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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
管理番号 1124604 
審判番号 無効2003-35289 
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-14 
確定日 2005-10-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4483686号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成16年4月28日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成16年(行ケ)第256号 平成17年2月24日判決言渡)があったので、更に審理の上、以下のとおり審決する。 
結論 登録第4483686号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4483686号商標(以下「本件商標」という。)は、「メバスロリン」の片仮名文字と「MEVASROLIN」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成12年6月30日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、平成13年6月22日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2049558号商標は、「メバロチン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和61年1月20日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和63年5月26日に設定登録、その後、平成10年1月27日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。
同じく登録第2069627号商標は、「MEVALOTIN」の欧文字を横書きしてなり、昭和61年1月20日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和63年8月29日に設定登録、その後、平成10年4月28日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。
同じく登録第2448922号商標は、後掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成元年10月27日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年8月31日に設定登録、その後、平成14年4月2日に商標権存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、平成14年4月17日に指定商品の書換登録があった結果、商標登録原簿に記載のとおりの商品区分及び指定商品となっているものである。
同じく登録第2448923号商標は、後掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、平成元年10月27日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年8月31日に設定登録、その後、平成14年4月2日に商標権存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、平成14年4月17日に指定商品の書換登録があった結果、商標登録原簿に記載のとおりの商品区分及び指定商品となっているものである(以下、これらを一括して「引用商標」という。)。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第36号証を提出した。
(1)請求の理由
(ア)本件商標と引用商標とを比較検討してみるに、本件商標は「メバスロリン」の称呼を生ずるのに対して、引用商標は「メバロチン」の称呼を生ずるものである。
