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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Z16
管理番号 1087026 
異議申立番号 異議2001-90327 
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2003-12-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-27 
確定日 2003-11-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第4449206号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4449206号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4449206号商標(以下「本件商標」という。)は、「刀剣と歴史」の文字を標準文字により書してなり、第16類「新聞,雑誌」を指定商品として、平成12年6月6日に登録出願、同13年1月26日に設定登録されたものである。
本件商標は、江口綜瞋(以下「江口」という。)が登録出願をし、同人を商標権者として設定登録されたが、その後、該商標権は、平成14年10月8日に特定非営利活動法人日本刀剣保存会に移転登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」又は「申立人団体」」という。)は、要旨次のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。ただし、甲第6号証及び甲第13号証は撤回)を提出した。
(1)本件商標は、権利能力なき社団である申立人が業務として発行する雑誌のタイトルとして、明治43年から使用されている商標である。
江口による本件商標の登録出願は、権利能力なき社団である申立人を代表ないし代理してではなく、江口個人として行われたものであり、商標登録の積極的要件である「『自己の』業務に係る商品又は役務について使用する商標」の要件を欠く(商標法第3条第1項柱書き)。
(2)本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、全国の刀剣業者等の間で広く認識されているいわゆる周知商標である(同法第4条第1項第10号)。
(3)江口は、本件商標を使用した同名の雑誌の発行により、混同を生じさせている(同法第4条第1項第15号)。
(4)江口には、本件商標による財産上の利益を独占し、申立人の本件商標の使用を妨害しようという不正の目的が認められる(法第4条第1項第19号)。
(5)上記不正の目的を実現するため、申立人に先んじて本件商標の登録出願をすることは、社会一般の道徳観念に著しく反するものである(同法第4条第1項第7号)。
(6)よって、本件商標登録は、商標法第43条の3第2項の規定及び第43条の2第1号により取り消されるべきである。

3 取消理由の通知
当審は、商標権者「江口」に対し、平成13年11月15日付けで商標登録の取消しの理由を通知した。その要旨は次のとおりである。
申立人の提出に係る各証拠(甲各号証)によれば、以下の各点が認められる。
(1)申立人である「日本刀剣保存会」(代表者代表幹事苫野敬史)は、日本刀の保存・研究を目的とする任意の団体であって、全国レベルの会員組織によって構成され、その本部所在地を「東京都世田谷区粕谷4-9-14」に置き、会則(甲第2号証)の定めにより、刀剣審査会の開催、雑誌「刀剣と歴史」(以下「申立人雑誌」という。)の発行(編集担当:岡田守可)その他の事業活動を行っていること。
(2)申立人雑誌は、「刀剣と歴史」の表題(商標)(以下「申立人標章」という。)の下に、明治43年創刊以来、現在に至るまでの約90年に亘る間営々と継続されているもので、創刊後大正年代を経て昭和の初期頃までは月刊誌として毎年12回発行されており、その後、第二次大戦の前後の間も復刊するなどして断続的に発行され、さらに、昭和39年から現在まで各年とも隔月6回発行されていて、平成13年1月号時点で通算巻号を639号とする長期に亘る実績を有すること。また、申立人標章はその文字書体及び表示態様に時々の変遷があり、創刊当初はこれを左横書き或いは縦書きに表示したものが用いられ、或いは、昭和初期頃の一定期間は現在の文字書体によりこれを縦書きし又は右横書きにしたものが用いられ、最終的に、昭和53年に至ってその表紙デザインにわが国古典絵画等を取り入れた時を機に、別掲(a′)に示す現在の文字書体と表示態様のものに改め(以下、特に「申立人商標」という。)、以後、これに統一し現在に至っていること(甲第7号証の1ないし同80)。
