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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 024
管理番号 1063370 
審判番号 無効2000-35382 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-14 
確定日 2002-08-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4163407号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4163407号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4163407号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成8年2月16日に登録出願、第24類「織物(畳べり地を除く。),メリヤス生地,フェルト及び不織布,布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳」を指定商品として、平成10年7月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(A)登録第1387409号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和50年9月18日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同54年8月30日に設定登録されたものである。
(B)登録第1742581号商標(以下「引用B商標」という。)は、「EMPORIO ARMANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和57年6月19日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同60年1月23日に設定登録されたものである。
(C)登録第2204518号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、昭和59年12月5日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成2年1月30日に設定登録されたものである。
(D)登録第3127123号商標(以下「引用D商標」という。)は、別掲(4)のとおりの構成からなり、平成5年3月4日に登録出願、第25類「帽子,その他の被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同8年3月29日に設定登録されたものである。
(E)登録第4132921号商標(以下「引用E商標」という。)は、「アルマーニ」の片仮名文字を横書きしてなり、平成8年7月30日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊被服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年4月10日に設定登録されたものである。
(F)登録第1676476号商標(以下「引用F商標」という。)は、「GIORGIO ARMANI」の欧文字を横書きにしてなり、昭和56年7月28日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同59年4月20日に設定登録されたものである。
(G)登録第1920034号商標(以下「引用G商標」という。)は、「EMPORIO ARMANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和59年8月1日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同61年12月24日に設定登録されたものである。
(H)登録第1941608号商標(以下「引用H商標」という。)は、別掲(5)のとおりの構成からなり、昭和59年12月5日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同62年3月27日に設定登録されたものである。
(I)登録第3123225号商標(以下「引用I商標」という。)は、別掲(6)のとおりの構成からなり、平成5年3月4日に登録出願、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として、同8年2月29日に設定登録されたものである。
(J)登録第1640446号商標(以下「引用J商標」という。)は、「Giorgio Armani」の欧文字と、「ジョルジョアルマーニ」の片仮名文字を上下二段に書してなり、昭和52年3月15日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同58年12月26日に設定登録されたものである。
(K)登録第1941539号商標(以下「引用K商標」という。)は、「EMPORIO ARMANI」の欧文字を横書きしなり、昭和59年8月1日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同62年3月27日に設定登録されたものである。
(L)登録第2076955号商標(以下「引用L商標」という。)は、別掲(7)のとおりの構成からなり、昭和59年12月5日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同63年9月30日に設定登録されたものである。
(M)登録第2198023号商標(以下「引用M商標」という。)は、別掲(8)のとおりの構成からなり、昭和62年2月23日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成1年12月25日に設定登録されたものである。
(N)登録第2137697号商標(以下「引用N商標」という。)は、「EMPORIO ARMANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和61年12月3日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成1年5月30日に設定登録されたものである。
(O)登録第2211610号商標(以下「引用O商標」という。)は、「GIORGIO ARMANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和61年12月3日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成2年2月23日に設定登録されたものである。
(P)登録第2653840号商標(以下「引用P商標」という。)は、「ARMANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和63年2月10日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成6年4月28日に設定登録されたものである。
(Q)登録第4076267号商標(以下「引用Q商標」という。)は、別掲(9)のとおりの構成からなり、平成5年3月4日に登録出願、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器,貴金属製の花瓶および水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消しおよびろうそく立て,貴金属のがま口および財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉およびその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて」を指定商品として、同9年10月31日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張並びに答弁に対する弁駁の要旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由並びに答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第103号証(枝番号を含む。)を提出している。
1.商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、その構成中に他人の著名な略称「ARMANI」(アルマーニ)を含むものであり、その他人の了承を得ているものではないから、商標法第4条第1項第8号に該当し、無効にすべきものである。
2.商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の略称及び請求人が使用する商標として著名な各引用商標の略称である「ARMANI」(アルマーニ)と同一の文字をその構成中に有するものであるから、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、あたかも請求人若しくはジョルジオ アルマーニ又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品、又はそのシリーズ商品であるかのごとく認識し、その商品の出所について誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当し、無効にすべきものである。
3.デザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称「ARMANI」及び各引用商標の著名性について
(1)請求人は、世界的に著名なイタリアのデザイナーである「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の設立した会社であり、そのデザインに係る商品の取り扱い及び商標権等の知的財産権の管理を行っており、各引用商標の実質的な権利者である。
イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)は、1975年にイタリアで紳士・婦人物既製品を扱うファッション・デザイン会社「ジョルジオ アルマーニ社」を設立して以来、「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の商標を付した紳士・婦人用既製服を製作、販売すると共に、1981年にはブランド「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)を発表した(甲第22号証及び甲第23号証)。これらの他に、彼の手がけた主なブランドとしては、カジュアルウェアの「ARMANI JEANS」、婦人服の「MANI」、その他「ARMANI」、「A/X ARMANI EXCHANGE」、「GIO」等がある(甲第24号証及び甲第25号証)。
彼のデザインする上記各ブランドに係る商品は、紳士・婦人服だけではなく、ネクタイ・靴下・帽子・手袋・傘・眼鏡等の他、これらの商品と同一の流通経路、販売店で取り扱われるハンドバック、革小物等、さらには香水をはじめとした化粧品をも含み、非常に広範囲にわたっている(甲第24号証及び甲第25号証)。そして、これらの各ブランドに係る商品は、そのデザイン及び品質において大変に優れていたことから、イタリアの国内のみならず、日本を含む世界各国に商品が輸出されるようになった。中でも、男性用の衣服については、世界的にも注目を浴びるようになり、世界のファッションショーの檜舞台ともいうべきミラノコレクション、パリコレクション、ニューヨークコレクション、東京コレクションで次々に発表し、1979年には「ニーマン・マーカス賞」、1980年、1981年、1984年、1986年、1987年の5度にわたり「カティ・サーク国際トップ・ファッション・メンズ・デザイナー賞」、1981年には最高のファッション・デザイナーを選ぶ「G/Q」雑誌より「メンズ・スタイル賞」、1983年にはアメリカ・ファッション・デザイナー協会より「国際デザイナー賞」、1988年にはアメリカ・ファッション・デザイナー協会より「メンズウェア・ライフタイム・アチーブメント賞」、マドリッドにて国際ベスト・デザイナーとして「クリスタル・バレンシアガ賞」、1989年には日本で繊研新聞より「繊研賞」等、数多くの賞を受賞した。
こうして「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)は、その名を知られるに至り、今や“イタリアモード界の征服者”又は“キングオブブレザー”のように呼ばれ、ファッション・デザイナーの世界的大御所となったものである(甲第19号証及び甲第42号証)。また、彼のデザインする衣服が世界的に知られるようになったことから。度々映画の衣装にも取り上げられるようになり、映画「ブーメラン」で俳優エディ マーフィーが彼のデザインした服を着(甲第20号証)、さらに映画「逃亡者」で俳優ミッキー・ロークが彼のデザインした服を着(甲第21号証)、またこれらの映画がいずれも世界的に大ヒットしたことなどから、デザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の名声は益々高まった。
こうしてデザイナーとしての彼の名声は上がり、それの付随して彼のデザインする商品に付された商標に業務上の高い信用が化体するにつれ、そうした信用にフリーライドする模造品が世界各国で出回るようになってきた。請求人は「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)のデザインする商品に化体した高い信用を保護すべく、上述の各ブランドに係る商品を指定商品として、世界各国で商標の登録を取得しているものである。 また、紳士・婦人服、ネクタイ、靴下、帽子、手袋、傘、眼鏡、ハンドバック、革小物、化粧品等の各ブランドに係る商品に実際使用している商標は、「GIORGIO ARMANI」のみならず、単に「ARMANI」の文字のみのもの、或いは「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI JEANS」、「GIORGIO ARMANI JUNIOR」等の「ARMANI」と他の文字との結合したもの等、様々な構成、態様のものが存在し(甲第2号証ないし甲第38号証及び甲第41号証)、これらの商標が付された商品は、いずれも彼のデザインした商品として高い信用を得ているものである(甲第19号証)。
(2)日本における著名性
彼のデザインする上記各ブランドは、日本においても上記の取り扱いに係る商品を指定商品として商標登録を取得し(甲第2号証ないし甲第18号証及び甲第41号証)、「ジョルジオ アルマーニ ジャパン 株式会社」を設立して、東京、大阪、名古屋、神戸、札幌等の日本各地に直営店を設けて販売の強化を図ってきたところであり、その売り上げも平成7年で約150億円にも達するほどである(甲第38号証)。
特に日本においては、紳士服をはじめとするこれらの各ブランドに係る商品は、「アルマーニのスーツ」、「アルマーニのジャケット」、「アルマーニの服のように「アルマーニの○○○」と呼ばれ、いずれも洗練された高品質の商品であり、請求人の長年にわたる継続的な努力によって、世界の超一流品として極めて高い信用が形成されるに至ったものである。
こうした請求人の継続的な信用蓄積のための努力の結果、日本においても、デザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)及びその略称である「ARMANI」(アルマーニ)の名が専門業者のみならず、一般消費者にも広く知られるに至り、彼本人及びそのデザインがファッション誌や雑誌、書籍にも多く取り上げられた(甲第22号証ないし甲第35号証)。さらにデパート主催の写真展も開催されたほか(甲第36号証)、新聞、テレビ上でも数多く取り上げられ(甲第37号証)、その結果、デザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)は、そのフルネームのみならずその略称である「ARMANI」(アルマーニ)と共に、いまや老若男女を問わず誰でもが知っている程著名になっているということができる。
以上に述べたイタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称「ARMANI」及び各引用商標の著名性については、特許庁における登録異議の申し立て(甲第61号証ないし甲第69号証及び甲第99号証))において認められていることからも明らかであり、例えば、『請求人の引用する「GIORGIO ARMANI」の文字よりなる商標は、「ARMANI」の文字部分をもって「アルマーニ」と略称され、これが請求人である「ジェ ア モドゥフィヌ ソシエテアノニム」が、その取り扱いに係る商品「紳士・婦人服、ネクタイ、靴下、帽子、手袋、傘、眼鏡、ベルト、ハンドバッグ、宝飾品」等に使用した結果、請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして、少なくとも本件商標の登録前より、我が国の取引者、需要者の間に広く知られ周知著名となり現在に至っているものであると言い得るものである。』のように認められている。
なお、「GORGIO ARMANI」のブランドが世界的に著名であり、その模倣が多くあることから、その保護活動を世界的に行なっていることは、フランス国公益社団法人ユニオン デ ファブリカンも認めているところである(甲第39号証及び甲第40号証)。
したがって、本件商標の出願当時1996(平成8)年にはもちろん、その査定時である1998(平成10)年においても、デザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)及びその略称であり登録商標でもある「ARMANI」(アルマーニ)、そして彼のデザインする各ブランドに係る商品に付された各引用商標は、いずれも需要者・取引者の間に広く知られ、著名に至っているものであるといえる。
4.出所混同について
本件商標権者「瀧定株式会社」による本件商標と全く同一の構成からなり、第25類の商品を指定商品とする商標出願が(商願平8-15175号)、審査段階において著名な略称「ARMANI」を含むものであるから、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると認められ、拒絶査定がなされている。また、著名な略称「ARMANI」を含み、本件商標と同様に第24類「織物」等をその指定商品とする商標出願(商願平9-131013号、商願平8-123073号、商願平9-111688号、商願平9-138190号 )が、同様に審査段階において商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると認められ、拒絶査定がなされている。
かかる事実にかんがみれば、その構成中に著名な略称「ARMANI」を含み、第24類「織物」等をその指定商品とする本件商標についても、同様に商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることは明らかであると思料する。
本件商標は、「MARIOT ARMANI」の頭文字をとった略称と認識されるアルファベット「MA」の文字と「MARIOT ARMANI」の文字とを二段書きにした構成からなり、そこから「エムエーマリオットアルマーニ」又は「マリオットアルマーニ」の称呼を生ずるものである。かかる構成からなる本件商標は、上述のように世界的に著名なイタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称及び請求人及びジョルジオ アルマーニの使用する著名な商標「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)」の略称である「ARMANI」(アルマーニ)と同一の文字をその構成中に含んでおり、またその構成全体としては、何等の意味観念を生ずるものではない。さらに、請求人は本件商標と同一の指定商品「織物」等を含む商標「GORGIO ARMANI」(商標登録第1646870号)」及び「EMPORIO ARMANI」(商標登録第2198013号」を使用している(甲第101号証)。また、前述のように、請求人が商品に実際使用している商標は、「GIORGIO ARMANI」のみならず、「EMPORIO ARMANI」等の「ARMANI」と他の文字とが結合したもの等があり、しばしばこれらの商標は「GIORGIO ARMANI」は「GA」、「EMPORIO ARMANI」は、「EA」のように略称され、鷲の図形と共に使用されている(甲第19号証ないし甲第42号証)。さらに、これらの各商標を付して取引されている商品は、本件指定商品に含まれる商品を含めて非常に広範囲な商品にわたり、いずれも著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の名の下に高い信用が形成されているものである。ここで、これらの各商標が付された商品に接する取引者・需要者は、いずれも著名な「ARMANI」の文字が含まれていることから、その商品をアルマーニのデザインに係る商品として認識するのが通常である。
