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審決分類 審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1134621 
審判番号 無効2003-35318 
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-25 
確定日 2006-03-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第4637721号商標の商標登録無効審判事件について平成16年7月21日にした審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10018号平成17年5月30日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4637721号の指定商品中「ジーンズ製の被服」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4637721商標(以下「本件商標」という。)は、「POLO JEANS」の欧文字を標準文字により表してなり、平成9年9月16日に登録出願、第25類「ジーンズ製の被服,ジーンズ製のガーター,ジーンズ製の靴下止め,ジーンズ製のズボンつり,ジーンズ製のバンド,ジーンズ製のベルト,ジーンズ製の履物,ジーンズ製の運動用特殊衣服,ジーンズ製の運動用特殊靴」を指定商品として、同15年1月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録商標は、以下(ア)ないし(カ)のとおりである。
(ア)登録第1434359号商標(以下「引用A商標」という。)は、「POLO」の欧文字を横書きしてなり、昭和47年6月13日に登録出願、第17類「ネクタイ、その他本類に属する商品、但し、ポロシャツ及びその類似品ならびにコートを除く」を指定商品として、同55年9月29日に設定登録され、その後、平成2年9月20日及び同12年4月18日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(イ)登録第1447449号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲の(1)のとおりの構成よりなり、昭和47年4月22日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同55年12月25日に設定登録され、その後、平成2年12月21日及び同12年9月5日に商標権存続期間の更新登録がされ、指定商品については、平成13年2月14日の書換登録により、第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第21類「家事用手袋」、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」となったものである。
(ウ)登録第2721189号商標(以下「引用C商標」という。)は、「POLO」の欧文字を横書きしてなり、昭和56年4月6日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年5月2日に設定登録されたものである。
(エ)登録第4015884号商標(以下「引用D商標」という。)は、別掲の(2)のとおりの構成よりなり、昭和58年5月11日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年6月20日に設定登録されたものである。
(オ)登録第4041586号商標(以下「引用E商標」という。)は、別掲の(3)のとおりの構成よりなり、昭和58年5月11日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年8月15日に設定登録されたものである。
(カ)登録第4172780号商標は、商標登録の無効の審判により無効とすべき旨の審決がされ、その審判の確定登録が平成15年5月14日にされている(以下、引用A商標ないし引用E商標を一括していう場合は「引用商標」という。)。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。以下、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 商標の類似 本件商標の指定商品中「ジーンズ製の被服」は、引用商標の指定商品と同一若しくは類似する商品である。
本件商標中、「JEANS」なる文字は、指定商品「ジーンズ製の被服」との関連においては、その素材たる「綿綾織物」若しくは商品名たる「ジーンズパンツ、ジーパン」の意味合いを表す「JEANS(ジーンズ)」なる語として、日常一般に認識されている文字であり、指定商品の品質を表示する語である。「JEANS」なる語が、指定商品「ジーンズ製の被服」の取引において、自他商品識別力を発揮しない語であることから、本件商標中、自他商品を識別する標識として機能する部分は「POLO」の文字部分であり、これにより「ポロ」の称呼が生ずる。
