提出されておらず決して本件商標が、被請求人のものとして自他識別力を有していることの客観的な証拠物となり得ず到底認めることはできない。
なにより使用することと、登録査定を受け商標権を有することには大きな差異がある。登録になり権利が付与されれば、専用権及び禁止権の範疇で同一及び類似商標を使用する他者を排除することができる。
その一例として、被請求人は、図形(レザーマーク)及び図形(レザーマーク)を含む商標を使用する他者に対して警告を行っている。請求人の販売元にも平成16年6月17日付けにて警告文(甲第17証)が届き、その対応のため販売の一時停止や、商品輸入の延期等多くの機会費用を失い、多大なる損害をこうむったことがあった。
よって、被請求人が、本件商標が、皮革業界で国内のみならず国際的にも世界共通のシンボルマークとされている図形(レザーマーク)を一個人にも関わらず商標権として独占をし、権利を行使することは、社会公共に反し、社会秩序に著しい弊害を招き、そのことを請求人も認識しているものと確信する。
(4)以上により、本件商標は、商標法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するから、商標法第46条第1項第1号により、一部無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第32号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)被請求人及び被請求人の事業活動等について
(ア)被請求人中島勇は、皮革用クリーナーやつや出し剤等の皮革メンテナンス用商品を取り扱うユニタスジャパン及びユニタスファーイーストの代表者である。被請求人は、本来の家業は皮革製造業であるが、以下に述べる経緯を経て皮革メンテナンス用商品の販売並びに皮革のメンテナンスを行う上記2社を設立し、現在に至るものである。
被請求人は、昭和50年(1975年)に西ドイツ(当時)の西ドイツ皮革専門短期大学(West Deutsche Gerber Schule)を卒業し、西ドイツ公認の皮革技師となった(乙第1号証)。同年ゲルバーマイスター(Gerber Meister、製革職人)の資格を取得し、昭和51年に帰国した。
帰国後、被請求人は家業である皮革製造を承継し、バッグ、かばん、靴、ジャケット等の皮革製品を製造するメーカーに製品材料としての皮革を販売していた。当時の皮革業界には、製品材料としての皮革そのものに全く瑕疵が無いとしても、皮革製品を購入した一般消費者の誤った手入れや手入れ不足等により生じた製品の不具合(例えば、シミや汚れの付着に対して誤った処理を行ったことによる革の変色や、日常の手入れ不足による革のひび割れ等)を、製品材料としての皮革を販売した皮革製造業者が保証しなければならないという実情があった。事実、被請求人が丹精込めて鞣した革が最終需要者の誤った手入れ等により欠陥品という烙印を押され、皮革製品の商品代金について、被請求人がその弁償を求められたことが一度ならずあった。
皮革は自然素材であるので、適切な手入れを行わなければ、変質、変色、劣化が進み、その商品価値が損なわれるおそれがある。このことは、現在では周知の事実であるが、被請求人が家業を継いだ昭和51年頃は、天然皮革の適切な手入れ方法について、一般消費者の間において広く認知されていたとはいい難い状況であった。このような状況は、例えば、昭和62年3月20日に日本タンナーズ協会が発行した「日本タンナーズ協会報第107号」の71頁ないし76頁の「消費者からの便り」の欄に掲載される一般消費者が請求人に宛てた手紙に、「・・・59年冬に革ジャンを購入しましたが、手入れができずパーにしてしまいました。販売店の店員に手入れの方法を伺いましたが、それなりの返答は得られませんでした。」、「・・・革製品の手入れ方法がよく分からないので、入手するさいにメンテナンスの方法を書いたパンフレット等がほしい。」、「・・・本革の取扱方及びオフシーズンの保管方法や修理方法、更に本革のすぐれている点を、色々な広告媒体を使ってお知らせいただければ幸いです。」、「革製品の手入れの仕方などを、もっとPRしてほしい。」などと記載されていることから(乙第2号証)、現実であったことを容易に推測できる。
このような状況の中、昭和62年に、被請求人の西ドイツ皮革専門短期大学在学時の先輩であるゴーディアン・トーク(Gordian Tork)氏より、同氏の父親が開発した皮革メンテナンス用商品に関する情報を得て、当該商品の製造工場及びその製造・販売元であるイタリア法人ユニタスS.p.A(乙第3号証)のあるイタリアを訪れる機会を得る。被請求人はユニタスS.p.Aの商品が皮革のメンテナンスに適切な品質を保持するものであり、同社の革製品に関するメンテナンス方法の教授プログラムが我が国の皮革製品の取引者・需要者に対して皮革のメンテナンス方法を広めるために適した内容であることを確信して、昭和63年よりユニタスS.p.Aの商品を我が国に輸入し、その販売を開始した(乙第4号証の1ないし6)。被請求人及びユニタスジャパン又はユニタスファーイースト(以下、これら三者をまとめて「被請求人等」という。)がユニタスS.p.Aから輸入して我が国で販売している商品(以下「ユニタス商品」という。)には、本件商標が表示されている(乙第5号証)。