以上のことから、本件商標登録出願前にすでに、請求人が「GIORGIO ARMANI」「EMPORIO ARMANI」等の「ARMANI」の文字を含む商標を様々な商品に使用し、また「ARMANI」及び「GA」及び「EA」のように略称され、著名に至っていたことを勘案するならば、「MARIOT ARMANI」の文字とその略称として認識される「MA」の文字から構成され、また全体としては何ら特定の意味観念を生じない本件商標が、その指定商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、そこから著名商標である「ARMANI」の文字のみを分離又は抽出して認識するものであるから、あたかも本件商標が付された商品が請求人若しくはジョルジオ アルマーニ又はその関連会社の取り扱いに係る商品、特に世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」の「デザインする商品又はそのシリーズ商品としての「MARIOT ARMANI」であるかのごとく認識し、アルマーニブランドの1つであるとして、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。なお、出所混同のおそれについては、「ARMANI」(アルマーニ)の文字を含む各商標(甲第61号証ないし甲第98号証)が、特許庁の審査において、著名な略称「ARMANI」を含むものであるから、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると認められていることからも明らかである。
なお、平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決平成10年(行ヒ)第85号審決取消請求事件においても、『商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。』と認めており(甲第100号証)、かかる判断にかんがみても、本件商標は、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。
5.答弁に対する弁駁の要旨
(1)商標法4条第1項第8号について
被請求人は本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当しない理由として、「外国人物レファレンス事典」、「ARMANI computersのHP」「商公平5-103153号公報」(乙第2号証ないし乙第4号証)を提出し、「ARMANI」が欧米において別段珍しいものではないことを主張する。しかしながら、「外国人物レファレンス事典」においては、「ARMANI」を含む人名はたったの一人しか掲載されておらず、これのみをもって「欧米において珍しい姓ではなく、しばしば見受けられるありふれた姓」であるとはいえない。同様に「ARMANI computersのHP」及び「商公平5-103153号公報」についても、スロベニア共和国及びイタリア国にそのような法人がわずか1つのみ存在しているだけであり、これらのみをもって商号として何ら珍しいものではないとはいえない。むしろこれらの証拠によって、「ARMANI」の姓が欧米において珍しい姓であり、しばしば見受けられるものではないこと、及び商号としても珍しいということが証明されるというべきである。
次ぎに、被請求人は「’90海外ブランド年鑑(乙第5号証)を提出し、請求人の著名商標がどこにも挙がっておらず、イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」については、「ARMANI」の略称で著名になっているという格別の事情は全くないと主張する。しかしながら、略称「ARMANI」の著名性については、請求書において述べたとおり明らかであり、またこの「海外ブランド年鑑」は、1990年発行のものであって、その知名度等の調査時も単に昭和59年、61年、63年時点のものにすぎず、かかる証拠のみをもって本件商標出願以前より「GIORGIO ARMANI」が「ARMANI」の略称で著名になっているという格別の事情は全く認められないとはいえない。
また、被請求人は、デザイナーブランドの商品が多数流通している昨今では、「MARIOT ARMANI」という人物の姓名を商標として採択したデザイナーブランドの一つとして認識されるものであるから、単に「アルマーニ」と略称されることは有り得ず、姓名として一体に認識されるものであると主張する。しかしながら、かかる主張はイタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称としての「ARMANI」の著名性を全く無視した主張であり、また「外国人物レファレンス事典」(乙第6号証)に「Mariotto di Nardo」なる画家が記載されていることは、「ARMANI」が著名な略称でないことの何ら根拠となるものではない。
さらに、被請求人は、人格保護の観点から見ても、イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」との関係で、商標法第4条第1項第8号には該当しないと主張するが、「ARMANI」が著名な略称であり、またその構成中に他人の著名な略称を含むものである以上、商標法第4条第1項第8号に該当することは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない理由として、本件商標の図形部分は、単なるアルファベットの文字ではなく、自他商品識別力を有するモノグラム風の図形と理解されるべきであるから、文字のみからなる商標以上に図形部分に自他商品の識別力が生じるとし、特に外観上の差異を強く主張している。しかしながら、本件商標が図形部分と文字部分から構成され、それぞれの部分が独立して認識される部分であると言えるものである以上、本件商標の文字部分は文字のみからなる商標と同様に判断されて然るべきであり、特に取引の実際において本件商標が称呼される場合には、「マリオット アルマーニ」と称呼されるものであるから、かかる場合に、「アルマーニ」の称呼が含まれることで、本件商標は十分に出所混同が生ずるおそれがあるというべきである。
また、被請求人は本件商標と引用各商標が非類似であるから、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれは認められないと主張し、「VALENTINO」に関する商標登録異議決定を引用している(乙第7号証ないし乙第9号証)。しかしながら、これらの商標登録異議決定と本件審判事件とを同列に考えるべきではないことは明らかである。すなわち、「ARMANI」は、「VALENTINO」「バレンチノ」とは異なり、イタリア国においてありふれた氏又はありふれた男子名とはいえないものであり、被請求人は、これに対して「ARMANI」を含む人名がたったの一人しか掲載されていない「外国人物レファレンス事典」(乙第2号証)を提出するのみである。また、「VALENTINO」の文字部分は、上記異議決定においても認められているように、「VALENTINO GARAVANI」のほか、「MARIO VALENTINO」等、複数の特定人を表す場合があり、その点においてありふれたといえる場合はあっても、「ARMANI」の場合にはそのような事情はない。したがって、「ARMANI」がありふれた氏又はありふれた男子名ではない以上、上記異議決定における「VALENTINO」「バレンチノ」と「ARMANI」「アルマーニ」とを同列に考えるべきではない。
さらに、被請求人は「ARMANI」の文字を含む登録商標が多数存在すると主張している。しかしながら、請求人は、これらの登録商標に対し、無効審判請求、取消審判請求、登録異議申立を行っている。
また、被請求人は、請求人が提出した甲第19号証ないし甲第42号証からは「ARMANI(アルマーニ)」の語が、出願人の出所を表示するものとして取引者・需要者間に著名となっていることを立証するのに十分な証拠を提出しているとは到底認められないと主張する。しかしながら、平成11年審判35651号(甲第102号証)の審決においては、請求人が審判請求書において提出した証拠と同一の証拠(甲第19号証ないし甲第42号証)によって、「ARMANI(アルマーニ)」標章の著名性が認められている以上、本件審判事件においても同様に「ARMANI(アルマーニ)」標章の著名性が認められるべきである。このように、甲第19号証ないし甲第42号証によって、「ARMANI(アルマーニ))標章が請求人の出所を表示するものとして取引者・需要者間に著名となっていることを十分に立証できるというべきである。
また、この点につき、被請求人は、請求人による「EMPORIO TOCCANI」に対する登録異議申立事件を引用し、同じ証拠資料である「MEN’S CLUB」1991年1月号(甲第23号証)(「EMPORIO TOSCANI」に対する登録異議申立事件における甲第27号証及び甲第28号証)に基づいて「EMPORIO」と主張する一方で「ARMANI」と略称されて著名であると主張するのは、矛盾すると主張する。しかしながら、甲第22号証及び甲第23号証(「EMPORIO TOSCANI」に対する登録異議申立事件における甲第27号証及び甲第28号証)においては、上述した「ARMANI(アルマーニ)」標章の記載が多数あるだけではなく、「EMPORIO(エンポリオ)」標章の記載も多数存在する。すなわち、甲第22号証及び甲第23号証(「EMPORIO TOSCANI」に対する登録異議申立事件における甲第27号証及び甲第28号証)によって、「ARMANI(アルマーニ)」標章及び「EMPORIO(エンポリオ)」標章の著名性が共に立証されるものであるから、同一の証拠によってそれぞれ主張したまでのことであって、それについては何ら矛盾するものではない。