引用A商標及び引用C商標は、いずれも「POLO」なる欧文字からなる商標であり、その外観、称呼、観念において、本件商標「POLO JEANS」の自他商品識別機能を発揮する標章「POLO」と社会通念上同一である。その他の引用商標は、「POLO」なる語と図形若しくは「SPORTS」(スポーツウェア、カジュアルウェア)なる商品の品質を表す文字との結合した商標であり、その態様から、本件商標の自他商品識別機能を発揮する標章「POLO」と同一の「ポロ」なる称呼を生じるものである。
したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標である。
2 取引実情
本件商標の指定商品「ジーンズ製の被服」が属するファッション業界においては、「被服」ブランドをマスターブランドとし、その商標に「JEANS」なる語を付した「〇〇JEANS」なる商標を使用して、セカンドライン、サードライン等のディフュージョンブランドを展開するブランド・マーケティング戦略が慣行化されている(甲第9号証ないし甲第11号証)。よって、「被服」等に使用する商標と、当該商標に「JEANS」を付した商標とは、同一の出所を表示するものと需要者に認識されている。
事実、「GFF JEANS」なる登録商標と「GFF」なる登録商標が同一又は類似の商品について、同じ商標権者により所有されているように(甲第11号証の1)、41件の「〇〇JEANS」なる登録商標が、「JEANS」以外の部分の標章を商標とする「被服」等の登録商標と同一の商標権者により所有されている(甲第11号証の1ないし33)。また、その中で、17の商標権者が、「○○JEANS」と同様に、「〇〇SPORTS」(甲第11号証の18ないし24)、「○○KIDS」(甲第11号証の20、23、28及び29)等、「商品の使用場面や用途別に同一名を冠したファミリーブランド」の商標登録を行っている。
これらは、「被服」等に使用する商標に「JEANS」なる語を付した商標を、「被服」ブランドのセカンドライン・ブランド等を示すものとして使用するブランド・マーケティング戦略が、ファッション業界で慣行化していることを示すものである。
したがって、「被服」等に使用する商標と、当該商標に「JEANS」を付した商標が、同一の出所を表示するものとして、本件商標に係る指定商品分野の需要者に認識されていることは明らかである。
また、ファッション界の著名ブランドの多数が、同戦略を実施しており(甲第11号証の1、6、9、13、19及び21)、かかる戦略は日本のみならず世界のファッション業界でも周知である。
一方、請求人の「POLO」商標(引用A商標及び引用C商標)の使用については、請求人の前身会社が昭和47年頃からその使用を開始していたこと、及び昭和58年時点で「Polo」ないし「Polo」の文字を含む商標が、前身会社の使用商標であることが一般にもある程度知られていたことが平成9年異議第9078号の異議決定(甲第8号証)にて証明されている。そして、その後、引用商標を譲り受けた請求人が積極的な営業、広告活動を継続しており、「被服」を中心とした売上げは、平成13年度において、40億円以上に達している。
かかる取引実情を鑑みれば、本件商標を付した「ジーンズ製の被服」なる商品に接した需要者は、当該商品を「POLO」ないしは「POLO」の文字を含む引用商標の所有者たる請求人のセカンドライン・ブランド等の商品であるとして、出所を混同することは明らかである。また、本件商標が商標権者の使用により自他商品識別力を発揮した場合には、引用商標を付した請求人の「被服」等の商品に接した需要者は、当該商品を、商標権者のマスター・ブランドの商品であると、出所を混同するおそれがある。
したがって、本件商標と引用商標とは、指定商品「ジーンズ製の被服」が属するファッション業界において、同一又は類似する商品に使用した場合に、需要者が出所の混同を生じる程近似している商標であり、取引実情からみても、両者が類似する商標であることは明らかである。
3 答弁に対する弁駁
被請求人は、「POLO」標章が、本件商標の登録出願時及び現在において被請求人の商標を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識されているとして、本件商標が引用商標と非類似である旨主張する。しかし、周知・著名性の当否を判断するまでもなく、かかる主張は、商標法の法理に照らし、到底採用できない。
後発的に使用し登録出願した被請求人が、その周知性等を主張することにより、そのような、明らかに類似する商標について、商標法第4条第1項第11号の適用が排除されるなどとは、登録主義を採用する商標法上許されない解釈である。このような解釈が認められるとするならば、最先に登録出願し適法に商標権を取得しても、営業力の優れた第三者の後発的な使用という、権利者とは無関係な、偶発的な事情により、いつでも登録商標の類似範囲に第三者の独占排他権が設定され得ることとなり、独占排他権の庇護の下、出所の識別及び信用の化体を促進すること企図し、先願主義を伴った登録主義を採用した商標法の趣旨が没却されることとなる。仮に、本件商標のように、使用許諾契約の対象商標について使用権者が周知性等を主張することにより、独占排他権が付与されるとするならば、行政処分により、使用許諾契約という私的契約に基づく法律関係を実質的に消滅せしめたと同一の効果を生じることとなる。法の下、正当に行使してきた財産権が、自由競争を阻害する等なんらの特段の事情もないにもかかわらず、行政処分により唐突に減縮されるなどとは、商標法のみならず、他法においても例を見ないものである。
