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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 027
管理番号 1126276 
異議申立番号 異議1998-92172 
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2005-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-02 
確定日 2005-10-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第4173706号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4173706号商標の登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4173706号商標(以下「本件商標」という。)は、商標の構成を別掲に示すものとし、平成8年1月31日に登録出願、第27類「敷き物,壁掛け(織物製のものを除く。),畳類,洗い場用マット,人工芝,プラスチック製の壁板・タイル及び床板,リノリューム製の壁板・タイル及び床板,壁紙」を指定商品として平成10年3月12日に登録査定、同年8月7日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法4条1項8号、同11号及び同15号に違反してされたものであり、本件商標の登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第62号証(枝番を含む)を提出した。
1 商標法4条1項8号について
本件商標は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の氏名の著名な略称「VALENTINO」を含むものであり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されたこと明らかであるから、本件商標の登録は、商標法4条1項8号に違反してなされたものである。
2 商標法4条1項11号について
本件商標は、登録第1304792号商標、同第1276291号商標、同第1648451号商標、同第1315877号商標及び同第2128580号商標と類似するものであって、かつ、本件商標の指定商品はこれらの引用各登録商標の指定商品と類似するから、本件商標の登録は、商標法4条1項11号に違反してなされたものである。
3 商標法4条1項15号について
申立人は、前記「2」で引用した登録商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用しているところ、これらのうち、例えば、「VALENTINO」の欧文字をややデザイン化してなる登録第852071号商標、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなる登録第1415314号商標、同じく同第1793465号商標、同第1786820号商標、同第1402916号商標、また、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなる登録第972813号商標が、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服、バンド、バッグ類、靴、タイター等に使用され、しかも、これらの引用各登録商標も本件商標の登録出願の日前より全世界に著名になっていることは甲第9号証ないし同第62号証に照らして明らかである。
したがって、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用した場合、その商品が恰も申立人の業務に係る商品であるか、又は、申立人と何等かの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがある。故に、本件商標の登録は、商標法4条1項15号に違反してなされたものである。

第3 本件商標に対する取消理由
1 申立人の主張の趣旨及び甲第7号証、同第13号証ないし同第62号証(枝番を含む)によれば、次の事実が認められる。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
わが国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノブティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品はわが国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏はわが国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成8年1月31日当時には、既にわが国においても著名であったものと認められる。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。
そして、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラバーニ)氏がデザインした婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー、香水等のファション関連製品は、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」の商標(以下「引用商標」という。)をもってわが国の取引者、需要者の間に広く知られている事実が認められる。