しかして、本件商標より生ずる「メバスロリン」の称呼と引用商標より生ずる「メバロチン」の称呼とは、文字により構成された商標における、自他商品を識別するための標識としての機能を果す場合において、最も重要な要素となる語頭部分における「メ」、「バ」及び語尾の「ン」の3音を同じくしているものであり、語中央部において、「スロリ」と「ロチ」の音の差異を有するものではあるが、該差異音とても、共に「ロ」の音を共通にするものであるから、該差異音が、両者の全体的称呼に及ぼす影響は、決して大きなものではなく、両者を全体として、一連に称呼した場合には、その全体の語調、語感が極めて近似したものとなり、これらに接する聴者をして、かれこれ称呼を聞き誤らせるおそれの十分にある、互いに相紛らわしい称呼である。
してみれば、両商標が、薬剤について使用される場合には、その構成中の語頭部分の「メバ」の文字部分は、後半部の「スロリン」及び「ロチン」の文字部分に比して、自他商品の識別力を果す最も重要な部分、いわゆる、商標の要部若しくは商標の基幹部分というべきものである。さらに、薬剤等の商標として、「メバ」の音で始まるものは、引用商標のみであることからも、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用をするときは、観念的な連想を引き起こし易い、その基幹部分「メバ」を共通にし、しかも、薬剤の商標の接尾語として、我が国においては、比較的好まれてありふれて採択使用されている文字の「ン」をも共通とする点からも、請求人の製造・販売する商品「高脂血症用薬剤」に使用する引用商標を連想させ、これに接する取引者・需要者は、請求人のシリーズ商標若しくは姉妹商品として、請求人の製造・販売に係るものと誤認し、その商品の出所につき、混同を生じさせるおそれの十分にある、かれこれ相紛らわしい商標である。
(イ)引用商標は、請求人の業務に係る商品「高脂血症薬剤」(動脈硬化用薬剤)に使用され、平成元年の発売以来、その売上高は、当初の70億円(市場占有率17.5%)から、その売上げを延ばし、同11年度には、1,288億円(市場占有率53.9%)にものぼり、「高脂血症用薬剤」の単品商品が、売出しからの僅か11年間で、1兆59億円にも達している事実がある(甲第11号証)。
また、上記商品の宣伝広告活動も、広告代理店、株式会社丹水社等を通じて、活発かつ盛大に行っており、その宣伝広告費も、単品商品「高脂血症用薬剤」の金額としては、平成元年に1,600万円台であったものが、同14年は10月までに2,100万円台を投じ、発売以来の14年間で、4億3,000万円以上もの広告費をかけている(甲第12号証ないし甲第16号証)。
したがって、引用商標は、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するものとして、この種商品を取り扱う業界における取引者及び需要者の間において、極めて広く認識されている周知、著名な商標であるから、これと相紛らわしい本件商標を、その指定商品である「薬剤」について使用をするときには、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の業務に係る商品であるかのごとく誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれが十分にある。
(ウ)請求人の上記主張理由の正当性を立証すべく、本件事案とその判断の軌を一にする、平成10年審判第35358号審決(甲第17号証)及び平成11年(行ケ)第309号東京高等裁判所判決:上告、平成12年(行ツ)第352号及び同(行ヒ)第336号最高裁判所決定(甲第18号証ないし甲第20号証)の審決例及び判決例を挙げて、請求人は、これを自己の主張理由に、有利に援用する。
上記の事実を勘案するとき、薬剤の商標として「メバ」の音で始まるものは、引用商標の外には存在しないことから、これに、薬剤の商標の接尾語として、我が国においては、比較的好まれてありふれて使用されている文字の「ン」を共通にする本件商標は、被請求人の創作に係る商標であるというよりは、むしろ、引用商標の著名性に、ただ乗りする意図の下に出願された商標であると断ぜざるを得ない。
請求人は、このような事実を立証するものとして、平成15年6月30日発行の「読売新聞」(朝刊)に掲載された記事を提出する(甲第21号証)。
さらに、請求人は、引用商標の著名性を立証すべく、宣伝広告を掲載した具体的な誌名等について、その証拠方法を提出する(甲第23号証ないし甲第32号証)。
以上の証拠方法によって、請求人は、引用商標を、斯界における、最も有効な媒体(雑誌等)を用いて、継続的、かつ、定期的に反復した宣伝広告に努めた結果、引用商標は、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識された周知、著名な商標である。
