• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 029
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 029
管理番号 1069453 
審判番号 審判1999-35680 
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-19 
確定日 2002-12-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第4217020号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4217020号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4217020号商標(以下、「本件商標」という。)は、「サラシア」の片仮名文字を横書きしてなり、平成8年12月3日に登録出願、第29類「粉末又は顆粒状の乾燥ハーブを主原料とし、これに乾燥茶葉を混合してなる加工食品,乾燥ハーブを粉末又は顆粒状にしてなる加工食品」を指定商品として、平成10年12月4日に設定登録がされたものであるが、その後、商標権の登録の一部抹消がなされた結果、本件商標の指定商品は「粉末状又は顆粒状の乾燥サラシアレティキュラータ、同サラシアオブロンガ又は同サラシアプリノイデスを主原料とする加工食品」に減縮されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証、参考資料、参考資料1ないし3及び上申書を提出している。
1.請求の理由
(1)請求の利益について
請求人は、商品「茶」やダイエット関連商品について、その原材料名表示及び効能表示の観点から当該商品の説明パンフレット等において、「サラシア」「サラシア茶」「サラシアスリム茶」「サラシアダイエット」「サラシアダイエット粒」なる標章(名称)を使用していたところ、平成11年8月26日、被請求人の代理人(森下仁丹株式会社)から、登録第4185783号商標の商標権を侵害する旨の「通告書」(甲第3号証)を受けた。
請求人は、前記したようにダイエット関連商品に「サラシアダイエット」、「サラシアダイエット粒」という標章(名称)を使用している。これらは、サラシア オブロンガ(植物名)の抽出成分を利用した「加工食品」ということができる。従って、被請求人は、これら標章(名称)は、被請求人の所有する前記商標権とは別個の本件登録第4217020号商標の商標権を侵害するものである、と主張する蓋然性が極めて高いものである。
従って、請求人は、本件商標を無効とする審判請求をなすことについて法的な利益を有するものである。
(2)無効理由について
本件商標は、以下に述べる理由により、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであり、また、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。
(ア)インド、スリランカ、中国などにおいて自生する植物で、その根などが糖尿病、関節痛、腰痛、虚弱体質などの改善に効果があるとされる植物が存在しており、これが、「Salacia Reticulata」(甲第4号証)、「Salacia L」、「Salacia Prinoides DC」、「Salacia Sessiliflora」(甲第5号証及び甲第6号証)、などの学名を有するものであることは、本件商標の登録出願前に頒布された事実が明らかな刊行物により周知である。
(イ)前記した薬効のある植物は、日本国内においては、単に「サラシア」と略称され、かつ、この「サラシア」という用語は、これら植物の名を指すものとして広く使用されているものである。
このことは、例えば、糖分の吸収抑制効果があるスリランカ原産の生薬である「サラシア・レティキュラータ」は、「サラシア」として(甲第7号証、甲第10号証及び甲第11号証)、インド原産の「サラシア・レティキュラータ」と同系統の植物である「サラシア・オブロンガ」は、「サラシア」として(甲第11号証)、インドやスリランカにおいて自生する生薬として使用される植物であって、糖尿病に有効である植物は、「サラシア」として(甲第8号証、甲第9号証)呼称されており、別言すれば、前記した薬効のある植物は一般に「サラシア」と呼称されている事実が存在する。
なお、前記した甲第7号証〜甲第11号証のうち、甲第7号証〜甲第10号証を除く甲第11号証は、それぞれ本件商標の「登録査定」後の発行に係る「新聞」である。しかしながら、このような状況下にあっても、甲第11号証は、前記した事実、即ち、前記した薬効のある植物が「サラシア」として略称されている事実が、甲第11号証に係る「新聞」の発行前に存在していたことを証明するものであり、いささかも本件商標の「登録査定」前には、そのように略称されていた事実が一切なかったということを証左するものではない。
即ち、前記甲第11号証は、本件商標の「登録査定」前に、前記した薬効のある植物が「サラシア」と略称されていたことを推認させるに充分な証拠価値を有するものである。この点、以下に考察する。
請求人は、前記主張を裏付けるために、甲第12号証を提出する。甲第12号証は、本件商標の「登録査定」前の平成10年7月23日に発行された「健康産業流通新聞」である。
この甲第12号証は、東南アジアに自生し、糖尿病に効果があるニシキギ科植物は、学術名が「サラシア・オブロンガ」であることを開示している(なお、甲第12号証は、前記植物の地上茎の部分はポンコランチと呼ばれていることも開示している)。このことと、前記甲第4号証〜甲第6号証(学術文献)及び甲第7号証〜甲第10号証を総合判断すれば、甲第11号証の「サラシア・オブロンガ」の呼称は、本件商標の「登録査定」前に「サラシア」と略称されていたと十分に推認することができる。
(ウ)ここで、特定の薬効を有する天然植物(薬草)を利用する分野において、当該植物(薬草)名をフルネームで呼称(表示)するかわりに略称(略表示)することが周知であることを示し、前記主張の客観性、妥当性を裏付けすることにする。なお、このように薬草の原植物名を略称(略表示)することは、財団法人日本公定書協会監修「日本薬局方解説書」においても採用されているところである(別添「参考資料」参照)。
(エ)更に、「サラシア」の文字が、インド、スリランカなどにおいて自生する前記の植物を指すものとして普通に使用されている事実を、甲第13号証〜甲第19号証により立証することができる。
なお、前記した各甲号証の中には、本件商標の「登録査定」後の発行に係る刊行物が含まれているが、前記したと同様に「サラシア」の文字が、前記の植物を指すものとして普通に使用されている事実は否定し得ないものである。
(オ)以上の事実から明らかなように、本件商標をその指定商品中「植物名であるサラシアの粉末又は顆粒状の乾燥ハーブを主原料とし、これに乾燥茶葉を混合してなる加工食品、植物名であるサラシアの乾燥ハーブを粉末又は顆粒状にしてなる加工食品」に使用するときには、その商品が「サラシアの粉末又は顆粒状の乾燥ハーブを主原料とし、これに乾燥茶葉を混合してなる加工食品、サラシアの乾燥ハーブを粉末又は顆粒状にしてなる加工食品」であること、即ち、商品の品質・原材料を単に表示するにすぎないものであるから、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものであったにも拘わらず登録されたものである。
