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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 042
審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効としない 042
管理番号 1075233 
審判番号 審判1999-35064 
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-08 
確定日 2003-04-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第3370822号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3370822商標(以下「本件商標」という。)は、「はれっくす」の文字を横書きしてなり、平成5年2月22日に登録出願、第42類「気象情報の提供」を指定役務として、平成10年11月27日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効にする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第9号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)請求人は、「株式会社ハレックス」を商号として、平成5年4月1日に設立登記がなされた。その設立の目的は、登記簿謄本の目的欄に「1.気象及び生活関連情報の提供」と記載されているように、気象情報の提供を1つの目的としていることは明らかである(甲第1号証及び同第2号証)。
請求人は、サービス説明用パンフレット(甲第6号証)を作成して頒布しており、設立以来、今日まで継続して気象情報の提供サービスを業として実施している。
(2)有限会社アイ・ビー・シー(本件商標の登録査定時の出願人であり、前権利者であった「有限会社アイ・ビー・シー」を、以下「アイ・ビー・シー」という。)は、財団法人日本気象協会(以下「気象協会」という。)と、平成4年8月1日より平成5年3月31日の期間に亘り、気象協会が提供する気象情報コンテンツの提供を受けるため、契約を締結した。この契約の折衝は平成4年5月頃から開始されている。
契約締結後の平成4年10月頃、アイ・ビー・シーの代表者である稲葉文藏氏(以下「アイ・ビー・シー代表者」」という。)は、気象協会の担当者である貴島敏氏(以下「気象協会担当者」という。)と契約額について折衝を行っている。その過程で、アイ・ビー・シー代表者から気象協会がバックボーンとなって気象情報会社が設立される噂を聞いたとの話題が出たとのことである。気象協会担当者は、平成5年に設立準備中のハレックス株式会社が発足して同種の気象情報サービスが開始されるらしい旨話した(但し名称がハレックスであるか否かは正確に記憶していないが話の成り行きと雰囲気で名称を告げた確率は高い)。
その後、アイ・ビー・シーと気象協会との間に締結された契約は、平成5年2月頃に中断している。
前記の事実、及び気象協会担当者が、アイ・ビー・シー代表者に説明した内容は、気象協会担当者を証人として人証をもって立証する。
(3)その後、平成5年2月22日にアイ・ビー・シーは、本件商標について登録出願を行っているが、指定役務の気象情報の提供も、「はれっくす」という商標も、請求人の設立準備中における事業内容、予定した商号と実質的に同一である。
(4)我が国の商標登録制度においては先願主義が採用されており、同一又は類似の商標の出願については最先出願の出願人の商標が登録されることは十分承知している。したがって、請求人の会社設立前に出願しておくべきであったことは確かであるが、設立準備、設立後の営業開始に至るまで少数の担当者による事業の推進等のため、商標出願の手続きは、設立後にせざるを得なかった事情がある。さらに、請求人の企業は、多数の出資者により設立されたので、設立前に何れかの出資者により商標登録出願を行っておくことも、事実上困難な事情があった。
(5)ところで、請求人の企業の設立準備段階においては、平成4年4月に関連する多数の企業に対して出資募集の勧誘を行った(甲第7号証)。
