• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 005
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 005
管理番号 1109977 
審判番号 無効2002-35557 
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-12-27 
確定日 2004-12-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第3371409号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3371409号商標(以下「本件商標」という。)は、「エスパラ」の片仮名文字と「ESPARA」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、平成4年8月7日に登録出願、第5類「防虫剤 防臭剤(身体用のものを除く。)」を指定商品として、平成13年8月31日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第845681号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ASPARA」の欧文字を横書きしてなり、昭和43年4月16日に登録出願、第1類「薬剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和45年2月7日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第1832508号商標(以下「引用商標2」という。)は、「アスパラゴールド」の片仮名文字と「ASPARAGOLD」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、昭和58年8月11日に登録出願、第1類「薬剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和61年1月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第2256412商標(以下「引用商標3」という。)は、「アスパラ」の片仮名文字と「ASPARA」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、昭和62年12月11日に登録出願、第1類「薬剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年8月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第2487988号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ESPAL」の欧文字を横書きしてなり、平成1年10月18日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年12月25日に設定登録され、その後、平成14年12月25日をもって商標権の存続期間満了により消滅しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第100号証(枝番号を含む。ただし甲第56号証は欠号)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標と引用商標1ないし3の類似について
本件商標は、その構成文字に応じて、「エスパラ」の称呼を生ずるものである。
これに対して、引用商標1及び引用商標3は、その構成文字に応じて、「アスパラ」の称呼を生ずるものである。また、引用商標2は、その構成文字に応じて、「アスパラゴールド」の称呼を生ずるほか、当該商標中の「ゴールド」「GOLD」の文字が当該指定商品の品質を表す用語として使用されていることから、引用商標2中、自他商品識別標識としての機能を果たす部分は、「アスパラ」「ASPARA」の文字部分にあり、これより「アスパラ」の称呼をも生ずる。
しかして、本件商標と引用商標1ないし3は、ともに4音構成で、第2音目以下の「スパラ」の音を同じくし、語頭において、「エ」と「ア」の音の差異を有するにすぎないものである。「エ」と「ア」の音は、ともに母音で、しかも、「エ」の音は、「ア」と「イ」の中間の母音で「ア」の音と近似音である。したがって、両商標をそれぞれ一連に称呼するときは、第2音目以下が同一の音構成よりなることとも相俟って、語頭音の差異が微差に止まるので、互いに紛れるおそれある称呼上類似の商標である。
