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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z41
管理番号 1111438 
審判番号 取消2003-31679 
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-03-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2003-12-11 
確定日 2005-01-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4401672号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.本件商標
本件登録第4401672号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成11年3月8日に登録出願され、第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として同12年7月21日に設定登録されたものである。

第2.請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を取り消す、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第9号証を提出している。
1.請求の理由
請求人の調査したところによると、本件商標は、その指定役務について商標権者によって継続して3年以上日本国内において使用されておらず、現在も使用されている事実は見出せない。加えて、商標登録原簿上において通常使用権及び専用使用権等の設定の登録がなされておらず、使用権者が使用していることも考えられない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録が取り消されるべきである。
2.弁駁の理由
被請求人は、被請求人が本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標をその指定役務中「技芸または知識の教授」「セミナーの企画、運営または開催」等に使用しているとして乙第1ないし第6号証を提出している。
しかしながら、これらの証拠は、商標法第50条第2項における被請求人の使用を立証できるものではなく、本件審判請求登録日前3年以内の使用には該当しない。よって、被請求人は、本件指定役務についての本件商標の使用を立証していないから、商標法第50条第2項により、本件商標の登録の取り消しを免れないものである。
以下に、被請求人の答弁内容を検討する。
(1)被請求人は、乙第1号証として、平成11年4月15日発行の社会活動組織「ウィズダム21事務局」が編集及び発行した会報誌の写しを提出している。
ここで、商標法第50条第2項においては、「その審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定されている。
本件審判請求の予告登録日は、平成16年1月20日であるから(甲第3号証)、その登録日から3年前である平成13年1月20日以前の証拠は使用立証の証拠としては採用できない。よって、被請求人が提出する乙第1号証は、第50条第2項の使用立証資料として考慮することができない。
なお、被請求人は「本件審判請求登録前3年に相当する平成12(2000)年12月11日以来…」と述べているが、法律上は上記のとおりである。
さらに、乙第2号証として、乙第1号証と同様の会報誌の一部を提出している。同号証においては、日付の証明が全くなく、かかる証拠も採用できない。
(2)乙第3号証として提出されているのは、平成14年6月30日発行のもので、社会活動組織「ウィズダム21事務局」が編集及び発行し、会員に配布された会報誌である。本号証において、被請求人である塗木桂子を会長とする社会活動組織「ウィズダム21事務局」(以下「本件組織」という。)が存在し、本件組織の名称として「ウィズダム21事務局」との表示が用いられ、その会報誌の題号が「WISDOM21」であることが確認できる。
続いて、乙第4号証として提出されているのは、2002(平成14)年1月13日付け中日新聞における、本件組織が同年1月12日に開いたセミナー(以下「本件セミナー」という。)についての記事の写しである。これにより本件セミナーの事実を認めることができる。
乙第5号証として提出されているのは、本件セミナーの案内ちらし(乙第5号証の1)及びその目録と本件セミナー時の配布物とみられる複写物(乙第5号証の2ないし5)である。
(3)上記乙第3ないし第5号証の一連の証拠は、本件商標についての商標法第50条第2項の立証資料として採用することができない。その理由は次のとおりである。
(ア)被請求人が主張する本件商標の通常使用権者は、法人格を有さず、商標の使用主体となりえないこと
まず、被請求人は、「この社会活動組織は、女性事業家や音楽家、教育者らの約50人で組織しており、彼らが社会活動を行う場合の標章として、本件商標を使用している。」また、「会長である『塗木桂子』が商標権者となって個人所有となる本件商標を『WISDOM21』である会に使用許諾している。」旨を主張する。
