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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z14
管理番号 1106670 
審判番号 無効2002-35301 
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-07-17 
確定日 2004-10-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4274018号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4274018号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4274018号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,時計,記念カップ,記念たて,キーホルダー」を指定商品として、平成9年6月23日に商標登録出願、同11年3月1日に登録査定、同年5月21日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由の要旨を次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第76号証を提出した。
1 原産地統制名称「CHAMPAGNE」(シャンパン)について
請求人は、「シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会」を意味する「COMITE INTER PROFESSIONNEL DU VIN DE CHAMPAGNE」(略称「C.I.V.C.」)の名のもとに、フランス国シャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護を目的の一つとして設立されたフランス法人である(甲第15号証及び甲第40号証及び甲第55号証並びに甲第67号証ないし甲第69号証)。
原産地表示は、需要者・取引者にとって、商品の選択に際して極めて重大な意味を有することは言うまでもなく、パリ条約における原産地等の虚偽表示の取締に関する規定、及び誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定の精神は、最大限に尊重されなければならない。
フランスにおいては原産地表示が特に厳格に統制されており、その中核をなすのが、1935年に制定された原産地統制名称法(Appellation d’Origine Controlee)である(甲第5号証、甲第6号証、甲第9号証、甲第20号証、甲第40号証、甲第50号証、甲第52号証、甲第53号証及び甲第67号証)。この法律は優れた産地のワインを保護・管理することを目的とし、政府の機関 「Institut National des Appellation d’Origine」(略称「INAO」)によって運用されている(甲第42号証、甲第50号証、甲第51号証、甲第54号証及び甲第55号証)。同法において原産地統制名称ワイン(A.O.C.)は、原産地、品質、最低アルコール含有度、最大収穫量、醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず、その基準に合格してはじめてA.O.C.名称を使用することができるのである。しかし、鑑定試飲会の際に不適当であるとみなされたものは、名称使用権利を失うことになっており、厳格な品質維持が要求されている。原産地統制名称は、産地の名称を法律に基づいて管理し、生産者を保護することを第一の目標とし、また名称の使用に対する厳しい規制は、消費者に対して品質を保証するものとなっている。
「CHAMPAGNE」(シャンパン)は、同法による原産地統制名称に他ならず、シャンパーニュ地方産の発泡性ワインにのみ使用を許される名称であって、この表示を付した商品(シャンパン)は、わが国においても広く販売されており、産地を表示する標章の代表的なものの一つとして極めて著名となっている(甲第3号証ないし甲第51号証)。
2 商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、上段に「CHAMPAGNE」の欧文字を、下段に「シャンパン」の片仮名文字を二段に横書きにしてなる構成であるところ、上述した著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」「シャンパン」の文字と同一の構成文字からなる商標であることは明らかである。
(1)著名標章の保護について
ここで、「CHAMPAGNE」の文字は、上述したように著名なフランスの原産地統制名称として、その使用が厳格に管理・統制されているものであって、その長年にわたる厳しい品質統制・品質管理により、「CHAMPAGNE」という原産地統制名称自体に高い名声、信用、評判が形成されている。
ところで、著名商標の保護については、近年、周知・著名商標の保護の明確化の要請が高まってきたことに伴い、国内又は外国において広く認識されている商標が不正な目的で使用されることを防ぐことを目的として、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)により、第4条第1項第19号の規定が不登録事由として明記されている。「商標審査便覧」においては、商標法第4条第1項第19号の趣旨に関して、次のように説明されている。
「多年に亘って企業が努力を積み重ね、多大な宣伝広告費を掛けることにより、需要者間において広く知られ、高い名声、信用、評判を獲得するに至った周知、著名商標は、十分に顧客吸引力を具備し、それ自体が貴重な財産的価値を有するものといえる。これらの周知、著名商標については、第三者の使用により出所の混同のおそれまではなくとも、出所表示機能を稀釈化させたり、その周知、著名商標のもつ名声を毀損させることが可能であり、このような目的を持った不正な使用から十分保護する必要がある。」
産地を表示する標章のうち、著名な標章については、上記した著名商標の保護と同様に、十分に保護されるべきである。
即ち、原産地統制名称「CHAMPAGNE」は、上述したINAOや請求人らによる長年にわたる厳格な品質管理・品質統制の努力の結果、高い名声、信用、評判を得ており、ワインの商品分野に限られることなく一般消費者に至るまで、世界的に著名な標章である。
