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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z33
管理番号 1129304 
審判番号 取消2004-30725 
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-02-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2004-06-08 
確定日 2006-01-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4448992号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4448992号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標登録の取消しの審判
1 本件商標
本件商標登録の取消しの審判に係る、登録第4448992号商標(以下「本件商標」という。)は、平成11年10月13日に登録出願、「STOLNAYA」の欧文字を標準文字で表してなり、政令で定める商品区分第33類(平成8年政令第274号をもって改正された商標法施行令1条に基づく商品の区分)に属する「日本酒,ウォッカ,その他の洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒 」を指定商品として、同13年1月26に設定登録されたものである。
2 本件商標登録の取消しの審判
本件商標登録の取消しの審判は、商標法50条により、登録の取消しを請求するものであり、その予告登録が平成16年6月23日になされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べた。
1 請求の理由
請求人の調査するところによるも、本件商標は継続して3年以上日本国内において商標権者により使用されている事実を発見することができなかった。また、本件商標について、専用使用権通常使用権の登録もされておらず、これらの者による使用の事実もない。
よって、本件商標の登録は、商標法50条1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁(第一回)に対する弁駁
(1)被請求人は、株式会社やまやが本件商標の通常使用権者であることを何ら立証していない。また、問題の商品が被請求人の取扱に係る商品であることを何ら立証していない。被請求人は、輸出されたとされるロシアのオスト・アルコ社が被請求人のグループ会社であると主張するが、該事実を裏付けるようなグループの組織図、同社のパンフレット・ホームページ等を全く提出していない。
問題の「ウォッカ」がロシア国内市場で販売され、これをオスト・アルコ社が購入し、これを日本に輸出した場合には、いわば並行輸入の商品となって、これをもって、本件商標が使用されたとは言えない筈である。被請求人は、これらの仮定を覆す証拠方法は何ら提出していない。
(2)商標法50条にいう登録商標の使用における「輸入」とは、その商標が付された商品が市場において需要者に販売されたか、少なくとも販売することを目的に輸入されることを意味するものであって、本件におけるような、そもそも販売を目的とすることなく単に化学分析のためにのみ輸入するものは含まれないと解される。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第15号証を提出した。
1 答弁(第一回)
本件商標は、指定商品「ウォッカ」について、本件審判の請求の予告登録前3年以内に、本件商標の通常使用権者により使用された事実がある。
通常使用権者である株式会社やまやは、2003年3月ないし8月にアイピー・エンタープライゼズ・インコーポレイテッド社を介して、被請求人のグループ会社であるオスト・アルコ社から、本件商標が印刷されたラベルが貼付されたウォッカを先行サンプルとして化学分析のために輸入した。この点は、乙第1号証ないし同第11号証により明らかである。
取り引き書類において、商品は全て「STOLNAYA」の本件商標を使用して商品を指定し区別されている。これも本件商標が付された状態でウォッカのびんが取り引きされていたことを示すものである。また、乙第11号の証明書も取り引き書類の一種と考えられ、ウォッカの商品とともに使用されているので、乙第11号証自体が本件商標の使用事実を示すものである。
2 弁駁に対する答弁(第二回)
(1)請求人の「株式会社やまやが本件商標の通常使用権者であることを何ら立証していない」との主張について
輸出を行なったオスト・アルコ社が被請求人と同一の企業グループのメンバーであることは添付の乙第12号証(同企業グループのウェブサイトからの印刷物)、乙第13号証(同抄訳)、乙第14号証(同企業グループの宣伝用パンフレット)、及び乙第15号証(同抄訳)の記載から明らかである。
