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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z03
管理番号 1064621 
審判番号 審判1999-35787 
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-24 
確定日 2002-08-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4210767号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成13年5月9日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成13(行ケ)年第277号 平成14年1月30日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4210767号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4210767号商標(以下「本件商標」という。)は、「キシリデンタル」の文字を標準文字で書してなり、平成9年7月9日登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同10年11月13日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が本件商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとして登録無
効の理由に引用する登録第4199780号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、同9年6月24日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として、同10年10月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第25号証を提出した。
1 請求人の引用商標の周知性
請求人は、平成9年10月、歯磨き業界初の「キシリトール」入り「歯磨き」の新製品「キシリデント」の発売を開始し、同10年5月、子供用歯磨き「キシリデント」の発売を開始している。この事実を証明するものとして、その販売に先立ち、取引先に配布されたパンフレット・商品説明書(甲第2号証から同第5号証)及び現在に至るまでのこれらの商品を掲載した請求人会社の製品カタログ(甲第6号証から同第8号証)を提出する。
甲第9号証「現代商品大辞典」に示すように、「キシリトール」は、糖質の天然素材甘味料であり、虫歯菌の活動を弱めることにより、虫歯の原因となる酸の発生を抑制し、虫歯を予防する効果があることで知られている。日本において甘味料としてこの「キシリトール」の使用が正式に許可されたのが同9年4月であり、それ以降、ガムやキャンデーなど菓子類を中心に「キシリトール」を使用した商品が各社により発売され、そのコマーシャルがテレビをはじめとする媒体を通じて大量に流されている。
このように、虫歯の予防に効果のある「キシリトール」を歯磨きに使用し
ようと、他社に先駆けて、同9年10月に「キシリトール」入り歯磨き「キ
シリデント」の発売を開始したのが請求人であり、発売当初よりの積極果敢
な宣伝広告活動により「キシリデント」は発売後僅かにして需要者・取引者
間に広く知られるに至ったものである。
甲第10号証及び同第11号証は、1997年(同9年)下半期と199
8年(同10年)上半期の各社の宣伝広告費をまとめたデータである。同第
9号証に示すように、請求人は1997年(同9年)7月から12月までの
間に、実に6億3千百万円もの宣伝広告費を「キシリデント」に費やしてい
る。「キシリデント」が発売されたのは、1997年(同9年)10月であ
るので、その少し前から宣伝広告が開始されたとしても、実質約3ケ月間に
6億円以上もの宣伝広告が行われたのであり、広告媒体としてテレビが一番
多いことを考えると、短期間にいかに高い頻度で茶の間の需要者の目に触れ
ていたかが理解される。ちなみに、甲第10号証には、競合会社であるサン
スターと花王の「歯磨き」の宣伝広告費も掲載されているが、両者ともこの
期間に5億円以上の広告費が費やされた商品はなく、「キシリデント」の活
発な宣伝広告活動が浮き彫りとなる。
甲第11号証の1998年(同10年)上半期のデータにおいても、「キ
シリデント」には4億2千2百万円もの広告費が費やされている。この数字は、サンスターの新製品「Ora2」の12億円には及ばないものの、花王が最も力を入れた「エナメルケア」の4億4千万円に比肩するものであり、「歯磨き」全体の仲では、以前として高い地位にあるものである。
こうした集中的な宣伝広告活動を行った結果、請求人の商品「キシリデン
ト」の売り上げも飛躍的に上昇した。甲第12号証は、この事実を示すもの
であり、調査を行った(株)社会調査研究所によると、1997年(同9年)下期から1999年(同11年)1月までの間に120グラムサイズの商品で521万6千個が、子供用で72万3千個、合計で593万9千個の商品が販売されている。このデータは、同11年1月までの数値であるので、本件商標が登録された同10年11月当時にはほとんどの量が販売されていたことになるし、多額の宣伝広告費を費やしている現在も順調に売り上げが伸びていることを示している。
また、これを需要者の認知度という観点から示した資料が甲第13号証の