その後、被請求人はユニタスS.p.Aの代表者であるゴーディアン・トーク氏らと共に、我が国においてユニタス商品を独占的に取り扱う会社として株式会社レザーマスタージャパン(以下「レザーマスタージャパン」という。)を平成2年11月に設立した(乙第6号証の1及び2)。
レザーマスタージャパンは、平成4年6月1日にユニタスジャパンに名称変更し、現在に至る。
(イ)被請求人は、ユニタス商品を、昭和63年から平成2年まではユニタスS.p.Aより個人輸入して我が国の取引者・需要者に紹介し(当時、被請求人は実際の営業に「レザーマスタージャパン」という屋号を使用していた。)、平成2年以降は、ユニタスジャパン(当初はレザーマスタージャパン)を通じてユニタス商品を輸入し、現在までその輸入販売を継続して行っている。
また、被請求人等は、ユニタス商品の宣伝広告を相当の費用をかけて積極的に行い、全国紙である「毎日新聞」や、近畿圏で広く購読されている「神戸新聞」に定期的に広告を出稿しており(乙第7号証の1ないし72)、雑誌「モノ・マガジン」、雑誌「プラスワン」、雑誌「プラスワンリビング」、雑誌「GoodsPress」、雑誌「FineBoys」、雑誌「SPY」、雑誌「KAUZO!」等の雑誌にも継続的に商品広告を出稿している(乙第8号証ないし乙第14号証(枝番を含む。))。皮革製品のメンテナンス方法を解説する雑誌記事等の出稿依頼にも積極的に応じ、適切な皮革製品のメンテナンス方法及びユニタス商品の使用方法を紹介した雑誌記事も存在している(乙第15号証及び乙第16号証)。
テレビによる皮革製品のメンテナンス方法の解説並びにユニタス商品の使用方法の説明も定期的に行っている(乙第17号証の1及び2)。
さらに、被請求人は毎年11月末項に東京ビッグサイトで開催される国際家具見本市に、平成3年以降毎年ユニタス商品を出品し(乙第18号証)、家具業界におけるユニタス商品の認知度の向上に努めている。
(ウ)ユニタス商品は、皮革に付着した汚れを除くクリーナー、汚れの付着を防ぐ表面保護剤、保湿剤等の、皮革の性質に応じて適切なメンテナンスを行うことができる多種多様な商品を取りそろえ、併せて、それら商品を用いた皮革メンテナンス方法を詳細に説明したマニュアルを作成し、商品と共に頒布するという点で従来の靴墨やワックス等とは異なっていた。
被請求人等による皮革製品の適切なメンテナンス方法に関する情報の発信や、ユニタス商品の積極的な宣伝広告により、皮革製品のメンテナンス方法に関する正しい知識が皮革製品の取引者・需要者の間に徐々に広まり、併せて、ユニタス商品のすぐれた効果効能が認められ、ユニタス商品は被請求人等の取り扱う商品として業界において広く知られるようになった。
現在、著名なハンドバック専門店を全国で店舗展開している株式会社キタムラ(神奈川県横浜市中区元町4-178、乙第19号証)が自社の皮革製品のメンテナンスにユニタス商品を使用しており、家具製造販売会社であるカリモク家具販売会社(愛知県知多郡東浦町藤江、乙第20号証)等の有名家具店において皮革製品メンテナンス用の推奨商品として取り扱われ、販売されている。また、ユニタス商品は平成13年より日本航空株式会社(JAL)の皮革製シート「JAL NEW SKYSLEEPER SOLO」のメンテナンスに使用されており(乙第21号証の1)、被請求人等は同社の皮革製シートのメンテナンス業務用のマニュアルを作成し(乙第21号証の2)、メンテナンス方法の指導を行っている。さらに、我が国政府専用機の皮革製シートのメンテナンスにもユニタス商品が使用されており、そのメンテナンスは被請求人等が作成したマニュアルに基づいて行われている。
被請求人等は相当の費用をかけて、ユニタス商品のリーフレットや販促用の紙製商品台等の販促物(乙第22号証の1ないし5)を作成し、ユニタス商品を取り扱う上記の各店舗等に無償で頒布している。その結果、ユニタス商品の品質及び被請求人等が提供する皮革製品のメンテナンスプログラムは、家具専門店においても高い評価を得るようになり、ユニタス商品は皮革製家具を取り扱う家具専門店に広く浸透し、そのチラシに家具と併せて商品が掲載されるようにもなった(乙第23号証の1及び2)。
また、被請求人は、適切な皮革メンテナンス方法を広く世間に知ってもらうための活動を精力的に行っている。例えば、平成10年11月17日には、大阪府立産業技術総合研究所皮革試験所主催の情報交換会において「ヌバック、アリニン革の手入れ方法及び予防メンテナンス」を内容とする発表を行った(乙第24号証)。