また、平成5年1月28日付けの「新会社設立確認総会の開催について」という資料(甲第8号証)に記載されたとおり、平成5年2月12日には、36社に及ぶ多数の出資会社も決定し、設立確認総会の召集も行っている。
さらにこれより先に、平成4年10月5日付け内航新聞社発行「内航海運新聞」(甲第9号証)に、新会社についての紹介記事が掲載され、業務内容及びサービス内容について詳細に説明されている。また、「新会社名は『HALEX』(ハレックス)が第一候補となっている。」と記載されていることから、少なくともこの掲載日以降は、「HALEX」又は「ハレックス」という候補社名は不特定多数の人々に知られたことになる。
(6)以上のように、請求人の企業の設立準備段階である平成4年4月頃から、請求人の出願に至る約2年半の間に、新会社が「ハレックス」及び「HALEX」という商号を候補とすること、或いは現実にこれらを商号として使用した請求人の企業が設立されたことに関する情報が広く知られた状態にあったが、これらの報道により知られた商号と同一の商標の出願は、アイ・ビー・シーの本件商標が唯一である。
請求人は、その商号から由来する「ハレックス」及び「HALEX」並びに「HAPPY LIFE EXPERT」の3件の商標を採択し、第36類、第38類、及び第42類を指定役務として、計9件を平成6年11月11日に出願し、このうち、アイ・ビー・シーが先願商標として第42類の「ハレックス」及び「HALEX」の2件が拒絶されたが、他の7件は登録されている。
(7)さらに問題とすべきことは、アイ・ビー・シーが取得した商標権の取り扱いにある。本件商標が登録された後しばらくして、アイ・ビー・シーは、請求人に商標権の譲渡の意向を電話で打診してきたが、譲渡を受ける意向が無いことを伝えている。
権利化して間もなく商標権を売りたいという意思表示をされたことは、自己の業務に商標を使用する意志がないことを意味するものと解さざるを得ない。商標権者が取得した権利をどのように利用するかは、本来権利者の自由に任されている。しかし、上記の事実は、商標法第3条第1項の、「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標については、(中略)商標登録を受けることができる。」という規定に違反して登録されたことを意味する。この点からも、本件商標登録は、違法性を内在し、無効とされるべきものである。
(8)また、上記の事実は、請求人の商号と事業内容から予想される商標を先回りして出願し、権利化して、その権利を売却する事により利益を得ようとする行為であると疑われても仕方の無い行為を意味する。このような行為は、著しく信義に反し、公の秩序を乱す行為に帰するといわざるを得ないので、請求人はこの点を主張するものであり、商標法第4条第1項第7号の規定により、本件商標は、公序良俗を害する商標として、商標登録を受けることができないものと思料する。
(9)よって、甲第1号証ないし同第9号証の証拠と、証人尋問により事実を認定の上、本件商標は、商標法第3条第1項及び同法第4条第1項第7号の規定により、商標登録を無効にすべきものである。
(10)被請求人の答弁に対して、以下のとおり弁駁する。
ア アイ・ビー・シーは、最終的に「はれっくす」を選択した過程を述べているが、その事実を証明できるものはない。複数の商標から「はれっくす」に絞られる確率は数分の一にすぎない。さらに「ハレックス」という文字の組み合わせを作り出すことは、有効な文字数が40数個あることを考慮すると、同一の組み合わせに到達する確率は数億分の一にすぎないのである。有意の文字の組み合わせに限ったとしても、その確率は何十万分の一の確率となり、アイ・ビー・シーが、請求人の商号である「ハレックス」を知ることなく独自に作りだしたとする確率は極めて小さい値となる。
イ アイ・ビー・シーは、「はれっくす」商標を独自に選択したが、その時直ちに商標出願はしなかったと述べている。しかも、アイ・ビー・シーは、その「はれっくす」商標の出願を直ちにすることなく、請求人の株式会社ハレックスの設立が本決まりになった平成5年2月22日に行っているのである。登記を行った日を遡ること僅か1月余に迫った時期(正確には37日前)である。
先願主義を熟知しているアイ・ビー・シーの行動と明らかに矛盾する。企業においては、商号を商標として出願することが多いことを考慮すれば、請求人の商号が確定した時期に競合する商標出願を行った方がアイ・ビー・シーとして有利となることは明かであるが、これが単に請求人の勘ぐりであり根拠がないとするアイ・ビー・シーは、遅延した理由については何も説明していない。
