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審決分類 審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1102961 
審判番号 無効2000-35435 
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-08-14 
確定日 2004-08-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4287330号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成14年10月1日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成15年(行ケ)第42号、平成15年11月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4287330号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4287330号商標(以下「本件商標」という。)は、「ベアー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成8年7月19日に登録出願、第25類「被服,履物」を指定商品として平成11年6月25日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用した登録第701043号商標(以下「引用A商標」という。)は、「PEAR」の欧文字と「ペア」の片仮名文字を二段に横書きしてなり、昭和37年8月15日に登録出願、第17類「靴下、その他本類に属する商品」を指定商品として昭和41年3月9日に設定登録、その後、3回に亘る商標権存続期間の更新登録がされたものである。
同じく、登録第2397753号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、昭和63年4月7日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として平成4年4月30日に設定登録、その後、当該商標権は、同14年4月30日で存続期間満了により消滅し、同15年1月8日に抹消登録がされたものである。
同じく、登録第3335700号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、平成6年12月1日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として平成9年8月1日に設定登録されたものである。
同じく、米国における登録商標(以下「引用D商標」という。)は、別掲(3)に示すとおりの構成よりなるものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証(枝番号を含む。)を提出した。なお、請求人提出の参考資料「丙第1号証の1ないし8」は、「甲第30号証の1ないし8」、同様に「丙第2号証の1ないし8」は、「甲第31号証の1ないし8」としてそれぞれ取り扱う。
(1)請求の理由
(ア)商標法第3条第1項第3号又は同第6号違反
本件商標「ベアー」は、商標「BEAR(bear)」と同様に、指定商品「被服,履物」について、多くの人が使用を望み、しかも、実際に使用されているために、それ自体がその指定商品に使用されても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。
甲第2号証は、特許庁が公表する特許電子図書館(IPDL)の商標出願・登録情報検索を用いて、商標中に「ベアー」又は「BEAR(bear)」の文字を含み、かつ、「被服,履物」と同一又は類似の商品を指定商品に含む登録商標であって、平成12年8月7日までにデータベース上に蓄積されているものの一覧表である。
これによれば、本件商標が登録される以前から「べアー」又は「BEAR(bear)」の文字を含む多数の商標(300件近く)が、「被服,履物」と同一又は類似の商品を指定商品として登録されていたことがわかる。
また、甲第3号証は、特許庁が公表している特許電子図書館(IPDL)の商標出願・登録情報検索を用いて、類似群コード17の商品について慣用商標と認識されている「TEX」又は「テックス」の文字を含む登録商標であって、平成12年8月7日までにデータベース上に蓄積されているものの一覧表である。
