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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) 125
管理番号 1077041 
判定請求番号 判定2003-60019 
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2003-06-27 
種別 判定 
2003-02-07 
確定日 2003-05-06 
事件の表示 上記当事者の登録第0840669号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「事務用紙、鉛筆類、絵画用材料」は、商標登録第840669号の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 1 本件商標
本件登録第840669号商標(以下「本件商標」という。)は、「グリップ」の文字を横書きしてなり、昭和41年11月22日に登録出願、平成3年改正前の商標法施行令第1条別表の商品区分第25類(以下、この別表による商品区分には「旧」と表示する。)「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」を指定商品として、同44年12月9日に設定登録され、その後、同55年3月28日、平成2年8月29日及び同12年1月18日の3回にわたり、商標権存続期間の更新登録がされたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、旧第25類における「事務用紙」、「鉛筆類」、「絵画用材料」は、本件商標に係る商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
(1)判定請求の必要性
(ア)本件商標は、それが出願に係属していた時点の昭和43年12月26日に商標権者(当時の出願人)である本件判定請求人が提出した「意見書に代わる手続補正書」によって、指定商品の記載を「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」のように補正したが、その出願時の指定商品である「文房具類,紙類」から削除したものは、大正10年商標法下の商品類別第18類(以下、この商品類別には「旧旧」と表示する。)に属する「三角定規,地球儀,計算尺,そろばんおよびその類似商品」であって、旧旧第51類に属する「文房具」については削除していない。
それにもかかわらず、甲第3号証(特許庁の商標出願・登録情報検索[詳細表示])によれば、類似群として25A01と25B02だけが記載され、25B01が記載されていないことは、誤りであるといわなければならない。
(イ)因みに、件外他人の登録第2128386号商標(甲第4号証)に係る指定商品の表示は、本件商標と全く同一の表示であるにもかかわらず、その類似群の表示には、25B01が25A01及び25B02とともに記載されている。
(ウ)したがって、このような状況下にある本件商標は、類似群25B01中の事務用紙、鉛筆類、絵画用材料を指定商品とすることを確認しておく必要がある。
(2)本件商標の指定商品の範囲について
(ア)本件商標に係る指定商品は、上述のとおり、その出願時は旧第25類「文房具類,紙類」であったところ、拒絶理由通知において、旧旧第18類「コンパス」を指定商品とした商標登録第331998号に係る商標「Clipクリップ」(以下「引用商標」という。)と類似するとされたので、請求人は、本件商標の指定商品を引用商標のそれと抵触しないよう商品範囲を減縮した補正をすることによって登録を得ようとの意思をもって、本件商標の出願当時の指定商品である「紙類および文房具」から、旧旧第18類に属する「三角定規,地球儀,計算尺,そろばんおよびその類似商品を除く」と記載した手続補正書を提出したものである。
(イ)引用商標の指定商品である旧旧第18類の「コンパス」は、三角定規,地球儀,計算尺,そろばんおよびその類似商品として、旧旧第18類「教育用器械器具,算数器」という中概念中に属するものであり、旧旧第50類「紙及他類二属セサル其ノ製品」や旧旧第51類「文房具」とは非類似の商品と区分されていた。
したがって、請求人は、本件商標の指定商品中の旧第25類文房具類の中から旧旧第18類の前記商品だけを削除した。
そうとすれば、ここで除外した「その類似商品」とは、引用商標の指定商品「コンパス」と類似する旧旧第18類「五 教育用器械器具,算数器」に属する商品だけを指すものであって、それ以外の商品まで除外したものではないと解するのが自然である。
以上の事実は、本件商標の1回目及び2回目の更新登録出願に添付した「登録商標の使用説明書」によっても、客観的に証明することができる。
即ち、1回目の昭和54年更新登録願第211382号(甲第5号証)では、商品「事務用クリップ」に商標を使用し、2回目の平成1年更新登録願第214375号(甲第6号証)では、商品「クリップファイル」に商標の使用をしている。これらの商品は、いずれも旧旧第51類「文房具」に属する商品であるが、指定商品の使用として更新登録が認められている。
そうとすれば、「事務用紙」、「鉛筆類」および「絵画用材料」は、依然として「文房具類」に属する商品として、本件商標の指定商品に含まれていることは明らかである。
(3)東京高等裁判所の判決について
請求人は、前記主張を裏付けるために、東京高等裁判所の判決を提出する。
この訴訟事件は、(ア)平成14年(行ケ)第190号 平成15年1月21日判決(甲第7号証)(イ)平成14年(行ケ)第266号 平成15年1月21日判決(甲第8号証)の2件であり、判決主文は、原告の請求を棄却しているが、その理由中の「判断」における「商品の類否」については、次のように判示し、原告(請求人)の主張を認容している。
