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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 111
管理番号 1123109 
審判番号 取消2004-30009 
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-10-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2003-12-26 
確定日 2005-08-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第2697721号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標登録の取消しの審判
1 本件商標
本件商標登録の取消しの審判に係る、登録第2697721号商標(以下「本件商標」という。)は、「モンスター」の片仮名文字を横書きしてなり、平成1年5月24日に登録出願、第11類「電線、ケーブル(光ファイバー・光ファイバーケーブルを含む。)」を指定商品として、 平成6年10月31日に設定登録されたものである。
2 本件商標登録の取消しの審判
本件商標登録の取消しの審判は、商標法50条により、本件商標の登録の取消しを請求するものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び弁駁を、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第18号証を提出した。
1 請求の理由
被請求人(商標権者)は、本件商標に係る指定商品「電線、ケーブル(光ファイバー・光ファイバーケーブルを含む)。」について、継続して3年以上日本国内において商標権者自ら使用していないものであり、また、本件商標の登録原簿(甲第2号証)に記載のとおり、専用使用権又は通常使用権のいずれの登録もなされていないので、審判請求の登録前3年以内において専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用もされていない。
よって、請求人は、商標法50条1項の規定により本件商標の登録を取り消す、との審判を請求するものである。
2 答弁に対する弁駁(第1回)
(1)本件商標について
本件商標に係る「モンスター」の文字及びこれに通じる英単語「MONSTER」の語との結合商標として、登録例が存在する(甲第3号証ないし同第17号証)。
本件商標に係る「モンスター」の文字及びこれに通じる英単語「MONSTER」の語を含む商標が、本件商標と非類似の商標として多数商標登録が認められていることからすると、本件商標に係る「モンスター」の語及びこれに通じる英単語「MONSTER」の語は他の語と結合しやすい言葉であって、他の語と容易に結合して非類似の商標となるものであることが明らかである。すなわち、本件商標「モンスター」の類似の範囲、いわゆる禁止権の範囲が狭いということがいえる。
商標法50条1項における登録商標の使用といえるためには、登録商標と同一の商標を使用していることが必要であり、登録商標に類似する商標の使用は登録商標の使用と認められるものでないことは当然である。
したがって、本件商標「モンスター」の使用に際しては、原則通り、本件商標「モンスター」単独での使用こそが登録商標の使用と解するべきである。
(2)登録商標の使用については、まず一義的には商標権者の我が国における使用がなされなければならない。そのような観点から、被請求人の提出に係る乙第1号証ないし同第9号証を参照しても、被請求人の使用はされていない。
一方、商標法50条においては、使用権者による登録商標の使用についても我が国における登録商標の使用として許容されている。しかしながら、使用権者であると主張するオンキョー株式会社との使用許諾契約は何ら書証として提出されておらず、不知である。また、使用権者による使用については、商標権者には使用権者の使用について監督義務がある(商標法53条)ことは既知の事実である。かかる観点をも踏まえて、使用権者による本件商標の使用が正当になされて、本件商標の使用といえるか否かについても言及しなければならない。
(ア)乙第1号証では、「モンスターDVIケーブル」と一連の態様で使用していることは明らかであり、その外観構成態様からみても「モンスター」と「DVIケーブル」とが分離される理由は存在しない。けだし、本件商標「モンスター」は他の語と結合しやすい言葉であるから、本件商標の使用の範囲が拡大解釈されるべきではない。
(イ)乙第3号証ないし同第9号証をみてみると、本件商標「モンスター」の単独での使用が全くみられず、本件商標と同一の商標が使用されているものは何ら示されていない。被請求人は、乙第3号証ないし同第9号証から「MONSTER」の語のみを抽出しているしているに過ぎず、これらはいずれも客観的事実から認められる本件商標「モンスター」の使用を示すものではない。