また、被請求人は、15号の適否を検討する際には、指定商品との関係で当該商標の著名性を判断する必要があると述べ、本件商標は「紳士・婦人服、ネクタイ、靴下、帽子、手袋、傘、眼鏡、ベルト、ハンドバッグ、宝飾品」等の商品に使用するものではないと主張する。しかしながら、かかる主張は取引の実情及び「ARMANI(アルマーニ)」に代表されるような著名ブランドに見られる多角経営の可能性を全く無視した主張であり、むしろ本件商標はまさにその指定商品との関係で引用商標と出所混同が生ずるものであるというべきである。すなわち、本件指定商品は「織物(畳べり地を除く。),メリヤス生地,フェルト及び不織布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳」であるが、この指定商品中例えば「布製身の回り品」には、「タオル、ハンカチ、ポケットチーフ」などが含まれ、これらの商品はいわゆるファッション小物と呼ばれるものであり、「ネクタイ、靴下、帽子、手袋、傘、眼鏡、ベルト」等の商品と流通経路を同一にするほか、同一の店舗で販売されるものであり、また需要者も同一である。したがって、本件指定商品の「織物」等は「ARMANI(アルマーニ)」標章が使用される商品と密接に関連する商品というべきである。

第4 答弁の要旨及び職権による証拠調べに対する意見の要旨
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第26号証を提出し、また、職権による証拠調べに対する意見を要旨以下のように述べている。
1.商標法第4条第1項第8号について
(1)乙第2号証の「外国人物レファレンス事典」には、「Giacomo Armani(ジャコモ アルマーニ)」なるイタリアの指揮者が記載されていることからも明らかなように、「ARMANI」は、欧米において別段珍しい姓ではなく、しばしば見受けられるありふれた姓であることが認められる。また、例えば、スロベニア共和国には、「ARMANI Computers」なる名称の法人(乙第3号証)が存在し、イタリア国には「コンチ・アルマニ・エッセ・エルレ・エルレ」なる法人(乙第4号証)が存在することにより、「ARMANI」の語は、商号として見ても、何ら珍しいものではないことは明らかである。そして、例えば、乙第5号証の「海外ブランド年鑑」において、「総合知名度ベスト30ブランド」、「社会人女子ベスト30ブランド」、「大学生女子知名度ベスト30ブランド」、「大学生男子知名度ベスト30ブランド」の頁を見ると、請求人が著名だとする「GIORGIO ARMANI」、「EMPORIO ARMANI」等のブランドは、どこにも挙がっていない状況が認められる。
ところが、上記のような状況において、請求人は、イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」に係る「GIORGIO ARMANI」、「EMPORIO ARMANI」等のブランドが著名であり、「ARMANI」の語は、上記デザイナーの略称として取引者・需要者間に広く知られていると主張している。しかし、姓だけによってもなお、当該人を明らかに認識し得るがごとき格別の事情があればともかく、前述のように、
「ARMANI」は、欧米においてありふれた姓であると認められること、請求人が著名だと主張する「GIORGIO ARMANI」、「EMPORIO ARMANI」等のブランドは、知名度ランキングの上位30位に入ることもできない程度の認識度しかないこと等をかんがみれば、イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」については、「ARMANI」の略称で著名になっているという格別の事情は、全く認められないと判断されるべきである。この点は、例えば、請求人が提出した甲第22号証の雑誌「MEN’S CLUB」の目次欄において、「ジョルジオ・アルマーニに学ぶ」と表示されており、本文中でも、「GIORGIO ARMANI」「ジョルジオ・アルマーニ」と必ず姓名全体で紹介されていることを見ても明らかである。
(2)乙第6号証の「外国人物レファレンス事典」には、「Mariotto di Nardo(マリオット・ディ・ナルド)」なるイタリアの画家が記載されていることからも明らかなように、本件商標の文字部分の前半部「MARIOT」は、欧米人の名と理解されるものである。そして、我が国において、デザイナーの姓名をブランド名としたいわゆるデザイナーブランドの商品が多数流通している状況において、「織物(畳べり地を除く。)」等の商品に使用される本件商標も、「MARIOT ARMANI」という人物の姓名を商標として採択したデザイナーブランドの一つとして認識されるものである。したがって、デザイナーブランドの商品が多数流通している昨今では、姓名が特定されて、初めてどのデザイナーブランドを指すかが取引者・需要者に理解されると言うべきであるから、我が国においても外国においても、「ARMANI」のようなありふれた欧米人の姓を含むブランドが、単に、「ARMANI」と略称されることは有り得ず、姓名として一体に認識、把握されると判断するのが自然である。
(3)そもそも、4条第1項第8号が、他人の氏名の著名な略称等を含む商標で、その他人の承諾を得ていないものについて、登録を拒絶すべき旨を規定している理由は、このような商標が使用されていることにより、他人がこれを不快とし、その人格名声等を損傷せられたものであると主張することが社会通念上一般的に認められるような場合について、人格保護の見地から、その承諾を必要としているものにほかならない。そうだとすれば、本件商標の文字部分「MARIOT ARMANI」のように、「GIORGIO ARMANI」とは何ら関係も有さないある欧米人の姓名を表したものと理解され、その採択の趣旨が明らかであるような場合においては、例え後半部「ARMANI」の文字を共通にするとしても、本件商標の使用により、イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」の人格、名声を損傷するようなことは、経験則に照らして到底想像し得ないところである。
したがって、本件商標は、人格保護の観点から見ても、イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」との関係で、商標法第4条第1項第8号には該当しにものと判断される。
2.商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標は、小文字の「m」と大文字の「A」を左右に接するように配置したモノグラム風の図形の下部に、同大・同書かつ横一連に「MARIOT ARMANI」と書してなる商標である。
これに対して、請求人が、イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」が紳士服等の商品に使用して、本件商標の登録出願前既に著名であったと主張する商標は、「GIORGIO ARMANI」又は「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」、「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI」又は「アルマーニ」である。したがって、それぞれ対比してみると、本件商標は、顕著に大きく表示された「mA」図形の視覚的印象が極めて強いため、前記商標とは、判然と区別し得る外観構成上の差異を有するものと認められる。請求人は、本件商標の「mA」図形について、『「MARIOT ARMANI」の頭文字をとった略称と認識されるアルファベット「MA」の文字』であると主張するが、本件商標の図形部分は、単なるアルファベットの文字ではなく、自他商品識別を有するモノグラム風の図形と理解されるべきである。そして、請求人は、自己の商標についても、『しばしばこれらの商標は「GIORGIO ARMANI」は「GA」、「EMPORIO ARMANI」は、「EA」のように略称され、鷲の図形と共に使用されている』と主張しているが、請求人が使用する鷲の図形と本件商標の構成中の「mA」図形が、全く別異のもので混同する余地のないことは詳述するまでもない上、請求人が提出した甲第19号証ないし甲第42号証は、「GA」及び「EA」の略称や鷲の図形が、取引者・需要者間に広く知られていることを立証するのに十分な証拠であるとは到底認められないものである。このように、構成中に「mA」図形を含む本件商標は、文字のみからなる商標以上に図形部分に自他商品の識別力が生じるため、文字のみからなる商標の審査例、登録異議の決定例等を多数あげている請求人の証拠方法は、当を得たものではないと判断される。
(2)本件商標の文字部分は、同大・同書かつ横一連に構成され、前半の「MARIOT」と後半の「ARMANI」を比較しても、特に軽重の差を見出すことのできないものである。また、観念上も、全体としてある欧米人の姓名を表したものとして一体的に認識されると見るのが相当である。そして、これより生ずる「マリオットアルマーニ」の称呼も格別冗長ではなく、よどみなく一連に称呼できるものであるため、「GIORGIO ARMANI」又は「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」、「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI」又は「アルマーニ」の称呼「ジョルジオアルマーニ」、「エンポリオアルマーニ」、「アルマーニ」とは十分に聴別し得ることが明らかである。
したがって、このような別異の非類似の商標が、本件商標の指定商品に使用されたとしても、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれは認められないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しないものである。
本件商標のように、ある欧米人の姓名を表したものと容易に認識され、観念上も一体に構成されている商標に対し、後半の姓の部分のみをことさら分離観察して商標法第4条第1項第15号を適用することが相当でないことは、平成9年異議第90540号商標登録異議決定、平成9年異議第90341号商標登録異議決定、平成9年異議第90832号商標登録異議決定からも明らかである。特に、平成9年異議第90540号商標登録異議決定では、15号の適否の争点となった「VALENTINO」「バレンチノ」の文字部分について、『イタリア国においてありふれた氏に該当するもの』であるから、デザイナーとして著名な「Valentino Garavani」を指称するとみるべき特段の事情は見出せない』との判断が示されている。本件審判事件においても、前述のように、「ARMANI」は、欧米においてありふれた姓と認められるものであるため、同異議決定と同様に、15号を適用するのは相当ではないと判断されるべきである。