この一覧表での検索結果は386件である。
そこで、この検索結果の数と、前述の「ベアー」又は「BEAR(bear)」の文字を含む登録商標の数とを比較すると、「ベアー」又は「BEAR(bear)」、そして、「ベアー」の称呼を生ずる語を含む登録商標の数は、同じ類似群の商品について慣用商標と認識されている「TEX」又は「テックス」の文字を含む登録商標の数と遜色なく存在していることがわかる。
このことは、「ベアー」又は「BEAR(bear)」の文字又は商標が慣用商標に近い頻度で採用されていることを証明している。
すなわち、「ベアー」又は「BEAR(bear)」の文字を含む商標は、指定商品「被服」について、慣用又は多用されている商標「TEX」又は「テックス」と同様に、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標といわなければならない。
しかして、このような状態の商標を登録することは、本来的に独占適応性のない商標に独占権を付与して、いたずらに流通秩序を乱し、無用の争いを増やすだけであって、商標法の法目的の達成を阻害するものといわざるを得ない。
また、甲第4号証からわかるように、現実の「被服,履物」の取引において「ベアー」「BEAR」の文字は、単独で又は他の語と組み合わされて頻繁に使用されていることが明らかである。
そして、その使用形態を見ると、例えば、被服や靴に熊の図柄が描かれていることを表示するために「ベアー」や「BEAR」の文字が使用されている。すなわち、現実の商取引において、被服や靴等のように、動物の図柄が頻繁にデザインとして使用されている商品については、当該動物の呼び名(熊、ベアー、BEAR)が商品の品質、内容を表示するために使用されている(商標法第3条第1項第3号)。
現実の商取引において、「ベアー」の語には、いわゆる顕著性のないことが明らかである。
甲第5号証ないし甲第8号証の検索結果によれば、本件商標の登録前から「CAT(キャット)」「DOG(ドッグ)」等、我々日本人にとって身近な動物を表す英語又はその表音文字を含む商標は、「ベアー」又は「BEAR」の文字を含む商標と同様に、本件指定商品「被服,履物」と同一又は類似の商品について多数登録されている。
前述の「ベアー」又は「BEAR」と同様に、身近な動物の英文名称は、多用されており、これらの事実からしても、本件商標「ベアー」自体では、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標になっていることを示している。
なお、被請求人は、甲第9号証ないし甲第21号証の登録商標の存在を理由に、本件商標の登録には無効理由がない旨主張するかもしれない。
しかしながら、こうした既登録の存在は、直ちに本件商標の登録の有効性を裏付けるものではない。
なぜならば、これらの登録商標は、いずれも図形と文字とを組み合わせた商標か又は現在とは商品の取引状況若しくは商標の採択状況が異なっている40年以上も前の登録、あるいは、使用の継続により現時点においては周知・著名性を維持しているからである。
したがって、これらと事情を異にする本件商標を、そうした登録商標と同列に扱うことはできない。
以上のように、現実の商取引においては、「被服」や「靴」等の商品に動物の図柄が頻繁にデザインとして使用されていることから、そうした動物の呼び名(熊、ベアー、BEAR)は、商品の品質、内容を表示するために使用されているものというべきであり、また、「ベアー」、「BEAR」、「キャット」、「LION」等のように、日本人にとって身近な動物の英語又はその表音を含む商標が多数登録されているとしても、「キャット」、「LION」等の動物の英語又はその表音をそのまま表示した商標を商品「被服,履物」について登録するような例は、昨今、ほとんどなく、たとえ、あったとしても、特殊な構成態様からなる商標か又はかなり古い時代に登録された商標の権利者が出願したものに限られているということ等を考慮すれば、本件商標「ベアー」を商品「被服,履物」に使用しても、需要者が何人の業務に係る商品であるかを認識することができないから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同第6号に該当する。
(イ)商標法第4条第1項第11号違反
引用A商標及び引用B商標からは「ペア」の称呼を生ずるところ、本件商標の称呼「ベアー」と引用A商標及び引用B商標の前記称呼を対比すると、語頭の「べ」と「ペ」に実質的な差異がある。
