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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2007300404 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 016
管理番号 1114910 
審判番号 取消2000-30540 
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-05-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2000-05-15 
確定日 2005-04-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第3300059号商標の商標登録取消審判事件について平成15年6月25日にした審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成15年(行ケ)第0349号、平成15年10月16日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第3300059号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1.本件商標
本件登録第3300059号商標(以下、「本件商標」という。)は、「フオルッアジヤパン」と「がんばれ日本」の文字を二段に併記してなり、平成6年5月9日に登録出願、第16類「印刷物」を指定商品として、同9年5月2日に設定登録、現に有効に商標権が存続しているものである。

第2.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第12号証を提出した。
1.請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用していない。
したがって、本件商標の登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2.答弁に対する弁駁
(1)乙第1ないし第3号証について
被請求人も主張するように、乙第1ないし第3号証をもって本件商標の直接の使用証拠とはならないものである。
(2)商品についての使用
(a)商標の使用と認められるためには、商品について使用されていることを要するところ、商標法上商標が付される商品とは、商取引の目的物として流通性のあるもの、すなわち、一般市場において流通に供されることを目的として生産又は取引される有体物であると解される。
(b)乙第4ないし第9号証は、「中松義郎博士の会」の会報として提出されている。これらの各写には、その題号として、ごく小さな「フォルッアジヤパン」の文字と「がんばれ日本」の文字が表示され、「価格100円」の表示も見受けられる。
しかしながら、乙第4ないし第9号証の会報は、「中松義郎博士の会」に関する事項を会員に報告するために配布された表裏2枚の4頁の印刷物にすぎないものである。被請求人は、会費のある会合においては会費に含めて会報の代金を徴収したうえでその会報を出席者に配布している旨主張するが、出席者側からみれば、そのことを認識することなく会費を払い、当日会場で配布された会報を単なる配布資料として受領するのが普通であるから、被請求人側と出席者側との間に会報の売買は成立していないとみるべきである。 そうすると、乙第4ないし第9号証の会報は、それ自体商取引の目的物として流通性のある商標法上の商品とはいえないものであるから、仮令、乙第10号証の会報の発行目録にあるように、平成6年6月から平成12年7月までに会報が継続的に発行されていたとしても、本件商標が継続使用されているとはいえない。
(c)被請求人は、乙第4ないし第9号証の会報は購入希望者には有償で配布するようにしている旨主張しているが、それを裏付ける証拠はなんら提出されていない。
すなわち、上記主張を裏付けるためには、たとえば、納品書、請求書等の取引の際に通常用いられる取引書類等の客観的な証拠により、販売年月日、販売数量、購入者等を明らかにする必要があるが、そのような証拠はなんら提出されていない。
(3)使用権者による使用
乙第4ないし第9号証の会報にはいずれも「発行者 がんばれ日本」と表示されているのみで、被請求人自身の使用でないことは明らかであり、発行者についても、被請求人の使用権者である事実を示す使用許諾書等の証拠は提出されていない。
