• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z03
管理番号 1075488 
審判番号 無効2001-35475 
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-10-25 
確定日 2003-04-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第4432158号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4432158号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4432158号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成9年12月2日に登録出願、別掲に示すとおりの「alfredo」と「versace」の欧文字を二段に併記してなり、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」、第8類「洋食ナイフ及びその他の手動利器,角砂糖挟み,缶切,くるみ割り器(貴金属製のものを除く。),スプーン,フォーク」、第14類「貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしよう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶及び水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製靴飾り,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉及びその模造品,時計,記念カップ,記念たて,キーホルダー」、第16類「紙類,紙製包装用容器,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,文房具類」、第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」、第20類「家具,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,クッション,座布団,まくら,マットレス,買物かご,額縁,工具箱(金属製のものを除く。),すだれ,装飾用ビーズカーテン,ストロー,盆(金属製のものを除く。),タオル用ディスペンサー(金属製のものを除く。),つい立て,びょうぶ,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。),ハンガーボード,ベンチ,帽子掛けかぎ(金属製のものを除く。),郵便受け(金属製又は石製のものを除く。),石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻」、第21類「なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,こし器,こしよう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,紙タオル取り出し用金属製箱,せっけん用ディスペンサー,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),香炉」、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,織物製テーブルナプキン,ふきん,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,シャワーカーテン,織物製トイレットシートカバー,布製ラベル,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」、第25類「履物」、第27類「敷物,壁掛け(織物製のものを除く。),畳類,洗い場マット,壁紙」及び第34類「たばこ,紙巻きたばこ用紙,喫煙用具(貴金属製のものを除く。),マッチ」を指定商品として、同12年11月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第120号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号同及び同第11号に該当する。したがって、本件商標の登録は、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とされるべきものである。
(1)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、世界的に著名なデザイナーであるGianni Versace=ジャンニ・ヴェルサーチが1979年に設立した請求人の著名な略称及び請求人会社が昭和56年7月に設立した日本国法人「株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン」(以下「請求人等」という。)の著名な略称である「VERSACE」を含むものである。
しかるに、被請求人は本件商標を登録出願するにつき、請求人等のいずれの承諾をも得ていない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