(カ)同様に、本件商標をその指定商品中「植物名であるサラシアの粉末又は顆粒状の乾燥ハーブを主原料とし、これに乾燥茶葉を混合してなる加工食品、植物名であるサラシアの乾燥ハーブを粉末又は顆粒状にしてなる加工食品」以外の加工食品に使用するときには、その商品があたかも上記商品であるかの如く商品の品質の誤認を生じさせる恐れがあり、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するものであったにも拘わらず登録されたものである。
(3)結論
結局、本件商標は、上記の理由により、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号によりその登録は無効とされるべきである。
2.答弁に対する弁駁
被請求人の答弁は、請求人の、「本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違背して登録されたものであり、その登録は無効にされるべきである」との主張に対し、何等の反論、立証になっていない。
以下、その理由について詳述する。
(1)本件商標「サラシア」の普通名称性について:
(ア)被請求人は、次のように主張している。
(a)甲第4号証〜甲第6号証は、それぞれ、インド及び中国で出版された文献であって「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」なる植物のいずれかがわが国において「サラシア」と略称されている事実を示すものではない。
(b)甲第7号証及び甲第9号証は、本件商標の「登録査定」前に発行された印刷物であり、僅か2件の「サラシア」なる文字の使用例をもって本件商標の自他商品識別力を否定すべきではない。
(c)甲第8号証は、被請求人自身の「サラシア印商品」の広告及びその記事広告である。
(イ)しかしながら、前記(a)の被請求人の主張は、甲第7号証が、「サラシア」が「サラシアレティキュラータ」を意味するものであることを示していることからみて、全く合理性を欠くものである。
請求人は、被請求人の前記した植物が「サラシア」と略称されていないという主張を論破するために、ここに、更に<参考資料1>として米国特許(USP)第5,691,386号明細書(これは本件商標の登録査定前に発行されたものである。)を提出する。前記USPは、サラシア属植物“Plants of the genus Salacia”として、例えば「サラシアレティキュラータ」「サラシアプリノイデス」などを例示しており、「サラシア」の語が略称的に使用されている事実を示している。
もとより、普通名称の地域的な成立性は考慮する必要は全くなく、即ち、わが国という限定された地域ではなく、その成立性は広く世界中に求められるべきであり、この点からも前記USPは、「サラシア」の普通名称性を立証するに有力な証拠である。
(ウ)前記(b)の被請求人の主張は、請求人の「サラシア」の普通名称性の主張に対して、何らの反論をなすものではない。
被請求人は甲第7号証及び甲第9号証に係る「僅か2件」の印刷物である旨、云々しているが、当該証拠に係る刊行物の公共的性格からして、「サラシア」は本件商標の登録査定前に周知性(普通名称性)を確立していると考えるのが極めて妥当である。
また、後述する「タヒボ事件」(「タヒボ」なる普通名称が「健康茶」の原材料を示す普通名称に該当するか否かが争われた事件)に関する大阪高裁平成11年10月14日判決(平成11年(ネ)第473号不正競争行為差止等請求控訴事件の判決)に照らしてみても明らかのように、普通名称を登録商標権という排他権の枠外に置くのは、その使用を公共領域(public domain)に解放し(競業者の自由使用の領域とし)、需要者の商品の選択の円滑化を図るべきであるとの公益的要請が優先されるからであり、本件商標「サラシア」の普通名称性に鑑み、被請求人主張の取引上の自他商品識別力の主張は相入れないものである。そもそも商品の普通名称は、何人も自由に使用し得るべきものである(独占適応性の欠如)。
(エ)前記(c)の被請求人の主張も、請求人の「サラシア」の普通名称性の主張に対して、何らの反論をなすものではない。
被請求人は、甲第8号証は、被請求人自身の「サラシア印商品」の広告とその記事であり、特定者の使用であるから普通名称化の阻害要件があると、主張したいのだと推察する。
しかしながら、甲第8号証の広告(記事)の内容は、正に、「サラシア」は、「品質・原材料」(その記事の中には、「サラシア」は、スリランカやインド南部の高地のごく一部に生える藤の木のようなツル性の植物」、「サラシアの原木」、「サラシアの幹から作られたカップ」などという表現がある。)を記述するに過ぎない記述的標章(descriptive mark)そのものであり、これは「商品の普通名称」というに他ならず、その標章(サラシア)の使用は公共領域(public domain)に属させ商標権の効力を及ぼさせないとする、ことが公共的観点からみて極めて妥当な結論である。
(オ)本件無効審判事件において斟酌すべき判決例について
(a)請求人は、本件無効審判事件と全く同様の争点で争われた事案、即ち「タヒボ」なる名称が商品「健康茶」の「普通名称」であるか否かが争点となった不正競争行為差止等請求事件〔大阪高裁平成11年10月14日判決(平成11年(ネ)第473号不正競争行為差止等請求控訴事件)原判決:大阪地裁平成10年12月24日判決(平成7年(ク)第7193号不正競争行為差止等請求事件)〕に対する判決は、本件無効審判事件を検討する上で極めて有力な情報を与えてくれるものと考えている。なお、請求人はその判決に関して<参考資料2及び3>を提出する。
(b)前記不正競争行為差止等請求事件において、大阪高等裁判所は、次のように判示している。「本件についてこれをみるに、原告商品の原材料は、正確な学名を『ノウゼンカズラ科タべブイア属アベラネダエ種』という樹木の内部樹皮であるが、ブラジルその他の南米諸国では右樹皮の持つ特別な薬効を古代から珍重し、『神からの恵みの木』という意味を込めて『タヒボ』と称しその細粉を茶として飲用することが民間に伝承されていたことは前記認定のとおりである。原告は、こうした由来に基づき、右樹皮から製造した樹木茶の商品名を定めるに当たり原材料である樹木の学名や南米各国での他の通称を採用せず、右伝承に由来する俗称の一つである『タヒボ』を採用して『タヒボ』茶と命名したものと窺われる。
従って、原告商品の『タヒボ』なる名称は、商品の種類である茶の原材料を原産地での俗称に倣って表示したものと認められ、タヒボ茶というのは、我が国の従来茶である『鳩麦茶』『どくだみ茶』『アロエ茶』等と同種類の表示ということができる。…………(中略)…………そもそもある商品の原材料を示す名称が普通名称に当たるというためには、その名称が植物の学術書に異名または俗称として記載されていることを要するものではなく、一部の地域あるいは一時期において俗称・通称として用いられていたにすぎないものでも、その後特定の商品等を示す一般名称として広く通用するに至ったものは普通名称というに十分であるし、全くの造語であっても普通名称という妨げになるものではないから、原告の右主張は理由がない。」
(c)従って、前記大阪高等裁判所の判決の内容に照らせば、本件無効審判事件もこれと同旨の結論が導かれるものと思料する。
(d)なお、前記大阪高等裁判所の判決について付言すれば、当該判決は、「普通名称」を排他権の枠外に置くことの根拠として、明らかに、自他商品の識別力の欠如を根拠とする考え方に立脚するのではなく、独占適応性の欠如を根拠とする考え方に立脚するものといえる。後者の考え方は、商品の「普通名称」は、取引上の識別力(識別機能)の有無という小事の問題とは全く関係なく、そもそも、何人も自由に使用し得べきものであり、特定人による独占に適さないとする考え方に立脚するものである。
別言すれば、そのような商品の「普通名称」は、公共領域(public domain)に帰属され、競争者の自由使用の領域とされるべきものである。
