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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない Y03
管理番号 1134565 
審判番号 取消2005-30306 
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-03-18 
確定日 2006-03-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4756915号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4756915号商標(以下「本件商標」という。)は、「LOVE PASSPORT」の文字を標準文字で書してなり、平成15年7月17日に登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、同16年3月19日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第2219231号商標は、「LOVE」の文字を横書きしてなり、昭和46年8月5日に登録出願、第4類「歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録され、その後、同12年5月23日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
同じく登録第2219232号商標は、「ラブ」の文字を横書きしてなり、昭和46年8月5日に登録出願、第4類「歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録され、その後、同12年5月23日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
同じく登録第2431617号商標は、筆記体による「Love」の文字と「ラブ」の文字とを上下二段に横書きしてなり、昭和48年5月10日に登録出願、第4類「歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、平成4年7月31日に設定登録され、その後、同14年5月28日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同16年3月3日に指定商品を第3類「歯みがき,化粧品,香料類,薫料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」とする書換登録がされているものである。
(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)

3 請求人の主張の要点
請求人は、商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第13号証を提出している。
(1)被請求人が広告宣伝などの「パンフレット」及び「瓶」、包装容器の箱などに使用している商標の態様は、「LOVE」の文字を筆記体をもって大きく横書きし、その「LOVE」の「O」の下より「Passport」の文字を小さく筆記体をもって横書きしてなるものであって、これは「LOVE PASSPORT」の文字を横書きしてなる本件商標とはその構成態様を著しく相違する使用である。
これを立証するものとして、瓶を入れる箱(甲第8号証 ) 、パンフレット(甲第9号証)、容器を入れる包装箱(甲第10号証)、「楽天市場」フレグランス・ポイント香水市場のパンフレット(甲第11号証)、月刊雑誌「国際商業」2003年12月号の抜粋(甲第12号証)、月間雑誌「美的」2004年3月号の抜粋(甲第13号証)を提出する。これら各甲号証に示された商標の使用方法は、前記した如く登録商標と著しく構成を異にする態様をもって使用されていることは明らかである。
(2)したがって、その商標の使用態様よりは、筆記体をもって著しく大きく「Love」の文字が表示されていることから、一般の取引者、需要者の間においてはこれが商標の要部とみなされ、取引の実際においては単に「Love」の文字より「ラブ」の称呼、観念を生ずることは明らかであり、請求人が所有する引用商標と称呼及び観念において、類似する商標を使用しているものである。
(3)さらに、請求人は、被請求人に対し、平成15年11月20日付けの通知書をもって、商品の容器正面及び包装箱正面に「Love」と「Passport」を2段に分けて「LovePassport」と表示した標章を付しているが、「Love」の部分が著しく大きく、当該標章の要部は明らかに「LOVE」にあり、よって、請求人の引用商標と要部において外観、称呼、観念のいずれにおいても類似し、その取扱商品の同一性又は類似性から消費者の間に誤認混同を生じさせるものである旨の内容を通知しており、それにもかかわらず、現在に至るも前記した態様の商標を継続して使用していることは、請求人の引用商標と類似する商標の使用であって、故意に引用商標に係る他人の業務に係る商品と誤認混同を生じさせるものであるから、本件商標は、商標法第51条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1ないし第5号証を提出している。