(4)以上より、被請求人が提出した乙第1ないし第10号証により、本件審判請求登録前3年以内に日本国内において商標権者又は使用権者のいずれかが指定商品についての本件商標を使用していることは証明されていない。
3.上申の理由
(1)上申に至った経緯
本審判事件についての平成15年6月25日にされた審決は、平成15年10月16日にされた東京高裁判決(以下「本件判決」という。)によって取り消された(甲第3号証)。しかしながら、本件判決の判断には、「商標法50条により本件登録を取り消す、との審決の結論は、仮に最終的には正しいと認められるべきものであるとしても,審決が説示した理由からは、導き出すことができない」という異例のコメントが付記されている。
商標法50条の審判では、使用主体・使用時期・使用商品・使用商標というそれぞれの要件について認定判断がなされなければならないところ、平成15年6月25日にされた審決では、上記の使用主体についてしか判断がなされなかったため、本件判決は、審決の使用主体の判断に誤りがあるとして、これを取り消したものである。
本審判事件が、差し戻され、審理されることとなったため、以下のとおり、上申するものである。
(2)使用時期
商標法第50条第2項に規定する期間は、本審判事件の予告登録日(平成12年6月14日)前3年以内(以下、「本件対象期間」という。)となる。
被請求人が、審判において提出した証拠で本件対象期間に該当すると考えられるものは、乙第8号証及び乙第9号証のみである。しかしながら、乙第9号証についていえば、平成12年6月26日の被請求人の誕生日パーティーについての記事が掲載されていること、並びに、日刊工業新聞の6月29日付記事が掲載されていることからすれば、乙第9号証が本件対象期間に発行されたものでないことは明白である。
また、乙第8号証についても、これが実際に「平成11年1月」に発行されたか明らかでなく、被請求人は、実際に頒布した事実及び年月日について何ら証明をしていない。
すなわち、乙第8号証等は、それらがその時期に存在した可能性を示唆するにすぎず、本件対象期間内に、それらが実際に頒布等されたことを立証するものではない。被請求人は、「会報の発行は原則的に月1回となっているが、記事の集まり具合等により変更されるため発行日は不定期」であることを認めている。
(3)使用商品
商標法上の「商品」についての判断は、過去の審決・判例に数多くみられるが、「商標法における商品とは、商取引の目的物として流通性のあるもの、すなわち、一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引される有体物をいう。」との概念は、ほぼ定着しているものと思料する。
例えば、平成13年2月28日東京高裁判決(平成12年(行ケ)第110号審決取消請求事件)では、「商標法50条の適用上、『商品』というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならない」と判断されている(甲第4号証)。
審決においても、商品「印刷物」に関する事例として、甲第5号証ないし甲第9号証に示す例を掲げることができる。これら審決の中では、「商標法における商品、すなわち、商取引の目的物として流通性を有するものに登録商標が使用されているかどうかという点から判断されなければならない」(甲第5号証:昭和59年審判第3013号)、「取引の対象となった旨の取引書類の添付もないから、継続的に発行され、取引の対象となる商品『雑誌』とは認め難い。」(甲第6号証:昭和61年審判第1175号)、「一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引に供される商標法上の商品ということはできないから、本件請求に係る指定商品『印刷物』における使用とは認められない。」(甲第7号証:平成8年審判第14799号)、「被請求人の商取引の目的物とはいい難く、刊行物としての交換価値は認め得ないから、被請求人の提出した当該証拠が、一般に印刷物といわれているものであっても、提出された証拠のみによっては、商標法上の商品である印刷物とは言えない。」(甲第8号証:平成9年審判第12706号)等と判断されている。
被請求人の提出に係る乙第8号証等の会報についてみると、その体裁は、見開きのわずか4頁程度のものであり、パンフレットのようなものにすぎない(被請求人自身も「パンフレット状」としてこれを認めている。)。
また、「中松義郎博士の会」の会報の内容は、本件判決の認定するとおり、被請求人である中松義郎氏個人及び同人に関する発明、イベント等に関する内容のみで構成されており、同人及び同人の事業に関する宣伝広告物にすぎない。