さらに、「ARMANI」の文字を含む登録商標(登録第2695160号、登録第3370540号、登録第3370718号、登録第3370928号、登録第4048399号、登録第4061612号、登録第4122715号、登録第4206005号、登録第4225057号、登録第4243116号)が、多数存在する事実にかんがみる時、本件商標が、構成中に「ARMANI」の文字を含むため商標法第4条第1項第15号に該当するとの請求人の主張は、全く根拠がないといわなければならない。
請求人は、本件商標と同一の態様の第25類の出願商標についての審査例を引用して、本件商標についても商標法第4条第1項第15号を適用すべきであると主張するが、15号も適否を検討する際には、指定商品との関係で当該商標の著名性を判断する必要があるところ、登録第4061612号商標の指定商品「敷き物,壁掛け(織物製のものを除く。)」は、本件商標の指定商品「織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳」の部分と類似し、また、登録第4122715号の指定商品「クッション,座布団,まくら,マットレス」は、本件商標の指定商品「かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」の部分と類似するものであるから、本件審判事件では、両登録商標の審査結果の方を重視すべきである。
請求人は、「GIORGIO ARMANI」又は「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」、「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI」又は「アルマーニ」の各商標を、「紳士・婦人服、ネクタイ、靴下、帽子、手袋、傘、眼鏡、ハンバック、革小物、化粧品」等の商品に実際に使用していると述べているが、本件商標は、上記商品に使用する商標ではない上、前述の登録商標が、それぞれの区分で認められている事実からすれば、上記商品に使用される「GIORGIO ARMANI」又は「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」、「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI」又は「アルマーニ」の商標が、「ARMANI(アルマーニ)」と略称されて著名だとする出願人の主張は、失当であるといわざるを得ない。そもそも、請求人が提出した甲第19号証ないし甲第42号証からは、請求人が、専ら「GIORGIO ARMANI」又は「EMPORIO ARMANI」の商標を使用して自他商品の識別を行っていることが認められるのみで、「ARMANI(アルマーニ)」の語が、出願人の出所を表示するものとして取引者・需要者間に著名となっていることを立証するのに十分な証拠を提出しているとは到底認められない。むしろ、請求人は、例えば、「EMPORIO TOSCANI」なる商標(乙第19号証)に対する登録異議申立事件では、『特に「EMPORIO ARMANI」ブランドの場合、「GIORGIO ARMANI」のラインと区別するため、しばしば「EMPORIO」(エンポリオ)と略称されて雑誌等に紹介されている』と主張していたことが認められる(乙第20号証)。そして、この登録異議申立事件は、もとより成り立たないものと異議決定されているが(乙第21号証)、「EMPORIO ARMANI」なる商標が「EMPORIO(エンポリオ)」と略称されて著名であることを立証する目的で、乙第20号証の審判事件において提出された甲第27号証及び甲第28号証の証拠資料(乙第22号証)は、本件審判事件の審判請求書に添付された甲第22号証及び甲第23号証と同じものと認められる。このように、同じ証拠資料に基づいて、今度は「ARMANI(アルマーニ)」と略称されて著名だと主張することは矛盾しており、到底認められないといわなければならない。
また、以上述べてきた被請求人の主張が相当であることは、平成9年第90772号登録異議申立事件(乙第23号号証)の決定を見ても明らかである。
以上説明したように、「ARMANI」の文字は、欧米においてありふれた姓であって、イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」を指称する著名な略称とは認められないから、本件商標は、商標法第4条
第1項第8号には該当しないものである。
また、本件商標は、顕著に大きく表示された「mA」図形によって「GIORGIO ARMANI」又は「Giorgio Armani/ジョルジョアルマーニ」、「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI」又は「アルマーニ」の商標とは視覚的印象が明らかに相違する上、「MARIOT ARMANI」の文字部分は、ある欧米人の姓名を表したものとして一体に認識され、「マリオットアルマーニ」の一体の称呼のみを生じるから、「ARMANI」の部分だけが分離観察されて出所混同を生ずるおそれはないと認められる。したがって、本件商標は、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれは認められず、商標法第4条第1項第15号にも該当しないものである。
3.弁駁に対する答弁の要旨
(1)商標法第4条第1項第8号について
請求人が提出した甲第19号証ないし甲第42号証の雑誌、書籍、パンフレット等においては、「GIORGIO ARMANI」あるいは「「ジョルジオ アルマーニ」とフルネームで表示されている部分の方が圧倒的に多数を占めているのであるから、これらの証拠より、「ARMANI」の略称によってデザイナー「Giorgio Armani」が特定されるとは到底認められない。したがって、請求人が提出した甲各号証によっては、商標法第4条第1項第8号が要求する当該他人の略称についての著名性の要件は、未だ立証されていないと言わざるを得ない。加えて、本件商標の構成中の「MARIOT ARMANI」の文字は、全体としてある欧米人の姓名とのみ理解されるものであって、本件商標は、前後のつながりを欠いて、不自然に「ARMANI」の文字を配した商標でないことは明らかである。請求人は、弁駁書において、被請求人が提出した乙第2号証ないし乙第4号証によっては、「ARMANI」が氏名又は商号として使用されているのはわずか3例認められるに過ぎないと主張するが、ここでは、立証例が多いか少ないかは主たる争点ではないというべきである。ただ、「Giacomo Armani」なるイタリアの指揮者が存在したこと(乙第2号証)、「ARMANI Computers」なる名称の法人がスロベニア共和国に存在すること(乙第3号証)、「コンチ・アルマニ・エッセ・エルレ・エルレ」なる名称の法人がイタリア国に存在すること(乙第4号証)は事実であって、これらの自然人の姓名あるいは法人の名称が存在することを思えば、本件商標に接する看者もごく自然に「MARIOT ARMANI」というある欧米人の姓名のみを観念することは、経験則に照らして明らかと判断されるのである。そして、人格権説の立場から検討すれば、一般に営利を目的とする法人が、本件商標の指定商品である「織物(畳べり地を除く。),メリヤス生地,フェルト及び不織布,布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳」の商品に、「MARIOT ARMANI」というある欧米人の姓名を含む本件商標を使用したからといって、イタリアのデザイナー「Giorgio Armani」がこれを不快とし、そのデザイナーの人格、名声を傷付けるものと判断することが社会通念上相当であるとは、到底認められない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、本件商標の指定商品と請求人の業務との関連性が認められないことから見ても出所混同のおそれはないとする被請求人の主張に対し、かかる主張は取引の実情及び請求人の多角経営の可能性を全く無視したものであると弁駁しているが、「monica armani」なる商標の登録が、商標審査基準の改正後においてすら「家具」の分類で認められている事実を勘案すれば、請求人が主張する多角経営性は全く疑わしいものであると言わざるを得ない。加えて、本件商標は、顕著に大きく表示された「mA」図形によって「GIORGIO ARMANI」商標とは視覚的印象が明らかに相違する上、「MARIOT ARMANI」の文字部分は、ある欧米人の姓名を表したものとして一体に認識され、「マリオットアルマーニ」の一体の称呼のみを生ずるから、「ARMANI」の部分だけが分離観察されて出所混同を生ずるおそれはないものである。
4.職権による証拠調べに対する意見の要旨
本件証拠調べ通知は、本件審判事件とは事案の異なる証拠についてなされたものに過ぎず、その対象となった証拠は、本件商標について商標法第4条第1項第8号及び同15号の適否を審理するための証拠としては極めて不適当なものである。
(1)本件審判事件では、本件商標の構成中の「ARMANI」の文字が、イタリアのデザイナー「Giorgio Armani」の著名な略称に該当するか否か争点とされるべきである。ところが、本件証拠調べ通知書において引用された証拠〔「男の一流品大図鑑」(昭和53年7月20日株式会社講談社発行)、「田中千代服飾事典」(1981年4月25日新増補第1刷同文書院発行)、「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年5月25日株式会社講談社発行)〕は、いずれもデザイナー「Giorgio Armani」のフルネームが掲載されていることを示すのみであるから、これによって、同デザイナーが「ARMANI」と略称され著名であることを認定することは、相当ではないといわざるを得ない。また、「エフピー6月号」(1991年6月1日株式会社学習研究社発行)の証拠においては、確かに「アルマーニ」と、姓のみで表示されていることが認められるが、これは書籍の表紙であるから、紙面のスペースの都合上、簡略化しなければならない事情もあったことを考慮しなければならない。加えて、本件商標とは異なるカタカナによる表記であるから、ローマ字「ARMANI」が著名な略称に相当することの証拠と認定することはできない。
したがって、前記証拠に基づいて、「ARMANI」の文字が上記デザイナーの著名な略称であることを認定し、本件商標に商標法第4条第1項第8号を適用することは到底できないというべきである。
(2)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の掲載内容について