つまり、被請求人が主張するところは、本件組織が通常使用権者として本件商標を使用している、との主張である。
しかし、商標法第31条においては、「商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。」とあり、通常使用権者の法的要件として「他人」であること、すなわち「自然人又は法人」であることが要求されると解される。ところが、被請求人が主張する「WISDOM21」たる本件組織は法人格を有さない所謂サークル組織であり、法上の通常使用権者たりえない。
よって、本件組織は本件商標の使用主体となりえず、乙第2ないし第5号証による使用は商標法第50条第2項の使用には該当しない。
(イ)被請求人が行った2002年1月13日の本件セミナーは商標法上の役務とはいえず、また業としての使用に該当しないこと
商標法上の「役務」とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうるものをいう、とされている(甲第6号証)。商標法第2条第1項第2号に規定されるように「業としての役務を提供する」、つまり、業務として確立した反復・継続性がある役務でなければならない(甲第7号証)。本件組織は、乙第3号証の「会員募集」の記事で明らかなように、本件組織会員2名の推薦によって入会できる閉鎖的な会員組織であり、会員内で開催された該セミナーの企画・運営又は開催は商標法上の「業としての役務」に該当しない。この点、「家庭内における使用や自社工場内でのみの使用については、業としての商標の使用に該当しない」とされている(田村善之著「商標法概説〔第二版〕」:甲第8号証)。商標の使用といえるためには、市場取引上において商標が出所表示機能を発揮する使用が要求されるため、例えば「自社内セミナーやサークル内でのセミナー」については商標法上の役務について使用とはいえないこととなる。つまり、商取引の目的が必要であることになる(東京地裁昭32(ワ)5278、月刊趣味の会事件、昭36・3・2判決)。
そこで、本件セミナーが「業としての役務の提供行為」に該当するかについて検討する。乙第5号証の1及び2に示されるように、本件セミナーは本件組織の第16回例会として開催されたものであり、また本件セミナーの講師3名はすべて本件組織メンバーであることが乙第4号証の新聞掲載記事により明らかである。一部外部からのビジターの参加を認めたことは確認できるが、乙第5号証の1に「ビジターお誘い合わせの上、多数ご出席ください。」とあくまで本件組織会員及びその関係者を対象とした告知に止まり、対外的な業としての役務の提供には該当しない。
したがって、本件セミナーは、「自社内セミナーやサークル内でのセミナー」と同視されるものであり、業として本件セミナーを企画し、運営し又は開催している事実は認められず、商標法上の役務性は存在しない。
以上、詳述したように、本件セミナーはあくまで会員もしくは会員関連者を対象としたセミナーの企画・運営又は開催であり、商標法上の「役務」には該当せず、乙第2ないし第5号証に示す証拠は本件商標の使用を示すものではない。
例え、本件組織によるセミナーの企画・運営又は開催を商標法上の役務と認めたとしても、乙第3号証により提出されている本件組織の会報誌の題号への使用は本件商標の使用とはなりえない。
(ウ)本件組織が本件セミナー終了後に本件組織のメンバーに配布する会報誌は、商標法第2条第3項第3ないし第7号に掲げる役務の使用の対象物とはなりえないこと
乙第3号証は、本件セミナー開催後にその結果報告書として本件組織の会員に向けて配布されている物である。つまり、本件セミナーの企画・運営又は開催に参加した者の利用に供する物ではなく、その提供の用に供する物又はその提供に係る物でもない。つまり、乙第3号証によって、本件セミナーが会員向けに開催された事実は認められるとしても、本件組織が本件セミナー終了後に本件組織のメンバーに配布した会報誌は、商標法第2条第3項第3ないし第7号に掲げる役務の使用の対象物とはなりえない。
よって、乙第3号証において商標法第50条第2項の使用を立証することはできず、同号証は証拠として採用できない。
(エ)本件セミナーの企画、運営又は開催の一に本願商標と社会通念上同一の商標が使用されていないこと
続いて、乙第4ないし第5号証において本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されているか否かについて以下に検討する。
乙第4号証に示される本件セミナー時の写真により確認できる看板及び第5号証の会員向けのチラシを商標法第2条第3項第5号にいう「役務の提供の用に供する物」とすれば、これらに示される商標は普通の文字で示される「WISDOM21 第3回 文化セミナー」又は「WISDOM21 第16回 例会のご案内」であり、いずれも「WISDOM21」を付記した後に催しが記されている。
一方、本件商標は、商標の構成中3分の2以上の視覚的印象を占める図形が左側に配置され、それに続き、特徴のあるローマ字で「WISDOM」とはっきりとした黒塗りのロゴ書体でつづられ、その後、「21」が白抜きで書されてなる構成をとる。