これは、一般名称であることを運命づけられている標章については、競争者による自由使用を許すことにより、需要者の商品選択の円滑化を図るべきであるという公益的要請を重んじる立場である(<参考資料3>参照)。
本件無効審判事件についても、本件商標の「サラシア」は甲第4号証〜甲第8号証、今回提出した<参考資料1(USP5,691,386)>、あるいは他の甲号証により商品の品質・原材料を示す「普通名称」に該当するものであることが明らかであり、前記大阪高等裁判所の判決にみられる公益的要請が最大限に尊重されるべきである。
(e)前記したように本件無効審判事件の対象である本件商標「サラシア」は、商品の品質・原材料を示す普通名称である。従って、これ以上、被請求人の主張に対して反論する必要性はないものと考えるが、以下、被請求人の「答弁書」の主たる論点について反論を加える。
(2)被請求人は、『サラシアレティキュラータ、サラシアオブロンガ及びサラシアプリノデスなる植物(以下、まとめて「当該植物」という。)のエキスが腸内での糖の分解とその吸収を阻止する作用を有することに着目し、当該植物を主原料とする加工食品及び茶をわが国で始めて製造・販売したのは、被請求人である。』と述べている。
しかしながら、この主張は、その是非を置くとしても、本件審判の無効理由を検討する上で、即ち、本件商標「サラシア」が登録時に請求人主張の法条(本件商標を無効とするための根拠条文)に該当するものであるのか否かを検討する上で、全く無関係のことであり、見当違いの主張である。
また、被請求人は、前記した商品(当該植物を主原料とする加工食品及び茶)を平成10年3月に発売して以来、宣伝広告を行ってきた旨、述べている。しかしながら、この宣伝広告行為も、前記したように品質・原材料表示あるいは「普通名称」である「サラシア」の文字を付した商品を単に宣伝広告したに過ぎず、このことをもって、本件商標が請求人主張の無効事由に該当しないということはできない。
しかも、これらの広告宣伝行為は、全て本件商標の登録後のものである(乙第5号証その1〜その11及び乙第6号証その1〜その4)。そして、登録後に品質・原材料表示あるいは「普通名称」である語(標章・サラシア)を使用しても、本件商標の無効理由を覆せないのは当然のことである。
(3)被請求人は、競業他者が「サラシア」の語を使用して市場に参入して来たことに鑑み、希釈化防止のために対応策をとったとか(乙第9号証〜乙第12号証)、請求人を含む競業企業に通告書を発送したとか(甲第3号証)、という行為をとって来たと説明している。
しかしながら、前記した被請求人の行為は、本件商標「サラシア」が無効事由を有するものであったにも拘らず、たまたま登録されたことを奇貨としたものであり、被請求人の前記行為は一種の権利乱用というべきであって、決して許されるべきものではない。
(4)被請求人は、『原商標権者が一種の「造語」として採択した「サラシア」なる商標』、云々と主張している。
しかしながら、原商標権者は、「サラシア」が原商標権者において採択した「造語」であることを証左するものを、何等、示していない。
もっとも、原商標権者がこの点を立証したとしても、前記したように「サラシア」が品質・原材料表示の「普通名称」であることから、本件商標の成立性をいささかも支援するものではない。
(5)被請求人は、「サラシアレティキュラータ」、「サラシアオブロンガ」と同様に所謂「ダイエット食品」の原料として用いられる「ギムネマ シルベスタ」なる植物があり、「ギムネマ」なる文字は、「ギムネマ シルベスタ」なる植物名称の略称ではなく、「菓子、パン」などにおいて自他商品識別力ありと特許庁において認定されている、と主張している。
これは、明らかに、請求人が請求書においてなした主張、即ち、幾つかの具体例を示すとともに特定の薬効を有する天然植物(薬草)を利用する分野において、当該植物(薬草)名をフルネームで呼称(表示)するかわりに略称(略表示)することが周知であり、「サラシアレティキュラータ」、「サラシアオブロンガ」においても「サラシア」と略称されることが周知である、旨の請求人の主張に対する被請求人の反論であると認める。
前記被請求人の主張において留意しなければならない点は、前記「ギムネマ」のケースは、特許庁(公的機関)と商標登録出願人の間の権利設定という事象の問題であり、私権と私権が衝突し(係争関係に突入し)、これを調整する司法的事象の問題でない、ということである。
そして、この点は、前記大阪高等裁判所の判決(参考資料2参照)が説示するように、原告は、原告商標の「タヒボ」は平成10年12月25日に商標登録されたとして、「タヒボ」なる名称が普通名称でないことを根拠としているが、確かに原告主張のとおりに商標登録されたことは認められるが、特許庁の商標登録に関する判断が、直接、侵害訴訟における当裁判所の判断を左右するものではない、という説示に照らして前記二つの事象は峻別されるべきである。
即ち、前記被請求人の前記した主張内容は、本件商標の成立性をいささかも支援するものではない。
なお、前記「ギムネマ」のケースにおいて、私権と私権が衝突し(係争関係に突入し)、司法機関の調整がなされたか否かについては、請求人の関知するところではない。
(6)結論
以上、被請求人の反論、立証は、全て、的はずれな主張であり、また、請求人の主張を覆す証左は存在しない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「審判の請求は、成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証(枝番を含む。)及び資料1ないし4を提出している。
1.答弁の理由
(1)特段の事情
(ア)被請求人の地位の承継
請求人提出の甲第3号証は、森下仁丹株式会社(以下、「森下仁丹」という。)が本件原商標権者(ランカアーユルベーディックハーブ薬品株式会社)の代理人として請求人に宛てて発送した通告書であるが、森下仁丹は、通告書発送時(平成11年8月26日)において本件商標をその指定商品に使用することについて独占的通常使用権を許諾されていたのであり、当該通常使用権は、平成12年2月23日付けで設定登録された(乙第1号証、乙第2号証)。
なお、本件商標権は前記原商標権者からコマニー株式会社を経て森下仁丹に平成12年2月28日付けで譲渡され、この譲渡による本件商標権の移転登録申請が平成12年3月15日付けでなされた(乙第3号証、乙第4号証)。
すなわち、本件審判事件における被請求人の地位は、森下仁丹株式会社に承継されたものである。よって、以下において、被請求人とは、森下仁丹株式会社を指すものとする。
(イ)「粉末状又は顆粒状の乾燥サラシアレティキュラータ、同サラシアオブロンガ又は同サラシアプリノイデスを主原料とする加工食品、サラシアレティキュラータ、サラシアオブロンガ又はサラシアプリノイデスのエキスを主原料とする茶」についての被請求人の市場先駆性
「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」及び「サラシアプリノイデス」なる植物(以下、まとめて「当該植物」ともいう。)のエキスが腸内での糖の分解とその吸収を阻止する作用を有することに着目し、当該植物を主原料とする加工食品及び茶をわが国で初めて製造・販売したのは、被請求人である。
そして、被請求人は、「サラシア」なる商標の下に上記商品を平成10年3月に発売して以来、同社は無料サンプルを配布したり、販促キャンペーンを実施するなどして、その宣伝広告に多大な費用と労力を費やしてきた(甲第8号証、甲第19号証、乙第5号証、乙第6号証)。その結果、被請求人が製造・販売する「粉末状又は顆粒状の乾燥サラシアレティキュラータ、同サラシアオブロンガ又は同サラシアプリノイデスを主原料とする加工食品、サラシアレティキュラータ、サラシアオブロンガ又はサラシアプリノイデスのエキスを主原料とする茶」(以下、「サラシア印商品」という。)は、当該植物の糖分解・吸収阻止作用を利用した新商品として、所謂ダイエット食品市場で多大な注目を集めるに至った。ダイエット食品市場での「サラシア印商品」に対する需要者の注目度の高さは、乙第7号証に示す発売開始(1997年〔平成10年〕3月)から2000年〔平成12年〕2月までの売上高がそのことを反映している。