ウ アイ・ビー・シーは「内航海運新聞」(甲第9号証)は書店では販売していないと述べているが、業界新聞とはいえ公開され頒布されている刊行物であることを指摘しておく。なお乙第6号証の成立自体はこれを認める。
エ アイ・ビー・シーは、請求人と同種企業であること、他の者が類似する事業を開始することを聞いてより一層商標出願の必要を感じてなされたことを述べているから、当然請求人の設立状況について調べたのではないかと推測されるが、設立予定の社名も公表していたにもかかわらず、商号の「ハレックス」については、全く知らないと述べていることに不自然さがあることを指摘したい。
オ アイ・ビー・シーは、請求人が典型的な後願の出願人で何等救済を受ける理由は存在しないことは明白であると述べている。しかし、先願主義の濫用を認め、公序良俗を害するおそれがある商標として認定した、平成11年3月10日にされた平成9年審判第20756号外の審決の判示事項を引用する。
カ 「出資募集勧誘文書」(甲第7号証)及び「新会社設立確認総会の開催について」(同第8号証)については、会社設立の資料として保存されていることから、疑問があれば証拠調べにより日付が確認可能である。
甲第7号証の書類は、誰が作成したかの署名はなされていないのが普通である。この種の案内状の日付けについては「吉日」と記載するのが慣例である。したがって、平成4年4月末日までにはこの書類が作成され、関係者に送付されたことは明かである。
請求人が甲第7号証を提出した意図は、この書面が作成され関係者に送付された時点において、既に気象情報の提供を行う新会社の商号は株式会社ハレックスであったことを疎明することである。
キ アイ・ビー・シーは、本件商標を請求人に譲渡等の可能性を打診した事情について述べている。
しかし、登録出願を行う者は、その業務において使用することを意図して出願し、登録後はその事業に商標権を用いるのが通常である。如何なる事情があるにせよ、登録後間もなく商標権の譲渡を申し出るということは、商標権者が登録した権利が不要であることを意味する。
アイ・ビー・シーは、代理人への支払費用がかかったからやむをえず商標権を活用した旨述べているが、知的財産権の取得、維持のためには一定の費用がかかるのは常識であり、必要な経費である。
ク アイ・ビー・シーは、乙第7号証及び乙第8号証を提出して商標の使用をしている証拠としているが、いずれも使用を開始した時期が明確でなく、切手の消印の日付は平成11年3月24日と25日であると認められるが、本件審判請求書の提出日以後であり、審判請求を受けて急遽使用の事実を書面の形式にしたものと推定される。
請求人は、乙第8号証のチラシの「はれっくす友の会会員募集」なる文言で、請求人の一部の顧客から請求人の事業と混同され、問い合わせを受けるなどの支障を蒙っている。
ケ 本件審判において請求人は、証拠として甲各号証のほか、証人を申請し証人尋問で立証しようと意図している。先の異議申立ての際にも同様であったが、証人尋問を行うことなく証拠が希薄とした結論は誠に遺憾であり、審理不尽といえる。
コ 請求人は、乙第9号証の通知書なる書面を受領しており、その要求に従い、登録商標を付した封筒・営業用資料を廃棄している。
しかしながら、商標法には関係がない請求人の商号の使用禁止を要求している点は全く不当である。登記された商号の禁止要求は、商標権の濫用以外の何物でもない。
サ アイ・ビー・シーは、請求人が主張する仮定及び推測に基づく理由のみで積極的かつ客観的な証拠が示されることなく、本件商標が公序良俗を害するおそれがあるとすることは認められないと述べている。
しかし、アイ・ビー・シーは株式会社ハレックスの商号を知得して商標出願したことを否定する以上、知得することの可能性をもって立証せざるを得ない。しかもその可能性は上述の如く多数の事象が存在する。単なる請求人の仮定や推測でないことは明かである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第9号証を提出した。
(1)アイ・ビー・シーは、平成3年3月27日に設立されたものである(乙第3号証)。その目的はコンピュータソフトの開発や各種新規事業の企画立案などであるが、その中の一事業として、このFAXによる気象情報提供業務、即ち、より商業的に、たとえばスポンサーをつける等により、広く一般の人々が手軽にFAXを用いて天気予報その他の気象情報を得ることが出来るようにすることを考えたものである。
