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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 042
管理番号 1108115 
審判番号 無効2003-35005 
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-01-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-01-09 
確定日 2004-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第3368133号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3368133号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3368133号商標(以下「本件商標」という。)は、「株式会社 ユニックス」の文字(「株式会社」の文字を小さく書し、「ユニックス」の文字を太字で大きく書してなる。)を横書きしてなり、平成3年法律第65号附則第5条の規定により使用に基づく特例の適用を主張して平成4年9月28日に登録出願され、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定役務とし、また、重複商標として、平成10年1月9日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論掲記の審決を求めると申立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第24号証を提出している。
1.商標法第4条第1項第10号について
(1)請求人であるエックス/オープン・カンパニー・リミテッドは、当初、欧州コンピュータ・メーカー5社が1984年に設立した協議機関としてスタートし、1987年には、世界の主要な情報関連企業が株主として参加して、会社組織となり今日に到っているものである(甲第3号証)。
そして、請求人は、主にコンピュータのOS(コンピュータのシステム管理と、基本的なユーザー操作環境を提供するソフトウェア。基本ソフトウェアと呼ばれることもある。)である「UNIX」のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の仕様を作成し、「UNIX」商標(以下「引用商標」という。)の管理・ライセンス等をも管理しているものである(甲第4及び第5号証)。
(2)引用商標は、1969年に米国のAT&Tのベル研究所が開発した時分割方式のマルチユーザー・マルチタスクのOSの商標であって、1975年頃からそのソースプログラムが大学や研究所、企業等に配布されるようになり、夫々がそのプログラムを利用して需要者等に使い易い新たなOSを開発したことで急速に普及発展していったものである。
この「UNIX」は、プログラムがC言語で記述されていることから移植性が高く、大型コンピュータ、パソコン、ミニコンピュータ等の分野において世界中で広く利用されているものである(甲第6ないし第11号証)。
我が国においても、日立製作所、日本電気、富士通、沖電気工業等の主要なコンピュータ・メーカーに採用されているものである(甲第12ないし第14号証)。
このような引用商標の普及度、重要性から、請求人は第9類、第42類等の商品や役務を指定して世界60か国以上で商標出願をし、商標登録を受けているものである(甲第15号証)。
なお、請求人は、「UNIX」の欧文字からなる商標について、本件商標の指定役務と同じ「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」等を指定して、使用に基づく特例の適用を主張して登録出願し、本件商標と重複登録されているものである(甲第16及び第17号証)。
また、著名商標を掲載する「英和商品名辞典」にも「UNIX」は掲載されているものである(甲第6号証)。
以上に述べた事実及び提出した証拠から、本件商標の出願日である平成4年9月28日には、引用商標が、コンピュータソフトウェア、コンピュータソフトウェアの開発(設計・作成等)について、日本国内において既に周知・著名であったことは明らかである。
(3)他方、本件商標は、「株式会社 ユニックス」の文字を左横書きしてなるものであるところ、「株式会社」は、会社の種類を表すために法人の商号中に一般に用いられるものである。
この点、簡易迅速を尊ぶ実際の取引においては、この「株式会社」は、しばしば略称されるものであるから、本件商標よりは、「カブシキカイシャユニックス」の他に「ユニックス」の称呼も生じるものである。
(4)そうすると、引用商標からも「ユニックス」の称呼が生じるものであるから、両商標は称呼上類似すること明らかである。
