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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 042
管理番号 1069455 
審判番号 無効2000-35424 
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-08-04 
確定日 2002-12-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第4049312号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4049312号商標は、その指定役務中「飲食物の提供,葬儀の執行,衣服の貸与」についての登録を無効とする。 その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4049312号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成よりなり、第42類「飲食物の提供,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,衣服の貸与,祭壇の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、平成6年5月19日登録出願、同9年8月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3081086号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、第42類「葬儀の執行,葬儀のための施設の提供,葬儀に関する情報の提供,生花・花輪の貸与の取次ぎ,仕出し料理の取次ぎ,衣服の貸与の取次ぎ」を指定役務とし、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定に基づく特例の適用の主張を伴う商標登録出願(以下「特例出願」という。)として、平成4年9月16日登録出願、同7年10月31日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証及び参考資料(本件商標の登録出願日以降の雑誌、新聞記事)を提出した。
1.商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、後記2.で述べるように、引用商標に類似するものである。
そして、引用商標は、請求人が本件商標の指定役務と同一又は類似する引用商標の指定役務に永年使用した結果、本件商標が登録出願される以前にすでに著名となっていたものであるから、その著名な商標に類似する本件商標を他人が登録することは、その役務についての出所の混同を生じさせ、その結果取引社会の秩序を混乱させる要因となるものである。
したがって、本件商標は、商標法4条第1項第7号の規定に該当するものである。なお、引用商標の著名性については、後記3.で詳述する。
2.商標法第4条第1項第11号について
(1)称呼類似について
ア.本件商標は、「セレモアみずき」の文字を横書きしてなるものであるが、片仮名文字と平仮名文字とで構成され、文字の態様を異にするものであるから、それぞれの文字部分は分離して認識される。
また、「セレモア」は、請求人が創作した造語(甲第3号証)であるのに対し、「みずき」は、ミズキ科の落葉喬木を表すものであるから、この点からも両語は分離して認識される。
したがって、本件商標は、「セレモアミズキ」の称呼のほか、「セレモア」の称呼をも生ずる。
イ.引用商標は、その構成中の「セレモアつくば」の文字部分の「セレモア」は片仮名文字、「つくば」の文字は平仮名文字であること、また、「セレモア」の文字は、請求人が創作した格別の意味合いを有しない造語であることから、本件商標と同様に「セレモアツクバ」の称呼のほかに「セレモア」「ツクバ」の称呼をも生ずる。
ウ.したがって、本件商標と引用商標は「セレモア」の称呼を同一にする類似する商標である。
エ.被請求人の答弁について
(a)被請求人は、「セレモア」の文字は形容詞的に使用されている旨主張するが、何の観念も生じない「セレモア」は、いかなる形容詞にもなりえないし、役務の品質等を表示しない。また、被請求人の挙げる英語の‘ceremonial’…等の語は、日本文字で表示するのであれば、「セレモニアル」の文字であって「セレモア」ではない。
(b)被請求人は、「みずき」及び「つくば」の文字の自他役務の識別機能について主張するが、「みずき」の語は、ミズキ科の落葉喬木の意味を有するものであって、初夏のころ街路樹で花を咲かせる「花みずき」を容易に認識するものであるから、被請求人がこれを商号として採用したか否かに関係なく識別力を有するのである。