乙第4及び第5号証には、本件商標は記されておらず、単なる一般的な文字で「WISDOM21」と書されており、商標法第50条に規定されるところの社会通念上同一の商標が使用されていない。
本件商標は視覚的にその三分の二を占め、本件商標の中で最も強く看者の目を引く大きな「ダブリュー(W)」の囲みロゴ文字が外観において印象的であるが、使用商標にはその図形を欠き外観においても同視できない。これについては、平成10年(行ケ)214号における「本件商標の中で最も強く看者の目を引く「D」の欧文字と、これに掛けられている軟らかな時計の図形を欠く標章は、本件商標との間に社会通念上の同一性が認められず、・・・」の考え方と同旨である(平成1年10月28日東京高民六判決:甲第9号証)。
このように被請求人が立証する商標法第50条第2項の使用商標が同条に規定される社会通念上同一か否かを考えると、両者はその識別機能を異にし、社会通念上の同一性が否定される。
ついては、乙第4及び第5号証についても商標法第50条第2項の立証資料として採用することができない。
(4)上記の事実から、乙第3ないし第5号証の一連の証拠は、その使用主体が商標法上の役務への使用を立証できる物ではなく、また被請求人がその使用を主張する本件商標の指定役務は個人的組織内における使用であり、業としての役務の使用とはいえないため、被請求人の主張は採用できない。加えて、乙第3号証は、当該役務終了後に配布されたものであり、その使用に係る証拠とはいえず、乙第4及び第5号証は、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていないことから、これも採用することができない。
乙第6号証も「企画:ウィズダム21 特別企画」と記されているだけで、企画に係る主体を明らかにしたにすぎず、出所表示機能としての商標として使用しておらず、また被請求人は、本号証を挙げ、「映画・演芸・演劇又は音楽の興行の企画又は運営」に使用している旨主張しているが、取引の対象となるコンサートの企画又は運営について本件商標と社会通念上同一の商標が商標として使用されたことを示していない。
よって、乙第6号証も第50条第2項の証拠資料とはなりえない。
以上のように、被請求人が提出している乙第1ないし第6号証は本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、指定役務の一について使用されていることを立証しておらず、当該審判請求による取消を免れない。

第3.被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論掲記のとおりの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第6号証(枝番を含む。)を提出している。
1.請求人適格
本件審判請求に関する請求人適格について争う。
商標法第50条第1項において「何人も」との条文上の文言は存在するものの、特許庁編工業所有権法逐条解説では、「当該審判請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その審判請求は、権利濫用として認められない可能性がある」旨法の立場を明確に示している。
よって、請求人において、請求人適格に関する法律上の正しい主張と立証を行い、その後に法律上の不使用による取消要件に言及したい。
2.請求人の主張について
請求人は、取消理由として、本件商標はその指定役務について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても一度も使用された事実は存在しないから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定によりその指定役務について取り消されるべきである旨主張しているが、法定期間において明確な使用の事実があり、以下に争う。
3.本件商標の使用の事実
本件商標権者自らが、会長として先頭に立って「WISDOM21」を使用し、あるいは本件組織が商標権者塗木桂子から通常使用権の許諾を受けて、ウィズダム21事務局として、本件審判請求登録前3年に相当する平成12(2000)年12月11日以来、本件審判請求日である平成15年12月11日迄に、本件商標を指定役務第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、研究用教材に関する情報の提供及びその仲介、セミナーの企画・運営又は開催、図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営、映画の上映・制作又は配給、演芸の上演、演劇の演出又は上演、音楽の演奏、図書の貸与、レコード又は録音済み磁気テープの貸与、録画済み磁気テープの貸与」について、継続して使用している。
(1)乙第1号証について
本件組織は、「名古屋市中区栄1-16-16チサンマンション栄1003」に事務局を置き、女性事業家や音楽家、教育者ら約50人で組織しており、彼らが社会活動を行う場合の標章として、本件商標「WISDOM21」を継続使用している。