4 むすび
したがって、本件商標は、その指定商品中「ジーンズ製の被服」ついての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、商標法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担する、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標は、構成文字「POLO JEANS」に相応し「ポロジーンズ」の称呼を生ずるものである。「ポロジーンズ」の称呼は冗長でなく、かつ語呂がよいため一気に称呼されるものである。一方、請求人の引用商標は、その構成文字に相応し「ポロ」又は「ポロスポーツ」の称呼を生ずるものである。したがって、本件商標と引用商標は称呼において明らかに相違するものである。また、造語よりなるものであるから観念においても類似するものでない。
また、「JEANS」の文字は、本件指定商品との関係にあっては商品の品質を表示するところから本件商標の自他商品識別標識として機能する部分は「POLO」の部分であると主張する。
しかし、仮にそうであっても、本件商標と引用商標とは以下に述べるとおり類似しないものである。また、「POLO JEANS」の文字からなる本件商標と「POLO」の文字からなる引用A商標及び引用C商標とが社会通念上同一であることはない。
2 被請求人は、米国ニューヨーク州所在のリミテッドパートナーシップであり、その主要な構成人である世界的著名なデザイナーのラルフ・ローレンがデザインした被服、眼鏡、フレグランスその他のファッション関連商品を関連会社やライセンシーを通じて世界的規模で製造、販売している。ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション商品には「Polo」の標章、「Polo」と「by RALPH LAUREN」とを組み合わせた標章、ポロ競技者の図形と「Polo」及び「by RALPH LAUREN」を組み合わせた標章のいずれかが必ず付されている。そして、上記標章を付した商品は、我が国においては昭和50年ごろから販売され、上記標章は遅くとも昭和50年代半ばにはラルフ・ローレンがデザインしたファッション関連商品を表示する標章として我が国の取引者・需要者間に周知・著名となっていたものである。
また、上記標章及びこれを付した商品は「ポロ」、「Polo」(「POLO」)と略称され、その略称もまたラルフ・ローレンのデザインした商品を表彰する標章として強い自他商品識別力と顧客吸引力を獲得したものである。そして、それら標章の周知・著名性は現在も継続しているものである。このことは、提出の乙号証及び「Polo」の文字を有する商標が被請求人の商品と混同すると判断された多数の判決によって明らかである。
ちなみに、日本における上記標章及び略称(以下「POLOブランド」という。)を付した被請求人商品の売上げは、1977年(昭和52)の5億6000万円を皮切りに毎年前年度を大幅に上回る伸びを示し、現在では年間900億円近い売上げを誇る日本でも有数の人気の高いブランドの一つとなっている。また、被請求人のPOLOブランドが、被請求人商品を示すものとして我が国における周知・著名性を獲得していることを示すものとして、昭和63年から平成元年にかけ、またそれ以降も「POLO」又は「ポロプレーヤーマーク(ポロ競技者の図形)」を付した偽ブランド商品が第三者によって大量に販売され摘発されるという事件が発生しているほどである。
3 請求人は、「Polo」ないし「Polo」の文字を含む商標が請求人の使用商標であることが一般にもある程度知られていたとして平成9年異議第9078号の異議決定を提出する。しかし、同決定は、昭和58年当時「POLO」「ポロ」標章がラルフ・ローレンのデザインに係る被服等のみを表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたと認めるのが困難であると判断したにすぎない。被請求人による不断の広告宣伝活動その他の販売促進活動の結果、上記のとおり販売高が持続的に高い伸びを記録しており、その結果POLOブランドが日本で有数の人気の高いブランドの一つとなっている事実は、少なくとも本件商標の登録出願時及び登録査定時において「POLO」及び「ポロ」の標章がほとんど唯一ラルフ・ローレンのデザインに係る被請求人の商品を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識されるに至ったことを裏付けるといい得ることである。上記多数の判決もまたその事実を認めているところである。なお、請求人は引用商標を付した被服等の商品売上げが平成13年において40億円を上回ると述べているが、不知であり、また(2)で示す被請求人売上げの1割に満たないその数字をもって、被請求人を上回る出所表示と取引者、需要者に認識されているとはいえない。