(ウ)乙第4号証及び同第5号証をみてみると、カタログ表紙の上方中央部に「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」とまとまりよく渾然一体に表されている。
(エ)乙第4号証及び同第5号証における「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」をみると、中央の「THX」は、「T」の上部の「バー」が全体に右側に伸長し、かつ、「T」の下部も「バー」が右側にほぼ対称に伸長しており、上部の「バー」の直上には、図案化されたM形図形と一連不可分に「M形図形+MONSTER」と配され、下部の「バー」の直下には「CER TIFIED」の文字が一体に配されている。
乙第4号証及び同第5号証における「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」の外観構成態様からすると、全体として、一部のみが分離されるべき使用形態ではない。このような使用は、本件商標の使用でない。
乙第4号証及び同第5号証には「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」のアールマーク「(R)」が付されている。アールマーク「(R)」については、登録商標を表示するものとして我が国においても広く慣習的に行われていることは周知の事実であるが、「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」について我が国で商標登録がされている事実は不知である。また、アールマーク「(R)」を「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」に付していることからすれば、「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」で一体の構成であり、全体として商標登録がされていることを示すものであるから、「MONSTER」の語のみが分離されるものではない。従って、「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」の使用は、本件商標の使用と認められるものではない。
(オ)乙第6号証では、「MONSTER THX CERTIFIED CABLES」と一連に使用されているのみであって、本件商標「モンスター」の単独での使用とは到底いえるものではなく、本件商標と同一の商標が使用されてはいないことは明白である。
また、被請求人自身が乙第6号証において「MONSTER THX CERTIFIED CABLES」という一連の構成態様で使用していることからも明らかなように、乙第3号証、乙第4号証及び同第5号証の「M形図形+MONSTER/THX/CERTIFIED」の使用態様においても、「MONSTER」は被請求人の商標、「THX」はルーカスフィルム社の商標を表示したもの、と一義的に認識されるものではない。
(カ)乙第7号証は、モンスターケーブル製品カタログの写しであり、乙第8号証及び同第9号証は、乙第7号証の中から抜粋したものと解される。
乙第8号証は、中央のケーブルのプラグ部において本件商標が使用されていることの証拠として提出されたものと推察される。しかしながら、請求人が入手した被請求人製品を見てみると、乙第8号証と同様の位置であるケーブルのプラグ部に使用されているのは「MONSTER CABLE」の文字であって、「MONSTER」の文字単独では使用されてはいない(甲第18号証)。また、乙第7号証のカタログの商品番号「BIL250」の商品写真においても明確に「CABLE」の文字がみられる。
そうすると、被請求人提出に係る乙第8号証を含む乙第7号証中、商品の写真において「MONSTER」の文字がみられるとしても、それは「MONSTER CABLE」の一連の使用態様のうちの一部が見えているに過ぎないのであって、これをもって本件商標の使用であるとする被請求人の主張は、何ら客観的な事実に基づくものとはいえない。「MONSTER CABLE」という実際の使用態様において、「MONSTER」の文字が看取できる位置での写真を本件商標の使用の証拠とすることは極めて不当である。
また、甲第18号証で使用されている「MONSTER CABLE」の文字は一連の構成であって、また、文字尾部にアールマーク「(R)」を付していることからも、「MONSTER CABLE」で一体の構成であり、本件商標の使用と認められるものでない。仮に「MONSTER CABLE」の使用が本件商標「モンスター」の使用になるのであれば、請求人の提出する甲第3号証ないし同第17号証の使用にも該当することになり、本件商標の使用をここまで拡大して解釈すべきではない。
(キ)被請求人は、乙第1号証、乙第3号証及び同第7号証として提出されたカタログに掲載されているオンキョー株式会社は、本件商標に係る通常使用権者であると主張しているが、オンキョー株式会社が本件商標に係る通常実施権者であることの立証は何らされておらず、オンキョー株式会社による使用が商標法50条における本件商標の使用と認められるに足る証拠はない。
(3)審判請求登録前3年以内の使用について
