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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1111315 
審判番号 無効2003-35513 
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-12-10 
確定日 2004-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4677834号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4677834号の指定商品中、第25類「靴類(靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具を除く)」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標登録の無効の審判
1 本件商標
本件商標登録の無効の審判に係る、登録第4677834号商標(以下「本件商標」という。)は、「SARAH」の欧文字(標準文字による)よりなり、平成14年4月23日に登録出願され、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,乗馬靴」を指定商品として、平成15年5月9日登録査定、同年5月30日に設定登録されたものである。
2 本件商標登録の無効の審判
本件商標登録の無効の審判は、本件商標の指定商品中、第25類の「靴類(靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具を除く)」については、商標法4条1項10号に違反して登録されたものであるとして、同法46条により本件商標の登録を無効にすることを請求するものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第26号証(枝番を含む)を提出した。
本件商標は、商標法4条1項10号に違反して登録されたものであり、同法46条1項1号の規定により、無効とすべきものである。
1 請求の理由
(1)本件商標の構成は、上記の通りであるところ、本件商標の出願時点において、本件商標の指定商品中「靴類(靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具を除く)」を取扱う靴業界において、既に「Sarah」の欧文字からなる商標が請求人業務にかかる「婦人靴」を表示するものとして広く認識されている。以下に、その事実の証拠を提示し説明する。
請求人は、昭和27年5月19日に設立された、皮革婦人靴の製造販売を目的とする会社であり、全国の百貨店と専門店を主な販売先として営業し、平成9年に210億円、平成12年には230億円の販売実績を残している(甲第3号証ないし同第5号証の4)。
請求人の婦人靴のブランドとしては、「et vous」「UNTITLED」などの有名ブランドと、「ing」「Pitti」「ism」などの自社オリジナルブランドとを合わせ現在20種類以上のものを有し、製造販売してきている(甲第5号証の1ないし同第8号証)。
商標「Sarah」は、請求人が昭和58年から市場に展開した自社ブランドの一つであり、現在に至るまで20年にわたり継続使用されているものである。
なお、本件商標「SARAH」と請求人商標「Sarah」とは、ともに「サラ」の称呼を生じ、綴りも大小文字の差異にすぎないため、両商標が類似することは明らかである。
(2)甲第9号証、同第10号証は、平成13年、平成14年各年の商品「Sarah」の売上データ写しである。これによると、商品「Sarah」は、全国の百貨店と靴専門店、自社が出資する靴販売店に対し、平成13年に227,379足、1,575,277,417円、平成14年に247,971足、1,678,808,513円販売されたことがわかる。
甲第5号証の1ないし4は、それぞれ平成8年、平成9年、平成10年、平成13年作成の請求人の経歴書であるが、これらの「商標」の欄には、請求人が販売している婦人靴の商標として「Sarah」が記載されている。
甲第7号証は、平成3年新卒者募集用の請求人の会社案内であるが、そこには、請求人の販売する婦人靴の商標として「SARAH」が記されており、また甲第8号証は、請求人が平成9年4月に作成した平成10年新卒者募集用の会社案内であるが、その第6頁から第7頁には、請求人のショールームに商標「Sarah」を使用した婦人靴が展示されていること、及び「Sarah」が請求人の人気オリジナルブランドであることが記されている。
甲第11号証は、商品「Sarah」についての、平成9年8月19日付伝票・平成9年8月21日付伝票、甲第12号証は、同平成10年8月6日付伝票・平成10年8月31日付伝票・平成10年8月30日付伝票、甲第13号証は、同平成11年8月27日付伝票・平成11年8月3日付伝票・平成11年9月4日付伝票、甲第14号証は、同平成12年9月2日付伝票・平成12年8月11日付伝票、甲第15号証は、同平成13年8月13日付伝票・平成13年9月17日付伝票・平成13年9月26日付伝票、甲第16号証は、同平成14年8月7日付伝票・平成14年9月19日付伝票・平成14年8月28日付伝票、甲第17号証は、同平成15年8月11日付伝票・平成15年8月25日付伝票・平成15年8月3日付伝票であり、伝票中、品名コードのSRが商品「Sarah」の商品記号であり、これらによれば少なくとも、商品「Sarah」の平成9年から平成15年の間の継続した販売の事実が確認できる。また、伝票中の商品コードは後記甲18号証の1ないし8のデザイン一覧表と照合して商品の種類を確認することが可能である。