2 さらに、当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」 「VALENTINO GARAVANI」は、わが国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non-no」1989年 No23号等からも認められる。
3 以上の事実よりすると、申立人は、引用商標よりなる商標を婦人服を始めとし、紳士服、ネクタイ、アクセサリー、バッグ、香水等の商品に使用しており、その結果、引用商標は、本件商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものといえる。
4 本件商標は、別掲に表示するとおり、図形と「LUCIANO」の文字及び「VALENTINO」の文字とを二段に横書きしてなるところ、ヴァレンティノ・ガラバーニのデザインに係る商品を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されている引用商標の「VALENTINO」商標は、前記認定の如く、引用商標の「VALENTINO」商標が取引者、需要者の間に広く認識されていることに照らせば、本件商標に接した取引者、需要者は、引用商標の「VALENTINO」の文字部分を有しているものと容易に認識、理解するものと判断するのが相当であり、また、有名デザイナーがデザインした商品には、ファッション関連商品だけではなく、日常一般に用いられる敷き物、ホテル等の内装のデザインされている事実があり、本件商標の指定商品には、該商品が含まれているものである。
5 そうとすると、商標権者が、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想させ、本件商標が付された商標が引用商標の一種ないしは兄弟ブランド、ファミりーブランドであるなどと理解し、あたかも上記デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と組織的、経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見(要旨)
1 取消理由は、本件商標が、著名商標である「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」と「VALENTINO」を共通にしているので、本件商標は出所の混同のおそれがあると認定している。
しかしながら、本件商標は姓名「LUCIANO VALENTINO」と「LVL」をモノグラム化した図形を一体的に表わしたものであるので、本件商標よりは、一体化した「ルチアーノ ヴァレンティノ」のみの称呼観念が生じ、「VALENTINO」を共通にしていても、本件商標は「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」と出所の混同のおそれはない。
ちなみに、本件商標は、参考資料1に示されるように、毛皮や皮製品のファッションデザイナーであるイタリア所在の「アンドレアラヴァニオ」氏の商標「LUTIANO VALENTINO」で、本件商標権者は、同氏より「LUTIANO VALENTINO」の日本における商標権を得ること及びライセンス活動をすることを許可されている。
ライセンス活動の結果、多数の分類の商品に本件商標が使用されていることが判る(参考資料1)。
こうした商取引において、本件商標は「ルチアーノ ヴァレンティノ」と呼ばれ、「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」と明確に区別されている。
2 本件商標は、参考資料2のごとく9分類に出願されているが、そのうち第18類、第14類、第25類、第21類、第9類、第3類の7つの分類においては登録を得ている。
このうち第25類及び第18類については、「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」より異議申立を受けたが、本件商標はイタリア語の姓名を一体的に表わしたもので、「VALENTINO GARAVAN I(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」とは混同しないとの異議決定(参考資料3及び4)が出ている。
3 「VALENTINO」に関して、ファッション関係の旧第17類及び新第25類において、参考資料5の1及び参考資料5の2にあるように、無数の「VALENTINO」と他の言葉との結合商標が登録されている(参考資料5の1ないし6の2)。このことが妥当であると、永年に亘り特許庁が判断してきたことを示すものと思われる。
また、市場に於いても、「VALENTINO GARAVANI」や「MARIO VALENTINO」を始めとして、多種の「VALENTINO十他の言葉」を付した商品が混同されることなく販売されている。参考資料7の1ないし4の商標もその例である。
このように、登録例や市場の現実を考慮すると、「VALENTINO」を共通にするからといって、本件商標と「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」が混同することは有り得ないと思料する。
また、「VALENTINO」は、「佐藤」や「上田」のようなイタリーではありふれた姓である。こうした識別力の乏しい言葉の商標に強い力を認め、本件商標のような氏名を意味し一体性の強い「LUCIANO VALENTINO」が登録性がないというのは、著しく公平の原則に反すると思われる。
4 申立人は、最近、「VALENTINO+他の言葉」の商標に対し、軒並み異議申立をしていると聞いているが、オランダ法人である申立人が、イタリー人であるファッション・デザイナーの「VALENTINO GARAVANI」氏の同意の下とはいえ、これまでの永年に亘る特許庁の登録例や市場の秩序、「VALENTINO十他の言葉」の平和的共存関係を破壊しようとしている態度に、横車を無理やり押しているという理不尽さを感じる。
