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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 101
管理番号 1124495 
審判番号 取消2003-31370 
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-11-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2003-10-09 
確定日 2005-09-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第1971025号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標登録の取消しの審判
1 本件商標
本件商標登録の取消しの審判に係る、登録第1971025号商標(以下「本件商標」という)は、別掲に表示した構成よりなり、昭和56年8月6日に登録出願、第1類「接着剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和62年7月23日に設定登録され、平成9年5月27日に商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。
2 本件商標登録の取消しの審判
本件商標登録の取消しの審判は、商標法50条により、本件商標の指定商品中「科学用又は研究用の試薬(医療用及び獣医科用のものを除く)その他の無機工業薬品・有機工業薬品・界面活性剤・化学剤」について、登録の取消しを請求するものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中「科学用又は研究用の試薬(医療用及び獣医科用のものを除く)その他の無機工業薬品・有機工業薬品・界面活性剤・化学剤」についてその登録を取り消すとの審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第10号証を提出した。
1 請求の理由
請求人による調査によれば、被請求人が過去3年間に本件商標を指定商品中「科学用又は研究用の試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。),その他の無機工業薬品・有機工業薬品・界面活性剤・化学剤」について、使用していた事実を発見することはできなかった。
したがって、本件商標の登録は商標法50条1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証の1ないし同第4号証について
被請求人は、本件商標が「界面活性剤」(湿潤剤)に使用された旨主張している。しかしながら、上記乙各号証に示されている「レジャント トリートメントフォーム」なる商品は、「化粧品」の概念に属する商品である。
すなわち、乙第1号証の3の該商品の容器裏面には、商品の特徴として、「クリーミーな泡タイプのトリートメントフォームです。シリコンや油分を含まない天然複合アミノ酸主体のトリートメントなので傷んだ毛髪を髪の内部から健康な状態に改善します。また、自然なツヤとハリを与え手入れのしやすい髪質を得ることが出来ます。」なる記載が認められ、さらに、乙第2号証においても、該商品に関して、「天然複合アミノ酸の働きで、髪に自然なツヤとハリを与えます。」なる記載が認められる。
上記証拠方法よりは、該商品が、毛髪にツヤとハリを与え髪質を改善するためのトリートメント剤であることは明白である。毛髪用トリートメント剤は、昭和34年法、第4類「化粧品」の概念に包含されるものである(甲第3号証)。
被請求人は、上記商品が人間の頭髪ではなく「人毛かつらの手入れに用いる」ものであると述べているが、かつら用の「化粧品」もまた「化粧品」の概念に包含されるものであることは、特許電子図書館の商品・役務名リストに表示の「頭髪用・かつら用の化粧品」から明らかである(甲第4号証)。
被請求人は、該商品の販売事実を示すレシートを乙第4号証として提出しているが、上段に示された一方のレシートには「お客様NO:H05-001633」、「○○○様」、「フロアNO:0」、「9ヶ月点検」、「Lオールセットシャンプー」、「担当○○○」、といった記載があり、下段に示された他方のレシートにもこれと類似の記載が存在する。当該レシートにおける「LGトリートメントフォム」の表示が、該商品に相当するという被請求人の主張に従えば、該商品の販売場所は、毛髪、頭皮、かつら及びその装着状態等を点検、手入れ等を行うための一般消費者を対象とした理容室、美容室の店舗内であることが容易に推認され、顧客に対して単価2000円で一回につき1点のみ販売されたこと、が明らかである。
このような商品販売場所、販売形態等からみても、該商品は、「かつら用の化粧品」としてのみ把握される商品であって、明らかに「化粧品」の概念に包含される。
よって、上記乙各号証は、本件商標が「界面活性剤」に使用された事実を立証するものとは認められない。
(2)乙第5号証の1ないし同第5号証の3について
被請求人は、上記乙各号証を提出し、本件商標が「界面活性剤」(乳化剤)に使用された旨主張している。しかしながら、上記乙各号証に示されている「レジャント トリートメント スプレー」なる商品は、「化粧品」の概念に属する商品である。
すなわち、乙第5号証の3の該商品の容器裏面には、「レジャント トリートメント スプレー」の文字の下に、「ヘアスプレー」及び「ノンアルコール 無香料」の文字が認められ、さらに、当該商品の用法、用途、効能等の説明として、「かるくスプレーしてからよくブラッシングして下さい。髪に自然な潤いとソフトな光沢を与えます。」、「静電気を防ぎ、ほこりから髪を保護しトリートメント効果を高めます。」、「整髪のためのトリートメントとして、セット時にご使用ください。ハードタイプのヘアスプレーを使う前に使用致しますと仕上効果を一段と引き立てます。」なる記載も認められる。
これより、該商品が毛髪を保護し整髪するためのヘアスプレーであることが明白である。従って、該商品は、「かつら用化粧品」あるいは「頭髪用化粧品」として把握されるものであって、「化粧品」の概念に属するものである。
また、上記商品について本件商標の使用時期を立証する証拠は何ら提出されていない。
従って、上記乙各号証は、本件商標が「界面活性剤」に使用された事実を立証するものとは認められない。
(3)乙第6号証の1ないし同第6号証の3、同第7号証の1及び同第7号証の2について
被請求人は、上記乙各号証を提出し、本件商標が「化学剤」(剥離剤)に使用された旨主張している。しかしながら、乙第6号証の1ないし同第6号証の3に示されている「レジャントーS レタブリール」なる商品は、「化粧品」もしくは「かつら装着用接着剤専用の除去剤」と把握されるものである。