4 ところで、最高裁は、「商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。…商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、何ら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては、これを類似商標と解すべきではない。」と判示している(昭和39(行ツ)110号)。また、東京高裁も「商標は、取引において、その商品が自己の製造、販売等営業にかかるものであることを表彰するために使用するものであるから、商標の類否の判断に当たっては、取引の実情を離れてこれを考察すべきではなく、すなわち、その商品の取引の実情において、取引者又は需要者の間に商品の出所につき混同をひきおこすおそれがあるかどうかによって決すべきものと解するのを相当とする」と判示している(昭和58(行ケ)215号)。
5 したがって、上述した本件指定商品の取引の実情からして、仮に、本件商標の自他商品識別標識として機能する部分が「POLO」の部分であるとしても、上述の通り「POLO」標章が本件商標の登録出願時及び現在においてラルフ・ローレンのデザインに係る被請求人の商品を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識される事実、そして、本件商標の構成文字が引用商標と相違するものであることから、前記最高裁、東京高裁の判例に照らしても、本件商標は引用商標と類似するものではないというべきである。
6 むすび
以上のとおり、請求人の主張は理由ないものである。したがって、本件商標は、商標法第4条1項11号に違反して登録されたものでないからその登録を無効とすべきでない。

第5 当審の判断
1 本件商標と引用商標との類否について
(1)商標法第4条第1項第11号は、「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」については、商標登録を受けることができない旨規定している。この場合、商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきであり、誤認混同を生じるおそれがあるか否かは、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等を考察し、これらに加え、その商品についての取引の具体的な実情に照らし、その商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきものと解される(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
(2)上記観点から、本件商標と引用A商標及び引用C商標との類否について、以下検討する。
(ア)本件商標は、「POLO JEANS」の欧文字を標準文字で表してなるものであるところ、「POLO」の文字と「JEANS」の文字が一文字分の間隔をおいて一体として表されているものの、「JEANS」の文字が、「ジーンズ」の称呼を生じ、丈夫な細綾織りの綿布又はそれで作った衣服等を意味する普通名詞であり(広辞苑第5版参照)、指定商品である被服の品質や材質を表示するものとして、ファッション業界で慣用される文字となっていることは、公知の事実であるから、本件商標を「ジーンズ製の被服」に使用した場合、これに接した取引者及び需要者は、通常、「JEANS」の文字部分は、その商品の品質や材質等を表す普通名詞として認識し、「POLO」の文字部分を自他商品の識別機能を果たすものとして認識するものと解される。その意味で、本件商標において自他商品の識別機能を果たす要部は、「POLO」の文字部分にあると解される。
(イ)一方、引用A商標及び引用C商標は、「POLO」の文字のみからなるものであり、本件商標の要部と対比すると、称呼、外観において同一であるということができる。
(ウ)また、「POLO」の語が、主として英国及び旧英国領の諸地域等において行われている馬上球技を示す普通名詞であること、襟付の半袖のカジュアル衣料を示すポロシャツの語が、本来ポロ競技の選手が着用したことにちなむもので、今日、広く各国において普通名詞として用いられていることも、公知の事実であり、本件商標の要部と引用A商標及び引用C商標とは、いずれも、取引者及び需要者に、ポロ競技ないしその略称であるポロの観念を生じさせるものと認められる。
(エ)そうすると、本件商標と引用A商標及び引用C商標とは、称呼、外観及び観念において類似するというべきである。
2 誤認混同について
(1)被請求人の「POLO」標章の周知著名性について
当審において提出された乙第1号証ないし乙第11号証及び知的財産高等裁判所においてなされた平成17年(行ケ)第10018号確定判決の決定した事実によれば、次の事実が認められる。
(ア)被請求人は、その主要な構成員である世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレンがデザインした被服、眼鏡、フレグランスその他のファッション関連商品を関連会社やライセンシー等を通じて世界的な規模で製造、販売している。現在、ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品には、「Polo Ralph Lauren」の文字からなる標章、「Polo」の文字を横長四角形中に記載してロゴ化したPolo(編注;Poloの文字の周りが四角形で囲われている)と「by RALPH LAUREN」の文字とを結合した標章、ポロ競技者の図形とPolo(編注;Poloの文字の周りが四角形で囲われている)と「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren」)の文字とを結合した標章(以下「被請求人標章」という。)等が付されている。