甲第18号証の1ないし8は、それぞれ商品「Sarah」の平成8年春夏・秋冬、平成9年春夏・夏・秋冬、平成10年春夏・秋・秋冬、平成11年春夏・夏・秋冬、平成12年春夏・秋冬、平成13年の春夏・秋冬、平成14年の春夏・秋冬、平成15年の春夏・夏・秋冬の各コレクションのデザイン一覧表である。これによれば、本件商標が出願されたのと同時期の平成14年の春夏に62種、秋冬に52種のデザインの異なる「Sarah」を展開していたことがわかり、また、平成8年の春夏に30種、秋冬に25種、平成12年の春夏に33種、秋冬に36種、平成13年の春夏に31種、秋冬に46種、平成15年の春夏に35種、夏に20種、秋冬に50種のデザインの異なる「Sarah」を展開しており、逐年変わらず多種であることがわかる。
甲第19号証は請求人が毎年開催している「婦人靴」の新作発表会のうち、平成9年夏コレクションへの招待状であり、甲第20号証は平成9年秋冬コレクションへの招待状であるが、ここにも、展示されている婦人靴のブランドとして商標「Sarah」が記されている。
甲第21号証の1ないし3は、それぞれ、商品「Sarah」の平成13年の春夏コレクション・夏コレクション・秋冬コレクション、平成14年の春夏コレクション・秋冬コレクション、平成15年の春夏コレクション・夏コレクション・秋冬コレクションの写真(写し)である。これらにみられる「Sarah」商品群は、トレンドを敏感に反映したオリジナル・センスの光るものばかりであり、さまざまなテイストを高品質にアレンジしてデザインされており、これらが高く安定した販売実績に結びついている。
さらに、前掲の販売の事実に加えて、請求人は、商品「Sarah」を女性向け雑誌に掲載し、広告活動を行っている(甲第22号証ないし同第23号証)。
以上の証拠から、請求人商品「Sarah」は、数多くのデザインで展開しているものであること、その販売額、販売足数は大きな実績を残していること、継続的に販売してきたものであることは、明らかであり、本件商標の出願時においては、「Sarah」なる商標は請求人業務にかかる「婦人靴」を表示する商標として既に周知に至っていたといえるものである。
(3)そして、その裏付けとして、全国百貨店の証明書(甲第24号証の1ないし79)、全国靴専門店の証明書(甲第25号証の1ないし127)、同業者連合会・組合・連盟の証明書(甲第26号証の1ないし5)を提出する。
これらをみれば、請求人商品「Sarah」は古くから存しており、少なくとも当業界においては周知性を獲得していることはより明らかである。
以上のように、本件商標は、商標法4条1項10号に該当し、その登録は拒否されるものである。
よって、本件商標は、商標法46条1項1号により、無効にすべきものであるから、請求の趣旨通りの審決を求めるものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。と答弁しその理由を次のように述べている。
請求人は、本件商標の出願時点(平成14年4月23日)において、本件指定商品中「靴類(靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具を除く)」を取り扱う靴業界において、既に「Sarah」の欧文字からなる商標が請求人の業務に係る「婦人靴」を表示するものとして広く認識されていると主張する。
しかしながら、請求人が自己の業務に係る「婦人靴」を表示するものとして広く認識されていると主張する商標「Sarah」(以下「Sarah商標」という。)は、提出された甲第5号証(枝番を含む)、同第8号証、同第18号証(枝番を含む)、同第20号証、同第22号証及び同第23号証を総合してみても、「Sarah」の欧文字が単独で使用されているのは極めて少なく、僅かに甲第7号証において「Sarah商標」が使用されているが、これとても他の商標と共に使用されているところから、このうちの「Sarah商標」のみが格別、需要者間に広く認識されていたものとは到底認めることが出来ないところである。
甲第21号証(枝番を含む)は、撮影者、撮影年月日、撮影場所も不明であり、証拠として成立しない。
甲第24号証ないし同第26号証(いずれも枝番を含む)は、一定の書式の下に依頼人が依頼した事項を単に証明者が「上記について、事実に相違ない。」旨を証明しているに過ぎず、証明者がいかなる権限により、いかなる資料に基づいて証明したものか明らかでない。
その他、「Sarah商標」が需要者間において広く認識されていたことを認めるに足る証拠は見出すことができない。
また、仮に、請求人が実際に使用していると認められる商標のうち、上段に「Sarah」の文字を大書し、下段に「DAZZLING」の文字を小さく表してなる商標(以下「請求人使用商標」という。)が需要者間において広く認識されていたとしても、該商標からは「サラダズリング」の称呼が生じるのに対し、「Sarah商標」からは該称呼は生じないばかりでなく、「Sarah商標」とはその外観を著しく異にするものであるから、「Sarah商標」と、「請求人使用商標」とが同一の商標といえないことは明らかである。
したがって、「Sarah商標」が本件商標の登録査定時において、請求人の取り扱いに係る婦人靴を表示するためのものとして、需要者間に広く認識されていたものということが出来ない。