(エ)上述のとおり、被請求人がユニタス商品の販売を我が国で始めた当初、皮革の性状に個別に適合した皮革メンテナンス用商品は殆ど存在していなかった。その後の被請求人等の努力によりユニタス商品が皮革業界及び皮革製品業界で広く知られるようになるにつれ、ユニタス商品と同様の商品が第三者により発売されるようになった。そのような商品の中には、ユニタス商品と混同される商品が少なからず存在していた。被請求人はユニタス商品と混同された商品に関する問い合わせや質問を受けることが多くなったので、ユニタス商品に関する商標の商標登録出願の必要性を認識し、ユニタスS.p.Aの許諾のもとに、登録第3103684号(乙第25号証の1)、 登録第4047852号(乙第25号証の2)、登録第4614306号(乙第25号証の3)の各商標を商標登録した。
被請求人が販売するユニタス商品は、イタリアのユニタスS.p.Aが使用するパッケージデザインをそのまま採用しており、その構成中にはレザーマーク(本件商標と同様の外観をなす図形商標をいう。以下同じ)が自他商品識別標識と認識される態様で表示されている。ユニタス商品が、積極的な宣伝広告によって我が国取引者・需要者間において一定の周知性を獲得することに伴い、レザーマークは被請求人等の業務に係る商品を表示するものとして我が国で認知されるようになった。そして、第三者が販売する皮革用ワックス等であって、レザーマークを使用した後発商品、例えば「レザーパワー」(乙第26号証)や、株式会社花田及びその関連会社である請求人が販売する「ラナパー」(乙第27号証、以下「請求人商品」という。)との間で混同される事態が生じた。特に、平成14年から平成15年頃にかけて、レザーマークを使用した第三者の後発商品に関する質問や苦情が頻繁に被請求人等に寄せられる時期があり、その質問や苦情の内容より、取引者又は需要者がユニタス商品とレザーマークが付された第三者の後発商品を明らかに誤認混同していると感じられることが度々あった。なお、上記商品「レザーパワー」については、被請求人がその販売元に対して、レザーマークの使用中止を申し入れたことにより、現在では、商品にレザーマークを表示していない(乙第28号証)。
以上のように、被請求人等によるユニタス商品の長年にわたる販売及び積極的な宣伝広告により、レザーマークは、皮革メンテナンス用商品について被請求人又は被請求人が代表者を務める会社の業務に係る商標として一定の認知を得ており、第三者がレザーマークを使用した商品を皮革メンテナンス用商品に使用した場合、取引者や需要者が当該商品を被請求人等の業務に係る商品と混同するような状況が生じていた。被請求人は、このような状況を看過することはできず、また、レザーマークが皮革メンテナンス用商品について無秩序に使用された場合には、当該商品が取引される業界のみならず、皮革業界及び皮革製品業界においても混乱が生じること必至であると考えたので、平成15年4月15日に本件商標を出願した。
(オ)上記(ア)で述べたとおり、被請求人はユニタスS.p.Aの代表者であるゴーディアン・トーク氏らと共に、レザーマスタージャパン(現ユニタスジャパン)を設立し(乙第6号証の1及び2)、次いでユニタスファーイーストを設立した。被請求人が代表者を務める上記2社は、ユニタスS.p.Aが製造する皮革等のメンテナンス用商品を世界各国において販売している企業グループである「Multimaster Uniters Group(マルチマスターユニタスグループ)」の一員である。該企業グループは英国タンナーズ協会(British Leather Confederation BLC)の「Non-Tanners Member」である(乙第29号証)。ユニタスS.p.Aは該企業グループの中核企業であり、ユニタスジャパン及びユニタスファーイーストは、ユニタスS.p.Aより、日本、韓国、台湾においてユニタス商品を独占的に販売する権利を許諾されている。
(2)本件商標が広く知られていること
上記(1)(イ)で述べたとおり、被請求人はユニタス商品の取扱を開始した当時から、相当の費用を投じてユニタス商品の宣伝広告活動及び皮革メンテナンス方法を広く知ってもらうための活動を積極的に行い、被請求人等は、多種多様な新聞や雑誌等の宣伝広告媒体にユニタス商品の広告を出稿していた(乙第7号証ないし乙第16号証、乙第22号証)。また、被請求人自身がテレビに出演して皮革の適切なメンテナンス方法を解説し、ユニタス商品の使用法を説明するなどした(乙第17号証)。さらに、被請求人はユニタス商品を国際的な家具見本市に毎年出展している(乙第18号証)。皮革に関する講演会やセミナー等において皮革のメンテナンス方法等について積極的に発言し、皮革及び皮革製品の適切なメンテナンス方法を業界に広く知ってもらうための努力も続けてきた(乙第24号証)。