デザイナーGianni Versace=ジャンニ・ヴェルサーチは、当初婦人服を手掛けたが、同人が発表する婦人服は、あくまでも動く女性を念頭に置いたもので、甲第1号証の表現を借りれば、「女性が動くたびにその表情を変え、生き生きした個性を造り上げてしまう服。」との評価を受け、世界のモード界は、こぞってその斬新な感覚と独創性を絶賛し、注視し続けたのである。同人のデザイナーとしての非凡な才能は、時を経ずして紳士服、その他のアパレル製品、身飾品、装飾品等にも遺憾なく発揮された。甲第22号証ないし同第45号証のそれぞれには、Gianni Versaceの案出にかかる被服類が、デザイナーブランド「GIANNI VERSACE」、「ジャンニ ヴェルサーチ」あるいは「VERSACE」、「ヴェルサーチ」(以下、これらを便宜上「VERSACE商標」という。)のもとに紹介されている。
前記の次第で、「VERSACE商標」は、周知著名なデザイナーブランドとして、請求人等が取扱ってきた被服類をはじめとして、ネクタイ、手袋、ベルト、キーケース、皮革小物雑貨、時計、香水、装身具等に永年使用された結果、デザイナーGianni Versaceの案出に係る前記被服等の商品を表示するものとして、又は請求人等の取扱う前記被服等の商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日以前に取引者・需要者の間で広く知られ、認識されていたものである。
本件商標の下段部「versace」は、これら周知の商標と同一または類似し、同一または類似の商品に使用するものである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
前記(2)に述べたとおり、世界的に著名なデザイナーGianni Versaceが設立し業務を主宰した請求人等は、「VERSACE商標」を被服類をはじめとして、ネクタイ、手袋、キーケース、ベルト、時計、香水、皮革小物雑貨、装身具等に永年使用し、その結果これら商標は、著名デザイナーブランドとして本件商標登録出願前に周知著名となっている(甲第1号証ないし同第55号証)。しかして、本件商標は、「versace」の語を主要部としているから、前記周知著名商標と混同誤認される蓋然性が極めて高く、少なくとも需要者・取引者をして前記周知著名商標を容易に連想せしめるものである。
前述のとおり、本件商標の指定商品の一部と前記周知著名商標が使用されている商品とは、流通経路、販売店、ー般需要者層をほぼ同一にする。
さらに付言すれば、請求人等が永年使用してきた「VERSACE」等の周知著名商標は、世界的に著名なデザイナーブランドであること前述のとおりであるから、経験則上、マスメディア等を通じて一般需要者層にも広く伝播しており、知られているものと推認すべきである。
したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、恰もその商品が、請求人等の業務に係る商品であるかの如く、誤認混同される蓋然性が極めて高い。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第11号について
請求人は、登録第1432367号商標、登録第1464615号商標、登録第1471328号商標、登録第1478212号商標、登録第1562787号商標、登録第1614306号商標、登録第1625116号商標、登録第1625119号商標、登録第1694658号商標、登録第1709509号商標、登録第1718712号商標、登録第1733032号商標、登録第1733033号商標、登録第1776874号商標、登録第1818857号商標、登録第2374494号商標、登録第2379357号商標、登録第2385308号商標、登録第2400129号商標、登録第2429357号商標、登録第2437381号商標、登録第2570527号商標、登録第2625565号商標、登録第2631311号商標、登録第2645506号商標、登録第2645559号商標、登録第2662689号商標、登録第2664766号商標、登録第2708755号商標、登録第2714858号商標、登録第2718477号商標、登録第2719540号商標、登録第3182966号商標、登録第3231084号商標、登録第3231085号商標、登録第3265367号商標、登録第3266525号商標、登録第4023452号商標、登録第4024005号商標、登録第4065614号商標、登録第4065615号商標、登録第4089934号商標、登録第4119599号商標、登録第4126967号商標、登録第4242222号商標、登録第4456427号商標、登録第4455291号商標(甲第56号証ないし同第102号証、以下、これらを一括して「引用商標」という。)の商標権者である。
そして、本件商標は、引用商標と同一又は類似するものであり、かつ、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似するものである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標は、請求人等の名称の著名な略称を含むとしても、被請求人自身の氏名のみからなる商標であり、これを商標として使用する権利を有するのであるから、商標法第4条第1項第8号の適用を受けるべきでない、と述べている。