(エ)してみれば、本件商標は、引用商標と称呼の点において、互いにかれこれ相紛らわしい類似の商標であるといわなければならず、かつ、本件商標の指定商品である「薬剤」は、引用商標の指定商品に包含されていることは明らかであり、かつ、引用商標が、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識されている周知、著名な商標であるから、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用をするときは、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の取り扱いに係る商品と誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれのある商標であるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものである。
(オ)請求人は、平成15年8月26日発行の「読売新聞」(朝刊)に掲載された記事を提出する(甲第33号証)。
これに徴するに、請求人の売上高の三割を占めている、医薬品である「メバロチン」は、国内売上高が年間1000億円を超える「日本一売れる薬」である「高脂血症治療剤」であるところ、その特許権が切れたことを奇貨として、後発医薬品が先発医薬品の商標をまねるばかりでなく、その医薬品の外観包装までをも酷似させて発売されることは、いわゆる、著名商標のただ乗り(フリーライド)行為にほかならず、ひいては、著名商標の希釈化(ダイリューション)につながるものであって、結局、本件商標は、被請求人の創作に係る商標であるというよりは、むしろ、引用商標の顧客吸引力にただ乗りする意図の下に登録出願されたものであると容易に推論し得るところである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)商標法第4条第1項第11号について
(a)本件商標と引用商標は、造語であることからも、一定の語義、観念を有している既成語とは異なり、本来、アクセント的な定義はなく、特定の語意を有しないもの、あるいは、その称呼が特段冗長なものでない場合であれば、自他商品を識別するための標識としての機能を果すべき最も重要な要素、すなわち、語頭部分である「メバ」の部分に、アクセントが必然的に置かれるものであることは、多数の審決例及び判例の示すところである。
しかも、他の音に比べ、弱い印象を与える無声摩擦音である「ス」の音に対してもアクセントがあるとする被請求人の主張こそ、全く我田引水論というほかなく、仮に、被請求人の主張のとおり、「スロ」の部分にアクセントが生じるとしても、「ス」の音は、その後の「ロ」の音に吸収され、むしろ、引用商標の語頭からの3文字目までの「メバロ」の部分に近似の称呼を生じ、全体的にも、より一層近似の称呼を生ずるものである。
(b)被請求人が掲げる登録例、乙第1号証及び乙第2号証以外の大部分は、乙第19号証ないし乙第24号証が示すとおり、引用商標が付された請求人の商品である高脂血症用薬剤(プラバスタチン製剤)「メバロチン」「MEVALOTIN」から着想を得て、かかる語頭部分等を自己の業務に係る後発医薬品に採用し、先発医薬品とその販売名を近似させることで、市場での自己の営業活動を有利に展開するべく、その製造承認取得(平成15年3月)及び薬価収載(平成15年7月)を目途として出願・登録されたものであって、先発医薬品の著名性を利用するただ乗り行為(フリーライド)であることは疑いのないところである。
(イ)商標法第4条第1項第15号について
(a)引用商標が薬局向けの薬剤に使用されたことがないのは、「医薬品製造指針」に照らせば、既承認品目の販売名と同一の販売名が他の販売名として使用できないことは自明であり、医療用医薬品については、薬事法第67条及び医薬品等適正広告基準により、一般需要者を対象としたマスコミ等による宣伝広告が禁止されていることは、当業者間においては、周知の事実であって、商標の著名性の対象としては、一般大衆にとどまらず、これを取り扱う、取引者、医師、薬剤師、調剤師の間において、極めて広く認識されるに至ったものを含むものであることは、当然のことであり、その手段として、医師及び病院向けの専門紙に宣伝広告をすることも、極めて普通のことである。