すなわち、乙第7号証は、被請求人会社の経理部電算課が、同部経理課課長横田の指示に従って平成12年3月23日に同社コンピュータから打出したデータであるが、これによれば、発売を開始した月(1997年〔平成10年〕3月)単月のみで18,242,663円の売上を記録し、1998年〔平成11年〕度には213,198,682円、1999年〔平成12年〕度には1,107,536,216円の売上高をそれぞれ記録している。1999年〔平成12年〕度の売上高は、1998年〔平成11年〕度のそれと比較すると5倍以上伸びており、この事実は、如何に「サラシア印商品」が短期間にダイエット市場で高い注目を集めるに至ったかを示すものである。
そして、上記のように需要者の高い注目を集めている「サラシア印商品」のパッケージや広告には、「サラシア/SALACIACARE/ダイエット」「サラシアダイエット茶」「サラシア/ダイエット茶」「サラシアダイエット粒」「サラシア/ダイエット粒」「仁丹の健康食品/サラシア/SALACIACARE/ダイエットドリンク」等の表示が見られる(甲第8号証、甲第19号証、乙第5号証、乙第6号証)。これらの表示の中で、「ダイエット」「ダイエット茶」「ダイエット粒」「ダイエットドリンク」「健康食品」の文字は、商品の用途等品質を表示するものにすぎない。また、「仁丹」は被請求人の製造・販売に係る商品の代表的出所表示である。
してみれば、「サラシア印商品」を指称するには、「サラシア」の表示をもってするしかなく、事実の問題として紛れもなく「サラシア」なる文字は、自他商品識別機能を発揮している。
したがって、「サラシア」なる文字は、被請求人の上記商品を指称する商標としてダイエット食品の需要者間に広く認識されるに至った。
(ウ)競業他社の市場参入
その後、被請求人の商業的成功に追随して、多数の競業他社が「サラシアレティキュラータ、サラシアオブロンガ又はサラシアプリノイデスを主原料とする加工食品・茶」の製造・販売を開始し、なかには、上記商品に「サラシア」なる商標と同一又は類似の商標を使用する者も現れた。
かかる状況において、被請求人は、競業他社による「サラシア」なる商標と同一又は類似の商標の使用を放置しておいたのでは、「サラシア」なる商標の自他商品識別力が稀釈化あるいは喪失されるおそれがあると認識し、直ちに「サラシア」なる商標の稀釈化及び普通名称化の防止のため、以下の措置を講じた。
(エ)稀釈化・普通名称化防止のための努力
「サラシア」なる商標は本件指定商品及び「茶」についての登録商標(商標登録第4185783号:乙第8号証)であるにもかかわらず、「サラシア」なる文字が「サラシアオブロンガ」「サラシアレティキュラータ」又は「サラシアプリノイデス」の略称であり、普通名称であるかの如き誤解を需要者・取引者に与えるかもしれない方法で、被請求人自身が当該文字を同社の宣伝広告等で使用した例が若干例存在する。しかしながら、被請求人は、かかる誤解を招くおそれのある行為は直ちに停止した。
加えて、被請求人は、競業他社による「サラシア」と同一又は類似の商標の使用が本件商標の稀釈化ないし普通名称化を招くおそれがあると認識し、これを防止すべく、遅くとも平成11年5月以来、以下のような必要措置を講じ、マスコミ各社及び競業他社による「サラシア」なる文字の使用には常に注意を払ってきた。
(a)「サラシア」なる文字の表示についてのマスコミ各社への要請
被請求人は、マスメディアにおける「サラシア」なる文字の使用が「サラシア」の普通名称化を防止すべく、平成11年5月に、新聞社、雑誌社等マスコミ各社に対して、「サラシア」は原商標権者(ランカアーユルベーディックハーブ薬品株式会社)保有の登録商標であることを知らせるとともに、植物名「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」に記事・広告中で言及する際は正確にその名称を記し、単に「サラシア」とは表示しないこと、また、「サラシア」の文字を使用する際にはそれが登録商標である旨を明記することを要請した(乙第9号証、乙第10号証)。
上記要請書は、株式会社証券新報社(乙第10号証)のほか、株式会社ドラッグマガジン、株式会社日本医療衛生新聞社等に被請求人から直送されただけではなく、被請求人のパブリシティを専門に扱っている広告代理店(株式会社TMオフィス)から業界紙を発行する新聞社、全国紙、地方紙を発行する新聞社、雑誌社の各編集局、広告局へ発送されており、その数は650余通にのぼる(乙第11号証その1、同その2)。
なお、上記マスコミに対する要請の事実は、1999年(平成11年)6月21日付株式会社ドラッグマガジン発行業界紙「ドラッグトピックス」第5面に掲載の記事の中で報じられた(乙第12号証)。
(b)競業企業に対する通告書の発送
上記マスコミ各社への要請書発送に先立ち、被請求人は原商標権者の代理人として「サラシア」なる登録商標と同一又は類似の商標を「サラシア印商品」の類似商品に使用する複数競業企業に対して、原商標権者が保有する「サラシア」の商標登録を尊重するよう通告書を発送してきた。その一つが請求人提出の甲第3号証である。
なお、上記通告書発送の事実は、上記マスコミ各社宛要請書(乙第9号証)及び前記「ドラッグトピックス」第5面掲載記事(乙第12号証)の中で言及されている。
(c)「サラシア印商品」の広告における「登録商標の旨の表示」
被請求人は、自社広告における過去の「サラシア」の文字の表示方法を見直し、所謂五大紙を含む新聞の紙上並びにダイエットに大きな関心を持つ女性が購読する生活雑誌、女性誌、男女双方を購読者とする情報誌、業界誌等の誌上での「サラシア印商品」広告において、植物名「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」又は「サラシアプリノイデス」に言及するときはその名称を正確に記し、また、「サラシア」の文字にはこれが登録商標であることを明示すべく、当該文字の右下に(マルアール)を表示したり、これに加えて『「サラシア(マルアール)」は登録商標です。』と明記している。このような登録商標である旨の広告はすでに数多くなされているので、その一部を例示的に提出するに止める(乙第5号証及び乙第6号証)。(2)本件商標の自他商品識別力の維持について
(ア)上記で詳述した特段の事情により、原商標権者が一種の造語として採択した「サラシア」なる商標の自他商品識別機能は、現在に至るまで維持され、年々高まりつつあるといえる。
(イ)請求人提出の甲第4号証並びに甲第5号証及び甲第6号証はそれぞれ、インド及び中国で出版された文献であって「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」なる植物のいずれかがわが国において「サラシア」と略称されている事実を示すものではない。
また、甲第7号証及び甲第9号証は、本件商標の登録査定(平成10年10月23日)前に発行された印刷物であるが、僅か2件の「サラシア」なる文字の使用例をもって本件商標の自他商品識別力を否定すべきではない。なお、甲第8号証は、被請求人自身の「サラシア印商品」の広告及びその記事広告である。
一方、甲第10号証〜甲第19号証は、本件商標の登録査定(平成10年10月23日)後に発行された印刷物であり、本件商標の自他商品識別力の有無の判断に影響を与えるものではない。