たとえ「中松義郎博士の会」の会報が印刷物としての性質を有するにしても、「中松義郎博士の会」というクローズドな(閉ざされた、閉鎖的な)会員組織の中で(前述したとおり、乙第8号証等が実際に頒布されたことすら立証されていないが、被請求人の主張によっても、その発行部数は30〜40部と極めて限られている。)、同人及び同人の事業に係る宣伝広告物として無償で会合の出席者に対し配布されるものである。したがって、当該会員以外の不特定多数の需要者が、一般に流通している「商品」としての印刷物として、対価と引き替えに入手できる物ではない。
この点に関し、過去の特許庁の審決においても、ボーリング場で配布される新聞について、「この種の印刷物は、通常、ボーリング場の愛好者あるいは会員(得意先等)等を対象に無償で頒布される、いわば、サービスの一環として発行される宣伝、広告を兼ねた印刷物とみるのが相当である」(甲第9号証:昭和60年審判第16198号)と判断されている。また、商店街で頒布される印刷物に関し、「たとえ風物詩・紀行文等の記事、発行年月日、号数、編集兼発行者が記載されているとしても(中略)請求人が、同人の顧客という特定の者に対して(中略)広告・宣伝用のサービス品として、無償で配布するものと認められ、商取引の目的物として一般市場の流通に向けられているものということはできない。」(甲第10号証:昭和60年審判第20030号)と判断されている。
したがって、「中松義郎博士の会」の会報は、「流通性」「流通目的での生産・取引」「刊行物としての交換価値」「不特定多数の需要者」といった、商標法上の「商品」の要件のいずれにも該当せず、商標法上の「商品」とは到底言い得ないものである。
確かに、「中松義郎博士の会」の会報には「発行者 がんばれ日本 価格100円」の表示が付され、また、被請求人は、会員以外の購入希望者に有償で配布していると主張する。しかしながら、審判・訴訟を通じ、会報が有償で頒布された事実を示す証拠は一切提出されていない(会報が実際に頒布されたことすら立証されていない。)。また、「中松義郎博士の会」の会報の内容は、被請求人及び同人の事業に関する宣伝広告物にすぎず、例え「価格100円」の表示があっても、不特定多数の需要者に対し商取引の目的物として交換価値を有するものとは認められない。ましてや、一般市場で不特定多数の需要者に対し流通に供され、取引された証拠も一切なく、「中松義郎博士の会」の会報を商標法上の「商品」ということはできない。
甲第11号証に示す平成4年審判第22550号審決においては、「商品『雑誌』は、印刷物の取引界において、『号を追って定期的に刊行する出版物で、その内容は、種々雑多な読物、記事を掲載してなるもの』とされているところから、需要者によく見える表紙,背表紙、裏表紙もしくは奥付等に定期刊行物であることを明らかにするための創刊の年月日や巻、号の表示あるいは発行間隔等が表示されているのが常であるにもかかわらず、請求人提出に係る上記印刷物は、定期に刊行されるものであることを示す表示は何もなされていないものである。そうとすれば、請求人提出に係る上記印刷物は、これに接する取引者、需要者により、(中略)に関する情報を内容とする書籍もしくはパンフレットの類として理解されるにすぎず、定期に刊行される『雑誌』とは到底認識され得ないとみるのが相当である。」と判断されている。
前述したとおり、「中松義郎博士の会」の会報は、被請求人である中松義郎氏個人及び同人に関する発明、イベント等に関する内容のみで構成されている。したがって、「中松義郎博士の会」の会報は、中松義郎氏の愛好者、あるいは同人が主宰する会員組織の会員(得意先等)等を対象に、頒布される宣伝、広告の類であり、「中松義郎博士の会」の会報は、「定期刊行物」とはいえない。「中松義郎博士の会」の会報が定期刊行物でない以上、「中松義郎博士の会」の会報に付されている「フオルッアジヤパン/がんばれ日本」は、被請求人中松義郎氏個人及び同人に関する情報を内容とする宣伝広告物の「題号」であって「商標」とはいえない。
いずれにしても、乙第8号証等の「中松義郎博士の会」の会報によっては、被請求人が、本件商標に係る「商品」を、審判請求前3年以内に、我が国において現実に使用したということはできない。
(4)使用商標
平成8年法改正によって、商標法50条1項に、現行のような「かっこ書き」が加えられたのは、登録商標の使用であるか否かは、単なる物理的な同一にこだわらず、取引社会の通念に照らして判断される旨を明らかにしたものであるが、上記を一瞥すれば明らかなとおり、本件商標と実際の使用商標の構成は、大きく異なるものであり、商標法50条1項かっこ書きにいう「社会通念上同一」の商標とは、到底認められない。