(1)商標法第51条第1項の趣旨
商標法第51条第1項の立法趣旨を確認すれば、次のとおりである。すなわち、「本条は、商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用をして一般公衆を害したような場合についての制裁規定である。すなわち、前述のとおり、商標権者は指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有するが、指定商品又は指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品又は指定役務に類似する商品又は役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用は、法律上の権利としては認められていない。ただ、他の権利と抵触しない限り事実上の使用ができるだけである。そこで、このような商標の使用であって、商品の品質若しくは役務の質の誤認又は商品若しくは役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものの使用を故意にしたとき、つまり、誤認、混同を生ずることの認識があったときには、請求により、その商標登録を取り消すこととしたのである。」(乙第1号証)のように、「商標権者が、故意に、いわゆる禁止権内の類似範囲の商標の使用をしたことにより、一般公衆を害するような、誤認、混同を生じさせた場合について、商標権者に対して制裁を与える」趣旨である。
したがって、被請求人の本件商標の登録を取り消すためには、以下の要件事実を充足することが、少なくとも必要である。
(ア)被請求人が類似の範囲の商標を具体的に使用したことにより、相手方(請求人)の業務に係る商品の出所の混同を具体的に生じさせたこと
(イ)商品の出所の混同の生ずるおそれがあることを認識していた故意があること
かかる立法趣旨の観点から請求人の主張をみるに、本件商標の登録を取り消すべき要件事実が欠けている。
(2)具体的に混同が生じた事実はないこと
(ア)請求人は、引用商標を挙証して、「請求人は、被請求人に対し、平成15年11月20日付けの通知書をもって、商品の容器正面及び包装箱正面に『Love』と『Passport』を2段に分けて『LovePassport』と表示した標章を付しているが、『Love』の部分が著しく大きく、当該標章の要部は明らかに『LOVE』にあり、よって、請求人の引用商標と要部において外観、称呼、観念のいずれにおいても類似し、その取扱商品の同一性又は類似性から消費者の間に誤認混同を生じさせるものである旨の内容を通知しており、それにもかかわらず、現在に至るも前記した態様の商標を継続して使用していることは、請求人の引用商標と類似する商標の使用であって、故意に引用商標に係る他人の業務に係る商品と誤認混同を生じさせるものであるから、本件商標は、商標法第51条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。」と述べ、「被請求人が、請求人の登録商標と類似する表示態様で 『LovePassport』の商標を使用したので、本件商標の登録を取り消すべきである。」と主張しているようである。
しかしながら、請求人は、被請求人が「LovePassport」を使用したために請求人の業務に係る商品と混同を生じさせたとする商標(請求人が使用していた商標)がどのようなものであったのか、当該商標を使用した商品がどのようなものであったのか、どのように一般公衆を害する結果になったのか、についての事実関係の主張・立証を全くしていない。
この請求人の主張には、「被請求人が『LovePassport』を使用したために一般公衆を害する結果になったから被請求人が制裁を受けるべき事実」は、1つとして存在していないことが、一見して、明らかである。
(イ)請求人の主張・立証は、単に、「被請求人が使用した商標の構成が請求人の登録商標と類似している」か否かの観点(一般的出所の混同の観点)に限られており、被請求人が商品流通経路において具体的に使用した結果、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせたか否かの観点(具体的出所の混同の観点)からの主張・立証は全くなされていない。
したがって、請求人の主張・立証からは、被請求人の商標の使用によって請求人の業務に係る商品と出所の混同が生じた事実も、その結果一般公衆を害した事実も、全く明らかではない。
(ウ)請求人は、混同を生ずる理由として、被請求人が「Love」と「Passport」とを2段に分けて表示したことを強く主張している。