(2)アイ・ビー・シー代表者は、会社設立と同年の平成3年11月11日に、気象協会担当者に気象情報を加工して会員にFAXで提供する事業計画について説明し相談を行っている。その後、平成4年7月頃から気象情報FAX「WEATHER FAX」として業務をスタートし、気象協会との間において正式な契約が行われた(当初の契約は平成4年8月1日より平成5年3月31日まで、更に以後は申し出がない場合は、更に1年延長する)。
アイ・ビー・シー代表者は、この業務を開始した後、利用者に女性客が多いことが判り、この気象情報のFAX提供業務として、女性向けのしゃれた名称が必要だと考え、例えば、「晴れたらいいなFAX」、「はれFAX」、「はれはれックス」などの名称の設定を検討していた。このような名称の考慮中には気象協会担当者にも電話による相談を行っている。そして、アイ・ビー・シー代表者は、最終的には「はれっくす」という名称を発音の容易さの点から選択していた。但し、この時直ちに登録出願を行うことはしていない。
気象協会への支払いの負担が大きいことから平成5年5月の末日までで上記日本気象協会との契約を一時休止した。但し、アイ・ビー・シーは、気象に関する情報の提供を止めた訳ではなく、その後も気象庁から書面で開示される情報を会員がアクセスできる情報として現在も継続して提供している(乙第7号証及び同乙第8号証)。
なお、アイ・ビー・シー代表者が受けた印象は、気象業法改正をにらみ一般の人々に気象情報をFAXで広く提供することに関するせっかくの自分のアイディアが漏れ、その新会社の事業に組み入れられたのではないかという危倶であった。
そして、平成5年2月22日付にて上述の「はれっくす」に係る登録出願を自ら行った。この出願は、上記気象情報のFAXによる提供(スポンサーが広告主となり情報を提供する)というアイディアは、特許では保護ができないと自ら判断し、少なくとも自ら創作した商標に関してはこれを権利化しておきたいという希望があったからである。上述の新しい会社が設立されることを聞いたことが、より強く商標登録の必要性を感じるきっかけになったことは事実である。
(3)請求人の、平成6年11月11日付で行われた登録出願に示された3つの商標「ハレックス」、「HALEX」、「HAPPY LIFE EXPERT」から判断すると、社名である「ハレックス」及び商標「ハレックス」は、HAPPY LIFE EXPERTの頭文字を取ったものであることが推察される。したがって、アイ・ビー・シーの「はれっくす」の案出過程とは異なっていると考えられる。
(4)請求人は、気象協会担当者が、アイ・ビー・シー代表者に気象情報サービスを行う会社が設立準備中にある旨を話した(平成4年10月頃)としているが、この点は事実である。しかしながら、アイ・ビー・シー代表者は、この時に新会社の名称やましてや使用せんとする商標名を知った事実はない。
請求人は、「但し名称がハレックスであるか否かは正確に記憶していないが話の成り行きと雰囲気で名称を告げた確率は高い」としているが、単なる推測を商標法第4条第1項第7号並びに商道徳、社会通念や民法第1条の規定等、一般法規範に照らし合わせて、登録の違法性を適用する理由としてあげることはあまりにも客観性に乏しいと考える。
(5)請求人は、アイ・ビー・シーにおける指定役務が請求人の設立準備中の事業内容及び予定していた商号さらには検討中の商標と実質的に同一であり、また「不自然さがあり疑問がある」と主張している。
しかしながら、アイ・ビー・シーは、請求人よりも少なくとも早くこの事業のアイディアを発想し、実際の業務も早く開始している。したがって、後から事業を開始せんとする請求人が、事業内容が実質的に同一と主張するのは奇異なことである。また、上述のように、商標登録「はれっくす」は、晴れ雨の「晴れ」と「FAX」を結び付けるところから発想が始まったシンプルな造語で、特に呼び易さを考慮して創られた商標である。アイ・ビー・シーがこの商標を選択することに何ら不自然さはない。