このことは、本件商標と引用商標が、上記のように重複登録されていることからも容易に理解できるものである。そして、本件商標の指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」が、請求人が引用商標を使用する役務と類似することも明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
2.商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、上記のように、本件商標の出願日前から、コンピュータソフトウェア、コンピュータソフトウェアの開発(設計・作成)について、周知・著名であるから、本件商標をその指定役務に使用した場合、それが引用商標と何らかの関係、例えば、請求人と資本関係にある企業、合弁会社等の業務に係る役務であると、需要者・取引者をして、誤認混同を生じさせるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3.商標法第4条第1項第19号について
上記のように、本件商標は、引用商標と類似するものであるところ、本件商標は、たとえこれが被請求人の商号を表したものではあっても、その構成においては、「株式会社」と「ユニックス」の間にスペースを設けており、しかも、「ユニックス」の文字部分のみ顕著に表してなるものであるから、単なる商号商標ではなく、「ユニックス」の文字部分のみが独立した識別標識として把握されるものである。
この点、上記引用商標の周知・著名性に鑑みれば、本件商標の使用により、引用商標の出所表示機能を稀釈化し、あるいはその名声を毀損させる目的が推認できるものである。
よって、本件商標は、引用商標と類似する商標を不正の目的をもって使用する商標であって、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4.まとめ
以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同15号又は同19号に違反して登録されたものであるから、無効とされるべきである。
5.答弁に対する弁駁の理由
(1)被請求人は、「本件商標の出願時及び登録査定時において引用商標が周知著名であることの根拠は、提出の証拠方法においていずれにも見出すことはできないことから、これら証拠方法に基づく請求人の主張も説得力を欠き、本件商標は無効とされない。」旨述べている。
しかしながら、先に提出した甲第6号証(英和商品名辞典)にあっては、「1969年に米国New York州のAT&TのBell Laboratoriesが開発したコンピューターソフトで、ミニコン・マイコン用のマルチユーザー・マルチタスク対応のオペレーティングシステム(OS)。ミニコン上でのソフトウェア開発に多く用いられている。」と記載されている。
また、甲第7号証(マイクロコンピュータハンドブック)にあっては、その543ページにおいて、「UNIXはベル研究所で開発されたTSS用OSである。…現在、ミニコンピュータの分野では世界的に広く使われており、使いやすくコンパクトなOSとして高い評価を受けている。」、甲第8号証にあっては、「UNIXシステムの制御プログラムおよびアプリケーションプログラムのほとんどが、システム記述言語Cで記述されており、ハードウエアに依存しない移植性の高いシステムとして大型コンピュータからパソコンにいたるまで幅広く流用されている。」との記載がある。
これらには、「“UNIX”が、取引者・需要者間において周知著名である」という直接的な表現は用いられてはいないが、「UNIX」が世界的に広く使用されている事実は認められるものである。
そうであるならば、「UNIX」というオペレーティングシステムの名称自体も、世界的に取引者・需要者の間で周知・著名であろうことは自ずと理解できるものである。
これらの証拠方法は、各々1990年(平成2年)、昭和60年、昭和61年に発行されているものであって、どれも本件商標の出願日(平成4年9月28日)前に発行されたものである。
したがって、これらの証拠方法によって、引用商標が、本件商標の出願日前から周知・著名であったことが認められるものである。
なお、これらの証拠方法に敷衍して説明すると、上記「マイクロコンピュータハンドブック」には、その645ページにおいて、「UNIXはアメリカのベル研究所で開発されたオペレーティングシステムであるが、会話型オペレーティングシステムとしての使いやすさとともに、大部分のプログラムがC言語で記述されているため、他のコンピュータへの移植性が高く、この1〜2年の間でわが国でもミニコンピュータ、ワークステーション、パーソナルコンピュータなどの分野で急速に普及しつつある。」と記載されており(甲第18号証)、我が国においても、引用商標を用いたOSが広く知られていたことがうかがえる。
(2)その他、以下においては、本件商標の出願日前に発行された、コンピュータあるいは情報科学に関する専門書における「UNIX」についての記載を抜粋して紹介する。
(ア)「電気電子用語事典」(甲第19号証)(平成3年8月10日発行)
「UNIXのもっているOSとしての優れた考え方は広く認められており、その後にこの流れをくむ多くの汎用OSが開発されている。」
