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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 104
管理番号 1066518 
審判番号 取消2000-31475 
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2000-12-08 
確定日 2002-10-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2723750号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2723750号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2723750号商標(以下「本件商標」という。)は、「ケミコスヘアミルク」の片仮名文字を書してなり、平成1年3月1日に登録出願、第4類「ヘアークリーム、ヘアーシャンプー、ヘアーコンディショナー」を指定商品として、同9年12月5日に設定登録されたものであり、現に有効に存続している。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1.本件商標は、その商標登録原簿の記載より明らかなとおり、何人にも専用使用権又は通常使用権の設定の登録はなされていない。
また、請求人は、本件商標が請求に係る指定商品について使用された事実については不知である。
したがって、本件商標の登録は、被請求人が請求に係る指定商品に、本件商標の使用事実を証明しないと、商標法第50条第1項に規定により、取消を免れ得ないものである。
2.答弁に対する弁駁
(1)商品写真の撮影年月日が平成13年3月9日であり、本件審判請求の予告登録後に撮影されたものであり、使用の証明とはならない。
(2)商品の薬事法上の種類について
薬事法は、「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行う」こと等を目的(第1条)とする法律である。
使用に係る商品(以下「使用商品」という。)の裏面のラベルには「医薬部外品」と表示されているので、薬事法上「医薬部外品」に属する商品であることが伺える。
そして、医薬部外品に属する商品は、(イ)法律で規定するもの、(ロ)厚生大臣が指定するものに分かれている。
使用商品に付された種々の表示によれば、(イ)の法律で規定する「脱毛の防止、育毛剤」であるのか、又は(ロ)の厚生大臣が指定するいわゆる「薬用化粧品」中の「リンス」のいずれであるかが疑問となる。
そこで、使用商品の表示内容を検討する前に、まず、医薬部外品である「育毛剤」と「リンス」の薬事法制上の異同を明らかにしておく(甲第3号証)。
ア.育毛剤(養毛剤)
使用目的;脱毛の防止及び育毛を目的とする外用剤
主な剤型;液剤、エアゾール剤
効能又は効果;育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛
イ.薬用化粧品(リンス)
使用目的;化粧品としての使用目的を合わせて有する化粧品類似の剤型の外用剤
主な剤型;液状、クリーム状、ゼリー状、固型、エアゾール剤
効能又は効果;ふけ・かゆみを防ぐ、毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ、毛髪の水分・脂肪を補い保つ、裂毛・切毛・枝毛を防ぐ、毛髪・頭皮をすこやかに保つ、毛髪をしなやかにする。
また、「ヘアトニック(医薬部外品を含む)」と「ヘアコンディショナー」を説明した文献により、両商品が異なる種類に属することを証する(甲第4号証)。
(3)使用商品の前面表示内容について
ア.「ケミコスヘアミルク」の表示
「ケミコスヘアミルク」は、使用商品の商品名と見える表示である。
また、本表示中の「ヘアミルク」は頭髪用化粧品「ヘアコンディショナー」「整髪料」等において、ミルク状の商品を表すものとして、広く使用されている商品の品質等表示である。
イ.「スキャルプ&ヘアコンディショナー」の表示
本商品が、「頭皮と毛髪をすこやかに保つ」効能、すなわち、医薬部外品たる薬用化粧品「リンス」の効能を有する商品であることを示している。
ウ.「HAIR MILK」の表示
「ヘアミルク」を英語表記したもので、ア.と同様の意味を有する。
エ.「SCALP TREATMENT」「AND」「HAIR GROW」と三段に記された表示
「SCALP TREATMENT」の部分は「頭皮の手当て」の意味合いのものと解されるとともに、「HAIR GROW」は「育毛」の意味合いであるから、この表示は「育毛剤」の効能表示である。
オ.「MEDICAL」の表示
使用商品が「医療」用のものであることを示している。
カ.「Costein」の表示
使用商品の商品名(商標)と見られる部分である。
キ.「FOR SCALP CONDITION」の文字
使用商品の商品名「Costein」に付記するもので、「頭皮の健康のために」といった意味合いとなる。
ク.以上考察したとおり、使用商品の前面のラベルには上部と下部に二段のラベルが貼付されているが、上部のラベル表示は医薬部外品「リンス」の効能と考えられる記載表示がなされ、下部のラベルには医薬部外品「育毛剤」の効能と考えられる表示がなされている。しかし、医薬部外品については、一商品について二つの種類(使用商品の場合は「リンス」と「育毛剤」)の効能又は効果で製造承認を受けることができないことになっているので、使用商品は医薬部外品として製造販売できないものである。また、通常の商品は、製造上の手間・コストを考えて、1枚のラベルに必要事項を記載するものであり、あえて容器の曲面に貼付された上部のラベルは化粧品としてまことに不自然なものである。
