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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200225215 審決 商標
不服200322975 審決 商標
不服20035262 審決 商標
不服2003853 審決 商標
不服200225216 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 025
管理番号 1104580 
審判番号 無効2000-35182 
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-04-10 
確定日 2004-10-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4136718号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成14年2月19日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成14年(行ケ)第151号 平成14年12月26日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4136718号商標(以下、「本件商標」という。)は、後掲のとおりの構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,帽子,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成8年10月1日に登録出願、同10年4月17日に商標権の設定登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番を含む。)を提出した。
1.無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、無効にすべきものである。
2.無効原因
本件商標は、請求人の氏名と全く同一である。すなわち、本件商標は、請求人の氏名である「セシル マクビー(英文字ではCECIL McBEE)」と全く同一であるばかりでなく、英文字の「CECIL McBEE」の下に、カタカナ文字で「セシル マクビー」と横書きしてなるものである。
請求人は、ジャズ・ミュージシャンとして、世界的に知られており、日本のジャズ・ミュージシャンとして著名な山下洋輔とコンビを組んで、日本でもミュージック・ショーをしばしば開いている。
請求人は、著名な請求人の氏名が、被請求人によって、請求人の承諾を得ずに本件商標が登録されていることを知り、請求の趣旨の審決を求めるものである。
3.答弁に対する弁駁
(1)本件商標の出願日は、平成8年(1996)10月1日であり、更に、被請求人の関連登録第1948509号商標「セシルマックビー」(昭和34年法 第17類「被服、その他本類に属する商品」)の出願日は昭和59年(1984年)10月23日である。
(2)請求人が山下洋輔とニューヨークではじめて出会ったのは、被請求人が主張するとおり、その後の1988年7月である(甲第7号証の1及び2)。
しかしながら、請求人は、はるか以前からニューヨークのミュージック・ジャズの世界に登場し著名となっていたのであって、1976年12月16日に発行された音楽雑誌「down beat」(甲第8号証の1ないし3)や発行日不詳だが同誌中に、請求人に関する文献表が掲載されており、1975年、1982年、1976年、1970年、1983年、1982年、1980年と前記関連商標出願日より10年以上も早いものまで多数散見されるのである。この他にも、1985年オクスフオード大学出版部から発行された書物にも請求人は登場している(甲第10号証の1及び2)。
(3)思うに、被請求人は、請求人の名前が日本で十分浸透していなかった頃、ニューヨークでその名を知り、商標に盗用したものである。つまり、被請求人の本件商標登録は、国際信義に反する悪質な行為といえる。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁しその理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第22号証を提出した。
1.請求人の氏名と同一であるとの主張について
請求人は、本件商標「CECIL McBEE/セシル マクビー」が自己の氏名と同一である、と主張をするが、提出された甲号証(甲第3号証の
1ないし甲第6号証)の何れからも、その証明はされ得ない。即ち、甲第3号証の1ないし甲第6号証の何れもが、ベース奏者としての請求人に関する証拠資料であり、このようなベース奏者名(演奏家名)として用いられている人物名は、必ずしも当該人の正式な氏名(フルネーム/本名)とは限らないものである。
したがって、甲各号証における「CECIL McBEE/セシル マクビー」の表記は、「雅号、芸名、筆名」と同種の人物名であることを立証するものではあっても、それが直ちに当該人の正式な氏名(フルネーム/本名)であることを証明するものではない。
2.著名性について
甲各号証で示す「CECIL McBEE/セシル マクビー」の人物名が、「雅号、芸名、筆名」と同種の人物名(演奏家名)或いは氏名(フルネーム)の略称であるとするならば、その著名性が要求されるところである。
請求人の提出に係る、音楽専門雑誌「スイングジャーナル」に掲載された演奏家の批評又は紹介記事(甲第3号証)、「企画制作会社(有限会社ジャムズライス)が配布した山下洋輔ニューヨーク・トリオのコンサートツアー及びCD発売の案内状」(甲第4号証)、「山下洋輔トリオのコンサートパンフレット又はチラシ」(甲第5号証)、「CECIL McBEE mutima」のタイトルよりなる「CDジャケット及び解説書」(甲第6号証)は、有名か無名か或いはアマチアかプロかを問わず、音楽活動を行う者達が最低限必要とする活動媒体であって、これらが存在することのみをもって該資料中に記された「CECIL McBEE」の文字が請求人名として周知著名になった、との主張は到底認められないものであり、特定人の名前(氏名、芸名、演奏家名等)を指称するものとして一般的に認識され得るものでもない。
3.指定商品と請求人との関係について