加えて、引用各商標に係る「アスパラ」は、請求人が商品「滋養強壮変質剤」等に使用して周知・著名な商標であり、商標の類似判断には、その取引の実情をも考慮して判断されるべきである。
最近の東京高裁判決でも、引用商標が周知・著名であるという実情下で一層出所の混同のおそれを増幅させるとして、類似の商標と判断した事例が見受けられる(甲第5号証及び甲第6号証)。
さらに、本件商標と引用各商標とは、称呼上類似の商標と判断されるところ、この判断が正当であることは、語頭音「エ」と「ア」の差異の類似判断の審決例からも裏付けられる(甲第7号証ないし甲第9号証)。
上述のことは、前示した審決例のほか、最近の東京高裁判決例(語頭音の差異から称呼上非類似とした審決を取り消したケース)における類似とした判断からも明らかである(甲第12号証ないし甲第14号証)。
以上のとおり、本件商標と引用各商標とは、称呼上類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品とは同一又は類似のものである。
(イ)本件商標と引用商標4の類似について
本件商標は、その構成文字に相応して、「エスパラ」の称呼を生ずるものである。
これに対して、引用商標4は、その構成文字に相応して、「エスパル」の称呼を生ずるものである。
しかして、両者は、ともに4音構成であるところ、語頭から第3音までの「エスパ」の音を同じくし、語尾音の「ラ」と「ル」に差異を有するものの、「ラ」と「ル」は、ともにラ行に属し、子音を同じくする近似音であり、しかも、語尾音は、一般的に聴取し難いところ、その前音である半濁音「パ」が明瞭に発音されるために、一層聴き取りづらくなり、これらの音の差異が称呼全体に与える影響は極めて少ない。
したがって、両商標を、それぞれ一連に称呼するときには、互いに紛れるおそれある称呼上類似の商標というべきである。
以上のとおり、本件商標と引用商標4とは、称呼上類似する商標であり、かつ、両者の指定商品も同一又は類似である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)周知・著名商標「アスパラ」について
(a)商標「アスパラ」の使用開始とその拡大
請求人は、昭和37年8月に「アスパラ」を使用し「滋養強壮変質剤」を発売開始して以来、同剤についての主なものとして、昭和39年に「アスパラC」、昭和59年に「アスパラ・エース」、平成2年に「アスパラ・ゴールドA」、平成7年に「アスパラ・ドリンク」、平成10年に「アスパラ.MAX」、平成12年に「アスパラ・ドリンクX」、平成13年に「アスパラ・ドリンクSPゴールド」及び「アスパラ・ドリンクII」とそれぞれの商標を継続して使用し、かつ、拡大している。
同様に、目薬について、平成2年に「アスパラ・目薬L」、平成10年に「アスパラ・メガ」、平成11年に「アスパラ・目薬クールIC」及び「アスパラ・目薬ソフト」の商標を使用開始し、それを継続して使用し、拡大している。
これらの商標は、いずれも「アスパラ」を要部とするものであり(以下「アスパラ」という。)、「アスパラ」シリーズ商標として機能し、強力で活発な宣伝広告活動と相俟って、滋養強壮変質剤について、最初に使用した「アスパラ」、「アスパラ・C」の商標が獲得した周知・著名性をさらに強化、拡大している。
(b)全国紙等への広告
請求人は、商標「アスパラ」を使用した滋養強壮変質剤の発売開始に当たり、昭和37年8月16日付け読売新聞及び朝日新聞、並びに同月20日付け毎日新聞の各全国版に、当該商品の発売予告広告の掲載を嚆矢として、昭和40年12月まで、これらの全国紙に月2回から10回程度広告した(甲第18号証ないし甲第20号証)。
昭和42年には、当該新聞広告に有名人(大宅壮一、三浦雄一郎、大山康晴等)の健康法を登場させるとともに広告した(甲第21号証及び甲第22号証)。
その後の新聞広告の主なもの(現段階で立証可能なもの)を挙げると、昭和56年ないし昭和59年、昭和62年に、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞(昭和59年、昭和62年)及びサンケイ新聞に各新聞広告を行い、また、昭和55年と昭和58年には、北は東奥日報から南は沖縄タイムスまで地方紙23誌に新聞広告を行った。平成元年から平成3年及び平成10年には、読売新聞、朝日新聞及び毎日新聞に新聞広告を行った(甲第23号証ないし甲第53号証)。
(c)テレビコマーシャル
請求人は、我が国において、東京オリンピック開催を契機に飛躍的に普及したカラーテレビによるコマーシャルを積極的に利用し、その番組の中で、商標「アスパラ」を使用し滋養強壮変質剤について宣伝広告を行った(甲第22号証、甲第54号証及び甲第55号証、甲第57号証ないし甲第73号証)。
(d)タレント等の起用
