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審決分類 |
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Z03 |
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管理番号 | 1081680 |
審判番号 | 無効2001-35551 |
総通号数 | 45 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2003-09-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-12-21 |
確定日 | 2003-06-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4501241号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4501241号商標(以下「本件商標」という。)は、「ジジ」の片仮名文字(標準文字)を書してなり、平成11年5月6日登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、同13年8月24日に設定登録されたものである。 第2 請求人の引用商標 請求人が引用する登録第408630号商標(以下「引用商標」という。)は、「JUJU」の欧文字を書してなり、昭和25年11月25日登録出願、第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品として、同27年2月18日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 第3 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証(枝番を含む。)を提出した。 1.本件商標と引用商標とは、指定商品において抵触することは明らかであるが、標章においても称呼上類似している。すなわち、本件商標から生じる称呼は、その構成から「ジジ」であるところ、引用商標から生じる称呼は「ジュジュ」であるから子音を共通にし、全体として類似するものとなっている。 2.請求人は、かつて、引用商標と連合商標の関係にあった登録第417629号商標(以下「請求人連合商標」という。)を所有していた。上記請求人連合商標は、筆書き風に「ジジ」の片仮名文字を縦書きしてなり、昭和26年7月21日登録出願、第3類「香水、香油、その他他類に属しない化粧品」を指定商品として、同27年10月25日に設定登録がなされ、その後、「商標登録を取り消す」旨の審決により取り消され、該審決は平成13年4月11日に確定しているものである。 連合商標とは、いうまでもなく旧法で設けられていた制度で、同一人の出願に係る互いに類似する商標は,連合商標としてでなければ登録を受けることはできないものとされていた。したがって、両商標が連合関係にあるということは、両商標が互いに類似する商標であることを意味する。 上記請求人連合商標から生じる称呼は「ジジ」であり、引用商標から生じる称呼は「ジュジュ」であるところから、両者は互いに類似するものとされ、連合商標として登録されていたものである。一方、本件商標と請求人連合商標とは、ともに「ジジ」の片仮名文字からなるものであるから、これから生じる称呼は、ともに「ジジ」である。 したがって、本件商標と引用商標とが互いに類似するものであることは、この事実からも首肯できる。 3.被請求人は、本件商標と引用商標とは、互いに極短い音構成のものであるから、僅かな相違でもその差異は大きく、それぞれ一連に称呼したときには全体の音感・音調が明らかに異なり、両者は称呼上、紛れることのない非類似のものである旨主張し、商標審査基準を書証として提出している。 審査基準は審査官による判断の統一や審査の適性及び促進を目的として設けられたものであって、多くの出願商標を統一的に迅速に処理するための一応の基準であるところ、これは飽くまでも基準であって、本件商標と引用商標とを非類似とする根拠を直接この基準に求める主張は、我田引水の誹りを免れない。両者の音感・音調が同一であるか、相違するかは、具体的な対比において決すべきである。 その主張するところによれば、本件商標は「ジ」の音の繰り返しであるのに対し、引用商標は「ジ」に拗音「ュ」を伴った音の繰り返しであるから、両者は音質を異にするとのことである。音質とは「音や声の性質」をいうものであるが(「広辞苑」第5版419頁)、「jiji」と「juju」の音の性質がどのように相違するというのかその主張するところによっては明らかではない。むしろ聴者にとっては、両者は殆ど同一と認識するのではないかと考える。 また、一般的な問題として、称呼の類否判断に際し観念が影響する場合のあることのあることも別段争うものではないが、本件の場合、指定商品との関係においては、いずれも造語として認識されるとみるのが相当で、「ジジ」を「時事」と理解するとの主張は、既に前提において誤っている。仮に、観念についてその主張のように認識するとしても、それが称呼の関係でどのように影響するというのか明らかではないが、類否判断には全く影響はないものと考える。 