乙第1号証は、平成11年4月15日に、本件組織から発行された「WISDOM21」なる本件組織の登録メンバーを中心に知り合い等周辺の不特定多数人に配布された会報である。表表紙第1頁の最上段には、「図形及びWISDOM21」より構成される本件商標と同一商標が掲載使用されている。
第2頁からの「例会報告」に掲載されているように、「技芸・知識の教授」「セミナーの企画・運営又は開催」等を数多く開催している。本件組織は、法人格を有していないので、活動標章としての「WISDOM21」を法律上の権利確保する手段としては、個人が商標権者となって、その個人所有の商標権を基に、組織全体に通常使用権を許諾し、組織全体が使用することを合法化することが妥当であり、会長となる「塗木桂子」が商標権者となって、個人所有となる本件商標を「WISDOM21」である会に使用許諾しているものである。つまり、本件商標は、平成11年3月8日に、「塗木桂子」を商標登録出願人として商標登録出願の手続きがなされ、平成12年7月21日に正式に商標登録されたものである。商標登録原簿への通常使用権の設定登録は、法律上の義務ではないので、甲第2号証の商標登録原簿には、「塗木桂子」の個人所有の商標登録となっている。
乙第1号証に示すように本件組織から「WISDOM21」なる会報が毎年継続して発行され、会員及びその周辺の知り合い等不特定多数人に広く配布されていること及び本件組織は「WISDOM21」なる本件商標に対して商標権者から通常使用権の許諾を得て、商標登録出願と同時に使用を開始し、「WISDOM21」商標の使用は継続され、現在に至っている。
(2)乙第2号証について
乙第2号証の表表紙中央部には、本件商標と同一の「図形及びWISDOM21」を商標構成して掲載している。同第2頁には、「WISDOM21の理念」と題する事業目的が掲載され、「多彩な分野の専門家集団」との見だしにより「学識、映像文化、音楽、絵画、舞踊、華道、茶道、手工芸、デザイン、企業経営、人材育成」との活動項目を列挙している。そのすぐ下には、「異業種交流と広い視野を持った相互啓発」との見だしにより、「会員自身のアイデアによる会の企画・運営」との活動項目を示している。更に、その下には、「次世代に知恵の和をつなぐ」との見だしにより「各種セミナーの開催、地域文化の積極的なかかわり」との活動目的が明示されている。
これらは、本件指定役務中の「技芸・知識の教授」「セミナーの企画・運営又は開催」等に該当し、本件商標を使用しているものとして立証する。
(3)乙第3号証について
乙第1号証と同じ会報であって、第7頁の最下段の発行者コーナーに「平成14年6月30日発行」及び「ウィズダム21事務局 西加茂郡小原村千洗156 塗木桂子方」と明記し、表表紙最上段に「図形商標及びWISDOM21」との本件商標と同一商標を掲載した会報を乙第3号証として開示する。この乙第3号証の表表紙において、「WISDOM21」の組織の会長であり、本件商標の商標権者である「塗木桂子」が、会長としての挨拶文を記載しており、その中に「一月の例会は、“子育て、これだけは気をつけて”と題して開催されました。会員を講師としてこの講演会は盛況で、とても好評でした。この文化セミナーの趣旨は、・・・堤氏、津田氏、野原氏の熱の入った公演は、十分その目的を果たしたと思います。」と平成14年1月に「WISDOM21」が行ったイベントについて言及している。
この乙第3号証の第3頁最下段に「2002年1月12日開催第16回例会」の報告記事において「第3回文化セミナー〈幼児教育の意味〉」が掲載されている。その講演会のテーマは、「(ア)コミュニケーションセラピストの津田さえ子氏(イ)洋画家・児童画講師の堤晴子氏(ウ)愛知江南短期大学教授の野原由利子氏」であり、当日は中日新聞、読売新聞等の取材もあり、・・・・・・総勢58名の出席であったことが報告されている。
乙第3号証の第3頁には、名古屋市内に本社を持ちプロ野球球団「中日ドラゴンズ」の親会社として有名な中日新聞が、このセミナーを社会活動の記事として取り扱った旨が報告されている。
(4)乙第4号証について
乙第4号証は、2002年(平成14年)1月13日に有名新聞の記事として取り扱われていることを立証する。この新聞記事の中には、前述のように、「ウィズダム21は女性事業家や音楽家、教育者ら約50人で組織していること」を説明している。更に、乙第3号証の表表紙における「会長 塗木桂子」の挨拶の欄に「名古屋外国語大学助教授」と会長自身の職業が記載されているように、「外国語の先生」であり、指定役務の内、「セミナーの企画・運営又は開催」の他「語学の教授」にも該当する使用であるばかりでなく、「通訳 翻訳」の指定役務に関しても本件商標の使用を立証するものである。
(5)乙第5号証の1ないし5について
上記乙第3及び第4号証の使用証拠による証拠能力を補強するための資料であって、乙第5号証の1は、「WISDOM21」が主催する2001(平成13)年12月12日付「第16回例会のご案内」であり、2002(平成14)年1月12日開催である「第3回文化セミナー」の趣旨を明確にし、開催場所を「名古屋市中区栄3-29-1 クレストンホテル」と明確に特定している。このご案内に対する連絡先として、本件商標権者の名前も明示している。乙第5号証の2は、本件セミナーの式次第であり、乙第5号証の3ないし5は、セミナー参加者全員に配布された夫々の講師の講義要綱である。