しかしながら、「べ」と「ペ」の差異は、濁音と破裂音の差にすぎず、両者は極めて近似した音というべきである。
したがって、称呼「ベアー」と称呼「ペア」とは、明らかに称呼において類似する。
そして、商品「被服」は、靴下を除いた旧17類に属する商品に含まれ、商品「履物」と「はき物(運動用特殊靴)」とは同一である。
さらに、本件商標は、引用A商標及び引用B商標よりも後願である。
したがって、本件商標は、先願に係る他人の登録商標と類似するので、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(ウ)商標法第4条第1項第7号及び同第15号違反
日本及び米国の引用C商標及び引用D商標は、いずれも「熊」の図形と「BEAR」の文字と「菱形の枠」とを組み合わせた商標であって、図形と文字との組み合せの状態で一つの商標を構成している。
したがって、これらの登録商標と本件商標とは、外観、称呼、観念において、直ちに類似するとはいえない。
しかしながら、引用C商標及び引用D商標は、世界的に周知又は著名な商標であって、被請求人(商標権者)が本件商標をその指定商品に使用したときには混同を生ずる。
なお、引用C商標及び引用D商標は、ベアー・ロゴと呼ばれているので、以下、これらをまとめてベアー・ロゴという。そこで、以下に、ベアー・ロゴが周知・著名であることを立証する。
先ず、甲第26号証ないし甲第28号証は、1976年に制作され、日本を含む全世界で放映され、大ヒットした映画「ビッグウエンズデー」のビデオパッケージ、ビデオ説明書及びスティール写真である。これらの証拠によれば、引用C商標及び引用D商標が当該映画の中で随所に使用されていることがわかる。
したがって、ベアー・ロゴは、本件商標「ベアー」の出願時及び登録時において周知著名となっていた。
また、甲第29号証の1ないし51に示されているように、ベアー・ロゴは、本件商標の出願前からサーフボード等のサーフィン関連商品を中心に、Tシャツ、ジャケット等の被服に関するブランドとして、世界的に、そして、日本国内においても著名であった。
なお、このベアー・ロゴは、引用C商標及び引用D商標の商標権者である請求人の一の「ヴァルキリー・コーポレイション」の商標として周知・著名であった。
ヴァルキリー・コーポレイションは、前記映画「ビッグウエンズデー」の映画監督であったジョン・ミリウスが設立した米国カリフォルニア州の法人であり、日本を除く他の国では、ヴァルキリー・コーポレイションがベアー・ロゴを使用し、ベアー・ロゴを商品との関係において著名にした。
そして、日本においては、ヴァルキリー・コーポレイションのライセンシーの一人であった有限会社フリユイドパワーの経営者である藤沢譲二氏が1980年代前半から日本におけるベアーサーフボードの製作者として広く知られており、有限会社フリユイドパワーあるいは藤沢譲二氏が中心となって1980年代後半からベアー・ロゴの日本におけるサーフボード、Tシャツ等の衣類について宣伝広告活動、商品展開を本格化した。1994年にサクラインターナショナル株式会社がライセンシーに加わってからは、サクラインターナショナル株式会社による宣伝広告活動と商品展開もこれに加わった。
さらに、請求人の一の「ラッフルズ プロパティーズ インコーポレイテッド」がライセンシーに加わって活動を展開している。甲第29号証の1ないし51は、これらの活動を立証するものである。
ベアー・ロゴと本件商標は、上述のとおり、形式的には非類似であるが、本件商標がその指定商品に使用されると、世界的に認識されているベアー・ロゴの引用C商標及び引用D商標に係る商品と、その出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当する。
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同第6号、同法第4条第1項第7号、同第11号又は同第15号のいずれかに違反して登録されたものであり、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)請求人は、図柄について顕著性がないと主張したわけではなく、ある図柄の名称(ベアー)について、現実の商取引の実情からみて、自他商品の識別力がないと主張しているのである。
つまり、ある図柄の名称が、ある商品について識別力があったとしても、他の商品については識別力がない場合があり得ることを主張しているのである。