他方、「つくば」の文字は、「茨城県筑波郡の旧地名(『つくば』と書く)茨城県南西部筑波山南の市。筑波研究学園都市がある。人口15万」を意味し、地名を表示することは明らかであるから、引用商標の商標権者が「長年使用してきた」事実はあるとしても自他役務を識別機能は有しないものである。
(c)被請求人は、「セレモア」の文字が自他役務の識別機能を有しないとして、登録例を(乙第3号証の1、2)を提出しているが、「セレモアライブ」商標(乙第3号証の1)は、同書同大の片仮名文字をもって一連に書されてなるものであり、観念上「セレモア」と「ライブ」とに分離して認識される格別の事情は認められないことから、「セレモアライブ」の称呼のみを生じるものである。したがって、引用商標とは称呼上、観念上及び外観上非類似の商標として登録されたものと推定できるのであって、「セレモアみずき」「セレモアつくば」のように商標の態様が片仮名、平仮名よりなり、しかも意味を有さない造語と、意味を有する語とが結合している商標の対比と同じレベルで論じられるものではない。
また、「セレモアホール やすらぎ」商標(乙第3号証の2)は、二段に横書きされていること、片仮名と平仮名とで書されている構成から「セレモアホール」と「やすらぎ」の語はそれぞれの部分が自他役務の識別標識として機能するものと考えられるものである。そして、「セレモアホール」の部分の「ホール」の文字は指定役務との関係では、役務の提供場所を表示する文字であり、自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。したがって、この商標よりは「セレモア」の称呼をも生じるものである。
(d)被請求人は、「セレモア」の文字が本件商標、引用商標の指定役務の慣用商標であると主張するが、被請求人がこれを立証するために提出した証拠は、甲第1号証のほか乙第3号証の1、2に記載されているわずかの8件にすぎず、これらの証拠のみをもってしては、本件商標がその指定役務について慣用的に使用されているものと認められない。
「セレモア」の文字が自他役務の識別機能を有することは、過去の商標の登録例からもいえることである。すなわち、乙第3号証に示した「セレモアライブ」商標は、その構成中の「セレモア」の文字が自他商品の識別力を有しないとすれば、これより「ライブ」の称呼を生ずることになるが、「LIVE INCORPORATED」の英語の文字の横に、大きく「ライブ」の片仮名文字を横書きた商標(甲第16号証)と「ライブ」の称呼を同一になるから、甲第16号証に示した商標は、登録を拒絶されたはずである。上記事例からしても、「セレモア」の文字はこの点からも自他役務を識別する標識としての機能を有しているといえるのである。
(2)外観類似について
ア.本件商標中の「セレモア」の文字を構成する各文字は、引用商標中の「セレモア」の文字を構成する各文字と同一の態様で書されているものである。
請求人は、引用商標を採択するに当たり、著名なデザイナーである「一色 宏」氏に依頼し、作成したものである(甲第4、5号証)。被請求人は、請求人が創作した「セレモア」を商標に取り入れたのみならず、請求人が多額の費用を費やして創作した文字の外観的特徴を模倣するものである。
したがって、同一の図案化された「セレモア」の文字を有する両商標に取引者、需要者が時と所を異にして接する場合には、両商標を区別することができないものであるから、両商標は外観上類似する。
イ.被請求人は「セレモアみずき」の文字を他人にデザインさせたと主張するが、被請求人の使用する商標中の「セレモア」の文字が、先行する請求人の登録商標中の「セレモア」の文字に類似していることが問題なのである。
3.商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、請求人がその指定役務の属する業界において永年にわたって使用してきた結果、本件商標の登録出願日以前に著名になっていたものである。引用商標に類似する本件商標をその指定役務に使用するときは取引者、需要者をして、それが引用商標権者又は引用商標権者と何らかの関係を有する者の営業に係る役務であるものと誤認させ、役務の出所について混同を生じさせるおそれのあるものである。以下、引用商標の著名性について詳述する。
(1)新聞、雑誌、業界誌等に報道された事実
ア.「Newsweek」1991(平成3)年10月3日(甲第6号証)
イ.「読売新聞」1992(平成4)年2月26日(甲第7号証)
ウ.「読売新聞」1992(平成4)年3月4日(甲第8号証)
エ.「致知」1992(平成4)年9月号(甲第9号証)