その結果、ユニタス商品は、全国の高級ブランド店、有名家具店、宿泊施設において使用され、全国展開する有名小売店において取り扱われるようになった(乙第19号証、乙第20号証及び乙第23号証)。さらに、そのメンテナンスプログラム並びに商品の品質の高さが評価され、日本航空株式会社の最高級シートのメンテナンス(乙第21号証)及び我が国の政府専用航空機の皮革製品のメンテナンスにも使用されるようになった。
かかる事実より、本件商標並びにユニタス商品に使用される商標は、被請求人等の業務に係る商品を表示するものとして、業界において広く知られるようになったということは明らかである。
(3)請求人、請求人の出願商標及び請求人商品について
(ア)請求人である株式会社ラナパー・ジャパンは、東京都足立区青井2-1-11所在の株式会社花田の関連会社であり、請求人商品を販売している。
(イ)請求人は、レザーマークと欧文字「Renapur」を結合した商標(商願2003-115069、以下「請求人商標」という。)を平成15年12月25日に商標登録出願している(乙第30号証の1)。請求人商標の構成中のレザーマークと欧文字「Renapur」は、明らかに分離観察される態様で表示されるものであり、該レザーマークは本件商標とほぼ同一の態様からなるものである。
ここで特筆すべきは、請求人商標はその構成中に、被請求人の業務に係る商品を表示するものとして広く知られている本件商標とほぼ同一の態様をなす図形(レザーマーク)を含むものであり、商標法第4条第1項第7号及び商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由通知を経て、本件商標及び被請求人が所有する登録商標等と類似するので商標法第4条第1項第11号に該当するという理由で拒絶査定を受けていること、及び、請求人商品の現在の指定商品が必ずしも皮革用の商品に限定されていないことである。
(ウ)乙第27号証から明らかなとおり、請求人商品には、本件商標と同様の態様をなす図形(レザーマーク)が大きく表示されている。
請求人商品の取扱説明書等(乙第31号証の1ないし3)によれば、請求人商品は皮革製品のみならず、エナメル製品、白いスニーカー、白木の家具、金属製品、オートバイ用ヘルメット、釣り竿、釣り用リール、ボートの金属・木・プラスチック部分、ボーリング用ボール、卓球ラケットのラバー部分、ビニール製のスポーツシューズ、キャンパス地のテント、スキー板の金具部分等に使用することができると明記されている。
なお、請求人は、本件商標とほぼ同一の態様をなす図形(レザーマーク)を、取引の現場や宣伝広告の際に需要者や取引者の目にとまる請求人商品の表装には大きく表示しているが、前記取扱説明書等(請求人商品の購入者や請求人商品をよほど詳しく見る者しか接することがない。)には、「Renpur」の文字のみを表示し、当該図形を表示していない。かかる事実より、請求人がレザーマークを自他商品識別標識として機能することを十分に理解した上で、敢えてこれを請求人商品の表装のみに表示していることが窺える。
(4)請求の理由に対する反論
請求人は、本件商標について、識別力がない、商取引の秩序を乱す、さらには商品の品質を誤認すると主張する一方で、本件商標とほぼ同一の図形をその構成中に含む請求人商標につき、請求人の商標として周知であると主張している。
このような請求人の主張は、そもそも自己矛盾しているものであり、しかも、本件商標の無効理由を客観的に明らかにするものでもないので、決して認容されるべきではない。
(ア)商標法第3条第1項第6号について
商標法第3条第1項第6号に該当する商標としては、例えば、地模様のみからなるもの、標語、商慣習上商品の数量等を表示するものと認められているもの、現元号である「平成」の文字、特定の役務について多数使用されている店名、商品の形状に過ぎないものと認められる立体形状等がある。
ところで、請求人は本件商標について、「国際的に著名な商標と同一であるから、需要者が何人の業務に係る商品であるかを認識することができないので商標法第3条第1項第6号に該当する。」との旨を述べる。
かかる請求人の主張の意図は全く不明であり、また、そもそも「国際的に著名」であることについての具体的且つ客観的な主張はなく、証拠も提出されていない。
また、本件商標は、被請求人等が自己の業務に係る商品について約17年間継続して使用してきたものであり、遅くとも平成10年頃には業界において被請求人等の業務に係る商品を表示するものとして一定の周知性を獲得している自他商品識別標識である。そうでなければ、被請求人等に対して、請求人商品についての質問がよせられることなどないはずである。