本件商標は、力強い手書き風の大字のカタカナ「フオルッアジヤパン」を、上半分に大きく表し、その下半分に手書き風の毛筆体のような字形で「がんばれ日本」と表した二段書きの構成からなる特殊な字形の商標である。
本件の実際の使用態様においては、上段の「フオルッアジヤパン」は、殆ど判読が不可能なほどに小さく表されているのに対し、その下の「がんばれ日本」は、通常の印刷書体できわめて大きく表されているものであり、単なる変更使用の程度をはるかに越えており、「社会通念上同一」の商標とは認められないものである。
したがって、乙第8号証等の「中松義郎博士の会」の会報は、「本件商標」を使用したことを証明するものではない。
(5)甲第12号証については、平成15年9月5日付で被請求人自身によって作成された陳述書であり、これ自体が本件商標の使用を示す証拠でないことは明らかであるが、添付された甲第12号証別紙A〜Eについて、念のため、意見を述べる。
別紙Aは、「中松義郎博士の会」の申込書であって、本件商標の使用とは関係がない。
別紙B及びCに示された書籍は、いずれも、本件対象期間内に発行されたものではなく、また、それらの書籍への記載が本件商標の使用と無関係であることが明らかである。
別紙Dには「バッヂ」が示されているが、これは、第14類(身節品)若しくは第26類(衣服用バッジ)に属する商品であり、本審判に係る商品「印刷物」ではなく、また、そこに表された標章も異なるから、本件商標の使用とは関係がない。
別紙Eについては、本件会報について前記(2)〜(4)に述べたことがそのままあてはまるものであり、本件対象期間に本件商標がその指定商品に使用されたことを証明するものではない。また、裁判所に提出された別紙Eは、いずれも写しであり、「中松義郎博士の会」の会報の原本は裁判所においても提出されなかったことは、前述したとおりである。
(6)結論
以上述べたとおり、被請求人が使用商品と主張する「中松義郎博士の会」の会報は、商標法上の「商品」として本件対象期間に有償で頒布されたことを立証するものではなく、また、「中松義郎博士の会」の会報に実際に使用されている標章の態様も、本件商標の構成と社会通念上同一とはいえず、「本件商標」の使用を示すものとはいえない。
4.したがって、被請求人によって提出された乙各号証によっては、本件対象期間における本件商標の使用事実は何ら証明されていないから、本件商標登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。

第3.被請求人の答弁
被請求人は「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第13号証を提出した。
1.被請求人は平成6年4月に「がんばれ日本(ガンバレ日本)」の活動を開始して以来、定期的に発行される印刷物の題号として証拠に示されるような態様で、本件商標を構成する「フオルッアジヤパン」の文字を小さく、「がんばれ日本」の文字を大きく上下二段に左横書きして、今日まで継続して頒布しているから、被請求人は本件商標をその指定商品について使用しているものである。
2.本件商標採択の背景
1994年(平成6年)1月26日にイタリアの三大民間テレビ、当時イタリア最強のサッカーチーム「ACミラン」やイタリア最大の広告会社を所有し「メディアの帝王」として知られていたシルビオ・ビスコーニ氏が政界入りを表明し、新政権樹立を目標として同年2月6日に新党「フオルツァ・イタリア(がんばれイタリア)」が発足した。その後3月の総選挙において「フオルツァ・イタリア(がんばれイタリア)」を中心とした右派連合が快勝し、イタリアに新しい波を築くようになった。被請求人はこのような流れに強い共感を覚え、新たな日本を築くことを目標として同年4月に「ガンバレ日本(FORZA GIAPPONE)」の設立を表明した。その後「ガンバレ日本(FORZA GIAPPONE)」の第1回総会を同年7月2日に開催し、広く賛同者の募集を行ったものであり、本件商標もそのような動きの中で採択され出願されたものである。本件商標の直接の使用証拠とはならないが、乙第1号証として総会案内を、乙第2号証として総会チケットの写を、乙第3号証として総会出席者に配布したバッジの写をそれぞれ提出する。
3.本件商標の使用