よって、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めるものである。

第4 当審の判断
1 本件審判請求人(以下、「請求人」という。)の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が確認できる。
そして、以下において引用する「請求人使用商標」の態様は、別掲に掲げるものである。
(1)請求人は、昭和27年(1952年)に会社(有限会社オギツ商店)として設立され(1971年に社名を「株式会社オギツ」に変更)、以来、今日まで婦人靴の製造・販売を行ってきたことが認められ、東京本店のほか、大阪、札幌、福岡、名古屋の各大都市に支店を有する、婦人靴の専門卸商社であること(甲第5号証の4をはじめとする甲第3号証ないし同第8号証(枝番を含む)及び請求の理由の全趣旨による。)。
(2)平成8年に発行されたと推認し得る請求人会社の経歴書(甲第5号証の1)の1頁、平成9年に発行されたと推認し得る請求人会社の経歴書(甲第5号証の2)の1頁、平成10年に発行されたと推認し得る請求人会社の経歴書(甲第5号証の3)の1頁、平成13年に発行されたと推認し得る請求人会社の経歴書(甲第5号証の4)の1頁には、それぞれ「商標」として12ないし15の商標が表示されているところ、これらの請求人が使用してきた商標中には、「請求人使用商標」が含まれていること。
(3)平成13年発行のものと推認できる(2頁の従業員欄に「平成12年12月現在とある。)請求人の会社経歴書の3頁には、「販売実績」として、「平成9年度 21,000,000千円」、「平成10年度 23,000,000千円」、「平成11年度 21,000,000千円」、「平成12年度 23,000,000千円」、「平成13年度 25,000,000千円(目標)」との記載があること(甲第5号証の4)。
(4)平成3年発行のものと推認できる(最終葉右上に「初任給平成2年大卒実績」とある。)請求人の会社案内によれば、白抜きにより表示された「SARAH」の文字が、他の欧文字からなる標章(図形と組み合わされているものも含む。)とともに表示されていること(甲第7号証)。ただし、これらの各標章が、それぞれどのような商品に関わりがあるものなのかが把握できる説明は、同号証には記されていない。
(5)平成9年発行のものと推認できる(第1葉目左側下部に「97.4DJ1000」とある。)請求人の入社案内の7頁に、同人の取り扱いにかかる商品「婦人靴」に使用するブランドの一として、「請求人使用商標」が表示されていること(甲第8号証)。
(6)甲第9号証は、コンピュータ処理によりデータ化されたものを印字したと推認できる書証であるところ、1葉目である右上に「PAGE 16」と印字された頁には、「ヒャッカテン ブモン・・・サラ」、「ブモンベツ ソンエキ ケイサンショ」、「DATE01-12-31」、「ツキケイ」、「ルイケイ」、「TOKYO」、「OSAKA」、「FUKUOKA」、「TOTAL」、「ソクスウ」、「キンガク」、「ウリアゲ」、「ソウウリ」、「ヘンピン」、「ネビキ」、「ジュン」等の各文字と各種数字が印字されており、同じく2葉目(右上に「PAGE 46」と印字された頁)の上段には「センモンテン ブモン・・・サラ」との印字が認められ(他の印字項目・様式は前葉のものと同様である。)、また、3葉目(右上に「PAGE 81」と印字された頁)の上段には「ショップ ブモン・・・サラ」との印字が認められること(他の印字項目・様式は前葉のものと同様である。)
そして、各三葉の、「ルイケイ」との印字がある下段の、「ソクスウ」の欄と「ウリアゲ」「ジュン」の欄の交差欄の数字を合計すると「227,379」となり、「キンガク」の欄と「ウリアゲ」「ジュン」の欄の交差欄の数字について、同号証の各三葉部分の数字を合計すると「1,575,277,417」となること。
(7)甲第10号証は、コンピュータ処理によりデータ化されたものを印字したと推認できる書証であるところ、1葉目である右上に「PAGE 16」と印字された頁には、「ヒャッカテン ブモン・・・サラ」、「ブモンベツ ソンエキ ケイサンショ」、「DATE01-12-31」、「ツキケイ」、「ルイケイ」、「TOKYO」、「OSAKA」、「FUKUOKA」、「TOTAL」、「ソクスウ」、「キンガク」、「ウリアゲ」、「ソウウリ」、「ヘンピン」、「ネビキ」、「ジュン」等の各文字と各種数字が印字されており、同じく2葉目(右上に「PAGE 47」と印字された頁)の上段には「センモンテン ブモン・・・サラ」との印字が認められ(他の印字項目・様式は前葉のものと同様である。)、また、3葉目(右上に「PAGE 81」と印字された頁)の上段には「ショップ ブモン・・・サラ」との印字が認められること(他の印字項目・様式は前葉のものと同様である。)
そして、各三葉の、「ルイケイ」との印字がある下段の、「ソクスウ」の欄と「ウリアゲ」「ジュン」の欄の交差欄の数字を合計すると「247,971」となり、「キンガク」の欄と「ウリアゲ」「ジュン」の欄の交差欄の数字について、同号証の各三葉部分の数字を合計すると「1,678,808,513」となること。
(8)甲第8号証ないし同第17号証と甲第18号証(枝番を含む)との関係
(ア)甲第11号証の上段の納品伝票(委託)(97年8月19日付のもの)の品名欄「2」及び、中段の納品伝票(買取)(97年8月19日付のもの)の品名欄「1」には「婦人靴 SR 8465 LBR」との文字が表示され、この商品の売価単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の2の7葉目には、上段に「ブランド」の文字とともに「請求人使用商標」が表示され、デザイン一覧表として、「’97」との表示があり、個別欄に、靴の図形と「NO.8465 ¥9,800」との表示がされた欄があること。
