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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない Y09 審判 全部無効 観念類似 無効としない Y09 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y09 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y09 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない Y09 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y09 |
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管理番号 | 1136328 |
審判番号 | 無効2005-89020 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-06-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-02-16 |
確定日 | 2006-04-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4686511号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4686511号商標(以下、「本件商標」という。)は、「King of Projectors」の文字を横書きにしてなり、平成14年10月25日に登録出願、第9類「耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。),アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,計算尺,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」を指定商品として、平成15年6月27日に設定登録されたものである。 2 引用商標 請求人が引用する登録第90624号の1の2商標(以下、「引用1商標」という。)は、「グンキ」の文字を書してなり、大正6年9月28日に登録出願、第18類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、大正7年1月17日に設定登録された登録第90624号商標の分割譲渡に係るものであり、第18類「感光膜、乾板、印画紙、青写真用印画紙、写真薬、その他写真用器械器具及び部分品」を指定商品とするものである。同じく、登録第90625号の1の2商標(以下、「引用2商標」という。)は、「KING」の文字を書してなり、大正6年9月28日に登録出願、第18類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、大正7年1月17日に設定登録された登録第90625号商標の分割譲渡に係るものであり、第18類「感光膜、乾板、印画紙、青写真用印画紙、写真薬、その他写真用器械器具及び部分品」を指定商品とするものである。同じく、登録第2274285号商標(以下、「引用3商標」という。)は、別掲(1)に示したとおりの構成からなり、昭和62年8月20日に登録出願、第10類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として平成2年10月31日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成13年8月8日に第1類「フィルム,乾板,印画紙,青写真用印画紙,現像薬」及び第9類「写真用機械器具及びその部品」とする書換登録がされたものである。同じく、登録第2676638号商標(以下、「引用4商標」という。)は、別掲(2)に示したとおりの構成からなり、平成3年9月4日に登録出願、第10類「感光剤、乾板、印画紙、青写真用印画紙、現像薬、写真機械器具及び部品」を指定商品として平成6年6月29日に設定登録されたものである(なお、その後、指定商品については、平成17年1月26日に第1類「写真材料」及び第9類「写真機械器具」とする書換登録がされている。また、以下、これらを纏めていうときは、「引用商標」という。 3 請求人の主張(要旨) 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第4号証(枝番を含む。)を提出すると共に、当合議体からの周知著名性の証左の提出を求めた審尋に対する回答における証拠方法として甲第3号証ないし同第16号証を提出した(なお、甲第3号証及び同第4号証については、号証番号のみが重複している)。 (1)請求の理由 ア 本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。 (ア)本件商標は、格別な特徴を何等示さない欧文字の「King」、「of」及び「Projectors」を間隔を設けながら横に描いてなる。 当該欧文字は、今日では殆んど日本語化し一般人に日常的に多用されている英単語の「King」、「of」及び「Projectors」だけからなっている。 