乙第2号証、乙第6号証及び同第9号証をみてみると、「このカタログの記載内容は2003年7月現在のものです」(乙第2号証)、「このカタログの記載内容は2003年5月現在のものです」(乙第6号証)、「このカタログの記載内容は2002年11月現在のものです」(乙第9号証)とカタログ自身に記載されているのみであって、実際に乙第1号証、乙第3号証及び同第7号証に係るカタログが乙第2号証、乙第6号証及び同第9号証に夫々記載されている時期に発行されたものであることを証明する客観的な証拠は何ら示されていない。
したがって、被請求人の提出に係る乙各号証は、いずれも審判請求の登録前3年以内の使用を立証するに足る証拠とはいえない。
3 当審からの審尋に対する被請求人の「回答書」に対する弁駁(第2回)
(当審は、当事者間において、オンキョー株式会社が本件商標の通常使用権者であるか否かについて争いがあったので、被請求人に対して平成16年12月6日付でその立証を促す審尋をしたところ、被請求人から、同17年2月1日付で、その回答がなされ、あわせて乙第10号証及び同第11号証が提出された。これに対して、請求人は要旨以下のように弁駁したものである。)
(1)被請求人は、平成17年2月1日付「回答書」(以下、「回答書」という。)で、乙第10号証及び同第11号証を示し、「被請求人又はオンキョー株式会社が、指定商品『ケーブル』について、本件商標を使用していることは明らかである。」と主張している。
しかしながら、被請求人提出の乙第10号証及び同第11号証によっては、乙第1号証ないし同第9号証における商標の使用に関し、オンキョー株式会社が通常使用権の許諾を受けている証拠とはならない。
(2)被請求人により提出された乙第10号証及び同第11号証は、いずれも「MONSTER CABLE PRODUCTS,INC./INTERNATIONAL DISTRIBUTOR AGREEMENT/with/ONKYO CORPORATION」と題された書面であり、オンキョー株式会社が被請求人の製品を日本において販売することに関して締結された「DISTRIBUTOR」契約である。
(ア)乙第10号証及び同第11号証として提出された契約内容に関して、被請求人は何らの説明もしておらず、加えて、いずれも総て英語で記された書面であり、被請求人によって日本語による翻訳文が添付されなければならないものである。
請求人が理解するところでは、乙第11号証として提出された書面は、サインがされた日付として2001年3月29日と表示されており、「2.2 Term of Appointment」より、その契約期間は1年間とされているものである。また、乙第10号証として提出された書面は、サインがされた日付として2002年4月17日と表示されており、「2.2 Term of Appointment」より、その契約期間は2004年1月10日までとされている。
(イ)乙第10号証及び同第11号証において商標に関する契約条項としては、「V Marketing and Operations Provisions」の「5.3 Authorizat1on」及び「5.5 Monster Names and Logos」に記載されているものと解される。
なお、乙第10号証及び同第11号証の「I Parties」の記載より、「Monster」の表示は、「MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.」を示すものとされており、商標としての「Monster」ではないことは明らかである。また、乙第10号証及び同第11号証に記載されている「MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.」及び「ONKYO CORPORATION」が、それぞれ被請求人及び同第1号証ないし同第9号証における「オンキョー株式会社」であるとの特定に関しては、何らの立証もされてはいない。
(a)「5.3 Authorizat1on」 には、「Distributor」(ONKYO CORPORATION)は、契約期間内に、「Monster」(MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.)製品を宣伝する過程で、使用方法及び表示方法に関して如何なる時も「Monster」(MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.)の指揮及び管理に従った場合に限り、前記宣伝活動を促進させるために、Monster Cab1eを使用することができる旨が記載されている。
(b)「5.5 Monster Names and Logos」 には、「Monster」(MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.)の名称及びロゴをマーケティングや広告に使用するときは、「Monster」(MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.)の事前の書面による「approva1」(承認)を前提とする旨が記載されている。