しかし、被請求人のいう「商標として使用する権利」が存在するか否かは商標法第4条第1項第8号の適用には無関係であり、当該商標について登録を受けようとすれば、商標法第4条第1項第8号に規定する不登録要件に該当しないことが要求されることはいうまでもないことである。
被請求人は、自身がGianni Versace氏と縁戚関係にある、と述べている。しかしながら、このことは立証がなされていないし、仮に立証されたとしても、それにより商標法第4条第1項第8号の規定の適用を免れ得るものでないことはいうまでもないことである。
さらに、被請求人は、乙第1号証を提示して、イタリアにおいてはVersace姓を名乗る者の数が多いことを指摘している。しかしながら、このことは商標法第4条第1項第8号の規定の適用に際して何の意味もないことである。
(2)被請求人は、請求人商標が使用された請求人の業務に係る商品として具体的に証明されているのは、本件商標の指定商品と非類似の紳士服及び婦人服のみであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しないと述べている。
しかしながら、「VERSACE商標」を紳士服及び婦人服以外の請求人の業務に係る商品につき使用していたことは甲各号証において紹介されており、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しないとする被請求人の主張には全く根拠がない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証の1ないし12を提出した。
1 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、被請求人自身の氏名のみからなる商標であるから、氏名そのものを商標として使用する権利を有する。
請求人会社を創設したデザイナーのGianni Versace氏はイタリア人であり、被請求人はGianni Versace氏とは縁戚関係にあるイタリア人である。イタリアにおいては、Versace姓を名乗る者は多く、Versaceはイタリアにおいてはありふれた姓である(乙第1号証)。
したがって、Versace姓を有する者がそのファーストネームと共に自らを名乗ることに何ら違法性はなく、本件商標を出願するに当って、請求人等の承諾を得る必要は毛頭ないことである。
2 商標法第4条第1項第10号について
請求人の引用商標が、仮に著名であるとしても請求人の業務に係る商品として具体的に証明されているのは請求人提出の甲第1号ないし同第45号証を見る限りにおいて、婦人服、紳士服であって、本件商標の指定商品とは非類似商品である。
本件商標は、引用商標と対比して非類似であるばかりでなく、商品においても非類似であるから、商標法第4条第1項第10号に該当しないこと明らかである。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の著名性について
請求人は、「VERSACE商標」を被服類をはじめとして、ネクタイ、手袋、キーケース、ベルト、時計、香水、皮革小物雑貨、装身具等に永年使用し、その結果これら商標は、著名デザイナーブランドとして本件商標出願前に周知著名となっていると主張している。
しかしながら、甲第1号証ないし同第55号証を検討した限りにおいて、請求人の引用商標は、婦人服、紳士服に広く使用されていることが記されているのみであって、その他の商品については全く記されていない。
したがって、「GIANNI VERSACE」が婦人服、紳士服について知られていることは認められるとしても、その他の商品にまで使用されていることは疑わしく、まして需要者に知られているとは認められない。
また、これら甲各号証からは「GIANNI VERSACE」が婦人服、紳士服に関しては「VERSACE」と略称されていることがあるかもしれないと認められるものの、その他の商品に関してまで「VERSACE」が略称として需要者に周知されているとは到底認められない。
(2)「Gianni Versace」、は一連で表示しなければならない必然性がある。
甲第1号証ないし同第45号証には、デザイナーとしてのGianni Versace氏を称するときも、ブランドとして「GIANNI VERSACE」を記すときも、フルネームで記されていて、文脈上特に明らかな時にのみVERSACEが用いられている。
また、先に述べたとおり、「VERSACE」はイタリア国においては普通に用いられているありふれた姓に該当する。
そして、ファッション・デザイナーでジャンニ/Gianniのファーストネームを有する者は「ジャンニ・ヴィンセンティン」(甲第24号証及び同第26号証)、「ジャンニ・ブーリ」(甲第27号証、同第31号証、同第40号証、同第41号証、同第43号証)、「ジャンニ・カリタ」(甲第44号証及び同第45号証)等が見られる。
したがって、これらデザイナー及びデザイナー/ブランドと区別するためにも「Gianni Versace」はフルネームで表示する必然性がある。
(3)上記したとおり、本件商標は、引用商標とは非類似である。また、引用商標が周知されているとしてもそれは婦人衣料、紳士衣料についてであって、婦人衣料、紳士衣料と本件商標の指定商品とは製造者、流通経路を異とする非類似商品である。