したがって、本件商標の看者の全ては、これらの文字そのもの、また、構成態様の全体をもって、「プロジェクターの王者」、「プロジェクターの最良品」あるいは「プロジェクターの優秀品」というような意味としてのみ一見しただけで直ちに認識し理解することになる。 すなわち、本件商標は、単に商品の優秀性を示すだけ、換言すれば、商品の有する特性を示しているだけのいわゆる記述的商標にすぎないものであり、商標がその機能として果たすべき、自他商品区別性ないし識別力、あるいは出所表示機能を全く有してはいない。 このような商標(標章)は、通常、本来の商標としての機能を有する厳密な意味での(狭義のと言ってもよい)商標に付記的に使用されるだけのものであるにすぎず、したがって、特定個人の独占対象となってしまっては、商品流通に大なる支障が生じ、結果、経済界の秩序を乱すこととなるため、当然ながら商標法上登録を認められないものと確認的にされているのであることはいうまでもない。ましてや、前述のような、本件商標全体の構成態様からして、正に法が規定する、「その商品の … 品質 … 効能 … を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」そのものである。 (イ)当然の帰結として、「その」商品「プロジェクター」以外の商品につき本件商標が使用されるならば(例えば、プロジェクター以外の商品包装箱に使用されるならば)、需要者は、あたかも当該商標が付された商品をプロジェクターであると誤って認識することになる。 すなわち、この意味からすると、商標法第4条第1項第16号の「商品の品質 … の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当してしまうことになる。 さらに、商標全体として考えれば、商品の優秀性を示すにすぎないと考えられる「King」(キング)に相応しくない下級品(常識的に考えて)につき本件商標が使用されるならば、需要者は、上級品、優秀品と誤認してしまうのであるから、勿論この面でも同条項に該当するものである。 (ウ)上述したように、本件商標は、その構成からして、単に特定商品の特性を表示するにすぎないものであり商標法第3条第1項第3号に違反していることとなる。 のみならず、特定の商品以外につき使用されるならば商品の品質の誤認を生じさせることとなり商標法第4条第1項第16号に違反することとなる。 要するに何れの面からも、本件商標は商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。 イ 本件商標は、前述アの条項に違反するものであること明らかと考えるが、さらに、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号にも違反する。 (ア)引用商標は、上記2(別掲を含む)に示したとおり、外観上は、図形を付したり、また、欧文字部分だけを見ても図案化したりしているが、何れも、「キング」の称呼が生じる。 また、その観念も、「王様」、「王者」あるいは「王」なる意味合いとして理解される。 仮に、本件商標が上記アの記述的商標ではないとして、両商標を比較すると、本件商標の構成文字中「Projectors」が商品の一般的な名称たる「プロジェクター」を示すことに疑問の余地は全くないのであり、また、「of」は「King」にかかる、所有ないし所属を表わす前置詞たる単なる英語の「of」にすぎないのであるから、商標としての要部(自他商品識別力があると思われる部分)は、「King」の部分にしか存しない。 したがって、本件商標は、その要部が引用商標に、称呼、観念上(また外観さえも)、同一ないし類似としか考えることができない。 けだし、商標の類否の判断基準のうちには、商標の要部対比という手法が旧くより確立されているのであるから、この基準に照らせば、本件商標はその要部が引用商標と同一ないし類似と断じるしかないからである。 また、両者の商品についての類否を考えれば、本件商標の指定商品中には、写真機械器具や映画機械器具、光学機械器具、等々のように、審査実務上同一ないし類似とされるものが複数存在している。 結局、本件商標は、他人の先願商標と同一ないしは類似の商標であって、商標法第4条第1項第11号に違反するものである。 (イ)上記のように、本件商標は、第4条第1項第11号に該当するものであるが、さらに、引用商標は、遅くとも、本件商標が出願された時点では既に、その指定商品につき、いわゆる周知ないし著名商標の地位を確立していたものである。 すなわち、請求人は、明治4年創設の日本最古の写真用品専門会社であり、また、請求人所有の引用商標と同一ないし類似の商標「KING」、「King」あるいは「キング」は、大正10年より本日に至るまで請求人により、写真用機械器具、写真材料につき全国的に極めて長期間継続して使用されてきたことは、写真業界においては知らぬ者は皆無であるから、改めて証拠を提出する必要性のない程、顕著な事実であると考える。 また、この結果、上記商標「KING」、「King」、「キング」は、写真用機械器具、写真材料に関して、遅くとも本件商標出願時点では全国的に広く知られている。すなわち、周知ないし著名な商標であることも敢えて証拠提出等により立証する要のないところである。