(b)被請求人が援用する、東京高等裁判所平成元年3月14日判決(請求人の調査によれば、東京高等裁判所における商標関係事件で、この日に判決があったのは、昭和63年(行ケ)第100号のみである。)は、商品時計で著名な「PIAGET」と「PIAGE/ピアゼ」(旧第17類)の事件であって、需要者として最終的に商品を購入する消費者について引用商標の周知性が認められ、本願商標が指定商品(被服等)に使用するときには、出所について誤認混同が生ずると判示されたものであって、かつ、当該需要者である消費者については、「高所得者層」と限定的な範囲に対しての認定であり、請求人に有利な判決にほかならないものである。
さらに、被請求人の挙げる乙第19号証ないし乙第24号証に係る商標は、いずれも請求人製品の後発医薬品に使用されるものであり、単に後発品が、先発品に近似の販売名を採用している状況を示したにすぎないものであって、後発品同士が市場において誤認混同を生じているか否かについては、本件とは関わりがなく、被請求人の主張を支える何らの証左とはならないものである。つまるところ、被請求人も乙第19号証ないし乙第24号証に係る商標と同様に、市場での自己の営業政策を有利に進めんがために、先発品から着想を得た販売名を故意に採用したものにほかならないといえる。

4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第24号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標及び引用商標
本件商標は、「メバスロリン」の称呼を生じるのに対し、他方、引用商標は、「メバロチン」の称呼を生じる。
(イ)称呼上の共通点と相違点
本件商標より生ずる「メバスロリン」と引用商標より生ずる「メバロチン」の称呼について検討すると、両者は、最初の2音「メバ」と最後の1音「ン」において共通するが、その中間部分において、本件商標が「スロリ」であるのに対し引用商標は「ロチ」である点において相違する。
(ウ)一連の称呼における語感の相違について
本件商標は「メバスロリン」、引用商標は「メバロチン」の称呼を一連にのみ生じるものである。
このように一連にのみ生じる称呼が類似するかどうかを判断するに際し、請求人が主張するように1音1音を断片的に分断する手法は、そもそも、一方において肯定する「一連性」を他方において否定するものであるから、このような手法によって正しい結論を導くことは到底できない。
一連性のある2つの称呼を彼此対比する場合において重要なことは、請求人も認めるように、全体の語調、語感が紛らわしいかどうか(識別できないかどうか)の点にあるから、それを判断するためには、両者のアクセントの異同を看過してはならない。
そこで、この点について述べると、「メバスロリン」は、「スロ」の部分にアクセントが置かれ、「メバロチン」は、「ロ」の部分にアクセントが置かれるように発声されることが明らかである。そうすると、一気に発音される「スロリン」と「ロチン」の顕著な相違により、語調ないし語感が顕著に相違し、かれこれ極めて明確に識別されることが明らかである。
そして、最も重要なことは、このようなアクセントを有する部分において、「スロリン」と「ロチン」の相違を顕在化せしめるので、聴者に極めて容易かつ明瞭に聴取され、かれこれ明確に区別できることである。
特に、発声時において、末尾の「ン」は、ほとんど無声音として消えてしまうため、本件商標は「メ・バ・ス・ロ・リン」の5音節として発音されるのに対して、引用商標は「メ・バ・ロ・チン」の4音節として発音されるものであり、このような音数の相違がアクセント部分において「スロリン」と「ロチン」の相違として現れるのであり、これにより本件商標の「ス」の音を顕在化せしめ、その語調ないし語感が顕著に相違している。
よって、本件商標は、引用商標と類似しない。
(エ)一連の称呼における接頭語と接尾語について
(a)請求人の主張によれば、指定商品が薬剤であり、標章が「メバ○○ン」のように「メバ」で始まり「ン」で終わるものは、全て、引用商標に類似するということになる。
指定商品を薬剤としたものであって、「メバ」で始まる標章については、多数の登録例が存在しており(乙第1号証ないし乙第13号証)、そのうち、乙第2号証、乙第4号証、乙第6号証、乙第7号証及び乙第11号証の標章は、いずれも「ン」で終わるものである。
ちなみに、請求人の主張によれば、前記の「メバチノン」(乙第2号証)、「メバスタン」(乙第6号証)、「メバラチオン」(乙第7号証)、「メバプラチン」(乙第11号証)は、いずれも、「メバ」で始まり「ン」で終わるものであるから、「メバロチン」と類似するとの結論になるものと思われるが、これらの商標は、いずれも、接尾語の「チノン」、「スタン」、「ラチオン」、「プラチン」が休みなく一気に発音されるものであって、請求人が主張するように接尾語を更に分断し、その最末尾の「ン」が共通しているから、商標全体として引用商標に類似する等というものでは決してない。