(イ)「岩波情報科学辞典」(甲第20号証)(平成2年5月25日発行)
「もともとミニコンピューター用として開発されたUNIXは、今日では大多数のワークステーションで標準OSとして採用されているほか、一部のパーソナルコンピューターからスーパーコンピューターにわたる広範囲な機種の標準的なOSとして広く活用されている。これは、OSとしてUNIXを使えば、各機種間でソフトウェアや操作の互換性が高まり、ネットワークが組みやすくなるからであろう。」
(ウ)「情報・通信マイクロコンピュータ辞典」(甲第21号証)(昭和6 1年1月20日発行)
「アメリカのベル研究所で開発された複数ユーザ用会話型の汎用オペレーティングシステム。…この頃から、大学や研究所のミニコンピュータで爆発的に使用されるようになり、広く普及されるようになった。最近では、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータにも搭載されている。」
(エ)「共立・総合コンピュータ辞典」(甲第22号証)(昭和61年5月 25日発行)
「ベル研究所では、高級な機械向き言語として言語Cを開発した。コンパクトなオペレーティング・システムUNIXと使いやすいエディタQEDとともに、他の多くの機械に移植されている。」
(オ)「コンピュータの事典」(甲第23号証)(昭和63年8月5日発行 )
「ソフトウェア環境の代表格がUNIX OSである。UNIXはベル研究所の商標であるが、…現在では至るところで使われている。UNIXはOSであるが、ユーザとの融和性が極度に高められたソフトウェア環境である。」(44、45ページ)
「一方、ベル研究所で開発され、当初PDP11の上で動かされたオペレーティングシステムUNIXは、その記述言語としてC言語を採用している。C言語は汎用的で、多数のコンピュータに装備され始めたため、UNIXを他のミニコンに移植することが容易で、C言語でつくられた各種流通ソフトウェアの蓄積も始まったため、UNIXを標準的オペレーティングシステムとする傾向が現れ始めている。」(200ページ)
「UNIXはこのような小規模なTSS(複数のユーザーが同時に1台のコンピュータを対話形式で使用できるシステム)の代表的な例と見なすことができる。」(416ページ)等。
(カ)「コンピュータ・ソフトウエア事典」(甲第24号証)(平成2年4 月15日発行)
「現在、ワークステーションのオペレーティングシステムの主流としてUNIXが普及しており、ソフトウェア開発環境を支援するオペレーティングシステムとして利用されている。」(237ページ)等。
(3)このように、UNIXは、本件商標の出願日以前の段階において、既に汎用的なC言語を採用すること等の理由から、パーソナルコンピュータからスーパーコンピュータにわたる広範囲な機種の標準的なOSとして広く活用されていたものであって、本件商標の出願日である平成4年9月28日の時点では、引用商標は、コンピュータに携わる業界においては周知・著名であったというべきものである。
引用商標が、本件商標の出願時及び登録査定時において周知・著名であることについての根拠は提出した証拠方法に示すとおりである。これらは、主にコンピュータ・情報科学に関する専門書類であって、商標という観点から記載されているものではないので、引用商標が需要者・取引者間で周知・著名であるというような直接的な表現はされていないが、上記記載内容からすれば、引用商標が、請求人の業務に係る商品「コンピュータソフトウェア」あるいは役務「コンピュータソフトウェアの開発(設計・作成等)」を表彰する商標として、諸外国のみならず我が国の取引者・需要者間において周知・著名であったであろうことは容易に理解できるものである。
(4)引用商標が、請求人の業務に係る商品「コンピュータソフトウェア」を表彰する商標として周知・著名であることについては上述したとおりであるが、この「コンピュータソフトウェア」と、本件商標の指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」とは、共にコンピュータを作動させることを目的としたものであって、用途を共通にするものである。
また、引用商標が使用されている「コンピュータソフトウェア」は、プログラムの実行、言い換えればコンピュータを作動させるために必須の基本ソフトウェア(OS)であるところ、通常のコンピュータ操作において作動しているアプリケーションソフトとの関係では、OSが土台となり、その上でアプリケーションソフトが初めて作動する関係にあるものである。
したがって、引用商標が使用されている商品と、本件商標の指定役務「電子計算機のプログラム設計・作成又は保守」とは、その需要者の範囲も共通にするものである。
また、同一の事業者が、コンピュータソフトウェアの製造・販売と、コンピュータソフトウェアの設計・作成・保守等の役務とを行うという業態はよく見受けられるものである。