そして、株式会社やまやがオスト・アルコ社から商品の輸入を受けた際には株式会社やまやが被請求人から本件商標の使用に関し通常使用権の許諾を受けたということができる。即ち、株式会社やまやは当該商品ウォッカを通常使用権者として輸入したことは明らかである。
(2)株式会社やまやが行った化学分析のための輸入は商標法50条の使用に該当しないとの主張について
本件における通常使用権者である株式会社やまやによる輸入それ自体は、化学分析を直接の目的とした輸入であるが、この輸入には、背景に、化学分析の結果問題なければ日本国内市場での販売目的で輸入するという意思が存在する。
被請求人は、単に試験機関で検査分析された状態では業務上の信用を化体することができないので、法50条に言う「輸入」には本件における株式会社やまやによる、化学分析を直接の目的とした輸入は含まれないと主張する。
しかしながら、かかる請求人の主張は次の理由により到底認めることはできない。
第一に、商標法2条3項2号には標章の使用行為について「商品又は商品の包装に標章を付したものを・・・輸入・・・する行為」と規定しているが、「輸入」が販売目的の輸入に限り、化学分析のための輸入は排除するとの積極的な規定はない。
第二に、本件での輸入は直接的には確かに化学分析を目的とする輸入であって販売を直接の目的としていないが、化学分析という行為が化学分析それ自体で終わるものではなく、その背景に、化学分析の結果問題なければ日本国内市場での販売目的で輸入するという意思が内在しているのである。換言すると、本件の輸入は次段階の販売のための輸入に結びついているのであるから、広い意味で販売を目的とする輸入の一環と考えるのが妥当である。
第三に、商標法50条は、わが国商標法の基本である登録主義の原則を使用主義の観点から修正を図る趣旨であると考えられるが、上記の通り広い意味で販売目的の一環として捉えることができる輸入行為を排除することは、既に化体した信用を保護するというよりはむしろ使用意思を尊重する商標法の立場からすると、同50条の趣旨に反すると考える。例えば、同50条の取消審判制度において、一定の期間内に商標権者等がたとえ一回きりの使用であって到底業務上の信用が化体しない程度の使用であったとしても取消を免れると扱われている実情は、まさにその一回の現実の使用に商標権者等の使用意思及び将来における信用の化体を想定しているから、と言うべきである。本件の場合も、広い意味で販売を目的とする現実の使用(輸入)があり、かつ今後の使用意志も存在するのである。よって、本件における輸入も50条における登録商標の使用と解されるべきである。
したがって、本件における株式会社やまやによる「輸入」は通常実施権者によって行なわれた、商標法50条に規定された登録商標の使用に該当するものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件審判の予告登録前3年以内に、指定商品「ウォッカ」に使用されていたものである。

第4 当審の判断
1 商標法50条1項に規定する商標登録の取消審判の請求があったときは、同条2項の規定により、審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることを被請求人が証明するか、又は、使用していないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取り消しを免れない。
これを本件についてみるに、被請求人は、通常使用権者である株式会社やまやが、2003年3月ないし8月に、アイピー・エンタープライゼズ・インコーポレイテッド社を介してロシアのオスト・アルコ社から、本件商標が付された「ウォッカ」を先行サンプルとして化学分析のために輸入したものであって、この行為は、商標法50条に規定された登録商標の使用に該当する旨主張している。
2 株式会社やまやが本件商標の通常使用権者ということができるか
被請求人が、株式会社やまやは、本件商標の通常使用権者であると主張していることについて、当事者間に争いがあるので、まず、この点について検討する。
請求人が、「被請求人は、株式会社やまやが本件商標の通常使用権者であることを何ら立証していない。」と主張したことに対して、被請求人は、答弁書(第二回)において、「株式会社やまやがオスト・アルコ社から商品の輸入を受けた際には株式会社やまやが被請求人から本件商標の使用に関し通常使用権の許諾を受けたということができる。」と述べている。
しかして、通常使用権は、書面による契約によらずとも成立するものであることから、商標権者から商品の譲渡を受けた者が当該商品を再譲渡する場合、その取引行為に不自然な事情等が認められないかぎり、通常は、その者を通常使用権者とみて差し支えないといえるものである。