(4)商品の裏面表示について
ア.「ケミコスヘアミルク」の表示
前記(3)ア.と同様に使用商品の商品名と見られる表示である。
イ.「コスティン薬用トニック」
この表示も本商品の名称と認められる表示である。
薬事法第59条1項は、医薬部外品の直接の容器等の記載事項を定めており、その第3号で,製造承認を受けた「名称(一般的名称のあるものにあっては、その一般的名称)」を記載すべきものとしている(甲第5号証)が、使用商品には「ケミコスヘアミルク」と並んで二つの名称が付されていることになるが、いずれが、医薬部外品の承認を受けた名称であるか不明であり、このようなことは通常の商品にはあり得ないことである。
また、「薬用トニック」の表示は、医薬部外品「育毛剤」の別名として一般に使用されている(甲第6号証)ので、もし、使用商品が医薬部外品として薬事法上の製造承認を受けているとすれば、「育毛剤」として承認されていることになる。
ウ.「ホホバオイルと植物エキスが頭皮・毛髪をフレッシュアップ」の表示
本表示中「頭皮・毛髪をフレッシュアップ」の部分は、医薬部外品「リンス」の効能表示としては認められないものである。
(5)以上のとおり、使用商品は医薬部外品の一種として矛盾する表示に満ちており、到底、当業者において製造され販売されている商品とは考えられないものである。よって、提出された登録商標の使用説明書は本件商標の使用を証明するものとはならない。
(6)納品書について
提出された納品書は、上記商品に関するものであり、また、被請求人において任意に作成されたものにすぎないので、取引の証明として成り立たない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、「登録商標の使用説明書」及び乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1.本件商標は、その指定商品中 「ヘアーコンディショナー」について使用されており、登録商標の使用説明書について提出の証拠により、使用の事実を以下のとおり立証する。
(1)「登録商標の使用説明書」に添付の写真に示すとおり、本件商標と同一の商標「ケミコスヘアミルク」が商品「ヘアーコンディショナー」の容器に鮮明に表示され、本件商標が使用商品について使用されていることは明らかである。
(2)本件商標を使用した使用商品が実際に販売された事実は、「登録商標の使用説明書」に添付の納品書(控)により立証する。
ア.平成12年9月2日付け納品書(控)(No.2157)により、東京都世田谷区桜新町2丁目22-10の株式会社ハシモトリビック東京支店に「ケミコスヘアミルク(150)」(「(150)」は150mlの容量表示)が販売された。
イ.平成12年9月2日付け納品書(控)(No.2158)により、同社に「ケミコスヘアミルク(1000)」(「(1000)」は1000mlの容量表示)が販売された。
ウ.平成12年10月l0日付け納品書(控)(No.2406)により、同社に「ケミコスヘアミルク(150)」が販売された。
エ.平成12年10月17日付け納品書(控)(No.2441)により、同社へ「ケミコスヘアミルク(1000)」が販売された。
なお、写真の商品は150mlの商品であり、同商品は、上記ア、ウの「ケミコスヘアミルク(150)」に該当する。
2.請求人は、本件商標を使用した使用商品が、当業者において、多数製造販売されている商品とは考えられない旨主張する。
しかし、使用商品は、当業者において、多数製造販売されている同種の「ヘアコンディショナー」(医薬部外品又は化粧品)の表示と同様、各社配合成分による効果の特徴を表しているものと矛盾するところはない(乙第1号証ないし乙第6号証)。
また、商品「ヘアコンディショナー」は、甲第4号証の説明のとおりであって、成分との関係で医薬部外品とそうでないものがあるのは、他の化粧品と同様である。
3.むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者により、本件審判請求に係る指定商品中「ヘアーコンディショナー」について使用されているものであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定によって取り消されるべきではない。

第4 当審の判断
1.「登録商標の使用説明書」によれば、「商標の使用に係る商品名」は、ヘアーコンディショナーであることが認められる。
2.上記使用に係るヘアーコンディショナーの「商品写真」によれば、該商品は、透明のビニール袋に入り、(1)正面に貼付された上段のラベルには、「ケミコスヘアミルク」及び「スキャルプ & ヘアーコンディショナー」の各文字を表示し、同下段のラベルには、斜めに記載した「HAIR」、「MILK」の各文字を大きく表し、その下に、「SCALP TREATMENT」、「AND」、「HAIR GROW」の各文字、さらに、その下に赤字で「MEDICAL」の文字を表示し、その下の横長長方形輪郭内に「Costein」、「FOR SCALP CONDITION」の各文字が表示されていることが認められる。(2)裏面に貼付されたラベルには、「ケミコスヘアミルク」、「コスティン薬用トニック」、「医薬部外品」などの文字が表示されていることは認められる。