(ウ)これらの条項をみれば明らかなように、「Distributor」(ONKYO CORPORATION)が一定条件の下に使用が認められているのは「Monster Cab1e」であって、「Monster」や「モンスター」という商標についての使用を認める合意は何ら記載されていない。
被請求人が提出した乙第1号証ないし同第9号証における商標の使用において、乙第10号証及び同第11号証が関係するのは、例えば、乙第1号証中、最上端右側に表された「MONSTER CABLE」や、乙第7号証中、上部に表された「MONSTER CABLE」といった、「MONSTER CABLE」自体の使用であって、しかも、その使用が認められるのは、使用方法・表示方法に関して「Monster」(MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.)の指揮・管理に従っている場合のみであり、そのような指揮・管理がなければ、「Distributor」(ONKYO CORPORATION)はMonster Cab1eを使用することはできないということである。
まして、被請求人が主張する「モンスター」や「MONSTER」の使用(乙第2号証中「モンスターDVIケーブル」の「モンスター」、乙第4号証及び同第5号証中「M形図形十MONSTER/THX/CERTIFIED」の「MONSTER」)に関しては、乙第10号証及び同第11号証には「Monster」や「モンスター」という商標についての使用を認める合意は何ら記載されていない以上、その使用許諾の事実は全く証明されていない。
なお、「MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.」が被請求人であり、「ONKYO CORPORATION」が乙第1号証ないし同第9号証における「オンキョー株式会社」であるとしても、オンキョー株式会社による「MONSTER CABLE」の使用が被請求人の許諾による使用であると認められるためには、被請求人による指揮・管理の事実が証明されなければならないところ、平成16年7月23日付で提出した審判事件弁駁書において主張した通り、被請求人が提出した乙第1号証ないし同第9号証によっては、本件商標と同一の商標が使用されているとは到底認められるものではないが、オンキョー株式会社による乙第1号証ないし同第9号証における商標の使用に関して、被請求人による指揮・管理に従っていることを示す証拠は何ら提出されていないため、オンキョー株式会社による乙第1号証ないし同第9号証における如何なる商標の使用も、単なる第三者による使用に過ぎず、被請求人の通常使用権者としての使用であることは未だ証明されてはいない。
(エ)また、「Monster」(MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.)の名称及びロゴを広告等に使用する場合は、「Monster」(MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.)の事前の書面による「approva1」(承認)が必要とされており、その「approva1」(承認)がなければ「Distributor」(ONKYO CORPORATION)は「Monster」(MONSTER CABLE PRODUCTS,INC.)の名称及びロゴを広告に使用することはできないということである。
乙第1号証ないし同第9号証として提出されたものは、まさに被請求人製品の広告のためのパンフレットであるため、「5.5 Monster Names and Logos」の条項より、これらに関しても被請求人の事前の書面による「approva1」(承認)がなければならないものであるが、「approva1」(承認)があったことを示す証拠は何ら提出されておらず、その証拠が提出されない以上、乙第1号証ないし同第9号証の証拠としての適格はない。
(オ)なお、回答書によれば、被請求人は「被請求人又はオンキョー株式会社が、指定商品『ケーブル』について、本件商標を使用していることは明らかである。」と主張しているものの、被請求人が提出した乙第1号証ないし同第9号証のいずれを参照しても、被請求人自らの使用は一切なされていないことは明白である。
4 結び
以上のように、本件商標は、審判請求の登録前3年以内において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれも、その指定商品について使用をしていないことは明白である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第11号証を提出した。
1 本件商標を使用する指定商品について
被請求人(商標権者)は、本件商標をその指定商品「ケーブル」に使用している(乙第1号証及び同第2号証)。なお、乙第1号証における 「モンスターDVIケーブル」中の「DVIケーブル」は、ケーブルの種類を表示するものであるので、「モンスター」部分が要部であることは明らかである(乙第2号証)。