5 次に、異議における甲号証を分析すると、以下のように、申立人の商標の使用態様に大きな変化が見られる。
(1)1988年(昭和63年)頃までに発行された甲号証に、「ヴァレンティノ(ヴァレンチノ)」の単独記載が相当数あることを認めるが、全て新聞や雑誌の記事であり、申立人自身が「VALENTINO」或いは「ヴァレンティノ(ヴァレンチノ)」を単独で使用していたかは、立証されていない。
(2)1989年(平成1年)ないし1996年(平成8年)頃に発行された甲号証は、外国雑誌を除くと、「VALENTINO」或いは「ヴァレンティノ(ヴァレンチノ)」の単独使用は見掛けられず、「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」という一体使用であり、その多くは自社広告である。
(3)1997年(平成9年)以降に発行された甲号証には、「VALENTINO」を単独使用した自社広告が現れ始める。
(4)このような商標の使用態様の変遷には、参考資料6の1及び2の商標登録第852071号「VALENTINO」の存在が関係していると考えられる。(2)の時期には、商標登録第852071号の商標権者とトラブルを起こし、「VALENTINO」或いは「ヴァレンティノ(ヴァレンチノ)」の単独使用はできず、「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」という一体使用をしていたが、平成8年9月9日に商標登録第852071号の移転登録を申立人が得て、それ以降(3)のような使用態様を始めたと推測でき、同時に他の「VALENTINO十他の言葉」の商標に対する攻勢を強めたと思われる。
上記の(1)の雑誌・新聞掲載態様は、(2)で申立人が商標の使用態様を変えたことにより、その証拠価値は地に落ちたとすることが正当である。
そうして見ると、本件商標の出願日は、平成8年1月31日で、(3)より早く、この点からも、本件商標が、商標法4条1項15号に該当しないことは明らかである。

第5 当審の判断
平成13年9月10日付けで通知した前記「第3」の取消理由は、妥当なものであり、これに対する商標権者の意見は、以下の理由により採用することはできない。
1 本件商標からは「ルチアーノ ヴァレンティノ」のみの称呼・観念が生じ引用商標と出所の混同のおそれはないとの主張について
商標権者は、「本件商標は姓名『LUCIANO VALENTINO』とモノグラム図形を一体的に表わしたものであるので、本件商標よりは、『ルチアーノ ヴァレンティノ』のみの称呼観念が生じ、『VALENTINO』を共通にしていても、本件商標は『VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)』と出所の混同のおそれはない。・・・・・商取引において、本件商標は『ルチアーノ ヴァレンティノ』と呼ばれ、『VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)』と明確に区別されている。」と主張している。
しかしながら、取消理由通知は、本件商標は引用商標である「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」の各商標との関係で他人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるとしたのであって、「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」商標との関係での出所の混同のおそれを認定したのではないから、この点をいう商標権者の主張は失当である。
そして、取消理由通知で認定・判断したように、引用商標である「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」の各商標が、取引者、需要者間に広く認識されていたといえることから、たとえ、本件商標が引用商標と称呼及び観念を異にすることで、区別されているとしても、これが、ヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいは申立人と何らかの関連のある商標であるとの認識をされる可能性までをも否定することはできないというべきである。
本件商標が引用商標と称呼及び観念を異にすることで、区別されるということと、本件商標商が出所の混同を生ずるおそれがあることとは、商標法上は別の問題であって、商標権者の主張は、商標法4条1項10号及び同11号の適用についてのものであり、それが是とされるのであれば同15号の適用はあり得ないこととなる。同15号の括弧書きは、外観、称呼、観念を異にすることで区別される商標でも、他人の業務に係る商品と混同のおそれがあるとされる場合もあることを規定したものにほかならない。
そうとすれば、引用商標である「VALENTINO」の文字を構成中に有する本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想させ、本件商標が付された商品が引用商標の一種ないしは兄弟ブランド、ファミりーブランドであるなどと理解し、あたかも、ザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は申立人、ないしは、これらの者と組織的、経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標が一連に称呼観念され、引用商標と明確に区別されるから、本件商標が商標法4条1項15号に該当しない旨をいう商標権者の主張は、これを採用することはできない。
2 本件商標と態様が同じである商品区分第25類及び第18類に係る商標については引用商標とは混同しないとの異議決定が出ているとの主張について