「Giorgio Armani」が、どのような経歴を持つデザイナーであるか、どのような傾向の服をデザインするか、最近どのような映画の衣装を担当したか、仕事好きな人間であるかといったことは、本件審判事件とは何ら関係のない事柄である。また、これに記載の内容は、日本国内における事情を述べたものとは認められず、その点でも、本件審判事件に引用するのは不適当である。商標法第4条第1項第15号は、出願商標(登録商標)と著名商標との間に生ずる具体的出所の混同の有無について判断する規定であるから、対象となる商標の使用形態が明らかにされることなく、デザイナーとしての経歴や評判をいくら参酌しても全く意味のないことである。また、該「服飾辞典」の記載によれば、イタリアのデザイナー「Giorgio Armani」は、【「ジョルジョ・アルマーニ[Giorgio Armani,1935〜]】と、必ず姓名一体で表示されており、「ARMANI」と省略されないことが明らかである。したがって、この証拠は、本件商標に対して商標法第4条第1項15号を適用する根拠とはなり得ないし、商標法第4条第1項第8号を適用する根拠にもなり得ないものである。
(3)「舶来ブランド事典’84THE BRAND」(昭和58年9月28日サンケイ マーケティング発行)、「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)、「世界の一流品大図鑑’85年版」(昭和60年5月25日株式会社講談社発行)、「The一流品」(1986年4月15日読売新聞社発行)の掲載内容について
「ARMANI」という姓は、欧米において別段珍しいものではなく、本件商標は、「MARIOT ARMANI」というある欧米人のフルネームを表示した商標とのみ取引者・需要者に理解されるものであるから、「GIORGIO ARMANI」商標が付された上記デザイナーのブランドと、商品の出所について誤認混同されるおそれは全くないものである。
この点について、本件審判事件では、本件商標の出願当時、「GIORGIO ARMANI」商標が付された上記デザイナーの商品が、「ARMANI」の文字によって著名なものとなっていたか否か、本件商標をその指定商品に使用した場合に、デザイナー「Giorgio Armani」あるいは同デザイナーと何らかの関連を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがあるか否か争点とされるべきである。ところが、「舶来ブランド事典’84THE BRAND」(昭和58年9月28日サンケイ マーケティング発行)、「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)、「世界の一流品大図鑑’85年版」(昭和60年5月25日株式会社講談社発行)の各証拠は、何れもデザイナー「Giorgio Armani」のフルネームを表した「GIORGIO ARMANI」商標についての掲載を示すのみであるから、これによって、同デザイナーの商品が、「ARMANI」の文字によって出所が認識されていると認めることはできない。なお、唯一、「The一流品」(1986年4月15日読売新聞社発行)において、「香水」についてだけは、「ARMANI」商標が使用されていることが認められるが、本件商標の指定商品は、第24類「織物(畳べり地を除く。),メリヤス生地,フェルト及び不織布,布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳」であって、化粧品類の商品とは、製造業者・流通業者・販売会社が明らかに異なっているから、「ARMANI」の文字が共通するということだけで、出所が混同するようなことは全く考えられない。したがって、これらの証拠は、本件審判事件の争点とは無関係の証拠といわざるを得ないものであるから、このような証拠に基づいて、本件商標に商標法第4条第1項第15号を適用することはできないと判断されなければならない。
(4)「Hanako」(1988年11月22日号株式会社マガジンハウス発行)、「FASHION SHIP PING BIBLE’85 流行ブランド図鑑」(昭和60年5月25日講談社発行)、「MEN’S CLUB1990年8月号」(1990年8月1日株式会社婦人画報社発行)「英和商品名辞典」(1990年第1刷株式会社研究社発行)の掲載内容について
商品を販売する店舗の名称は、直ちに商標の使用とはいえないから、「Hanako」(1988年11月22日号株式会社マガジンハウス発行)において、「ジョルジオ アルマーニ ブティック東京店」の写真に「GIORGIO ARMANI」の文字が表示されていたとしても、その事実は、「GIORGIO ARMANI」商標の著名性を認定する証拠とすべきではない。「Hanako」(1988年11月22日号株式会社マガジンハウス発行)、「MEN’S CLUB1990年8月号」(1990年8月1日株式会社婦人画報社発行)「英和商品名辞典」(1990年第1刷株式会社研究社発行)の記載によれば、デザイナー「Giorgio Armani」のブランドには、「GIORGIO ARMANI」と、若者向けのデフュージョン(普及版)ブランド「EMPORIO ARMANI」があることが認められるが、何れのブランドについても、必ず「GIORGIO ARMANI」あるいは「EMPORIO ARMANI」と表示されていて、取引者・需要者が、「ARMANI」の文字のみでその出所を理解しているとみるべき格別の事情は全く見出せない。もっとも、上記「英和商品名辞典」において、「ARMANI アルマーニ」の項に『「Giorgio Armani.」を見よ。』と表示されていることが記載されているが、これは辞典を引き易いようにするための工夫に過ぎないから、取引者・需要者が「ARMANI」の表示を見ただけで上記デザイナーのブランドと認識することを示すものではない。むしろ、「EMPORIO ARMANI」については、「エンポリオ」と呼ばれていることが認められるから、本件商標より生ずる「マリオットアルマーニ」の称呼とは何ら共通する点がなく、商品の出所について誤認混同される余地は全くないことが明らかである。
(5)「世界の一流品大図鑑’91年版」(平成3年5月23日株式会社講談社発行)、「世界の一流品図鑑’95年版」(平成7年5月10日株式会社講談社発行)、「世界の一流品図鑑’96」(平成8年5月12日株式会社講談社発行)の掲載内容について
これらの証拠は、何れも「GIORGIO ARMANI」商標についてのものであるから、「ARMANI」商標の著名性を立証する証拠とはなり得ないものである。したがって、これらの証拠は、本件審判事件の争点とは無関係の証拠といわざるを得ないものであるから、このような証拠に基づいて、本件商標に商標法第4条第1項第8号及び同第15号を適用することはできないと判断されなければならない。
(6)「世界の一流品図鑑’98」(1998年5月30日株式会社講談社発行)、「外国周知商標集(伊編)」(独立行政法人工業所有権総合情報館備え付け)、「『ニセブランド商品にご注意!!』のパンフレット」(社団法人日本輸入団体連合会1999年製作)の掲載内容について
本件商標は、「MARIOT ARMANI」というある欧米人の氏名を観念させるのみで、取引者・需要者が、これをデザイナー「Giorgio Armani」に係るブランドと誤認することはないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。また、デザイナー「Giorgio Armani」に係るブランドが、「ARMANI」の姓のみで取引者・需要者に出所が理解されているという格別の事情が認められるならともかく、これらの証拠からは、必ず姓名一体の「GIORGIO ARMANI」商標を使用していることが認められるのみであるから、本件商標は、デザイナー「Giorgio Armani」と何らかの関連を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について誤認混同するおそれ(広義の出所混同)もないものである。また「『ニセブランド商品にご注意!!』のパンフレット」中に、デザイナー「Giorgio Armani」に係るブランドの記載があことは認められるが、本件商標は、「MARIOT ARMANI」というある欧米人の姓名を商標として採択したものと理解されるのみであるから、本件商標が使用された商品を見て、デザイナー「Giorgio Armani」に係るブランドと取り違える取引者・需要者は皆無であると考えられる。したがって、これらの証拠は、本件審判事件の争点とは無関係の証拠といわざるを得ないものであるから、このような証拠に基づいて、本件商標に商標法第4条第1項第8号及び同第15号を適用することはできないと判断されなければならない。
(7)「外国ブランド専用使用権者名簿」(1993年2月社団法人日本輸入団体連合会刊行)、「外国ブランド権利者名簿」(1993年3月社団法人日本輸入団体連合会刊行)の掲載内容について
請求人が審判請求書において提出した甲第2号証ないし甲第18号証の登録原簿によれば、「GIORGIO ARMANI」商標、あるいは「EPORIO ARMANI」商標の専用使用権者として、「ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社」が登録されている事実はどこにも見当たらない。専用使用権は、登録をしなければ、その効力を生じないことは明らかであるから(商標法第35条で準用する特許法第98条第1項第2号)、これらの証拠の記載は、事実に反するものであり、本件審判事件の証拠として採用し得ないものである。
以上説明したように、本件証拠調べ通知において引用された証拠は、本件審判事件の証拠としては不適当なものと認められ、このような事案の異なる証拠に基づいて、本件商標に商標法第4条第1項第8号及び同第15号を適用することは到底できないものである。

第5 当審の判断
1.「GIORGIO ARMANI」「ジョルジオ アルマーニ」の著名性について
(A)当審において、「GIORGIO ARMANI」「ジョルジオ アルマーニ」の文字よりなる標章に関して行った職権による証拠調べの結果、以下の事実が認められる。
(1)「男の一流品大図鑑」(昭和53年7月20日株式会社講談社発行)に、「ジョルジュ・アルマーニ」、「Giorgio Armani<イタリア>」の見出しのもと、イタリアのデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。