以上を要するに、本件商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとの請求人の主張内容は全く失当であり、事実関係を著しく誤認しているか、法令の解釈を誤っていると言わざるを得ない。
そして、本件商標は現実の業界において被請求人等の業務に係る商品を表示する自他商品識別標識であると認識されているものである。
従って、本件商標は商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。
(イ)商標法第4条第1項第7号について
「商標審査基準〔改訂第7版〕」(商標課編)の「第3 五、1.及び同2.」によれば、本号に該当する商標の例として、その構成自体が矯激、卑狼、差別的若しくは他人に不快な印象を与える図形や、その商標の使用が社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するような場合も含まれる旨が記載されている。また、他の法律によって使用が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標も本号に該当するとのことである。
そこで、本件商標の本号の該当性について検討するに、本件商標は、その構成自体が矯激、卑狼、差別的若しくは他人に不快な印象を与える図形に該当するものではなく、17年間にわたり業界において淘汰されることなく平穏無事に使用されてきたものであって、その間、全国皮革服装協同組合、日本服装ベルト工業連合会、日本ハンドバック協会又は日本手袋協同組合若しくはその構成員等との関係においても極めて平穏に、且つ商取引における秩序を乱すことなく使用してきた。そして、前記組合の構成員から皮革製品の手入れ方法やユニタス商品の使用方法についての問い合わせこそあれ、本件商標の使用についての問題が前記団体やその構成員から提起されたことは一度もない。
世界的にも、ユニタスS.p.Aを中心とするMultimaster Uniters Groupを構成する各国のグループ企業が平穏に使用してきているものであるから、本件商標の使用が社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するものでないことも明らかである。
また、本件商標は、他の法律によって使用が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標にも該当しない。
さらに、本件商標と同ー又は類似若しくは本件商標の構成と極めて近い構成からなる図形をその構成中に含む多数の商標が、日本国民のみならず外国人によって出願・登録されていることより(乙第32号証の1ないし17)、本件商標が国際信義に反するものでないことは特許庁においても顕著な事実であると思慮する。
かくの如く、本件商標は被請求人等によって17年間平穏無事に使用されてきたものであり、皮革メンテナンス用商品については今や被請求人等の商品を表示するものと認知されているものであるから、これが商取引の秩序を乱したり、また、善良の風俗を害するおそれは全くない。
従って、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものでもない。
(ウ)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、17年間の永きにわたりユニタス商品について現実に使用されているものであり、本件商標の登録査定の時点において、被請求人等の商品を表示するものとして業界で認識されていたものであり、その使用開始以来現在まで、本件商標が商品の品質につき誤認を生じさせた事実は一度もなく、そのような苦情を受けたこともない。
ところで請求人は、本件商標は皮革業界において国際的に著名な商標であり、皮革業界におけるシンボルマークと認識されている旨を主張する。被請求人はこの主張につき争うつもりは毛頭ないが、被請求人の認識としては、「本件商標は皮革メンテナンス用商品が取引される業界において、被請求人等及びMultimaster Uniters Groupの業務に係る商品として国際的に著名」という程度である。
また、そもそも請求人商標の指定商品は「皮革用」に限定されておらず(乙第30号証の4)、請求人自身も皮革以外の素材について請求人商品の用途があることをその取扱説明書等(乙第31号証の1ないし3)に積極的に表示していることより、請求人においても、本件商標が商品の品質を表示するものであるとは捉えていないことは明らかである。
さらに、乙第32号証に挙げる各登録商標の指定商品も「皮革用」の商品に限定されるものではない。
以上のとおり、本件商標は、商品の品質を表示するものではなく、請求人商標の指定商品から、請求人自身も本件商標及びレザーマークが商品の品質につき誤認を生じさせるものではないと認識していることが明らかである。