また、甲第11号証の上段の納品伝票(委託)の品名欄「3」及び、中段の納品伝票(買取)の品名欄「2」には「婦人靴 SR 8468 B」との文字が表示され、この商品の売価単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の2の7葉目には、個別欄に、靴の図形と「NO.8468 ¥9,800」との表示がされた欄があること。
また、甲第11号証の上段の納品伝票(委託)の品名欄「4」及び、中段の納品伝票(買取)の品名欄「3」には「婦人靴 SR 8712 BG」との文字が表示され、この商品の売価単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の2の8葉目には、個別欄に、靴の図形と「NO.8712 ¥9,800」との表示がされた欄があること。
(イ)甲第12号証の上段の納品伝票(買取)(98年8月6日付のもの)の品名欄「1」及び「2」には「婦人靴 SR 8465 B」「婦人靴 SR 8465 DBR」との各文字が表示され、この商品の売価単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の3の4葉目には、上段に「BLAND」の文字とともに「請求人使用商標」が表示され、「DESIGN LIST」、「’98/5/7」との表示があり、個別欄に、靴の図形と「NO.8465 ¥9,800」との表示がされた欄があること。
また、甲第12号証の上段の納品伝票(買取)の品名欄「4」には「婦人靴 SR 8735 B」との文字が表示され、この商品の売価単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の3の5葉目には、個別欄に、靴の図形と「NO.8735 ¥9,800」との表示がされた欄があること。
(ウ)甲第13号証の上段の納品伝票(買取)(99年8月27日付のもの)の品名欄「1」には「婦人靴 SR 8111 B」との文字が表示され、この商品の売価単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の4の7葉目には、上段に「BLAND」の文字とともに「請求人使用商標」が表示され、「DESIGN LIST」、「99’」「11/5/7」との表示があり、個別欄に、靴の図形と「NO.8111 ¥9800」との表示がされた欄があること。
また、甲第13号証の下段の帳票(納品控)(99年9月4日付のもの)の品番欄には、「SR 8042」、「SR 8043」との各文字が表示され、これら商品の売価の単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の4の7葉目には、個別欄に、靴の図形と「NO.8042 ¥9800」、「NO.8043 ¥9800」との表示がされた欄があること。
(エ)甲第14号証の中段の納品伝票(買取)(日付00年8月11日付のもの)の品名欄「1」には「婦人靴 SR 8618 Bスノー」との文字が表示され、この商品の売価単価欄には「10800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の5の7葉目には、上段に「BLAND」の文字とともに「請求人使用商標」が表示され、「DESIGN LIST」、「12/4/13」との表示があり、個別欄に、靴の図形と「NO.8618 ¥9800」との表示がされた欄があること。なお、この両号証における売価単価欄の金額と個別欄の金額は一致しない。
(オ)甲第15号証の上段の仕入伝票(タイプ用II型)(発注日01年8月13日とのもの)の商品コード欄の一段目には「SR-1045-B」との文字が表示され、この商品の売単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の6の2葉目には、上段に「BLAND」の文字とともに「請求人使用商標」が表示され、「DESIGN LIST」、「12/10/12」との表示があり、個別欄に、靴の図形と「NO.1045 ¥9800」との表示がされた欄があること(8葉目のものは「2001」「01/4/18」との日付があり、個別欄には「NO.1045」との表示がある。)。
また、甲第15号証の中段の納品伝票(委託)(01年9月17日付のもの)の品名欄には、「婦人靴 SR 9570 B」、「婦人靴 SR 9571 DBR」、「婦人靴 SR 1045 B」、「婦人靴 SR 8680 DBR」、「婦人靴 SR 8733 B」との各文字が表示され、これら商品の売価単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の6の2葉目には、個別欄に、靴の図形と「NO.8733 ¥9800」、「NO.8680 ¥9800」、「NO.1045 ¥9800」との各文字が表示され、甲第18号証の6の6葉目には、「2001」「01/4/18」との日付があり、個別欄に、靴の図形と「NO.9570」、「NO.9571」との各文字が表示された欄があること。なお、この両号証における売価単価欄の金額と個別欄の金額は一致することが確認できないものがある。