乙第6号証の3の該商品の容器裏面には、商品の用法、取り扱い上の注意として、「綿にレタブリールを充分浸してお使いください。」、「かつらの取りはずし及び接着剤の除去以外には使用しないでください」、「頭皮に異常がある時、または異常が現れた時はご使用を中止し、最寄の営業店にご相談ください。」なる記載が認められる。
これより、上記商品がかつらを頭皮から取りはずす目的で使用するものであり、かつ、頭皮に直接塗布される(綿に浸して頭皮に塗布される)ものであることが明らかである。
従って、上記商品の主たる使用目的、効能は、頭皮に装着したかつらを頭皮から取りはずすために頭皮に直接塗布し、頭皮に付着したかつら装着用接着剤を除去して、頭皮を清潔にするためのものである。従って、頭皮に塗布するものである以上、当然ながら、人体(頭皮)に安全に使用することができる処方がなされているはずである。
特許庁商標課編「商品区分の解説」によれば、「化粧品」の概念には、「人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つことを目的として、身体に塗擦、散布等の方法で使用されるものが含まれる。」と解説されていることから(甲第5号証)、該商品は、「化粧品」の概念に包含される商品である。
乙第7号証の1及び同第7号証の2に示すレシートは、本件商標の使用事実を何ら立証するものではないが、当該レシートの形式、記載事項、印字方法等は、乙第4号証に示すレシートと全く同じである。乙第7号証の2に示すレシートに記載された「Aカットコース」(4000円)が、散髪等の理容、美容のサービス及びその料金を示すことは明らかであり、被請求人が主張する商品が、「ペルックセットシャンプー」と呼ばれるシャンプーや「ベースクレンジングフォーム」と呼ばれるクレンジング剤(せっけん類)(乙第9号証)と共に、理容室、美容室で、一般消費者に対して最小単位1個から小売りされる商品であることが認められる。
さらに、上記商品は、かつらを頭皮に装着するための接着剤を頭皮から安全に除去するために処方された専用の除去剤(専用品)であることから、かつら装着用接着剤の専用品として、「かつら装着用接着剤」に包含されるものであるともいえる。
このことは、上記商品と同様に人体に使用する商品である「マニキュア」と「マニキュア除去剤(液)」、あるいは「ネイルエナメル」と「ネイルエナメル除去剤(液)」が同一の商品概念である「化粧品」に分類される関係から明らかである(甲第6号証及び甲第7号証)。
上記「レジャントーS レタブリール」は、一般消費者が家庭でかつらを頭皮から安全に取りはずすために頭皮(人体)に塗布して用いるものであるから、かつら等の縫製、修理等においてかつら(製品)のみに塗布される(=頭皮等の人体には塗布されない)接着剤の除去剤とは、使用目的、用法、効能、成分、処方、需要者の範囲等において相違するものであり、これと異なる商品概念に属するものである。
商品の販売場所、販売態様、使用目的、用法、効能、成分、処方、需要者の範囲からみても、上記商品が「化学剤」、あるいは本件取消請求に係るその他の指定商品の概念に包含されないものであることは明白である。
以上より、上記乙各号証は、本件取消請求に係る指定商品「化学剤」に使用された事実を立証するものとは認められない。
(4)乙第8号証の1及び同第8号証の2について
被請求人は、上記乙各号証を提出し、本件商標が「化学剤」(消臭剤)に使用された旨主張している。しかしながら、上記乙号証に示されている「レジャントS デオドラント・スプレー」なる商品は、「防臭剤(工業用及び身体用のものを除く)」として把握され、よって、昭和34年法、第1類「薬剤」の概念に包含されるものである。
すなわち、乙第8号証の2の該商品の容器裏面には、商品の特徴、使用方法等として、「軽くスプレーするだけで、製品に付着した汗や汚れの不快なにおいを除去します。」、「製品の裏側に10cmぐらいなはしてスプレーしてください。」、「製品を使用するたびにスプレーすると効果的です。」といった記載が認められる。
乙第8号証が示す商品の容器及び上記記載よりは、該商品が、かつらを購入した一般消費者が、家庭で自分で当該かつらを手入れをするための用いるものであり、頭皮から分泌された汗や皮脂の付着によるかつらの不快な臭いを消す消臭スプレーであることが明白である。
従って、該商品は、工業用及び身体用のもの以外の消臭剤として把握されるものであるから、「薬剤」の概念に包含される「消臭剤(工業用及び身体用用のものを除く)」に属するものである。当該概念には、「おしめ消臭剤」、「おむつ消臭剤」、「くつ用消臭剤」、「じゅうたん・室内用消臭剤」、「ふとん用消臭剤」、「タバコ集消臭剤」といった一般消費者が家庭で使う消臭剤で身体用以外の消臭剤が包含されることが、特許電子図書館「商品・役務名リスト」からも明らかである(甲第8号証)。
また、該商品について本件商標の使用時期を立証する証拠は何ら提出されていない。
従って、上記乙各号証は、本件商標が「化学剤」に使用された事実を立証するものとは認められない。
(5)乙第9号証の1及び同第9号証の2
被請求人は、上記乙各号証を提出し、本件商標は「界面活性剤」(油脂除去剤)に使用された旨主張している。しかしながら、上記乙各号証に示されている「レジャントーS ベースクレンジングフォーム」なる商品は、「せっけん類」の概念に属するものである。
すなわち、乙第9号証の2の該商品の容器裏面には、商品の特徴、使用方法等として、「ベース部分に付着した汗や皮脂の汚れをキレイに落とします。」、「汚れと臭いをつつみこむ発泡性で、しかも軽く拭き取るタイプなので、ベース部分を傷めることなく簡単に洗浄できます。」、「ご使用の際は缶をよく振り、10cm位離してお使いください。」、「泡が上に浮き上がったら、ティッシュペーパー等で拭き取ります。」といった記載が認められる。
これより、上記「レジャントーS ベースクレンジングフォーム」が洗浄作用を目的とするものであることは明白であり、該商品は「せっけん類」の概念に属するものである(甲第9号証)。
また、上記商品について本件商標の使用時期を立証する証拠は何ら提出されていない。
従って、上記乙各号証は、本件商標が「界面活性剤」に使用された事実を立証するものとは認められない。
3 答弁(第二回)に対する弁駁(第二回)
(1)被請求人は、第二回答弁書の(1)の欄で、「かつら」は身体ではないこと、「かつら用化粧品」が現時点で特許電子図書館の「商品・役務名リスト」に掲載されていないことを根拠として、「レジヤントトリートメントフオーム」(乙第1号証、同第2号証)は「化粧品」の概念に属さない旨主張している。
しかしながら、特許電子図書館の「商品・役務名リスト」が全ての商品を掲載することは不可能である。請求人が平成16年5月13日付の弁駁書(以下、「第一回弁駁書」という。)で詳述した通り、本商品「レジヤント トリートメントフオーム」は、その使用目的、用法、効能、需要者の範囲、販売場所等の取引形態からみて、かつらの毛髪部分の手入れに使用する商品であることは明らかであり、「化粧品」の概念に包含されるものとみるのが適当である。