3.ところで、甲第4号証(香粧品科学;1977年6月1日、社団法人日本毛髪科学協会発行)の「ヘアコンディショナーとヘアクリーム」の項(326頁)によれば、「正常な毛髪は皮脂腺から分泌する皮脂によって覆われているため滑らかで美しく柔軟である。このように毛髪にとって重要なものは皮膚と同様に水と油である。ところがシャンプーしたあとの毛髪は脱脂された状態になっており、油を補給する必要がある。そのために・・・クリームリンスやオイルリンスを行うが、さらに強く油を補給したり、コンディショニング効果を与える製品がヘアコンディショナーであり、ヘアクリームである。・・・ヘアコンディショナーは、正常毛の場合も損傷毛の場合も共に、毛髪を保護し損傷の進行を防止しコンディショニング効果を与える製品と考えてよい・・」の記載が認められる。
また、同じく甲第4号証の「ヘアローションとヘアトニック,その作用」の項(329頁)によれば、「・・・ヘアトニックはヘアローションに発毛促進剤、その他頭皮および頭髪に対し、何らかの積極作用を持った特殊成分を配合し、発毛の促進、フケの防止等を目的とした製品である。・・・ヘアトニックはエタノールを50〜90%使用し、これに発毛促進剤や殺菌剤などを配合したものであり、毛根部に浸透して血管拡張、毛乳頭の刺激等、何等かの作用機序によって脱毛を防止し、毛髪の生長を助ける作用がある。・・・頭皮を充分にマッサージして使用することが大切であり、マッサージによる物理的刺激によって、ヘアトニックの作用が強化される。またヘアトニックは毛根部のほか頭皮に作用して角質溶解剤によってフケを除去し、シャンプーの使用による頭皮の皮脂やフケを除去する作用と相まって毛髪の発育を阻害する要因を除いて頭皮の状態を良好にし、毛髪の生長を助ける。・・・またヘアトニックは法的に分類して配合成分と効能の表現の差異によって、化粧品、医薬部外品、医薬品の3種に区別される。」の記載が認められる。
一方、甲第6号証(「1999 Cosmetics in Japan」)によれば、商品の名称として「薬用育毛トニック」(128、157、171頁)、「薬用トニック」(330頁)、「スカルプリフレッシングトニック(医薬部外品)〈頭皮用育毛料〉」(218頁)などの文字が使用されていることが認められる。
4.前記3.の認定事実からすると、商品「ヘアコンディショナー」と商品「ヘアトニック」とは、いずれも頭髪用化粧品の範疇に属する商品であるとしても、その目的、効果等において異なるものというべきであり、かつ、商品市場においても異なった商品として流通されているのが実情である。
そして、使用商品中の「薬用トニック」の表示に接する取引者、需要者は、「ヘアトニック(育毛剤、ないし養毛剤)」を直ちに想起するというべきである。
してみると、本件の使用商品とされる「ヘアコンディショナー」のラベル上の「スキャルプ & ヘアーコンディショナー」の表示と「薬用トニック」の表示は、1つの商品について2種類の商品表示がなされていることになり、化粧品の分野における商品流通の実情に即した表示方法であるということはできない。
この点に関し、審判長は、被請求人に対し、平成14年5月21日付けで、以下(1)及び(2)についての審尋を発し、相当の期間を指定して釈明を求めたところ、被請求人からは何らの回答も得られなかった。
(1)「登録商標の使用説明書」に添付の「商品写真」について
商品をビニール袋から出した状態で、商品に貼付のラベル(表面及び裏面の両方)に書された文字すべてが判読できる程度に拡大した写真(若しくは現物)の提出。
(2)本件商標の使用商品の表示について
本件商標の使用商品は、「登録商標の使用説明書」によれば、「ヘアコンディショナー」と認められるところ、商品に貼付された裏面ラベルには、「コスティン薬用トニック」の表示が認められるが、「ヘアコンディショナー」と「薬用トニック」とは異なる商品と認めれるから、この点についての釈明。併せて、本件使用商品についての医薬部外品として製造等の承認を受けていることを証明する証拠の提出。
5.そうとすると、本件商標は、その指定商品中の「ヘアコンディショナー」について使用されているものとは認めることができず、したがって、納品書により「ケミコスヘアミルク」なる商品が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内で取引があったとしても、その取引商品が本件商標の指定商品中の「ヘアコンディショナー」について使用されていたものということはできない。
6.以上のとおりであるから、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品のいずれについても使用していたと認めることはできない。また、被請求人は、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていないといわざるを得ない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-08-09 
結審通知日 2002-08-14 
審決日 2002-08-28 
出願番号 商願平1-22780 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (104)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 良一 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 茂木 静代
野本 登美男
登録日 1997-12-05 
登録番号 商標登録第2723750号(T2723750) 
商標の称呼 ケミコスヘアミルク、ケミコス 
代理人 萼 経夫 
代理人 吉崎 修司 
代理人 館石 光雄 
代理人 武石 靖彦 
代理人 村田 紀子 
代理人 村越 祐輔 

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