請求人は、「内航海運新聞」(甲第9号証)に「新会社名は「HALEX」(ハレックス)が第一候補となっている」という記事から、候補社名は不特定多数の人々に知られたことになると述べているが、アイ・ビー・シーは、審判請求書副本を手にして初めてその存在を知った。「内航海運新聞のご案内」(乙第6号証)を取り寄せた結果、「内航海運新聞」は、いわば5つの海運組合(日本内航海運組合総連合会)員に広報するべき機関誌の役割で限られた海運業・造船・関連工業のいわゆる業界新聞である。現在の発行部数は約9000部で定期購読専門の週刊新聞である。書店などでは市販はしていないそうである。また、日本内航海運組合総連合会は、請求人の主要株主でもある。
アイ・ビー・シーが、「内航海運新聞」の購読者であるならまだしも、特定の業界組合員の機関誌の役割をしている新聞からアイ・ビー・シーが「HALE×」(ハレックス)を知ったというのは、単に請求人に都合の良い推測のみでの主張である。
(6)アイ・ビー・シーは、わが国商標法の先願主義の下で、正当に先願者としての地位を認められる商標登録人であり、一方、請求人は典型的な後願にかかる出願人であり、何ら救済を受ける理由は存在しないことは明白であると考える。
請求人は、企業の設立準備の段階から2年7か月あまりの間、登録出願を行わなかったことは、商標権の慎重な権利確保という作業を怠っていたにすぎず、また設立より1年7か月以上の間、登録出願を行わない状況では、このような気象情報のFAXによる提供という業務が既に新聞等で報道されていた状況においては、後願者となる可能性が高まるのは当然の事態である。このことこそ不自然なことである。
なお、乙第4号証及び第5号証として、平成4年7月頃より各種新聞雑誌等で紹介されたアイ・ビー・シーの気象情報のFAXサービスについての各種記事を示す。
(7)「出資募集勧誘文書」(甲第7号証)及び「新会社設立確認総会の開催について」(甲第8号証)として、それぞれ株式会社ハレックス(仮称)の表示がされた書面が示されているが、アイ・ビー・シーは甲第7号証の文章が実際に具体的に誰がいつ作成し、どういう方法で誰に出されたかという事実を証拠をもって示されていない。新たに明らかな証拠が確認出来ない限りアイ・ビー・シーはこれを証拠としては疑問に思っている。そして、甲第8号証は、平成5年1月28日付の日付が付されている。この書類は、新聞その他の刊行物に掲載され不特定多数の者に対して開示されたものではなく、出資会社である36社に対して送付されたと推察する。少なくとも、アイ・ビー・シーに対して送付或いは提示されたものではなく、アイ・ビー・シー(代表者)はその書面をみていない。
(8)請求人は、「ハレックス」、「HALEX」、「HAPPY LIFE EXPERT」の商標が第36類及び第38類で登録を受けた事実を述べている。第42類で2件が拒絶されたことが述べられている。
万が一、請求人が主張するごとく、アイ・ビー・シーが公序良俗に反するような悪意(事業の邪魔をする意図等)をもっていれば、当然、請求人が登録を受けた第36類、第38類、及び第42類での「HAPPY LIFE EXPERT」の商標についてもアイ・ビー・シーは出願したであろう。
(9)請求人は、アイ・ビー・シーが、譲渡或いはライセンス設定の打診を行ったことに関し、これを商標法第3条1項柱書の商標の使用意思についての登録要件に絡めて主張を行っている。
商標法第3条柱書の使用意思は、基本的に査定時にこれを有していれば良く、その意思は将来の使用意思で足りるものであるが、アイ・ビー・シーは、本件商標の使用を元々していたのであるから、上記商標の使用意思については何ら問題はないと考える。アイ・ビー・シーが「はれっくす」を現在も役務に使用している事実を乙第7号証と同第8号証をもって示す。
そもそも、アイ・ビー・シーが他人へ商標権の譲渡やライセンス交渉を考えざるを得なくなったのは、請求人が異議申立を起こしたためである。この異議申立に対向するために、代理人に依頼し、答弁書を提出した。代理人への費用が掛かったために、やむを得ず商標権を活用しようとしたものである。そもそも商標というものの経済価値は、良いネーミングそのものにも存在すると考える。そのような商標を自らが案出して出願、登録を得た者が、状況に応じて、自らの使用をたとえ断念、中断し、それを譲渡やライセンスすることは、何ら非難されることではない。
(10)請求人の論法は、何ら客観的根拠もなく、アイ・ビー・シーが請求人の商号を先回りして権利化し、これにより利益を得ようとしていると疑われても仕方がないとし、公序良俗を乱す行為である旨を主張している。