(2)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、「ジョルジョ・アルマーニ[Giorgio Armani,1935〜]」の項に、「イタリア北部のエミリアに生まれる。医者になるため大学に行くが中退。20歳ごろはサラリーマン、その後リナシェンテ(百貨店)に入社し、はじめて男物の服づくりを手がけ、モードの面白さを知る。その後、ヒルトンで7年間、高級紳士服の仕事を続け、1975年にはじめて『アルマーニ』という自分の店を開く。紳士物のエッセンスを婦人服にいかし、わずか3年間で、『ジャケットの王様』といわれるほど名がひろまる。レーンコート、シャツ、皮革製品、ニットなど、スポーティ感覚の服は現代の趣向に合い、今やミラノ・アルタ・モーダ・プロンタ(オート・クチュールのプレタ・ポルテの意であるが、彼はオート・クチュールの服はつくらない)のコレクションでは最も人気のあるスチリストの一人である。作品は、デコントラクテな傾向の都会派向きのもの、つまり、マニッシュな装いを好む人やジーンズ党にも人気がある。またアンチ・ハリウッド派の映画衣装などもアルマーニのものが多く、最近の映画では『サタディ・ナイト・フィーバー』の衣装を担当する。ミラノに住み、1日8時間から9時間を仕事に費やす。何よりも仕事が好き、というアルマーニである。」との紹介記事が掲載されていること。
(3)「田中千代服飾事典」(1981年4月25日新増補第1刷同文書院発行)に、「ジョルジョ・アルマーニ[Giorgio Armani]」が、イタリアのデザイナーとして掲載されていること。
(4)「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年5月25日株式会社講談社発行)において、「一流ブランド物語」の掲載記事の中で、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジョ・アルマーニ」について、イタリアのデザイナーとして掲載されていること。
(5)「舶来ブランド事典’84THE BRAND」(昭和58年9月28日サンケイ マーケティング発行)において、「ジョルジョ・アルマーニ」は、イタリアのデザイナーであること、「GIORGIO ARMANI」は、紳士物の「コート、セーター、ネクタイ、ベスト、シャツ、スーツ」及び婦人物の「レインコート、オーバーコート、ジャケット、スーツ、パンツ、ブルゾン、スカート、セーター、ブラウス、マフラー、ベスト、帽子」のデザイナー・ブランドであることが掲載されていること。
(6)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「BLOUSON/ブルゾン」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ・アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「レザーブルゾン」の価格及び商品の写真が掲載されていること。
同じく、「NECKTIE/ネクタイ」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ・アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「ネクタイ」の価格及び商品の写真が掲載されていること。
(7)「世界の一流品大図鑑’85年版」(昭和60年5月25日株式会社講談社発行)において、「婦人服/Ladies Wear」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ・アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「ジャケット、スカート、ブラウス」の商品が掲載されていること。
(8)「The一流品」(1986年4月15日読売新聞社発行)において、「GIORGIO ARMANI」「ジョルジョ・アルマーニ(イタリア)」が、デザイナーとして紹介され、「ジャケット45万円、ブラウス15万円、スカート85万円」との商品の価格及び「ARMANI」のロゴが入った香水の写真が掲載されていること。
(9)「Hanako」(1988年11月24日号株式会社マガジンハウス発行)において、表紙中央部に「羨望!アルマーニの服」との表示があること。
同じく、「時代を超えるイタリアの感性 憧憬のアルマーニ」の記事に、「ブラウス、スカート、ジャケット、手袋、帽子、傘、バッグ、ベルト、財布、ワンピース、イヤリング、ブレスレット、香水、石鹸」などについての価格が表示され、「ジョルジオ アルマーニ ブティック東京店」の写真が掲載され、その写真に「GIORGIO ARMANI」の文字が表示されていること。 また、「一歩手前の人へ。 デフュージョンブランド、エンポリオ。」の見出しにおいて、「EMPORIO ARMANI」(「EMPORIO」と「ARMANI」の文字の間には、中央に「GA」の文字を白抜きにした左向きの鷲とおぼしき図形が配されている。)及び「ブラウス、コート、ブローチ、帽子、シューズ、セーター、マフラー、バッグ、ワンピース、ブルゾン、キュロットスカート」などについての価格が表示され、「ジョルジオ アルマーニが大人のステイタスだとしたら、エンポリオはその一歩手前の若者たちのために作られたデフュージョン(普及版)ライン。・・・」との記事が掲載されていること。
(10)「FASHION SHOPPING BIBLE’85 流行ブランド図鑑」(昭和60年5月25日株式会社講談社発行)において、「GIORGIO ARMANI」の欄に、「GIORGIO ARMANI、ジョルジオ・アルマーニ」の文字と共に、デザイナーとしての紹介記事が掲載され、「スーツ、ストライプシャツ、ベルト、プリントネクタイ、型押しレザーのシューズ」についての価格が表示されていること。
(11)「MEN’S CLUB1990年8月号」(1990年8月1日株式会社婦人画報社発行)において、「20世紀最高のファッションデザイナー ジョルジオ・アルマーニに学ぶ。」の見出しのもと、デザイナーとしての紹介記事のほか、「・・・現在は、ジョルジオ・アルマーニ、エンポリオ アルマーニ、マーニ、アルマーニジーンズなどの代表的ブランドのほか、ジュニアクロージング、アンダーウエア、アクセサリー類、フレグランスなどもデザインしている。・・・」との記事、さらに、「ジョルジオ・アルマーニの最新コレクション。」として、「ジャケット、シャツ、パンツ、ネクタイ、スーツ、スカーフ、靴、ヴェスト、帽子、ベルト」の商品価格が紹介されていること。
(12)「英和商品名辞典」(1990年第1刷株式会社研究社発行)の「Giorgio Armani ジョルジオアルマーニ」の項において、「イタリアMilanoのデザイナーGiordio Armani(1934〔33,35?〕-)のデザインした紳士・婦人既製服その他の衣料品・靴・革製バッグ・革小物・ベルト・香水など,そのメーカー,・・・」、「・・・近年、価格帯を少し低めに設定したブランドEmporio Armaniを市場化しており人気を得ている。・・・」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。
(13)「世界の一流品大図鑑’91年版」(平成3年5月23日株式会社講談社発行)において、「LADIES’ WEAR/婦人服」の欄に、「ジャケット、ショートパンツ、ドレス」の価格入り商品が掲載され、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字が掲載されていること。
同じく、「MEN’S WEAR/紳士服」の欄に、「スーツ」の価格入りの商品が掲載され、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字が掲載されていること。
同じく、「SWEATER/CARDIGAN」の欄に、「セーター」の価格入りの商品が掲載され、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字が掲載されていること。
同じく、「MEN’S SHOES/紳士靴」の欄に、「靴」の価格入りの商品が掲載され、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字が掲載されていること。
(14)「世界の一流品大図鑑’95年版」(平成7年5月10日株式会社講談社発行)において、「LADIES’ WEAR/婦人服」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「スーツ、ブラウス、ベスト、パンツ、スカーフ、キュロット」の価格表示がされていること。
同じく、「MEN’S WEAR/紳士服」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「ジャケット、パンツ、シャツ」の価格表示がされていること。
(15)「世界の一流品大図鑑’96」(平成8年5月12日株式会社講談社発行)にお「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「スカート、パンツ、ジャケット、ミニドレス、ネクタイ、ブラウス、スーツ」の価格表示がされていること。
同じく、「MEN’S WEAR/紳士服」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「スーツ、シャツ、タキシード」の価格表示がされていること。
同じく、「KNIT WEAR/ニットウエア」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「ニット、パンツ」の価格表示がされていること。
同じく、「BLOUSE・SHIRT/ブラウス・シャツ」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「シャツ」の価格表示がされていること。
同じく、「NECKTIE/ネクタイ」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「ネクタイ」の価格表示がされていること。
(16)「世界の一流品大図鑑’98」(1998年5月30日株式会社講談社発行)において、「LADIES’WEAR/婦人服」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「スカート、パンツ、ジャケット、ミニドレス、ネクタイ、ブラウス、スーツ」の価格表示がされていること。
同じく、「MEN’S WEAR/紳士服」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「スーツ、シャツ、タキシード」の価格表示がされていること。