したがって、引用商標が婦人衣料、紳士衣料について周知されているとしても、本件商標は、その指定商品に使用されても請求人が引用する商標とは混同を生ずるおそれはない。
4 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上記したとおり引用商標とは非類似であるから、その指定商品の類否を論ずるまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しないこと明らかである。
5 被請求人が請求理由に対し、詳細に亘り答弁したその後において、請求人による新たな証拠(甲第104号証ないし甲第120号証)を追加し、新たな主張をなさんとする行為は、徒に審判を遅延させるのみであって、民事訴訟法第175条の規定を類推して許されるべきことではない。

第4 当審の判断
1 請求人商標の著名性について
請求人は、本件商標の無効理由の一つとして、請求人に係る「VERSACE商標」の著名性を理由に本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反している旨主張しているので、この主張の当否について判断する。
請求人は、イタリア国 ミラノ在住の法人と認められるところ、その提出に係る甲各号証によれば、以下の点を認めることができる。
(1)株式会社洋泉社1991年発行「キーワード事典ファッション」(甲第1号証),ジャンニ・ヴェルサーチの項によれば、「イタリア、ミラノファッション界の大御所ともいえるジヤンニ・ヴェルサーチは、1946年南イタリアのカラブリア生れ。ミラノで育つ。ファッション関係の仕事をしていた母の影響で幼い頃からデザイナーとしての勉強をしていた彼が独立した店を持ったのは79年のことだ。以来、完壁ともいえるデザインとカッティングで、たちまちミラノを代表するデザイナーとなった。・・・」との記述が認められる。
(2)株式会社織部企画1990年発行「新ファッションビジネス基礎用語辞典」(甲第2号証),ジャンニヴェルサーチ(Gianni Versace)の項によれば、「1946〜.・・・78年<ジャンニヴェルサ-チ>として、初のコレクションをミラノで発表。・・・女性美を表現するテクニックは現代イタリア・モード界の第一人者に数えられ、・・・オペラやバレエ(モーリス・ベジャール作品他)の舞台衣裳も手がける。・・・」との記述が認められる。
(3)株式会社研究社1990年発行「英和商品名辞典」(甲第3号証),Gianni Versace(ジャンニヴェルサーチ)の項によれば、「イタリア Milanoのデザイナー、Gianni Versace(1946-)のデザインした衣料品、靴など、そのメーカー(1978年創業)Milano(1979年開店)・Romaにある直営店・・・1978年に独立し、自分の名でコレクションを発表、元来婦人服専門だったが、1978年以降紳士物カジュアルウェア・皮革衣料にも領域を拡げた。ベルト、靴なども手がけている。香水Gianni Versaceを1982年に発表(男性用香水は1984年)、・・・1988年より腕時計をデザイン・・・」との記述が認められる。
(4)文化出版局1999年発行「ファッション辞典」(甲第4号証),ヴェルサーチ,ジャンニ(Gianni Versace)の項によれば、「1946〜’97年。イタリア生まれ。さまざまなブランドのデザインを手がけた後、’78年ミラノで独立。翌年初コレクションを開催。力強くセクシーでゴージャスな作風。一目でそれとわかる強烈な色彩のプリントとシャープなカットが特徴。’89年よりパリでオートクチュールも発表。マイアミで射殺され、妹のドナテッラが後継。」との記述が認められる。
(5)繊研新聞の1991年9月9日から同9月14日にかけて連載された「軌跡」、「ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパンの10年」と題する特集記事(甲第5号証ないし甲第10号証)によれば、「イタリアを代表するデザイナーブランド『ジャンニ・ヴェルサーチ』を展開しているジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパンが今年十周年を迎えた。設立されたのは1981年7月である」「神戸市立博物館で、ヴェルサーチの15年にわたる活動の成果を…紹介する」(甲第5号証)、「ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン…現在の資本金、内訳は、伊のヴェルサーチ社一千万」「ヴェルサーチを専門的に展開する新会社を作る理由の第一は…」(甲第6号証)、「ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパンが伊ヴェルサーチ社と五年間の輸入契約を結び契約額は、」「ヴェルサーチ社と改めて契約交渉をもち三年目から単年契約切り替える」「直営店は、1981年9月に高島屋大阪店に25平方米の店を出したのが第一号。続いて、高島屋京都店(82年3月)、サンローゼ赤坂店(同9月)と出店していき、販路獲得の突破口にしていった」(甲第7号証)、「売上高の推移は86年度が19億5千万円、87年度27億8千万円、88年度34億9千万円、89年度54億4千万円、90年度77億3千万円であった」「同社の営業の柱になってきたのは24店舗の直営店網だ・・・」「いつも新鮮な提案がブランド、というのがヴェルサーチの性格」(甲第9号証)、「ヴェルサーチファンのヤングのための服」「ヴェルサーチは創造性、プレステージの維持に重点をおき、」「資本参加しているのは伊ヴェルサーチ社」「ヴェルサーチがこのまま突出してのびる」(甲第10号証)等々の記事解説が認められる。