しかし、アイ・ビー・シーは、請求人の商号や商標は知らずに商標登録を受けたものである。そもそも「疑われても仕方がない」と言うことは、重要かつ客観的な証拠があっていえることである。
(11)請求人が、権利確定後も商漂法第37条を無視して権利を侵害しているので、第36条に基づきアイ・ビー・シーが請求人に宛てた内容証明郵便物の写し(乙第9号証)を添付した。
(12)それぞれ独自に選択した同一呼称の商標については、先願主義の下で先に出願したものについて登録が認められたのは当然のことである。これは、同業者が互いに事前に知ることが可能である状況でも同様と考える。商標は創作物である必要はなく、もし出願前に知られたからといって登録が不能になるものでなく、新規事業を行う者にとっては、その事業において使われ易い名称を望むならば、先願主義の下では一刻も早く出願をしておかなければならないものである。
上述のように、正当な商標権者に対し、請求人は商標法第4条第1項7号に該当するものであると主張している。しかし、同号の適用において、事実に反し、請求人が主張するような仮定及び推測に基づく理由のみで何ら積極的かつ客観的な証拠が示されることなく、本件商標が、同号に定める公序良俗を害するおそれのある商標とする主張は、到底認められるものではない。
(13)以上の次第につき、登録査定には何ら違法な点はなく、本件無効審判の請求は成り立たないので棄却すべきものである。

4 当審の判断
(1)請求人は、権利化してまもなく商標権を譲りたいという意思表示をされたことは、本件商標は、自己の業務に係る商品又は役務について使用しない商標であり、商標法第3条第1項柱書きの規定に違反して登録されたものである旨主張する。
しかしながら、平成3年に設立されたアイ・ビー・シー(乙第3号証)は、同4年7月には「ホストコンピューターにパソコンを利用したファクシミリ情報システムを開発、第1弾のサービスとして天気予報の無料提供を開始」していたことが認められ(甲第4号証)、該サービス業務は本件商標の指定役務「気象情報の提供」に係る業務と符合するものである。しかも、平成11年3月には、現に本件商標を気象情報をファックスにより提供する役務について使用していたのであるから(乙第7号証及び同第8号証)、アイ・ビー・シーは、自己の業務に係る役務について本件商標を使用する目的をもって登録出願をし、登録を経た後、使用を開始したものということができる。そうすると、本件商標の登録査定の時(平成10年9月11日)には、アイ・ビー・シーは、本件商標を自己の業務に係る役務に使用する意志を有していたといわざるを得ず、これに反する証拠はない。
当事者の主張によれば、アイ・ビー・シーは、請求人に対し本件商標について譲渡或いはライセンス設定の打診を行った事実が認められるが、その事実は、本件商標の設定登録後に生じた後発的な事由であって、本件商標の登録査定の時の使用の意志の存否に影響を及ぼさないことは明らかである。
(2)つぎに、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号の規定に違反してされたものであるか否かについて判断する。
請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 平成4年4月に、気象協会及びNTTデータ通信株式会社が設立準備の幹事会社となり、気象情報を核とした情報を提供する新会社に対する出資を勧誘する文書が作成された(甲第7号証)。
イ 平成4年10月5日付「内航海運新聞」に、上記情報サービス会社について報道がされ、「新会社名は『HALEX』(ハレックス)」が第1候補となっている。」と記載されていた(甲第9号証)。
ウ 平成5年1月28日付で、同年2月12日に開催する新会社設立確認総会への出席を関係者に要請する文書が作成された(甲第8号証)。
エ 平成5年4月1日に新会社「株式会社ハレックス」が設立された(甲第3号証)。
上記事実を示す証拠のうち、「内航海運新聞」(甲第9号証)は、毎週定期的に発行される業界紙で、公開された刊行物といえる。
また、「ア」及び「ウ」の事実を示す書類は、関係者に提示されたものと推認することができるが、アイ・ビー・シーに提示されたことを示す証拠はない。