以下、同判決を引用する。
「本件商標(前記裁判における「引用商標」)についての指定商品の記載『紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く。』に立ち帰って、上記記載中の但し書にいう『その類似商品』をいかに解釈すべきかを検討する。
ア まず、本件商標は、昭和41年11月22日の出願であるから、その指定商品の表示は、その出願時において適用されていた商標法施行規則(旧)別表に基いているものと解される。
そこで、商標法施行規則(旧)別表の第25類『紙類、文房具類』を参照すると、同(旧)別表25類の商品は、『紙類』と『文房具類』に大分類され、後者の『文房具類』は、さらに『一 事務用紙』、『二 鉛筆類』、『三 絵画用材料』、『四 その他の文房具類』に中分類され、『四 その他の文房具類』中に、『定規』、『そろばん』、『計算尺』が掲げられていることが認められる。なお、『地球儀』は商標法施行規則(旧)別表25類には例示されていないが、現行の商標法施行規則別表第16類の『九 文房具類』中の中分類『(四)その他の文房具類』には、『定規』『そろばん』とともに『地球儀』が記載されているから、(旧)別表の下でも『その他の文房具類』に属する商品と解される。
イ 以上のことを念頭において、本件商標の指定商品の記載をみると、『・・およびその類似商品を除く。』との記載の直前には、『三角定規、地球儀、計算尺、そろばん』と記載されているから、ここでいう『その類似商品』とは、直前に例示された商品『三角定規、地球儀、計算尺、そろばん』と共通点を持つものとして、これらの商品から容易に類推される商品を意味しているとみるのが文脈に即した最も自然な理解である。
そして、例示された『三角定規、地球儀、計算尺、そろばん』が、いずれも『事務用紙』、『鉛筆類』、『絵』、『絵画用材料』とは異なる中項目で括られた『その他の文房具類』に属する商品であることからすれば、『その類似商品』として通常想起される商品の範囲は、広くみてもせいぜい『その他の文房具類』に属するものの範囲にとどまり、これを超えて、『事務用紙』、『鉛筆類』、『絵画用材料』にまで及ぶものではないと解するのが相当である。
ウ 被告は、本件商標の指定商品の記載の解釈は、『但し・・・その類似商品を除く』との補正がされた時点における類似商品の範囲を基準としてなされるべきであるから、補正時における『「商品区分」に基づく類似商品審査基準』によれば、『その類似商品』とは『三角定規、地球儀、計算尺,そろばん』が属する『文房具類』(大分類)のうち『柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱』を除くすべての商品であると解するのが正当であり、審決の判断は正しいと主張する。
しかしながら、『但し・・・その類似商品を除く』と記載された場合の『類似商品』の範囲について上記審査基準に示された判断基準が直ちに当てはまるものでないことは前示のとおりである。
しかも、『その類似商品』を審決のように解するときは、指定商品に『文房具類』との記載があるにもかかわらず、実際には、商標法施行規則(旧)別表に第25類『文房具類』として例示されたすべての商品(『一 事務用紙』、『二 鉛筆類』、『三 絵画用材料』及び『四 その他の文房具類』の項目分類の下に例示されているすべての商品)が除外され、ただ、『「商品区分」に基づく類似商品審査基準』に(旧)25類『文房具類』に類似しない商品として挙げられた『柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱』のみが『紙類』とともに指定商品に残されているということになるが、そのようなことは『文房具類』を記載している指定商品の表示の理解として極めて不自然であって、補正をした出願人はいうに及ばず、およそ商標公報及び商標登録原簿の指定商品の記載に接した世人が予期するところではないというべきである。
工 ちなみに、本件商標の指定商品についてされた補正は、先に認定したとおり、(旧旧)18類『理化学、医術、測定、写真、教育用ノ器械器具、眼鏡及算数器ノ類並其ノ各部、試験管、外科用器械、歯科用具、度量衡器、感光膜、活動写真映画、製図器、体操用器具、望遠鏡、顕微鏡等』に属する『コンパス』を指定商品として登録された『Clip』商標との抵触を回避するためにされたものであり、この補正の経緯からみても、出願人が『文房具類』に属する商品のほとんどすべてを指定商品から除外する意思で補正をしたのでないことは明らかである。
そして、本件においては、既に説示したとおり、本件商標における指定商品の記載自体からみて、本件商標の指定商品には(旧)25類の『文房具類』に属する商品のうち『事務用紙』、『鉛筆類』、『絵画用材料』に属するものが残されていると解されるのであり、補正における出願人の意図が上記のとおりのものと認められる以上、『その類似商品』の範囲を前記イのとおり解しても、出願人が補正によりいったん放棄した範囲を指定商品として回復させるような不当な結果となるものではない。
オ 被告は、また、本件商標の指定商品から除外された『三角定規』等は、販売部門、用途、需要者層の共通性により、件外登録第4358818号商標(以下「件外商標」という。)の指定商品『筆記具』が属すると認められる(旧)別表25類の『文房具類中』の『鉛筆類』と類似する旨主張するが、仮に『三角定規』等と『鉛筆類』の間に被告の主張するような共通性を認め得たとしても、前記(2)に述べたとおり、そのことから直ちに鉛筆類が指定商品から除外されるものとして表示された『その類似商品』に含まれるということはできない。本件商標の指定商品表示における『その類似商品』の解釈については、イに示したとおりであり、被告の主張は採用することができない。
以上によれば、本件商標の指定商品には、『文房具類』中の『事務用紙』、『鉛筆類』、『絵画用材料』に属する商品(鉛筆類(筆記具)を含む。)が残されているというべきである。