新聞広告やテレビコマーシャル、ポスターには、当時のトップスターに属する歌手、俳優、元プロ野球選手などを積極的に起用した(甲第18号証ないし甲第20号証、甲第22号証、甲第58号証、甲第63号証ないし甲第72号証、甲第74号証ないし甲第84号証)
(e)その他の広告等
請求人は、その他の広告として、薬局・薬店へのダイレクトメール、ネオン看板の設置、月刊誌、週刊誌への広告、タクシーへのステッカー広告、大阪市の日生球場への看板広告、ホームページの公開、大阪ドームへの写真広告等に際し、商標「アスパラ」を使用して商品「滋養強壮変質剤」等の宣伝、広告を行った(甲第22号証、甲第61号証、甲第72号証及び甲第73号証、甲第81号証、甲第83号証ないし甲第89号証)。
(f)宣伝、広告の効果等
請求人は、前述したマスコミを始め、多種多様な媒体を通じて、商標「アスパラ」を使用した滋養強壮変質剤等の宣伝、広告を行った(甲第22号証、甲第67号証、甲第71号証、甲第86号証、甲第90号証及び甲第91号証)。
前掲した、請求人の活発な宣伝広告活動により、請求人の商品「滋養強壮変質剤」及び商標「アスパラ」は、需要者の間に広く浸透した。
(g)商標「アスパラ」の周知・著名性の獲得
請求人は、昭和37年8月に、商標「アスパラ」を使用した滋養強壮変質剤の発売を開始して以来、現在まで約40年に亘り、「アスパラ」を要部とする「アスパラ」シリーズ商標の使用を展開してきている。そして、同期間中、新聞広告、有名タレントを起用したテレビコマーシャル、その他多種多様な広告媒体を活用して、大量、かつ、広範囲に、しかも、間断なく商標「アスパラ」を使用した滋養強壮変質剤や目薬についての宣伝広告を行ってきた。
この結果、商標「アスパラ」に係る商品の売上高(92年度〜2002年度)の総合計は263.5億円を達成した(甲第92号証)。
そうとすれば、請求人の滋養強壮変質剤等に係る商標「アスパラ」は、約40年間の使用により、本件商標の登録出願時である平成4年前には周知・著名商標であったものであり、その周知・著名性は、審決時においても継続していたものである。
(イ)商品の出所の混同のおそれ
しかして、本件商標からは「エスパラ]の称呼を、また、請求人の商標「アスパラ」よりは「アスパラ」の称呼を生ずるところ、両称呼は、第2音目以下の「スパラ」の音を同じくし、語頭音において、「エ」と「ア」の音の差異を有するにすぎないものである。
しかも、「エ」の音は、「ア」と「イ」の中間の母音で「ア」の音とは近似音である。
加えて、商標「アスパラ」は、商品「滋養強壮変質剤」等について、本件商標の登録出願前から周知・著名性を獲得している。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用したときは、商標「アスパラ」の印象が強いために、同商標を想起、連想することが少なくないものである。
したがって、本件商標が商標権者により、その指定商品「防虫剤 防臭剤(身体用のものを除く)」について使用されたときは、同商品が、「薬剤」に属し周知・著名な商標「アスパラ」を使用してなる「滋養強壮変質剤」と流通系統を同じくし、同一店舗で販売され、需要者を共通にする類似の商品であることから(甲第96号証の1ないし甲第96号証の28)、請求人の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものというべきである。
(ウ)審判決例
本件事案に適切な審判決例がある(甲第5号証、甲第6号証、甲第97号証及び甲第98号証)。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。仮に、同号に違反したものではないとしても、同法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。
したがって、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により無効にすべきである。
(4)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)本件商標と引用各商標との類似判断においては、審査基準はもとより、最近の審判決例、中でも審判の実質的に上級審たる東京高裁の判決例が重要である。
(a)甲第11号証に示す商標審査基準において明らかなとおり、語頭音のみの相違により称呼上類似判断の例外とされるのは、「語頭音に音質又は音調上著しい差異があるとき」であり、本件事案においては、ともにア行音に属して、その中でも音質上最も近似する「エ」と「ア」の差異であって、この場合は、審査基準の例外には当たらないものである。
(b)最近の東京高裁判決例では、甲第5号証、甲第12号証ないし甲第14号証が示すとおり、いずれも語頭音相違を理由として非類似とした審決が覆されている。
