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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 132
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 132
管理番号 1113210 
審判番号 無効2003-35077 
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-03-04 
確定日 2005-02-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2724017号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2724017号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2724017号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、昭和59年11月30日に登録出願、第32類「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」を指定商品として、平成10年3月6日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標は、甲第1号証の商標登録原簿及び第2号証の商標公報に記載されたように「柿茶そば」を主要部とする商標であって、「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」を指定商品として登録されたものである。
しかしながら、「柿茶」は、甲第3号証及び甲第4号証をもって示す本件請求人の「柿の葉茶」を指定商品とする登録商標(以下「引用商標1」という。別掲(2)に示す。)であるから、「柿の葉茶」と不可分の本件指定商品に請求人の登録商標を承諾なく商標として採択・登録された本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定により登録できないものであって、同法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(2)また、本件請求人が所有する「柿の葉茶」の登録商標「柿茶」は、本件商標の出願前から長年使用され、取引者、需要者に認識されているから、「柿茶そば」を主要部とする本件商標を「柿の葉茶」と不可分の本件指定商品「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」に使用するときは、請求人あるいは請求人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤認されることは否定し得ないものである。
ゆえに、本件商標は他人の業務に係る商品と誤認混同を生じるおそれがあることは明白で、商標法第4条第1項第15号の規定により登録できないものであり、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)別掲(1)に示す本件商標の「柿茶そば」の文字の右肩上に表示された独特の文字は「京の柿茶」が正しいものであり、ゆえに「キョウノカキチャ」、「カキチャ」と称呼されることは否定し得ないものである。
(2)本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、同法第46条第1項第1号により登録は無効とされるべきである。
(ア)本件商標は、「柿茶そば」の文字と、「京の柿茶」の文字と、「柿の葉の図」から構成されていることは前記のとおりであり、「京都産の柿の葉茶を加味してなるそばめん」を指定商品として登録されたものであることも甲第1号証の登録原簿に記載のとおりである。
他方、別掲(2)に示す引用商標1は、「柿茶」の文字と「柿の葉の図」からなり、「柿の葉茶」を指定商品としていることも登録原簿の記載に徴し明らかである。
ここに、本件商標と引用商標1「柿茶/柿の葉の図」とを対比すれば、本件商標は、引用商標1の「柿茶」の文字を本件商標を構成する主要部分にそっくり配し、「柿の葉の図」までも共通にする商標である。さらに、指定商品に関しても、本件商標と引用商標1とは商品区分は異にするが、両者は同じ食品部門で、しかも、引用商標1の指定商品「柿の葉茶」を本件商標の指定商品は原料としてそっくり含んでおり、「京都産の柿の葉茶を加味してなるそばめん」を指定商品としてなるものである。