同じく、1991年1月8日付繊研新聞(甲第12号証)によれば、「伊ヴェルサーチ・グループ」、「日本市場は合弁3社体制に」、「中核はヴェルサーチ・ジャパン」、「3月にヴェーザ・ジャパン設立」とする記事見出しの下、第一面のトップ記事として取り上げられたことが認められ、同じく、1991年2月12日付、同5月13日及び同7月13日付繊研新聞(甲第13ないし同第15号証)によれば、「ヴェルサーチ社長」(サント・ヴェルサーチ社長)に係る請求人会社の事業運営に係る談話、「ヴェルサーチスポーツ」なるブランドを紹介する記事及びヴェルサーチグループの日本での宣伝・販促一本化へ新会社設立記事であって、請求人会社に係る国内における事業展開の状況を報ずる記述が認められる。
さらに、1992年1月14日付繊研新聞(甲第16号証)によれば、「迫力を欠くヴェルサーチ」の見出しの下、ミラノで開催された92年秋冬メンズコレクションに「ヴェルサーチ」も他のいわゆるファッションメーカーとともに出品した旨を報ずる記事、また、1992年1月24日付繊研新聞(甲第17号証)によれば、福岡市在の輸入ブランド品を主力とする婦人服専門店において、「売上げがヴェルサーチが40%増と最も伸び」となったことを報道する記事、或いは、1992年1月27日付繊研新聞(甲第18号証)によれば、「ヴェルサーチ社は91年春夏から92年にかけてメンズ重衣料主体の『V2』を発売した」旨を報ずる記事、さらに、1992年7月2日付繊研新聞(甲第19号証)によれば、「強気のヴェルサーチも…」の見出しの下、ヴェルサーチのメンズ新ブランド「V2」を紹介する報道記事が認められる。
1992年8月13日付日本繊維新聞(甲第20号証)によれば、「英のロック歌手スティングさんがトュードールスタイラーサント22日結婚することになり、その衣装をヴェルサーチが製作した。」の報道記事が認められる。
1989年5月6日、同8日付朝日新聞宣伝広告欄(甲第11号証及び同第21号証)における、世界の文化を輸入する太陽会の見出しの下、「Gianni Versaceファッションは、知のモザイクである、『ジャンニ・ヴェルサーチ』は、このポリシーのもとに」の宣伝広告が認められる。
(6)株式会社講談社発行「世界の一流品大図鑑’83年版」(甲第22号証)及び「同’85年版」(甲第23号証)、GIANNI VERSACE(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「当年34歳。イタリアのファッション関係者、ジャーナリストの間でいちばんもてはやされているデザイナーのひとりです。・・・」、「卓越したセンスのよさと現代感覚は定評のあるところ、・・・ヴェルサーチ独特のカラーバランス」等々と解説され、また、別項において、「輸入元、三井物産(株)」、「発売元、(株)ジャンニ・ヴェルサーチジャパン」なる記載が認められる。
また、同じく、「世界の一流品大図鑑’89年版」ないし「同’97年版」(1997年は5月発行)(甲第24号証ないし同第32号証)においても、他のファッションメーカーと並んで「GIANNI VERSACE」(ジヤンニ・ヴェルサーチ)に係る婦人服、紳士服等が紹介されていて、それら製品が大阪、東京に拠点を置く前記販売会社を通じて国内各地の主要都市の百貨店等に向けて供給されている状況が認められる。
(7)株式会社世界文化社昭和58年発行家庭画報編「世界の特選品’84・LADIES’」(甲第34号証)、GIANNI VERSACE(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「イタリアンコレクションならではの色づかい、ヴェルサーチ35歳、イタリアの名高いデザイナーのなかでも、その若さを生かした大胆なカッティング、色づかいは常に注目を集めています」、「シャープな女性らしさを感じさせてくれる服・・・スタイルはヴェルサーチが今後の課題とする、シンプル化を象徴しています・・・」等々と解説され、また、別項において、「輸入元三井物産(株)、発売元(株)ジャンニ・ヴェルサーチジャパン」とあり、同時に、「販売店」が国内各地の百貨店ほかブランド品関連の衣料品店とする状況が認められる。
同じく、世界の特選品(別冊家庭画報)「’90年版」、「’93年版」ないし「’95年版」(甲第35号証ないし甲第37号証)、GIANNI VERSACE(ジヤンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「’90にひときわ輝きを放つ素敵でエクセレントなブランド10を特集」とする記事見出しの下、「ミラノの知性派の代表デザイナーとして・・・」「イタリアの粋と知性を合わせて意欲的に展開する美の秘密は・・・」(甲第35号証)、「ダイナミックでセクシーなコレクションを展開した今シーズン。反対にスカーフは」(甲第36号証)、「文字をデザイイン化して…ヴェルサーチのアイディは尽きることがない」(甲第37号証)、「豹以外にも縞馬が描かれているスカーフ。『知のモザイク』といわれるヴェルサーチのデザインが生きています」(甲第38号証)」等々の解説と共に、そのデザインに係る男性用、女性用の衣服が紹介されていて、さらに別項において、取扱いに係る商品がレディスバッグほか革製小物、コート、子供服等にも及ぶこと、そして、前記同様に「輸入元」「発売元」及び「販売店」の紹介記事が認められる。