(c)加えて、商標の類似判断においては、判断時の指定商品に係る取引の実情をも考慮して判断すべきであるところ、甲第18号証ないし甲第95号証をもって立証したとおり、引用各商標に係る「アスパラ」は、商品「滋養強壮変質剤」等に使用され、本件商標の審決時には周知・著名性を獲得していたものである。
したがって、本件商標を使用したときは、本件商標に係る指定商品と引用各商標に係る指定商品「滋養強壮変質剤」とが一層混同を生ずるおそれがあり、本件商標と引用各商標は、類似の商標というべきである。
(d)以上のとおり、審査基準、判断時の直近の東京高裁判決例及び引用各商標の指定商品に係る取引の実情を考慮すれば、本件商標と引用各商標は、類似の商標というべきである。
被請求人は、昭和48年2月10日付けで登録された登録第1042362号「エスパラ」商標の存在を挙げているが、約30年前のものであり、本件事案とは判断時点や考慮すべき取引の実情等が異なるものであるから、同列には論じられない。
(イ)被請求人は、商標「アスパラ」の周知・著名性獲得の時期が不明である旨主張しているが、引用商標「アスパラ」の周知・著名性については、本件商標の登録出願日である平成4年8月7日前までに獲得していることが立証されれば、商標法第4条第1項第15号の適用要件を満たすものである(商標法第4条第3項)。
引用商標「アスパラ」は、商品「滋養強壮変質剤」等に使用され、本件商標の登録出願時までには周知・著名性を獲得し、その後、本件商標に係る審決時においても、その周知・著名性は、維持されていることが甲第18号証ないし甲第95号証により立証される。
前掲甲各号証が示す引用商標の各使用時点に基づき、これらを個別的に精査して総合的に判断されるべきものである。
(ウ)被請求人は、引用商標が特定されていない旨主張している。
しかしながら、請求人が昭和37年8月以来、「滋養強壮変質剤」等に使用している「アスパラ」、「アスパラC」、「アスパラ・エース」、「アスパラ・ゴールドA」、「アスパラ・ドリンク」等や「アスパラ・目薬L」、「アスパラ・メガ」等は、いずれも「アスパラ」を要部とするもので、「アスパラ」シリーズ商標として機能し、強力で活発な宣伝広告活動と相俟って、滋養強壮変質剤について、最初に使用した「アスパラ」、「アスパラ・C」商標により獲得した周知・著名性をさらに強化、拡大したことを立証している。
したがって、取引者・需要者は、前掲各商標については、約40年間の使用実績を通じて、「アスパラ」シリーズ商標として、その共通の要部たる「アスパラ」をもって、記憶、認識しており、自他商品識別機能を有しない「C」「エース」「ゴールド」等までを一々記憶していることが少ないことは経験則上明らかである(甲第99号証及び甲第100号証)。
商標法第4条第1項第15号は、未登録周知・著名商標との関係でも適用があることから、その特定については、「滋養強壮変質剤」等に使用している商標「アスパラ」で足りるものである。
(エ)被請求人は、本件商標と引用商標「アスパラ」が非類似であるから出所の混同のおそれはない旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号は、その規定から明らかなとおり、出所の混同のおそれがあれば、商標が非類似の場合にも適用されるのであって、商標の類似が適用要件ではない。したがって、仮に、本件商標と引用商標「アスパラ」が非類似であるとしても、引用商標の商品「滋養強壮変質剤」等についての周知・著名性からして、本件商標を、その指定商品に使用するときには、出所の混同のおそれがある。
(オ)被請求人は、「滋養強壮変質剤」と「防虫剤、防臭剤(人体用のものを除く)」については商品の種類を誤認する可能性がない旨主張している。
商標法第4条第1項第15号は、その規定から明らかなとおり、出所の混同のおそれを問題にしているのであって、商品の種類の誤認を問題にしているものではない。すなわち、本件商標は、これをその指定商品に使用するとき、該商品が請求人の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同のおそれがあったものである。

4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標と引用商標1ないし引用商標3について
本件商標の称呼は、下段のローマ字の表音に相応する上段のカタカナ「エスパラ」であると認められる。
他方、引用商標1ないし引用商標3からは、共通の「アスパラ」の称呼を生ずる。
本件商標は「エスパラ」、引用各商標は「アスパラ」の称呼であるとして、両者を称呼上対比すると、本件商標と引用各商標とは語頭音において「エ」と「ア」音の差異を有する。
この差異音の「エ」は、前舌面を平らにして歯茎の後に近づけ、引っ込めた声を口腔内に響かせて発生する半開き音の弱音であり、また、「ア」は、口を広く開いて発する強音である。
