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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効200335304 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z30 |
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管理番号 | 1126027 |
審判番号 | 無効2004-89101 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2005-12-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-11-11 |
確定日 | 2005-10-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4593355号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4593355号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標登録の無効の審判 1 本件商標 本件商標登録の無効の審判に係る、登録第4593355号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成13年9月20日登録出願、第30類「チョコレート飲料,チョコレートアイスクリーム,チョコレートクッキー,チョコレート」を指定商品として、平成14年6月21日に登録査定、同年8月9日に設定登録されたものである。 2 本件商標登録の無効の審判 本件商標登録の無効の審判は、本件商標が商標法4条1項19号及び同8号に違反して登録されたものであるとして、同法46条1項により本件商標の登録を無効にすることを請求するものである。 第2 請求人の主張 本件審判請求人(以下「請求人」という。)は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第71号証を提出した。 1 商標法4条1項19号違反について (1)引用各商標の著名性について (ア)本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、請求人は、本件商標の登録出願前から、イスラエル等(以下「外国」という。)において、本件商標中の正方形輪郭部分を外した本件商標と実質同一の商標(以下「引用商標1」という。)及び本件商標中の「MAX BRENNER」の文字部分と実質同一の商標(以下「引用商標2」という。引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、以下「引用各商標」という。)をチョコレート関連商品、チョコレートバーでの飲食物の提供に使用してきた。その結果、引用各商標は、請求人の取扱いに係る商品及び役務に使用される商標として、本件商標の登録出願時(平成13年(2001年)9月20日)及び登録査定時(平成14年(2002年)6月 21日)までに、外国において広く知られるに至った。 そもそも引用商標2は、マックスブレナー社(Max Brenner company)が平成7年(1995年)にイスラエルで設立された際に、会社のパートナーであったマックス・フルチトマン氏(Max Fruchtman)とオデッド・ブレナー氏(Oded Brenner)の名前を合成して創作した造語である。また、引用商標1は、「はげ頭」に特徴のあるオデット・ブレナー氏の顔を描写した肖像であり、平成11年(1999年)に作成した。このように創作された引用商標1は、「はげ頭の男によるチョコレート」(CHOCOLATE BY THE BALD MAN)であることを特徴として、取引者、需要者に親しまれ、それまで使用されていた引用商標2と併せてマックスブレナー社を代表するブランドとなった。 なお、平成13年(2001年)8月にマックスブレナー社の業務は、請求人に譲渡された(甲第3号証)。 (イ) (a)マックスブレナー社は、平成12年(2000年)1月に、世界的に著名なロンドンの百貨店「ハロッズ」において「マックスブレナーチョコレートバー」を開店した(甲第4号証)。 この開店に伴い、平成12年12月15日には上記ハロッズのホームページで、引用商標1が「マックスブレナーチョコレートバー」(Max Brenner Chocolate Bar)の記載と共に紹介されていることから、引用各商標がイスラエル、イギリスはもとよりインターネットを通じ全世界で知られることとなった(甲第5号証)。 (b)平成12年6月には、フランチャイズ店として、オーストラリアで「マックスブレナーチョコレートバー」を開店した(甲第6号証ないし同第15号証)。 このように、引用各商標が表示された請求人の取扱いに係る商品及び役務の記事又は広告が多数の刊行物に掲載された事実からしても引用各商標が本件商標の登録出願時にオーストラリアにおいて取引者、需要者の間で既に周知となっていたことがわかる。 (c)シンガポール及びフィリピンにおいても、オーストラリア同様に、現在「マックスブレナーチョコレートバー」の業務展開中であり、引用各商標は、これらの国の取引者、需要者によく知られている(甲第16号証及び同第17号証)。 (ウ)請求人は、イスラエルをはじめ、フィリピン、アメリカ、日本、イギリス、欧州共同体、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、中国、韓国、タイ、インドネシア、香港等世界各国において、請求人の取扱いに係る商品及び役務について、引用各商標の商標登録を取得又は申請している(甲第18号証ないし同第63号証)。 