(カ)甲第17号証の上段の仕入伝票(タイプ用II型)(発注日03年8月11日とのもの)の商品コード欄の五段目には「SR-9410-B」との文字が表示され、この商品の売単価欄には「9800」との数字が表示されているところ、甲第18号証の8の11葉目には、上段に「BLAND」の文字とともに「請求人使用商標」が表示され、「DESIGN LIST」、「03/5/1」との表示があり、個別欄に、靴の図形と「NO.9410」との表示がされた欄があること。
また、甲第17号証の下段の納品伝票(起票控A)(03年9月3日付のもの)の商品名欄には、「SR 8422 Bスノー」、「SR 8424 Bスノー」等の各文字が表示され、これら商品の売価単価欄には「18800」、「17800」との各数字が表示されているところ、甲第18号証の8の7葉目には、上段に「BLAND」の文字とともに、手書きにより「Sarah」の文字が表示され、「DESIGN LIST」、「03/4/18」との表示があり、個別欄に、靴の図形と「NO.8422 ¥17800」、「NO.8424 ¥16800」との表示がされた欄があること。なお、この両号証における売価単価欄の金額と個別欄の金額は一致することが確認できない。
(9)請求人が開催した1997年夏、秋冬のコレクションの案内状において表示された商標中に「請求人使用商標」が表示されていること(甲第19号証及び同第20号証)。
(10)全国の百貨店の担当者により、「Sarah」の文字からなる商標が、昭和58年より平成15年6月頃に至るまで継続して、請求人の製造にかかる商品「婦人靴」に使用されていることの証明が76件なされていること(甲第24号証(枝番を含む)。但し、証明者の勤務先が明らかでない甲第24号証の5、同8、同9を除く)。
(11)全国の靴店あるいは靴の販売コーナーを有している店舗の代表者ないしは担当者により、「Sarah」の文字からなる商標が、昭和58年より平成15年6月頃に至るまで継続して、請求人の製造にかかる商品「婦人靴」に使用されていることの証明が126件なされていること(甲第25号証(枝番を含む))。
(12)「東京都靴卸協同組合」ほか4の「靴」に係わる同業者組合により、「Sarah」の文字からなる商標が、昭和58年より平成15年6月頃に至るまで継続して、請求人の製造にかかる商品「婦人靴」に使用されていることの証明がなされていること(甲第26号証(枝番を含む))。
2 「請求人使用商標」を使用した婦人靴の取引量及び取引額について
(1)前記「1」の(2)、(5)及び(9)で認定した事実によれば、「請求人使用商標」は、遅くても平成8年から請求人により使用されているといえ、これが現在も継続しているということができるものである。
(2)前記「1」の(8)における事実をもとに検討する。
(ア)甲第11号証ないし同第17号証に示された納品書ほかの会計帳票類の写しは、請求人の取り扱いに係る商品「婦人靴」に関するものと認められ、甲第11号証は1997年(平成9年)の取引に係るもの、甲第12号証は1998年(平成10年)の取引に係るもの、甲第13号証は1999年(平成11年)の取引に係るもの、甲第14号証は2000年(平成12年)の取引に係るもの、甲第15号証は2001年(平成13年)の取引に係るもの、甲第16号証は2002年(平成14年)の取引に係るもの、甲第17号証は2003年(平成15年)の取引に係るものであると、それぞれ認められる。
(イ)甲第18号証(枝番を含む)は、「請求人使用商標」を使用した商品「婦人靴」のデザイン一覧表(DESIGN LIST)(これらは、その記載、表示事項に照らして「商品見本帳」的なものと認められる。)の写しといえ、甲第18号証の各枝番の各頁右上の「95/9/26」などの表示に照らせば、それぞれ、甲第18号証の1は1995(平成7)年のもの、甲第18号証の2は1997(平成9)年のもの、甲第18号証の3は1998(平成10)年のもの(但し第1葉目は1997(平成9)年のもの)、甲第18号証の4は1999(平成11)年のもの、甲第18号証の5は2000(平成12)年のもの、甲第18号証の6は2001(平成13)年のもの、甲第18号証の7は2002(平成14)年のもの、甲第18号証の8は2003(平成15)年のもの(但し第1葉目ないし第4葉目は2002(平成14)年のもの)とみても差し支えないといえるものである。
(ウ)そして、甲第11号証の会計帳票は甲第18の号証の2のデザイン一覧表記載のものと、甲第12号証の会計帳票は甲第18の号証の3のデザイン一覧表記載のものと、甲第13号証の会計帳票は甲第18の号証の4のデザイン一覧表記載のものと、甲第14号証の会計帳票は甲第18の号証の5のデザイン一覧表記載のものと、甲第15号証の会計帳票は甲第18の号証の6のデザイン一覧表記載のものと、甲第16号証の会計帳票は甲第18の号証の7のデザイン一覧表記載のものと、甲第17号証の会計帳票は甲第18の号証の8のデザイン一覧表記載のものとそれぞれの年が、基本的に対応しているものである。
(エ)前記「1」の(8)の(ア)で認定した、甲第11号証の納品伝票(委託)(97年8月19日付のもの)の品名欄「1」の「婦人靴 SR 8465 LBR」との文字中における「8465」の数字及びこの商品の売価単価は、甲第18号証の2の7葉目の個別欄の「NO.8465 ¥9,800」における「8465」の数字及び金額と一致することから、上記納品伝票における「婦人靴 SR 8465 LBR」との商品は、上記個別欄の商品と対応する関係にあるというのが相当である。