また、商標権者は、商標「MONSTER」を指定商品「ケーブル」に使用している(乙第3号証ないし同第9号証)。そして、当該商標「MONSTER」は、商標法50条1項かっこ書きの規定により、「片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当するため、商標「MONSTER」の使用は本件商標「モンスター」の使用とされる。
なお、乙第3号証において、商標「MONSTER」の下段に表示されている商標「THX」は、乙第5号証及び同第7号証の裏表紙にも記載されているように、ルーカスフィルム社の商標である(乙第9号証)。故に、乙第3号証に表示されている商標は「MONSTER/THX」という1つの商標ではなく、上段に本件商標「MONSTER」を表示すると共に、下段にルーカスフィルム社の商標 「THX」を表示したものであることは明らかである。
また、乙第1号証、乙第3号証及び同第7号証として提出した商標権者の製品カタログには、発売元として「オンキョー株式会社」と記載されているが、オンキョー株式会社は、商標権者から通常使用権を受けている。そして、登録していない通常使用権者による本件商標の使用も商標法50条における本件商標の使用に該当する。
故に、いずれにしても商標権者(又は通常使用権者)が、指定商品「ケーブル」について、本件商標を使用していることは明らかである。
2 審判請求の登録前3年以内の使用
乙第1号証のカタログは、2003年7月現在のものである(乙第2号証)。乙第3号証のカタログは、2003年5月現在のものである(乙第6号証)。乙第7号証のカタログは、2002年11月現在のものである(乙第9号証)。
故に、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標が使用していることは明らかである。
3 通常使用権者による使用について
(当審は、当事者間において、オンキョー株式会社が本件商標の通常使用権者であるか否かについて争いがあったので、被請求人に対して平成16年12月6日付でその立証を促す審尋をしたところ、被請求人から、同17年2月1日付で、その回答がなされ、あわせて乙第10号証及び同第11号証が提出された。以下はその要旨である。)
被請求人とオンキヨー株式会社との間で締結されているアグリーメントの写し(乙第10号証及び同第11号証)によれば、被請求人又はオンキヨー株式会社が、指定商品「ケーブル」について、本件商標を使用していることは明らかである。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用者について
本件は、当事者間において、本件商標の使用者に関して争いがあったので、審判長は被請求人に対し、その立証を求めたところ、被請求人は、「被請求人又はオンキヨー株式会社が、指定商品『ケーブル』について、本件商標(社会通念上同一のもの)を使用している」旨主張して、乙第10号証及び同第11号証を提出した。
そこで、まず、本件商標の使用者について検討する。
なお、乙第10号証及び同第11号証は、英文による文書であり、商標法施行規則22条7項で準用する特許法施行規則61条1項によれば、被請求人は、同文書の翻訳文を添付すべきであるが、当該文書は、一般的な経済用語を含む通常の英文よりなるものであり、ここに記載されている内容について、採用できるものについては職権をもって採用することとした。このように扱っても、請求人も法人組織であり、同文書の翻訳が不可能とはいえないと判断され、請求人に不利益な扱いとはいえないものである(現に、請求人も翻訳文が添付されていないことを指摘しているものの、その内容を読み、理解した上で弁駁をしていると解される。)。
(1)商標権者による使用について
被請求人は、被請求人が本件商標を使用していると主張し、請求人は、被請求人自らの使用は一切されていないと主張している。
そこで検討するに、商標権者が自己の取り扱いに係る商品に登録商標を付すことは、商標権者による当該登録商標の使用と解されるところ、その商品が製造された当初の、そのままのかたちで流通する場合には、それが商標権者以外の販売者により取り扱われているとしても、当該登録商標は、商標権者により使用されているということができるものである。
しかるところ、商標法は、2条3項2号において、商標の「使用」について、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」と規定していることから、商標権者が外国法人であって、当該登録商標を付した商品が日本国外において流通している限りは、我が国の商標法が定義する「使用」に該当するということはできないものである。しかしながら、当該登録商標が付された商品が、我が国において流通に供されるために輸入されたときには、その輸入行為をとらえて、これを、当該外国法人による同法2条3項2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に該当する「使用」行為と解しても差し支えないというべきである(これと同旨の判示をした判決 東京高裁 平成15年7月14日 平成14年(行ケ)第346号(最高裁ホームページ掲載)参照)。