乙第2号証に表示の「取扱説明書」の17頁(2番目の写真の左側)には、「人毛商品のお手入れ方法」と題して次の記載が存在する(下線は請求人による)。
「人毛べルック・オールは」「人毛を加工したデリケートな商品です。」「専用のシャンプー・リンスでお手入れしないと」「商品を傷める原因となります。」「そこで、「人毛」専用お手入れ商品。」「人毛べルック・オールをやさしく保護し」「いつまでも快適に愛用いただけます。」
さらに、同じく上記「取扱説明書」の18頁(2番目の写真の右側)には「人毛商品をより良い状態でご愛用いただくための、専用お手入れ商品。」と題して、本商品「レジヤント トリートメントフオーム」が記載されている。
従って、仮に本商品が「化粧品」の概念に属さないものであるとすれば、当該商品は「かつら」の専用品として、「かつら」の概念に包含されるべきものである。少なくとも、被請求人が主張する「界面活性剤」に属するものとは到底認めらない。
従って、本件商標が本件取消請求に係る指定商品に本件請求登録前3年以内に使用された事実は認められない。
(2)被請求人は、第二回答弁書の(2)及び(3)の欄で、「レジャントーS レタブリール」(乙第6号証)は「化粧品」の概念にも「接着剤」の概念にも属するものではない旨を主張しているが、乙第6号証及び同第12号証によれば、当該商品が人体の頭皮や頭髪に塗布されるものであり、かつら装着専用の接着テープ及び接着剤の専用品であることは明らかである。
乙第12号証に表示の「取扱説明書」の11頁(2枚目左側)には「両面テープ、接着剤の場合」と題した欄に、かつらの取り外し方と本商品の使用法が1番から4番の手順で写真付きで説明されている。第1番の手順の欄には「後方よりアデランスを持ち上げるようにして、接着部分をレタブリールを浸したコットンで軽く叩いて拭き取るようにしながら、毛流にそってはがしてください」なる記載が存在し、当該商品を浸したコットンを頭頂部(頭皮と頭髪)に当てがった写真が添えられている。さらに、第2番の手順の欄には「頭部に残った接着剤は、レタブリールを浸したコットンで少し強めにこすり、やわらかくしてから両手で細かくほぐします」なる記載が存在する。これらより、当該商品はコットンに浸して人体の頭部(頭皮や頭髪)に塗布して使用するものであることが認められる。
同じく、上記「取扱説明書」の11頁(2枚目左側)の上端の「取りはずしかた」の欄には次の記載が存在する(下線は請求人による)。
「アデランスはデリケートですので、」「頭皮や自毛に負担をかけないように、専用液を使って」「一ヶ所ずつていねいに、取りはずしてください。」
さらに上記「取扱説明書」の12頁(2枚目右側)の右下段には当該専用液(「レタブリール」と称されている)が表示され、「両面テープおよび接着剤をはがす専用液です。コットンに充分浸してご使用ください」という記載が存在する。さらに、当該専用液の左側には「両面接着テープ/接着剤」が表示されており、「アデランスを固定する際は、必ずこの両面テープ/接着剤をご使用ください」(下線は請求人による)という記載が存在する。
なお、これらの記載中の「アデランス」とは、同社製のかつらを意味するものと解される。
上記記載より、「レジャントーS レタブリール」は、かつらを「頭皮」や「自毛」(頭髪)に固定(装着)する専用の両面テープあるいは接着剤を、「頭皮」や「自毛」(頭髪)を傷めることなく安全に「頭皮」や「自毛」(頭髪)から取り除くように処方された専用液(専用品)であることが明らかである。
被請求人は、特許電子図書館の「商品・役務名リスト」(乙第10号証)に掲載された「かつら用剥離剤」及び「かつら用接着剤除去剤」が「化学品」(化学剤)に属するものとして例示されていることを根拠として、本商品「レジヤントーSレタブリール」が「化学剤」あるいは「剥離剤」である旨主張する。
しかしながら、個々の商品がいかなる商品概念に属するかは、当該商品の使用目的、使用方法、効能、使用場所、需要者の範囲等の具体的性質に基づき、個別具体的に決定されるべきである。特許電子図書館「商品・役務名リスト」に掲載されている「かつら用剥離剤」および「かつら用接着剤除去剤」は、あくまでも一般的な商品表示として例示されているものである。「商品・役務名リスト」の「かつら用剥離剤」、「かつら用接着剤除去剤」が「化学剤」に分類されるものとして例示されていることは、本商品「レジヤントーS レタブリール」が「化学剤」に該当することを意味するものではない。
請求人が第一回弁駁書において詳述し、また上述した通り、本商品は、かつらを頭皮や頭髪に固定するために頭皮や頭髪に貼付あるいは塗布して用いる専用の両面テープあるいは接着剤を「頭皮や自毛に負担をかけないように」頭皮や頭髪から除去するために処方された「専用液」(乙第12号証)である。コットンに浸して「頭皮」や「自毛」(頭髪)に塗布する(乙第6号証の3、乙第12号証)ものであるから、「頭皮に異常があるとき」や「頭皮に異常が現れたとき」には「使用を中止」するように注意書きがなされている(乙第6号証の3)。
本商品は、頭皮や頭髪に塗布して頭皮や頭髪を清潔にするものという視点で捉えれば、「化粧品」の概念に属するものであり、また、かつら装着時に頭皮や頭髪に貼付あるいは塗布する装着専用の両面テープあるいは同接着剤(乙第12号証)を頭皮や頭髪を傷めずに除去するための専用品という視点で捉えれば、「かつら装着用両面テープ」あるいは「かつら装着用接着剤」の専用品として「かつら装着用両面テープ」あるいは「かつら装着用接着剤」と同じ概念に属するものである。本商品の上記具体的性質に照らしてみれば、これが「化学剤」(剥離剤)に属する商品ではないことが明らかである。
従って、本件商標が本件取消請求に係る指定商品に本件請求登録前3年以内に使用された事実は認められない。
さらに、被請求人が「レジャントーS レタブリール」に関して提出した証拠方法は、単に本件商標を表示した商品の写真を示すもの(乙第6号証および同第12号証)または「新レタブリール」もしくは「レタブリール」に関する取引書類(乙第7号証および同第13号証)であって、本件商標が本件請求登録前3年以内に使用された事実を立証するものでない。
よって、この点からも、本件商標が本件取消請求に係る指定商品に本件請求登録前3年以内に使用された事実は認められない。
(3)被請求人は、第二回答弁書の(4)の欄で、一般消費者が家庭で使う消臭剤の全てが「薬剤」に属するという判断基準は存在しないこと、「かつら用消臭剤」は特許電子図書館の「商品・役務名リスト」に掲載されていないことを根拠として、「レジヤントS デオドラント・スプレー」(乙第8号証)が「薬剤」の概念に包含されるものではない旨を主張している。