してみれば、本件商標は、他人の登録商標と商品をその商標と指定商品中にそっくりそのまま含んで自己の商標としたものであることは否定すべくもない。また、甲第7号証をもって示す高等裁判所の判決書の標章第3目録、同第4目録の標章を見て頂きたい。ここには本件商標の「京の柿茶」の文字と全く同一の文字が記されている。この独特の文字で記載された「京の柿茶」こそ、請求人と被請求人とが当事者として、商品「柿の葉茶」をめぐり係争した商標権侵害訴訟の対象物となった標章そのものである。東京高等裁判所及び最高裁判所は、被請求人が「柿の葉茶」にこの独特の文字で記載された商標「京の柿茶」を使用することは、引用商標1の商標権を侵害するものであると認定し、請求人勝訴のこの判決は、本件商標の登録査定時(正確には登録異議申立の決定前。)には既に確定していたものである。
ちなみに、当該商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かの判断は、商標の表示自体が公の秩序等を害するおそれがあることがうかがわれる場合や、商標を使用することが社会公共の利益に反する場合に限定されるとの判断が裁判所において通説となっていることを請求人は理解しているが、この基本に照らしても、本件商標は侵害訴訟で侵害が確定した対象標章と、その標章と密接に関係する商品がそのまま本件商標の標章及び指定商品中にそっくり取り込まれ、これらが本件商標の主要部を構成するものであるから、このような商標を請求人の承諾もなく被請求人が登録することは、社会公共の利益に反するといえ、許されるべきではない。
また、商標法第4条第1項第7号の時期的制限についても、本件商標の審決年月日(平成9年12月16日)には最高裁判所の判決(平成8年(オ)938号、平成9年10月9日言渡)が言い渡されていること、甲第9号証をもって示す東京高等裁判所の判決書、14ページにあるように、「少なくとも昭和43年頃には『柿の葉茶』に柿の葉の図形と『柿茶』の文字からなる標章が使用されていた。、、、取引者、需要者において、柿の葉の図形と「柿茶」の文字部分が結合した登録商標をみれば、原告(本件請求人)の製造販売する『柿の葉茶』の商品に付した標章と認識してきたものであるの記載、、、」から、本件商標は時期的制限を考慮しても、商標法第4条第1項第7号の適用は免れ得ないものである。
(イ)被請求人は答弁書において、本件商標は引用商標と非類似であり、被請求人が独自に創造・採択した商標であるから、請求人の承諾を受ける理由はなく、商標法第4条第1項第7号には該当しない、と答弁しているが全く根拠のないものである。
(3)本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号によりその登録は無効とされるべきである。
(ア)請求人は、「柿茶/柿の葉の図」からなる引用商標1と、甲第5号証及び第6号証をもって示す引用商標「KAKI-CHA/柿の葉の図」(以下「引用商標2」という、別掲(3)を参照。)を「柿の葉茶」の商標として50年以上もの長きにわたり継続して使用してきた。この50年の歴史は「柿茶」=生化学研究所(請求人)の概念を生じるに至ったといい得るもので、「柿の葉茶」の愛好者なら「柿茶」は誰でも知っている商標である。請求人の上記主張の正当性は、引用商標1、2の文字部分「柿茶」、「KAKI-CHA」が独立して自他商品の識別力を有し、「カキチャ」と称呼されて、請求人の製造販売する「柿の葉茶」を表すものとして、本件商標の出願前より取引者、需要者に認識されていたことを認めた甲第7号証、甲第8号証をもって示す裁判所の判決、甲第11号証をもって示す登録異議の決定の理由中の判断並びに甲第11号証ないし甲第20号証をもって示す審決でも明白であると思料する。
ここに、本件商標と引用商標1、2とを対比すれば、本件商標の識別標識は「柿茶」であることが明白であり、「カキチャ」の称呼をもって取引に供されることも極めて自然なことである。
してみれば、本件商標と引用商標1、2、とは互いに「柿茶」を主要部とする「カキチャ」の称呼を共通にする酷似した標章である。
かくのごとく、「柿茶」又は「カキチャ」=「生化学研究所」を直感するまでに「柿の葉茶」で需要者等に知られた標章と酷似した本件商標が「柿の葉茶」を原料とする「京都産の柿の葉茶を加味してなるそばめん」に付して使用された場合は、両商品は共に食品部門に属する近い関係にある商品で、かつ両商品は共に「柿の葉茶」と不可分の関係にある商品であることも加えて、需要者等は請求人あるいは請求人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤認混同するおそれ極めて多大であると確信する。
ところで、この商品の出所の誤認混同のおそれに関して、本件商標に対する登録異議の決定(甲第10号証)は、本件商標の指定商品が「そばめん」であることに起因して、引用商標1、2が使用される「柿の葉茶」とは品質、製造部門、販売部門等を異にするとし、本件商標に対する商標法第4条第1項第15号の規定の適用を否定している。
しかしながら、この判断は極めて妥当性を欠くものである。
すなわち、本件商標が指定する指定商品は単に「そばめん」ではなく、「京都産の柿の葉茶を加味してなるそばめん」である。