(3)申立人雑誌の発行部数は、当該印刷に関わった事業者の証明書(甲第9号証ないし甲第11号証)によれば、各号とも1,000部前後制作・刊行されていること。また、その発送先リスト(甲第12号証)によれば、購読者は主として全国都道府県に亘って所在する日本刀愛好者、古美術・刀剣関連事業者及び刀剣美術関連新聞社等であって、このほか、米国その他海外在住の日本刀愛好者であること。さらに、寄贈分として、文化庁、宮内庁の所轄機関担当者を初め、国立国会図書館、東京都中央図書館等の図書館施設ほか一部の大学機関向けにも送付・頒布されていること。
(4)刀剣春秋新聞社の発行に係る月刊新聞「刀剣春秋」の昭和37年8月1日付け、同39年1月1日付け、同40年1月1日付け、同42年1月1日付け、同44年1月1日付け及び同45年1月1日付け発行の各記事(抜粋)中に、当時の本部所在地を「東京都新宿区三栄町29」に置く申立人団体がその会員募集及び申立人雑誌の購読を募る旨の文面と共に申立人標章を表示し、他の刀剣店・美術店等に係る広告記事と共に広告掲載されていたこと。同じく、平成6年1月1日付け、同7年1月1日付け、同8年1月1日付け、同9年1月1日付け及び同12年1月1付発行の各記事(抜粋)中に、本部所在地を現在地とする申立人団体が前記同様に申立人標章を表示し広告掲載されていたこと。
(5)三重県郷土資料刊行会発行「三重県郷土資料叢書第103集,三重県刀工・金工銘年鑑」(甲第18号証)の当該抜粋記事中に、申立人雑誌昭和57年11月号(通巻第530号)の当該編集記事が引用されたこと。
(6)吉川永一名義の陳述書(甲第19号証)によれば、同氏の父親(吉川賢太郎)は平成11年6月没時までの約40年間申立人団体の代表幹事を務めその事業活動の中心的存在であったこと。その子である吉川永一は、父没後、申立人団体の幹事に任ぜられると共に現在、宮内庁の御物御剣掛(宮内庁の刀剣類の手入れ担当)、宮内庁正倉院宝剣掛(正倉院の刀剣類の手入れ担当)、東京都刀剣登録審査員等を任ぜられる者であること。さらに、申立人雑誌の平成13年3月号現品(通巻第640号,甲第20号証)によれば、後述(7)に述べる本件商標権者「江口」による申立人雑誌の発行停止又は本件商標の使用差し止めの警告等に拘わらず、申立人団体によりその発行が引き続き行われていること。
(7)本件商標権者「江口」は、平成12年に申立人団体の役員(常任幹事4名中の一人)であったが、その後、同13年には役員リストから除外されていること(甲第3号証)。また、本件商標権者は、その発行名義人を「日本刀剣保存会本部機関誌編集部」(以下「江口保存会」という。)とし、その表題を「刀剣と歴史」(第636号,特別号)とする印刷物(以下「江口印刷物」という。)を平成12年9月7日に発行したこと(甲第8号証の1ないし同3)。江口印刷物は、その表紙のほぼ全面に申立人雑誌創刊号の表紙と同じデザインが用いられていて、同左側部分余白に申立人標章を縦書きにしたものが用いられていること。また、江口印刷物の59頁及び同60頁には、江口保存会に係る「本部からの情報」及び「急告」とする見出しの下、当該購読者向け申立人団体を中傷、誹謗する旨の記事が掲載されていること。さらに、本件商標権者は、申立人団体所属「岡田守可」(申立人雑誌編集担当者)宛て平成12年7月4日付け及び平成13年2月20日付け内容証明郵便による、日本刀剣保存会機関誌「刀剣と歴史」の発行停止を求める旨の文面の「警告書」(甲第14号証)及び本件商標が本件商標権者により商標登録されたこと、申立人雑誌の発行が商標権侵害に当たること、その発行差し止め等を求める旨の文面の「通知書」(甲第15号証)を発したこと。
以上の(1)ないし(7)の各認定によれば、申立人団体「日本刀剣保存会」に係る申立人雑誌は、明治43年以来、現在までの約90年に亘る長期間、同団体の機関誌として或いは刀剣研究雑誌として継続発行されてきたものであり、その雑誌タイトルであり商標である申立人商標「刀剣と歴史」は、その頒布活動或いは刀剣関連の新聞にしばしば広告掲載されるなどして、また、その独特のくずし字による文字態様(別掲(a′))と相俟って、この種日本刀に関連するわが国の当業者ないし刀剣分野の取引者・需要者間において、本件商標の登録出願前において既に広く認識せられるに至った商標といえるものであり、かつ、その状況は一部官公庁等においても認知せられていて、その周知性は現在もなお継続しているとみて差し支えなく、その後の状況に特に変化はみられない。