(ウ)類例について
「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」と同様に所謂「ダイエット食品」の原料として用いられる「ギムネマシルベスタ」なる植物があるが、「ギムネマ」なる文字は、この「ギムネマシルベスタ」なる植物名称の略称ではなく、「菓子、パン、乳製品、加工食料品、茶」等について自他商品識別力ありと特許庁において認定されている(資料1〜資料4)。
上記類例において、「ギムネマ」なる文字は、「ギムネマシルベスタ」なる植物名称の前半部分と一致しているが、上記商品についてその自他商品識別力を肯定されている。これと同様に本件においても、「サラシア」なる文字が「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」なる植物名称の前半部分と一致していることをもって、本件商品についての自他商品識別力を否定すべきではない。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当しない理由
上記の通り、本件商標は自他商品識別機能を十分に発揮し続けているものであるから、本件商標を「粉末状又は顆粒状の乾燥サラシアレティキュラータ、同サラシアオブロンガ又は同サラシアプリノイデスを主原料とする加工食品」以外の商品に使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれはない。
なお、被請求人は、本件商標権の被請求人への移転が登録され次第、本件指定商品を「粉末状又は顆粒状の乾燥サラシアレティキュラータ、同サラシアオブロンガ又は同サラシアプリノイデスを主原料とする加工食品」に減縮すべく、本件商標権の一部抹消登録を申請する所存である。
(4)結語
叙上に微し、答弁の趣旨とおりの審決を願いたい。
仮に、本件において、無効審決がなされることがあるとしても、前述のとおり、本件商標は、「粉末状又は顆粒状の乾燥サラシアレティキュラータ、同サラシアオブロンガ又は同サラシアプリノイデスのエキスを主原料とする加工食品」について自他商品識別機能を十分に発揮しており、商標法第4条第1項第16号に該当しないから、当該商品についてまで本件商標の登録が無効とされるべきではない。
2.弁駁に対する第二答弁
(1)請求人の争点に関する誤認について
本件は、本件商標の登録の当否を争うものであって、無効理由ではない商標法第26条の解釈を争うものではない。
請求書及び弁駁書を通読するに、請求人は、商標法第3条第1項第3号の適用基準と同法第26条第1項第2号のそれをごちや混ぜにした独自の解釈論を展開し、事実認定と論点の絞り込みを妨げている。
請求人は、答弁書について、「被請求人の答弁は、請求人の、『本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違背して登録されたものであり、その登録は無効にされるべきである』との主張に対し、何等の反論、立証になっていない。」と被請求人を非難している。しかしながら、前提たる請求人の主張自体が「特許法上の公知即ち無効」的なものであって、ピントのずれたものであり、被請求人としては、かかる請求人の誤った前提に基づく主張に歩調を合わせることに困難を覚える。
よって、被請求人は、標識保護法たる商標法の精神に則って、以下のとおり、請求人の主張する無効理由、すなわち、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否か、並びに同法第4条第1項第16号に該当するか否か、について各別に答弁する。
(2)商標法第3条第1項第3号に基づく無効理由の存否
(ア)請求人は、本件商標は、その「サラシア」の文字が商品の品質・原材料を単に表示するものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、その登録は無効とされるべきであると主張する。
(イ)そこで、まず、商標法第3条第1項第3号の適用基準についてみると、以下のとおりである。
(a)時間的判断基準
出願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断時点は、審査官が当該商標登録出願について「査定をする時」とされる(特許庁商標課編「商標審査基準〔改訂第7版〕」〔乙第13号証〕、大審昭和3年(オ)第827号昭和4年3月13日判決、東京高裁昭和45年(行ケ)第5号昭和46年9月9日判決)。
すなわち、行政庁たる特許庁は、出願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かを、その出願について査定する時点における事実関係に基づいて判断しなければならない。一方、査定日以降に生じた事実関係に基づいて判断してはならないのである。従って、商標法第3条第1項第3号に基づいて本件商標の登録の無効を主張する請求人は、その事実上の査定日たる平成10年10月2日(起案日)以前において、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当していた事実を立証する責を負う。
商標法第26条に該当するかなど、査定日以後に生じた事実の認定は、専ら裁判所に委ねられるものであり、本件行政処分とは無関係である。
(b)人的判断基準
出願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断は、「わが国の需要者の認識」に基づいてなされる。
けだし、商標法第3条第1項第3号は、わが国における出願商標の識別力の有無を判断するものであるから、当然のこととして「わが国の需要者」における認識に基づくべきであり(東京高裁平成12年(行ケ)第164号平成12年10月25日判決「紅豆杉」事件〔乙第14号証〕)、外国の需要者の認識については、これを度外視しても何ら違法ではない。むしろ、外国の需要者の認識を重視することこそ違法となる。
なお、「需要者」なる概念は、わが国における「取引者」及び「最終消費者」の双方を含むとされる(東京高裁昭和41年(行ケ)第112号昭和45年2月26日判決)。また、「需要者」なる概念は、標準的で最多層を形成する者を意味し、特定の商品についての学識者・研究者等の専門家は含まないと解される。
また、商標法は、商標が、商取引の場において、自他商品識別機能を発揮し、出所標識として機能することを予定するものであるから、出願商標について商標法第3条第1項第3号を適用すべきか否かを判断するには、わが国の標準的需要者が品質若しくは原材料表示と認識するか否かの事実認定が不可欠である。標準的需要者が未だ品質等表示と認識できない程度のわずかな使用例をもって、品質等表示であると即断してはならないのである。
したがって、商標法第3条第1項第3号に基づいて本件商標の登録無効を主張する請求人は、その査定日たる平成10年10月2日以前において、わが国の需要者の間で、「サラシア」なる文字が、本件指定商品の品質若しくは原材料表示として前述の最多層を形成する標準的需要者間に認識されていた事実を立証すべきである。ごく限られた特定の識者に認識されているのみでは足りないのである。
(c)客体的基準
出願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かを判断するには、当該出願商標が指定商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるか否かを認定する必要がある。