つまり、本件商標と商品、引用商標とその商品とは密接に関係することが判断の対象とされていない。また、「そばめん」と「柿の葉茶」は、品質、製造部門、販売部門等を異にすると認定されているが、「そば」に「茶」を加味する「茶そば」の存在は古来から広く知られており、「そば」と「茶」とは密接な関連を有するから、「そばめん」に柿の葉茶を加味することも特別なことではない。
したがって、「柿の葉茶を加味したそばめん」と「柿の葉茶」とは互いに商品の品質において、商品の製造部門において密な関連を有するものである。また、販売部門についても「柿の葉茶を加味したそば」と「柿の葉茶」とはいずれもヘルシーな飲食物として需要者等に好まれ、広義の健康食品として、百貨店、薬屋のチェーン店、通信販売網を介して同列に扱われる商品である。
ゆえに、本件商標が指定商品「京都産の柿の葉茶を加味してなるそばめん」に付して使用された場合には、需要者等は「柿茶」で知られた請求人又は請求人と関連を有する者の取り扱いに係る商品であろうと認識することは当然なことであると考えられる。
(イ)被請求人は、本件商標と引用商標とは標章として非類似であるため本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないと答弁し、その理由を引用商標「柿茶」は識別力のない独占適応性に乏しく、誰もが原料表示として使用できると主張し、大学教授の著作物を乙第3号証として提出している。
しかし、これは特別顕著性の要件を欠く部分を含む商標であっても、この部分から生じる称呼・観念をこの商標自体の称呼・観念と認めても差し支えない、という判決(昭和38年5月16日東京高裁昭和37年(行ナ)47号)及び取引上の実情を無視し、しかも引用商標1、2の「柿茶」、「KAKI-CHA」の文字部分が「柿の葉茶」の商標として独立して自他商品の識別力を発揮すると認定した審判及び裁判の審判決を無視するものであって、そもそも答弁理由とはなり得ない論拠である。また、大学教授の著作物は単なる学説の一つとして理解されるに留まるもので、確定した裁判上及び審判上の判審決自体が左右されることは決してない。
よって、被請求人が本件商標は商標法第4条第1項第15号には該当しないとする答弁理由は根拠がない。
(4)以上の次第につき、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同法同条第1項第15号の規定に該当する商標であるから、同法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、
との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件審判請求理由商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、以下の如く同法4条1項15号を根拠とする他人の登録商標排除適格に乏しいため、本件商標は本号に該当しない。
引用商標は、商標法第3条第2項の適用を受けて例外的に指定商品「柿の葉茶」についてのみ識別力が認められた商標であり、本来原材料表示的商標であるがために、その商標が有する識別力は、他の商標と比較して識別力が弱い。つまり、「出所の混同のおそれ」が生じる商品の範囲は狭いものである。また、引用商標に係る指定商品「柿の葉茶」と本件商標に係る指定商品「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」は、生産部門、販売部門、用途等について、全く関連性のないものであることは明らかである。
したがって、本件引用商標と本件登録商標とは「出所の混同のおそれ」が生じない指定商品であり、本件商標は同法第4条第1項第15号に該当しない。
そもそも引用商標と本件商標は、非類似であるため、本件商標は同法第4条第1項第15号に該当しない。
確かに、本件商標は、「柿茶」を含む構成となっている。
しかし、これだけを理由として機械的に両商標が類似であると判断するのは妥当でない。引用商標の権利者である有限会社生化学研究所は、「柿茶」のみからなる商標について、過去複数出願をするもどれも原材料表示であるとして商標法第3条第1項第3号により、拒絶を受けている(乙第1号証の1ないし乙第2号証の3)。このことは、「柿茶」のみでは識別力を有していないことを示している。
その後、「柿茶」の文字と「柿の葉」の図形とを組み合わせた商標について出願をし商標法第3条第2項の適用を受けたものが、引用商標である。このことは、有限会社生化学研究所が、永年「柿茶」の文字と「柿の葉」の図形とを組み合わせた商標を商品「柿の葉茶」に使用した結果、「柿茶」の文字と「柿の葉」の図形とを組み合わせた商標が商品「柿の葉茶」にのみ識別力が認められたと判断されたことを示すものであって、「柿茶」の文字部分が、もはや原材料表示ではないと認められたものではない。