本件商標に係る指定商品は、請求人及び請求人の音楽活動とは何等の関係も関連性も有さない商品区分第25類に属する商品(被服等)であり、また、被請求人による本件商標使用の実状(使用商品、商品特性、顧客層、市場での認知度等)からしても、被請求人による本件商標の指定商品についての使用が、請求人及び請求人の音楽活動に何等の影響を与えるものではない(その逆も同様)。したがって、被請求人による本件商標の指定商品に付いての使用が、商品の出所混同を生じさせ、或いは請求人の人格権を毀損せしめるおそれは全くないというべきであり、事実、13年以上に亘る被請求人の使用実績のなかで、かかる事態は一切生じていない。
4.本件商標の採択の経緯
被請求人による本件商標の採択の動機及び経緯は、請求人の存在とは全く関係がない。
本件商標の採択は、「山下洋輔ニューヨーク・トリオ」が結成された1987年(甲第4号証の文面より推測)より以前の1984年、プランニング会社に女性服のブランド企画を依頼したことに起因し(乙第2号証)、同プランニング会社の薦めにより商標名を「CECIL McBEE(セシルマックビー)」と決定し、カタカナ文字よりなる商標「セシルマックビー」を旧第17類の商品を指定商品として出願し、1987年4月30日に登録され(乙第1号証)、当該商標の商品展開を開始したものである(乙第3号証ないし乙第20号証)。
5.被請求人商標の周知著名性について
商標「CECIL McBEE」及び商標「セシルマクビー」は、被請求人の取扱に係る商品(婦人服)に使用されている商標として、既に1987年頃より周知著名となっている。即ち、本件ブランド商品の販売開始からの使用実績は、宣伝広告の質量、展開店舗数、販売地域、販売数量、販売金額等の全てにおいて周知著名化の条件を満たすのに十分なものであり(乙第3号証ないし乙第20号証)、この被請求人による本件商標の使用実績は、請求人の音楽活動実績を圧倒的に凌駕するものであって、本件商標に接した取引者・需用者は、被請求人の取扱に係る商品(婦人服)を認識するものであって、ベース演奏家としての請求人を想起し認識することなどは到底あり得ないことである。
6.以上のとおり、本件商標が請求人の演奏家名、氏名、或いはその略称と同一であるとしても、請求人の人格権を毀損するおそれがあるものでも、商品の出所につき誤認混同を生じさせるおそれがあるものでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
本件審判事件についてした平成14年2月19日付け審決に対し、東京高等裁判所においてなされた審決を取り消す旨の判決(平成14年(行ケ)第151号)は、平成15年2月18日付けの最高裁判所による上告審として受理しない旨の決定(平成15年(行ヒ)第106号)により確定しているものである。
本件商標は、後掲のとおり、上段に大きく表された「CECIL McBEE」の欧文字と下段に小さく表された「セシル マクビー」の片仮名文字よりなるものであって、これを商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものであるとした審決に対する上記判決は、以下のように判示した。
1.「他人の氏名」について
商標法第4条第1項第8号の「他人の氏名」がフルネームでなければならないとされているのは、他人の氏名については、芸名や略称等と異なり、著名性が要件とされていないため、氏又は名だけでよいとすると、同号による保護の範囲が広がりすぎ、商標権の取得が過度に妨げられる結果を招くと考えられるからである。このような見地からすると、「他人の氏名」であるフルネームに当たるか否かの判断に当たっては、厳格な取扱いをすべきであり、外国人について、ミドルネームがある場合には、これもフルネームに含まれる、と解するのが相当である。
請求人の米国政府発行のパスポートによれば、請求人の氏名として、「Surname」が「MC BEE」であり、「Given names」が「CECIL LE ROY」であるとの記載があることが認められ、これにより、請求人のフルネーム、すなわち、全く省略されていない形で示された請求人の氏名は、「CECIL LE ROYMC BEE」であると認めることができる。
2.「著名な略称」について
商標法第4条第1項第8号の適用においては、「CECIL McBEE」は、請求人の略称であるというべきであるから、同号の適用による保護を受けるためには、それが著名でなければならない。
証拠によれば、請求人は、ジャズ・ミュージシャン(ベース奏者)として、我が国のジャズ・ミュージックの分野の者(ファンを含む。)の間では、ある程度知られているということができる。しかしながら、同号にいう著名性が認められるためには、我が国において、特定の限られた範囲にとどまらず、世間一般に、あるいは、少なくとも問題となる商標の指定商品・役務の分野で、広く知られていることが必要であるというべきである。
各証拠からは、請求人が、我が国において、ジャズ・ミュージックの分野である程度知られていることが認められるだけで、それを超えて広く知られていると認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
そうすると、我が国において、請求人の知名度は、ジャズ・ミュージックという限られた範囲にとどまっているというべきであり、請求人の略称としての「CECIL McBEE」について、同号にいう著名性を認めることはできない。
3.まとめ
然るに、審決を取り消す判決が、その事件について当事者たる行政庁である特許庁を拘束することは、行政事件訴訟法第33条第1項の規定から明らかである。
そうすると、本件商標については、上記の1及び2に示したように審決を取り消す旨の判断がされ、その判決は確定しているものであるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものとすることはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により、これを無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <後掲>
本件商標


審理終結日 2002-02-05 
結審通知日 2002-02-08 
審決日 2002-02-19 
出願番号 商願平8-110836 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 椎名 実 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 和田 恵美
高野 義三
登録日 1998-04-17 
登録番号 商標登録第4136718号(T4136718) 
商標の称呼 セシルマクビー、セシル、マックビー 
代理人 菊池 武 
代理人 野原 利雄 

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