しかるに、本件の場合は、提出された乙各号証からは、株式会社やまやが本件商標の通常使用権者であることを推認しうるような事実や事情等をみいだすことができず、また、本件輸入は、商標権者と株式会社やまや間の直接の取引ではなく、アイピー・エンタープライゼズ・インコーポレイテッド社(この会社が商標権者及び株式会社やまやとどのような関係を有するかも明らかではない。)を介してなされたものであって、かつ、本件ウォッカは、日本国内の取引市場で流通に供されるためではなく、化学分析のために輸入されたものであり、これらの一連の取引行為からは、株式会社やまやが本件商標の通常使用権者であると推認すべき蓋然性ないし合理的な事情を汲み取ることはできない。
そうとすれば、被請求人は、株式会社やまやが本件商標の通常使用権者であることを否定する請求人の主張に対して、自己の主張を立証する責任があるといわねばならないところ、上記主張をするのみで、株式会社やまやが本件商標の通常使用権者であることを示す証拠を提出していない。
したがって、被請求人の主張及び提出された乙各号証をもってしては、株式会社やまやが本件商標の通常使用権であるとすることはできないものといわなければならない。
2 本件商標が付されたウォッカが輸入されたことについて
次に、本件商標が付されたウォッカを化学分析のために輸入された行為(以下「本件輸入行為」という。)が本件商標の使用に該当するか否かについて検討する。
被請求人が提出した乙各号証をみるに、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証及び同第2号証は、ウォッカの瓶の写真と認められるものであり、この瓶には、やゝデザイン化して表された「STOLNAYA」の文字を含むラベルが貼付されている。なお、撮影日時は正確には把握できない。
(2)乙第3号証は、アイピー・エンタープライゼズ・インコーポレイテッド社がオスト・アルコ社へ宛てた2003年3月13日付の注文状の写しであり、乙第4号証はその訳文である。これらによれば、「貴社に注文する目的で化学的分析をするために下記のサンプルを必要としております。」として、「Stolnaya40% びん2本、Stolnaya Cranberry びん5本、Stolnaya Red Bilberry びん5本、Stolnaya Pepperoni びん5本、Stolnaya Lemon びん5本」を東京都銀座在のホテル西洋銀座のシーン・ペリーまで送るように依頼している。
(3)乙第5号証は、シーン・ペリーがホテル西洋銀座に宛てた2003年3月13日付のイーメール及び同ホテルからの返信メールであり、乙第6号証はその訳文である。これらによれば、シーン・ペリーは、上記ホテルに宛ててイーメールをもって、酒類のサンプルの荷物が届いたら株式会社やまやに送るように依頼し、同ホテルは、シーン・ペリー宛てに、酒類のサンプルの荷物が届いたら株式会社やまやに送る旨返信している。
(4)乙第7号証は、オスト・アルコ社の2003年3月14日付の送り状の写しであり、乙第8号証は、その訳文である。これらによれば、オスト・アルコ社は、ホテル西洋銀座宛てに、Stolnaya40%の0.7リットル入りのびん2本等を発送したことが記載されている。
(5)乙第9号証は、DHL貨物発送伝票第452 3299 675号の写しであり、乙第10号証は、その訳文である。これらによれば、2003年3月14日に、オスト・アルコ社からホテル西洋銀座宛てに、Stolnayaウォッカびん2本とStolnaya Cranberryウォッカびん3本が発送された旨記載されている。
(6)乙第11号証は、財団法人日本冷凍食品検査協会仙台検査所による輸入食品等試験成績証明書の写しであり、これによれば、品名として「VODKA STOLNAYA 他(先行サンプル)」、到着年月日として「平成15年7月11日と同8月14日」、輸入業者名として「株式会社やまや」の名称が記載されており、試験成績として、VODKA STOLNAYA、VODKA STOLNAYA LEMON、VODKA STOLNAYA PEPERONI、VODKA STOLNAYA CRANBERRY、VODKA STOLNAYA WILD BILBERRYについて、メチルアルコール、合成着色料が検出されなかったことが記載されている。
(7)上記において認定した事実及び被請求人の主張を総合すれば、宮城県塩釜市に住所を有する株式会社やまやは、2003年3月から8月にかけて、アイピー・エンタープライゼズ・インコーポレイテッド社を介して、被請求人のグループ会社であるとされるオスト・アルコ社から、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されているウォッカを化学分析のために輸入したということができるものである。
(8)しかしながら、乙第1号証ないし同第11号証によっては、本件ウォッカが日本国内において、取引者・需要者に対する商取引の対象として流通に供された事実を認めることはできないものである。