しかしながら、請求人は、乙第8号証に表示されている「レジヤントS デオ ドラント・スプレー」の使用目的、使用方法、効能、使用場所、需要者の範囲等の具体的性質に基づいて、本商品は「薬剤」の概念に包含される消臭剤に該当するものであって「化学剤」に該当するものではないと述べているのであって、一般消費者が家庭で使う消臭剤の「全て」が「薬剤」に属すると述べてはいない。そもそも、そのような消臭剤の「全て」が薬剤に属するか否かといった事柄は本件問題から逸脱している。
特許電子図書館「商品・役務名リスト」に全ての商品名を例示することは不可能である。当該リストに「かつら用消臭剤」が記載されていないから本商品は「薬剤」の概念に包含されるところの消臭剤に該当しない、と述べる被請求人の主張に理がないことは明白である。
さらに、第1回弁駁書における請求人の主張の繰り返しになるが、被請求人は、本商品に関する本件商標の使用時期について何ら立証していないことを申し添える。
従って、本件商標が本件取消請求に係る指定商品に本件請求登録前3年以内に使用された事実は認められない。
(4)上記以外の商品(乙第5号証に示された商品及び同第9号証に示された商品)について被請求人は何ら反論していない。これらが本件取消請求に係る指定商品に該当しないという第一回弁駁書の請求人の主張が正当であることを自白したものと思料する。
4 結語
以上の通り、被請求人が提出した証拠方法からは、本件商標が本件請求の登録前3年以内に本件取消請求に係る指定商品に使用されていた事実を認めることはできない。
従って、本件商標の指定商品中、請求に係る商品についての登録は、不使用により取消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第14号証(枝番を含む)を提出した。
1 本件商標の使用について
(1)乙第1号証に示す商品は、人毛かつらの手入れに用いる界面活性剤(湿潤剤)である。取り外したかつらを洗ってタオルで乾かした後に用いる商品である。かつらの手入れ方法については乙第2号証に示す。この商品の広告は、被請求人のホームページでも行なわれており(乙第3号証)、取引事実を示す例として乙第4号証を提出する。乙第4号証において「LGトリートメントフォム*」と示された商品が乙第1号証の商品である。
(2)乙第5号証に示す商品は、かつらの静電気を防止するための界面活性剤(乳化剤)である。この商品の広告の事実も上記乙第3号証に示すとおりである。
(3)乙第6号証に示す商品は、化学剤(剥離剤)である。かつらに付着した接着剤を除去するためのものである。被請求人は、該商品に本件商標の他、商標「RETABLIR」及び「レタブリール」を使用しており、商品取引や商品説明の際に該商品を「レタブリール」と表示している(乙第6号証の3及び同第7号証)。なお、商標「LEGEND」の右側に中黒又はハイフンで結合した「S」の文字は、本商品が「LEGENDシリーズ」「レジャントシリーズ」を構成するシリーズ商品であること及び商品の優秀性を表す「SUPER」の略字を表す記号である。
(4)乙第8号証に示す商品は、化学剤(消臭剤)である。かつらに付着した臭いを除去するためのものである。
(5)乙第9号証に示す商品は、界面活性剤(油脂除去剤)である。かつらに付着した油脂を除去するためのものである。
2 弁駁に対する答弁(第二回)
(1)「かつら用の化粧品」について
請求人は、「かつら用の化粧品」が「化粧品」の概念に包含されると主張している。
しかし、そもそも「化粧品」は、身体に使用されることを目的とするものである。このことは、請求人が提出の甲第5号証において明らである。「かつら」は身体ではない。常識的に、「化粧」とは身体を美しくすることであって、「かつら」を「化粧」することはない。
なお、請求人は、特許電子図書館の商品・役務名リストに「頭髪用・かつら用の化粧品」の記載があることを根拠に「かつら用の化粧品」が「化粧品」の概念に包含されるとする。しかし、該リストに現在上記記載は存在しない。「かつら用化粧品」の表示が指定商品の表現として妥当でないため削除されたものと思われる。上記商品・役務名リストは、適宜修正がなされるものである。
なお、乙第1号証に示す商品は、乙第2号証に示すとおり、人毛かつら専用の手入れ用品であり、かつら使用者にのみ販売されるものである。身体に使用するものではない。
(2)乙第6号証の「LEGEND-S/RETABLIR」が「化粧品」に属するとの請求人の主張について
請求人は、乙第6号証の「LEGEND-S/RETABLIR」を「頭皮を清潔にするもの」として「化粧品」の概念に包含されると主張する。
しかし、乙第6号証に示す商品は、接着剤を溶かして剥離するためのものであって頭皮を清潔にする目的は全くない。かつらを頭から取るときに接着剤がたまたま頭髪や頭皮に残った場合にも使用するが、請求人が断定的に「頭皮に直接塗布される」と述べるようなことはない。勿論、需要者が頭皮を清潔にする目的で購入することはない。本件商品は、乙第6号証の3に示すように、「有機溶剤 インプロパノール」を成分とする「危険物 第四類第一石油類」であり、デリケートな頭皮に化粧品の如く塗りつけることはありえないのである。
なお、かつらについた接着剤を取除いた場合でも、本件商品が微量ながら残ることがあるため、乙第6号証の3に示す「取扱い及び保管上の注意」において、「頭皮に異常があるとき、または異常が現れたとき〜」の記載をしている。
(3)乙第6号証の「LEGEND-S/RETABLIR」が「接着剤」に包含されるとの請求人の主張について
請求人は、前記主張の他に、乙第6号証のものは「かつら装着用接着剤」(すなわち「接着剤」の概念)に包含されるものであるともいえる、と主張する。
その根拠として、「上記商品と同様に人体に使用する商品である『マニキュア』と『マニキュア除去剤(液)』、あるいは『ネイルエナメル』と『ネイルエナメル除去剤(液)』が同一の『化粧品』に分類される関係から明らかである」とする。
これは、例えば、人体を美化するために使用する「つけづめ」とそのために人体に使用する「つめ用接着剤」が、さらに人体に使用する「つけづめ接着剤除去剤」が、全て「化粧品」に属するがごとき主張である。
しかしながら、「つけづめ」は昭和34年法による分類で「化粧用具」に属するものであり、「つめ用接着剤」は「のり及び接着剤」に属するものであり、さらに「つけづめ接着剤除去剤」(つけづめ用剥離剤)は「化学品」に属するものである(乙第10号証)。このことから、請求人の主張が我田引水なものであることが明白である。本件商品は、「かつら用剥離剤」(同第10号証)または「かつら用接着剤除去剤」として「化学品(化学剤)」に属するものである。
なお、本件商品に関するレシートに表示された「新レタブリール」の「新」とは、単に新しい「レタブリール」であることを表現するものである。「レタブリール」と表現するのは、一連の「LEGEND」シリーズ商品において、区別が付き易い名称で特定したものであって、乙第6号証に示す商品との同一性が失われることはない。