被請求人を中心として平成3年(1991年)4月より「中松義郎博士の会(略称:なかよし会)」が発足し、事務局は被請求人の研究所所在地におかれている。原則月1回の例会が行われ、事務局の編集により例会の内容や、その他の会合の案内、被請求人のスケジュールや著作等を紹介する会報が発行されていたが、「ガンバレ日本(FORZA GIAPPONE)」の設立の表明後に会報の題号を、「フオルッアジヤパン」の文字を小さく上段に配し、「がんばれ日本」の文字を大きく下段に配するものに変更したものである。
そして、平成6年8月付(乙第4号証)、平成7年1月付(乙第5号証)、平成8年1月付(乙第6号証)、平成9年5月付(乙第7号証)、平成11年1月付(乙第8号証)、平成12年6月付(乙第9号証)に示すとおり「フオルツァジヤパン/がんばれ日本」誌を発行してきたものである。
また、発行者は「がんばれ日本」であるが、所在地は被請求人の研究所の所在地であり、記事の内容も被請求人を中心とした記事よりなるものであるから、被請求人自身による使用であることが推定できるものである。会報の発行は原則的に月1回となっているが、記事の集まり具合等により変更されるため発行日は不定期であり、当月発行の場合もあるが、前月に翌月分の発行が行われることがある。会報の配布先は「中松義郎博士の会(略称:なかよし会)」の出席者、その他の会合の出席者であるため、部数も月により変動し特定は出来ないが、少なくとも例会の出席者に対し30〜40部は配布されている。定価は1部100円とされており、会費のある会合においては、会費に含まれるものとして出席者に配布し、その他の購入希望者には有償で配布するようにしている。なお、使用されている題号の表示は登録商標の態様と大きさ等が相違しており、同一商標の使用とはなし得ないものの、同一性のある商標の使用であるといえるものである。以上の通り、乙第4ないし第10号証により、本件商標が使用されていたものであることが証されている。
さらに、乙第10号証は「フオルツァジヤパン/がんばれ日本」誌の平成6年6月〜平成12年7月までに発行されたものの目録及び記事の抜粋である。これにより本件商標が継続使用されていることが証されている。
以上のように本件商標は、本件審判請求登録日前3年以内に商標権者により商品「印刷物」に使用されていた。
4.請求人上申書に対する反論及び被請求人の主張
請求人は、本件登録商標に関し、商標法50条不使用取消審判を請求し、その理由として・使用主体・使用時期・使用商品・使用商標について主張しているが、いずれも商標審査、審判の実務と乖離した論理である。
(ア) 第1に、使用主体については、本件審決取消訴訟で明らかとなったとおり、被請求人が使用主体であることは明白である(甲第3号証、判決理由)。
(イ) 第2に、使用時期については、本件審判の予告登録日は平成12年6月14日であるから、商標法50条2項の期間は、平成9年6月14日から平成12年6月13日までである(以下、本件対象期間という)。
この対象期間において、本件指定商品「印刷物」である本件会報が毎月確実に欠かさず継続して発行され会員及び一般購読者に販売、配布されて来たことは事実として明らかである(甲第3号証、本件判決の判断の項、本件乙第12号証(被請求人陳述書)本文、甲第12号証別紙Eの会報「フオルッアジャパン がんばれ日本」平成9年6月号より平成12年6月号までの毎月号、乙第11号証を各々参照のこと)。
(ウ) 第3に、使用商品について本件会報が指定商品第16類「印刷物」に該当することは明白である。
「中松義郎博士の会」の会報が商品性を有することは、「中松義郎博士の会」の会報が平成6年6月より今日まで欠かさず月刊紙として有料にて発行、販売、配布されており、そのタイトルも一貫して「フオルッアジヤパン がんばれ日本」であることからも明らかである(乙第12号証陳述書、甲第12号証別紙E)。又、「中松義郎博士の会」の会報が有償か無償かは「商品」性の要件ではないが、会員及び一般購読者に有償(一部100円)で配布、販売されていることも、商品性を裏付ける一つである。尚、請求人は、100円の領収証が発行されていないとするが、100円程度の刊行物には一々領収証を出さないというのが通常の慣行である。
発行部数については、当初30〜40部と主張したが、毎月会員向け、4百数十名とその他100と200部の合計5百数十部ないし6百数十部発行しているのが正しい。
請求人は本件会報のサイズが不明と主張するが、原寸はA3サイズである(乙第4号証ないし第9号証)。なお、審決取消訴訟においてはA4サイズで統一して写しを提出したものである。
(エ) 第4に、使用商標については、「中松義郎博士の会」の会報全てにおいて「フオルッアジヤパン がんばれ日本」を二段表記で、標準文字により記載されており、使用商標は「フオルッアジヤパン」が比較的小さく、「がんばれ日本」が比較的大きい、標準文字にて構成されており、商標の使用として全く問題はない。(東高判平成14年10月29日(平成14年(行ケ)第174号、「アバークロンビー アンド フイッチ」事件参照)。