(イ)無効審判において必要とされる請求の利益は、本件商標の登録を無効にする利益があれば足りるのであって、無効理由毎に請求の利益を必要とするものではない。
つまり、先願の登録商標と同一又は類似することを理由に本件商標の登録が無効になれば、請求人と被請求人との間の争いは解消するのであるから、無効理由の根拠として、自らの登録商標を引用するか、他人の登録商標を引用するかは、何ら問題とはならない。
商標審査基準では、「べ」(濁音)と「ペ」(破裂音)の1音相違の二つの商標は、称呼において類似するとしている。
したがって、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、上記審査基準に照らしても、明らかに称呼上類似する。
また、過去の審決にも、語頭の「べ」と「ペ」の1音相違の二つの商標が相互に類似すると判断された事例(参考資料:甲第31号証の1ないし8)が存在している。
(ウ)請求人の主張は、無効理由の根拠として、引用C商標及び引用D商標、すなわち、ベアー・ロゴに化体したブランドイメージが周知・著名であることを主張したものである。
請求人は、引用C商標及び引用D商標に関する説明を簡略化するために、請求の理由中で引用C商標及び引用D商標をまとめて「ベアー・ロゴ」と呼んでいる。
そこでも述べているように、引用C商標及び引用D商標は、図形と文字とが一体に組み合わされており、全体で一つの商標を構成しているのであって、商標全体がその要部となっており、直接的に発生する称呼は、「サーフボーズベアー」である。
もしも、引用C商標及び引用D商標から「ベアー」の称呼を生じ、「BEAR」の文字部分が商標の要部となるというのであれば、商標法第4条第1項第11号(商標の類似)に該当するから、無効とすべきであるとの主張をするに当たって、引用C商標及び引用D商標を根拠にした筈である。
しかしながら、そうではないから、すなわち、直接的には称呼が非類似であるけれども、出所の混同が生ずるからこそ、商標法第4条第1項第7号(公序良俗)及び商標法第4条第1項第15号(出所の混同)の適用を主張したのである。
引用C商標及び引用D商標から「ベアー・ロゴ」の称呼を生ずるとの請求人の主張には矛盾があるとする被請求人の答弁は、商標の類似と公序良俗及び出所の混同をはき違えており、到底認められない。
被請求人が(別件の)登録(第2667318号)商標である「BeaR」をその指定商品について実際に使用したという事実はない。
かかる使用に関する書証は提出されていない。また、当該別件登録商標「BeaR」が「ベアー」、「熊」と称呼・観念されるという証拠もない。
被請求人主張の別件登録商標「BeaR」の類否判断においては、称呼、外観及び観念が一つになった「BeaR」そのものが商標の要部になるのであって、「ベアー」又は「熊」の称呼・観念をもって商標の類似判断がなされるべきものではない。
さらに、たとえ、別件の前記登録商標「BeaR」から「ベアー」の称呼を生ずるとしても、これまで請求人が主張したとおり「ベアー」「BEAR」の文字には自他商品の識別力がないので、被請求人の別件登録商標「BeaR」から「ベアー」の称呼が生ずることのみを根拠として、「ベアー」又は「BEAR」の自由な使用までも排除する効力を当該登録商標に認めるべきでない。
被請求人の前記別件登録商標「BeaR」は、語頭と語尾が大文字で中間の2文字が小文字で表示された特異な表記となっており、その特異な構成を有するがゆえに、「ベアー」の称呼又は観念が生ずる数多くの熊の図形の登録の存在にもかかわらず、登録が認められたものである。
すなわち、別件の登録商標「BeaR」の要部は、「BeaR」そのものであって、当該登録商標の類似範囲には、単なる「ベアー」及び「BEAR」が含まれるものではない。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証及び関連審決例(11年無効審判35776及び11年無効審判35777の各審決)を提出した。
(1)まず、本件商標が商標法第3条第1項第3号又は同第6号の規定に該当するものでないことについて答弁する。
(ア)請求人は、「ベアー」又は「BEAR」を含む商標が被服、履物と同一又は類似の商品を指定商品として多数登録されているから、被服に関する「TEX」と同じように商品の品質、内容を表示する旨述べている。