(8)株式会社講談社発行「男の一流品大図鑑’81年版」(甲第39号証)、GIANNI VERSACE(ジヤンニ・ヴェルサーチ)の項において、「30歳にしてイタリア・モード界を背負うリーダーの一人となったヴェルサーチ」とする紹介記事とともに、そのデザイン・素材の特徴等、前記同様の記述解説が認められる。同じく、「男の一流品図鑑’92年版」、同「’93年版」、同「’95年版」及び同「’97年版」(甲第40号証ないし同第43号証)「GIANNI VERSACE」(ジヤンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、紳士服、コート、ブルゾン、セーター、ネクタイ等の衣料品のほか、手袋、ベルト、キーケース及び革小物等雑貨品も扱っていることが認められる。そして、前記同様に「輸入元」「発売元」及び「販売店」の紹介記事が認められる。
(9)日本交通公社出版事業局発行「’89ヨーロッパの一流品 EUROPEAN BEST」、同「’90 EUROPEAN BEST」(甲第44号証及び同第45号証)、GlANNI VERSACE(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「世界的なリーダーシップをとるデザイナーとして、常に新しさをアピールし続けるヴェルサーチ」、「ヴェルサーチは卓越した感性で世界のファッション・リーダーとして活躍している。・・・優れたデザイナーに贈られるゴールデン・アイ賞をはじめとして、数々の栄誉ある賞が与えられている」旨解説されていて、取扱いに係る商品を紳士・婦人服とするほか、前記同様に「輸入元」「発売元」の紹介記事が認められる。
(10)請求人会社は、わが国において早い時期から「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」若しくは「Versace商標」ないしはこれを主要部とする商標について、婦人服、紳士服のみならず、その他の衣料品、雑貨品等の商品分野を中心に多くの商標登録を取得していたことは引用商標(甲第56号証ないし同第102号証)によって認められる事実である。
以上、認定の事実を総合するに、「VERSACE商標」は、イタリアの服飾デザイナーとして世界的に知られるGianni Versace氏の氏名又はその著名な略称として、また、同氏に係るいわゆるデザイナーズブランドを表彰し、或いは同氏の創立に係り現在その親族により受け継がれる請求人会社ほか国内の関連会社等その事業全体を表彰するいわば代表的出所標識として、1980年(昭和55年)頃よりすでにわが国の取引者、需要者一般において広く認識されていたものと認められる。
そして、同氏又は請求人会社に係る衣料品を中心とするいわゆるファッション関連各商品は、国内輸入会社(三井物産株式会社)、国内販売会社(株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ ジャパン)又は国内各地の直営店、販売店を通じて、当時より現在に至るまでの間、営々として消費者の需要に供されてきた状況が認められる。
2 混同を生ずるおそれについて
本件商標は、「alfredo」、「versace」の各欧文字を上下二段に表してなるところ、これら文字の全体からは直ちに特定・固有の意味合い等を看取し得る事情はなく、また、その外観構成よりして容易に上段の「alfredo」と下段の「versace」とに分離して看取し得るものといえる。
そして、「GIANNI VERSACE」が、「VERSACE(ヴェルサーチ)」と略称され周知・著名である事実は、請求人提出に係る甲各号証によって認め得ることは前記したとおりである。
被請求人は、「甲第1号証ないし同第55号証を検討した限りにおいて、請求人の引用商標は婦人服、紳士服に広く使用されていることが記されているのみであって、その他の商品については全く記されていない。したがって『GIANNI VERSACE』が婦人服、紳士服について知られていることは認められるとしても、その他の商品にまで使用されていることは疑わしく、まして需要者に知られているとは認められない。」旨主張しているが、請求人提出に係る甲各号証には、請求人及び関連会社が、「VERSACE商標」を、下記に示すとおり婦人服・紳士服以外の商品についても使用していた事実が記載されている。
例えば、「アクセサリー」(甲第1号証)、「ベルト,靴,香水,腕時計」(甲第3号証)、「化粧品,香水,アクセサリー」(甲第13号証)、「香水,クッション」(甲第29号証)、「バッグ,メンズバッグ,ベルト,小物,スカーフ,メガネサングラス」(甲第30号証)、「レディスバッグ,スカーフ,ネクタイ,革小物」(甲第32号証)、「レディスバッグ,革小物」(甲第35号証)、「スカーフ,時計」(甲第36号証)、「スカーフ,時計,眼鏡,香水」(甲第37号証)、「スカーフ,時計」(甲第38号証)、「ネクタイ,手袋,ベルト」(甲第42号証)、「キーケース,革小物」(甲第43号証)、「テキスタイル」(甲第45号証)等である。そして、これらの商品は、ファッション関連商品といえるものである。