両音は、ともに有声の開放音であり、はっきりした澄んだ音として発音されるうえ、さらに、後子音として弱音の無声摩擦音「ス」が位置するために、両音は明確に発音され、かつ、聴取し得る。
両商標は、いずれも4音の短い音数からなることとも相俟って、この語頭音「エ」と「ア」の差異は、全体称呼に及ぼす影響が大きく、一連に称呼するときには、両商標は明確に区別し得るものとなる。
以上述べたことは、下記の審決例にて非類似とされているところからも明らかである。
(a)語頭音「エ」と「ア」の場合で非類似とされたもの
エイミー × アイミー(審判昭55‐8962)、エイピイエス × アイピーエス(審判昭56‐1051)、エスサン × アスサン(審判昭56‐20529)、エクセル × アクセル(審判昭57‐14182)、エンジェルス × アンジェルス(審判昭63‐1206)、エクセーヌ × アクセーヌ(審判昭63‐22805、審判平1‐17084)、エスプロ × アスプロ(審判平3‐11809)
(b)語頭音の相違で非類似とされたもの
サイメックス × タイメックス(審判昭63‐9154)、フリスコ × クリスコ(審判平2‐12340)、エステン × オステン(審判平3‐23123)、ブクリン × ビクリン(審判平4‐3405)、ルミゲン × ラミゲン(審判平4‐10522)、ネスタミン × レスタミン(審判平4‐15106)、バンノック × タンノック( 審判平4‐20470)、ヤムロック × カムロック(審判平5‐10249)、アマリール × サマリール(審判平11‐35542)、アスチノン × ラスチノン(審判2000‐35333)
(イ)請求人が主張している審・判決例について
請求人提出の審決例(甲第7号証ないし甲第10号証)及び判決例(甲第5号証及び甲第12号証ないし甲第14号証)は、いずれも本件とは事情が異なり、同一に論じることはできない。
(ウ)本件商標と引用商標4について
引用商標4の称呼は、ローマ字の表音に相応して「エスパル」の称呼が生ずる。本件商標の称呼は、「エスパラ」であるから、両商標は、語尾音において「ル」と「ラ」音の差異を有する。
これらは、有声の弾音である子音「r」を共通にするが、本件商標における「ラ」(ra)の音は、母音が「ア」であり、この母音「ア」の調音方法は、顎を最大に開き、舌全体を下げて発音するため、強く明確な音として聴取される。
これに対して、引用商標4における「ル」(ru)の音は、母音が「ウ」であり、顎を最小の円形とし、舌の奥を上げて発音する音であるため、弱く明確さを欠く音として聴取される。
したがって、母音を異にすることから、「ル」音が弱く発音されるのに対し、「ラ」音は強く発音されるため、両者は全体でともに4音構成という比較的短い構成音数よりなることよりして、称呼全体に及ぼす影響は大きく、一連に称呼するときには、その語調、語感が相違し十分に区別し得るものである。
(エ)被請求人は、「エスパラ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和42年5月15日に登録出願、第1類「防虫、防臭剤」を指定商品として、昭和48年2月10日に設定登録された登録第1042362号商標を所有している。
請求人の引用商標が登録されたことは、両者が非類似とされたから登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)周知著名性の証拠
請求人は、昭和37年8月16日から平成14年に至るまでの証拠を提出しているが、周知著名性獲得の時期が明確にされておらず、本件商標出願時に周知著名性を獲得したとする明確な証拠となっていない。
また、請求人の周知著名性に関しての請求理由をみるも、いかなる態様の商標について周知著名性を主張しているのか不明であり、商標の特定がなされておらず、この主張は漠然としており理由をなしていない。
証拠に示された商標は、「アスパラ」、「アスパラC」、「アスパラL」、「アスパラ・L」、「アスパラ・L」(Lが白抜き)、「アスパラエース」、「アスパラゴールドA」、「アスパラドリンク」、「アスパラドリンクX」、「アスパラドリンクSPゴールド」、「アスパラドリンクII」、「アスパラ目薬」、「アスパラ目薬L」、「アスパラメガ」、「アスパラ目薬クールIC」、「アスパラ目薬ソフト」と多種類にわたっており、周知著名性を主張する対象商標がどの使用態様のものか、また、使用商品も証拠に示された「活性アスパラギン製剤」、「目薬(活性アスパラ酸点眼液)」、「活性アミノ酸製剤」、「滋養強壮、栄養補給製品」、「眼精疲労、肩こり、手足のしびれ用製品」のうちのどの商品なのか特定されず、周知著名性を主張する請求理由及びその証拠が不充分である。
また、請求人の主張によれば、前記のそれぞれの商標が、前記の各種商品のそれぞれに付されて販売されているものであり、請求人は、複数の商標にて、それぞれの自社商品の区別を行ってきている。すなわち、長年月販売してきているとのことであれば、それぞれの商標が一般取引者、需要者間で区別されて認識されてきているものと推定できる。
