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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 014 |
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管理番号 | 1118255 |
審判番号 | 無効2003-35192 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2005-07-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-05-14 |
確定日 | 2005-06-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4145349号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4145349号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4145349号商標(以下「本件商標」という。)は、「COMEX」の文字を横書きしてなり、平成8年12月16日に登録出願、第14類「時計,時計の部品及び付属品」を指定商品として平成10年5月15日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張の要点 請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第14号証を提出している。 1 利害関係について 請求人ロレックス・ソシエテ・アノニム(以下「ロレックス社」という。)は商標「COMEX」を日本を指定して国際登録出願したところ(国際登録第773713号)、本件商標が引用され、商標法第4条第1項第11号に基づく拒絶理由通知が送付された(甲第1号証)。 したがって、本件商標が無効にされれば拒絶の理由は解消し、商標「COMEX」を登録することができることになり、請求人コメックス・ソシエテ・アノニム(以下「コメックス社」という。)にとっても著名な商号のダイリュージョンが回避される上でも本件審判に関し利害関係を有することは明らかである。 2 無効事由 本件商標は、コメックス社の周知著名な商標「COMEX」と同一商標であるところから、これを剽窃的に登録・出願することは国際信義に反し、また被請求人はコメックス社より本件商標の出願・登録することに関し一切の同意を得ていない。更に本件商標の使用により取引者・需要者間において出所の混同をきたし、ロレックス社の製造に係る「ROLEX」時計の平行輸入業者である被請求人による本件商標の登録・出願は不正の目的をもってなされたものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、第8号、第15号及び第19号に該当し、同法第46条第1項第1号によりその登録は無効にされるべきものである。 3 具体的理由 (1)まずロレックス社について述べるに、1905年(明治38年)の創業以来、同社の代表的出所標識たる「ROLEX」の商標(登録第125919号)は永年「時計」に使用され、その高精密な技術性能と優れたデザインにより世界的に著名なものであり、日本の取引者のみならず一般世人においても広く知られたものであることは詳論するまでもなく顕著な事実と確信する(甲第3号証)。 (2)次にコメックス社であるが、同社は1951年(昭和36年)アンリ・デロウズにより創立された潜水専門会社で、世界で最も古く、また規模の大きな会社で海洋開発分野では最も良く知られた存在である。コメックス社は、マルセイユに本社を置き世界各地に約30の系列会社と15の基地を持ち、約750人のダイバーを抱え国際的な海洋プロジェクトに参加すると共に、独自の実験設備で未知の海洋開発に向けて日々研究を行っている。 その業務は、パイプラインの設置、海底油田の掘削作業、移動掘削プラットフォームの建設、サルベージ、海洋資源や微生物の調査等実海域で様々な深海作業を行っている。 (3)コメックス社とロレックス社の関係は、デロウズがコメックス社のダイバーにロレックス社の「SUBMARINER」(商標登録第462952号)を使用させていたことから始まり、ロレックス社は、実際に深海で使った結果の報告を受け更なる改良にそのデータを活用することにより防水・耐水性能を向上させてきた。この両社の協力によるいわゆるダイバーズウォッチには「ROLEX‐comex」のブランドが付され、その希少価値からアンティーク市場やオークションでは非常な高値で取り引きされている。 したがって、「comex」の付されたダイバーズウォッチは、潜水会社で著名なコメックス社が行った実験データに裏付けされた耐水性等の性能を保証するものであり、本件商標を被請求人が時計に使用すれば当然フランスのコメックス社との関連が想起され、ロレックス社と同様の協力関係があるものと誤認されるおそれは充分考えられる。 また、被請求人は本件商標を「PRO-LEX」と「R・X・W」とのダブルネームで使用しているが、「ROLEX‐comex」の由来を知った上でのこのような使用がフリーライドをねらったものであることは一目瞭然である(甲第4ないし第14号証)。 したがって、被請求人は、その立場上「ROLEX」、「COMEX」及び「ROLEX‐comex」がどのような意味を有するか充分承知の上で本件商標を登録・出願し、また実際の使用もフリーライドを目的にしたものであることは明らかであり、このような商標に権利が与えられていることは看過できない。 第3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人らの負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のように述べている。 