オ.「SOGI」1992(平成4)年10月号(甲第10号証)
カ.「日経産業新聞」1993(平成5)年2月26日(甲第11号証)
キ.「週刊朝日」1993年(平成5)年11月5日(甲第12号証)
ク.「日本流通産業新聞」1994年(平成6)年5月12日(甲第13号証)
上記新聞等の記事において、日本の社会の移り変わりを反映した葬儀の変遷を見きわめ、今日の葬儀のあり方を提案し、既成の葬儀の現状にとらわれない現代的なビジネスとしての葬儀を全国的なネットワーク化するなどユニークな営業活動を展開する請求人の事業が全国紙、週刊誌、業界誌等に盛んに報道され、そこでは、「株式会社セレモアつくば」の商標及び請求人の名称をもってなされたものであり、引用商標は、本件商標の登録出願以前にすでに著名となっていたのは明らかである。
なお、参考資料として、本件商標の登録出願以後の請求人に関する報道記事を提出する。
(2)請求人の事業の全国展開の事実
請求人は、今日の葬儀を既成概念を超え現代的なビジネスとして全国的に展開するために「セレモア全国ネットワーク」を形成し加盟社を募り、今日では北海道から沖縄県にいたるまで全国津々浦々に加盟社を広げているのである。甲第14号証は、請求人と全国の加盟社との契約を意味する「相互協力の覚書」である。
このような全国的な事業の展開は、それを提唱する主体が経営基盤において万全でありそれに対応できること、全国展開の経営能力とスタッフを備えていること、さらにユニークなセンスのある経営方針と実行力が全国的に著名であることが不可欠の条件となるのである。
(3)請求人が指定契約している団体
請求人は、だれもが避けて通ることのできない生命の終馬、葬儀を従来の不明瞭さからガラス張りの葬儀を目指し、積極的にあらゆる団体と契約を結んでいる。
その分野は中央、地方官庁共済組合、業種別団体、様々な業種の大手製造業会社、保険会社、労働組合に及び、その数は東京を中心に百数十社に及んでいるのである(甲第15、16号証)。
4.商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、本件商標の登録出願日以前に既に著名であったことは明らかであり、被請求人は、その事実を承知のうえ、引用商標中の「セレモア」を自らの商標に取り入れ、その外観をも模倣したものである。この事実は、被請求人が不正な目的をもって本件商標を使用していることを示すものである。
5.以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証(枝番を含む。)を提出した。
1.商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とは、その構成自体がきょう激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するような場合をいうが、本件商標がこれらのような場合に該当しないことは明らかである。
また、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標も上記第7号に該当するが、本件商標がこれらのいずれにも該当しないことは明らかである。
引用商標の類似性については、後記2.で、また、引用商標の著名性については、後記3.で詳述するが、本件商標が引用商標に類似せず、引用商標が著名な商標でもなく、さらに本件商標が引用商標にフリーライドするものでもない以上、本件商標は商標法第4条第1項7号に該当するとの主張は認められない。
2.商標法第4条第1項第11号について
(1)「セレモア」部分の自他商品・役務識別力について
ア.請求人は、本件商標は、「セレモア」と「みずき」の各文字に、また、引用商標は、「セレモア」と「みずき」の各文字に、それぞれ分離して認識されるものであるから、両商標は、「セレモア」の称呼を同一にする類似の商標である旨主張するが、結合商標について上記のような類否判断手法が許されるのは、あくまでも、その結合状態から判断して自他商品・役務識別力を有する構成の一部(要部)が、独立して取引に供されると認められる場合のみである。
そして、結合商標を構成する語のある構成部分が形容詞的文字である場合、その部分は自他商品・役務の識別力を有さず、構成全体の文字、あるいは右形容詞的文字以外の文字の部分に自他商品・役務の識別力を有するのである。
イ.本件商標及び引用商標を構成する、「セレモア」なる語は、形容詞的文字に該当する。すなわち、「セレモア」とは、英語の‘ceremonial’‘ceremonious’‘ceremony’といった形容詞や名詞の発音、聴き取りから来る日本語表示であり、そのまま一般世人をして広く「儀式の」といった意味を認識せしめる語なのである。