(6)乙第6号証について
乙第6号証は、「WISDOM21」が「ファッションとコンサートの宴」を特別企画した「ピアノとモードの宴/うたげ」と題する演奏会又は音楽会のパンフレットであって、開催日は2003(平成15)年1月13日、開催場所は名古屋クレストンホテルである。チケット販売対象者は、「会員及び一般」と表示されているように「WISDOM21」のメンバーを中心に家族知友を誘い、更に、情報を入手した一般の者をも対象とするものであって、指定役務中の「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」に該当する登録商標の使用である。
4.結論
本件商標権者である塗木桂子は、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、研究用教材に関する情報の提供及びその仲介、セミナーの企画・運営又は開催、図書及び記録の供覧、美術品の展示、映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営、映画の上映・制作又は配給、演芸の上演、演劇の演出又は上演、音楽の演奏、図書の貸与、レコード又は録音済み磁気テープの貸与、録画済み磁気テープの貸与」について、乙第1及び第3号証に示す「WISDOM21」の会報並びに多数の指定役務に対して、本件商標を継続的に使用していることを示している。

第4.当審の判断
1.請求人適格について
被請求人は、本件審判請求に関する請求人適格について争っているので、まず、この点について検討する。
商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録取消の審判は、何人も請求することができることは同条項の規定から明らかである。もっとも、何人も請求することができるとしても、当該審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としているような場合にまで請求人適格を認めることが妥当でないことは、被請求人の主張のとおりである。
しかしながら、本件審判の請求は、専ら被請求人を害することを目的にしているものとは認められないばかりでなく、被請求人も単に主張するのみでその理由及び根拠を何ら具体的に述べるところがない。
してみれば、請求人は、本件審判請求について請求人適格を有するものといえる。
なお、被請求人は、本件審判に関する請求人適格については請求人が主張及び立証すべきものである如き主張をしているが、商標法第50条第1項において「何人も」と規定されている以上、請求人適格についての立証責任は被請求人が負担すべきものと解される。
2.本件商標の使用について
つぎに、商標法第50条第2項でいう本件審判請求の予告登録日(平成16年1月20日)前3年(同13年1月20日)以内に、商標権者等が請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標を使用していたか否かについて検討する。
(1)被請求人の提出に係る各乙号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)本件組織は、女性事業家や音楽家、教育者等の約50人で組織された団体であって(乙第3及び第4号証)、商標権者である塗木桂子を会長とし、事務局を置き、会報を発行している(乙第1及び第3号証)。
(イ)本件組織の会報及びパンフレットの表紙には、表題と認められる部分に、四角形中に「W」を図案化した如き図形が配され、その右横に「WISDOM21」及び「ウイズダム」の文字が二段書きに表されている。該図形及び文字からなる標章は、本件商標と社会通念上同一といい得るものである。 なお、同会報のVOL.1は平成11年4月15日に発行され、同VOL.4は平成14年6月30日に発行されたものであるが、乙第2号証のパンフレットの発行日は明らかでない。
(ウ)本件組織は、その活動理念として「多彩な分野の専門家集団」、「異業種交流と広い視野を持った相互啓発」及び「次世代に知恵の和をつなぐ」の下に、それぞれの活動項目たる「学識、映像文化、音楽、絵画、舞踊、華道、茶道、手工芸、デザイン、企業経営・人材育成」、「会員自身のアイディアによる会の企画・運営」及び「各種セミナーの開催、地域文化の積極的なかかわり」を掲げ、理事会、広報委員会、文化事業委員会等の委員会を設けて活動している(乙第2号証)。
(エ)本件組織は、第16回例会として平成14年1月12日に第三回文化セミナーを有料で開催し、同セミナーには、会員を上回る外部一般人が参加した(乙第3号証及び乙第5号証の1ないし5)。同セミナーの案内書及び式次第には頭書部分に「WISDOM21」の文字が記載されている(乙第5号証の1及び2)。同セミナーについては新聞にも報道された(乙第4号証)。
(オ)本件組織の特別企画として、2003(平成15)年1月13日に「ファッションとコンサートの宴」が会員及び一般を対象に有料で開催された(乙第6号証)。