しかし、請求人が提出する甲第2号証をみると、古いものから最近に至るものまで、「ベアー」又は「BEAR」を含む商標が登録されているところ、それらは、ほとんど全て全体として造語商標を形成するか、固有の意味合いを看取させるものであり、単なる「ベアー」や「BEAR」とは別異の造語又は意味合いを看取させるものであり、それぞれ故あって登録になったものと目される。
商標でいう観念については、例えば、「minibear」(小さな熊)のように、おおよその統一された意味合いを有するとき、単なる「ベアー」ではないとし、また、格別の意味合いが看取されなくとも、外観上、全体を同書、同大、同色で一連不可分に表示されていれば、単一の目印になると判断されるものであるから、同一の語を構成中に含む商標が多数登録されている一事をもって、その語が慣用商標的だと即断することは、実際に商標が使用される取引の通念に反するものである。
(イ)請求人は、「TEX」が被服について慣用的に使用されている旨主張しているが、それは、本来、被服の材料である「テクスタイル」(textile)、すなわち、「織物」の意味において取引者及び需要者間で認識され、使用されているからであって、本件商標と同一に論ずる理由はない。
(ウ)また、請求人は、動物の図柄が頻繁にデザインとして使用される商品に関しては、その動物が商品の品質や内容を表示する旨主張しているが、それは意匠と商標の概念を混淆した話であり、もしも、それがいえるならば、森羅万象すべての形象が商品の図柄となり得るから、潜在的に顕著性がないことになる。
それらが、たとえ、好んで使用されても、意匠としての使用なのか、商標としての使用なのかが検証されなければならない。
商標の一部として使用されている場合であって、全体で別異の意味合いをもって使用されているならば、「ベアー」や「BEAR」の文字自体が商品の品質を表示するわけではなく、各々立派に識別標識として機能するのである。
(エ)商標法第3条の規定は、原則として、いかなる標章でも登録を認めるのであるが、積極的に顕著性のないものは例外的に除くと言明している。
それゆえ、本件商標が商品の品質や内容を表示することを理由に登録を否定するというためには、本件商標が商標として使用された場合、誰も商標とは認識せず、商品の図柄が熊入りであるとのみ認識されるということが積極的にいえなければならない。
本件商標がそのような意味で認識されている事実はない。つまり、本件商標が指定商品のいずれについても商標として使用されれば、立派に自他商品の識別標識として機能するのである。
請求人は、現実に本件商標を種々の被服関係の商品に使用しているが、他人の商品と十分に差別化を図っている。
(オ)請求人は、自己の所有する登録第3335700号商標が「ベアー・ロゴ」として著名である旨主張しているが、「ベアー」及び「BEAR」が商品の品質表示であると主張していることと矛盾しており、自ら自己の論理を否定しているものである。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同第6号の規定に該当するものではない。
(2)次に、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しないことについて答弁する。
(ア)すなわち、請求人は、他人の引用A商標及び引用B商標を引用して、本件商標がそれらの商標に類似し、それらの指定商品と類似する旨述べているが、本件無効審判請求をするためには、自己の登録商標を引用すべきであるから、請求人のこの無効理由に関しては、請求の利益がないものである。
(イ)しかしながら、念のため言及すると、本件商標と引用A商標及び引用B商標は、先ず、第1音において、「べ」と「ペ」の差異があるところ、第1音は、語中において最も強烈に発音され、かつ、印象深く聴取される音であるから、「べ」と「ペ」の差異があれば、十分別異の言葉として認識されるものである。
(ウ)ことに、本件商標は「熊」の意味として理解され、引用A商標は、「梨」の意味を有し、引用B商標は「一対」の意味として認識される外来語であるから、双方の商標は、観念上明確に識別され得るものである。
このことは、双方の商標の称呼上の認識をなお一層容易ならしめ、そのため識別を容易ならしめるものである。
よって、本件商標は、引用A商標及び引用B商標とは非類似の商標であるから、指定商品の点について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではない。
(3)最後に、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同第15号の規定に該当する旨述べているので、その理由がないことを述べる。