そして、同様に、このほかの前記「1」の(8)の(ア)ないし(カ)における上記同様の各数字の対応関係に照らせば、これらにおける各数字は商品の品番を表示するためのものであって、各会計帳票に記載された各商品は品番の数字が対応関係にあるデザイン帳の個別欄の商品のことを指すものというのが相当である。
(オ)そうとすると、甲第11号証ないし同第18号証の会計帳票は、全体として、婦人靴のうち「請求人使用商標」を使用したものに関する帳票であるとみて差し支えないというべきである。そして、本件会計帳票における「SR」の欧文字は、「請求人使用商標」を略記したものとみるのが自然である。
(カ)以上によれば、平成9年から平成15年にかけて、「請求人使用商標」を使用した婦人靴の取引が、継続して、相当量なされたということができるものである。
(3)前記「1」の(6)及び(7)で認定した事実についてみるに、甲第9号証には、「ヒャッカテン ブモン サラ」等の文字が印字されていることが認められるが、そのうちの「サラ」の文字は、請求人の提出に係る甲第5号証(枝番を含む。)、同第7号証、同第8号証、同第18号証(枝番を含む。)ないし同第20号証、同第24号証(枝番を含む。)ないし同第26号証(枝番を含む。)に照らし、請求人の取り扱いに係る商品「婦人靴」に使用する「Sarah(SARAH)」の文字からなる商標ないしは「請求人使用商標」(以下、これらの商標を「Sarah商標等」という。)を指すものと推認できるものである。
すなわち、上記の甲各号証には「サラ」と表記されるのが自然とすべき商標は、「Sarah商標等」以外には認められず、これを左右する他の証拠、事情もない。
そうとすれば、甲第9号証におけるこのほかの各文字とその印字の態様をみるに、これは、2001(平成13)年における、百貨店、専門店、請求人関連販売部門(以下「百貨店等」という。)における、「Sarah商標等」を使用した、商品「婦人靴」の損益計算を印字したものというのが相当である。
そして、前記「1」の(6)で、甲第9号証に基づき算出した「227,379」、「1,575,277,417」との各数字は、2001(平成13)年における、百貨店等における、「Sarah商標等」を使用した、商品「婦人靴」の販売数と、売上総額とみても差し支えないといい得るものである。
同様に、甲第10号証における各文字とその印字の態様をみるに、これは、2002(平成14)年の百貨店等における、「Sarah商標等」を使用した、商品「婦人靴」の損益計算を印字したものというのが相当である。
そして、前記「1」の(7)で、甲第10号証に基づき算出した「247,917」、「1,678,808,513」との各数字は、2002(平成14)年の百貨店等における、「Sarah商標等」を使用した、商品「婦人靴」の販売数と、売上総額とみても差し支えないといい得るものである(但し、これによっては、「Sarah(SARAH)」の文字からなる商標と「請求人使用商標」の使用割合は明らかではない。)。
(4)そうとすれば、甲号証のなかには、会計帳票における売価単価とデザイン一覧表の個別欄における金額が一致しないものや、デザイン一覧表の個別欄に金額が表示されていないなど、証明力に乏しい部分が一部にあるとしても、提出された甲各号証及び請求の理由の趣旨を総合すれば、請求人は、2001年(平成13年)及び2002年(平成14年)において、全国の百貨店等において、上記(3)で認定した内容で、婦人靴を取り扱ったということができるものである。
(5)してみれば、請求人は、平成9年ないし同15年にかけて、上記(2)の(カ)で認定したように、「請求人使用商標」を使用した商品「婦人靴」について相当量の取引を継続して行っており、かつ、上記(3)で認定したように、平成13年には約23万足(約15.7億円)、同14年には約25万足(約16.8億円)の販売を行っていたといえることから、請求人は、「Sarah商標等」を使用して、平成9年ないし同15年にかけて、婦人靴を20万ないし25万足(売上額で約15億円ないし約17億円)の販売をし、これと同程度の状態が現在も継続しているとみて差し支えないものである。
3 商標「Sarah」を使用した婦人靴の取り扱いについて
(1)甲各号証及び請求の理由の全趣旨によれば、甲第7号証に表示されている「SARAH」の文字からなる商標は、平成3年当時、商品「婦人靴」に使用されていたと推認できるところ、この商標が現在まで継続して使用されていると認めるに十分な証拠は認められない。
すなわち、前記「2」で認定した甲各号証では、「請求人使用商標」の使用が認められるものの、「Sarah」あるいは「SARAH」の文字のみからなる態様の商標が継続して使用されていた事実は認められない。
また、撮影日、撮影者、撮影状況などが明らかでないため、信用性に欠け採用することができない甲第21号証(枝番を含む)にも、靴底に商標が表示されているものがいくつか認められるが、これらには、「Sarah」の文字の下に、文字構成は定ではないが小さな欧文字が表示されていることが認められるところである。
(2)したがって、「Sarah」の文字からなる商標が、単独の態様で、商品「婦人靴」に継続して使用されていると認められる事実は、請求人が提出した実際の使用に係る証左からは認められないから、「Sarah」の商標が商品「婦人靴」に使用され、広く認識されていたと認めることはできない。
(3)そうとすれば、甲第9号証及び同第10号証における「サラ」との印字は、主として「請求人使用商標」のことを指して略記したものとみるべきであり、前記してきた「Sarah商標等」には、「Sarah」あるいは「SARAH」の文字のみからなる態様の商標が含まれるとしても、極めて僅かであり、「Sarah商標等」は、実質的には「請求人使用商標」であるとみられるものである。