そうすると、引用商標が使用されている商品「コンピュータソフトウェア」と、本件商標の指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」との間では、十分に出所の混同を生じるおそれが存在するものと考える。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第4号証を提出している。
1.「使用に基づく特例の適用の主張」について
商標の登録無効とは、商標権を無効とするものではなく行政処分としての登録査定自体を無効とすることによって、商標権をはじめから存在しなかったこととするものである。そして、無効登録の存否は登録査定の時点において判断されるが、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号については、登録査定時のみならず出願時においての無効事由の存否をも併せて判断されなければならない。
しかるに、本件商標は、平成4年9月28日に「使用に基づく特例の適用の主張」による登録出願を行い、平成10年1月9日に、いわゆる、「使用に基づく特例適用による優先・重複登録」を受けている。この「使用に基づく特例適用による優先・重複登録」とは、自己の業務に係る役務について日本国内で不正競争の目的でなく商標の使用をしているものは、平成4年4月1日から同年9月30日までの6ヶ月間にその商標について当該役務を指定して登録出願し、当該商標登録出願について、「使用に基づく特例の適用の主張」をすることができ、これによって当該商標登録出願について優先・重複登録を受けることができる制度である。つまり、この制度によって出願した商標は、商標法第4条第1項第11号の適用を免れ、よって、例えば、同一商標であっても重複して登録を受けることができた。この制度は、いわゆる、同法第4条第1項第11号の特例として位置づけられるが、当該商標が登録を受けるに際して満たすべき他の登録要件については、従前どおりに審査されることとなっていた。つまり、同法第4条第1項第10号及び同第15号は、当該出願が前記制度を利用するものであっても免れられず適用されるのである。ところが、本件商標は、上記拒絶理由によって拒絶されることもなく何の支障もなく登録を受けている。
そうすると、本件商標が登録されたことは、取りも直さず、引用商標が、出願時において周知もしくは著名ではなかった何よりの証左なのである。しかも、引用商標は本件商標と共に重複登録がなされていることから、審査官は引用商標の存在を確実に認識していたはずである。それにもかかわらず、本件商標が登録された経過を鑑みれば、本件商標は、商標法第4条第1項第10号にも同第15号にも該当しないものと判断されて登録に至ったことは明らかである。
2.本件商標は1973年からの使用の継続
被請求人は、昭和48年9月(1973年)に設立しており、この事実を乙第1号証として提出する。そして、本件商標は商号でもあるので、商標と商号を兼ね合わせた状況において、被請求人は、本件商標を30年もの間営々として当該指定役務に継続して使用しており、この事実を乙第2ないし第4号証として提出する。
これらの事実からすれば、当該指定役務に係る業界に新規参入したのは、むしろ請求人なのである。本件商標を既に使用していた者が、請求人の如き新参者によって、不正の目的をもって使用する如き主張される道理はどこにもないと思料する。
3.請求人主張に対する反論
引用商標の周知著名性は、本件商標の登録査定時のみならず出願時においても判断されるべきであるところ、甲第4及び第5号証、甲第9ないし第12号証は、本件商標の出願日以後に発行された証拠方法である。そうすると、これら証拠方法にて引用商標の周知著名性の認定は不可能である。次いで、甲第13ないし第15号証は、発行年月日の掲載が確認できないため証拠能力を欠いている。僅かに、甲第6ないし第8号証が本件商標の出願日前に発行されているので、これら証拠方法につき逐一検討する。
甲第6及び第8号証より、1969年にAT&Tの「Bell Laboratories」がコンピュータソフトを開発した事実は明らかであるが、これは単に事実を述べるにすぎず、引用商標が当該指定役務について一般需要者又は取引者間において周知著名である等の記載は一切確認できない。
甲第7号証は、当該証拠方法もまた単に事実を述べるにすぎない。
引用商標が甲第6ないし第8号証に掲載されたことは、確かに認められるが、これら辞典類に掲載があっただけで周知著名であるかを一概に判断することはできない。
いずれにしても、本件商標が無効とされる根拠としては、甲第6ないし第8号証の如き僅か3点の証拠方法のみでは余りに貧弱であろうと思料する。
また、請求人は、引用商標が世界的に周知著名であるとして甲第15号証を提出している。
しかるに、甲第15号証をつぶさに検討するに、引用商標が当該役務区分第42類で取得された国は、アルゼンチン、オーストラリア、ベネルクス、エジプト、ドイツ、イスラエル、ベトナムの7カ国にすぎない。請求人の国籍である英国や、開発された米国では、どういうわけか本役務区分において出願すらなされていない。請求人又はこれに準ずる重要な国において、左記国はいずれもサービスマーク制度が存在するにも関わらず商標登録を受けず、一方、日本国においていきなり引用商標が世界的に周知著名であるからとして、本件商標を無効と主張するは余りに唐突である。