(ア)すなわち、請求人は、自己の引用C商標を引用し、それが「ベア・ロゴ」と呼ばれていると主張しているが、(2)でも言及したように、「ベアー」及び「BEAR」が商品の品質表示であると主張していながら、自己の商標だけは、「ベアー」(「ロゴ」というのは単に特定のマークという意味で、商標としては重要な部分ではないので省略する。)と呼ばれて周知・著名だというのは、支離滅裂な主張である。
(イ)それのみならず、引用C商標の著名性は認められない。つまり、引用C商標は、「菱形の図案」の中に「熊の胸部の図案」及び「SURF BEAR BOARDS」を描いてなるものである。
しかるところ、当該引用C商標は、「BEAR」の文字が大書してなるため、これより「ベア」(熊)の称呼・観念を生ずることがあり得ても、登録商標そのものはあくまでも前記のとおりである。
(ウ)そもそも、商標権者は、商標法第25条により「指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。」ことができるが、「登録商標」とは、商標法第2条第2項で規定するように「商標登録を受けている商標をいう。」ものであるから、請求人は、前記のとおりの引用C商標である「菱形の図案」の中に「熊の胸部の図案」及び「SURF BEAR BOARDS」を描いてなるものを、そのままの態様で使用する権利が保証されているにすぎない。
(エ)なるほど、引用C商標は、そのうちの「BEAR」が大書されているため、「ベアー」(熊)の略称が生ずることは否めないが、請求人は、あくまでも登録商標を忠実に使用する権利しかなく、事実上、いわゆる禁止権の認められる類似範囲の「BEAR」、「ベアー」、「熊」なる商標を使用しても差し支えない場合があるとしても、それは、他に抵触する商標が存在しない場合に起こり得る現象であって、商標法第25条が認めるところでないことは多言を要せず明白なところである。
換言すれば、被請求人は、引用C商標に先んじて、登録商標「BeaR」(乙第1号証及び乙第2号証)を所有し、かつ、盛大に使用してきている。
(オ)およそ、登録主義下における我が国において、ある商標が著名となる場合の要件として考えられることは、ほとんど例外なく、遅くとも使用開始後可及的速やかに登録出願することである。なぜならば、未登録のまま使用開始し、かつ、その使用を続けることは、商標法上何も保証されておらず、極めて危険だからである。
(カ)しかるに、請求理由によると、「サーフボード」や「被服」に使用される引用C商標が、「ベアー」の称呼及び「態」の観念を生ずるものとして著名であると主張しているように解されるが、請求人提出の甲第1号証ないし甲第4号証によると、前掲の被請求人(商標権者)の登録第2667318号商標(「BeaR」商標)の登録出願日である平成3年10月16日までに、引用C商標は、周知商標となっていたとは証明されていない。
すなわち、甲第26号証は、映画の紹介にすぎず、引用C商標が「ベアー」の称呼及び「熊」の観念において、我が国で「被服」関係の商品に使用されたことの証明と直接関係ないことは明白である。
甲第29号証の1ないし3は、引用C商標と同一性のある商標が忠実に「被服」ではなく「サーフボード」に関して広告されていることを示すのみであって、量的なものは何も証明されていない。
甲第29号証の4ないし9もサーフボードの広告であり、たまたま、サーファーが着ているシャツに引用C商標と類似する商標が付されていたとしても、そのシャツ自体が販売の対象として掲載されている形跡は窺えない。
甲第29号証の10でTシャツがカリフォルニアから直輸入されている文字が見受けられるものの、それには引用C商標が見当らない。
甲第29号証の11ないし51は、引用C商標と同一の商標が全面に明示されているとしても、ほとんどサーフボードに関して使用されていると目されるだけである。
それゆえ、仮に、引用C商標と同一の商標がサーフボードに使用されていたとしても、その態様をもって認知されていたことになる。
いわんや、引用C商標が「被服」関係の商品について周知であったとは認識されないばかりでなく、「ベアー」の呼び名で周知・著名になっていたとは到底容認できないところである。
(キ)そうであるとすれば、引用C商標は、被請求人が所有し、かつ、使用している別件の登録第2667318号商標(「BeaR」)の出願の時点である平成3年10月16日において、「サーフボード」について周知になっていたとは認められず、まして、「ベアー」(熊)という称呼・観念の略称をもって周知であったとは到底いえない。