従って、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。
(5)結論
以上に述べた理由より、本件商標は、商標法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するものではないので、その登録を無効にされるべきではない。

4 当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、周囲に6個の突起部分(上下にそれぞれ1個、左右にそれぞれ2個)を表し、あたかも動物を解体したかの如き様を肉太の輪郭線で表現した図形よりなるものであるところ、甲第4号証の3(日本皮革産業連合会のホームページ)によれば、該図形は、革を図案化し表した、皮革及び皮革製品(以下「皮革製品」という。)が本物であることの証として国際的に使用されている、いわゆるレザーマークと同一の構成よりなるものと認められる。
しかして、請求人の主張及び甲第3号証の1及び2によれば、レザーマークは国際タンナーズ協会(International Council of Tanners)が、およそ80年以上にわたって使用してきたものであり(これを覆すに足りる証拠方法の提出はない。)、諸外国においては、皮革に関する事業者団体等がレザーマークと同一若しくはこれと類似する標章、あるいはレザーマークと文字又は他の図形とを組み合わせた標章等を様々に使用している事実を認めることができる。
一方、我が国においては、甲第4号証の2及び3によれば、兵庫県姫路市豊沢町129に所在する日本タンナーズ協会がレザーマークの図形中に「TCJ」の文字を縦書きし組み合わせた標章をインターネットホームページにおいて使用しているほか、被請求人の提出した乙第2号証によれば、同協会は該標章を既に昭和62年3月20日に発行した「(社)日本タンナーズ協会報第107号」の表題部にも使用をしていたことを認めることができる。
また、甲第4号証の1及び商標登録原簿によれば、日本タンナーズ協会は、レザーマークと同一の図形よりなり、第18類「皮革(革ひもを除く)」を指定商品とする登録第2560779号商標(平成5年7月30日設定登録)の商標権を所有していることが認められるが、同人が加盟する社団法人日本皮革産業連合会に加盟の他の団体、例えば、全国皮革服装協同組合、日本服装ベルト工業連合会、日本ハンドバック協会、社団法人日本鞄協会及び日本手袋工業組合等は、レザーマークと「ALCA」(全国皮革服装協同組合)あるいは「JGIA」(日本手袋工業組合)等の文字若しくはレザーマークと他の図形とを組み合わせた標章を各団体所管の皮革製品の品質を表示する標章として採択し、使用していることを認めることができる。
なお、被請求人の提出した乙第32号証の1ないし14によれば、レザーマークをモチーフしたとみられる図形をその構成中に有する登録商標が皮革製品等を指定商品として種々登録されている事実も認められる。
(2)商標法第3条第1項第6号について
上記によれば、皮革製品の分野では、本件商標の登録査定時(平成16年2月2日)には、レザーマークは、他の文字又は図形と組み合わせてその商品の品質を表示する標章等として広く採択、使用されている実情にあったといい得ることはもとより、皮革製品は比較的高価な商品が多く、また、その手入れの良し悪しがこれら製品の使用、保存の状態に大きく影響するものであるから、これら商品の取引者、需要者は同商品に付されたレザーマークには強い注意を払い取引に当たるということができ、したがって、レザーマークは、同時期には、この種商品の取引分野においてその取引者、需要者間に広く知られたものとなっていたということができる。
しかして、請求に係る指定商品中、「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」は、主として皮革製品の品質保持、手入れを用途として供される商品であり、皮革製品とは極めて密接な関係を有するものであるばかりでなく、その商品の販売店、販売場所等を同じくする場合も多いから、上記実情にあるレザーマークと同一の構成よりなる本件商標を、かかる商品(「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」)について使用しても、これに接する取引者、需要者は、本件商標が皮革製品について広く用いられているレザーマークであるとは認識し得ても、これが当該商品についての自他商品の識別標識であるとまでは認識し得ないというのが相当であり、したがって、本件商標は、「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」の分野においては、該図形単独では識別標識として機能し得ず、これに他の文字あるいは図形等を結合させた標章とすることにより、初めて自他商品を識別することが可能になるというべきである。