さらに、被請求人が本件商品を取引していることは、添付のパンフレット(乙第11号証)や取扱説明書(乙第12号証)及び納入元から「販売用」又は「業務用」として本件商品や販売用ダンボール箱・ペットボトルを継続して仕入れている納品書(乙第13号証)からも明らかである。ちなみに、「化粧品」の製造には知事の許可が必要であるが(薬事法)、上記納品書に示す納入業者「太田隆株式会社」は、その許可を得ていない。化粧品でない本件商品の製造について許可を得る必要がないからである。
(4)請求人は、「LEGEND-S」(デオドラント・スプレー)が「薬剤」の概念に包含されるものであると主張する。
その理由として、上記商品が「一般消費者が、家庭で使う」ことを挙げている。しかしながら、「一般消費者が、家庭で使う消臭剤」が全て「薬剤」に属するとの判断基準は存在しない。「薬剤」に含まれるものは、原則として、薬事法の規定に基づく“医薬品”の大部分、薬事法にいう“医薬部外品”の一部及びすべての農薬である(乙第14号証)。「かつら用消臭剤」はかかる原則にあてはまるものではなく、「商品・役務リスト」に記載されている事実もない。
3 以上のとおり、被請求人は、昭和34年法による商品の区分第1類で指定した商品「接着剤,その他本類に属する商品」のうち、取消請求がなされた商品について本件商標の使用をしているものである。

第4 当審の判断
1 被請求人が示す使用商品について
(1)使用商品についての両者の主張の整理
被請求人は、乙1号証号、同第5号証、同第6号証、同第8号証及び同第9号証(いずれも枝番を含む。)をもって、本件商標を本件取消請求にかかる商品について使用している旨主張している。そこで、上記乙各号証に示された5つの商品が属する概念について、被請求人と請求人の主張を整理すると、下記のようになる。
(ア)乙第1号証の商品について
乙第1号証(枝番を含む)に示す商品について、被請求人は「界面活性剤(湿潤剤)」であると主張し、被請求人は「化粧品」の概念に属すると主張している。
(イ)乙第5号証の商品について
乙第5号証(枝番を含む)に示す商品について、被請求人は「界面活性剤(乳化剤)」であると主張し、被請求人は「化粧品」の概念に属すると主張している。
(ウ)乙第6号証の商品について
乙第6号証(枝番を含む)に示す商品について、被請求人は「化学剤(剥離剤)」であると主張し、被請求人は「化粧品」、もしくは「かつら装着用接着剤専用の除去剤」であり、これは、「かつら装着用接着剤」に包含されると主張している。
(エ)乙第8号証の商品について
乙第8号証(枝番を含む)に示す商品について、被請求人は「化学剤(消臭剤)」であると主張し、被請求人は「薬剤」の概念に属する「消臭剤」であると主張している。
(オ)乙第9号証の商品について
乙第9号証(枝番を含む)に示す商品について、被請求人は「界面活性剤(油脂除去剤)」であると主張し、被請求人は「せっけん類」の概念に属すると主張している。
(2)両者主張の各商品の概念について
前記(1)の両者の主張によれば、請求人は、本件商標は、本件取消対象にかかる商品に使用していると主張しており、被請求人は、本件商標は、本件取消対象にかかる商品に使用されていないとの主張をしていることとなるから、以下、両者の主張の是非、すなわち、前記(1)における各商品の商標法における概念について、検討する。
しかして、本件商標は、第1類「接着剤、その他本類に属する商品」を指定商品として昭和56年8月6日に登録出願されたものであるから、昭和35年3月8日昭和35年政令第19号をもって改正された商標法施行令(以下「旧政令」という)1条に基づく商品の区分にしたがって、指定商品が指定されているものである。
そこで、以下の検討をするに際しては、旧政令1条に定められた商品の区分の別表(以下「旧政令別表」という)及び、昭和50年通商産業省令第85号をもって改正された商標法施行規則(以下「旧省令」という)3条に定められた別表(以下「旧省令別表」という)に基づいてこれを行うこととする。
なお、乙第6号証(枝番を含む)に示す商品について請求人が、「もしくは、『かつら装着用接着剤専用の除去剤』であり、これは、『かつら装着用接着剤』に包含される」と主張している点については、次項(3)の「(ウ)(B)」において検討を加えることとする。
(ア)「界面活性剤」ないし「化学剤」について
旧省令別表によれば、「界面活性剤」ないし「化学剤」は、第1類「化学品」の下位概念として、「四 界面活性剤」及び「五 化学剤」として規定されているところである。
しかして、「化学品」は、旧政令別表において、第1類に「化学品(他の類に属するものを除く。)」と定められていることから、他の類に属しない化学的製品は、原則として、第1類「化学品(他の類に属するものを除く。)」に含まれると解されるものである。したがって、その下位概念である「界面活性剤」ないし「化学剤」についても、他の類に属しないものについては、これらの概念に含まれると解されるものである。
(イ)「化粧品」について、
「化粧品」についてみるに、「広辞苑」(第5版 岩波書店発行。以下同じ。)には、「化粧に用いる品。クリーム・白粉・紅・洗顔剤の類。」とあり、また、「商品大辞典」(東洋経済新報社 1996年4月15日発行 第13刷)によれば、「化粧品は、薬事法によって医薬品と区別されている。すなわち、塗擦、散布およびその類似法で使用され、人体に対する作用が緩和なものでなければならない。」(982頁右側中段部分)との説明があり、さらに、薬事法2条3項には「この法律で『化粧品』とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第1項第2号又は第3号に規定する用途に使用されることもあわせて目的とされている物及び医薬部外品を除く。」との規定がされているところである。
そして、商標法においては、「化粧品」は、旧政令別表において、第4類に「化粧品(薬剤に属するものを除く)。」として規定されているところ、その概念について、商標法上、上記書籍及び薬事法における説明及び定義と異なるとすべき特段の理由はなく、商標法のもとにおける「化粧品」は、人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つことを目的として、身体に塗擦、散布等の方法で使用されるものをいうと解されるものである。このことは、旧省令別表第4類の「化粧品(薬剤に属するものを除く。)」のもと、「一 おしろい」ないし「七 その他の化粧品」に列挙された個別の各商品の内容に照らしても妥当といえるものである。ただし、薬剤に属するものはここから除かれている。
(ウ)「せっけん類」について