3 本件ウォッカは本件取消審判の使用の対象としての商品といえるか
前記「2」で認定したように、本件ウォッカは、本件取消審判の請求の登録前3年以内に化学分析のために輸入されたといえるものである。
そこで、このウォッカが、本件取消審判に係る登録商標の使用の対象としての商品であるといえるか否かについて検討する。
商標法は2条3項で「使用」の定義をしているところ、その対象は、商標を含む「標章」についてであり「商標」についてではない。そして、「商標」については、同条1項で、「標章」のうち「業として、商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」(同項1号)と、さらに「登録商標」については、「商標登録を受けている商標をいう。」(同項2号)と定義されているところである。
そうすると、商標法上、登録商標の使用は、業として、生産し、証明し、又は譲渡する対象となる商品(以下、本件において「商標法上の商品」という。)についてなされるものと解するのが相当であって、これは、商標法50条における登録商標の使用の対象となる商品についても同様に解して差し支えないというべきである。そして、このことは、「商標法50条における商品とは、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならないと解すべきである。」とした判決(東京高裁 平成16年11月30日 平成16年(行ケ)第337号判決参照 最高裁ホームページ掲載)に照らしても相当といえるものである。
そこで、これを本件についてみるに、本件ウォッカは、被請求人も自認するように、化学分析のために輸入されたものであるところ、これが化学分析の対象ににどどまるかぎりでは、業(業務)としての生産、証明、又は譲渡の対象となる物とはいえないから、これを商標法上の商品ということはできないものである。
したがって、本件輸入行為をもって本件商標が、その指定商品中の「ウォッカ」について使用されたと認めることはできないものである。
この点について、被請求人は、化学分析という行為が化学分析それ自体で終わるものではなく、その背景には、日本国内市場での販売目的で輸入するという意思が内在しており、本件の輸入は次段階の販売のための輸入に結びついているのであるから、広い意味で販売を目的とする輸入の一環と考えるのが妥当であると主張している。
しかるに、本件輸入行為が、仮に、被請求人のいうような将来の目的を有しているものとしても、それは、被請求人の現時点での使用の意思にすぎないものであって、本件輸入行為をもって、本件商標が、本件取消審判の請求の登録前3年以内に使用されたと認めることはできないことは上記のとおりである。したがって、前記の被請求人の主張は、採用することはできない。
そして、本件ウォッカは、前記「2(8)」で認定、判断したように、ほかに、被請求人の日本国内における業(業務)の対象として、生産され、証明され、又は譲渡されたものであるとすべき事実を認めることはできないから、本件ウォッカは、商標法50条の使用の対象となる商標法上の商品としての要件を具備しないものといわなければならない。
4 まとめ、
以上のとおり、株式会社やまやが本件商標の通常使用権者であると認めることはできず、また、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標を本件審判請求の登録(平成16年6月23日)前3年以内に日本国内において、取消請求に係る本件商標の指定商品について使用していたと認めることはできないものといわなければならない。
そして、他に、被請求人は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標を使用していることを証明しておらず、また、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法50条の規定により取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-08-09 
結審通知日 2005-08-15 
審決日 2005-08-29 
出願番号 商願平11-92990 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z33)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 厚子 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
登録日 2001-01-26 
登録番号 商標登録第4448992号(T4448992) 
商標の称呼 ストルナヤ 
代理人 勝部 哲雄 
代理人 青木 篤 
代理人 岩見谷 周志 
代理人 田島 壽 

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