普通に用いられる方法」で表示されているか否かは、商取引において、指定商品の需要者が商品の品質、原材料等の表示であると直観できるか否かで判断される。すなわち、指定商品の品質、原材料等を間接的に表示するに止まる商標は、自他商品識別機能を有すると判断されることになる(前掲「商標審査基準〔改訂第7版〕」乙第13号証)。また、商品の普通名称に近似する語であっても、わが国で商品の普通名称として一般に使用されていないかぎり、自他商品識別機能を有するものと認められる(大正13年(抗告審判)479号大正14年12月7日審決)。
したがって、商標法第3条第1項第3号に基づいて本件商標の登録の無効を主張する請求人は、査定日(平成10年10月2日)前に、わが国の標準的需要者をして、「サラシア」なる文字が、本件指定商品の品質若しくは原材料を直観させるものであったという事実を立証すべきである。査定日前に日本国内で発行された雑誌等を数点提出するのみでは、立証したことにはならない。
(ウ)以上を要するに、商標法第3条第1項第3号に基づいて本件商標の登録の無効を主張する請求人は、査定日(平成10年10月2日)前に、わが国の標準的需要者の間で、「サラシア」なる文字が、本件指定商品の品質若しくは原材料を表示する語として周く知られ、かつ、「サラシア」の文字が品質若しくは原材料表示であると直観させるものであった、という事実を立証する責を負うものである。
そこで、請求人提出の関係する証拠が、上記要件事実を立証するものであるか否かについて検討し、評価することが必要である。そこで、これらの証拠及び参考資料を検討するに、これらは、「査定日前における本件商標の識別力否定の根拠となり得ないもの」と、「査定日前における本件商標の識別力に幾分影響を与えたかもしれないもの」に二分できる。以下、甲第4号証〜甲第19号証並びに参考資料及び参考資料1を格別に評価する。
(エ)本件商標の識別力否定の根拠となり得ない甲号証及び参考資料
甲第4号証〜甲第6号証、甲第10号証〜甲第12号証、甲第14号証〜甲第19号証並びに参考資料及び参考資料1はいずれも、本件商標の査定日(平成10年10月2日)前における本件商標の識別力を否定する根拠となり得ないものである。したがって、査定日前における本件商標の識別力の有無(無効理由の有無)の判断において、これらは、無視されてしかるべきものである。以下にその理由を詳述する。
(a)甲第4号証は、インドで発行された英語の専門書であり、請求人が本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するに至った一因となったと指摘する部分は、平易な英語で記述されているとはいえないものである。そのため、わが国の標準的需要者が、かかる専門書の英語による記述を容易に理解し、関心を示し、これを記憶にとどめるとはいい得ない。さらに、当該専門書のわが国における頒布部数・頒布時期は、ともに不明である。結論として、本号証は根拠として有効なものではない。
(b)甲第5号証は、中国で発行された中国語の専門書であり、請求人が本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するに至った一因となったと指摘する部分について、わが国での中国語の普及度に鑑みれば、わが国の標準的需要者が、中国語で記されたその文面を容易に理解するとは到底いえない。加えて、この専門書のわが国における頒布部数・頒布時期は、ともに不明である。すなわち、本号証は、本件商標の識別力を否定する根拠とはなり得ない。
(c)甲第6号証も、甲第5号証と同様に中国で発行された中国語の専門書であり、請求人が本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するに至った一因となったと指摘する部分は、甲第5号証の文面と同様に、わが国の標準的需要者が容易に理解するとはいえない中国語で記されているので、到底、請求人の主張の根拠となり得ないものである。加えて、当該専門書についても、わが国における頒布部数・頒布時期は、ともに不明である。結論として、本号証は、本件商標の識別力を否定する根拠とはなり得ない。
(d)甲第10号証・甲第11号証・甲第16号証・甲第17号証はともに、本件商標の査定日(平成10年10月2日)後に発行された新聞記事である。したがって、甲第10号証・甲第11号証・甲第16号証・甲第17号証はいずれも、査定日前における本件商標の識別力を否定する根拠とはなり得ない。
(e)甲第12号証は、本件商標の査定日(平成10年10月2日)前に発行された新聞記事である。しかし、当該記事のどこにも「サラシア」なる語が単独で使用されてはいない。加えて、当該新聞の発行部数は、不明である。したがって、本号証は、「サラシア」なる語が、「サラシアオブロンガ」なるつる性植物を指称する普通名称であることを証明するものではない。結論として、本号証は、査定日(平成10年10月2日)前における本件商標の識別力を否定する根拠とはなり得ない。
(f)甲第14号証は、本件商標の登録査定(平成10年10月2日)後に発行された「日経金融新聞」の被請求人会社の決算を示すものであるが、これには『ダイエット食品「サラシア」の販売を本格化。』と記載されている。この文言は、まさに、被請求人が本件商標を自他商品識別標識として使用していることを示している。けだし、「サラシア」を普通名称とするダイエット食品は存在しないからである。また、請求人も、単に、本件商標「サラシア」の文字は「原材料表示」(商標法第3条第1項第3号)に該当すると主張するのみで、商標法第3条第1項第1号に該当する普通名称であるとは主張していない。
したがって、甲第14号証は、査定日前における本件商標の識別力を否定する根拠とはなり得ない。
(g)第15号証及び甲第19号証はともに、本件商標の査定日(平成10年10月2日)後に発行された雑誌記事である。したがって、甲第15号証、甲第19号証はいずれも、査定日前における本件商標の識別力を否定する根拠とはなり得ない。
(h)甲第18号証は、本件商標の査定日(平成10年10月2日)後に発行された「糖尿病だより」の記事である。したがって、本号証は、査定日前における本件商標の識別力を否定する根拠とはなり得ない。
(i)参考資料は、昭和57年1月15日発行の財団法人日本公定書協会監修「第十改正 日本薬局方解説書」からの抜粋である。請求人は、この文献に基づいて、「サラシア」なる文字は、本件指定商品の原材料である「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」の略称であると主張する。しかしながら、本資料には、「サラシア」なる文字も、「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」なる植物についての紹介も一切見当たらない。
加えて、請求書の薬草の原植物名とその略称を記載した表にも、「サラシア」なる文字も、「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」なる植物名称も記載されていない。
結論として、本資料及び請求書の薬草の表は、かえって「サラシア」なる文字が本件指定商品の原材料である植物名称の略称として、わが国の標準的需要者の間で周く知られていたとは到底いい得ないことの証左となるものである。
(j)参考資料1は、1997年(平成9年)11月25日に米国において特許になった発明についての米国特許公報である。
請求人は、わが国の標準的需要者が、特許明細書特有の英語で記されたこの文献を十分に理解し、関心を示し、これを記憶にとどめるというのであろうか。被請求人の評価では、特許明細書特有の英語で記されたこの文献はそれ自体難解であり、わが国の標準的需要者が容易に理解できるものではなく、到底、請求人の主張の根拠となり得ないものである。さらに、この特許公報のわが国での頒布部数・頒布時期は、ともに不明である。結論として、本資料は、本件商標の識別力を否定する根拠とはなり得ない。
(オ)本件商標の識別力に幾分影響を与えたかもしれない甲号証