旧政令別表第4類の「せっけん類(薬剤に属するものを除く。)」は、洗浄作用を目的とする化学的製品であって、通常「せっけん」(動植物油脂に水酸化ナトリウムを加え、煮沸・攪拌し、食塩を加え塩析して製する洗剤。「広辞苑」)又は「洗剤」(衣服・器物などを洗うために、湯・水にとかして用いるもの。「広辞苑」)と呼ばれるものをいうと解されるものである。そして、ここからは薬剤に属するものは除かれている。
(3)使用各商品の属する商品区分ないし概念について
上記(2)に基づき、被請求人が本件商標を使用しているという(1)記載の各商品の商標法上の商品としての所属先について、以下、個々に検討する。
なお、その際、請求人が提出した甲第3号証、同第4号証、同第6号証ないし同第8号証及び同第9号証並びに被請求人が提出した乙第10号証の「商品・役務名リスト」は、旧政令にかかる商品区分のものではなく、かつ、これらは当庁における審査の事例を掲載したものであって、法的な拘束力を伴うものではないから、当合議体が、これらの事実を事情として参照することはできても、それらをもって本件各商品の商標法上の所属を決する証明力のある証左として採用することはできないものである。
(ア)乙第1号証の商品について
乙第1号証の商品について、被請求人は、「人毛かつら」の手入れに用いる湿潤剤(界面活性剤の一種で,固体粒子の表面を水にぬれやすくする性質をもつ薬剤「JIS工業用語大辞典」財団法人日本規格協会 1987年11月10日発行 第2版))であると主張している。
しかして、この商品の裏面の状態を示した乙第1号証の3には、「クリーミーな泡タイプのトリートメントフォームです。シリコンや油分を含まない天然複合アミノ酸主体のトリートメントなので傷んだ毛髪を髪の内部から健康な状態に改善します。また、自然なツヤとハリを与え手入れのしやすい髪質を得ることが出来ます。」との表示がされており、これに続いて、<使用方法>として、「乾いた髪にフォーム・・を・・とり髪全体に塗布しブローして下さい。・・・」「シャンプー後、・・フォーム・・を髪全体に塗布し・・・」との記載が認められる。
さらに、被請求人のホームページの写しである乙第3号証には、「アデランス」「>HOME>メンズ商品>その他のヘヤケア商品>レジャントシリーズ」として、被請求人の取り扱いにかかる男性用ヘアケア商品である「レジャントシリーズ」の商品が紹介されており、その、「レジャント トリートメントフォーム」の欄には、「シリコンや油分を含まない天然複合アミノ酸主体のフォームタイプのトリートメントです。」との記載がされており、また、「レジャント トリートメントスプレー」には、「静電気を防ぎ、ほこりから髪を保護するスプレー式トリートメントです。」との記載がされ、さらに、「レジャント-Sクールトニック」には、「クリーニング効果により、すっきりとした使い心地のよい、フケ・カユミを抑えるエアゾールタイプのヘアトニックです。」との記載が認められる。
これらの乙第3号証の各記載に照らせば、このホームページは、男性の頭髪用化粧品を宣伝広告するものであって、ここにおける「レジャント トリートメントフォーム」は、男性の頭髪用の商品であるとの理解がされることはあっても、これが、かつら専用の商品であると理解されることはないというべきである。
以上によれば、乙第1号証の商品は、乙第2号証によれば、人毛商品(かつら)用に販売されることが認められるとしても、男性の頭髪に使用される「ヘヤートリートメント」というべきであって、これは、「化粧品」に属する商品であると判断される。そして、外に、乙第1号証の商品は「人毛かつら専用の湿潤剤」であって、「化粧品」ではないとすべき証拠はない。
そうとすれば、乙第1号証の商品は、化学的製品ということはできても、旧政令別表第4類の「化粧品(薬剤に属するものを除く。)」に属するものであるから、本件商標の指定商品中の「化学品(他の類に属するものを除く。)」に含まれるとすることはできない。
したがって、乙第1号証に示される商品をもって本件商標がその指定商品に使用されたとすることはできないものである。
(イ)乙第5号証の商品について
乙第5号証の商品について、被請求人は、かつらの静電気を防止するための乳化剤であると主張している。
しかして、この商品の裏面の状態を示した乙第5号証の3には、「ヘアスプレー」及び「ノンアルコール/無香」との表示がされ、ついで、「かるくスプレーしてからよくブラッシングして下さい。髪に自然な潤いとソフトな光沢を与えます。」、「静電気を防ぎ、ほこりから髪を保護しトリートメント効果を高めます。」、「整髪のためのトリートメントとして、セット時にご使用ください。ハードタイプのヘアスプレーを使う前に使用致しますと仕上効果を一段と引き立てます。」と記載され、この商品と推認される商品が、男性の頭髪用化粧品を宣伝広告する乙第3号証にも表示されていることからすれば、これが、かつらに使用されることがあるとしても、男性の頭髪用のヘヤートリートメントスプレーというべきものであって、この商品は化学的製品ということはできても、旧政令別表第4類の「化粧品(薬剤に属するものを除く。)」に属するものというべきであるから、本件商標の指定商品中の「化学品(他の類に属するものを除く。)」に含まれるとすることはできない。そして、外に、乙第5号証の商品が「人毛かつら専用の乳化剤」であって、「化粧品」ではないとすべき証拠はない。
したがって、乙第5号証に示される商品をもって本件商標がその指定商品に使用されたとすることはできないものである。
(ウ)乙第6号証の商品について
乙第6号証の商品について、被請求人は、「化学剤」に属する「剥離剤」であると主張し、請求人は、「化粧品」もしくは「かつら装着用接着剤」に包含される「かつら装着用接着剤専用の除去剤」である旨主張している。
(A)乙第6号証の商品が「化粧品」であるとの請求人の主張について
(a)この商品の裏面の状態を示した乙第6号証の3には、「取扱い及び保管上の注意」として、「かつらの取りはずし及び接着剤の除去以外には使用しないで下さい。」との記載が認められ、また、乙第12号証の12頁の右下部分には、「レタブレール」として「両面テープおよび接着剤をはがす専用液です。」との記載が認められるところである。
(b)乙第12号証の11頁には、その上段分に、「取りはずし方」、「アデランスはデリケートですので、頭皮や自毛に負担をかけないように、専用液を使って一ケ所ずつていねいに、取りはずしてください。」と記載され、さらに、この商品の使用方法である、かつらの取り外し方が4つの写真付きで説明されているところである。
(c)前掲「商品大辞典」983頁には、「表8」として「化粧品の用途による分類」が示されており、これによれば、化粧品が、「皮膚に使用する化粧品」、「毛髪に使用する化粧品」、「口中に使用する化粧品」、「芳香品」に分類されており、これらはさらに、下位の分類に区分され、その下に個別の商品が列挙されているところ、「毛髪に使用する化粧品」については、「シャンプー」、「養毛料」、「整髪料」、「ウェーブ料」、「染毛料」、「脱毛料」、「ひげそり製品」の下位の各分類に区分されていることが認められる。