このことは、また、前記商標の共通部分である「アスパラ」の部分のみで各商品が区別される筈はあり得ず、それぞれの商標全体が一連のものとして認識されてきたと判断できる。したがって、請求人提出の証拠により、各商標の共通部分の「アスパラ」の語のみが周知著名性を獲得したとすることはできない。
(イ)万一、請求人の主張するように、各商標共通部分の「アスパラ」の語のみが周知著名性を獲得したとした場合でも、本件商標「エスパラ」とは非類似商標であるから、出所の混同の生ずる余地はないことが明らかである。
商品についても、証拠から周知著名性の立証対象となる商品を特定することは困難である。商品が請求人の主張する「滋養強壮変質剤」であるとした場合でも、この商品は、人の口に介するものである。これに対し、本件商標の指定商品は、「防虫剤、防臭剤(身体用のものを除く)」であるから、むしろ、身体に害を及ぼすおそれのあるものであり、人の口に絶対に入れてはならないものである。
さらに、薬剤は、健康に影響を及ぼす商品であるため、通常でも慎重に商品を吟味して購入するものである。そのような種類の商品を購入するにあたって、身体に良いものと悪いものとを間違えるおそれはない。すなわち、商品の種類を誤認する可能性は皆無である。よって、この点からも商品の混同を生じることはあり得ない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標と引用各商標とは、十分区別し得る非類似の商標である。また、非類似の商標である以上、商品の出所の混同を生じさせるおそれはない。さらにまた、請求人の提出証拠は、周知著名性を立証する証拠たり得ないから、出所の混同の請求理由は論外である。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標と引用商標1ないし3について
本件商標は、「エスパラ」、「ESPARA」の文字に相応して「エスパラ」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標1は、「ASPARA」及び引用商標3は、「アスパラ」、「ASPARA」の文字を書してなるから、当該文字に相応して、それぞれ「アスパラ」の称呼を生ずるものである。
引用商標2は、「アスパラゴールド」、「ASPARAGOLD」の構成文字よりなるところ、その構成中「ゴールド」「GOLD」の文字は、商品の品質を表示する語として普通一般に使用されているものであって、自他商品識別力がないか又は極めて弱いものというべきであるから、自他商品識別標識としての機能を果たす主要部は、「アスパラ」、「ASPARA」の文字部分にある。したがって、引用商標2からは、全体の構成文字に相応して「アスパラゴールド」の称呼を生ずるほか、「アスパラ」、「ASPARA」の文字部分に相応して「アスパラ」の称呼をも生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「エスパラ」の称呼と引用商標1ないし3より生ずる「アスパラ」の称呼とを比較するに、両称呼は、ともに4音からなり、語頭音において「エ」と「ア」の音の差異を有し、第2音以下において「スパラ」の音を共通にするものである。
しかして、当該差異音の「エ」と「ア」は、ともに有声の開放音であり、明瞭に澄んだ音として称呼され、かつ、聴取されるばかりでなく、僅か4音という短い構成音数の称呼において、重要な要素を占める語頭に位置することから、その差異が両称呼に与える影響は大きく、両称呼全体をそれぞれ一連に称呼しても、その語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはないというのが相当である。
また、本件商標より生ずる「エスパラ」の称呼と引用商標2より生ずる「アスパラゴールド」の称呼とは、その音構成において著しい差異を有するから、明らかに聴別し得るものである。
さらに、本件商標と引用商標1ないし3は、外観において、判然と区別し得るものである。
また、本件商標は、特定の意味合いを有しない造語よりなるから、引用商標1ないし3とは、観念において比較することができない。
そうとすれば、本件商標と引用商標1ないし3とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ない。
(イ)本件商標と引用商標4について
本件商標は、「エスパラ」「ESPARA」の文字に相応して「エスパラ」の称呼を生ずるのに対し、引用商標4は、「ESPAL」の文字に相応して「エスパル」の称呼を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「エスパラ」の称呼と引用商標4より生ずる「エスパル」の称呼とを比較するに、両称呼は、ともに4音からなり、語頭からの「エスパ」の各音を共通にし、末尾における「ラ」と「ル」の音の差異を有するものである。