本件商標は、この著名標章「CHAMPAGNE」の文字を含むものであり、その高い名声・信用・評判にフリーライド(ただ乗り)するものであることが明らかであって、原産地統制名称ワイン以外の商品たる本件指定商品に使用されるときには、厳格に管理統制されている前記原産地統制名称としてのイメージが稀釈化され、その著名標章のもつ高い名声・信用・評判が毀損されるおそれがある。
従って、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」もまた、その高い名声・信用・評判の稀釈化から十分に保護されるべきである。
(2)商標法第4条第1項第7号の該当性について、
商標法は、不正競争防止法と並ぶ競業法であって、登録商標に化体された営業者の信用の維持を図ると共に、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持することが目的とされている。そして、商標法第4条第1項第7号は、前記目的を具現する条項の一つであり、過去の審判決例によれば、その商標の構成自体が矯激、卑猥な文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念に従って検討した場合に、当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反する場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標、若しくは国際信義に反するような商標である場合も含まれるものとみるのが相当と解されている(昭和58年審判第19123号、平成7年1月24日審決)。
また、商標法第4条第1項第7号公序良俗に関する具体的解釈として「名声を僭用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもってなされたものと認められる限り、商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきであるから、商標法第4条第1項第7号によって該商標の登録を受けることができないものと解すべきである」ということは東京高等裁判所判例の示すところである(ユベントス事件:東京高裁平成10(行ケ)11号・12号判決)。
本件商標は、原産地統制名称として著名な標章「CHAMPAGNE」の高い名声・信用・評判にフリーライドするものであり、厳格に管理統制されている前記原産地統制名称を稀釈化させるものであって、このような商標を登録することは、前記商標法の目的にそぐわないものというべきである。また、本件商標は著名標章である「CHAMPAGNE」の名声を僭用し、「CHAMPAGNE」に化体している高い名声・信用・評判から不正な利益を得ようとしているもの、すなわち、不正な利益を得るために使用する目的でなされたものであるから、上記判例の示すように公序良俗を害するものというべきである。
(3)異議決定例
「Pink Champagne」の欧文字と「ピンク シャンペン」の片仮名文字とを上下二段に併記してなり、「はき物」等を指定商品とする別件商標「Pink Champagne / ピンク シャンペン」(旧第22類、商願平01-004136号)は、その登録異議申立てについての決定において、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている(甲第57号証及び甲第58号証)。
また、「ロマネコンチ」の片仮名文字と「ROMANEE-CONTI」の欧文字を二段に書してなり、第23類「糸(脱脂屑糸を除く。)」を指定商品とする別件商標「ロマネコンチ /ROMANEE-CONTI」(第23類、商願平04-106912号)及び「ボジョレー ヌーボー」の片仮名文字及び「BEAUJOLAIS nouveau」の欧文字を二段に書してなり、第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品とする別件商標「ボジョレー ヌーボー /BEAUJOLAIS nouveau」(第25類、商願平07-057117号)においても、その異議申立ての決定において、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている(甲第61号証、甲第62号証、甲第65号証及び甲第66号証)。
(4)諸外国でのケースについて
著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」が、その著名標章の信用へのフリーライドから引き起こされる不利益から保護されるべきであることは、請求人らがフランス・イギリス・スイス等において提訴した事件において認められている(甲第55号証、甲第56号証及び甲第69号証)。
(5)小括
このように、著名標章である原産地統制名称「CHAMPAGNE」は、フランス国の政府機関たるINAOや請求人(C.I.V.C.)等による不断の努力によって、高い名声・信用・評判が維持されているのであって、これを、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し使用することは不正な利益を得るために使用する目的でなされたものであるから、商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして公序良俗を害するものであるというべきである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものというべきある。
3 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上段に「CHAMPAGNE」の欧文字を、下段に「シャンパン」の片仮名文字を二段に横書きにしてなる構成であるところ、上述した著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」「シャンパン」の文字と同一の構成文字からなる商標であることは明らかである。
従って、本件商標と原産地統制名称「CHAMPAGNE」は高い類似性を有しているというべきである。
(2)出所混同について