(d)乙第6号証の3によれば商品の裏面には、「成分」として、「芳香族系有機溶剤 イソプロパノール 香料」とあることが認められる。このうち、「イソプロパノール」については、「化学大辞典縮刷版」(1997年 共立出版発行)によれば、「イソプロピルアルコールの慣用名」とあり、「イソプロピルアルコール」については、「・・・・・消毒剤,防腐剤。70%溶液を皮膚や注射筒の消毒にエチルアルコールと同様に用いる。毒性が強いので内用には用いない。」との説明がある。
(e)以上の(a)ないし(d)によれば、乙第6号証に示された商品は、かつら装着用の両面テープ及び接着剤を頭皮から剥離するための専用商品として取引されるものであって、その用途からすれば、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されるということもできないから、前記「(2)(イ)」で述べた「化粧品」とは目的を異にするものであって、これを「毛髪に使用する化粧品」ということはできず、かつ、商品の成分からみれば、これが化学的製品であるといえるから、これらを総合して検討すれば、乙第6号証にかかる商品は、化学品であって、かつら装着用の両面テープ及び接着剤を頭皮から剥離するための「剥離剤」といえ、旧省令別表の第1類「化学品(他の類に属するものを除く。)」中の「五 化学剤」に属すると認めて差し支えないというべきである。
この点について、請求人は、該商品の主たる使用目的、効能は、頭皮に装着したかつらを頭皮から取りはずすために頭皮に直接塗布し、頭皮に付着したかつら装着用接着剤を除去して、頭皮を清潔にするためのものであるから、該商品は、「化粧品」の概念に包含される商品である旨主張している。
しかして、上記したように、乙第6号証の商品は、頭皮に塗布し頭皮を清潔にするためのものではなく、かえって、前記(a)及び(b)によれば、かつら装着用の両面テープ及び接着剤を頭皮から剥離することを目的とするものと認められ、ほかに上記判断を左右し、請求人の主張を是とすべき証拠はない。
(B)乙第6号証の商品が「かつら装着用接着剤」に包含される「かつら装着用接着剤専用の除去剤」である旨の請求人の主張について
旧省令別表の第1類には「化学品(他の類に属するものを除く。)」の下位概念に「三 のりおよび接着剤」が掲載されており、ここに例示されている商品をみるに、これらは、その用途を問わず、原則として、すべての「のりおよび接着剤」がこの概念に属すると解されるものであって、「かつら装着用接着剤」についても、この概念に属する商品というべきである。そして、ここにおける「のりおよび接着剤」を剥離するための商品(「剥離剤」)は、この中には掲載されてはいないから、特に他の類に属するものでない限り、「剥離剤」は、旧省令別表の第1類の「化学品(他の類に属するものを除く。)」中の「五 化学剤」に属すると解すべきものである。
したがって、この点をいう請求人の主張は採用することができない。
(エ)乙第8号証の商品について
乙第8号証の商品について、被請求人は、「化学剤(消臭剤)」であるとしている。
しかして、「消臭剤」は、不快な臭いを消す(広辞苑)ための剤(薬)であり、この商品は、「制臭剤」、「脱臭剤」(臭気をぬくために用いる薬剤。「広辞苑」)、「防臭剤」(悪臭を消す薬剤。「広辞苑」)などと呼ばれることもあり、「消臭」の語の有する意味からすれば、「消臭剤」の表示のみでは、旧省令別表における所属が明確にならず、この種商品は、用途によってその所属が異なるといえる。そして、これらは、工業用のものは「化学品(他の類に属するものを除く。)」に、身体用のものは「化粧品(薬剤に属するものを除く。)」に、それ以外のものは、旧省令別表「薬剤」中の「三十 農業用または公衆衛生用薬剤」中に「防臭剤」が所属していることからすれば、「薬剤」の範ちゅうに属するものと判断される。
これを本件についてみるに、乙第8号証の2の商品裏面の記載部分には、「レジャント・S」「デオドラント・スプレー」とあり(「デオドラント」は「不快なにおいを除いたり防止したりするもの。制臭剤。」「広辞苑」)、その下部に、「軽くスプレーするだけで、製品に付着した汗や汚れの不快なにおいを除去します。」と記載され、さらに、その下部には「ご注意」として、「皮膚に直接スプレーしないでください。」とあることから、この商品は、工業用や身体用のものとはいえず、これが「消臭剤」である場合には、「薬剤」に属する「消臭剤」である可能性が大きいものである。
しかるところ、この旨をいう請求人の主張に対して、被請求人は、「『一般消費者が、家庭で使う消臭剤』が全て『薬剤』に属するとの判断基準は存在しない。『薬剤』に含まれるものは、原則として、薬事法の規定に基づく“医薬品”の大部分、薬事法にいう“医薬部外品”の一部及びすべての農薬である」として、本件商品が「薬剤」には属しない旨主張しているが、商標法上の「薬剤」には、薬事法の「医薬品」や「医薬部外品」あるいは「農薬」以外の商品は含まれないと解すべき理由はなく(例えば、上記した、旧省令別表「薬剤」中の「三十 農業用または公衆衛生用薬剤」中の「防臭剤」)、被請求人は、当該商品が「化学剤」であると認定するに足りる証拠を提出していないから、その主張は採用することができない。
なお、乙第8号証の商品には「消臭剤」との表示が見あたらないから、被請求人の主張のみでは、この商品が「消臭剤」であるとは直ちに認定し得ないが、臭いを除去する商品として取引されていることは明らかであるから、上記のように認定・判断した。
この点に付き、身体用のものではなく、家庭で使用される「防臭剤」が「薬剤」に分類される「防臭剤(身体用のものを除く。)」に含まれるとした判決がある(平成6年1月27日 東京高裁 平成15年(行ケ)第350号)。
(オ)乙第9号証の商品について
乙第9号証の2には該商品の裏面が表示されているところ、ここには、「ベースクレンジングフォーム」として、「ベース部分に付着した汗や皮脂の汚れをキレイに落とします。」、「汚れと臭いをつつみこむ発泡性で、しかも軽く拭き取るタイプなので、ベース部分を傷めることなく簡単に洗浄できます。」、「微細なネット部分にも使用できます。」、「泡が上に浮き上がったら、ティッシュペーパー等で拭き取ります。」との記載があることからすれば、乙第9号証に示された商品は、かつらに付着した汗や皮脂成分を拭き取ることにより除去することを目的とした「油脂除去剤」とみるのが相当であって、これは、「化学剤」に属する商品といえ、前記「(2)(ウ)」で述べた、洗浄作用を目的とする「せっけん類」に属する商品とみることはできないものである。
(4)以上によれば、被請求人の提出した、乙第6号証に示された商品は、旧省令別表第1類「化学品(他の類に属するものを除く。)中の「化学品 五 化学剤」に属する「剥離剤」であり、乙第9号証に示された商品は、同じく「化学品 五 化学剤」に属する「油脂除去剤」ということができるものである。