そして、本件商標権者「江口」は、そうするに至った理由が何であったのかの事情はともかく、申立人団体を事実上脱退した平成12年半ばの頃、自身による本件商標の商標登録を企図し(平成12年6月6日登録出願)、申立人団体に無断で標記の指定商品(新聞,雑誌)について商標権を取得するに至ったものであり、しかも、その取得に係る本件商標は、申立人商標(別掲(a′))と同一の文字を活字体(標準文字)に代えたにすぎず、社会通念上同一といえる構成のものである。そして、この商標登録の取得と相前後して、申立人団体に対しその使用禁止の警告等を発し、或いは自ら申立人団体と同じ名称の「日本刀剣保存会(本部)」を名乗り、さらに、その発行に係る江口印刷物の表題を「刀剣と歴史」(第636号,特別号)とし、かつ、申立人雑誌創刊号の表紙デザインをそっくり用いるなどしてその独占使用を企図した意図は明白といわなければならない。
ところで、公序良俗に反するもの(商標)の不登録を定めた商標法第4条第1項第7号の法条の趣旨は、商標自体が矯激、卑わい又は差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形であれば勿論のこと、構成自体がそうでなくとも、これをその指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反し、或いは公正な取引秩序を阻害するような場合も含まれると解するのが相当である。そして、商標保護の法目的を謳った商標法第1条は、その立法の趣旨を商標を使用する者の業務上の信用維持と需要者の利益保護にある旨定めているところである。したがって、仮に、この業務上の信用維持・需要者の利益保護の法目的に反し又は適合しないことが明らかである場合は、もはや保護するに値しないものといわなければならない。
しかして、本件商標権者による本件商標の権利取得は、上記事実関係よりみて正当な権限に基づくものでなく、むしろ、申立人団体によるその登録が存しないことを奇貨として、本来申立人団体に帰属すべき商標権を意図的に自らの権利としたことが明らかというべきであり、また、申立人団体に対する申立人雑誌の発行停止・申立人商標の使用禁止を求めた一連の行為は、単に申立人団体に対する背信行為であるばかりでなく、申立人商標の下に永年に亘って培われた申立人団体の業務上の信用をそっくり強奪・占有せんとするものであって、その信用に便乗した不正目的の意図を十分窺わせるものといわなければならない。
そして、本件商標権者による前記江口印刷物が敢えて申立人雑誌に似せて制作・刊行されたことは、申立人団体に係る雑誌の刊行業務を妨害する意図が明白であって、その発行事業に混乱を招くばかりでなく、永年培われた申立人雑誌に対する需要者(購読者)の信用を一気に失墜せしめ、ひいては申立人事業を混乱に陥れ、その事業運営に支障を来すことは必至といわなければならない。
以上のとおり、本件商標権者による本件商標の権利取得及び申立人団体に対する一連の作為的妨害行為は、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反し、或いは公正な取引秩序を阻害するものであって、不正目的によるものというほかはないから、前記法目的とも併せ考慮するに、本件商標の登録は、保護すべき要件を欠くものというべきである。
してみれば、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

4 商標権者の意見
(1)本件商標「刀剣と歴史」は、指摘のとおり、東京都に所在する日本刀剣の愛好家の団体である「日本刀剣保存会」の発行に係る機関誌の名称であることに相違ない。
「日本刀剣保存会」は、わが国の誇るべき文化である日本刀を愛好する者の団体であり、公益も営利も目的とするものではないから、現在の法制度下にあっては法人格を取得することが認められていない。すなわち、「日本刀剣保存会」は、現在いわゆる「法人格なき社団」であり、したがって、その名において商標権を取得することが法律上認められていない。本件商標登録は、このため、「日本刀剣保存会」の代表権者たる「常任幹事」の職にある江口が、「日本刀剣保存会」のために出願し登録を得たにすぎないものである。したがって、本件商標登録は江口の名義になっているが、それは、「日本刀剣保存会」の機関として名義人になっているにすぎないものである。したがって、江口がその役を退き代表権を失った場合には後任者に、また、「日本刀剣保存会」が「法人成り」した暁にはこれに、本件商標登録の権利を移転すべきものである。