このうち、イスラエルでは、引用商標1中の署名(サイン)の部分と引用商標2を組み合わせた商標が本件商標の登録出願前である平成12年10月5日に登録されている(甲第34号証ないし同第36号証)。 (エ)引用各商標の著名性を立証するその他の資料 (a)平成12年12月20日付マックスブレナー宛の日本の業者からの注文書においては、注文に係るチョコレート製品番号の記載から引用各商標を使用した請求人の商品及び役務が、米国又はイスラエルで広く流通されていた事実が明示されている(甲第64号証)。 すなわち、注文書の製品番号及び製品名は、当時頒布されていた請求人のカタログ(甲第65号証)中に該当する製品番号及び製品名が掲示されており、該カタログ上及びそこに掲載された製品の包装上に引用各商標が使用されていることがその写真から明らかである。 (b)平成13年1月5日付マックスブレナー社宛てのダヴテールコレクションズ社からの最新の値段表の注文に対する手書き返信及びその添付書類としての値段表(甲第66号証)において、その製品番号及び製品名は、当時頒布されていた請求人のカタログ(甲第65号証)中に該当する製品番号及び製品名が掲示されており、該カタログ上及びそこに掲載された製品の包装上に引用各商標が使用されていることがその写真から明らかである。 上記ダヴテールコレクションズ社は、カナダにおける請求人のチョコレート製品の販売会社であり、そのホームページから現在も請求人との間でその取引が継続し、カナダにおいても請求人の取扱いに係る商品が流通していることが明らかである(甲第67号証)。 (c)平成13年1月25日、26日付のマックスブレナー社宛を含む書信中において、世界最大のTVショッピング専用チャネンルとして世界的に著名な「QVC」で取り扱う請求人のチョコレート製品に関し、そこで提示された製品番号及び製品名は、当時頒布されていた請求人のカタログ(甲第65号証)中に該当する製品番号及び製品名が掲示されており、該カタログ上及びそこに掲載された製品の包装上に引用各商標が使用されていることがその写真から明らかである(甲第68号証)。 このことは、平成13年1月の時点で引用各商標を使用した請求人のチョコレート製品が世界的に著名なQVCに取り上げられる程、業界の取引者、需要者の間で周知であったことを示している。 (2)不正の目的について (ア)前述のとおり、引用各商標が外国において周知であること。 (イ)本件商標中の正方形輪郭部分は、商標の類否に影響を与える部分とは解し得ないから、本件商標が引用商標1と物理的に実質同一であることは明らかである。 特に、引用商標1は、造語の「MAX BRENNER」と実在の人物の肖像から構成されている顔図形及び複雑な構成からなるサイン図形等とを含むその構成上顕著な特徴を有するものであり、被請求人がこのような商標を偶然採用するということはあり得ない。 (ウ)引用商標2は、造語の「MAX BRENNER」で構成されていることから、その構成上顕著な特徴を有するものである。また、本件商標と引用商標2とはその構成上いずれからも「マックスブレナー」の称呼を生じ、称呼を共通にする類似の商標であるから、被請求人がこのような要素を含む商標を偶然採用するということはあり得ない。 (エ)被請求人は、香港でも本件商標と同一の商標について商標登録(香港商標登録第300055304号)を受けており、これに対して、請求人は、無効審判を請求している(甲第69号証)。 (オ)以上のように、被請求人に不正の目的があったことは明らかである。 (3)したがって、引用各商標の周知性、著名性、本件商標と引用各商標との同一性又は類似性、本件商標の指定商品と引用各商標の使用に係る商品又は役務の類似性又は近似性、本件商標の登録に関する被請求人の不正の目的及び海外における被請求人の不正登録の事実等を総合的に勘案すると、本件商標が商標法4条1項19号に違反して登録されたことは明らかである。 2 商標法4条1項8号違反について 前述したように、引用商標1は、「はげ頭」に特徴のあるオデット・ブレナー氏の顔を描写した肖像である(甲第6号証及び同第14号証)。 そうすると、本件商標は、オデット・ブレナー氏の肖像を含む商標であるにもかかわらず、同氏の承諾を得ていないから、商標法4条1項8号に違反して登録されたことは明らかである。 3 本件審判の請求の利益について 請求人は、本件商標につき商標法4条1項19号の「他人」に該当すると共に、引用各商標について商標登録出願しており(甲第57号証及び同第23号証)、不正目的で登録された本件商標が引用され拒絶理由を通知されている者であるから(甲第70号証及び同第71号証)、本件審判の請求につき法律上の利益を有するものである。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法46条1項1号に規定する無効の要件を具備するから、その登録は無効にされるべきである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、何ら答弁していない。 第4 当審の判断 1 本件審判請求の理由及び請求人が提出した甲各号証を総合すると、以下の事実を認めることができる。 (1)イスラエル国のマックスブレナー社は、本件商標の登録出願日である平成13年(2001年)9月20日以前から、チョコレート製品の製造、販売及びチョコレートを主とする飲食物の提供を業務とし、その取扱いに係る商品及び役務に引用各商標を使用していたこと(甲第3号証ないし同第15号証、同第64号証ないし同第66号証及び同第68号証)。 (2)マックスブレナー社は、遅くとも2000年(平成12年)11月ころには、英国の有名なデパートであるハロッズに出店し、その取扱いに係る商品の販売、役務の提供がされていたこと及びこれらの事実は、同年12月にはハロッズのホームページに掲載されたこと(甲第4号証及び同第5号証)。 (3)2000年7月ころから2001年(平成13年)11月ころにかけて、オーストラリア連邦で発行された様々な雑誌に、マックスブレナー社の提供に係るチョコレート製品及びチョコレート関連の役務に関する記事と共に、「MAX BRENNER」、「Max Brenner Chocolate Bar」、「Chocolate by the Bald Man/MAX BRENNER」等の文字若しくは引用商標1が掲載されたこと(これらの商標を表示した商品を以下「『MAX BRENNER』製品」という。)(甲第6号証ないし同第15号証)。 (4)「SHONFFELD’S USA,INC.」は、2000年12月20日に、日本の業者から「MAX BRENNER」製品に関する取引の申し込みを受けたこと及び2001年1月には、アメリカ合衆国のサンフランシスコで開かれるショーに「MAX BRENNER」製品が出展されたと推認されること。そして、これらの商品には、引用商標1が表示されていたこと(甲第64号証ないし同第66号証)。 (5)2001年1月ころに、TVショッピング専用チャネンルを世界的に経営しているアメリカ合衆国の「QVC社」から、マックスブレナー社が取り扱う「MAX BRENNER」製品に関するプログラムの打診があったこと(甲第68号証)。 (6)請求人は、2001年8月に、マックスブレナー社の使用する「MAX BRENNER」等のブランドを買収したこと(甲第3号証)。 2 前記1で認定した事実によれば、引用各商標は、マックスブレナー社又は請求人の取扱いに係るチョコレート製品及びチョコレートを主とする飲食物の提供を表示するものとして、遅くとも本件商標の登録出願時である平成13年(2001年)9月20日には、少なくとも英国、オーストラリア連邦において、その需要者の間に広く認識されており、その周知性は、本件商標の登録査定時においても継続しいていたと推認し得るところである。 3 本件商標は、別掲のとおり、正方形輪郭内に、一筆書き風に表した坊主頭の顔の図形及びサイン風図形を中央に大きく配し、その下に「CHOCOLATE BY THE BALD MAN」、「MAX BRENNER」の各文字を二段に横書きしてなるものである。 これに対し、引用商標1は、本件商標中の正方形輪郭部分を除いた部分とほぼ同一の構成よりなるものである。 そうすると、本件商標と引用商標1は、正方形輪郭部分の有無の差異を有するものであるところ、該正方形輪郭は、他の構成要素に比べ、特に印象に残るものではなく、付記的な部分というべきものであるから、正方形輪郭部分以外の他の構成要素を共通にする両商標は、外観において類似する商標といわなければならない。 また、引用商標2は、「MAX BRENNER」の文字よりなるものであり、本件商標中、独立して自他商品の識別標識としての機能を有する「MAX BRENNER」の文字部分とは、その綴り字を共通にするものであるから、本件商標と引用商標2は、「MAX BRENNER」の文字より生ずる称呼において類似する商標であって、外観においても類似する商標というべきである。 4 上記2及び3のとおり、引用各商標は、本件商標の登録出願時には、少なくとも英国、オーストラリア連邦において、その需要者の間に広く認識されていたものであり、これに対して、本件商標は、その構成中の正方形輪郭部分以外の他の構成要素が引用商標1と酷似するものであり、このような図形や文字を被請求人が偶然に採択したものとは到底考えられず、また、甲第69号証にみられるように、被請求人は香港において引用商標1と略同一の商標についての商標権を取得している事実も合わせみれば、被請求人は、日本以外の国で周知であった引用各商標が、日本において登録されていないことを奇貨として、不正の目的をもって先取り的に登録出願し、登録を受けたと推認せざるを得ない。 5 以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、少なくとも英国、オーストラリア連邦において、その需要者の間に広く認識されていた引用各商標と類似する商標であって、不正の目的をもって使用する商標というべきである。 したがって、本件商標の登録は、商標法4条1項19号に違反してされたものであるから、同法46条1項の規定により無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
【別掲】 本件商標(登録第4593355号) |
審理終結日 | 2005-08-22 |
結審通知日 | 2005-08-25 |
審決日 | 2005-09-06 |
出願番号 | 商願2001-85141(T2001-85141) |
審決分類 |
T
1
11・
222-
Z
(Z30)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
佐藤 正雄 |
特許庁審判官 |
山本 良廣 宮川 久成 |
登録日 | 2002-08-09 |
登録番号 | 商標登録第4593355号(T4593355) |
商標の称呼 | チョコレートバイザボールドマン、バイザボールドマン、ボールドマン、マックスブレンナー、マックス、エムエイエックス、ブレンナー、エムビイ、マックスブレナー、ブレナー |
代理人 | 平井 昭光 |