原産地統制名称「CHAMPAGNE」は、証拠中の酒類に関する図書に限らず、一流品を紹介する雑誌等の一般の図書および新聞において紹介されている。このことから、原産地統制名称「CHAMPAGNE」の著名性は、食品分野の取引者・需要者に限られることなく一般に及んでおり、高い著名性を獲得しているというべきである。
本件商標は上述した著名な原産地統制名称「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」からなる構成であることから、取引者・需要者が本件商標の使用された商品に接する場合には、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」を容易に想起するものである。従って、本件商標と原産地統制名称である「CHAMPAGNE」とは高い類似性を有しているものというべきである。
また、原産地統制名称「CHAMPAGNE」が対象としている商品は、比較的高価なものであって、結婚式や記念式典等の儀式において飲まれる機会が多いものである。一方、本件商標の指定商品である貴金属類も比較的高価なものであることから、両者の使用される商品の取引者及び需要者はかなりの割合において重なり合い、共通するものであると思われる。さらに、上述したように一流品を紹介する雑誌等においても「CHAMPAGNE」が紹介されている事からもまた、両者の取引者・需要者は共通するというべきである。従って、本件商標の指定商品と原産地統制名称の対象となる商品は高い関連性を有しているというべきである。
以上の実情を考慮すると、本件商標はその使用する商品の出所に関して混同を生ずるおそれのある商標というべきである。
(3)商標法第4条第1項第15号の趣旨
最高裁判所における判決例(平成10年(行ヒ)85 審決取消請求事件)において、以下のように、商標法第4条第1項第15号の趣旨から、フリーライド及びダイリューションを引き起こすような広義の混同を生ずる商標をも商標法第4条第1項第15号に該当すべきと判示されている。
「けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の稀釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他商品識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。」
本件においても、本件商標「CHAMPAGNE/ シャンパン」が、著名な原産地統制名称「CHAMPAGNE」に化体した高い名声及び信用にフリーライドすることによって、当該表示の稀釈化が引き起こされるというべきである。従って、本件商標の登録は、その趣旨から考えてもまた商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
(4)異議決定例
「Romanee Contie」及び「since 1987」の欧文字を二段に横書きし図案化してなる別件商標「Romanee Contie/since 1987」(指定役務第42類「宿泊施設の提供」、商願平04-272200)は、その異議申立ての決定において、商標法第4条第1項第15号に該当するものと判断されている(甲第63号証及び甲第64号証)。
(5)小括
以上のことから、本件商標が原産地統制名称「CHAMPAGNE」と同一の構成文字からなる商標であって、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」を容易に想起させるものであり、また原産地統制名称「CHAMPAGNE」が高度な著名性を獲得しているなどの前記実情を考慮すると、本件商標がその指定商品に使用される時には、これに接する取引者・需要者は恰も原産地統制名称「CHAMPAGNE」の使用を許されたもの若しくはそのものと経済的又は組織的に何等かの関係があるものの業務にかかる商品であるかと誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
4 商標法第4条第1項第16号の該当性について
「CHAMPAGNE」は、原産地統制名称として著名な地名である。
即ち、「CHAMPAGNE」は、原産地統制名称ワインに使用される産地を表示する標章として著名なものであることは上述したとおりであり、この産地名は、フランス国北東部に位置するパリ盆地東部の地方をあらわす地方名称である。
「CHAMPAGNE」の文字をその構成の一部に有する商標であって、「かばん類、袋物」を指定商品とする別件商標「Petit Champagne」(旧第21類、商願平02-141193号)は、その登録異議申立てについての決定において、商標法第4条第1項第16号に該当するものと判断されている(甲第59号証及び甲第60号証)。
なお、地名と品質誤認を生じる場合の指定商品との関係について、「必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され、または販売されていることを要せず、需要者または取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され、または販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りる。」ことは、最高裁判所の判例の示すところである(最高裁昭和60(行ツ)第68号)。
したがって、上記事情を考慮すると、本件商標は前記原産地統制名称として世界的に著名な地名となっている「CHAMPAGNE」そのものであることから、本件商標を「CHAMPAGNE」産以外の商品に使用するときには、その商品の産地について誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
(4)結び
以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、第15号及び第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由の要旨を次のとおり述べた。
1 商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、欧文字を「CHAMPAGNE」と左横書きし、その下部中央寄りに片仮名文字を「シャンパン」と左横書きしたものである。