しかしながら、本件商標は、乙第2号証に示すように、「LOVE」及び「PASSPORT」を一連のものとして構成することにより、「愛への旅」のイメージを形成することをテーマとして、被請求人が制作し、使用し続けているもので、実際の使用上、たとえデザインのために2段に表示したとしても、「Love」と「Passport」を分離せずに一連に読むように一般公衆に訴え続けることが必要で(乙第5号証)、「Love」の部分だけを強調することは全く行っていない(「愛への旅」のイメージを壊すことになるから)。
このように、「愛への旅」を訴え続ける「Love Passport」の使用によって、請求人が主張するような混同が具体的に生ずることは全くあり得ない。
(エ)また、乙第4号証は、請求人の商標「LOVE」が登録されている状態において、2段に分けて表記した商標「Angel’s/Love」、「TRUE/LOVE」、「Secret/Love」、「Love/N.Y.」、「sugar/baby/love」、「Love/Tears」が登録されている。
この登録経過から考えると、特許庁は、「一般的出所の混同の観点からみて、2段に分けて表示しても、混同が生ずるような類似性はない」と、請求人の主張を否定するような、判断をしていることが分る。
(オ)このように、被請求人が商品の流通経路において具体的に混同を生じさせた事実はないばかりではなく、一般的出所の混同の観点からみても、混同を生ずるとは考えられないものであるから、請求人の主張に基づいて、本件商標の登録を取り消すべき理由は全くない。
(3)被請求人に故意がないこと
(ア)被請求人の使用事実を乙第5号証によって提示する。被請求人は、日本国内において、本件商標に関連する商標を使用した「香水」を、2003年から現在(2005年)まで、活発に販売している株式会社であるが、その流通経路において、請求人が商標「LOVE」、「ラブ」又は「Love/ラブ」を香水に使用している事実に遭遇したことがない。
したがって、具体的な商品流通経路において、被請求人の「LOVE PASSPORT」等の使用により、請求人の商品との間に、出所の混同が生じることは到底あり得ない。
これが被請求人の認識であり、故意に混同を生じさせようと意図して、「LOVE PASSPORT」等を使用したことは全くない。
(イ)また、被請求人は、本件商標を登録出願した際に、特許庁に既に出願・登録されている関連商標についての調査をすることにより、登録可能な類似の範囲の検討をしており、このとき既に、引用商標が存在していることを把握していた。
これと共に、「LOVE」を一部に含む多数の商標群が、登録出願され、登録されていることを確認していた。「LOVE」を含む登録商標をピックアップすれば、 「LOVE MY EYES」、「LOVE MY LIPS」・・・・「LOVE EARTH」、「LOVE TOKEN」などがあった。
本件商標の登録出願後においても、「LOVE」を含む商標群が多数登録されており、この事実は、乙第4号証によって現時点でも確認できる。
このように、「LOVE」を含む多数の商標が登録されていることについて、被請求人は、「LOVE」それ自体はそれ程の識別力をもっておらず、その類似の範囲も狭いと判断し、「LOVE」の語に、他の語「PASSPORT」を結合すれば、一般的には「LOVE」とは非類似と認識されると判断して登録出願をした。
その結果、特許庁において本件商標の登録がなされたので、被請求人は、本件商標との類否関係についての判断が一人よがりのものではなく、特許庁の判断と一致したと認識したのである。
このような認識の下に、被請求人は、「ラブパスポート」と一連に称呼できるような表示態様で本件商標を具体的に商品に付けるようにすれば、たとえ「LOVE」の商標を付した商品が他にあっても出所の混同は生じないと考えて、本件商標に関連する商標を具体的に商品流通経路において使用するに至ったものである。
(ウ)この点について、請求人は、本件商標のうちの「LOVE」を目立つように表示したから、「LOVE」と混同すると主張するが、被請求人は、本件商標は常に「ラブパスポート」と一連に称呼できるように表示すると共に、一般公衆が常に「LOVE PASSPORT」すなわち「幸せへのパスポート」を認識できるようなキャッチコピーを機会あるごとに提示することにより、商品流通経路に「ラブパスポート」ブランドを確立する努力をしており(乙第2号証)、このブランド戦略は一般公衆に受け入れられていることは、商品の売上の推移からも確認できている。
(エ)このように、被請求人は、故意に請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるような意図は全くなく、また、その必要性もないから(具体的には請求人の商品との競合がないので)、請求人の主張に基づいて、本件商標の登録を取り消すべき理由は全くない。
(4)「LOVE PASSPORT」を引き続き保護すべきである