(2)以上の事実を総合勘案すれば、本件組織は、会長たる塗木桂子を代表者とする法人格なき社団であって、「ウィズダム21」(WISDOM21)の名称の下に音楽会やセミナーの企画・開催等、その活動目的に従い、広く種々の活動を行っているものであることが認められる。
そして、本件組織は、その活動の実体及び実績を広く知らしめるために、本件商標と社会通念上同一といい得る標章を付した会報及びパンフレットを作成、発行しているところ、これらは、会員だけでなく、一般にも配布されているものとみても不自然ではないこと、その活動の一環として行われた本件セミナーは、有料で開催され、会員のみならず外部一般からも参加者があったこと、本件セミナーについて新聞報道されたことなどからすると、本件セミナーの企画・開催は、他人のために行う労務又は便益であって、独立して取引の目的となる、商標法上の役務の提供というべきであり、かつ、本件組織が本件商標を用いて各種活動を行っていることが一般に認識されていたというべきである。
また、上記会報及びパンフレットは、本件組織の活動を宣伝するための一種の広告とも位置づけられるというべきであるから、上記会報及びパンフレットに付された商標は本件組織の提供に係る役務に関する広告に使用するものといって差し支えない。
上記パンフレットに日付がなく、かつ、乙第1号証の会報が本件審判請求の登録前3年の期間外に発行されたものであるとしても、乙第3号証の会報は、本件審判請求の登録前3年の期間内に発行されたことが明らかであり、同会報には本件セミナーについて記述されている。加えて、該会報が「VOL.4」とされていることからして、本件組織の会報は継続して発行されていたものと推認されるし、上記パンフレットも随時発行されていたものとみても不自然ではない。
さらに、本件組織は、本件商標の商標権者である塗木桂子から本件商標に係る通常使用権を許諾されているものと認められる。
そうすると、本件商標は、本件審判請求の登録前3年の期間内に、請求に係る指定役務中「セミナーの企画・運営又は開催」について通常使用権者によって使用されていたというべきである。
3.請求人の主張について
(1)請求人は、本件組織は法人格を有せず商標の使用主体になり得ないから、本件組織による使用は商標法第50条第2項の使用に該当しない旨主張するが、同条項にいう通常使用権者が自然人又は法人でなければならないとする根拠に乏しいばかりでなく、法人格なき社団であっても登録異議の申立てをすることができ、登録無効の審判を請求をすることができること(商標法第77条において準用する特許法第6条参照)等からすれば、本件組織は通常使用権者となり得るものと解される。
(2)請求人は、本件セミナーは商標法上の役務とはいえず、業として行うものでない旨主張するが、上記2.(2)のとおり、本件セミナーは、他人のために行う労務又は便益であって独立して取引の対象になるものというべきであり、また、本件組織がその会員に限定せずに各種活動の一環として行うものであって、自社内セミナーやサークル内でのセミナー等とは異なるものであるから、これについて本件商標を使用することは、業としての商標の使用というべきである。
(3)請求人は、本件組織の会報は商標法第2条第3項第3ないし第7号に掲げる役務の使用の対象物とはなり得ない旨主張するが、上記2.(2)のとおり、該会報は一種の広告とも位置づけられるというべきであって、該会報に付された商標は本件組織の提供に係る役務に関する広告に使用するものといえる。
(4)請求人は、本件セミナーの企画・運営又は開催について本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていない旨主張するが、上記のとおり、本件組織が発行する乙第3号証に示した会報には本件商標と社会通念上同一といい得る商標が使用されており、その会報は本件セミナーについて記述された一種の広告といえるものであるから、その会報に付された商標は本件セミナーについて使用するものとみて差し支えないというべきである。
(5)以上のとおり、請求人の主張はいずれも採用することができない。
4.まとめ
以上によれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年の期間内に、請求に係る指定役務中「セミナーの企画・運営又は開催」について通常使用権者によって使用されていたというべきであるから、商標法第50条第1項の規定によりその登録を取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標 (色彩については原本参照)


審理終結日 2004-11-18 
結審通知日 2004-11-22 
審決日 2004-12-06 
出願番号 商願平11-20736 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z41)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 小林 薫
岩崎 良子
登録日 2000-07-21 
登録番号 商標登録第4401672号(T4401672) 
商標の称呼 ウイズダムニジューイチ、ウイズダムニイチ、ウイズダム 
代理人 松波 祥文 

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