そして、本件商標は、以下(3)(ア)で述べるとおり、使用の結果、自他商品の識別力を獲得した等の特段の事情も認められないから、本件商標は、これをその請求に係る指定商品中、「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」について使用しても、これに接する取引者、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識し得ない商標に該当するものといわなければならない。
(3)被請求人の主張
(ア)被請求人は、ユニタス商品(被請求人等がユニタスS.p.Aから輸入して我が国で販売している商品)の宣伝広告活動、テレビでのユニタス商品の説明、ユニタス商品の国際的な家具見本市への出店等の活動を積極的に行っており、本件商標は、遅くとも平成10年頃には業界において被請求人等の業務に係る商品を表示するものとして一定の周知性を獲得していると主張している。
しかしながら、被請求人の提出した乙第5号証、乙第7号証ないし乙第17号証、乙第22号証及び乙第23号証(枝番号を含む。)によれば、被請求人は、ユニタス商品について本件商標を使用していることは認められるが、その使用方法は、一部には本件商標と被請求人の旧商号(「(株)レザーマスタージャパン」又は「Leather MASTER JAPAN」)とを組み合わせた使用例も見受けられるが、そのほとんどは(特に、ユニタス商品に直接付されているものは全てにおいて)、本件商標と「Leather MASTER」(二段書き)の文字とを組み合わせて使用しているものであるから、本件商標が上記(2)のとおり、該図形単独では自他商品の識別標識として機能し得ないレザーマークと認められる以上、同商品の出所識別機能は専ら本件商標と結合して使用されている他の文字部分(特に「Leather MASTER」)が果たしているものといわなければならない。
そうすると、かかる使用をもって、直ちに本件商標がその使用に係る商品について被請求人の使用する商標として、取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたものと認めることはできない。
(イ)被請求人は、商標法第3条第1項第6号に該当する商標としては、例えば、地模様のみからなるもの、標語、商慣習上商品の数量等を表示するものと認められているもの、現元号である「平成」の文字、特定の役務について多数使用されている店名、商品の立体的形状等が該当するものであり、本件商標は同条項には該当するものでないと主張している。
ところで、知財高裁が、平成18年3月9日にした判決、平成17年(行ケ)10651号によれば、「商標法3条は,・・・。このような商標法3条の規定の仕方及び内容にかんがみると,同条1項は,登録出願された商標が,『需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標』,すなわち,自他商品識別力を有していない商標である場合には,商標登録を受けることができないものとしているのであり,同項1号から5号までの規定は,当該商標の構成自体から『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない』と認められる典型的な商標を例示的に列挙するとともに,同項6号において,同項1号から5号まで例示的に列挙された商標以外の『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標』,すなわち,自他商品識別力を有していない商標を総括的,概括的に規定し,なお,取引の実情により自他商品識別力を取得していることが証明されれば,同項に当たらないとして登録を受けることができ,また,同項3号から5号までに該当する商標について,使用により識別力を取得した場合には,同条2項により,登録を受けることができることにしているものと解するのが相当である。
したがって,同項6号にいう『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標』としては,構成自体が商標としての体をなしていないなど,そもそも自他商品識別力を持ち得ないもののほか,同項1号から5号までには該当しないが,一応,その構成自体から自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないと推定されるもの,及び,その構成自体から自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものと推定はされないが,取引の実情を考慮すると,自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものがあるということができる。」と判断されている。