4 「請求人使用商標」の周知性について
(1)「請求人使用商標」は、前記「2」の(5)で認定したように、平成9年ないし同15年にかけて、請求人の取り扱いに係る商品「婦人靴」について20万ないし25万足(売上額で約15億円ないし約17億円)の取引をし、これが本件商標の登録査定時である平成15年5月9日においても継続していたといえるところである。
(2)甲第24号証ないし同第26号証(いずれも枝番を含む)について
甲第24号証ないし同第26号証(いずれも枝番を含む)の証明書についてみるに、これらは、所定の文字があらかじめ記入された用紙に、証明者が「上記について、事実に相違ないことを証明します。」とするものであり、証明者がいかなる事実に基づいて「Sarah」の文字からなる商標の周知性を証明したのか明らかでないから、この各証明書をもって、該商標の周知性を推し量る証明力に欠けるものである。
しかしながら、同一形式による書面とはいえ、前記「1」の(10)ないし(12)で認定したように、この証明書は、全国の百貨店の76の担当者、全国の靴店あるいは靴の販売コーナーを有している店舗の126の代表者ないしは担当者、「東京都靴卸協同組合」ほか4の「靴」に係わる同業者組合により署名ないし押印されたという事実は否定し得ないものである。
しかるところ、簡易、迅速を旨とする商取引の実際において、商標がそのままの態様で使用され、あるいは認識されるとは必ずしもいえないというのが取引の実情といえるところ、本件の場合、「請求人使用商標」の下部に表された「DAZZLING」文字は、上部に表示された「Sarah」の文字に比べて縦横それぞれの長さで半分以下、面積では5分の1以下の構成態様であり、視覚的な印象力に乏しく、その意味するところも「めもくらむばかりの、まぶしい」などを意味する記述的、修飾的な英語でもあり、かつ、「Sarah」の文字との意味上の関連性も薄いことから、取引者・需要者が、「請求人使用商標」を常に一体不可分にのみ把握するとすべき特別な事情は認められない。
そうであれば、「請求人使用商標」は、そこに大書された「Sarah」の文字部分をもって実際の取引に使用されることも決して少なくないとみるのが自然である。
この点につき「簡易、迅速をたつとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、経験則の教えるところである」との判決も存するところである(昭和38年12月5日 最高裁第一小法廷 昭和37(オ)953号判決 判例時報366号26頁参照)。
本件においては、提出された証拠の限りでは、主として「請求人使用商標」が使用されてきたといえることは、前記認定のとおりであるところ、甲第18号証の8の7葉目ないし9葉目には、「Sarah」の文字が手書きにより表されており、他の甲第18号証(枝番を含む)のこの部分には「請求人使用商標」が表されていることから、甲第18号証の8の7葉目ないし9葉目の作成者が、「請求人使用商標」の記載を略して「Sarah」と記載したと推認できるものであり、また、甲第9号証及び同第10号証における「サラ」の印字も「請求人使用商標」の略記であると認められること、前記「3」(3)で認定したとおりである。
上記の認定に照らせば、甲第24号証ないし同第26号証(いずれも枝番を含む)の証明書のうち、「商標『Sarah』について請求人により使用が継続されている」旨の部分については、実際には「請求人使用商標」ついて証明したものとみられ、その限りにおいて、「請求人使用商標」についての、証明日における使用の事情として斟酌し得るものである。
(3)本件における「需要者」について
商標法4条1項10号は「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、・・・・」との規定をしているところ、この規定との関係で、本件における需要者について以下検討する。
(ア)請求人は、前記「1」(1)で認定したように、東京本店のほか、大阪、札幌、福岡、名古屋の各大都市に支店を有する、婦人靴の専門卸商社であり、甲第6号証によれば、伊勢丹、高島屋、松坂屋、三越などの全国百貨店、ワシントン靴店、アカクラなどの靴小売専門店、イトーヨーカ堂、西友などの専門量販店が取引先とされ、また、甲第11号証ないし同第17号証並びに甲第24号証及び同第25号証(いずれも枝番を含む)をも斟酌すれば、請求人の業務の主な取引先は、百貨店、靴専門店であると認められるところである。
このことは、甲第9号証及び甲第10号証における一・二葉目である百貨店、専門店の販売量・金額の合計をみるに、平成13年には約18万6千足(約12.4億円)、同14年には約21万足(約14億円)の販売があり、これらは全売上総額の8割を優に超えていることからも明らかである。
したがって、「請求人使用商標」が使用された商品「婦人靴」は、主として、全国の百貨店、靴専門店との間で取り引きされてきたといえるものである。
(イ)しかして、商標法4条1項10号は、商品又は役務の出所の混同を防止するとともに、一定の信用を蓄積した未登録有名商標の既得の利益を保護するところに立法の趣旨があると解されるものであり、この趣旨に照らせば、同号における「需要者」の範囲を、生産者から末端消費者にいたるまでの範囲とすべき理由はないというべきである。
そうとすれば、請求人の取り扱いに係る商品の主たる取引先が百貨店、靴専門店である本件においては、主な「需要者」の範囲を、これらの百貨店、靴専門店とみて、需要者の間に広く認識されているか否かの判断をしても差し支えないというのが、上記4条1項10号の立法の趣旨に照らし相当といえる。