また、著名なデザイナーブランドが、ファッション関連商品以外の多数の商品に進出し、使用されている実情にあることも事実であるから、「VERSACE商標」にしても、ファッション関連以外の多くの商品に使用されるであろうことは容易に推察される。
そして、本件商標の指定商品は雑貨類が多く、これらの商品の類には請求人の登録商標も多く、現に「VERSACE商標」が使用されている商品、或いは今後使用され得る可能性の高い商品が数多く含まれている。
また、被請求人は、「これら甲各号証からは『GIANNI VERSACE』が婦人服、紳士服に関しては『VERSACE』と略称されていることがあるかもしれないと認められるものの、その他の商品に関してまで『VERSACE』が略称として需要者に周知されているとは到底認められない。」旨主張しているが、「VERSACE商標」の著名性はファッション関連商品以外の商品にも及ぶこと前記したとおりであるから、この点に関する請求人の主張は認め難いところである。
そうとすれば、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、前記認定の「VERSACE商標」の著名性並びに商品分野の共通性よりして、構成中の「versace」の文字部分に注意を惹かれ強く印象づけられるとともに、容易に「VERSACE商標」を想起し又はその事業主体に係る商品等と関連づけて認識し把握するとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ないから、その登録は商標法第4条第1項第15号に該当するものというべく、この点を述べる請求人の主張は理由あるものといわなければならない。
そして、被請求人は、「甲第1号証ないし同第45号証には、デザイナーとして、ブランドとして記すときも、フルネームで記されていて、文脈上特に明らかな時にのみVERSACEが用いられている。また、『VERSACE』はイタリア国においては普通に用いられているありふれた姓に該当する。そして、ファッション・デザイナーでジャンニ/Gianniのファーストネームを有する者は『ジャンニ・ヴィンセンティン』、『ジャンニ・ブーリ』、『ジャンニ・カリタ』等が見られる。したがって、これらデザイナー及びデザイナー/ブランドと区別するためにも『Gianni Versace』はフルネームで表示する必然性がある」ことから、本件商標が「VERSACE商標」と混同を生じない旨、主張する。
しかしながら、「GIANNI VERSACE」、「ジャンニ・ヴェルサーチ」がフルネームでだけでなく、「VERSACE」、「ヴェルサーチ」との略称がイタリアの服飾デザイナーであるジャンニ・ヴェルサーチ若しくは同人に係るデザイナーブランド又はイタリア法人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」ないしその関連会社による事業全体を示すものとして多用されていることは上記1のとおりであり、また、デザイナー「ジャンニ・ヴィンセンティン」、「ジャンニ・ブーリ」、「ジャンニ・カリタ」がわが国の取引者、需要者一般に知られていることを認めるに足りる証拠はないから、本件商標に接した取引者、需要者が、これを他のデザイナーと区別するために常に一連のデザイナーブランドとして認識するとは考えられず、「versace」の文字部分から前記のように著名な「べルサーチ商標」を想起し、その事業主体に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるというべきである。また、イタリア国の主要都市における電話番号案内の検索リスト(乙第1号証の1ないし12)からうかがわれるように、「VERSACE」が同国では普通にありふれた姓にすぎないとしても、わが国における取引者、需要者一般の認識を示すものではないから、上記判断を何ら左右するものではない。
なお、被請求人が、商標法第26条第1項第1号により自己の氏名権の行使として本件商標の使用を継続し得るとしても、同法第4条第1項第15号第46条第1項の適用により、本件商標を専有する排他的、独占的な商標権を対世的、遡及的に失効させることを妨げるものではない。また、被請求人が述べる「詳細に亘り答弁した後に、請求人による新たな証拠の追加、主張」については、証拠の提出は審理終結時までできるものと解されるばかりでなく、当該答弁中の主張は、無効理由の要旨を変更するものでないから、その証拠の提出及び主張は採用できるものである。
3 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
本件商標

審理終結日 2002-10-31 
結審通知日 2002-11-06 
審決日 2002-11-22 
出願番号 商願平9-181649 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
中嶋 容伸
登録日 2000-11-17 
登録番号 商標登録第4432158号(T4432158) 
商標の称呼 アルフレッドベルサーチ、アルフレッド、ベルサーチ、ベルサーチェ、アルフレッドバーセース 
代理人 佐々木 宗治 
代理人 山下 穣平 
代理人 木村 三朗 
代理人 大村 昇 
代理人 小林 久夫 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