そうすると、件外商標の指定商品(『文房具類』中の『筆記用具』に属する『グリップ部に軟質ゴムの部材を装着した筆記具』)は、本件商標の指定商品と類似する商品であり、件外商標が本件商標と指定商品において類似しないとした審決の判断は、誤りであるといわざるを得ない。」
(4)むすび
以上の理由によって、本件商標は、旧第25類の文房具類中の「事務用紙」、「鉛筆類」および「絵画用材料」を指定商品の範囲に含むものであるから、請求の趣旨のとおりの判定をお願いする。

3 当審の判断
(1)本件は、登録商標に係る指定商品の範囲の確認についての判定請求であるところ、指定商品の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならないことは商標法第27条第2項の規定により明らかである。
そこで、以下本件商標の指定商品の範囲を検討する。
(2)本件商標は、旧第25類「文房具類,紙類」を指定商品として、昭和41年11月22日に登録出願されたが、他人の登録第331998号商標と類似するとして、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶の理由が通知されたものである。
これに対して、出願人は、同43年12月26日付の「意見書に代わる手続補正書」を提出して、その指定商品を減縮補正し、その結果、旧第25類「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばんおよびその類似商品を除く」を指定商品として、同44年12月9日に設定登録がされたものである。
(3)ところで、他人の商標権との抵触を解消するためには、指定商品中より、他人の商標権に係る指定商品と同一の商品を削除するだけでは足りず、その類似商品をも削除しなければならないことは、商標法第4条第1項第11号の規定の趣旨からして明らかである。
そして、「類似商品」とは、「同一又は類似の商標を使用した場合に、取引者、需要者が、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商品」をいうと解され、類似商品の範囲は、取引界の実情によって変化し得る性格を有しているものであるから、具体的商品名に置き換えてそのすべてを列挙することは困難な場合があるといえる。
そこで、除くべき類似商品を列挙する代わりに「・・・その類似商品を除く」の表示を許容し、該表示方法をもって、他人の商標権に係る指定商品との抵触を免れ得るものとしている。
そして、「・・・その類似商品を除く」という表示の方が却って商品の範囲を明確にさせる場合があるといえるものである。
そうとすれば、指定商品の記載において「・・・その類似商品を除く」と表示した「類似商品」とは、同一又は類似の商標を使用した場合に、出所の混同のおそれがある商品と解すべきである。
また、商品の類否についての判断は、査定時を基準時としてなされるものである。
(4)これを本件についてみるに、補正後の指定商品は、旧第25類「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」であるところ、「紙類、文房具類」は旧第25類に属するすべての商品を包含した表示であることから、本件商標の指定商品の範囲は、旧第25類に属するすべての商品より「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品」を除いたものと認められる。
そして、「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」は、商標法施行規則旧別表(以下「旧別表」という。)第25類中の「四 その他の文房具類」の概念に属するものと認められるところ、本件商標の登録出願の査定時においては、旧別表第25類に例示された「一 事務用紙」「二 鉛筆類」「三 絵画用材料」「四 その他の文房具類」の各概念に属する商品は、生産部門において一致するところが多いこと、同一店舗において取り扱われることが多いこと、需要者の範囲が一致すること、さらに商品の用途も密接に関連するものであること等から、互いに類似するものとされていた。
そうとすれば、本件商標の指定商品の記載における「その類似商品」の範囲は、上記「一 事務用紙」「二 鉛筆類」「三 絵画用材料」「四 その他の文房具類」の各概念に属する商品に及ぶと解するのが相当である。
(5)してみれば、本件商標の指定商品については、旧第25類「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」と補正されたことにより、出願当初の「紙類、文房具類」から「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」と類似の関係にある文房具類、すなわち「一 事務用紙」「二 鉛筆類」「三 絵画用材料」「四 その他の文房具類」の各概念に属する商品が除かれたものとみなければならない。
したがって、本件商標の指定商品に「事務用紙」「鉛筆類」「絵画用材料」は含まれないものといわざるを得ない。
よって、結論のとおり判定する。
判定日 2003-04-23 
出願番号 商願昭41-68313 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (125)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 小川 有三
特許庁審判官 鈴木 新五
山田 正樹
登録日 1969-12-09 
登録番号 商標登録第840669号(T840669) 
商標の称呼 グリップ 
代理人 牛木 理一 

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