本件商標及び引用商標と同一又は類似する指定役務において、「セレモア」をはじめ、「セレモニー」、「セレモ」、「セレモビアン」等‘ceremonial’‘ceremonious’‘ceremony’に関連する語が、多数、その標章に使用されているが(乙第2号証)、取引業者や一般消費者にとって、「セレモア」、「セレモニー」、「セレモ」、「セレモビアン」といった語は、形容詞的商標にすぎないのである。
したがって、本件商標及び引用商標の「セレモア」なる部分は、何ら自他商品・役務の識別力を有しないのである。
この点について、請求人は、「セレモア」は、「CEREMONY」の文字と「MORE」の文字を連結させて、請求人が創作した造語であり、造語は社会に通用する意味合いを持たないから、それが商標として使用される場合には時として自他商品の識別標識としての機能を高く発揮する旨主張する。
しかしながら、請求人の主張するような造語法は、2語の一部を重ねて新しい1語を造る、いわゆる「混成」と呼ばれる造語法であり、現代において盛んに用いられる、ごく一般的な造語法なのである(乙第1号証)。とすると、わが国における英語普及の度合いからみたとしても、一般世人が「セレモア」なる語を見聴きした際、一般世人は、それが辞書には掲載されていない造語であると認識することはなく、単に「セレモニー」の類語であるとしか認識できないものといえよう。
したがって、「セレモア」なる造語が社会に通用する意味を持たないことを前提とする請求人の上記主張は、その前提を欠くものであり認められない。
エ.「セレモア」なる語は本件商標及び引用商標の指定役務と同一又は類似する指定役務について、慣用的に使用される慣用商標でもある。
本件商標及び引用商標と同一又は類似する指定役務について「セレモア」なる語を使用した標章は、「セレモアつくば」以外にも被請求人を含めて少なくとも6社あり、内3社が商標登録を受けている(甲第1号証、乙第3号証の1、2)。また、前述したように、「セレモア」以外にも、「セレモニー」「セレモ」「セレモビアン」等、‘ceremonial’‘ceremonious’‘ceremony’に関連する語が前記指定役務においては慣用的に使用されている(乙第2号証)。
取引業者や一般消費者は、これらの慣用的に使用されている部分で役務を識別しないから、これら「セレモア」等の部分は何ら役務識別力を有するものではないというべきである。
なお、請求人は、「セレモア」なる語があたかも請求人が創作した造語であることを強調するが、該語自体は、請求人が出願する以前から別人により創作されている語である(乙第4号証)。
オ.請求人は、本件商標と引用商標との「外観」類似性の項の部分で、造語の「セレモア」は、指定役務との関係では「厳粛な儀式」の意味を暗示させ、このような造語は商標として使用されるときは優れた効果を発揮する旨主張するが、このような「厳粛な儀式」を暗示させるというのは、人の目を通じた記憶に着目した「外観」類似の問題ではなく、人の頭脳による記憶に着目した「観念」類似の問題である。そして、造語商標からは、その特徴的な部分から特定の観念を生ずるような例外的な場合は格別、観念が生じないのである。「セレモア」がたとえ請求人の主張するような造語であったとしても、それには何ら特徴的な部分はないのであるから、観念を生ぜしめるものではない。
(2)「みずき」及び「つくば」部分の自他商標識別力について
ア.本件商標の構成中の「みずき」の部分は、強度の識別力を有する。すなわち、被請求人は、平成5年9月に、「株式会社永楽堂」から「株式会社セレモアみずき」に商号変更したが(乙第5号証)、「セレモアみずき」の「みずき」なる部分は、被請求人の関連会社であり、生花の販売・賃貸、冠婚葬祭用贈答品等の販売等を目的とする「株式会社花水木」に由来する(乙第6号証の1、2)。「株式会社花水木」は、従来から取引業者に「みずき」の略称で親しまれており、それに因んで葬儀等のセレモニーを営む会社という意味合いから被請求人が考案したのが「セレモアみずき」なる標章なのである。
イ.他方、引用商標の「つくば」の部分は、おそらく請求人の前商号である「株式会社筑波祭典」に由来するものと思われる(甲第5号証;請求書)。とすると、請求人は従前から「ツクバ」なる称呼を含んだ商号を長年使用してきたと考えられるから、引用商標の「つくば」の部分には強度の識別力を有するといえる。
(3)本件商標と引用商標の称呼の類否について
両商標の「セレモア」の部分は、自他役務の識別力を有しないというべきであり、他方「みずき」の部分は強力な自他役務の識別力を有するから、結局、「セレモアみずき」あるいは「みずき」と、「セレモアつくば」あるいは「つくば」とは、その称呼、外観において類似しないことは明白である。
(4)他の登録例について