同様に、本件商標についても、接尾語の「スロリン」は一気に発音されるものであるから、末尾の「ン」が共通するから引用商標に類似するという請求人の主張は正しくない。
(b)本件商標の「(メバ)スロリン」と引用商標の「(メバ)ロチン」における接尾語の「スロリン」と「ロチン」の相違について、指定商品を薬剤とする商標登録例によれば、「ロチン」(乙第14号証)に対して、「スロリン」(乙第15号証)、「セロリン」(乙第16号証)、「クロリン」(乙第17号証)、「サロリン」(乙第18号証)が、いずれも、非類似とされており、本件においても極めて参考になる。
本件においても、本件商標「(メバ)スロリン」と引用商標「(メバ)ロチン」における接尾語の「スロリン」と「ロチン」の相違は、それ自体が非類似であると解すべきであるから、本件商標「メバスロリン」と引用商標「メバロチン」は、全体としても明らかに非類似である。
そうすると、引用商標の「メバロチン」と本件商標の「メバスロリン」の両称呼は、接頭語の「メバ」が共通するとしても、それに続いて一連に呼称される「ロチン」と「スロリン」において顕著に相違しており、「ロチン」に対して、「スロリン」は、非類似であると解すべきであるから(乙第14号証ないし乙第18号証)、結局、本件商標は引用商標と非類似であることが明らかである。
(オ)結び
以上のとおり、本件商標の称呼「メバスロリン」は、引用商標の称呼「メバロチン」とは明らかに非類似であり、外観、観念に徴しても、両者が類似すると解すべき根拠は全くないから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)著名性について
請求人は、引用商標の「メバロチン」「MEVALOTIN」が著名商標であると主張するが、請求人が引用商標を使用する商品は、「高脂血症用薬剤」(動脈硬化用薬剤)であって指定医薬品であり、専ら、医薬品卸売業者や、病院及び医師を取引者・需要者としているものである。すなわち、引用商標の使用対象商品は、決して市中の薬局や薬店等の店舗で大衆に向けて販売される薬剤ではなく、請求人が引用商標を薬店向けの薬剤に使用した事実は過去に一度も存在しない。
このため、甲各号証として提示された広告も専ら専門家を対象とした刊行物等に限定されているのであり、一般の市販の薬剤のようなテレビコマーシャル等は、何ら行われていないのであり、大衆の間においては、むしろ全くの無名商標である。
そうすると、引用商標は、非類似の商品について使用された場合においても混同を生じるおそれがあるようなものと認めることは到底できないから、これが著名商標であると認め得る余地はない。
ちなみに、請求人が引用する無効審判事件(甲第17号証及び甲第18号証)は、当該商標を付した商品が医薬品卸売業者、病院、医院のみならず、薬局、薬店、患者等に広く知られていたことを事実認定の前提としたものであるから、本件とは事案が異なる。
(イ)誤認混同のおそれについて
混同を生ずるおそれがあるかどうかの対象者は、引用された著名商標を使用する商品の取引者・需要者である。
本件の場合、引用商標が実際に使用されている商品は、「高脂血症用薬剤」(動脈硬化用薬剤)であり、専ら、医薬品卸売業者を通じて病院又は医師に販売される商品である。
したがって、本件において、混同を生ずるおそれがあるかどうかの主体は、当該指定医薬品を取り扱う卸売業者、病院の医師又は購買担当者、あるいは病院の薬剤師である。
そこで、実際の取引の状況を参酌すると、「高脂血症用薬剤」(動脈硬化用薬剤)について、現在「メバン錠」(乙第19号証)、「メバリッチ錠」(乙第20号証)、「メバラチオン錠」(乙第21号証)、「メバレクト錠」(乙第22号証)、「メバロカット錠」(乙第23号証)、「メバトルテ錠」(乙第24号証)のような商標が使用されている。
乙第19号証ないし乙第24号証の商品は、いずれも、取引者及び需要者を、医薬品卸売業者、病院の医師又は購買担当者、或いは病院の薬剤師としているものであるが、現に、このような「メバ○○」の商標を有する多数の商品の間で誤認混同を生じることなく、相互に識別された状態で商品の流通が行われているのである。
したがって、当該取引者及び需要者において、本件商標が引用商標と混同を生じるおそれがないことは、極めて明らかである。
なお、請求人は、被請求人に不正競争の意図があるとして、甲第33号証の新聞記事を提示するが、被請求人は、そこに報道された訴訟事件とは全く無関係である。しかも、新聞記事によれば「包装が極めて似ているとして、不正競争防止法に基づく・・・訴えを東京地方裁判所に起こした」と報道されているのであり、むしろ、商標の使用差止めが含まれていないことからすると、原告である本件請求人において、被告ら5社の商標が本件の引用商標と混同を生じるおそれがないことを認めているものと考えられる。