そして、前記(1)で認定したとおり、アイ・ビー・シーは、平成4年7月には、天気予報の提供サービスを開始しており、平成4年10月に行われた気象協会担当者との料金改定交渉の際、新会社設立について説明を受けていた事実があることからすると(乙第1号証)、アイ・ビー・シーは、新会社が設立されることに重大な関心を寄せていたであろうことは推認するに難くない。しかしながら、アイ・ビー・シーが知り得る状況となっていた新会社の名称は、候補に挙がっていた名称であり、確定した名称ではない。しかも、本件商標の登録出願以前に、新会社が使用する商標については、請求人の提出に係るいずれの証拠にも示されておらず、また、アイ・ビー・シーが新会社の設立時期を知得していたと認め得る証拠はない。
そうとすれば、アイ・ビー・シーは、新会社が使用する商標を知り得る状況にはなかったものというべきである。しかも、新会社の候補名より本件商標を採択し、該商標を権利化して売却することにより利益を得ようとしたものと仮定した場合、その登録出願は他人に先行して登録出願することが必要であるところ、本件商標の登録出願は、新会社の候補名が「内航海運新聞」に掲載された平成4年10月5日の約2月半後であったから、その登録出願の時期からすると、必ずしも他人に先行せんとして登録出願したものとは判断することができず、また、アイ・ビー・シーは新会社の設立時期を知得していなかったのであるから、本件商標の登録出願が新会社の設立時期に合わせてされたものともいうことができない。
してみれば、請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標は、請求人の使用する商標が登録出願されていないことを奇貨とし、該商標を請求人の許可を得ることなく無断で登録出願したものは認められない。
したがって、本件商標は、公正な競業秩序を阻害するものではなく、また、社会の一般的道徳観念に反するものということもできないから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とは判断することができない。
(3)請求人は、気象協会担当者は、アイ・ビー・シー代表者と業務上の面識があり、気象協会がバックボーンとなって気象情報会社が設立される噂が話題になったおりに、準備中の会社の概要を説明したことを立証するとして、気象協会担当者を証人として申請している。
しかしながら、被請求人は、気象協会担当者からアイ・ビー・シー代表者に気象情報サービスを行う会社が設立準備中である旨の説明があったことは認め、アイ・ビー・シー代表者がこのときに新会社の名称や商標を知った事実はないと主張していることからすると、請求人が申請している尋問事項で、当事者間に争いがある事項は、「使用予定であった会社の商号その他関連する事項」であると認められる。
この点について、請求人は、審判請求書の請求の理由において「名称がハレックスであるか否かは正確に記憶していないが話の成り行きと雰囲気で名称を告げた確率は高い」と述べていることからすると、気象協会担当者は、上記尋問事項の内容について、審判請求時である平成11年2月8日当時でさえ、すでに「正確に記憶してない」事項に関するものと認められ、しかも、気象協会担当者が説明したとされる時期は、第6号証の「内航海運新聞」の発行日と同時期であって、新会社の名称が未だ確定していなかった時期であったといわなければならない。
そうとすれば、請求人の申請に係る証人尋問を行ったとしても、該証人尋問により得られた証言によっては、上記判断が左右されるものとは認められないから、請求人の申請に係る証人尋問は、行わない。
(4)上記のとおりであり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書き及び同法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-06-10 
結審通知日 2002-06-13 
審決日 2002-06-26 
出願番号 商願平5-15742 
審決分類 T 1 11・ 18- Y (042)
T 1 11・ 22- Y (042)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 為谷 博 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1998-11-27 
登録番号 商標登録第3370822号(T3370822) 
商標の称呼 ハレックス 
代理人 金平 隆 
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