しかるに、上記した構成からなる本件商標は、これが商標法第4条第1項第7号に該当するには、商標自体が矯激な文字や卑猥な図形など秩序又は風俗をみだすおそれのある文字、図形、記号又はそれらの結合等から構成されている場合及び商標の構成自体はそのようなものでなくても、それを指定商品に商標として使用することが、社会公共の利益に反し、又は、社会の一般的道徳観念に反するような場合、或いは、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、更には、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標でなくてはならない。
しかしながら、本件商標は、上記した通りの構成であるから、商標自体は前記の不登録事由には明らかに該当しないとともにその指定商品も「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・塩振り出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,時計,記念カップ,記念たて,キーホルダー」であるから、これらの商品に使用することが、秩序又は風俗をみだすことにも該当するものではない。
しかし、請求人は、「原産地統制名称として著名な標章『CHAMPAGNE』の高い名声・信用・評判にフリーライドするものであり、厳格に管理統制されている前記原産地統制名称を希釈化させるものであって、このような商標を登録することは、法目的にそぐわないものというべきである。」と主張するとともに、また、「本件商標は著名標章である『CHAMPAGNE』の名声を僭用し、『CHAMPAGNE』に化体している高い名声・信用・評判から不正な利益を得ようとしているもの、すなわち、不正な利益を得るために使用する目的でなされたものであるから、公序良俗を害するものというべきである。」と主張するが、これが一般的に営利を目的とする事業の商品に使用すること自体が、社会公共の利益に反するものであるとは到底考えられないと共に被請求人の使用が公正な競業秩序を乱したり或いは国際信義に反するが如き行為に該当するものでもない。
なお、商標法第4条第1項第7号の解釈にあたっては、むやみに解釈の幅を広げるべきではなく、1号から6号までを考慮して行うべきであることが、逐条解説において特記されていることを考慮すべきである。
2 商標法第4条第1項第15号の該当性について
本件商標は、前記の如く欧文字と片仮名文字との構成から成るものであるが、これが商標法第4条第1項第15号に該当する場合は、例えば、特許庁商標課編集で社団法人発明協会発行の商標審査基準〔改訂第7版〕41頁で明記している如く、「その他人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合をもいう。」である。
しかして、被請求人は、請求人が引用する標章「CHAMPAGNE」が、フランス国シャンパーニュ地方産の発泡性ワインにのみ使用されている原産地統制名称として著名であることは、これを否定するものではない。
そもそも「CHAMPAGNE」の語は、フランス国北東部に位置する地方を表す単なる地方名称であって、これが「発泡性ワイン」のために創造された標章ではなく、フランス国シャンパーニュ地方産の発泡性ワインについての原産地統制名称にすぎない。
したがって、本件商標は、その指定商品が「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・塩振り出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,時計,記念カップ,記念たて,キーホルダ-」であるから、フランス国北東部に存する単なる地方名である「CHAMPAGNE」は、厳格に管理統制されている「発泡性ワイン」の生産においてのみ世界的に著名なものであり、本件商標の指定商品についての生産地又は販売地としては著名ではなく無関係であるから、何ら商品の出所について混同を生ぜしめるおそれはない。
このことは、フランス国シャンパーニュ地方の発泡性ワイン業者が多角経営を盛んに行っているという事実がないと共に「発泡性ワイン」と「本件商標における指定商品」間の関連性もなく、また、両商品における取引の実情についても明らかに異なるルートであることからしても、商品の出所について混同が生ずるおそれはないのである。
3 商標法第4条第1項第16号の該当性について
本件商標が、この規定に該当するかは、指定商品につき、その品質がその商品に現実に存在すると否とを問わず、その商品が有する品質が需要者において誤認される可能性がある場合をいうのであるから、請求人の引用した標章に係る商品「発泡性ワイン」の果実酒とは、その商品を顕著に異にした貴金属等の商品であることから、本件商標を付した商品に一般需要者が接しても、その商品の品質、効能等の特性を誤認するおそれは全くあり得ないことである。
4 他の既登録商標について
被請求人が引用した標章と同一又は類似した既登録商標が、次に示す記登録商標ををはじめ多数登録されているにも係わらず、未だ被請求人の商品と混同を生じたり、或いは、商品の品質の誤認を生じた事実が無いことからしても、本件商標が請求人の主張する商標法第4条第1項第15号及び同条同項第16号に該当しないことは明白である。
(1) 商 標 シヤンペン
登録番号 第1196645号 昭和51年4月22日登録
商品区分 旧第20類
(2) 商 標 CHAMPAGNE/シヤンパン
登録番号 第535564号 昭和34年4月20日登録
商品区分 旧第3類
(3) 商 標 CHAMPAGNE DIAMOND
登録番号 第2455872号 平成4年9月30日登録
商品区分 旧第6類
(4) 商 標 Pink Champagne
登録番号 第4265264号 平成11年4月23日登録
商品区分 第25類
5 結び
上記の如く、本件商標「CHAMPAGNE/シャンパン」は、商標法第4条第1項第7号、第15号及び第16号に該当しないこと明らかである。

第4 当審の判断
1 Champagne(シャンパン)の著名性について
請求人の提出した甲各号証によれば、「CHAMPAGNE」「シャンパン」に関して、