(ウ)引用商標と本件商標の対比について
引用商標の「メバロチン」に対して、本件商標の「メバスロリン」が誤認混同を生じるおそれがないことは、先に述べたとおりであり、アクセントが「メバロチン」では「ロ」にあるのに対し、「メバスロリン」では「スロ」にあるというように顕著に相違し、強いアクセント部分で一気に発音される「スロリン」と「ロチン」の顕著な相違があること、また、「メ・バ・ロ・チン」の4音節に対して「メ・バ・ス・ロ・リン」の5音節として発音される音数の相違と、このような音数の相違がアクセント部分で「スロリン」と「ロチン」のように明瞭に発音され聴取される「ス」の有無の相違として現れることからして、そこに混同を生じるおそれの余地がないことは、極めて明白というべきである。
この点に関して、請求人が引用する無効審判事件(甲第17号証及び甲第18号証)は、本件とは全く事案が異なる。
本件においては、音節数の違いがあるばかりか、語頭から始めの共通点が「メバ」の2音にすぎず、全体に占める割合が小さく、しかも、本件商標では「メバスロリン」のように、引用商標との相違部分が全体の中において、強い語感で顕著に発音されるものであるから、前掲判決の認定判断の方法を反対解釈するならば、むしろ、本件のような事案においては、非類似であることを明らかにしていると解される。
(エ)結び
以上のとおり、本件商標は、引用商標と何ら混同を生じるおそれのないことが明白であるから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

5 当審の判断
(1)引用商標「メバロチン」に係る商品は、高脂血症の治療剤として平成元年10月2日に発売が開始された医療用医薬品であり、その一般名は「プラバスタチンナトリウム」であるところ、「メバロチン」は、その有用性の高さと、高脂血症用剤への需要の増加を背景にして、売上高が著しく伸び、平成3年には、売上高650億円、市場占有率約68%となり、薬剤の商品別売上高ランキングが1位となるとともに、平成5年には、国内市場で単品売上高が国内初の1000億円に達した。
そして、平成6年以降も、メバロチンは、1000億円以上の売上高と高い市場占有率を維持し、本件商標の出願時(平成12年6月)及び登録査定時(平成13年5月)においても同様の状況にあった。
また、請求人主張の全趣旨及びその提出証拠によれば、「メバロチン」は、高脂血症用剤の市場のみならず、国内の医薬品市場において著名な薬剤であり、本件商標の出願時(平成12年6月)及び登録査定時(平成13年5月)のいずれの時点においても、医師、薬剤師、医薬品取扱業者等の間で、高い著名性を有していたものと認められ、更に、高脂血症用薬剤は、患者が長期間反復使用するものであり、患者は服用している医薬品の名前を医師から知らされていることも多いことからすれば、引用商標は、高脂血症用薬剤を投与される患者の間においても広く知られたものと認められる。
(2)次に、本件商標と引用商標との類否について検討するに、前記1のとおり、本件商標は、指定商品を第5類「薬剤」とし、「メバスロリン」の片仮名文字と「MEVASROLIN」の欧文字を上下二段に横書きしてなるものであり、そこからいずれも「メバスロリン」の称呼を生ずる。
他方、引用商標は、その指定商品に「薬剤」を含み、「メバロチン」の片仮名文字及び「MEVALOTIN」の欧文字より構成されるところから「メバロチン」の呼称を生ずるものである。
そこで、「メバスロリン」の称呼と「メバロチン」の称呼とを比較するに、両称呼は、語頭における「メバ」の2音、前者の第4音と後者の第3音における「ロ」の音、末尾音における「ン」の音を共通にするが、他方、本件商標と引用商標の称呼は、前者が6音構成であるのに対し、後者は5音構成であること、本件商標が第3音において「ス」の音を有するのに対し、引用商標は「ス」の音を有していないこと、及び、本件商標の第5音が「リ」の音であるのに対し、引用商標の第4音は「チ」の音である点において相違する。
しかして、本件商標の称呼を構成する6音のうち4音、引用商標の称呼を構成する5音のうち4音において共通し、とりわけ、語頭にあって連続する「メバ」の2音は、一般的に語頭の音の方が聴者に比較的強い印象、記憶を残しやすいことや、語頭に「メバ」の音が付く高脂血症用剤は平成12年より以前には「メバロチン」以外には存在しなかったことなどに照らし、聴者の印象、記憶に残る音であるというべきである。