甲第7号証〜甲第9号証、甲第13号証は、査定日(平成10年10月2日)前において、本件商標の識別力に幾分影響を与えたかもしれないものである。そこで、以下にこれらについて検討する。
(a)甲第7号証証は、サラシア印商品の発売開始(平成10年3月)の直前に、被請求人営業部を情報の発信源として発行された平成10年2月20日付雑誌記事である。この記事において、「サラシア」なる文字は、「サラシアレティキュラータ」なる植物名称の略称であるかの如くに使用されている。かかる「サラシア」なる文字の不正確な使用は、当該記事を執筆した雑誌記者の商標に対する理解不足に因るものであり、この執筆者の理解不足は、下記の事実が露呈しているとおりである。
すなわち、本号証において、登録商標である「ギムネマ」(商標登録第1981140号、同2012978号、同2477055号、同2654897号〔資料1〜資料4〕)が、あたかも「ギムネマ・シルベスタ」なる植物の略称の如くに誤用されている。かかる「ギムネマ」の誤用は、当該記事の執筆者において、登録商標の認識の欠如若しくは登録商標に対する配慮の欠如又は不足があったことを示すものにほかならない。してみれば、本号証の雑誌記事における「サラシア」なる文字の不適切な使用は、「ギムネマ」の誤用と同様に、当該記事の執筆者の商標に対する配慮の欠如又は不足によるものであることは明らかである。
なお、当該記事の雑誌掲載後に、被請求人が、本件商標の識別力喪失を防止すべく、マスコミ各社に要請書を送る等の努力を重ねて来たことは、答弁書で詳述したとおりである。
(b)甲第8号証は、サラシア印商品の発売開始(平成10年3月)後である平成10年5月25日発行の「産経新聞」に掲載された被請求人自身の広告頁である。この広告において、被請求人自身が「サラシア」なる文字を当該植物の名称の略称であるかの如き誤解を招きかねない方法で使用している。しかし、その後、被請求人は、その誤りに気付き、答弁書で詳述したとおり、本件商標の識別力喪失を防止すべく、「サラシア」の文字の使用方法を自ら是正した。
(c)甲第9号証は、サラシア印商品の発売開始(平成10年3月)後である平成10年8月20日発行の雑誌に掲載された記事であり、被請求人マーケティング開発本部長川原有三のインタビュー内容をまとめたものである。この記事で、「サラシア」なる文字が当該植物の名称の略称であるかの如くに使用されているが、かかる使用は、答弁書で詳述したように、本件商標の識別力喪失防止のための措置を講ずる前の限られた一時期の誤用にすぎない。
(d)甲第13号証は、本件商標の登録査定(平成10年10月2日)前に発行された「日経金融新聞」の被請求人会社の決算を示すものであるが、これには『ダイエット食品「サラシア」も発売。』と記載されている。この文言は、まさに、被請求人が本件商標を自他商品識別標識として使用していることを示している。けだし、「サラシア」を普通名称とするダイエット食品は存在しないからである。また、請求人も、単に、本件商標「サラシア」の文字は「原材料表示」(商標法第3条第1項第3号)に該当すると主張するのみで、商標法第3条第1項第1号に該当する普通名称であるとは主張していない。
(e)上記(a)〜(d)のまとめ
本件商標の登録査定日(平成10年10月2日)前に、わが国で発行された甲号証のうち、甲第7号証のみが、サラシア印商品の販売開始(平成10年3月)前に発行されたものである。一方、甲第8号証、甲第9号証と甲第13号証は、いずれもサラシア印商品の販売開始(平成10年3月)後に発行されたものである。しかも、前記(a)〜(d)において述べたとおり、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証は、いずれも、被請求人を情報発信源としてはいるが、執筆者が正確な事実関係を把握しないまま記事としたものである。また、甲第13号証が商標としての「サラシア」の使用を示すものにほかならないことは、上記で述べたとおりである。
すなわち、サラシア印商品の発売開始(平成10年3月)前に、サラシア印商品と無関係に「サラシア」なる文字が使用された事実は証明されていない。そればかりか、サラシア印商品の発売開始(平成10年3月)以後、本件商標の登録査定日(平成10年10月2日)までの期間において、サラシア印商品と無関係に「サラシア」なる文字が、当該植物を指称する普通名称として使用された事実も証明されていない。
加えて、サラシア印商品の発売開始(平成10年3月)の後に発行された甲第8号証の発行日は、平成10年5月25日であり、甲第9号証の発行日は、平成10年8月20日であるから、その間は僅か3ヶ月である。そもそも、かかる3ヶ月という短期間に僅か2点の雑誌・新聞に掲載があったのみで、本件商標の識別力が喪失されたとは到底いえない。したがって、本件商標について、登録無効理由がないことは明白である。
(カ)「サラシア」は指定商品の品質等の直接的表示か否かについて
本件商標の指定商品の原材料を直接的に表示する語は、「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」(以下、「当該植物」という。)なる植物名称である。
本件商標の「サラシア」なる文字が、これらの植物名称の前半部分と一致していることのみをもって、本件指定商品の原材料である当該植物を直接的に表示するものであるとはいえない。大正13年(抗告審判)479号(大正14年12月7日審決)においても、商品の普通名称に近似する語であっても、商品の普通名称として一般に使用されていないかぎり、商品を区別することができるものと認められる旨が説示されている。
また、商願昭60-91005号(商標登録第2654897号)「ギムネマ」(指定商品:旧第29類「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」)に関する異議申立決定謄本においては、乙第15号証のとおり説示されている。
なお、請求人は、大阪高裁平成11年(ネ)第473号(平成11年10月14日判決)「タヒボ」事件(参考資料2)での判示事項に言及するが、当該事件は、不正競争行為差止等請求事件であり、「タヒボ」なる商標の登録後に生じた事実に基づいて、商標法第26条による権利関係の調整下、被告の行為が不正競争行為に該当するか否かを争点とした事案である。一方、本件は、登録査定前の事実に基づいて、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かを争うものであり、両者は、事案の性質を全く異にするものである。
加えて、上記大阪高裁事件は、「タヒボ」なる文字が、「ノウゼンカズラ科タべブイア属アベラネダエ種」なる植物の俗称・通称として口頭弁論終結前に一部地域で使用されていたことが、わが国において「健康食品」の需要者・取引者の間で一般的に認識されていたという事実が存在していた事案であり、本件とは背景事情を全く異にする。
さらにまた、独占不適性の観点からみても、「タヒボ事件」は、本件や前記「ギムネマ」の事案とは背景事情が異なる。即ち、本件においては、競業者は「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」等の普通名称を使用すれば足り、「ギムネマ」の事案においては、競業者は「ギムネマ・シルベスタ」なる普通名称を使用すれば足りるのである。一方、「タヒボ事件」においては、事実上使用できる「代替名称」が存在しないのであり、この点で独占不適性に関する背景事情が大いに異なる。したがって、「タヒボ事件」は、全く本件の参考とはならない。
請求人は、登録査定(平成10年10月2日)前に、「サラシア」なる文字が指定商品の原材料を直接的に表示するとわが国の標準的需要者の間で周く認識されていたと主張するからには、その事実の存在を立証すべきである。