(ア)本件商標は、「香水という商品に、『物語性のある夢』を載せてお客様に届ける」という考え方に従って制作され(乙第2号証)、被請求人が独自に構築した世界に一般公衆を引きつける工夫をしながら、2003年から現在まで途切れることなく、商品に使用し、数多くの広告やイベントによって一般公衆にイメージの浸透を図る努力を重ね、その結果各種メディアに紹介されて露出する機会を拡大させている(乙第5号証)。
その結果、乙第3号証の調査会社の報告書に一例を示すように、商品「LOVE PASSPORT」の日本国内の売上ランキングは、販売を開始したばかりの2003年においてすでに43位になっていた。このランキングは、2003年に日本国内で販売された香水の商品数2千数百における順位であり、この頃すでに上位に入る位の顧客吸引力(すなわち周知性)を獲得していたのである。
(イ)請求人が甲第8号証その他で指摘した、被請求人の二段表記の筆記体の「Love Passport」は、ペイネが創作したキャラクタと組み合せて、「愛への旅」のイメージを創り出しているもので、この「愛への旅」のイメージは、決して「Love」のイメージのみによって生じるものではなく、一連の「Love Passport」のイメージを積極的に被請求人が創り出すことにより生じたものである。換言すれば、二段表記ではあっても、「Love」と「Passport」とが不可分に結合されてはじめて「愛への旅」のイメージが形成されている。
このように、「Love Passport」を「Love」の要部とそれ以外の要部とに分けることに必然性は全くなく、常に「Love Passport」と一連のものとして構成して使用することにこそ必然性がある。
このイメージは、単に商標の物理的な構成のみから来ているものではなく、被請求人の絶え間のない使用努力によって「Love Passport」の商標に化体され、これが顧客吸引力となって商品の流通、販売に貢献しており、正に商標として保護されるべきものになっているのである。
(ウ)これに対して、請求人所有の引用商標は、現実に使用されている商標の態様を請求人が提示していないもの(したがって、現実の使用がなされていないもの)である。
いうまでもなく、特別の事情がない限り、使用されていない商標に顧客吸引力が化体されることはないのであるから、結局、請求人は「登録商標であるから保護すべきである」と主張していることと同じである。
単に「登録」されていることだけを根拠に保護を求める請求人のこの請求は、商標の機能として実体を伴わないものであるから、権利の乱用として許されない。
(5)結論
以上のとおり、被請求人の商標「Love Passport」の使用は、商標法第51条第1項に該当しないものであるから、本件商標の登録を取り消すべき理由はない。

5 当審の判断
(1)本件審判について
本件審判は、商標法第51条第1項の規定に基づき商標登録の取消を求めるものであるところ、同条の規定の趣旨は、商標権者が、故意に、登録商標と同一又は類似の商標を指定商品と同一又は類似の商品に使用して、商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生じさせた場合に、商標権者に対する制裁として、その商標の登録を取り消すというものであり、したがって、同条に基づき本件商標の登録を取り消すためには、被請求人が類似範囲にある商標の使用をすることにより、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせたこと、及びその使用について故意があったこと、つまり商品の出所の混同を生ずるおそれがあることを認識していたことが要件となると解される。
そこで、この観点から以下に検討する。
(2)被請求人の使用に係る商標について
被請求人が商品「香水」について使用している商標として、請求人が甲第8ないし第13号証において掲げる商標は、(ア)香水の瓶容器、(イ)瓶を入れる箱、(ウ)瓶その他の容器をセットで入れた包装箱及び(エ)パンフレットにそれぞれ表示されているものであり、その態様は別掲1ないし4のとおりである。これらの態様は、被請求人が乙第5号証において掲げるものと同じものであり、いずれも、筆記体で大きく横書した「Love」の文字の下部にやや小さく筆記体で「Passport」の文字を横書きし、さらにこれらの右上方に2つのハート状図形を配した構成からなる標章(以下「本件使用標章」という。)が基本的構成部分として表現されている。しかして、本件使用標章は、「Love」の文字と「Passport」の文字とが大きさが異なり二段に表されているとしても、両者が同じ筆致で書され近接して配置されており、ハート状図形と相俟って全体としてまとまりのある一体的印象を与えるものといえる。