(イ)昭和53年7月20日講談社発行の「男の一流品大図鑑」には、ラルフ・ローレンのデザインに係る被請求人標章を掲げた「ラルフ・ローレン」ブランドの紹介がされており、それには「1974年の映画『華麗なるギャツビー』は、現代アメリカの混迷と退廃に対する痛烈な警鐘にもなっていた。この映画で主演したロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したのが、ポロ社の創業者であり、アメリカのファッションデザイン界の旗手ラルフ・ローレンである」、「30歳になるかならぬかで一流デザイナーの仲間いりをはたし、わずか10年で、ポロ・ブランドを、しかもファッションデザイン後進国アメリカのブランドを、世界に通用させた」との記載があり、昭和55年5月25日講談社発行の「世界の一流品大図鑑」(’80年版)には、紳士服の項に「『POLO』ポロ(アメリカ)」として、「アメリカン・トラディショナル・ファッションの総本山ブルックス・ブラザーズで独自の服飾感覚をみがきながら、ニューヨーク大学に学んだラルフ・ローレン。知性と感性が躍動する都会的デザインが、シェイプ・アップされたからだに、フィットします。」との記載が、また、眼鏡の項目に「『POLO』ポロ(アメリカ)」として、「ニュートラディショナルの旗手ラルフ・ローレンのデザインフレーム」との記載がある。
次に、昭和58年9月28日サンケイマーケティング発行の「舶来ブランド事典’84 ザ・ブランド」には、被請求人標章を掲げた「ポロ」ブランドの紹介がされており、それには、「今や名実ともにニューヨークのトップデザイナーの代表格として君臨するラルフ・ローレンの商標。ニュートラディショナル・デザイナーの第一人者として高い評価を受け、世界中にファンが多い」、「マークの由来 ヨーロッパ上流階級のスポーツのポロ競技をデザイン化して使っている。彼のファッションイメージとぴったり一致するため彼のトレードマークとして使用しているもの」との記載があり、昭和55年4月15日洋品界発行の月刊「アパレルファッション店」別冊1980年版「海外ファッション・ブランド総覧」」には、「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」について、「若々しさと格調が微妙な調和を見せるメンズ・ウェア『ポロ』ブランドの創立者。栄誉あるファッション賞“コティ賞”をはじめ彼の得た賞は数知れず、その実力をレディス・ウェアにも発揮。新しい伝統をテーマに一貫しておとなの感覚が目立つ。アメリカ・ファッション界の颯爽とした担い手」との紹介が記載されているほか、「〈販路〉西武百貨店、全国展開〈導入企業〉(株)西武百貨店〈発売開始〉五十一年」等の記載がある。
昭和59年1月婦人画報社発行の「MEN’S CLUB1984年1月号」にも上記各記載と同趣旨の記載がある。
(ウ)昭和59年9月25日ボイス情報発行の「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」には、被請求人がポロ・バイ・ラルフ・ローレンのブランドを我が国において西武百貨店にライセンスしていること、ライセンス開始年度は昭和51年であることが記載されている。
西武百貨店は、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品及びこれに付す被請求人標章の周知を図るべく新聞広告するなどして、積極的に上記商品の販売活動を行った。西武百貨店がこのように宣伝販売活動に努めた結果、被請求人標章を付した商品の小売りベースでの売上げはハイペースで増加して行き、昭和61年にはその年商は約170億円を超えるに至った。
また、西武百貨店は、昭和63年、同社で展開してきたポロ・ラルフ・ローレン事業を分離・独立させ、100%子会社である株式会社ポロ・ラルフローレンジャパンを設立し、同会社が被請求人標章を付した商品のブランドの管理をするようになった。被請求人標章を付した商品の小売りベースでの売上げはその後の増加の一途をたどった。
(エ)昭和50年代、「ポロ」の商標の使用については、被請求人の前身であるザ・ポロ・ローレン・カンパニーと請求人の前身である丸永衣料(昭和60年1月21日に公冠販売と商号を変更)との間に引用A商標の使用をめぐって紛争が存在した。ザ・ポロ・ローレン・カンパニーは、昭和56年ころ、西武百貨店を介して、丸永衣料に対し、引用A商標及び引用B商標の使用の許諾に関する話合いを申し入れ、これをきっかけとして交渉が行われた結果、昭和62年1月1日、ザ・ポロ・ローレン・カンパニーと公冠販売(旧商号・丸永衣料)との間に上記引用商標について通常使用権を設定する旨の本件使用許諾契約が締結された。請求人は、公冠と公冠販売が有していた「POLO」ブランドの管理を行うため、両会社が出資して平成元年3月に設立され、平成10年には引用商標を含む一連の「POLO」関連商標に係る商標権を公冠販売から譲り受け、被請求人との間の引用A商標及び引用B商標に関する本件使用許諾設定契約上の地位も承継し、現在に至っている。