そして、これらの百貨店、靴専門店における販売や、請求人関連販売部門における直接販売等を通じて、一般の消費者にも請求人使用商標が広く認識されていくことがあるというのも十分推認できるものである。
(4)全国の百貨店、靴専門店への婦人靴の販売について
前記「2」の(5)で認定したように、請求人は、「請求人使用商標」を使用して、平成9年ないし同15年にかけて、商品「婦人靴」を20万ないし25万足(売上額で約15億円ないし約17億円)の販売をしたといえるところ、この約8割強が、全国の百貨店、靴専門店への販売に係るものといえるから(上記(3)の(ア))、「請求人使用商標」は、平成9年ないし同15年にかけて、全国の百貨店、靴専門店との婦人靴の販売、及び請求人関連販売部門における販売において、継続して使用され、販売数で各年16万ないし20万足売上額で各年約12億円ないし約14億円の取引がされたといえるものである。
(5)以上によれば、「請求人使用商標」は、平成9年ないし同15年にかけて、主として、全国の百貨店、靴専門店との婦人靴の取引において、前記認定の使用がなされた結果、本願商標の出願時である平成14年4月23日には、主たる需要者である全国の百貨店、靴専門店の間に広く認識されていたといえ、これが本件商標の登録査定時である同15年5月9日においても継続していたといえるものである。
(6)請求人は、「Sarah」の文字からなる商標が、使用された結果、需要者の間に広く知られていると主張しているが、その主張に添う証拠はないから、請求人のこの主張は採用することができない。
5 本件商標と「請求人使用商標」の類否について
本件商標は、前記したように、「SARAH」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、他方「請求人使用商標」は、前記した構成のものであるところ、すでに述べたように、その構成中の「Sarah」の文字部分をもって取引に資されることがあるといえるから、「請求人使用商標」と本件商標とは、「Sarah」の文字部分と「SARAH」の文字部分において小文字と大文字の差異はあるものの、ともに「サラ」の称呼を生ずるものであり、その英文字綴りも同一のものであるから、これらの相違点は決して著しいものとはいえず、両者は外観においても類似するといい得るものである。そして、観念については、両者は特段の観念を生じない造語と認められるから、観念上において区別はできないものである。
したがって、本件商標は、「請求人使用商標」に類似する商標であって、本件商標の指定商品中には、請求人の業務に係る商品「婦人靴」と同一又は類似する「靴類(靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具を除く)」が含まれているものである。
6 被請求人の答弁について
請求人の「『Sarah』の文字からなる商標が使用された結果、これが需要者の間に広く知られている」旨の主張が採用できないこと、前記「4」(6)のとおりであり、これと同旨を述べる被請求人の主張は妥当なものである。
しかしながら、「請求人使用商標」が、需要者の間に広く認識されていたといえること、前記のとおりである。
この点に関して、被請求人は、「仮に、請求人が実際に使用していると認められる商標のうち、『請求人使用商標』が需要者間において広く認識されていたとしても、該商標からは『サラダズリング』の称呼が生じるのに対し、『Sarah商標』からは該称呼は生じないばかりでなく、『請求人使用商用』は『Sarah商標』とはその外観を著しく異にするものであるから、『Sarah商標』と、『請求人使用商標』とが同一の商標といえないことは明らかである。」旨答弁しているところである。
しかしながら、「請求人使用商標」と本件商標が類似するといえること、前記「5」で認定したとおりであるから、被請求人の上記主張は、採用することができない。
7 結論
してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品若しくはこれに類似する商品について使用をするものといわなければならない。
したがって、本件商標は、その指定商品中「靴類(靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具を除く)」については、商標法4条1項10号に違反して登録されたものであるから、同法46条1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】
請求人使用商標

審理終結日 2004-09-10 
結審通知日 2004-09-14 
審決日 2004-09-27 
出願番号 商願2002-33360(T2002-33360) 
審決分類 T 1 12・ 251- Z (Y25)
T 1 12・ 252- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 浩子 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
登録日 2003-05-30 
登録番号 商標登録第4677834号(T4677834) 
商標の称呼 サラ 
代理人 中村 政美 
代理人 岩崎 幸邦 
代理人 三好 秀和 
代理人 川又 澄雄 

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