たとえ特定人が永年使用の結果、その商標に自他商品識別力が生じたとしても、その本来の原材料表示であるという事実については変わりないのである。これは、同法第3条第2項の「これらの規定にかかわらず…」という文言から当然に解釈される。つまり、「柿茶」の文字部分は、現に識別力のないものであり独占適応性に乏しく、誰もが原材料表示として使用が出来るものである。商標法第26条の制定趣旨がそれを明示している。にもかかわらず、引用商標の要部を識別力のない「柿茶」の文字部分に限定し、それを根拠に本件商標の一部に、そばの原材料表示である「柿茶」を含んでいるという理由だけで、類似していると判断することは、同法第3条第2項の趣旨を逸脱した判断であって妥当でない。
あくまで、本件商標は、被請求人が独自に創造・選択した商標であって、請求人と何ら関係のない商標である。
したがって、本件商標と引用商標は非類似であるため、同法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)本件審判請求理由商標法第4条第1項第7号について
上記(イ)で述べたように、本件商標と引用商標は非類似であり、本件商標は被請求人が独自に創造・選択した商標であることから、請求人の承諾を受ける理由が見当たらず、本件商標は同法第4条第1項第7号に該当しない。
2 答弁(第2回)の理由
(1)4条1項15号について
「柿茶」部分のような記述的表示に後願排除効を広く認めないとする裁判判例は多数存在する。(登録商標「SEIKO EYE」と後願「eYeの図形」は非類似(最高裁H5.9.10)、登録商標「ニッシン」と後願「日清フーズ」は非類似(東京高裁S55.1.30)、「Promark」と「PRO」は非類似(東京高裁H1.11.14)、「FUJI ELECTRIC」と「FUJI」は非類似(東京高裁H1.12.21)、「ムーン パール」・「ワイキキパール」と「パール」は非類似(東京高裁S54.1.30)等)。
つまり、「ニッシン」・「FUJI」・「パール」等のような自他商品識別能力・独占適応性の低い商標は後願排除効を狭く解釈されるのである。
本件の場合も同様に「柿茶」のような単なる内容表示に過ぎない自他商品識別能力・独占適応性の低い商標は、後願排除効が狭く解釈されて当然である。
さらに、請求人は本件審判の証拠として高裁・最高裁の裁判例を提示したが、該裁判例と本件審判とでは、引用商標が同じであるも、対象とする商標の構成及び対象とする指定商品が異なっているため、証拠性が低いものである。
また、本件審判で請求人は確定した高裁・最高裁の裁判例を随所で持ち出しいろいろと述べている(弁駁書9頁19行目)。確かに、確定した判決には当事者間を拘束する効力がある。しかし、民事裁判判決は、具体的な事案について当事者間を拘束するだけのものであり、決して対世的効力を有するものではなく、それ以後の別の事案における審判・裁判について何ら法的拘束力を有するものでない。
もっとも、該裁判例を根拠に、引用商標の一部である「柿茶」部分に、識別力があるということを立証するという趣旨であるのであれば、一つ言及しておく。
確かに、該裁判では引用商標中の「『柿茶』あるいは『KAKI-CHA』の文字部分は、柿の葉の図形とともに自他商品識別力を有するというべきである。」という結論に至っている。
しかし、その結論に至る理由には以下のような問題がある。
一つ目として、本件引用商標が商標法3条2項の適用を受けて登録になったという事実に触れていないこと。二つ目として、商標法3条1項1号3条1項3号を錯綜して論理を展開してしまっており、さらに「柿茶」という文字は、請求人が最初に使用したものであって、その後誰も「柿茶」という文字を使用していないという理由で、「柿茶」は「普通名称」でないとしている点である。
引用商標は、あくまで3条1項3号の「内容表示」である旨により拒絶査定を受けて、その後3条2項の適用を受け登録になったのにもかかわらず、該裁判では、3条1項3号を無視し3条1項1号の「普通名称」に当たるか否かによって自他商品識別力を有するか論じているのである。無論、3条1項1号の拒絶査定であるならば、3条2項の形式的適用はないものである。
しかも、「柿茶」の文字について、誰も使用しなくなったのは、請求人が引用商標を掲げてあらゆる所に使用差止の文書を送ったからである。言うまでもなく、かかる通告を受けた者は、紛争を回避する手段としてやむなく使用を止めたにすぎないのである。
また、該裁判では、「柿茶」は、商品の「内容表示」であることを認めながら、「普通名称」でないため「自他商品識別力」を有すると論じているのである。商品の内容表示であると想起される表示であれば、現実に記述的商標として使用されているか否かを問わず、将来の一般的使用を確保すべく、3条1項3号により拒絶するというのが、規定の趣旨である。したがって、例え、今まで市場にない種類の商品であっても、単なる内容表示にすぎない記述的商標は、登録されるべきではない。
このことから、請求人が提示した該裁判例は、証拠性が低いどころか、逆に「柿茶」という文字部分が「内容表示」であるということを立証してしまっているものである。