(オ) 甲第4号証ないし第10号証の審決は、本件とは事案内容が異なるものであって、本件をこれらと同様には論じられないものである。
以下、甲第4号ないし第10号証における認定事実を要約して、本件会報との差違を明らかにする。
・ 甲第4号証は、「教材配布用」、「バインダー式である」、「奥書もない」、「定価もない」などの総合的理由により、商標法上の「商品」としての印刷物とは認められないと認定しているものである。
・ 甲第5号証は、「身分証明書の代用である」、「万一の事故の際役立つ」、「事故発生時に相手に安心感を与える」等の目的によるものだがどの「商品」に該当するか不明であり、商取引の目的物としての流通性を有する商品とは言えないと認定している。また、案内状、カレンダー、封筒等も宣伝、広告の媒体であり、「印刷物」でないと認定している。
・ 甲第6号証は、「標題が本件商標とは異なる構成である」、「カレンダー」については、業として販売を目的としたものではない等の認定事案である。
・ 甲第7号証は、カタログの構成、体裁、内容に照らし、本件カタログが一般市場で流通に供されることを目的として生産、又は取引される商品とは認められないと認定している。
・ 甲第8号証は、企画書、宣伝用カタログ、商品タグ、商品ラベル等の印刷物は被服、履物、時計等の物品販売手法及びその宣伝手法にすぎないと認定している。
・ 甲第9号証は、この種の印刷物は、ボーリング場の愛好者或いは会員得意先等を対象に無償で頒布される、サービスの一環として発行される、宣伝、広告を兼ねた印刷物であり、定価の記載もなく、有償で頒布された印刷物でない。取引の対象として一般市場に流通する商品ではないと認定した。
・ 甲第10号証は、本件印刷物は、たとえ、風物誌、紀行文等の記事、発行年月日等が記載されていても、各店の広告、宣伝用のサービス品として、無償で配布するものと認定され、一般市場の流通に向けられたものではないと認定している。
(カ) 甲第3号証(本件判決)によれば、「中松義郎博士の会」の会報は、被請求人であるドクター・中松として著名な中松義郎の思想、行動理念、活動報告、発明についての解説、時事問題、政治活動等について、審決は、乙第4ないし第10号証は、「中松義郎博士の会」の会報及び当該会報の発行目録とみられるものであると認定している。
「中松義郎博士の会」の会報には「中松義郎博士の会」の会務・活動報告も記載されており、その会報としての性格をも有していると認めることができる。
しかし、「中松義郎博士の会」の活動は、原告が主催する月例会(その内容は、原告との会食と懇談、質疑応答等である。)の開催、「頭をよくする会」などのグループ活動など、専ら原告がその内容等を決めていると認められることからは、「中松義郎博士の会」の会報としての面においても、その発行は原告の意志に懸かっていたと認められる。また、「中松義郎博士の会」の活動もまた、原告の発明の効果を宣伝し、その使用を勧誘する内容を多く含んでおり、原告個人の事業内容と強い関連性がある(甲第3号証)と認定して、「中松義郎博士の会」の会報の印刷物としての商品価値の実質と高さとが発明によって認められているものである。

第4.当審の判断
商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることを被請求人が証明するか、又は、使用していないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取り消しを免れないこととなっている。
そこで、被請求人は、本件商標を本件取消請求に係る商品「印刷物」について使用している旨主張しているので、この点について検討する。
1.乙第1号証ないし同第10号証及び甲第12号証によって認められる事実及び本件判決によって認定された事実について
被請求人が提出する乙第1号証ないし同第9号証のうち、本件審判請求の登録日(平成12年6月14日)前3年以内の日付けの資料(「がんばれ日本」の題号からなる印刷物)と認められるのは乙第7号証及び同第8号証であり、また被請求人作成の陳述書である甲第12号証〔本件審決取消訴訟事件で原告(被請求人)が提出した甲第11号証である。〕に添付されている別紙Eの資料(「がんばれ日本」の題号からなる印刷物)には同3年以内の日付のものと認められる平成9年6月号ないし平成12年5月号の各月の印刷物が含まれているので、それらの乙各号証及び資料、並びに本件審判請求の登録日前3年以前の日付けの印刷物(乙第1号証ないし同第6号証及び同第12号証)をも含め検討する。