(1)「コンサイスカタカナ語辞典」(1996年10月1日株式会社三省堂発行)によれば、437頁には、「シャンパン 」(Champagne)の見出しの下に「発泡ワインの一種,フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒。白ぶどう酒に糖分を加え発酵させ、香料を配し、びん詰にして1年以上貯蔵する。多量の炭酸ガスを含みさわやかな香味をもつ。祝宴に多く用いられる。シャンペンとも。日本では中国名『三鞭酒』を借りてシャンペンと読んでいた。シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリング-ワインと呼んで区別される。」旨の記載があること(甲第3号証)、
(2)「広辞苑 第5版」(1998年11月11日株式会社岩波書店発行)によれば、1248頁には、「シャンパーニュ」( Champagne)の見出しの下に「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。中心都市ランス」との記載があり、また「シャンパン」( Champagne)の見出しの下に「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。発酵の際に生じた炭酸ガスを含み、一種爽快な香味がある。」旨の記載があること(甲第4号証)、
(3)「新版 世界の酒辞典」(1982年5月20日株式会社柴田書店発行)によれば、228頁には、「シャンパン」(Champagne)の見出しの下に「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン。正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で、各種のスパークリング・ワインがつくられているが、このうちシャンパンと呼ばれるものは、フランスのシャンパーニュ地方、特にプルミュール・ゾーン(ランス山とマルヌ谷との一等地)、ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている。」との記載があること(甲第5号証)、
(4)「明治屋酒類辞典」(昭和63年8月1日株式会社明治屋本社発行)によれば、202頁には、「Champagne(仏)(英)シャンパン」の見出しの下に「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって、何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは、マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし、その地域内で、『シャンパン法』でつくった『白』スパークリングワインである。最高生産量にも制限があって、それを越えた部分には形容詞がつく。」との記載があり、209頁ないし211頁 には、「統制名称」の見出しの下に「シャンパンは、詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて、『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。」、「要するにシャンパンの条件は(ア)シャンパン地区の生産であること。(イ)シャンパン法(ビン内で後発酵を行い、発生したガスをビン内に封じ込める)で製造したものであること。(ウ)白ワインであること。(原料ブドウには黒ブドウと白ブドウとを、メーカーの秘伝で混和するけれど、でき上がりは白ワインである)(エ)その年度の最高の生産高に制限があること、の4条件を備えなければならない。」及び「戦前、我が国でもシャンパンの名称を乱用した歴史があるが、敗戦の結果、サンフランシスコ講和条約の効果として、マドリッド協定に加入を余儀なくされ、以来フランスの国内法を尊重している。」等の記載があり、212頁には、「供し方の注意」の見出しの下に「乾杯用に用いられるのは、ポンという景気のよい爆音、黄金色の酒の美しさ、泡立ちの快さによる。」との記載があること(甲第6号証)、
(5)「ワイン紀行」(1991年9月25日株式会社文藝春秋発行)によれば、シャンパンの歴史及び製造過程についての記載があること(甲第7号証)、
(6)「洋酒小事典」(昭和56年6月15日株式会社柴田書店発行)によれば、95頁 には、「シャンペン Champagne」の見出しの下に「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワインの総称。」との記載があること(甲第8号証)、
(7)「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(1996年9月 30日日本経済新聞社発行)によれば、「私たちはシャンパーニュという言葉を聞いただけで、心が浮き浮きしてくる。それだけシャンパーニュは特別な意味を持ったワインなのだ。近頃は日本でもシャンパーニュが本格的にレストランやワインバーで飲まれるようになったのはうれしい限りだ。」との記載があること(甲第10号証)、
(8)「最新版 The ワイン & コニャック アルマニャック」(昭和62年10月14日第一刷、発行日不明、読売新聞社発行)によれば、シャンパーニュ地方の様子及びシャンパンと食事との関わり合いについての記載があり、14頁には、「シャンパーニュ地方でつくられる、発泡酒だけに名付けられるシャンパン」との記載があること(甲第11号証)、
(9)「世界の酒4 シャンパン」(1990年6月30日株式会社角川書店発行)によれば、6頁には、「シャンパーニュの丘」の見出しの下に「シャンパーニュのワインの歴史に、さらにひとつの栄光のエピソードが加わった。それは発泡性ワインの誕生である。この画期的な発見、発明は、その後の研究者たちの努力によって、発泡性ワイン、シャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」との記載があり、8頁には、「シャンパーニュのブドウ畑」との見出しの下に「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。.....シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」との記載があること(甲第12号証)、