2 本件商標の使用について
そこで、以下、本件取消審判の請求の登録前3年以内に、乙第6号証及び同第9号証に示された商品に、本件商標が使用されていたか否かについて検討する。
(1)乙第6号証の1及び同号証の2、並びに乙第12号証の12頁右下部に示された商品の中央正面部分には、本件商標と社会通念上同一視できる商標(色彩については商標法70条1項を適用、「-S」の部分は記号・符号等の表示と認識される付記的表示であって、自他商品識別標識としての機能を果たし得ない部分と判断される。以下、本件において同様)が付されていることが認められるものである。
(2)本件商標の登録原簿によれば、本件取消審判の請求が登録されたのは、平成15年11月12日である。しかして、乙第7号証の1及び同号証の2によれば、「新レタブリール」との商品が取引されたことが認められ、他方、乙第6号証(枝番を含む)によれば、該商品に「RETABLIR」あるいは「レタブリール」との文字が表示されていることからすれば、乙第7号証の1及び同号証の2のレシート(写し)は、乙第6号証の商品に関連するレシート(写し)と推認し得るものである。そして、乙第7号証の1及び同号証の2の「新レタブリール」の文字中の「新」の文字は、「レタブリール」の新商品との意味合いを認識させる文字といえ、乙第7号証の1及び同号証の2における「新レタブリール」との商品が、乙第6号証の商品と同一のものとはいえないものの、該「新レタブリール」との商品に本件商標が付されていた可能性は高いものと推認できるものである。
そうとすれば、乙第7号証の1及び同号証の2のレシート(写し)に表示されている取引年月日(2003年8月1日及び同年9月11日)により、本件商標は、本件取消審判の登録前3年以内に、取消対象にかかる商品である「剥離剤」に使用されていたとみることも可能といえるものである。
しかるところ、第7号証の1及び同号証の2のレシート(写し)は、後日作成することもできるから、この乙号証は、使用の事実を推認し得るものとして参酌することはできても、乙第6号証(枝番を含む)と、このレシート(写し)のみをもって本件商標が使用されていたするにはいささか客観性に欠けることは否めないものである。
(3)乙第11号証の「アデランスファーザーズクラブ」とのパンフレットは、会員制によるかつら利用システムを宣伝するものであるところ、ここには「レタブリール」が取り扱われていることが認められ、このパンフレットには、最終頁下段部に、「AFC020505000」との文字が表示されている。このパンフレットについて、被請求人は答弁書(第二回)5頁「7 証拠方法 (2)」において、このパンフレットが2002年5月に印刷されたとしている。上記数字中の「0205」の部分は、上記答弁書の記載と照応するものとみることができ、乙第11号証のパンフレットは、本件取消審判の請求の登録前である、2002年5月に印刷されたものとみて差し支えないと判断される。
(4)乙第12号証の「取扱説明書」は、「かつら」にかかるものと認められるところ、この12頁には、乙第6号証の商品と同じ「レタブリール」が取り扱われていることが認められ、このパンフレットには、最終頁と推認できる下段部に、「THM01-030401000」との文字が表示されているところ、被請求人は答弁書(第二回)5頁「7 証拠方法 (3)」において、このパンフレットが2003年4月に印刷されたとしている。上記数字中の「0304」の部分は、上記答弁書の記載と照応するものとみることができ、乙第12号証のパンフレットは、本件取消審判の請求の登録前である、2003年4月に印刷されたものとみて差し支えないと判断される。
(5)乙第13号証の3及び同号証の4によれば、商品「レタブリール」及びその包装容器が、本件取消審判の請求の登録前である、平成15年8月29日及び平成15年4月25日に、製造業者と推認できる「太田隆株式会社」から、被請求人宛に納品されていることが確認できるものである。
(6)以上の(1)ないし(5)を総合して勘案すれば、被請求人は、本件取消審判の登録前3年以内に、乙第6号証にかかる「レタブリール」とされる商品、すなわち、本件取消対象にかかる商品である、「化学剤」に属する、かつら装着用の両面テープ及び接着剤を頭皮から剥離するための「剥離剤」に、本件商標と社会通念上同一視できる商標を使用していたとみて差し支えないと判断されるものである。
(7)乙第9号証にかかる商品(「化学剤」に属する「油脂除去剤」)について被請求人は、「その取引の具体的事実は、適宜提出の用意がある。」と述べているが、その後これを立証していない。したがって、本審判事件においては、被請求人は使用の事実を証明する意思がないものといわざるを得ないから(商標法50条2項)、乙第9号証をもって、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用された、とすることはできない。
3 結語
以上によれば、本件商標は、被請求人(商標権者)により、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の請求に係る商品「科学用又は研究用の試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。),その他の無機工業薬品・有機工業薬品・界面活性剤・化学剤」中の「化学剤」に属する「剥離剤」については、使用されていたということができるものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「科学用又は研究用の試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。),その他の無機工業薬品・有機工業薬品・界面活性剤・化学剤」についての登録は、商標法50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】本件商標(登録第1971025号)



審理終結日 2005-04-22 
結審通知日 2005-04-27 
審決日 2005-05-10 
出願番号 商願昭56-66371 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (101)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 若月 重男 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 宮川 久成
山本 良廣
登録日 1987-07-23 
登録番号 商標登録第1971025号(T1971025) 
商標の称呼 レジェンド、エジェンド、レジャント 
代理人 小田 治親 
代理人 柳田 征史 
代理人 佐久間 剛 

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