団体の名称にまつわる権利の保全を図るのは、団体の代表権者の地位にある者の当然の責務である。本願出願人江口は、まさに、「日本刀剣保存会」の代表権者たる「常任幹事」の職にあるものであり、これが「日本刀剣保存会」のために本件商標登録を取得したことは、公序良俗に合致こそすれ、反することはあり得ないものである。したがって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録された、との取消理由は成り立たないものである。
以上の事実は、平成13年7月19日提出に係る商願2000-061026の意見書に添付の資料でも明らかである。
(2)申立人代表者苫野敬史は、異議申立書の中で、本件商標登録の権利者江口は平成12年半ばには事実上「日本刀剣保存会」を脱退しており、役員リストからも除外されており、したがって、本件商標を出願する資格を欠く旨主張している。しかし、実際には、苫野敬史こそ、平成12年6月に「日本刀剣保存会」から除名処分を受けており、このため、現在は、「日本刀剣保存会」の役員はおろか、「会」とは何の関係も無いものである。それにも拘らず、依然として「日本刀剣保存会」の役員を名乗るばかりか、本件商標登録の権利者江口が「日本刀剣保存会」を脱退したにもかかわらず「日本刀剣保存会」の役員を騙るものと主張するのは、事実に反するものと思量する。
(3)以上のとおり、本件商標が商標法案4条第1項第7号に違反して登録されたかどうかは、本件商標登録の権利者江口が「日本刀剣保存会」の代表権を有するかどうかにかかっている。そして、これについては、平成13年7月19日提出に係る商願2000-061026の意見書に添付の資料によって証明されたものと思量する。

5 当審の判断
上記平成13年11月15日付け取消理由通知に対し、商標権者は、江口が「日本刀剣保存会」の代表権者たる「常任幹事」の職にあり、同団体が権利能力なき社団であるためその名において商標登録を受けられないので、同団体のために江口の個人名義で本件商標の登録出願をし、登録を得たものであるから、公序良俗に反することはあり得ない旨主張している。
しかしながら、本件商標が出願された当時、江口が東京都世田谷区粕谷4丁目9番14号に事務所を置く申立人「日本刀剣保存会」の代表権を有していたとする請求人の主張事実については、これを認めるに足りる証拠がない。この点について、商標権者は、本件商標の登録出願(商願2000-061026)について平成13年7月19日に提出した意見書添付の資料により証明された旨主張するが、この主張のみによっては取消理由通知に示す認定を覆すに足りない。
以上のことからすれば、江口が申立人「日本刀剣保存会」の代表権を有することを前提とする上記商標権者の主張は、その前提を欠き、採用することができない。
したがって、本件商標の登録は、取消理由通知に示すとおりの理由により、商標法第4条第1項第7号に違反してされたと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 (a′)申立人商標

異議決定日 2002-10-25 
出願番号 商願2000-61996(T2000-61996) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (Z16)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山本 良廣 
特許庁審判長 上村 勉
特許庁審判官 鈴木 新五
小池 隆
登録日 2001-01-26 
登録番号 商標登録第4449206号(T4449206) 
権利者 特定非営利活動法人日本刀剣保存会
商標の称呼 トーケントレキシ 
代理人 坂井 秀行 
代理人 大村 扶美枝 
代理人 柴田 義人 
代理人 村山 由香里 
代理人 布施 和基 
代理人 三好 秀和 
代理人 石原 康人 
代理人 榎本 久也 
代理人 安富 真人 
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