(10)「ザ・ワールドアトラス・オブ・ワイン」(1991年5月27日第1刷、発行日不明、日本映像出版株式会社発行)によれば、58頁には、「フランス」の見出しの下で「フランスは勤勉で感覚的なだけでなく、実に組織的だ。栽培地を規定し、分類し、管理している。どの地所が一番優れているかを、ほぼ200年にもわたって整然とリストアップし続けている。過去60年前後、こうした仕事はワインそのものだけでなく、消費者の保護という点で世界的な関心事として次第に重要性を増している」との記載があり、110頁には、「シャンパーニュ」の見出しの下に「シャンパンがどれも、世界中の他のどんな発泡性ワインにも勝るというのは言い過ぎだろう。さまざまなシャンパンがあるのだから。しかし、申し分ないシャンパーニュには、さわやかさと鋭敏さ、芳醇さ、混じりけのなさといったものの組み合わせ、それに優しく刺激してくれるアルコールの強さが見られ、他の追随を許さない。」との記載があること(甲第13号証)、
(11)「世界のワインカタログ1999by Suntory」(1998年12月1日サントリー株式会社発行)によれば、242 頁には、左上に「シャンパーニュ」の文字を小さく「Champagne」の文字を大きく横二段に表し、「シャンパーニュ(Champagne)A.O.C.ワイン地域図」の見出しの下にその地域図の記載があり、243 頁には、「シャンパーニュ」の見出しの下に「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界的で最も有名なワインのひとつです。その名にふさわしく、大変手間のかかる伝統的な手法をかたくなに守り続けて、素晴らしい風味を生み出しています。」との記載があること(甲第14号証)、
(12)「料理王国1月号別冊 季刊ワイン王国 NO.5」(2000年1月20日株式会社料理王国社発行)によれば、80頁には、「ひとくちにシャンパンといっても一様でないのはそれもそのはず、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(C.I.V.C.)がまとめているすべての醸造元の数は5200にものぼる。委員会は、シャンパン消費量上位10カ国に外国事務所をおいて、『シャンパンと呼べるのは、シャンパーニュ地方産スパークリングワインだけ』ということを訴えてきたが、’93年頃から『5200の醸造元があれば5200様のシャンパンがある』ということもアピールするようになった。」との記載があること(甲第15号証)、
(13)「世界の名酒事典’80改訂版」(昭和55年5月30日株式会社講談社発行)によれば、248頁には、「スパークリング・ワイン」の見出しの下部に「グラスに注ぐと、軽やかな細かい泡が立つ、華やかなワイン。発泡酒といわれ、第二次発酵ののち、グラスに注いだとき泡立つワインをいう。シャンパンがその代表で、別格扱いされているが、世界のワイン地帯には、ほとんどある。」との記載があり、「シャンパンの故郷ランス」の見出しの下にシャンパンの特徴及び製造法及び地理についての記載があること(甲第16号証)、
また、「世界の名酒事典」の’82-’83年度版、’84-’85年度版、’87-’88 年版、’90年版ないし’93年版、’95年版ないし2000年版においてもほぼ同内容の記載があり、製品の紹介がされていること(甲第17号証ないし甲第30号証)、
(14)「世界の名酒事典’90年版」(1989年12月22日株式会社講談社発行)によれば、7頁ないし13頁には、「シャンパンの楽しみ」と題して対談が記載され、215 頁には、「ワインの法律」との見出しの下に「ヨーロッパではEC(欧州共同体)においてワイン法を制定し、加盟各国はこれに基づいてそれぞれ国内法を設けている。」との記載及びECのワイン法に基づく品質区分例として、フランスにおける指定地域優良ワインはV.D.Q.S.ワインとA.O.C. ワインとの記載があり、「ワインのタイプ」の見出しの下に、スパークリング・ワイン(発泡性ワイン)について「シャンパンに代表されるように、発酵中の炭酸ガスを瓶の中に閉じ込めて、発泡性をもたせたワイン。シャンパンは原産地呼称法上定められた名称で、フランスのシャンパーニュ地方産に限られる名称。」との記載があること(甲第20号証)、
(15)「世界の名酒事典’94年版」(1993年12月9日株式会社講談社発行)によれば、12頁及び13頁には、映画にかかわるシャンパンについて、例えば、「『肉料理には赤いワイン、魚には白いワイン、そして恋にはシャンパンを』といったのは『昼下がりの情事』(57年、ビリー・ワイルダー監督)のオードリー・へプバーン。」のように多数紹介されていること(甲第24号証)、
(16)「世界の名酒事典2000年版」(1999年(平成11年)11月15日株式会社講談社発行)によれば、16頁ないし22頁には、「ミレニアム・シャンパーニュ紀行」との見出しの下にシャンパンメーカー及びシャンパーニュ地方についての記載があること(甲第30号証)、
(17)「The 一流品 決定版」(1986年4月17日読売新聞社発行)によれば、260頁には、「スパークリングワイン シャンパン」の見出しの下部に「スパークリングワイン、発泡性で炭酸ガスを多量に含んだワインである。いちばん有名なのがシャンパン。フランスではマルヌ、オーブ、エーヌ、セーヌ・エ・マルヌ四県のブドウ畑でとれたものを原料にしたものだけを本当のシャンパンと証明している。祝祭典や結婚式、誕生日などの華やいだ場所で乾杯用として使われる、歓びを演出する酒でもある。」との記載があり、以下に著名なシャンパンが紹介されていること(甲第31号証)、同誌PART2(1987年4月20日発行)、PART3(1988年5月6日発行)及びPART4(1989年6月16日発行)にも同様の趣旨の記載があること(甲第32号証ないし甲第34号証)、
(18)「家庭画報特選 Made in EUROPE ヨーロッパの一流品 女性版」(昭和57年11月1日株式会社世界文化社発行)によれば、198頁 には、「女性を美しくする唯一の飲み物-シャンパン」の見出しの下に、「シャンパンという名称は、フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡性ワイン(スパークリング・ワイン)の総称で、それ以外のものは単にスパークリングと呼ばれます。」との記載があり、製品が紹介されていること(甲第35号証)、
(19)「家庭画報編女性版 世界の特選品’84」(昭和58年11月1日株式会社世界文化社発行)によれば、217頁には、「CHAMPAGNE シャンパン」との見出しの下に、「パリから170 キロ東の、ランスより南一帯がシャンパーニュ地方。ここでつくられる発泡性ワインがシャンパンです。」との記載があること(甲第36号証)、