また、弁駁書の9頁のB)項の7行目に「これは特別顕著性の要件を欠く部分を含む商標であっても」という記載から、引用商標は「特別顕著性」の要件を欠いている部分「柿茶の文字部分」を含んでいると、立証している。
したがって、上記理由から、引用商標の一部である「柿茶」という文字部分である「内容表示」を引用として、本件商標の付記的部分(内容表示)である「柿茶」を抜きだして対比し、商標の類否を判断するのは、法の趣旨を没却するものである。
全体観察において両商標は構成を異にするため、取引者・需要者は、何ら混同を生ずるおそれがないことが明らかである。引用商標が登録されたのは、引用商標の構成全体を見てはじめて請求人の商標であると認められたものであるからである。したがって、本件商標を請求人の商標であると、混同するはずがないのである。
よって、引用商標と本件商標は非類似であり、混同が生ずるおそれがないため、商標法4条1項15号には当たらないものである。
また、本件商標の指定商品は「京都産の柿の葉茶を加味してなるそばめん」であり、引用商標の指定商品は「柿の葉茶」であり、確かに、両商品は食品部門に属するものである。
しかし、両指定商品は、生産部門、販売部門、用途等について、全く関連性のないものであることは明らかである。
そして、引用商標は、指定商品「柿の葉茶」として自他商品識別力が辛うじて認められたにすぎないものであり、非類似商品である「京都産の柿の葉茶を加味してなるそばめん」にまで混同が生ずるおそれを想起させるような周知著名性を有するものと認められたものではないものである。
以上の理由から、本件商標は、引用商標と混同を生ずるおそれのない商標であるため、商標法第4条1項15号に当たらないことが明白である。
(2)4条1項7号について
上記で述べたごとく、本件商標と引用商標は全く構成の異なる非類似商標であるため、いわゆる「フリーライド」に当たらず、本号に該当するという請求人の主張は失当である。本件商標の「柿茶」とは単なる内容表示であって、だれもが使用できるものであり、「不正なフリーライド」という意思は存在しない。
したがって、商標法4条1項7号に当たらないのは明らかである。

第4 当審の判断
1 「柿茶」の文字からなる標章の自他商品識別力について
本件請求人を第一審原告とし、本件被請求人を第一審被告とする東京高等裁判所平成六年(ネ)第五三五八号、平成六年(ネ)第五四〇八号各商標権侵害差止等請求控訴併合事件(原審・東京地方裁判所平成三年(ワ)第一〇五四二号)の判決において、「商品としての柿の葉を蒸して後乾燥した茶の普通名称は、『柿の葉茶』であって、『柿茶』なる名称は、第一審原告の製造販売する柿の葉茶の商品名として取引者、需要者に認識されていることが明らかであり」(判決書19頁)、「第一審被告が第一審被告商品に使用している標章は、『京の柿茶』又は『KYO NO KAKITYA』若しくは『きょうのかきちゃ』の文字からなるものであるところ、『京の』及び『KYO NO 』並びに『きょうの』の部分は、商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示しているにすぎないと認められるから、第一審被告標章の要部は、いずれも『柿茶』又は『KAKITYA』あるいは『かきちゃ』の部分にあり、取引の際には、『カキチャ』の称呼をもって取引されるものと認められる。そうすると、第一審原告の本件登録商標(注、本件審判における引用商標1及び引用商標2)と第一審被告標章とは、称呼において同一であり、第一審被告標章は、いずれも本件登録商標に類似するから、第一審被告の右標章の使用行為は、第一審原告の有する本件商標権を侵害するというべきである。」(判決書20頁)と、判示されており、この判決について被請求人は上告をしたが上告は棄却され、前記判決は確定したものである。
そうすると、前記判決が言い渡された平成8年1月18日当時、「柿の葉を蒸して後乾燥した茶」の普通名称は、「柿の葉茶」であって、「柿茶」という名称は、請求人の製造販売する柿の葉茶の商品名として取引者、需要者に認識されていたものであり、また、「柿茶」の文字よりなる標章は、柿の葉茶に使用した場合、自他商品識別力を有していたものといわなければならない。そして、前記判決が言い渡されて以降、本件商標を登録すべき旨の審決がされた平成9年12月16日までその状態は継続していたものと判断するのが相当である。
この点について、被請求人は、民事裁判判決は、具体的な事案について当事者間を拘束するだけのものであり、対世的効力を有せず、それ以後の別の事案における審判・裁判について何ら法的拘束力を有しない旨主張する。
しかし、前記判決の裁判の当事者は、請求人と被請求人であり、本件と当事者が同じであること、また、前記判決の裁判においては、柿の葉茶に「柿茶」又は「KAKITYA」の文字を使用した場合のこれら文字の自他商品識別力の有無を主要な争点として審理され、判決がされていることからすると、これら文字の自他商品識別力の有無について、前記判決の認定判断と異なる認定判断をすることはできないというべきであり、したがって、被請求人の前記主張は採用できない。