これを本件についてみるに、本件商標は、その構成自体から自他商品の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものとはいえないとしても、その請求に係る指定商品中、「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」の商品分野においては、これが皮革製品についてその品質を表示する標章等として広く採択、使用されているレザーマークとして認識されるものであること上記(2)のとおりであるから、かかる取引界の実情を考慮すると、本件商標は上記商品(「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」)との関係においては自他商品の識別標識として機能し得ないものといわざるを得ず、結局、本件商標は、これを請求に係る指定商品中「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」について使用するも、これに接する者が何人の業務に係る商品であるかを認識し得ない商標といわなければならない。
(ウ)したがって、上記(ア)(イ)に関わる被請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(4)請求人のその他の主張(商標法第4条第1項第7号及び同第16号の該当性について)
請求人は、本件商標は、「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」に一私人が商標登録をし、独占的に使用することは、適当ではなく、商取引における秩序を乱すおそれがあり、また、これを皮革をよい状態に保つための商品である「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」以外の商品(皮革に関連する商品でない商品)に使用する場合、商品の品質の誤認を生じさせる旨、主張している。
しかしながら、本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字又は図形からなるものではなく、また、本件商標を指定商品について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念・国際信義に反するものとすべき事実は認められず、他の法律によってその使用が禁止されているものと認めることもできない。
さらに、本件商標は、これがレザーマークであると認識されるとしても、これを請求に係る指定商品中、皮革に関連する商品でない商品「せっけん類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石」について使用しても、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものである。
(5)以上のとおりであるから、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品中、「つや出し剤,つや出し布,つや出し紙,靴クリーム,靴墨」については、商標法第3条第1項第6号に違反してされたものといわざるを得ず、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とする。
しかしながら、請求に係る上記以外の「せっけん類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石」の指定商品についての登録は、商標法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第7号及び同第16号に違反してされたものではないから、上記に関する請求は成り立たない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲


別掲
本件商標


審理終結日 2006-02-21 
結審通知日 2006-02-24 
審決日 2006-04-05 
出願番号 商願2003-30310(T2003-30310) 
審決分類 T 1 12・ 16- ZC (Y)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 佐藤 久美枝 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 岩崎 良子
小川 有三
登録日 2004-02-20 
登録番号 商標登録第4749122号(T4749122) 
代理人 角田 嘉宏 
代理人 中村 政美 

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