(オ)平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊には、「『ポロ』の偽 大量販売」との見出しの下に、「昨年2月ごろから、米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の・・・『Polo』の商標と、乗馬の人がポロ競技をしているマークをつけたポロシャツ、トレーナーなど1万4000枚を全国の1万人に売っていた疑い」との記事が記載され、平成11年9月9日付け日本経済新聞朝刊には、「渋谷区神宮前の同社店舗で、団体職員の女性(27)に『ポロ』ブランドの偽物セーター1枚を2900円で販売したほか、・・・同区内の会社事務所と同店内に同ブランドの偽物ベストなど計約1900枚を販売目的で所持していた疑い」との記載がある。
(2)上記認定の事実によれば、被請求人標章、すなわち、「Polo Ralph Lauren」の文字からなる標章、「Polo」の文字を横長四角形中に記載してロゴ化したPolo(編注;Poloの文字の周りが四角形で囲まれている)と「by RALPH LAUREN」とを組み合わせた標章、ポロ競技者の図形とPolo(編注;Poloの文字の周りが四角形で囲まれている)及び「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren」)とを組み合わせた標章等は、アメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品を表示するものとして、我が国においては、昭和51年ころから使用されるようになり、昭和50年代半ば以降には取引者及び需要者間に広く認識されるに至っていたこと、当時から上記標章は「ポロ」、「POLO」(「Polo」)と略称されることもあり、昭和62年1月の本件使用許諾契約の締結を経て、上記標章及びこれを付した商標ブランドは、ラルフ・ローレンの「ポロ」、「Polo」ないし「POLO」として著名になり、強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得していたものであり、その周知著名性は、その後、本件登録出願時を経て今日に至るまで継続していることが認められる。
上記のとおり、被請求人の「POLO」標章が周知著名性を有することからすれば、本件商標を付した「ジーンズ製の被服」に接した場合、少なくとも一部の取引者及び需要者は、本件商標の要部である「POLO」の文字からラルフ・ローレンのデザインに係る商品を想起するものと考えられる。しかしながら、称呼、外観において同一である一個の商標から二個以上の観念を生じることのあることは経験則に照らして明らかであり、また、上記のとおり、「POLO」の語が、主として英国及び旧英国領の諸地域等において行われている馬上球技を示す普通名詞であること、襟付の半袖のカジュアル衣料を示すポロシャツの語が、本来ポロ競技の選手が着用したことにちなむもので、今日、広く各国において普通名詞として用いられていることが、公知の事実であることからすると、他の一部の取引者及び需要者は、「POLO」の語が本来有する意味合いから、ポロ競技やその略称であるポロを想起するものといわなければならない。
そうであれば、被請求人の「POLO」標章が周知著名性を獲得していることを考慮に入れても、本件商標と引用A商標及び引用C商標とは、本件商標の指定商品の一つである「ジーンズ製の被服」に使用する場合についてみれば、称呼、外観、観念において紛らわしい関係にあることに変わりはなく、その商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としてみれば、取引者及び需要者が両者を見誤る可能性は否定できないというべきである。
(3)被請求人は、被請求人の「POLO」標章は高い周知著名性を有するものであり、このことに引用A商標及び引用C商標の周知性が低いことを併せ考えた場合、本件商標を付した商品に接した取引者及び需要者が、請求人の出所に係る商品であると誤認する可能性はまずないものといってよく、このような場合にまで商標の類似性を認めるのは妥当性を欠くと主張する。
しかしながら、登録商標について通常使用権が設定されている場合において、当該登録商標が、上記通常使用権に基づきその使用をしている者の業務に係る商品を表示するものとして広く取引者及び需要者に認識され、周知著名性を獲得することは十分あり得ることであるが、そのような状況が生じているからといって、直ちに、当該登録商標と外観、称呼、観念において類似する当該登録商標を要部とする標章を指定商品に使用しても、実際には商品の出所につき誤認混同が生じる蓋然性がないか又は極めて低いとして、両者は類似しないと判断するのは相当でない。当該登録商標とその通常使用権者の使用する上記のような標章とが、外観、称呼、観念において類似し、これらを特定の指定商品に使用した場合、その通常の取引の実態を考慮に入れた一般的・抽象的なレベルにおいて、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあると認められる以上、商標法第4条第1項第11号における商標の類否判断において、両者は類似すると判断すべきである。