本件商標及び引用商標の指定役務と同一又は類似する指定役務について「セレモア」なる文字を結合商標の一部にもつ登録商標は、前述の如く、引用商標の他にも2つある(乙第3号証の1、2)。このことは、指定役務について、「セレモア」なる文字を含んでいたとしても、その登録商標は、引用商標とは非類似と判断されたことの証左である。
さらに、指定役務について「セレモア」なる文字をその結合商標の一部にもつ上記登録商標の中の一つである「セレモアライブ」商標は、引用商標よりも前の平成4年7月29日に出願されたものである(乙第3号証の1)。
仮に、請求人の主張するように、本件商標と引用商標とが類似商標であるとすると、右「セレモアライブ」商標と引用商標も類似商標ということになる。とすると、先願主義の原則により、引用商標自体、登録の無効理由を有するといわざるをえない(商標法第46条第1項第1号第8条第1項)。
(5)本件商標の採択について
請求人は、本件商標の「セレモア」の文字の部分と引用商標の「セレモア」の文字の部分が外観において類似する旨主張するが、前述したように、「セレモア」部分は独立して自他役務の識別力を有しないから、「セレモア」部分のみを分離ないし抽出して、外観の類否を判断することは否定されるものである。
また、「被請求人が本件商標の採択にあたり、引用商標を盗用したのは明白である」との請求人の主張は、強く否認する。「セレモアみずき」のデザインは、1994年2月に株式会社大阪読売広告社により制作されたものである(乙第7号証)。
3.商標法第4条第1項第15号について
(1)商標法第4条第1項第15号に該当する混同のおそれのある商標とは、同第10号から第14号以外で混同のおそれのある商標であるから、商標が同一又は類似で、商品・役務が同一又は類似である場合等、いわゆる互いに抵触する商標は既に除かれている(商標法第4条第1項第15号括弧書き)。したがって、本件商標が第15号に該当するとの請求人の主張は失当である。
そこで、本件商標と引用商標が非類似であるという前述の被請求人の主張を前提にし、以下、本件商標の登録出願日以前に引用商標が著名であったとの請求人の主張に対して反論する。
(2)商標の周知度が高く、著名商標であるのか否かは、ア.実際に使用している商標及び商品、イ.使用開始時期、ウ.使用期間、エ.使用地域、オ.生産、加工、証明又は譲渡の数量、カ.広告宣伝の方法、回数及び内容等により判断される。
しかしながら、請求人は、上記イ.ウ.に関し、「引用商標を永年使用した結果」とするだけであり、何ら具体的に使用開始時期及び使用期間を主張していない。
もっとも、請求人は、少なくとも平成2年1月ころは未だ「株式会社筑波祭典」を使用していたこと(甲第5号証)からすると、請求人の商標使用開始時期は平成2年1月以降であり、本件商標出願時における引用商標使用期間は長く見積もったとしてもわずか4年4ヶ月ほどに過ぎず、到底「永年使用した」とはいえない。
(3)甲第6ないし10号証は、請求人の業務内容等が新聞や雑誌で記事として採りあげられたものであるが、これは前記カ.に関連すると思われるが、これらの書証をもって引用商標が本件商標出願時に著名商標であったというには極めて不十分であるといわざるをえない。
甲第7及び8号証は、「全国紙」に掲載された記事ではあるが、それは多摩地域に限定された「地域ニュース」に過ぎない。
甲第10号証も、著名な歌手、故尾崎豊氏の葬儀レポートに過ぎない。
甲第12及び13号証に至っては、これらが何故引用商標の著名性を立証するものなのか、到底理解できない。すなわち、引用商標の指定役務は、「葬儀の執行、葬儀のための施設の提供、葬儀に関する情報の提供、生花・花輪の貸与の取次ぎ、仕出し料理の取次ぎ、衣服の貸与の取次ぎ」であるが、甲第12号証は仏壇の紹介記事であり、請求人が登録している「和調仏壇\セレモアつくば」「伝匠仏壇\セレモアつくば」「デザイン仏壇\セレモアつくば」「新デザイン仏壇\セレモアつくば」(乙第8号証の1ないし4)の商標使用についての紹介であると思われる。甲第13号証は、「東京ライフシステム」の紹介記事であり、引用商標の使用とは無関係である。
甲第14号証は、その大半は本件商標出願日である平成6年5月19日以降のもので、請求人は、甲第14号証をもって、「加盟社」による全国展開を主張するが、「加盟社」と「相互協力社」とは厳密に区別されなければならない。甲第14号証は、相互の地域において必要に応じて顧客を紹介し合う、文字通り「相互協力」の約束に過ぎないのである。したがって、甲第14号証は、引用商標の著名性を何ら立証するものではないことは明らかである。
請求人のホームページにおいても、本件商標の登録出願日から6年以上経過した現在でも、そのサービスエリアが東京、埼玉、千葉、神奈川、山梨に限られていることが分かる(乙第9号証)。