つまり、「ベアー」・「態」と称呼・観念されることが明らかである登録第2667318号商標の商標権との関係においては、「被服」に関して、請求人の「BEAR」及び「ベアー」に先使用権は存在しないことが窺える。
(ク)加うるに、引用C商標の類似範囲として「ベアー」・「熊」の称呼・観念を生ずる商標が考えられたとしても、先願・先登録に係る被請求人所有の登録商標「BeaR」が「ベアー」・「熊」と称呼・観念されることが明らかである以上、「ベアー」・「熊」と略称し称呼・観念して、「被服」関係に使用している場合には、平成6年5月31日以降、登録第2667318号商標の商標権侵害を構成することになる。
(ケ)そうであるとすれば、仮に、被請求人が引用C商標と同一の商標を「ベアー」・「熊」として「被服」関係の商品に使用して著名になったと主張しても、被請求人の商標権を侵害するという不法行為を犯して形成した事実は、商標法の保護に値しないものである。
つまり、仮に、引用C商標が被請求人の登録第2667318号商標の登録出願時点において、「ベアー」・「熊」の称呼・観念において周知となっていたとしても、その事実は、いわゆる「クリーンハンドの原則」に違背するので、否定されるべきである。
このことは、商標法第32条が「不正競争の目的」で使用した場合には先使用権を認めないと規定していることや、同法第4条第1項第10号の規定において、悪意や不正競争目的により使用を開始した場合の既成事実の否認に繋がるものである(乙第3号証及び乙第4号証)。
(コ)請求人が提出した甲第29号証の35ないし51中に、請求人が引用C商標を被服関係に「ベアー」という呼び名で使用したことを示す資料があったとしても、それらは証拠価値を有しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当しないものである。
また、請求人は、本件商標が公序良俗に反する理由を述べていないから、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当しないことは多言を要しない。
(4)以上の次第であるから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第6号、同法第4条第1項第7号及び同第15号のいずれの規定にも該当しない。

5 当審の判断
(1)本件商標「ベアー」の自他商品識別力について
(ア)本件商標は、「ベアー」の片仮名文字を横書きしてなるところ、該「ベアー」は、日本人の通常の英語力を基準とすれば、熊を意味する英語の「Bear」を片仮名書きしたものであると理解されることは明らかである。
熊ないしベアーは、動物の中でも、犬や猫、あるいは、虎(タイガー)、獅子(ライオン)、きりん、象、かば、わに、猿などの動物と同様に、一般の日本人がよく知っている動物の一であり、本件商標の登録査定日である平成11年4月頃には、「被服、履物」の分野において、このようによく知られている動物の一である熊を意味する英語の「bear」あるいはこれを単に片仮名表記したにすぎない「ベアー」の文字をその構成の一部として使用した極めて多数の商標登録あるいは商標登録出願があり、かつ、極めて多数の商標が実際に使用されていたことが請求人提出の甲第2号証及び甲第4号証並びに甲第30号証の1ないし8から窺い知れる。
「被服、履物」と同一又は類似する商品分野における登録商標の実例の一部を示せば、例えば、「KingBear」、「LUCKYBEAR/ラッキーベアー」、「HONPOBEAR/ホンポベアー」、「BABYBEAR/ベビーベアー」、「ユニベア/UNIBEAR」、「SEABEAR/シーベアー」、「SPEEDBEAR/スピードベアー」、「HEARTYBEAR/ハーティベアー」、「GOLDENBEAR」、「ゴールデンベアー」、「BOXBEAR」、「テディベアー/TEDDYBEAR」、「ワンダーベア/WONDERBEAR」、「MAMABEAR/ママベア」、「TINYBEAR」、「ROYALBEAR」、「THREEBEARS」、「HARDBEAR/ハードベア」、「CAREBEARS/ケアベアーズ」、「POLARBEAR」、「HUNGRYBEAR/ハングリーベア」、「DEARBEAR」、「LITTLEBEAR」、「ChicagoBears」、「BEARCLUB」、「DreamBear/ドリームベアー」、「SANTABEAR」、「CHILDRENBEARS/チルドレンベアズ」、「MYCALBEARS/マイカルベアーズ」、「FAMILYBEARCLUB」、「AngelBear」、「GRIZZLYBEAR/グリズリーベア」などがある(甲第2号証)。