以上のことから、本件商標の出願時及び登録査定時において引用商標が周知著名であるとの根拠は、提出の証拠方法においていずれにも見出すことはできないことから、これら証拠方法に基づく請求人の主張も説得力を欠いており、本件商標の登録は無効とされないのである。
4. まとめ
以上の理由により、本件商標は、引用商標との関係で商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当しないのであり、同法第46条第1項に該当しない。

第4 当審の判断
請求人の提出に係る甲各号証によれば、1969年に米国のベル研究所が開発したマルチユーザーマルチタスク用のコンピュータソフトウェアは、「UNIX」と略称され、1975年頃から大学、研究所、企業等に配布されるようになり、大学関係ではUNIXユーザ会も設立されるなど、急速に普及発展し、この「UNIX」の殆どがシステム記述言語Cで記述されていることから移植性の高いシステムとして大型コンピュータ、パソコン、ミニコンピュータ等の分野において世界中で広く利用されていることが認められる(甲第6ないし第8号証及び甲第18ないし第24号証)。
そうすると、上記ソフトウェアが「UNIX」と略称して取り引きされていることからして、「UNIX」は上記ソフトウェアに使用する商標と位置づけられるものであり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において既に、上記ソフトウェアに使用する商標として取引者、需要者間に広く認識されていたものというべきである。そして、引用商標は、その構成文字に相応して「ユニックス」の称呼を生ずること明らかである。
この点に関し、被請求人は、甲各号証は1969年にベル研究所がコンピュータソフトウェアを開発した事実を述べるにすぎず、これをもって引用商標が周知著名であることの証左にできない旨主張しているが、上記認定判断に照らし、この主張は採用することができない。
他方、本件商標は、上記のとおり、「株式会社」の文字を小さく書し、「ユニックス」の文字を太字で大きく顕著に表してなる構成より、「ユニックス」の文字部分が看者の注意を惹くことに加え、「株式会社」の文字は、会社の種類を表すために法人の商号中に用いられるものであって、簡易迅速を尊ぶ取引場裏にあってはしばしば省略されるものであるから、本件商標は単に「ユニックス」の称呼をも生ずるものである。
また、本件商標の指定役務は、引用商標が使用されている「コンピュータソフトウェア」とは極めて密接な関係を有するものである。
かかる事情の下に本件商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、本件商標の構成中の「ユニックス」の文字部分に注目して、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該役務が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
なお、被請求人は、本件商標が使用に基づく特例適用により引用商標と重複して登録されたものであり、このことは引用商標が周知著名でなかったことの証左である旨主張し、また、被請求人は昭和48年9月に設立されて以来本件商標を使用している旨主張して乙各号証を提出している。
しかしながら、本件商標が使用に基づく特例適用によって重複登録されたものであっても、商標法第4条第1項第15号が適用されることは請求人の主張のとおりであるが、本件審判においては、本件商標が同号に該当することを看過して登録されたものか否かが問題なのであって、重複登録の事実のみをもって引用商標の周知著名性が否定されるものではないから、被請求人の主張は採用することができない。また、被請求人の提出に係る乙各号証によっては、本件商標が使用された結果として、引用商標とは別の他人によって使用される商標として取引者、需要者間に広く認識されているというような事情は認められないから、上記のとおり、引用商標の周知著名性に照らし、本件商標は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-09-10 
結審通知日 2004-09-14 
審決日 2004-09-27 
出願番号 商願平4-259878 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (042)
最終処分 成立  
前審関与審査官 茂木 静代 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 小川 有三
富田 領一郎
登録日 1998-01-09 
登録番号 商標登録第3368133号(T3368133) 
商標の称呼 ユニックス 
代理人 石川 義雄 
代理人 岡田 全啓 
代理人 小出 俊實 
代理人 鈴江 武彦 

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