以上より明らかなように、甲第6ないし14号証の中には、引用商標の使用とは全く無関係なものも含まれ、引用商標の著名性を立証するには極めて不十分なものと言わざるを得ない。
(4)請求人は、指定契約団体が七百数十社に及んでいるとし、他の証拠との関係をも考慮すると、請求人が所有する引用商標が本件商標の登録出願日以前に既に多くの契約が成立している旨主張するが、前記したように、甲第14号証は大半が本件商標の登録出願後に締結された契約なのであるから、他の証拠との関係を考慮すると、むしろ指定契約団体の大半が本件商標の登録出願後に請求人と指定契約を締結したものと強く推認される。
(5)以上から明らかなように、本件商標の登録出願日以前における引用商標の著名性は到底認められない。著名商標とは、具体的には乙第10号証の「日本国周知・著名商標」の中に掲げられているような商標をいうが、ここに「セレモア」が掲げられていないことからも、現在においてさえ引用商標の著名性が認められていないことは明らかである。
4.商標法第4条第1項第19号について
本件商標の登録出願日以前に引用商標が著名であったとは到底いえないこと、被請求人が引用商標を模倣したものではないこと、本件商標と引用商標は類似しないことは、前述したとおりである。
したがって、本件商標は、同号に該当するものでない。
5.以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号、同第19号に該当しないことは明らかである。

第5 当審の判断
1.本件商標について
本件商標は、前記したとおり、「セレモアみずき」の文字を書してなるものであるところ、「セレモア」と「みずき」の各文字は、片仮名文字と平仮名とで構成されているばかりでなく、全体として親しまれた観念を生ずるものとは認められないところから、「セレモア」と「みずき」の2語を結合したものと理解されるとみるのが相当である。
また、「セレモア」は、後記2.(2)で認定するように、請求人の主たる業務である「葬儀の執行」、及びこれに関連する役務を表示するものとして、その分野である程度知られているものといえるから、このことも併せて考慮すると、本件商標中の「セレモア」の文字部分は、これをみる者及びこれより生ずる称呼を聞く者の注意を強く惹くものということができる。
したがって、その構成文字に相応した「セレモアミズキ」の称呼のほか、「セレモア」の文字部分より、単に「セレモア」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
2.引用商標について
(1)構成態様
引用商標は、前記したとおり、「株式会社セレモアつくば」の文字を書してなるものであるところ、その構成中の「株式会社」は、法人の組織の種類を表すものであるから、自他役務の識別標識としての機能を有しない部分である。そして、該「株式会社」の文字部分を除いた「セレモアつくば」の文字部分は、本件商標と同様に、片仮名文字の「セレモア」と平仮名文字の「つくば」とで構成されているばかりでなく、「つくば」の文字部分は、「茨城県筑波郡の旧地名。茨城県西南部、筑波山の南の市。」(広辞苑第5版)を意味する語として知られ、指定役務との関係からすると、役務の提供場所と理解される場合も少なくないものである。
してみると、引用商標中の「セレモアつくば」の文字部分は、「セレモア」と「つくば」の2語を結合したものと容易に理解されるものであり、かつ、構成中の「つくば」の文字部分は、自他役務の識別機能が極めて弱いのに対し、「セレモア」の文字部分は、後記2.(2)で認定するように、請求人の主たる業務である「葬儀の執行」、及びこれに関連する役務を表示するものとして、その分野である程度知られているものといえるから、「セレモア」の文字部分に印象づけられるとみるのが相当である。
(2)使用状況
甲第6号証ないし甲第13号証及び参考資料によれば、請求人は、葬祭業を経営していること、1991年(平成3年)5月に「つくば祭典」から「セレモアつくば」に社名変更し、社名変更と前後して、民間救急サービス、介護用機器・用品の販売会社など4つの会社を設立し、「セレモアグループ」を形成していること、1991年(平成3年)4月にこの種業界では初めて、駅ビルに斎場案内等葬式に関する情報サービスを開始し、多様化する社会ニーズに合わせた事業展開を図っていること、このように従来の葬儀業と異なった特徴のある企業として、本件商標の登録出願日前より雑誌、新聞等に取り上げられたことなどが認められる。