さらに、消滅した登録第417629号商標「ジジ」が引用商標と連合商標の関係にあったことに関して述べるところは、一般的に商標の類否判断において取引の実情や取引者・需要者の認識の変化により結論が異なる場合のあることは、そのとおりである。しかしながら、本件の場合、そのような状況の変化が類否判断に及ぼすような具体的な主張はないし、そのような事実は全く見られない。 4.以上のとおり、本件商標と引用商標とは、互いに類似するものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。 1.本件商標は「ジジ」、引用商標は「ジュジュ」の称呼を生ずるところ、本件商標、引用商標ともに僅か2音構成という極短いものである(拗音は一音節である。)。 しかも、前者は「ジ」の音の繰り返しであるのに対して、後者は「ジ」に拗音「ュ」を伴った音の繰り返しである。そして、拗音は、母音の前に半母音を伴った音節であるから、「ジュジュ」は「zju zju」と発音されるもので、前者「ジジ(zi zi)」とは音質を異にするものである。 してみれば、前述のとおり、互いに極短い音構成にあって、この差異は大きく、それぞれを一連に称呼したときは、全体の音感、音調が明らかに異なり、両商標は、紛れることのない称呼上非類似の商標である。 2.称呼上類似する場合を定めた審査基準上でも、語頭音が相違するときは例外とされ(「商標審査基準」商標法第4条第1項第11号 6.(1)〔注7〕(イ)33頁;乙第1号証)、また、音構成が少数音(3音以下)であるときも例外とされ(「商標審査基準」商標法第4条第1項第11号 6.(1)〔注7〕(ハ)(i)33頁;乙第2号証)、審査基準上も二重の意味で、本件商標と引用商標は、称呼上類似するものではないのである。 また、観念も称呼上の識別に影響を及ぼすことがあるところ(「商標審査基準」商標法第4条第1項第11号 6.(1)30頁;乙第3号証)、本件商標「ジジ」は「時事」等の観念を有するのに対して、「JUJU」は西アフリカの呪物等を意味するが、わが国では馴染みのない英語であるため造語として理解されるところ、これらの相違により、両商標は称呼においても識別されて紛れることはないものである。 3.請求人は、本件商標と引用商標が称呼上類似する理由として、引用商標と請求人連合商標「ジジ」が、かつて連合関係にあったことを挙げている。 しかしながら、請求人連合商標が登録されたのは、昭和27年10月25日で、現在より50年前である。 商標の審査における類否判断は、登録(査定時)の指定商品に係る取引の実情に従い取引者、需要者の認識によりなされるべきであるところ、本件商標の登録日は平成13年9月25日であって、化粧品の種類、品質、販売方式、コマーシャル、需要者層等、あらゆる点において、50年前とは明らかに取引の実情が異なり、それに伴い取引者、需要者の認識に変化が生じていることは、顕著な事実である。そして、最近では、50年前とは違い、男性や女子中高生にも拡大した各需要者は、多種多様な化粧品やそのコマーシャルなどの大量にわたる商品情報に接して、商標に関しても、本件商標と引用商標との称呼上の違い程度をもって、明らかに各商品の出所を識別しているというべきである。 同様に、本件審判における商標の類否判断は、個々に本件商標と引用商標が類似するか否か判断されるべきであって、過去の登録に係る判断の一例に拘束されるものではなく、これをもって、本件商標の登録に係る判断を左右するものではない。 加えて、連合商標は自らの登録商標の防護的機能に着目して利用されたため、その類否判断と、他人の商標との類否判断が、必ずしも運用において同じでないことも見受けられたところである。 そうとすれば、請求人が挙げる過去の連合商標に係る判断の一例のみをもって、本件商標と引用商標が称呼上類似ということはできない。 4.本件商標と引用商標は、外観及び観念においても類似する商標ではないこと明らかである。 5.したがって、本件商標と引用商標は、称呼においてはもとより、外観及び観念においても類似の商標ではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。 第5 当審の判断 本件商標と引用商標の類否について検討する。 1.外観について 本件商標は、標準文字をもって片仮名文字で「ジジ」と書してなるのに対し、引用商標は、欧文字で「JUJU」と書してなるものであるから、両商標は、外観上明らかに区別し得る差異を有するものである。 2.観念について 本件商標は、片仮名文字の「ジジ」よりなるものであるところ、「じじ」の字音に相当する日本語は、「時事」、「時時」、「爺」などがあり、1つの語に特定することはできないものであり、片仮名文字よりなることも相俟って、これよりは、特定の観念は生じないとみるのが相当である。 一方、引用商標は、欧文字の「JUJU」よりなるものであるところ、該文字及びこれより生ずる「ジュジュ」の称呼からは、請求人の略称ないし請求人の取扱いに係る化粧品等に使用される商標が想起されるとみるのが相当である。 してみると、本件商標と引用商標とは観念上比較することができないばかりでなく、両商標に接する化粧品の分野における取引者、需要者は、特定の観念を生じない「ジジ」の文字よりなる本件商標から、請求人の略称ないし請求人の取扱いに係る化粧品等に使用される商標を想起するものとは考え難く、両商標を観念上誤認混同する可能性は極めて低いというべきである。 