そしてまた、被請求人は、前記判決は「柿茶」が商品の「内容表示」であることを認めながら、「普通名称」でないため「自他商品識別力」を有すると論じている旨述べるが、前記判決において「柿茶」が商品「柿の葉茶」の内容表示であるとの認定判断はされていないから、被請求人の前記主張は採用できない。
2 本件商標の指定商品と請求人が製造販売する商品「柿の葉茶」の類似性について
本件商標の指定商品は、前記のとおり「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」であり、一方、請求人は、商品「柿の葉茶」を長年製造販売してきたと認められるところ、その商品の類似性について、以下、判断する。
被請求人は、本件商標の指定商品と商品「柿の葉茶」は、生産部門、販売部門、用途等について、全く関連性がない旨主張するが、確かに、そばに柿の葉茶を加味することは一般に行われていていない。しかしながら、「柚きり(そばに柚の皮のすりおろしを加味したもの)」、「茶そば(そばに抹茶を加味したもの)」等があることから勘案すれば、本件商標の指定商品である「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」は、「柿の葉茶を加味したそば」の商品の主原料はそば(そば粉)ではあるが、柿の葉茶もこの商品に使用されている原材料として取引者、需要者に注目されるものといわなければならない。そして、商品「柿の葉茶」を販売する被請求人(前記判決により販売が認められる。)が、「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」を指定商品とする本件商標を商標登録していることからしても、同じ業者により販売される蓋然性があり、日本的な食品で健康によいとみられる点でも共通性があるから、被請求人の前記主張は採用することができない。
そうすると、本件商標の指定商品と商品「柿の葉茶」は、極めて密接な関係にある商品で類似性があることは明らかというべきでありる。
3 混同を生ずるおそれについて
上記のとおり、本件商標を登録すべき旨の審決がされた平成9年12月16日において、「柿茶」は、請求人が永年製造販売する「柿の葉茶」の商品名として取引者、需要者に広く認識されるに至っていたものであり、また、本件商標の指定商品と商品「柿の葉茶」は、前記のとおり極めて密接な関係にある商品であることを考慮すれば、本件商標は、これをその指定商品である「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」に使用した場合、取引者、需要者は、本件商標中の「柿茶そば」の文字のうち、請求人の製造販売する柿の葉茶の商品名と認識される「柿茶」と一致する「柿茶」の文字、又は、本件商標中に独特の文字で表されている「京の柿茶」の文字のうちの「柿茶」に注意を引かれ、該文字部分により商品を識別することが少なくないものと認められるから、これを請求人と何ら関係を有しない被請求人が、これをその指定商品である「京都産の柿の葉茶を加味したそばめん」に使用した場合、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのように取引者、需要者が誤認して、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認める。
4 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について、検討するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その商標登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)

別掲(2)色彩の詳細については原本を参照されたい。

別掲(3)色彩の詳細については原本を参照されたい。


審理終結日 2004-12-02 
結審通知日 2004-12-06 
審決日 2004-12-21 
出願番号 商願昭59-124329 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (132)
T 1 11・ 22- Z (132)
最終処分 成立  
前審関与審査官 沖 亘 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 小林 薫
岩崎 良子
登録日 1998-03-06 
登録番号 商標登録第2724017号(T2724017) 
商標の称呼 キョーノシヨー、キョーノカキハ、キョウノカキチャ、カキチャソバ、カキハ 
代理人 富坂 博 
代理人 井沢 洵 
代理人 松本 弘 
代理人 川浪 順子 

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