商標権者は、本件商標と態様が同じである商品区分第25類及び第18類に係る商標については引用商標とは混同しないとの異議決定(参考資料3及び4)が出ていると主張している。
しかるに、資料3及び同4の事例は、対象商標について、「本願(本件)商標は、欧米人の氏名を表す一体不可分のもの」との前提で、引用商標との類否、及び出所の混同のおそれの判断をしたものである。
これらの事例は、この点において本件と判断を異にするものであるが、本件については、取消理由通知に示すとおり、本件商標は、構成中に「VALENTINO」の文字を有することから、商品の出所の混同のおそれがあると判断されるものであり、本件の結論が、商標権者提示の事例に拘束されるとすべき理由はないから、前例に拘わらず本件の審理をした。
加えて、資料4の事例は、「VALENTINO」の文字からなる商標の周知性が認められなかった事例であり、本件の場合、引用商標「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」の周知性が認定できるものであるから、本件とは同列に論ずることはできない事例というべきである。
3 「VALENTINO」の文字を含む結合商標が多数登録され、市場でも混同されることなく販売されているとの主張について
商標権者は、「『VALENTINO』に関して、ファッション関係の旧第17類及び新第25類において、参考資料5の1及び参考資料5の2にあるように、無数の『VALENTINO』と他の言葉との結合商標が登録されており(参考資料5の1ないし6の2)、また、多種の『VALENTINO十他の言葉』を付した商品が混同されることなく販売されている。」と主張している。
しかしながら、審査・審判における先例等は、それぞれ、具体的、個別的に判断がされているものであって、本件においても、商標の構成態様や引用商標に係る取引の実情等を具体的に検討して判断すべきものであって、過去の事例の判断に拘束されることなく申し立ての可否が検討されるべきものである。また、市場において、「VALENTINO」の文字を含む結合商標が使用されている事実をもって本件商標が出所の混同を生ずるおそれのない商標とすることはできないものであり、商標権者の主張は採用することができない。
4 「VALENTINO」はイタリア国ではありふれた姓であるとの主張について
商標権者は、「『VALENTINO』は、『佐藤』や『上田』のようなイタリーではありふれた姓である。こうした識別力の乏しい言葉の商標に強い力を認め、本件商標のような氏名を意味し一体性の強い『LUCIANO VALENTINO』が登録性がないというのは、著しく公平の原則に反する。」と主張している。
イタリア国において「VALENTINO」がありふれた氏姓であるとしても、これが我が国においてありふれた氏姓とは認められないから、この語が、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないということはできず、また、この語が、使用された結果、周知な商標となることは何ら不自然ではない。
他方、本件商標、あるいは、「LUCIANO VALENTINO」の商標が、引用商標とは出所の混同を生じないとすべき特段の事情は認められない。
5 引用商標が使用され始めたのは本件商標の登録出願日以降である旨の主張について
商標権者は、引用商標が使用され始めたのは、平成8年9月9日に商標登録第852071号の移転登録を申立人が得た以降と推測でき、本件商標の登録出願日は、それ以前の平成8年1月31日であるから、本件商標は商標法4条1項15号に該当しない旨主張している。
しかしながら、ある商標がその態様や使用者の意思と関わりなく、その構成の一部分をもって紹介・報道され、あるいは、取引者、需要者により取引に資された結果、当該商標を構成する一部分が周知・著名なものとなることがあることは取引の経験則が教えるところであり、本件においても、引用商標が、ヴァレンティノ・ガラバーニのデザインに係り、申立人の取り扱いに係る商品を表示するものとして紹介・報道された結果、本件商標の登録出願前に、取引者、需要者の間に広く認識されていたといえることは取消理由通知に示したとおりである。
しかも、商標法4条1項15号における混同のおそれは、引用される標章を、当該他人が、同15号の適用の対象となる商標が使用されている商品と同一又は類似する商品に使用していたこと(本件の場合、引用商標を、申立人が、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品に、本件商標の登録出願前に使用していたこと)を要件とはしておらず、上記の商標権者の主張は、その前提において失当といわなければならない。
6 まとめ
以上のとおり、商標権者の主張は、いずれも採用することはできず、先の取消理由は妥当なものといえるから、本件商標は、商標法4条1項15号に違反して登録されたものというべきである。
よって、商標法第43条の3第2項により、結論のとおり決定する。
別掲 【別掲】
本件商標



異議決定日 2005-09-01 
出願番号 商願平8-9055 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (027)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 宮川 久成
山本 良廣
登録日 1998-08-07 
登録番号 商標登録第4173706号(T4173706) 
権利者 株式会社トライアングル・コーポレーション
商標の称呼 ルチアーノバレンチノ、ルシアーノバレンチノ 
代理人 末野 徳郎 
代理人 杉村 興作 

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