(20)「男の一流品大図鑑’86年版」(昭和60年12月1日株式会社講談社発行))によれば、191頁には、CHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されており(甲第37号証)、同誌’87年版及び’88年版においても同様にCHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されていること(甲第38号証及び甲第39号証)、
(21)「はじめてのシャンパン&シェリー」(1999年株式会社宙出版発行)によれば、132頁には、「一目で分かるシャンパンのデータ」の見出しの下に、1998年における上位10カ国へのフランスからの国別出荷量等がグラフにより示されており、我が国への出荷量については、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで多く298万本(750ml、以下同じ。)であること及びフランスからの総出荷量は、1993年が22909万本、1998年が29246万本であって、この間ゆるやかに上昇を続けている旨の記載があること(甲第40号証)、
(22)昭和64年1月5日付け日本経済新聞夕刊によれば、「シャンパン(産地)」との見出しの下に「シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワイン(発泡酒)のこと。グラスに注ぐと軽やかな細かい泡が立つ華やかなワインだ。シャンパーニュ地方はパリの北東、約百七十キロにあり、同国のブドウ産地では最も北に位置する寒い地域」との記載があること(甲第41号証)、
(23)平成元年6月13日付け日本経済新聞夕刊によれば、「シャンパン人気急上昇中」の見出しの下に「結婚披露宴の乾杯用かクリスマス・ディナーの小道具--これまで限られた出番に甘んじていたシャンパンなど発泡性ワインの人気が急上昇している。」などを内容とする記事があり、また「発泡性ワイン輸入量5割増」との見出しの下に「現在ではフランスの原産地名称国立研究所(INAO)により、『シャンパン』と名のれるのはその『生誕地』シャンパーニュ地方の発泡性ワインのみと規定されている。」との記載があること(甲第42号証)、
(24)平成2年1月11日付け日本経済新聞夕刊によれば、「シャンパン」の見出しの下に「はじける泡や優雅な味のシャンパン。結婚披露宴やクリスマスパーティーだけでなく、入学式や誕生日などにも登場することが多くなった。炭酸ガスを含む発泡性ワインは各国にあるが、『シャンパン』を名乗れるのはフランスのシャンパーニュ地方産だけ。・・・最近のパーティーブームに加えて、昨年4月の酒税改正で2割程度価格が下がったことから、人気急上昇。」との記載があること(甲第43号証)、
(25)平成2年1月27日付け朝日新聞によれば、「日本の昨年のシャンパン輸入が初めて百万本を突破し、前年に比べて実に66.65%増の128万本に達した・・・日本の輸入の伸び率は世界一。輸入量も、カナダの147万本に次いで世界第10位にのし上がった。」との記載があること(甲第44号証)、
(26)平成2年11月16日付け朝日新聞によれば、「商品の外国地名使用ご用心」との見出しの下に「祝賀パーティーの乾杯に欠かせないシャンパンといっても、厳密には『シャンパン』と『スパークリング(発泡性)ワイン』の区別がある。どちらも泡の立つ白ワインに違いはないが、前者はフランスのシャンパーニュ地方産、後者はそれ以外の国や地域で製造されたものをさす。・・・欧州共同体(EC)は『スパークリング・ワイン』を勝手に『シャンパン』として売るな、と主張している。」との記載があること(甲第45号証)、
(27)平成3年4月27日付け朝日新聞によれば、「スパークリングワイン」の見出しの下に「・・・スパークリングワインが最近、人気を集めています。お祝いの席の乾杯の酒から、友人たちといつでも気軽に楽しめる飲み物に変わってきているようです。代表的な銘柄であるシャンパンの高級品は一本数万円しますが、・・・」との記載があり、「シャンパンはシャンパーニュ地方で、瓶内発酵法によってつくるなど、法律で基準が細かく決まっており、この地方以外でつくられるスパークリングワインをシャンパンと呼ぶのは禁止されている。」との記載があること(甲第46号証)、
(28)平成4年7月27日付け毎日新聞夕刊によれば、「ワインの里を疾走」との見出しの下に「『シャンパン』はフランスのシャンパーニュ地方だけで作られるワインの発泡酒の名称。」との記載があること(甲第47号証)の各事実が認められる。
これらの認定事実によれば、「Champagne」「シャンパン」の語は、「Champagne」の語がフランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、「Champagne」を表す邦語として「シャンパン」が普通に使用されていること、シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、世界的に有名な映画でシャンパンが使用されていること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍、雑誌及び新聞などにおいてシャンパンについての説明がなされていること、世界の名酒事典などにおいてシャンパンの具体的製品が紹介されていること、ポンという景気のよい爆音、黄金色の酒の美しさ、泡立ちの快さなどから乾杯用としてシャンパンが用いられることが多いこと及び我が国の1998年におけるシャンパン輸入量が世界第7位で298万本(750ml)と多いことなどが認められ、これらを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願当時(平成9年(1997年)6月23日)はもとより登録査定時(同11年(1999年)3月1日)を含むその後においても、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているというのが相当である。
なお、被請求人は、請求人が引用する標章「CHAMPAGNE」が、フランス国シャンパーニュ地方産の発泡性ワインにのみ使用されている原産地統制名称として著名であることについて、否定していない(答弁書3頁16行ないし18行)。
2 商標法第4条第1項第7号の該当性について