(なお、前述のように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号だけに照らしても既に違反していること明らかと考えるので、現時点では、多種多様な、上記周知ないし著名商標の立証は敢えてすることはしないが、もしこの点の立証如何が審判請求成否に影響をするのであれば、多数の物証又人証という証拠方法にて立証する用意はある(立証を要さない程の周知性ないし著名性が存在すると確信しているが)ことをここに念のため申し添えておきたい。)。 要するに、本件商標は、商標法第4条第1項第11号のみならず、同第10号また同第15号にも違反する。 したがって、本件商標の登録が無効と判断されなければならない必然性は格段に大きくなるものと考える。 換言すれば、引用商標の周知性、著名性を考えれば、取引者、需要者は、本件商標が付された商品に接する場合、直ちに前記周知、著名商標を連想し、結果、請求人の商品と直接的ないし密接な関係がないとしてもなお、何らかの関連性があるものと認識してしまうおそれがあり、出所混同のおそれのある範囲は極めて広くなり、使用される商品と類似か否かを問わず登録を認められるべきでない(譲って、少なくとも、前述商品、写真用機械器具等、以外の、「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びスライドフィルム、スライドフィルム用マウント、録画済みビデオディスク及びビデオテープ」等については)。 (2)弁駁の理由 ア 「商標法第3条第1項第3号」について (ア)被請求人は、請求人の挙げる理由がいかに禁反語の原則に反している旨、述べている。 しかし、請求人がこれら商標を引用したのは、本件商標が商標法第3条第1項第3号のいわゆる記述的標章にすぎない旨の主張の裏付けとしてではない。 (イ)また、「Projector」には種々の意味があるともいうが、仮に辞書などによればそのような意味があったとしても、問題は、現在の一般需要者ないし取引者が、一見してどのように解するのかを問題にしなければ商標法の解釈としては正しい観点といえない。 (ウ)さらには、「本件商標は一体不可分に全体にまとまりよく構成されているので」といい、また、「これからは特定の意味合いを強く観念するものではない」とも述べているが、本件商標は、今日では殆ど日本語化してしまっている英単語の「King」と「Projector」(「Projector」 について言えば、例えば「Camera」あるいは「Video」などと同じく、完全に一般的な商品名称としか考えられない。)とを、前置詞の「of」でつないだだけのものであるにすぎず、この構成のどこが「一体不可分に全体にまとまりよく構成されている」と考えているのか、請求人は全く理解に苦しむ。 イ 「商標法第4条第1項第16号」について (ア)被請求人は、「商標法第4条第1項第16号該当に対する答弁」のうちでも、「Projector」の意味は多数あるからといい、特定の意味合いを想記させるものではないとみるのが自然であるから該当しない、とも述べている。 しかしながら、この部分の理解の誤りも、請求人は既に上記ア(イ)において述べたとおりである。 (イ)また、「サウンドプロジェクター」など、「プロジェクター」の文字を含む商標が該16号と無関係に登録されている例として挙げるが、請求人が本件で問題としているのは「King of Projectors」であり、すなわち、「Projector」と「King」が記されている、ないし関連づけられている、ことをもって無効理由ありと主張しているのである。 (ウ)さらには、「King」の文字から「上級品」、「優秀品」の意味が生じるとしても、本号には品質の優劣は含まれないとみるのが「通説」である、とも言い切っているが、その根拠らしきことは何も述べられてはいない。 ウ 「商標法第4条第1項第11号」について (ア)また、「本件商標は、… 分離観察し、その内『King』の文字のみが抽出され … あり得ないことである」とし、その根拠として、「この3語は一体不可分に結合され、そのいずれか一つに軽重の差が認められるような印象はなく、全体として特定の意味合いを醸し出すことはない」と述べているが、この点についても、上記ア(イ)また(ウ)において既に述べたところにより、請求人は理解に苦しむ。 (イ)したがって、請求人が、称呼、外観、観念において非類似と結論づけていることが不当であることは勿論である。 エ 「商標法第4条第1項第10号、同第15号」について (ア)被請求人は、「 …『 King』の文字部分のみが注目されるものでない … 」と述べているが、この点もまた、前記同様ア(イ)また(ウ)に述べたことにより、被請求人の答弁には理由がない。 (イ)さらに、「KING OF GAME/キングオブゲーム」その他の、「King」、「キング」を含む登録商標を引用しているが、請求人は、あくまでも請求人所有の「KING」、「King」、「キング」が、「写真用機器あるいは写真材料」につき周知ないし著名だと述べているのであるし、また、そもそもは、これらの商標に対する無効審判を請求するかしないかの自由を請求人は有しているのであるから、論点をすり替えないで欲しい。 (ウ)また、被請求人としては、請求人所有の上記商標が周知ないし著名であることを、認めているのか否かについても明らかにしていない。