したがって、本件商標と引用商標とは、観念上相紛れるおそれはないものである。 3.称呼について 本件商標は、その構成文字に相応して「ジジ」の称呼を生ずるものである。 これに対し、引用商標は、その構成文字に相応して「ジュジュ」の称呼を生ずるものである。 そこで、本件商標より生ずる「ジジ」の称呼と引用商標より生ずる「ジュジュ」の称呼を比較すると、本件商標より生ずる称呼中の「ジ」の音及び引用商標より生ずる称呼中の「ジュ」の音をそれぞれローマ字表記すれば、前者は「zi」となるのに対し、後者は「zyu」となり、両音は帯同する母音を異にするものであるから、その発音においても、口の開き、舌の位置等に差異を生じ、音質、音感において異なったものとして聴取されるものである。そして、両称呼は、音質、音感において異なる「ジ」と「ジュ」の音がそれぞれ2音繰り返される音構成よりなるものであるから、称呼全体の語調が聴者に与える印象において相違したものとして聴取されるというのが相当である。 さらに、前記2.で認定したとおり、引用商標を構成する「JUJU」及びこれより生ずる「ジュジュ」の称呼からは、請求人の略称ないし請求人の取扱いに係る化粧品等に使用される商標が想起されるのに対し、本件商標は、特定の観念を想起させない造語よりなるものであるから、このような観念上の差異が両商標より生ずる称呼の識別に及ぼす影響は決して小さいということはできず、本件商標より生ずる「ジジ」の称呼と引用商標より生ずる「ジュジュ」の称呼がいずれも2音といった極めて短い音構成よりなることも相俟って、それぞれを一連に称呼した場合においても、互いに聞き誤られるおそれはないというべきである。 4.前記1.ないし3.のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、観念及び称呼のいずれの点においても非類似の商標であるから、本件商標をその指定商品について使用した場合、引用商標を使用した商品との間に、出所について誤認混同を生じさせるおそれはないものである。 5.請求人の主張について 請求人は、本件商標と引用商標とが類似するとする根拠として、「ジジ」の文字を縦書きしてなる請求人連合商標が引用商標と連合の関係にあった旨主張する。 しかしながら、請求人連合商標が引用商標の連合商標として登録査定がなされたのは、昭和27年9月10日であり、本件商標の登録査定がなされた平成13年7月6日のおよそ50年も前であって、本件商標の登録査定がなされた平成13年7月6日当時のわが国の社会的状況は、その約50年前のそれと比べ、科学や産業技術が格段の差をもって進歩し、また、交通機関の発達やインターネット等による情報伝達の高速化に伴い商業活動も急速に発展し、市場に流通する商品やサービスも著しく増大した。そして、商品等の宣伝・広告活動も様々な媒体を通して展開され、多様化し、その活動において使用される商標も多種多様であるといえる。また、このような情報などが氾濫する社会的状況の中で、取引者、需要者は、自己の求める情報を的確に選択することにある程度慣れているといえる。さらに、わが国の外国語教育も50年前に比べ一段と普及しているということができるから、外国語と思われる片仮名文字やローマ文字等に馴染んでいるといえる。 上記のように、請求人連合商標が引用商標の連合商標として登録査定がなされた当時と本件商標の登録査定がなされた時とでは、わが国における社会的状況は著しく変化し、このような社会的状況の変化に伴い、商取引の場における商標の類否判断も自ずと変化することはいうまでもなく、このことは、むしろ変化する取引社会の実情に合致しているといわなければならない。 したがって、たとえ過去において請求人連合商標が引用商標の連合商標として登録されていた事実が存在するとしても、本件商標の登録査定時の取引の実情を考慮し、本件商標と引用商標とを、その外観、観念及び称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察した場合、前記認定のとおり、本件商標及び引用商標は、これらをそれぞれの指定商品について使用しても、商品の出所の誤認混同を生じさせるおそれがない非類似の商標というが相当であるから、請求人連合商標が引用商標の連合商標として登録されていた事実により、上記判断が左右されるものではない。 6.以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-08-14 |
結審通知日 | 2002-08-19 |
審決日 | 2002-09-02 |
出願番号 | 商願平11-38866 |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Y
(Z03)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 正和 |
特許庁審判長 |
三浦 芳夫 |
特許庁審判官 |
野本 登美男 茂木 静代 |
登録日 | 2001-08-24 |
登録番号 | 商標登録第4501241号(T4501241) |
商標の称呼 | ジジ |
代理人 | 鈴木 康仁 |
代理人 | 工藤 莞司 |
代理人 | 山田 行一 |
代理人 | 新垣 盛克 |
代理人 | 矢野 公子 |