請求人は、原産地統制名称として著名な標章「CHAMPAGNE」にフリーライドするものであり、同標章を希釈化させるものであって、このような商標を登録することは、法目的にそぐわない旨及び本件商標は「CHAMPAGNE」の名声を僭用し、同標章に化体している高い名声・信用・評判から不正な利益を得るために使用する目的でなされたものであるから、公序良俗を害するものというべきである旨主張しているのに対し、被請求人は、これが一般的に営利を目的とする事業の商品に使用すること自体が、社会公共の利益に反するものであるとは到底考えられないとともに被請求人の使用が公正な競業秩序を乱したり或いは国際信義に反するが如き行為に該当するものでもない旨主張しているので、この点について検討する。
原産地名称は、商品が産出された土地の地理的名称をいい、商標とは地理的名称に限定されること及びその商品の品質、社会的評価、その他の特性が、産出地固有の気候、地味等の自然条件又は産出地の人々が有する伝来の生産技術、経験若しくは文化等の人的条件といった地理的要因に基づくこと等の点において異なるが、商標とは商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有する点において共通しているものである。そうすると、著名な原産地名称の有する前記機能は、法律が許容する限り、著名商標の有するこれらの機能が商標法によって保護されているのと同様に保護されることが望ましいものである。したがって、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」には、著名な原産地名称を含む表示からなる商標を同法第4条第1項第17号によって商標登録を受けることができないとされているぶどう酒又は蒸留酒以外の商品に使用した場合に、当該表示へのただ乗り(フリーライド)又は当該表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある等公正な取引秩序を乱すおそれがあると認められるものや国際信義に反すると認められるものも含まれると解すべきである。
そこで、上述した観点から本件について検討する。
フランスにおける「Champagne」「シャンパン」の名称の保護に関しては、前記認定事実のほか、「フランスのワインとスピリッツ」(1987年フランス食品振興会発行)によれば、18頁ないし20頁 には、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(1)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)(2)V.D.Q.S.(上質限定ワイン)(3)ヴァン・ド・ペイ(地酒)(4)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質限定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C.(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.S.ワインに適用される規制より更に厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件などの基準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.S.ワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載されていること、20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「シャンパーニュ CHAMPAGNE」が記載されていること(甲第9号証)、フランスでは、1935年7月30日に原産地統制名称についての政令を制定し、INAOは原産地統制名称のぶどう酒が満たすべき生産地域、ぶどうの品種、収穫量、最低アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、またフランス国内及び国外で原産地統制名称を保護することができる旨などを規定していること(甲第50号証、甲第51号証、甲第53号証及び甲第54号証)、原産地統制名称「CHAMPAGNE」の条件を定めていること(甲第52号証及び甲第53号証)、INAOは請求人などとともにフランス国内及び国外で原産地統制名称の保護の活動をしていること(甲第50号証、甲第51号証、甲第53号証ないし甲第56号証、甲第67号証ないし甲第69号証)の各事実が認められる。
以上によれば、本件商標は、前記のとおり「CHAMPAGNE」「シャンパン」の語を書してなるところ、該語が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして登録出願時はもとよりその後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること並びにフランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、これを指定商品に使用するときは、著名な「CHAMPAGNE」「シャンパン」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものであるというのが相当ある。
3 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、その余の請求人の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標(登録第4274018号商標)


審理終結日 2004-08-25 
結審通知日 2004-08-27 
審決日 2004-09-15 
出願番号 商願平9-130387 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Z14)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 宮川 久成
小林 薫
登録日 1999-05-21 
登録番号 商標登録第4274018号(T4274018) 
商標の称呼 シャンパン 
代理人 田中 克郎 
代理人 橘 哲男 
代理人 稲葉 良幸 

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