したがって、被請求人がこの点に特に反論をしていない以上、「認めた」ものと理解する。 (3)審尋に対する回答 ア 請求人は、日本においての写真機械器具、いわゆる写真用品製造及び販売業者として、最古(明治4年創業)であるのみならず、同時に極めて旧くより当該商品を中心としながらも、広く関連商品、例えば電子・電気・映像等の機器類にも業務を拡大してきており、これら商品の属する業界での発言力、又は影響力は旧くから極めて大きいのが実態であり、このことは全国的に著名な事実と考える(回答書における甲第3号証ないし同第6号証)。 イ 又、請求人は、自己の製造・販売に係る当該いわゆる写真機器関連商品につき使用する商標として、時代によりその書体等は異なるものの、「キング」、「KING」あるいは「King」を大正10年以降今日に至るまで終始使用し続けていることは、明らかであり(回答書における甲第3号証及び同第5号証ないし同第16号証)、さらには、「キング」、「KING」あるいは「King」なる商標は、日本国において請求人が製造及び販売に係る商品の出所を表す著名なものとしての地位を既に旧くより確立していることも又明らかな事実といえる。 4 被請求人の主張(要旨) 被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証(枝番を含む。)を提出した。 (1)請求人は、首位的主張として、本件商標は商標法第3条第1項第3号並びに同法第4条第1項第16号に該当すると述べ、さらに予備的主張として、本件商標は、同法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号にも該当する旨を主張した。 しかしながら、かかる各理由は牽強付会である。 (2)商標法第3条第1項第3号について 請求人は、本件商標が「『プロジェクターの王者』、『プロジェクターの最良品』あるいは『プロジェクターの優秀品』といった意味として理解されるから、記述的商標にすぎない。」旨を述べているが、本件商標中の「King」から「王者」、「最良品」あるいは「優秀品」の意味合いを導き出しながら、一方で請求人が商標法第4条第1項第11号に該当するとして示した引用商標は、各々「グンキ」、「KING」、「King」からなる標章である。 このことのみをとらえても、請求人の挙げる理由がいかに禁反言の原則に反しているかを如実に物語っている。 また、乙第2号証によれば、英語の「projector」は、「〔名詞〕設計者、計画者、泡沫会社創立者、投射器、投光器、映写機、映写技師」等の複数の意味を有することが認められるので、「King」および「of」との結合により特定の観念を醸し出すものではないことがわかる。しかるに、本件商標を構成する文字から特定の意味合いが観念されるかは、個々の文字から直接的に判断するのではなく全体観察によって考察されるべきものである。 本件商標は、一体不可分に全体にまとまりよく構成されているので、これからは特定の意味合いを強く観念するものではないことがわかる。 してみれば、本件商標は、そのいかなる指定商品に使用しても、十分自他商品の識別標識としての識別力を具有するものである。 (3)商標法第4条第1項第16号該当について 請求人は、「『プロジェクター』以外の商品に本件商標が使用されるならば、商品の品質の誤認のおそれがあり、さらに、商品の優秀性を示す『King』に相応しくない下級品に本件商標が使用されるならば、需要者は、上級品、優秀品と誤認してしまうのであるから、勿論この面でも同条項に該当する。」旨を述べているが、先に示した乙第2号証「projector」の意味は多数あり、そのいずれの意味を如何なる理由で特定し、品質の誤認のおそれを指摘しているのかは不明であるが、本件商標全体からは先に示すとおり、特定の意味合いを想起させるものではないとみるのが自然であり、本件商標の指定するいかなる商品に使用しても、商品の品質について誤認の生じるおそれはないから、商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。 ちなみに、商標中に「プロジェクター」の文字を含む商標が当該第16号とは無関係に登録されているものとして、乙第3号証の1ないし3に示すとおり、例えば、「サウンドプロジェクター」「キューブプロジェクター」「ウオールプロジェクター」等々が登録商標として存在し、これら商標はいずれも「プロジェクター」の文字を含んでいても、品質の誤認のおそれがあるとして特定の商品に限定されることなく登録されている。 また、請求人は商品の優劣についての誤認を述べているが、「King」の文字は通常「王」の意味合いを有する観念として認識され、理解されているものであるから、商品の品質について何等誤認が生ずるおそれもなく、予備的答弁として仮に百歩譲って、「King」の文字から、請求人の主張するような「上級品」、「優秀品」の意味が生じるとしても、同号には品質の優劣は含まれないとみるのが通説である。ついでながら、本件商標に係り、「下級品に使用される場合に需要者が『上級品』、『優秀品』と誤認する」旨の請求人の主張は、請求人所有の引用商標に対しても同様の主張を展開することが可能となり、したがって、その点をかんがみても請求人の主張は禁反言の原則に反し、主張する根拠・理由を欠くといわざるを得ない。 (4)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、上記したとおりの文字を同一の書体、同一の大きさの文字を同間隔に書してなるもので、これを「King」、「of」及び「Projectors」に分離考察し、そのうち「King」の文字のみが抽出され、これによって称呼、観念されることはあり得ない。 すなわち、本件商標は、「王」を意味する「King」の文字と「設計者、計画者、泡沫会社創立者、投射器、投光器、映写機、映写技師」を意味する「Projectors」の文字を前置詞「of」によって接続されているものであるから、この3語は一体不可分に結合され、そのいずれか一つに軽重の差が認められるような印象はなく、全体として特定の意味合いを醸し出すことはない。 してみれば、本件商標の称呼「キングオブプロジェクターズ」と引用商標の称呼「キング」とは、語調、語感が相違し、称呼上明確な差異を有するものである。 また、外観上は判然とした差異を有することは明らかであり、さらに、観念についても、本件商標は上記したとおりの特定の意味合いが生じるものではなく、観念上も明らかに相違するものである。 したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念において相違する非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 (5)商標法第4条第1項第10号並びに同第15号について 請求人は、請求人所有の周知著名な商標「KING」、「King」あるいは「キング」が、写真用機械器具、写真材料につき長期間継続して使用されてきたものとの同一又は類似する「King」の文字を含むから、商標法第4条第1項第10号又は第15号に該当する旨を述べている。 しかしながら、本件商標は前記したとおり「King of Projectors」の構成各文字が、同一の書体で同じ大きさの文字を同間隔で一連に表示してなるものであるから、「King」の文字部分のみが注目されるものでないことは明白である。 これらのことは、乙第5号証の1ないし8に示す登録例からみても明らかである。これら事例は、いずれも「KING」又は「キング」の文字を含んでいても一体不可分の商標として、請求人所有の引用商標とは、商標が異なり出所の混同は起きないとして、登録が認められてきたものである。 したがって、上記事実から明らかなように、商標法第4条第1項第10号及び第15号に該当するとの請求人の主張は理由がない。 5 当審の判断 (1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について ア 本件商標は、「King of Projectors」の欧文字を書してなるものであるところ、その構成中「King」は、「王様」の意を表す英語として我が国において極く親しまれた語であり、また、「of」は、所属等を示す英語の前置詞として我が国において一般に知られ使用されていることは顕著な事実に属することである。また、「Projectors」は、「設計者、計画者、投射器、投光器、映写機、映写技師」等の意味合いを表す英語(乙第2号証)の複数形であることが認められる。 イ しかして、本件商標は、前置詞「of」を介して「King」と「Projectors」が一連に結合されたものとして看取されるとみるのが自然であり、全体として「プロジェクターの王様」程の意味合いをもって理解されるとみるのが相当である。また、同じ書体をもって表された本件商標の構成文字中、いずれかの部分に軽重の差があるとも言い難いところである。 そうしてみると、本件商標は、前記意味合いの標章として需要者に認識されるものであるというべきであって、本件商標の指定商品との関係においても、これが直ちに、商品の品質等を直接具体的に表したものとして認識されるものであるとは認められない。また、この種商品等を取り扱う業界において、本件商標を構成する文字が商品の品質等を表すために普通に使用されていると認め得る証拠はない。 したがって、本件商標をその指定商品について使用しても、自他商品の識別機能を果たし得るというのが相当である。 ウ また、「プロジェクター」「Projector」の語が映写機を意味する語であったとしても、上記のような本件商標の構成態様及び意味合いからすれば、特定の商品の品質を具体的に表したものとして認識されるとは言い難いから、本件商標をその指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるということもできない。 エ してみると、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとはいえない。 (2)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、前記のとおり「King of Projectors」の文字を一連に書してなるものであり、その構成中において、殊更に「King」の文字部分が需要者に強く印象づけられ、かかる部分より生ずる称呼や観念をもって取引に資されることがあるとする特段の理由は認められないから、その構成文字に相応して「キングオブプロジェクターズ」の称呼を生じ、「プロジェクターの王様」程の意味合いを看取させるものというべきである。 