(キ)被請求人が本件商標を登録した意図について
本件商標の登録は、インド産植物の名称である「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」の独占を企図したものではない。また、被請求人は、本件商標を登録したからといって、「サラシアレティキュラータ」「サラシアオブロンガ」「サラシアプリノイデス」なる植物名の使用までを独占するつもりは毫もない。このことは、被請求人が1999年5月にマスコミ各社に送付した要請書中の文言からも明らかであるが(乙第10号証)、ここに再度「禁反言」の法理をわきまえた上で宣言する。
(ク)紛争予見性が商標登録の無効理由となり得るか否かについて
登録商標が登録後に商品の品質等表示として、需要者等に一般的に認識されるに至った場合には、裁判所において、商標法第26条第1項第2号を適用することにより権利の調整が図られる。一方、登録査定時において、指定商品の需要者等の間で品質等表示として一般に認識されていない限り、商標登録は認められるべきであり、その商標登録が将来、紛争の種になるかもしれないという抽象的な予見性のみをもって、商標登録の有効性が判断されるべきではない。東京高裁も、前掲「紅豆杉」事件判決において乙第14号証のとおり説示している。
ちなみに、答弁書で詳述したように、被請求人は、マスコミ各社に対し、「サラシア」は被請求人の登録商標である旨を通告し、普通名称と誤認される使用方法を避けられたい旨を要請し、重ねて請求人自身も「サラシア」の文字に(マルアール)の表示をするなど、「サラシア」の文字が商標法第26条第1項第2号に該当するに至るのを防止すべく万全の措置を講じてきた。そして、事実、この措置が効を奏し、「サラシア」の文字は被請求人の商標として需要者に広く認識され、自他商品識別標識として十分に機能している。
(3)商標法第4条第1項第16号に基づく無効理由の存否
上記及び答弁書で詳述したとおり、本件商標は登録査定時はいうまでもなく、その後も自他商品識別機能を十分に発揮しつづけているものであるから、本件商標を指定商品に使用しても商品の品質誤認を生ずるおそれはない。 なお、平成12年10月11日付で本件商標の登録について、商標権の一部抹消登録がなされた結果、本件商標の指定商品は、「粉末状又は顆粒状の乾燥サラシアレティキュラータ、同サラシアオブロンガ又は同サラシアプリノイデスを主原料とする加工食品」に減縮された(乙第16号証、乙第17号証)。
(4)結語
本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは、本件商標「サラシア」の文字に接する標準的な需要者がこれを「自他商品識別標識」と認識するか、単なる「商品の品質・原材料表示」と認識するかについての事実認定の問題である。すなわち、本件商標についての商標法第3条第1項第3号に基づく無効理由の存否は、その登録査定日たる平成10年10月2日現在における本件商標の自他商品識別機能の有無を認定し、「識別力を欠いていたと認定できる場合」は登録を無効とし、「識別力を欠いていたと認定し難い場合」は、登録は無効とされてはならない。
なお、一般に商標の自他商品識別機能は、その商標の使用に関する企業努力如何によって影響を受け、例えば、出願時に商標法第3条第1項第3号に該当する商標であっても、出願人のその後の宣伝・広告・販売努力等の企業努力次第で識別力を帯有するに至ることもある。商標法第3条第2項が置かれている所以である。本件商標「サラシア」は、その登録査定時において自他商品識別機能を欠いていたという事実は無いどころか、その後益々その指標力を高めて今日に至っている。このような状況下、万一、本件商標の登録が無効とされた場合、請求人が本件商標「サラシア」について蓄積してきたグッドウィルにフリーライドする者が続出し、市場に大きな混乱を引き起こすことは必至である。かかる事態の出来は需要者に不測の損害を招き、商標法第1条に規定する法目的たる「需要者の利益の保護」を欠くことになるので、慎重な判断を切望する。

第4 当審の判断
本件商標は、上記に示すとおり「サラシア」の文字を書してなるものである。
そこで、請求人の提出に係る証拠についてみるに、甲第7号証の「健康の王国(ダイエット特集号)」(平成10年2月20日 健康の王国愛読者クラブ発行)には、「サラシア」に関して「『サラシア』はラテン名でサラシアレティキュラータ。スリランカの特定地域とインド南部に存在し、分布は非常に限定されています。」、「糖質は酵素で分解されブドウ糖となり、過剰なものは脂肪組織に蓄えられます。サラシアは微量で糖質の分解を阻止するため、食後の血糖値の上昇を抑えます。食前にサラシア茶を飲むことで、余分な中性脂肪が体内にたまるのを防ぎます。」等と記載されている事実が認められる。
また、甲第8号証の「産経新聞」(平成10年5月25日)には、被請求人である森下仁丹株式会社の全面広告が掲載されており、そこでは被請求人自身も「サラシア」に関して「『サラシア』はインドなど民間で、ダイエットに愛用されてきた健康食品です。」「…サラシアは、スリランカやインド南部の高地のごく一部に生える藤の木のようなツル性の植物。インドでは、その葉を煎じたり、サラシアの幹で作ったカップに寝る前に水を入れ、翌朝、成分が滲み出した水を飲むといった形で利用されてきた。…」等、該「サラシア」を品質・原材料を表示する語として普通に使用している事実が認められる。また、甲第11号証ないし甲第18号証は、本件商標の登録査定後のものと認められるものであるが、その記載内容によれば「サラシア」の紹介及びこれを原材料とする「健康食品、茶」の開発が本件登録査定時以前から行われていたことを窺わせるものである。
上記、請求人の提出に係る甲各号証を総合勘案すれば、「サラシア」の語は、被請求人(出願人の「ランカアーユルベハーブ薬品株式会社」を含む)が創作した造語ではなく、本件商標登録査定時の平成10年12月頃には、スリランカの特定地域とインド南部に存在する藤の木のようなツル性植物でその根と茎が糖尿病の治療に効果を有する「サラシアレティキュラータ」の略称であり、健康食品、茶等の原材料として使用されるものであることが、取引者・需要者間に広く知られていたものと認められる。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、その商品が単に「サラシア、粉末または顆粒状の乾燥ハーブ及び乾燥茶葉を混合してなる加工食品」であると認識するに止まるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、これを「サラシア、粉末または顆粒状の乾燥ハーブ及び乾燥茶葉を混合してなる加工食品」について使用するときは、単に商品の品質、原材料を表示するにすぎず、また、これを上記商品以外の加工食品に使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-10-17 
結審通知日 2001-10-22 
審決日 2001-12-05 
出願番号 商願平8-136754 
審決分類 T 1 11・ 272- Z (029)
T 1 11・ 13- Z (029)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡口 忠次 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 柳原 雪身
上村 勉
登録日 1998-12-04 
登録番号 商標登録第4217020号(T4217020) 
商標の称呼 サラシア 
代理人 樋口 豊治 
代理人 大西 育子 
代理人 青山 葆 
代理人 水野 喜夫 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