(1)印刷物(会報)の内容について
(ア)乙第1号証ないし同第9号証は、「フォルッアジャパン」の小さな文字と「がんばれ日本」の大きく表した文字を二段に表示した題号からなる「中松義郎博士の会」の会報(以下「本件会報」という。)として発行されているものと認められる。そして、本件審判請求の登録日前3年以内の日付に係る本件会報には発行者を明示するものとして、「発行者 がんばれ日本 価格100円 〒107 東京都港区赤坂2-10-9」の記載がある。
(イ)本件会報は、専ら、被請求人(商標権者)である「中松義郎博士」個人の政治的、学術的活動、業績、被請求人個人の発明とその効果の紹介、「中松義郎博士の会」や「なかよし会」の行事等が掲載されていて、これらは、被請求人個人が、主宰する発明とその効果の紹介、「がんばれ日本」の活動への参加への呼びかけ、被請求人個人の思想、信条、科学的見解の表明、「中松義郎博士」の行う講座、随筆、被請求人へのインタビュー記事、被請求人個人の近況・今後のスケジュール等が掲載され、そして「中松義郎博士の会」の会員に向けた事務局からのお知らせが掲載されているものである。それらは、被請求人個人が一人称で語っている形式のみのものが極めて多いという事実が認められる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の事実からして、本件会報は、「フォルッアジャパン」の小さな文字と「がんばれ日本」の大きく表した文字を二段に表示し題号とするものである。そして、本件会報の発行者を「がんばれ日本」と表示されているとしても、本件会報の記載内容が、専ら、被請求人個人の思想・信条、科学的見解、とりわけその発明を紹介し、一貫して称揚し、宣伝するものであり、かつ、被請求人が一人称で語る内容が極めて多いという事実からして、本件会報は、被請求人(商標権者)自身又はその意を受けた者によって発行されたものと認められる。
(エ)また、本件会報は、「中松義郎博士の会」の会務、活動報告も記載されており、その会報としての性格をも有していて、平成6年6月から、少なくとも平成13年4月まで、ほぼ毎月一回制作され、少なくとも、「中松義郎博士の会」等、中松義郎博士(商標権者)が主宰する会の会員に配布されていることが認められる。
(2)「中松義郎博士の会」及び「がんばれ日本」について
(ア)「中松義郎博士の会」は、甲第12号証によると、被請求人自身が主宰者となって、発足させたものであり、この会の目的は、被請求人の世界観、人生観、生き方を広め、被請求人の発明を活用するなどして、政治の混迷を改善し、豊かで安全で平和な世界を築くこととされている。そして、同会の会員は会費を納入(年会費、社会人3万6千円、学生2万4千円)しなければならないこととされていて、また本件会報が「中松義郎博士の会」の会報として発行されているものと認められる。
(イ)乙第1号証、甲第12号証及び本件判決によると、平成6年、被請求人は「がんばれ日本」の名称を揚げて、「クリーンであること」、「全自由であること」、「ノーストラクチャー(上下伝達組織でなく自主的で各人が貢献者たるべし)」等のポリシーを掲げて政治改革をすることを提言(乙第12号証、別紙C)して、同年7月2日に第1回総会を開催し、広く賛同者に呼びかけを行い、同時に第1部ないし第5部として、被請求人の著作に係る書籍出版記念発表会、講演、誕生記念パーティーも開催されている。
(3)上記(1)及び(2)の事実からすると、「中松義郎博士の会」は、被請求人(商標権者)が主宰者として、被請求人の世界観、人生観、生き方を広め、被請求人の発明を活用する等により、政治の混迷を改善し、豊かで安全で平和な世界を築き、世の中を良くしていくこととしているもので、その会の会報として、本件会報を平成6年6月以来、本件審判請求の登録の日までほぼ毎月、被請求人(商標権者)又はその意を受けた者によって発行されていて、同会の会員に配布されていたものと認められる。
2.使用者及び使用商標について
前項1.の事実からすると、本件会報は、被請求人(商標権者)により発行されたものであり、その会報の題号である「フオルッアジヤパン」「がんばれ日本」の表示は、本件商標と綴り字が同一であることから、社会通念上同一とみられ得るものと認められる。
3.使用している商品について
(1)商標法上の商品について
商標法第50条の適用上、「商品」というためには、市場において独立して商取引の対象として一般市場を転々流通し得る物でなければならならず、また、「商品についての登録商標の使用」があったというためには、商品の識別標識として同法第2条第3項及び第4項所定の行為がされたことを要するものというべきであるから、その点について検討する。