被服や履物に熊の毛皮等を使用することは、一般には考えにくいことからすれば、本件商標の「ベアー」につき、被服や履物の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状等を表示する記述的標章であるということは困難である。
しかしながら、本件商標は、簡単で、かつ、ありふれた文字である「ベアー」のみからなる標章であり、これをその指定商品「被服、履物」について使用しても、少なくとも平成11年4月頃における上記のような商標登録等を考慮すれば、被請求人による本件商標の使用の結果、自他商品識別力を獲得した等の特段の事情がない限り、自他商品識別機能を有しない商標であるというべきである。
すなわち、商品「被服、履物」の分野においては、日本人によく知られた動物の名前である「ベアー」又は「bear」の文字だけでは足りず、これに他の文字あるいは図形を結合させた標章とすることによって初めて自他商品を識別する機能を生じさせることが可能となるのであり、本件商標「ベアー」については、被請求人による長年に亘る使用の結果、自他商品識別力を獲得した等の特段の事情がない限り、商標法第3条第1項第6号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(イ)次に、本件商標が、その登録査定のあった平成11年4月頃において、被請求人による使用の結果、自他商品識別機能を獲得した等の特段の事情があったかどうかについてみるに、被請求人が平成11年4月頃までに、本件指定商品について、「ベアー」の片仮名文字よりなる本件商標自体をワンポイントマークあるいはその他の態様で使用していたことを認めるに足りる証拠はなく、また、被請求人の商標として宣伝広告したことも見出せない。 加えるに、日本において、「Bear」あるいは「ベアー」の文字を含む極めて多数の登録商標が存在していたこと及び本件商標「ベアー」が日本人によく知られている熊を意味する英語の「Bear」を単に片仮名書きしたにすぎないものであることを考慮すると、少なくとも平成11年4月頃においては、本件商標がその指定商品である「被服、履物」の分野において、被請求人の商標を意味するものとして理解され認識されるまでには至っておらず、自他商品を識別し得る標識となっていなかったものと認められる。
以上のとおり、被請求人は、平成11年4月頃までに、本件商標「ベアー」を使用していたとは認められず、本件商標「ベアー」については、取引者・需要者間において、被請求人の商標であるとの認識ないし理解は生じていなかったというべきである。
その他、本件商標「ベアー」について、被請求人による使用の結果、自他商品識別機能を有する商標となったとみるべき特段の事情は、本件全証拠によっても認めることができない。
本件商標は、もともと、簡単で、かつ、ありふれた動物の名称を単に片仮名書きしたものにすぎず、平成11年4月頃に、被請求人の使用により、自他商品識別機能が付加されたとの特段の事情もないことからすれば、商標法第3条第1項第6号の「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標」に該当するものというべきである。
(2)むすび
以上のとおり、その余の無効理由について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用B商標



(2)引用C商標



(3)引用D商標

審理終結日 2002-09-12 
結審通知日 2002-09-18 
審決日 2002-10-01 
出願番号 商願平8-81302 
審決分類 T 1 11・ 16- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 亨子 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 鈴木 新五
柴田 昭夫
登録日 1999-06-25 
登録番号 商標登録第4287330号(T4287330) 
商標の称呼 ベアー 
代理人 志知 俊秀 
代理人 志知 俊秀 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 菊地 栄 
代理人 佐藤 一雄 
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