しかして、「ラ」(ra)の音は、その母音(a)が口を大きく開け明瞭に発音されることよりして、明確に聴取されるものであるのに対し、「ル」(ru)の音は、その母音(u)が口をすぼめて弱く発音されることから、明瞭には聴取し難い音といえる。
してみると、ともに4音という短い音構成からなる両商標において、末尾における「ラ」と「ル」の差異が両称呼に与える影響は大きく、両称呼全体をそれぞれ一連に称呼しても、その語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはないというのが相当である。
また、本件商標と引用商標4とは、外観において、判然と区別し得るものである。
さらに、本件商標は、特定の意味合いを有しない造語よりなるから、引用商標4とは、観念において比較することができない。
そうとすれば、本件商標と引用商標4とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ない。
(ウ)以上のとおり、本件商標と引用商標1ないし4は、非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
そして、請求人の提出した審判決例(甲第5号証ないし甲第9号証及び甲第12号証ないし甲第15号証並びに甲第98号証ないし甲第100号証)は、いずれも本件とは事案を異にするものであるから、それらを参酌しても、前記の判断を覆すことはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人提出の甲第18号証ないし甲第95号証によれば、請求人は、「アスパラ」若しくは「アスパラ」の文字を要部とする「アスパラ〇〇〇」の商標を商品「滋養強壮変質剤」について、新聞、雑誌、テレビコマーシャル、ポスター、看板等による広告を利用して、本件商標の登録出願前から、継続して使用していることが認められる。
そして、その結果、請求人の使用に係る商標「アスパラ」は、本件商標の登録出願時までには、取引者、需要者の間において広く認識され、周知・著名であったものと認められ、その周知・著名性は、本件商標の登録審決時においても継続していたものと認め得る。
しかしながら、本件商標と請求人の使用に係る商標「アスパラ」とは、前記したとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標として容易に看取、認識されるものというべきである。
そうとすれば、請求人の使用に係る商標「アスパラ」の著名性、売上高、取引の実情等を考慮したとしても、人の口に入れる商品「滋養強壮変質剤」と、人の口に入れることのない商品「防虫剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」とが、たとえ、同一店舗において販売され得るとしても、それぞれの置き場も相違し、先ず充分に吟味して購入され、一般需要者等による誤認・混同可能性も低いと予測されることよりすれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、請求人の使用に係る「アスパラ」商標を連想、想起するとはいえないだけでなく、請求人又はそれと経済的あるいは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について誤認、混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
(3)結語
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-01-16 
結審通知日 2004-01-21 
審決日 2004-02-17 
出願番号 商願平4-153139 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (005)
T 1 11・ 26- Y (005)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 工藤 莞司上村 勉 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 鈴木 新五
柴田 昭夫
登録日 2001-08-31 
登録番号 商標登録第3371409号(T3371409) 
商標の称呼 エスパラ 
代理人 佐藤 英二 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 松田 省躬 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