これを本件についてみるに、乙第10号証は、「MONSTER CABLE PRODUCTS,INC./INTERNATIONAL DISTRIBUTOR AGREEMENT/With/ONKYO CORPORATION」とのタイトルの国際販売契約書の写しと認められるものである。これによれば、商標権者の製造に係る商品「ケーブル」等を、「ONKYO CORPORATION」(被請求人が通常使用権者であると主張している「オンキヨー株式会社」をいうものと推認され、これに反する証拠はない。以下「オンキヨー株式会社」という。)が日本国内で販売することの契約が交わされており、乙第1号証ないし同第9号証の各商品カタログに示されている、商品「ケーブル」は、この契約に基づき我が国に輸入され流通に供されていると推認しうるものである。
この点に関して請求人も、弁駁書(第2回)において、「被請求人により提出された乙第10号証及び同第11号証は、いずれもオンキョー株式会社が被請求人の製品を日本において販売することに関して締結された『DISTRIBUTOR』契約である。」と述べており、当該契約が、被請求人の製品をオンキョー株式会社が日本において販売することに関して締結された契約であることを認めているところである。
また、乙第7号証の商品カタログの表紙の上部には、「モンスターケーブル製品カタログ」、「made in U.S.A」の各文字が、同2頁の上部枠内には、「1979年 サンフランシスコで誕生し、・・・世界各地のAVファンを魅了するモンスターケーブル」との文が、左下には、「(モンスターケーブル社 特許技術)」等の文字が表示されていることから、このカタログで紹介されている商品「ケーブル」の製造者は、アメリカ合衆国の「モンスターケーブル社」であるといいうるものである。
してみれば、乙第7号証の商品カタログ及び甲第18号証の写真に示されている商品「ケーブル」のプラグ部に付されている「MONSTER CABLE」の文字(乙第7号証の6頁「BIL250」との商品の写真及び甲第18号証により認められる。)は、被請求人である商標権者により、製造時に付されたものと推認され、そうであれば、被請求人は、「MONSTER CABLE」の商標を指定商品「ケーブル」について、我が国において使用していたということができるものである。
(2)通常使用権者による使用について
商標権者の製造に係る商品「ケーブル」等をオンキヨー株式会社が日本国内で販売することに関する契約である乙第10号証の内容からすれば、この契約がされた2002年4月17日に、商標権者は、日本国内の販売者であるオンキヨー株式会社に対して、明文上の契約ではないものの、商標権者が我が国で有する登録商標について、事実上の通常使用権を与え、これが2004年1月10日まで継続していたと解して差し支えないといえるものである。
このことは、乙第10号証の「V Marketing and Operations」の項「5.3 Authorization」において、「MONSTER CABLEの記章、ロゴ、商標の使用又は表示はすべて、常にMONSTER社の排他的指揮及び管理に従うことを条件とする。」旨の但し書きがされてはいるものの、「販売者は、この契約の期間中、MONSTER製品の宣伝の過程において自らを『授権されているMONSTER CABLE販売者』と表示することができ、更に、当該宣伝の促進において、MONSTER CABLEの記章、ロゴ、商標を使用し表示することについて授権される。」旨及び「5.4 Trademark Registration」において、「販売者は、MONSTER社商標及び著作権の使用について相当な注意(due diligence)をもって行使し、MONSTER社の排他的使用権を損なうような商標・著作権の使用をしない。」旨の契約がされていることからも妥当といえるものである。
この点に関して請求人は、「『5.5 Monster Names and Logos』の条項より、これらに関しても被請求人の事前の書面による『approva1』(承認)がなければならないものであるが、『approva1』(承認)があったことを示す証拠は何ら提出されていない。」と主張している。
しかしながら、通常使用権は書面による契約でなくとも成立するものであり、提出された乙号証及び被請求人の主張の全趣旨に照らせば、本件に関しては、商標権者である被請求人とオンキヨー株式会社との間で、通常使用権の黙示的許諾があったものと解するのが取引の経験則に照らし自然というべきであり、そのように解さなければ、オンキヨー株式会社が、乙第1号証ないし同第9号証に示された被請求人の商品を宣伝・販売する行為は、本件商標権を侵害するものとみなされる行為となり、乙第10号証の契約を実行できなくなるという矛盾する事態を招来することとなる。
したがって、本件における被請求人とオンキヨー株式会社間の通常使用権契約の存在を否定する請求人の主張は、これを採用することができない。
2 本件商標の使用について
(1)被請求人の提出した乙第1号証、同第3号証及び同第7号証によれば、下記の事実が認められる。