(ア)前項1.(2)で認定したとおり、「中松義郎博士の会」は、被請求人の世界観、人生観、生き方を広め、被請求人の発明を活用するなどを通じて、被請求人と共に世の中を良くしていくことを目的としているものであり、また、「中松義郎博士の会」の会報である本件会報に掲載されている記事内容からしても、専ら、被請求人個人の思想・信条、科学的見解、とりわけその発明を紹介し、一貫して称揚し、宣伝するものであり、かつ、本件会報を被請求人自身の意思決定に基づき発行していると推認されることから、「中松義郎博士の会」は、被請求人個人の思想、信条や発明事業内容と密接に関係した被請求人の個人的要素の強い会(団体)と認められる。
(イ)そして、本件会報は、「中松義郎博士の会」の会報として、被請求人個人に密接に関係した、少なくても、本件審判請求の登録日前に発行された本件会報は、被請求人個人について記載した内容の記事が極めて多いものとなっている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の事実からすると、本件会報は、「中松義郎博士の会」又は被請求人を離れ、一般的市場において独立して商取引の対象物となっていたものとは認め難いものである。
したがって、本件会報は、本件会報に定価の表示があるとしても、商標法上の商品ということはできないものである。
(2)被請求人は、本件会報を毎月30〜40部(その後、毎月会員向け4百数十名、その他100と200部の合計5百数十部ないし6百数十部と訂正している。)を配布していると主張して、本件会報「がんばれ日本」について使用していた旨主張している。しかしながら、上記認定のとおり、被請求人は、本件商標を商標法上の商品に使用しているものとは認められないものであり、むしろ、「中松義郎博士の会」の会報として、会員又は中松義郎博士(商標権者)個人の思想、信条等に共感する者(準会員)に限定して配布されていたものと認められる。また定期刊行物として不特定多数の需要者に広く販売されていたことの証拠の提出もないので、その主張は採用することができない。
そうすると、本件商標が本件審判請求に係る指定商品「印刷物」について商標権者によって使用されていたということはできない。
その他、本件商標を本件審判請求に係る商品について具体的に使用している事実を認めるに足る証拠はない。
してみれば、商標権者が、本件商標と社会通念上同一とみられる使用商標を本件審判請求の登録(平成12年6月14日)前3年以内に本件会報に使用していたとしても、本件会報が商標法上の商品とは認められないことから、商標権者は、本件商標を審判請求に係る指定商品のいずれかについて本件審判請求の登録前3年以内に使用をしていたものということはできない。
その他、被請求人は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標に係る商品について使用していたものと認めるに足りる証拠を提出しておらず、また、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしない。
4.まとめ
以上のとおり、被請求人は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品のいずれかについて使用していたことを証明することができなかったといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-05-20 
結審通知日 2003-05-23 
審決日 2003-06-25 
出願番号 商願平6-45140 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (016)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 明訓薩摩 純一 
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 小川 有三
富田 領一郎
登録日 1997-05-02 
登録番号 商標登録第3300059号(T3300059) 
商標の称呼 フオルッアジヤパンガンバレニッポン、フオルッアジヤパン、フォルッアジャパン、ガンバレニッポン、フォルッア 
代理人 佐々木 功 
代理人 寒河江 孝允 
代理人 川村 恭子 

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