1 利害関係について ロレックス社が、本件商標が無効にされれば商標「COMEX」を登録できる可能性が生じること、その意味で本件審判請求をなす利害関係を有することは認める。 コメックス社に関していえば、後述するように、同社の商号は著名ではない。また、本件商標が同社の商号をダイリューンョンするものではない。したがって、コメックス社に、本件審判請求をなす利害関係はない。 2 無効事由及び具体的理由に対する認否 (1)後述のごとく、コメックス社の「COMEX」なる商標が、我が国内において周知著名であるとの主張は、否認ないし争う。 (2)後述のごとく、本件商標の使用により取引者・需要者との間において出所の混同を来すことはない。 また、本件商標の登録・出願が「不正の目的」を以てなされたとの主張は否認ないし争う。 (3)具体的理由中のロレックス社に関する記述は敢えて争わないが、コメックス社に関する記述については、詳細は知らない。 (4)ロレックス社とコメックス社の関係については敢えて争わないが、「ROLEX」の商標の付された時計にコメックス社の「comex」なる商標が付された時計が一般消費者に対し販売されたり、流通におかれることを予定したものではない。 しかし、「ROLEX」の商標の付された時計にコメックス社の「comex」なる商標が付された時計が一部アンティーク市場やオークションで出回ったり、それが高値で取り引きされている事象は敢えて否定しない。 (5)コメックス社について、我が国内において潜水会社として「著名」であるとの主張は否認する。 コメックス社の社名である「コメックス」は、一部の海洋開発関係者には知れているかどうかはともかく、腕時計の需要者や取引業者間においては我が国内においても、外国においても周知性、著名性はない。 同社は、被請求人が出願する以前に、既に日本において、商標登録を出願していたが、指定商品を第24類「水中スポーツ用具、その他本類に属する商品」とするものであり、現在、日本においては、同社の商標はほとんど使用されていない。 そして、これまで、コメックス社が「COMEX」の標章を付した腕時計を販売したことはない。 請求人主張の「ROLEX」の商標の付された時計にコメックス社の「comex」なる商標が付された時計は、コメックス社のロレックス社に対する製造委託に基づき、コメックス社の海底探査潜水艇の乗組員に配給する腕時計として製造され、同社に納入されたものであるが、同社の注文に基づき納入する際に、「ROLEX」商標の外にコメックス社従業員用とする意味で「comex」のロゴを付したに過ぎず、一般の需要者向けには製造販売されているものではない。 したがって、コメックス社の商標「COMEX」は、我が国においても外国においても「周知性」すら有しない。いわんや、外国においても「著名」性を有しないし、当然のごとく我が国内で、外国において著名であることが知れ渡っているということもない。 請求人主張の「ROLEX」の商標の付された時計にコメックス社の「comex」なる商標が付された時計は、コメックス社従業員にのみ無償支給されているものであり、一般消費者に対する流通を予定していない。 このように、ロレックス社商標とコメックス社の「comex」なる商標が付された時計は、一般消費者が購入する時計ではないし、全世界的に見ても生産量、販売量も極めて僅少なものであり、コメックス社の「comex」なる商標が、本件指定商品である時計、時計の部品及び附属品の需要者間で広く知れ渡っているということはない。 したがって、「著名」性を有しないことはいうまでもない。 (6)「したがって、『comex』の付されたダイバーズウォッチには潜水会社で著名なコメックス社が行った実験データに裏付けられた耐水性等の性能を保証するものであり」との点は否認する。 「『comex』の付されたダイバーズウォッチには潜水会社で著名なコメックス社が行った実験データに裏付けられた耐水性等の性能を保証する」というのは、ロレックス社製造にかかるサブマリーナ、シードゥエラーという製品の品質保証に関するものである。 それはとりもなおさず、「ROLEX」商標及び「SUBMARINER」又は「SEA-DWELLER」という商標に対する信頼により生ずるものである。 したがって、「ROLEX」商標及び「SUBMARINER」又は「SEA-DWELLER」商標が付されずに、単に「comex」なる本件商標が付されただけで、直ちに、それが、「ROLEX」商標及び「SUBMARINER」又は「SEA-DWELLER」商標との関連を想起させるとは到底考えられないし、また、それが、ロレックス社により製造されたダイバーズウォッチとの出所を混同させるに至らせるものとは思われない。 (7)被請求人が「PRO-LEX」や「R・X・W」という商標が付された時計に本件商標をかつて使用したことは認めるが(通常、このような場合を「ダブルネーム」とは呼ばないものと思われる。なお、現在、「PRO-LEX」という商標は使用していない。)、この使用は、フリーライドをねらったものではない。 前述のごとく、「ROLEX」の商標の付された時計にコメックス社の「comex」なる商標が付された時計は、コメックス社従業員にのみ無償支給されているものであり、アンティーク市場やオークションを除き、一般消費者に対する流通を予定していないものであること、「COMEX」なる商標では、それが直ちにロレックス社により製造されたダイバーズウォッチとの出所を混同させたり、同社との関連を想起させるものとはいえないからである。 3 被請求人の主張 (1)商標法第4条1項7号について 同号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とあるが、請求人らは、何ら同号に該当する具体的事実を主張していない。本件商標について、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」がないことはいうまでもない。 (2)商標法第4条1項8号について 同号にいう「著名」とは、一地方では足らず全国的なものでなければならない(東京高判昭和56年11月5日無体集13巻2号793頁。その上告審である最判昭和57年11月12日民集36巻11号4433頁は、「原審の判断を正当として是認することができる」としている。)。 しかるに、本件では、前述のごとく、コメックス社の「COMEX」商標は、ごく限られた一部の海洋開発関係者の間で知られている可能性はあるものの、広く需要者間で知られているものではなく、著名性はおろか、周知性も有しない。 (3)商標法第4条1項15号について 同号は、出所の混同を生ずるおそれのある商標は登録できない旨定めている。 そこで、本件商標がコメックス社の商品又は役務と「混同を生ずるおそれがある」かどうかであるが、ここでいう「混同を生ずるおそれがある」とは、本件商標を使用した指定商品が、取引者、需要者をして、コメックス社の業務に係る商品若しくは同社と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認させ、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることをいう。 前述のごとく、コメックス社の「COMEX」商標は、著名性はおろか、周知性すら有しないものであり、「COMEX」商標の出所表示力は極めて弱い。 また、同社は、潜水専門会社であり、多角経営などは行われておらず、他の分野への進出も見られない。 そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、コメックス社の業務に係る商品若しくは同社と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわざるを得ない。 (4)商標法第4条1項19号について 同号では、「周知な商標と同一又は類似の商標」を「不正の目的」で使用するものを不登録としている。 (ア)周知性について 前述のごとく、コメックス社の商標が海洋関係業界において「広く認識されているか」どうかは知らないが、仮にそうだとしても、本件商標の指定商品である時計、時計の部品及び附属品の需要者間においては、コメックス社の商標「COMEX」が同社の商品・役務を表示する標章として「広く認識されている」とはいえない。 (イ)「不正の目的」について 同号は「不正の目的」を、「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。」としている。この「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的」とは、図利目的、加害目的をはじめとして、取引上の信義則に反するような目的のことをいう、とされている。 不正の目的として具体的に想定されるケースとしては、 (a)外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願するケースや、外国の権利者の国内参入を阻止したり国内代理店契約を強制したりする目的で出願するケース (b)日本国内で全国的に著名な商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもって出願するケース、 (c)その他、日本国内又は外国で周知な商標について信義則に反する不正の目的で出願するケース等が考えられている。 まず、本件では、上記(a)の「高額で買い取らせるために先取り的に出願するケースや、外国の権利者の国内参入を阻止したり国内代理店契約を強制したりする目的で出願」したものでないことは明らかである。 また、前述のとおり、コメックス社の「COMEX」商標自体、周知性、著名性を有さず、我が国内において出所表示機能が弱く、本件商標の出願により「出所表示機能を稀釈化」するものではない。 さらに、「その名声を毀損させる目的をもって」本件商標が出願されたものでないことは明らかである。 その他、本件商標の出願が、「信義則に反する不正の目的で」出願されたものでないことはいうまでもない。 4 まとめ 以上より、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第15号、同第19号に違反して登録されたものでないことは明らかであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきでない。 第4 当審の判断 1 利害関係について 本件審判は、ロレックス社(ロレックス・ソシエテ・アノニム)とコメックス社(コメックス・ソシエテ・アノニム)の共同請求に係るものであるところ、請求人のうちのコメックス社が本件審判請求に関して利害関係を有するか否かについて当事者間に争いがあるので、この点について判断する。 請求人の提出に係る各甲号証によれば、コメックス社が「COMEX」の商標を用いて業務を行っていることが認められるから、コメックス社が自己の商標と同一といえる本件商標の登録の無効を主張することには十分な理由があり、コメックス社は本件審判請求について利害関係を有しているというべきである。 2 無効事由について 請求人の提出に係る各甲号証及び請求理由の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)ロレックス社は、1905年に英国ロンドンで設立され、その代表的出所標識たる「ROLEX」の商標を永年「時計」に使用し、「ROLEX」の商標は世界的に周知著名となっている(甲第5号証)。 (2)コメックス社は、1961年に仏国マルセイユで設立された潜水専門会社であって、海洋開発にむけての研究開発、実海域におけるパイプラインの建設、海底油田の掘削作業、サルベージ、海洋資源や生物の調査等の深海作業等を業務とし、その業務について「COMEX」、「comex」の商標を使用している(甲第4、第6及び第8号証)。 (3)ロレックス社とコメックス社との関係は、1972年にコメックス社がロレックス社と特別契約を結び、ダイビング用時計とクロノメーターはすべてロレックス社の時計を使用することとしたことに始まり、ロレックス社はコメックス社に深海用時計(ダイバーズウオッチ)を提供すると共にコメックス社からその使用結果報告等を得ることにより更なる製品の改良、開発に役立てている。ロレックス社の時計の広告には、コメックス社のダイバーがロレックス社の時計を使用し潜水に耐え得ることが謳われている。ロレックス社がコメックス社に提供する時計には、「ROLEX」の商標と共に「comex」の商標が付されている(甲第4ないし第7号証)。 (4)被請求人は、ロレックス社の時計を輸入販売すると共に、「ケントレーディング(被請求人)は、日本におけるCOMEXWATCHの正規オフィシャルライセンサーです。国内における全てのCOMEXロゴ入り時計の販売は、当社の許可が必要です。」等の説明をして、ロレックス社の時計の文字盤に「COMEX」ロゴ入れ加工を行う旨を時計の写真付きで広告している(甲第9号証)。 (5)被請求人は、自己の時計の広告において、「スーパープロだけに許されるCOMEXのダブルネーム」の見出しの下に「フランスの海洋調査会社であり、世界最高峰の深海調査技術をもつcomex(コメックス)。退役後のジャック・イブ・クストーがテクニカルアドバイザーなどの役職についていたことでも有名で、深海ダイビングの技術のほとんどを開発したといってもよい最先端企業だ。comexで育てられた深海作業の第一人者たちは卒業時にROLEXにcomexのダブルネームが入った時計を与えられるが、その時計は現在、時計マニアにとってたまらなく欲しいモデルとしてなんと50万円以上の値段がついている。なおケントレーディング(被請求人)はcomexロゴ時計の正規オフィシャルライセンスを取得している(商標登録第4145349)。」と説明している(甲第10及び第12号証)。 (6)被請求人は、自ら取り扱うダイバーズウオッチについて、ロレックス社の「ROLEX」及び「comex」の両商標が付されたダイバーズウオッチに酷似したデザインを施し、酷似した態様・方法で「PRO-LEX」及び「comex」の両商標を付して販売している(甲第9及び第12号証)。 (7)被請求人は、請求人からの警告書(甲第13号証)に対する返答書において、「フランスの潜水探査会社『コメックス社』とは何の関係もございません。」と述べている(甲第14号証)。 以上の事実によれば、本件商標の登録出願前には既に、「COMEX」の商標は、時計とりわけダイバーズウオッチの取引者、需要者間においては相当程度広く認識されていたというべきであり、かつ、被請求人は、ロレックス社の「ROLEX」商標を付した時計の周知著名性を熟知していたと同時に、コメックス社の存在、ロレックス社とコメックス社との関係、「ROLEX」商標と「comex」商標との関係、両商標を付した時計の存在及びその時計が需要者の人気を博していることも熟知していたというべきである。そうすると、被請求人は、請求人の「comex」商標が、我が国において登録出願されていないことを奇貨として、同商標と社会通念上同一の本件商標を請求人に無断で先取り的に出願して登録を受けたものといわざるを得ない。 ところで、商標法の目的が、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」(同法1条)にあることに照らして、同法による商標の保護が、産業の健全な発達及び需要者の利益を損なうようなものであってはならず、同法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗」も、このような観点から解すべきであって、商標の使用が、社会の一般的倫理的観念に反するような場合や、それが、直接に、又は商取引の秩序を乱すことにより、社会公共の利益を害する場合においても、当該商標は同号に該当するものとして、登録を受けられないものと解さなければならない(東京高等裁判所、平成11年(行ケ)第394号事件、平成12年5月8日判決参照)。 これを本件についてみるに、被請求人の上記行為に基づく本件商標の登録を認めることは、著しく社会的妥当性を欠き、商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものであり、公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるものというべきである。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、請求人の主張に係る他の理由について検討するまでもなく、その登録を無効にすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-26 |
結審通知日 | 2004-03-02 |
審決日 | 2004-04-05 |
出願番号 | 商願平8-140493 |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(014)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
宮下 正之 |
特許庁審判官 |
富田 領一郎 小川 有三 |
登録日 | 1998-05-15 |
登録番号 | 商標登録第4145349号(T4145349) |
商標の称呼 | コメックス |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 森 徹 |
代理人 | 加藤 義明 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 加藤 義明 |