(ア)乙第1号証の商品カタログには、その左上部に「MONSTER CABLE」の文字が表示されており、また、「モンスターDVIケーブル」の文字が表示されて、商品「デジタル伝送用DVIケーブル」を紹介・宣伝していることが認められる。
そして、この商品カタログには、「発売元:オンキョー株式会社」「このカタログの記載内容は2003年7月現在のものです。」との記載が認められる。
(イ)乙第3号証の商品カタログによれば、その表紙上部に、「M」文字状図形の右側に「MONSTER」の文字が表示されており、この部分はその下部の「THX」、「CERTIFIED」の各文字部分とともに一体的に把握しなければならない事情は認められないから、「MONSTER」の文字部分は独立して自他商品の識別標識を表示したものと認識されるというべきである。また、商品カタログ中には、「MONSTER CABLE」の文字が表示されて、各種「ケーブル」を紹介・宣伝していることが認められる。
そして、この商品カタログには、「発売元:オンキョー株式会社」「このカタログの記載内容は2003年5月現在のものです。」との記載が認められる。
(ウ)乙第7号証の商品カタログによれば、その表紙に、「MONSTER CABLE」の文字が表示され、また、商品カタログ中には、前記「1(1)」で認定したように、プラグ部に「MONSTER CABLE」の文字が付されている、商品「ケーブル」の写真とともに、各種の「ケーブル」が紹介・宣伝されていることが認められる。
そして、この商品カタログには、「発売元:オンキョー株式会社」「このカタログの記載内容は2002年11月現在のものです。」との記載が認められる。
(2)乙第1号証、同第3号証及び同第7号証に表示されている商標について
上記認定のとおり、乙第1号証、同第3号証及び同第7号証の各号証に表示されている「モンスターDVIケーブル」、「MONSTER」、「MONSTER CABLE」の各文字は、商標として使用されていると認めうるものであって、上記の各商標において自他商品識別標識としての機能を果たす部分は、「モンスター」、「MONSTER」の各文字部分にあるといえるものである(「DVIケーブル」の文字は「digital visual intefaceケーブル」を、「CABLE」の文字は指定商品名を、それぞれ認識させるものであるから、付記的表示というべきである。)。
そして、「MONSTER」の文字は、「怪物、化物」を意味する親しまれた英語であり、同じ観念を有する「モンスター」の外来語に通ずるものであるから、商標「MONSTER」ないし「MONSTER CABLE」は、本件商標「モンスター」と称呼及び観念を共通にする社会通念上同一と認められる商標の使用ということができるものである。
また、上記各乙号証の商品カタログは、いずれも本件審判請求登録前3年以内のものである。
(3)商標権者による本件商標の使用について
前記「1(1)」及び上記「2(1)(2)」によれば、被請求人である商標権者は、本件取消審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の指定商品に含まれる商品「ケーブル」について、本件商標と社会通念上同一と認められる「MONSTER CABLE」の商標を、使用していたということができるものである。
(4)オンキヨー株式会社による本件商標の使用について
前記「1(2)」及び上記「2(1)(2)」によれば、通常使用権者と認めうるオンキヨー株式会社は、本件取消審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の指定商品に含まれる商品「ケーブル」について、本件商標と社会通念上同一と認められる「モンスターDVIケーブル」、「MONSTER」、「MONSTER CABLE」の各商標を、使用していたということができるものである。
3 結論
以上、本件商標は、商標権者及び通常使用権者により、本件取消審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の指定商品に含まれる商品「ケーブル」について、本件商標と社会通念上同一と認められる態様において、使用されていたものである。
したがって、本件商標は、商標法50条により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-05-24 
結審通知日 2005-05-30 
審決日 2005-07-13 
出願番号 商願平1-58490 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (111)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 常雄三浦 芳夫渡邉 健司 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 宮川 久成
山本 良廣
登録日 1994-10-31 
登録番号 商標登録第2697721号(T2697721) 
商標の称呼 モンスター 
代理人 溝部 孝彦 
代理人 古谷 聡 
代理人 羽切 正治 

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