また、本件商標の登録出願日後においても、請求人は、百貨店と共同して「葬儀式場相談コーナー」を百貨店内に設けた旨の新聞記事(1994年(平成6年)9月8日付け及び1995年(平成7年)4月4日付け日経流通新聞)、「個人の施行件数が三六〇〇と東京でトップ。同者の九四年度の売上高は六〇億円、・・・前近代的な業界に新風を吹き込んだイノベーターである。」旨の記事(「週刊ダイヤモンド」1995年11月25日号)、「『明確な費用、安心のブランド葬儀』をキャッチフレーズに新しいかたちの個人家庭葬儀『セレモア24』を開発」した旨の記事(1995年(平成7年)10月31日付け読売新聞)、「散骨の募集を開始」に関する記事(1995年(平成7年)1月13日付け読売新聞)などが掲載されていることが認められる。
上記事情からすると、請求人の名称の略称であり、かつ、本件商標を表す「セレモアつくば」は、本件商標の登録出願日前には、葬祭業界及びこれに関連する業界においてよく知られていたというべきであり、その知名度は、本件商標の登録査定の時点まで優に継続していたものと認められる。
また、上記のように、「セレモアつくば」の周知性に加え、請求人は、本件商標の登録出願日前には葬儀業を中心として、「セレモアグループ」を形成していたこと、本件商標の登録査定前に「セレモア24」なる個人家庭を対象にした葬儀を開発したことなどからすると、「セレモア」の表示もその業界においてある程度知られていたとみるのが相当である。
(3)引用商標は、前記(1)で認定した構成態様に加え、同(2)の認定事実からすると、これを「葬儀の執行」をはじめ、これに関連する役務と認められるその他の指定役務について使用した場合は、構成文字全体を称呼した場合の「セレモアツクバ」の称呼のほか、単に「セレモア」と称呼されて取り引きされる場合も決して少なくないものである。
3.本件商標と引用商標との比較
(1)称呼類似について、
本件商標は、前記したとおり、その構成中の「セレモア」の文字部分より、単に「セレモア」の称呼をも生ずるものである。
他方、引用商標は、その構成中の「セレモア」の文字部分より、単に「セレモア」の称呼をも生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、「セレモア」の称呼を共通にする類似の商標といわざるを得ない。
(2)指定役務について
引用商標は、前記したとおり、その指定役務を「葬儀の執行,葬儀のための施設の提供,葬儀に関する情報の提供,生花・花輪の貸与の取次ぎ,仕出し料理の取次ぎ,衣服の貸与の取次ぎ」として、特例出願され、登録されたものである。
そして、上記指定役務中の「葬儀の執行」は、請求人の主たる業務であり、その他の指定役務は、「葬儀の執行」に関連する業務ということができる。
一方、本件商標は、「飲食物の提供,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,衣服の貸与,祭壇の貸与,展示施設の貸与」を指定役務とするものであるところ、その指定役務中の「葬儀の執行」、「飲食物の提供」、「衣服の貸与」は、それぞれ引用商標の指定役務中の「葬儀の執行,葬儀のための施設の提供,葬儀に関する情報の提供」、「仕出し料理の取次ぎ」、「衣服の貸与の取次ぎ」と、同一の役務若しくは、役務の目的、業種等において共通にする場合が多い類似の役務と認められる。
(3)してみると、本件商標と引用商標とは、称呼上類似する商標であり、かつ、本件商標の指定役務中の「飲食物の提供,葬儀の執行,衣服の貸与」は、引用商標の指定役務と同一又は類似の役務と認められる。
4.被請求人の主張について
(1)被請求人は、「セレモア」は、形容詞的文字に当たり、「儀式の」の意味を認識させ、自他役務の識別機能を有しない文字部分である旨主張する。
甲第5号証によれば、引用商標の「セレモア」の文字部分は、英語の「CEREMONY」と「MORE」を組み合わせて創作した語であることが認められ、このようなことからすると、「セレモ」の文字部分が、「儀式、式典」を意味する外来語「セレモニー」を想起させるものであるとしても、「セレモア」の語全体が、特定の語義を有しない造語である以上、「儀式、式典」の意味を暗示させるにとどまるものであって、それ以上に該語が役務の質を表示する語であるとか、形容詞的な語であるということはできない。また、これを覆すに足りる証拠はない。
(2)被請求人は、「セレモア」は、本件商標及び引用商標の指定役務について慣用的に使用されている旨主張する。
しかしながら、被請求人の上記主張を裏付ける証拠は、本件商標を含む3件の登録例及び「葬儀社一覧表」(乙第2号証;発行所、発行年月日等不明)に示されている136件中の4件(うち1件は、乙第3号証の2で示した登録商標と同じ)にすぎないものである。してみると、これをもって、「セレモア」の語が葬儀業について慣用的に使用されていると認めることはできない。
(3)被請求人は、引用商標中の「つくば」の文字部分は、強度の自他役務の識別機能を有する旨主張する。