子細にみると、瓶容器には、本件使用標章が瓶の中央に表されているほか、瓶の下方部に同じ筆致による「Peynet」の文字が配されている。瓶を入れる箱には、本件使用標章に加え、天使と思しき子供の図形とハート図形が描かれており、このハート図形は、本件使用標章中のハート図形に連続するように配され、さらに子供の図形の下方部に本件使用標章中の文字と同じ筆致で「Love Passport」の文字が横書きされている。瓶を入れる箱には、さらに、この子供の図形の脇に帽子を被りバッグを持った女性の図形が配されたものもある。瓶その他の容器をセットで入れた包装箱の上面には、本件使用標章に加え、その右下に書された「Peynet」の文字、上記子供の図形、上記女性の図形及び下方部に書された「French Kiss」の文字がバランスよく配されている。パンフレットには、本件使用標章、上記子供の図形、上記女性の図形、上記「Peynet」の文字、瓶容器の写真に加え、下方部に同じ筆致による「Love Passport by Peynet」の文字が一連に横書きされている。
なお、本件使用標章と離れて表示された上記「Love Passport」又は「Love Passport by Peynet」の文字部分は、同書同大の文字を一連に表してなるものであり、殊更「Love」の文字のみが独立して看取されるものではないし、請求人もこの文字部分については特に争っていないものと認められるので、以下、本件使用標章について検討することにする。
(3)本件使用標章と本件商標との類似性及び商品の出所の混同について
上記(2)のとおり、香水の瓶容器、瓶を入れる箱、瓶その他の容器をセットで入れた包装箱及びパンフレットには、いずれも本件使用標章が表示されているところ、「Love」及び「Passport」の文字は、まとまりよく一体的に表現されているばかりでなく、該容器等に一緒に描かれた他の図形や「Love Passport」、「Love Passport by Peynet」等の文字とも相俟って、一連一体のものとして認識されるというのが自然である。さらに、甲第8、第9、第11、第12号証及び乙第5号証によれば、商品のパンフレット等における商品の説明には、上記香水の瓶容器と共に「ラブ パスポート」又は「ラブ パスポート バイ ペイネ」の文字が常に表示されていることが認められることからすれば、なおさら一連一体のものとして認識されるというべきである。
そうすると、本件使用標章は、「LOVE PASSPORT」の文字からなる本件商標と類似するものであるとはいえても、これに接する取引者、需要者が「Love」の文字部分のみに注目して引用商標を連想、想起するようなことはなく、その使用に係る商品を請求人の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。さらに、請求人は、本件使用標章の使用により請求人の業務に係る商品と具体的に混同を生じたか否かについては何ら主張・立証するところがない。
(4)被請求人の故意について
上記(3)のとおり、本件使用標章は、常に一連一体のものとして認識し把握されるものであり、殊更「Love」の文字のみが看者の注意を惹くというものではないばかりでなく、被請求人の提出に係る証拠を総合すれば、被請求人には、本件使用標章を使用することにより請求人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせようとする意図はもとより、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるという認識もなかったものというべきである。
したがって、被請求人には、商標法第51条第1項にいう故意はなかったものといわなければならない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件使用標章の使用は、商標法第51条第1項に定める要件を満たすものではないから、本件商標の登録は、同条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 使用標章(瓶を入れる箱)


別掲2 使用標章(パンフレット)


別掲3 使用標章(瓶その他の容器をセットで入れた包装箱)


別掲4 使用標章(パンフレット)


審理終結日 2006-01-18 
結審通知日 2006-01-24 
審決日 2006-02-06 
出願番号 商願2003-60173(T2003-60173) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (Y03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 和江 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 久我 敬史
高野 義三
登録日 2004-03-19 
登録番号 商標登録第4756915号(T4756915) 
商標の称呼 ラブパスポート 
代理人 田辺 恵基 
代理人 石塚 直彦 

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