上記(1)に認定した事実によれば、被請求人が使用する、「Polo」の文字を横長四角形中に記載してロゴ化したPoloの標章、Poloと「by RALPH LAUREN」とを組み合わせた標章、ポロ競技者の図形とPolo及び「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren)を組み合わせた標章は、昭和50年代半ば以降に取引者及び需要者間に広く知られるようになり、それらの標章は「ポロ」、「POLO」(「Polo」)と略称さることがあったこと、請求人の前身である丸永衣料と被請求人の前身であるザ・ポロ・ローレン・カンパニーの間には引用A商標の使用をめぐって紛争が存在したが、昭和62年1月、ザ・ポロ・ローレン・カンパニーが、公冠販売(旧商号・丸永衣料)との間の本件使用許諾契約に基づき、引用A商標及び引用B商標について通常使用権の取得し、その後、上記契約上の地位が請求人と被請求人に承継され、この間に、西武百貨店が積極的な販売宣伝活動を行った結果、被請求人の上記標章及びこれを付した被請求人の商品ブランドはラルフ・ローレンの「ポロ」、「Polo」ないし「POLO」として著名になり、その著名性が維持されてきたことが認められるのである。このような経過に照らしてみれば、取引者及び需要者が、「POLO」の文字を、その著名性からして、「ラルフ・ローレンのデザインに係るPOLO(ポロ)の商品」の観念を伴ったものとして認識する蓋然性が高い反面、引用A商標及び引用C商標の周知性が低いというだけで、本件商標と引用商標A及び引用C商標とは、本件商標の指定商品中「ジーンズ製の被服」に使用する場合でも、商品の出所につき誤認混同の生じるおそれがないとし、両者の類似性を否定するのは相当でないというべきである。
したがって、被請求人の上記主張は、採用することができない。
3 被請求人は、本件使用許諾契約においては、請求人は自己の「POLO」商標をブリティッシュ・カントリー・スピリットラインの商品について使用するものとし、被請求人の「POLO」商標と不当に混同を生ぜしめるような方法で当該商標を使用してはならないことが定められており(5条)、この契約条項により、引用A商標及び引用C商標については、そのまま単独で使用されることはなく、必ず「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字が併記されているから、本件商標を付した商品に接した取引者及び需要者が、請求人の出所に係る商品を想起することはあり得ないと主張する。
しかしながら、証拠によれば、本件使用許諾契約には被請求人主張の契約条項が存在することが認められるが、その内容は、一般の取引者及び需要者の知り得ない事項であり、引用A商標又は引用B商標が「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字と併記されて使用されることを考慮に入れても、上記の契約条項を知らない一般の取引者及び需要者にとって、本件商標と引用A商標及び引用C商標とは、本件商標の指定商品の一つである「ジーンズ製の被服」に使用する場合についてみれば、称呼、外観、観念において紛らわしい関係にあることに変わりはなく、商品の出所につき誤認混同の生じる可能性を否定することはできないというべきである。
以上のとおり、被請求人の主張はいずれも理由がない。
4 前記1ないし3で検討した結果によれば、本件商標と引用A商標及び引用C商標とは、称呼、外観及び観念において類似しており、このことに加え、本件商標の指定商品中「ジーンズ製の被服」と引用A商標及び引用C商標の指定商品とは重複し、その需要者は通常は特別の専門知識を有するものでない一般消費者であることをも考慮すれば、本件商標と引用A商標及び引用C商標とは、本件商標の指定商品中「ジーンズ製の被服」に使用する場合、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本件商標の指定商品中「ジーンズ製の被服」に係る登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものというべきである。
5まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中の「ジーンズ製の被服」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、商標法第46条第1項の規定に基づき、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)

別掲(2)

別掲(3)

審理終結日 2004-07-06 
結審通知日 2004-07-09 
審決日 2004-07-21 
出願番号 商願平9-157911 
審決分類 T 1 12・ 26- Z (Z25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 浩子 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 井岡 賢一
中村 謙三
登録日 2003-01-17 
登録番号 商標登録第4637721号(T4637721) 
商標の称呼 ポロジーンズ、ポロ 
代理人 川本 真由美 
代理人 白石 吉之 
代理人 田中 秀佳 
代理人 黒岩 徹夫 
代理人 曾我 道照 
代理人 熊野 剛 
代理人 城村 邦彦 
代理人 山根 広昭 
代理人 江原 省吾 
代理人 岡田 稔 
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