前記2.(1)(2)で認定したように、「セレモアつくば」の表示は、葬儀業界で周知であったことから、該「セレモアつくば」は、全体をもって認識される場合が多いと考えられるが、「セレモア」の表示もその業界においてある程度知られていたものであり、「つくば」の文字部分が役務の提供場所と理解される場合も少なくないところから、「つくば」の文字部分は、「セレモア」の文字部分に比べて印象が薄いといえる。したがって、引用商標において、「つくば」の文字部分のみに強い識別力があるとすることはできない。
(4)被請求人は、「セレモア」の文字を有する登録例を挙げ、「セレモア」の語には自他役務の識別機能を有しない旨主張する。
しかしながら、「セレモア」の語が自他役務の識別機能を有することは、前記したとおりである。また、過去の登録例が、本件商標と引用商標との類否の判断を左右するものではない。
(5)上記(1)ないし(4)に関する被請求人の主張は、いずれも理由がない。
5.商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」と規定しているところ、その趣旨は、商標の構成がそれ自体がきょう激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するような場合、あるいは、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標が、これに該当するものと解される。
してみると、前記構成よりなる本件商標は、上記のいずれにも該当しないものと認められるから、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとする請求人の主張は理由がない。
6.商標法第4条第1項第15号について
甲第6号証ないし甲第16号証によれば、請求人の名称及び請求人の業務に係る葬儀業及びこれに関連する役務等は、「セレモアつくば」の表示をもって使用されていることが認められる。
してみると、前記2.(2)で認定したように、「セレモアつくば」の表示は、本件商標の登録出願日前には、葬祭業界及びこれに関連する業界において知られていたということができるとしても、「セレモア」の表示のみが、本件商標の登録出願日前に取引者、需要者の間に広く認識されていたとまでは認めることはできない。
確かに、請求人は、本件商標の登録出願前に「セルモアグループ」を形成していたことが認められるとしても、その一事のみをもってしては、「セレモア」なる表示が、本件商標の登録査定前に、請求人の取り扱う業務を表示するものとして、著名性を獲得していたとはいうことはできない。
してみると、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとする請求人の主張は理由がない。
7.むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中「飲食物の提供,葬儀の執行,衣服の貸与」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、同法46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
しかしながら、本件審判の請求に係る指定役務中「飲食物の提供,葬儀の執行,衣服の貸与」以外の指定役務については、引用商標の指定役務とは、役務の目的、質等を異にする非類似の役務と認められるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。また、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものでもない。したがって、上記に関する請求は成り立たない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標



(2)引用商標


審理終結日 2002-02-05 
結審通知日 2002-02-08 
審決日 2002-02-19 
出願番号 商願平6-49887 
審決分類 T 1 11・ 262- ZC (042)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 田中 敬規 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 野本 登美男
茂木 静代
登録日 1997-08-29 
登録番号 商標登録第4049312号(T4049312) 
商標の称呼 セレモアミズキ 
代理人 板東 宏和 
代理人 松尾 吉洋 
代理人 舩坂 俊昭 
代理人 谷 正之 

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