他方、本件商標の中間部に位置する「ス」の音は、聴覚上響きの弱い音であり、本件商標の語頭からの4音「メバスロ」の称呼と、引用商標の語頭からの3音「メバロ」の称呼は、これを一連のものとして称呼した場合に、聴者に語調、語感が顕著に異なるとの印象は与えないというべきである。
しかして、本件商標の語尾部の「リン」と引用商標の語尾部の「チン」は、「リ」と「チ」が母音を共通にする近似音であり、末尾音が「ン」である点で共通し、加えて、一般に語尾部は比較的弱く聴覚されることや、薬剤の名称の語尾には「チン」「リン」「ジン」「ミン」など、「ン」の音で終わり、その直前の音の母音が「i」であることが少なくないと認められることに照らすと、仮に「リ」と「チ」の音がある程度明確に発音されたとしても、両商標の語尾部における称呼が顕著に異なるとの印象を聴者に与えることはないというべきである。
以上によれば、本件商標の「メバスロリン」と引用商標の「メバロチン」を一連のものとして称呼した場合、共通する音が聴者の記憶、印象に残りやすいのに対し、相違する音が称呼全体に及ぼす影響は小さいことから、両称呼の全体の語感、語調は、近似しているということができる。
次に、両商標の外観の類否については、本件商標の欧文字部分「MEVASROLIN」と引用商標の欧文字部分「MEVALOTIN」を対比すると、本件商標(10文字構成)と引用商標(9文字構成)とは、「M」「E」「V」「A」「O」「L」「I」「N」の8文字において共通し、本件商標の「S」「R」の文字、引用商標の「T」の文字において相違するところ、その配列を対比すると、両商標は、語頭の「MEVA」、中間部分の「O」及び語尾の「IN」において共通し、本件商標では「A」と「O」の間に「SR」、「O」と「I」の間に「L」が位置するのに対し、引用商標では「A」と「O」の間に「L」、「O」と「I」の間に「T」が位置している点で相違する。
また、本件商標の片仮名文字部分「メバスロリン」と引用商標の片仮名文字部分「メバロチン」を対比すると、前記のとおり本件商標を構成する6文字のうち4文字と引用商標を構成する5文字のうち4文字が共通し、それ以外の文字が相違する。
以上によれば、両商標の欧文字部分及び片仮名部分の外観についても、相当程度の共通点が存在するということができる。
以上のとおり、本件商標と引用商標の称呼及び外観における共通点と相違点を対比すれば、両商標は相当程度の類似性を有するということができる。
(3)また、商品間の関連性、取引者・需要者の共通性については、本件商標に係る指定商品第5類「薬剤」は、引用商標に係る使用商品「高脂血症用剤」をも包含するものであるから、その性質、用途及び目的が同一で、極めて強い関連性を有することは明らかであり、これを取り扱う医療機関や薬局も共通し、これらの薬剤を投与される患者層も共通すると認めることができる。
(4)以上のとおりの引用商標の高度な著名性、引用商標と本件商標との類似性の程度、両商標に係る商品の性質、用途、目的における関連性の強さ、取引者・需要者の共通性の程度を考慮すれば、被請求人が本件商標を高脂血症用薬剤に使用した場合、その取引者・需要者において、これを請求人あるいは請求人と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するか、又は、請求人あるいは請求人と上記のような関係のある会社が新たに販売を開始した「メバロチン」のシリーズ商品の一つ又はそれに何らかの改良を施した新商品であると混同するおそれがあるというべきである。
(5)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)引用登録第2448922号商標


(色彩については、原本参照。)

(2)引用登録第2448923号商標



審理終結日 2004-04-14 
結審通知日 2004-04-16 
審決日 2004-04-28 
出願番号 商願2000-79685(T2000-79685) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z05)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 柳原 雪身
鈴木 新五
登録日 2001-06-22 
登録番号 商標登録第4483686号(T4483686) 
商標の称呼 メバスロリン 
代理人 浅村 皓 
代理人 中野 収二 
代理人 浅村 肇 
代理人 岡野 光男 
代理人 宇佐美 利二 
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