一方、請求人が引用する登録商標は、いずもその構成文字から「キング」の称呼、「王様」の観念が生ずるものである。 しかして、両者の称呼「キングオブプロジェクターズ」と「キング」とは、その音構成において明らかな差異を有するものであるし、また、観念においても、明らかに異なるものであるから、両者は、その称呼及び観念において、相紛れるおそれはない。 さらに、両者は、その構成態様において明らかな相違があるから、外観において相紛れるおそれがあるとも認め難いものである。 してみると、外観、称呼及び観念のいずれからみても、本件商標は、引用商標と類似する商標とはいえないものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 (3)商標法第4条第1項第10号について 本件商標は、引用商標と類似するものでないことは前記(2)のとおりであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。 (4)商標法第4条第1項第15号について ア 請求人は、引用商標と同一又は類似の商標「KING」、「King」あるいは「キング」は、大正10年より本日に至るまで請求人により、写真用機械器具、写真材料につき全国的に極めて長期間継続して使用されてきたことは、写真業界においては顕著な事実であり、引用商標の周知性、著名性を考えれば、取引者、需要者は、本件商標が付された商品に接する場合、直ちに前記周知、著名商標を連想し、結果、請求人の商品と直接的ないし密接な関係がないとしてもなお、何らかの関連性があるものと認識してしまうおそれがあり、出所混同のおそれのある範囲は極めて広くなり、使用される商品と類似か否かを問わず登録を認められるべきでない旨、主張している。 イ そこで、当合議体からの審尋に対する回答における証拠方法として提出された、周知著名性に関する回答書の全甲号証を検討するに、請求人が明治4年に写真材料専門の看板を掲げ、創業を開始し、大正10年頃、自社商品(引伸機)に「引用1商標」を使用し(甲第3号証及び同第5号証)、それ以降、これを暗室時計、フィルター選定機、セーフライトグラス、プリントドライヤー、フィルムドライヤー、露出計、三脚、ネガボックス、カメラ、シャッター等の各種写真用品にも使用していたことが認められる(甲第5号証、同第9号証ないし同第11号証)。 又、現在においても上記商品のほか、カメラバッグ、写真用額、暗室用品及び写真台紙等の各種写真用品カタログ等に「引用1商標」及び「引用4商標」を使用し(甲第7号証及び同第8号証)、セーフライトグラスには「引用3商標」を使用していることも認められる(甲第12号証)。 ウ しかしながら、提出された回答書の全甲号証を検討するも、請求人の業務の歴史の長さや、引用商標等の各種写真用品への使用事実が明らかになったものの、これら請求人の各種写真用品の売上金額、市場シェア及びマスメディア等を介した広告宣伝等について、的確に認定し得る客観的な資料もないなど、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の商品表示として需要者の間に広く認識されていたとまでは認めることはできない。 エ 以上よりすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、両商標自体が非類似の商標である上、引用商標の周知著名性も認め難いものであることから、本件商標に接する需要者が引用商標を想起し、これより連想して、当該商品を請求人又はこれと組織的ないし経済的に何らか関係のある者の取扱に係る商品であると誤信し、商品の出所について混同するおそれがあるとはいえないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 (5)まとめ 以上、本件商標は、商標法第3条第1項第3号並びに同法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第16号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定によって、その登録を無効にすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
【別掲1】引用3商標 【別掲2】引用4商標 |
審理終結日 | 2006-02-16 |
結審通知日 | 2006-02-21 |
審決日 | 2006-03-06 |
出願番号 | 商願2002-90752(T2002-90752) |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Y
(Y09)
T 1 11・ 25- Y (Y09) T 1 11・ 13- Y (Y09) T 1 11・ 271- Y (Y09) T 1 11・ 272- Y (Y09) T 1 11・ 263- Y (Y09) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
山田 清治 |
特許庁審判官 |
久我 敬史 水茎 弥 |
登録日 | 2003-06-27 |
登録番号 | 商標登録第4686511号(T4686511) |
商標の称呼 | キングオブプロジェクターズ、キング |
代理人 | 工藤 雅司 |
代理人 | 畠山 隆 |