「ブランドサーチ結果報告書」である。この調査は、ビデオリサーチ社が1
998年(同10年)12月3日から15日にかけて行ったもので、「再認」、すなわち、ブランド名を示して知っているかどうかを質問したもので「キシリデント」は、77.6%という極めて高い認知度を示している。これは、請求人の定番商品である「ホワイト&ホワイト」や「デンターライオン」、あるいは、ヒット商品である「PCクリニカ」などの90%以上の認知度にはやや及ばないものの、他社製品と比較しても決して見劣りするような認知度ではなく、発売後僅かにしていかに高い周知度を獲得していたかが理解される。
テレビ以外の媒体での宣伝広告の実例としては、甲第14号証から同第1
7号証が挙げられる。これらは、新聞のテレビ番組欄(甲第14号証)及び
広告欄(甲第15号証)、JR山手線を中心とする電車内の窓部に張られた
ステッカー広告(甲第16号証及び同第17号証)での広告態様を示すもの
である。
甲第18号証から同第25号証までは、これまでに述べた宣伝広告及び販
売実績を客観的に示した資料である。甲第18号証は、日経流通新聞の「ヒ
ットの予感」と題する記事であるが、この中で「キシリデント」については、「ストレートな商品名で消費者の注目を一気に集めた」、また、「オーラルケア商品に目立った新製品が少なかったため、テレビ宣伝など消費者PRの面から見るとかえって目立った」との西友バイヤーのコメントが掲載されている。甲第19号証から同第21号証は新聞記事で、これらよりは需要者の商品購入動向に基づく業界内における「キシリデント」の注目度、周知度が理解される。甲第22号証の「ヒット商品ベスト100」という本では、「キシリデント」が全歯磨きブランドの中で5位にランクされているうえ、「キシリデント」のみについての単独のコメントも掲載されている。
甲第23号証は、「キシリデント」発売から約6ケ月後の「女性セブン」
(同10年4月23日付)の記事であるが、ここでは、「ビジネス・コラム
/はやりものの仕組み」として、「キシリデント」の商品開発の過程からテ
レビコマーシャルのカットまでが詳しく解説されている。甲第25号証は、
就職学生向けの雑誌「日経学生ジャーナル(同10年3月号)」で、「キシ
リデント」の開発に携わった請求人会社の社員である八賀麻利の経験談が紹
介されている。これらに示すように、請求人の商品「キシリデント」の注目
度は、業界紙から女性誌、就職学生向けの雑誌まで極めて広範囲な紹介記事
等によって裏付けられ、同時に、「キシリデント」の周知性も理解される。
2 本件商標と引用商標の類似性
上に述べたところにより、引用商標の周知性は明らかであるが、これによ
り、本件商標と引用商標との類似性、つまり、商標相互の誤認混同の可能性
が極めて高いことが理解される。
本件商標「キシリデンタル」と引用商標「キシリデント」は、前半の「キ
シリデン」の称呼を共通にするが、語尾の「タル」と「ト」に称呼上の差異
を有する。しかしながら、本件においてこの語尾の差異は、両商標が非類似
であって、お互いに混同を生じないとする根拠にはなり得ない。すなわち、
周知な引用商標の称呼と大部分を共通にする本件商標にあって、語尾が僅か
に異なるというだけでは類似の商標であるとの認識から逃れられないのであ
る。請求人の「キシリデント」が「キシリトール」配合の「歯磨き」として
業界で嚆矢をなし、これが現在唯一の商品であることを考えれば、両商標が
「キシリデン」という「キシリトール」と「歯」を関連付けて認識するのに、十分な共通性を有している以上、もし、本件商標が「歯磨き」について使用された場合、需要者らはそれが請求人の商品の一連のシリーズであるかのように誤認することは避けられない。
そもそも本件商標及び引用商標の称呼は、その語尾において僅かな差異を
有するのみであって、そこへ上記のごとき取引の実情が加味されるのである
から、両商標はますます類似するものとなるのである。
3 登録異議の申立についての決定
請求人は、本件無効審判請求に先立ち、本件商標に対し登録異議の申立を
行っている。
商標の類否は、対比される両商標がその出所につき誤認混同を生ずるおそ
れがあるか否かによって決せられるべきであり、それにはその商品の取引の
実情を考慮すべき旨が最高裁において述べられている(氷山印事件・最高裁 昭和39年行ツ第110号)。そして、この判例は後の「大森林事件(平成3年オ第1805号)」や「SPA事件(平成7年行ケ第52号)」など後の多くの事件にも先例として引用されている。
ここで本件についてみるに、引用商標「キシリデント」は上述の通り「歯
磨き」につき需要者らの間で広く知られるに至っているという取引の実情が
あるのであり、その結果、本件商標は引用商標との間でその出所につき誤認
混同を生ずるものとなっているのである。また、先願である引用商標が周知
であるという取引の実情を考慮した結果、これと誤認混同を生ずるおそれ
ある本件商標は類似商標というべきであり、まさに商標法第4条第1項第1
1号に該当する商標となっているのである。
該異議決定では、商標法第4条第1項第11号の規定の適用について取引
の実情には全く言及せず、単に語尾の称呼が「ト」と「タル」で異なるとい
う点のみを判断しているが、この判断はあまりにも形式的に過ぎる。取引の
実情を明らかにし得る本件のような場合にあってこれを無視することは、商
標法第4条第1項第11号に該当し、出所混同の防止を図った法の趣旨にも
反する。
4 以上、本件商標「キシリデンタル」は、引用商標「キシリデント」とは僅かに語尾の「タル」と「ト」が相違するに過ぎず、取引の実情を考慮すれば、本件商標は引用商標に類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁をしていない。

第5 当審の判断
1 称呼上の類否について
本件商標は、前記のとおりの構成よりなるから、その構成文字に相応し、「キシリデンタル」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「キシリデント」の片仮名文字に相応し、「キシリデント」の称呼を生ずるものというを相当とする。
そこで、本件商標より生ずる「キシリデンタル」と引用商標より生ずる「キシリデント」の称呼とを比較するに、両商標は、それぞれ7音及び6音中「キシリデン」の5音を共通とし、「タル」と「ト」の語尾の差異を有するのみである。
そして、この差異は、 いずれも、子音「t」音で始まり、「タ」及び「ト」の音は比較的類似する音であって、本件商標の末尾の「ル」の音は、弱く発音されるものと認められる。
そうすると、両商標は、7音及び6音中の5音を共通とし、共通部分は、両商標において、語頭部分であり、かつ、アクセントの存する部分であって、差異部分は、前記程度の小さいもので、その印象は薄く、商標全体に与える影響は小さいところから、本件商標の称呼は、全体として、引用商標の称呼と相紛らわしく、互いに聴き誤るおそれがあり、両商標は、称呼において類似するというを相当とする。
2 観念上の類否について
本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないから、観念において類似するとはいえないが、その差異は、取引者、需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものではない。
3 外観上の類否について
本件商標及び引用商標を外観について見ると、両商標とも、図形部分や装飾の施された文字部分を有しないものであって、外観において類似するとはいえないが、その差異は、取引者、需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものではない。
4 引用商標の周知性について
請求人の提出に係る甲各号証によれば、次の事実が認められる。
キシリトールは、糖質の天然素材甘味剤であり、虫歯を予防する効果のあることが知られており、請求人は、平成9年10月、歯磨き業界初のキシリトール入り歯磨きの新製品「キシリデント」の発売を開始した(甲第2号証ないし同第5号証)。請求人は、「キシリデント」について、同9年7月から12月までの間に6億3千百万円(甲第10号証)、同10年上半期に4億2千2百万円(甲第11号証)の広告宣伝費を支出している。その中で、「キシリデント」の販売数は、同9年下期から同11年1月までの間に120グラムサイズの商品で521万6千個が、子供用で72万3千個、合計で593万9千個に及んでいる(甲第12号証)。また、需要者の認知度という観点では、「キシリデント」のブランド名は、同10年12月の調査で77.6%の助成想起知名率(ブランド名を呈示した上で、その名前が知られている割合。)を有していた(甲第13号証)。
したがって、これらの事実を総合すれば、引用商標の付された歯磨きである「キシリデント」について、同9年10月の発売前後半年間に6億円を超える莫大な広告宣伝費が支出される等の積極的な広告宣伝がされ、このこと等により、同9年下期に約82万個、同10年上期に約245万個、同10年下期に約169万個が販売されたのであって、引用商標は、発売後短期間のうちに、急速に取引者、需要者の間で広く知られるに至ったものであり、本件商標の登録査定時である同10年10月2日当時、既に本件商標の指定商品に含まれる「歯磨き」について、請求人の商品を表示するものとして、取引者、需要者間に周知であったことが認められ、これに反する事実はない。
5 結語
以上によれば、本件商標及び引用商標は、称呼において類似するものであり、外観及び観念は、類似するとはいえないが、その差異は、取引者、需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものではないから、称呼の類似性をしのぐものではなく、両商標の類似を妨げるような取引の実情もうかがわれないから、これらの事情を総合して観察すれば、両商標は互いに類似する商標であるといわざるを得ない。
また、引用商標は、本件商標の登録査定時において、既に、本件指定商品中「歯磨き」について、請求人の商品を表示するものとして、取引者、需要者間に周知であり、このことは、「歯磨き」について、出所混同のおそれを増幅させるという事情である上、他の指定商品についても、商品出所の混同のおそれを増幅させる可能性のある事情ということができるから、このような取引の実情を参酌するならば、両商標に係る商品出所の混同のおそれは、一層増幅させられるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 引用商標


審理終結日 2001-04-09 
結審通知日 2001-04-20 
審決日 2001-05-09 
出願番号 商願平9-136561 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (Z03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大島 勉 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 柳原 雪身
米重 洋和
登録日 1998-11-13 
登録番号 商標登録第4210767号(T4210767) 
商標の称呼 キシリデンタル 
代理人 小谷 武 
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