同じく、「KNIT WEAR/ニットウエア」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「ニット、パンツ」の価格表示がされていること。
同じく、「BLOUSE・SHIRT/ブラウス・シャツ」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「シャツ」の価格表示がされていること。
同じく、「NECKTIE/ネクタイ」の欄に、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ(イタリア)」の文字とともに、「ネクタイ」の価格表示がされていること。
(17)「外国周知商標集(伊編)」(独立行政法人工業所有権総合情報館備え付け)において、「GIORGIO ARMANI」が、わが国における登録商標として掲載されていること。
(18)「外国ブランド専用使用権者名簿」(1993年2月社団法人日本輸入団体連合会刊行)において、凡例として「本書は、外国ブランドの模倣商品の輸入、製造及び流通を阻止するため、政府関係機関並びに全国都道府県消費者センター等の、模倣商品に関する照会や相談等の便に供するために刊行したものである。」との文が掲載され、また、「GIORGIO ARMANI」はブランドであり、「ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社」が、専用使用権者名として掲載されていること。
(19)「外国ブランド権利者名簿」(1999年3月社団法人日本輸入団体連合会刊行)において、凡例として「本書は、外国ブランドの模倣商品の輸入、製造及び流通を阻止するため、政府関係機関並びに全国都道府県消費者センター等の、模倣商品に関する照会や相談等の便に供するために刊行したものである。」との文が掲載され、また、「GIORGIO ARMANI」が、ブランドであり、「ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社」が、専用使用権者名として掲載されていること。
(20)「『ニセブランド商品にご注意!!』のパンフレット」(社団法人日本輸入団体連合会1999年製作)において、「海外有名ブランド品のニセモノがふえています」の見出しのもと、「・・・バーバリー、アルマーニの衣料、ロレックスの腕時計などといった海外有名ブランド商品は、消費者の間で根強い人気があることから、これに便乗してニセモノの横行が目立っております。・・・」との記載があること。
(B)本件商標の登録出願前に発行されたものと認められる甲第22号証(「MEN’S CLUB」1990年8月号)、甲第23号証(「MEN’S CLUB」1991年1月号)、甲第24号証(「MEN’S CLUB」1991年8月号)、甲第25号証(「MORE for MEN」’90-’91 FALL&WINTER)、甲第26号証(「BRUTUS」No.234 1990.9.15)、甲第27号証(「BRUTUS」No.280 1992.9.15)、甲第28号証(「TRENDY」No.61 1992.10)、甲第29号証(「ゼロサン」1990年9月号)、甲第30号証(「エスクァイア日本版」1991年10月号)、甲第31号証(「MR」1992年5月号)、甲第32号証(「SevenSeas」1993年6月号)、甲第33号証(「STUDIO VOICE」1993年4月)、甲第34号証(「イタリアの中小企業戦略」1991年11月第1版)、甲第35号証(「男の服飾考現学」)によれば、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」のデザインに係る商品は、「紳士服、婦人服、ジャケット、ネクタイ、帽子、バッグ、スカーフ、ベルト、靴、香水」などの広範囲におよんでいる。そして、これらの商品は「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ」、「Giorgio Armani」などの表示をもって紹介されている。
(C)上記(A)及び(B)で認定した事実によれば、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ」は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)」のデザインに係る商品群を表示するブランドとして、本件商標の登録出願前より、わがのファッション関連の商品の分野において広く認識されていたものと認められ、その著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたということができる。
2.「ARMANI」「アルマーニ」の著名性について
(A)当審において、「ARMANI」「アルマーニ」の文字よりなる標章に関して行った職権による証拠調べの結果、以下の事実が認められる。
(1)「The一流品」(1986年4月15日読売新聞社発行)において、「GIORGIO ARMANI」「ジョルジョ・アルマーニ(イタリア)」が、デザイナーとして紹介され、「ジャケット45万円、ブラウス15万円、スカート85万円」との商品の価格及び「ARMANI」のロゴが入った香水の写真が掲載されていること。
(2)「Hanako」(1988年11月24日号株式会社マガジンハウス発行)において、表紙中央部に「羨望!アルマーニの服」との表示があること。
同じく、「時代を超えるイタリアの感性 憧憬のアルマーニ」の記事に、「ブラウス、スカート、ジャケット、手袋、帽子、傘、バッグ、ベルト、財布、ワンピース、イヤリング、ブレスレット、香水、石鹸」などについての価格が表示されていること。
(3)「エフピー6月号」(1991年6月1日株式会社学習研究社発行)において、表紙に「アルマーニの世界戦略」との特集記事の紹介がされていること。
(4)「MEN’S CLUB 1990年8月号」(1990年8月1日株式会社婦人画報社発行)において、「20世紀最高のファッションデザイナー ジョルジオ・アルマーニに学ぶ。」の見出しのもと、デザイナーとしての紹介記事のほか、「・・・現在は、ジョルジオ・アルマーニ、エンポリオ アルマーニ、マーニ、アルマーニジーンズなどの代表的ブランドのほか、ジュニアクロージング、アンダーウエア、アクセサリー類、フレグランスなどもデザインしている。・・・」との記事が掲載され、「コート、パンツ、ジーンズ」などの商品が紹介されていること。
(B)本件商標の登録出願前に発行されたものと認められる甲第22号証(「MEN’S CLUB」1990年8月号)、甲第23号証(「MEN’S CLUB」1991年1月号)、甲第25号証(「MORE for MEN」’90-’91 FALL&WINTER)、甲第26号証(「BRUTUS」No.234 1990.9.15)、甲第27号証(「BRUTUS」No.280 1992.9.15)、甲第28号証(「TRENDY」No.61 1992.10)、甲第31号証(「MR」1992年5月号)、甲第34号証(「イタリアの中小企業戦略」1991年11月第1版)によれば、「ARMANI」、「アルマーニ」の商標は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」のデザインに係る商品「紳士服、婦人服、ジャケット、ネクタイ、帽子、バッグ、手袋、ベルト、靴、スカーフ、香水」等に使用されている事実が認められる。
(C)上記(A)及び(B)で認定した事実によれば、「ARMANI」、「アルマーニ」は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)」の氏名又はそのデザインに係る商品群を表示するブランドとして著名な「GIORGIO ARMANI」「ジョルジオ アルマーニ」の略称を表すものとして、本件商標の登録出願前より、わが国ファッション関連の商品の分野において広く認識されていたものと認められ、その著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたということができる。
3.「EMPORIO ARMANI」「エンポリオ アルマーニ」の著名性について
(A)当審において、「EMPORIO ARMANI」「エンポリオ アルマーニ」の文字よりなる標章に関して行った職権による証拠調べの結果、以下の事実が認められる。
(1)「Hanako」(1988年11月24日号株式会社マガジンハウス発行)において、表紙中央部に「羨望!アルマーニの服」との表示。「一歩手前の人へ。デフュージョンブランド、エンポリオ。」の見出しにおいて、「EMPORIO ARMANI」(「EMPORIO」と「ARMANI」の間には、中央に「GA」の文字を白抜きした左向きの鷲とおぼしき図形が配されている。)及び「ブラウス、コート、ブローチ、帽子、シューズ、セーター、マフラー、バッグ、ワンピース、ブルゾン、キュロットスカート」などについての価格が表示され、「ジョルジオ アルマーニが大人のステイタスだとしたら、エンポリオはその一歩手前の若者たちのために作られたデフュージョン(普及版)ライン。」との記事が掲載されていること。
(2)「MEN’S CLUB1990年8月号」(1990年8月1日株式会社婦人画報社発行)において、「20世紀最高のファッションデザイナー ジョルジオ・アルマーニに学ぶ。」の見出しのもと、デザイナーとしての紹介記事のほか、「・・・現在は、ジョルジオ・アルマーニ、エンポリオ アルマーニ、マーニ、アルマーニジーンズなどの代表的ブランドのほか、ジュニアクロージング、アンダーウエア、アクセサリー類、フレグランスなどもデザインしている。・・・」との記事。「対象を限定しないエンポリオの服たち。」、「アルマーニの入門服として人気の高いエンポリオ アルマーニ、幅広い商品構成も大きな魅力だ。」との見出しのもと、「ジョルジオ・アルマーニのヤングブランドとして位置付けられているエンポリオ アルマーニ。・・・」との記事が掲載され、「コート、パンツ、ジーンズ」などの商品が紹介されていること。
(3)「英和商品名辞典」(1990年第1刷株式会社研究社発行)の「Giorgio Armani ジョルジオアルマーニ」の項において、「イタリアMilanoのデザイナーGiordio Armani(1934〔33,35?〕-)のデザインした紳士・婦人既製服その他の衣料品・靴・革製バッグ・革小物・ベルト・香水など,そのメーカー,・・・」、「・・・近年、価格帯を少し低めに設定したブランドEmporio Armaniを市場化しており人気を得ている。・・・」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。
(4)「外国周知商標集(伊編))」(独立行政法人工業所有権総合情報館備え付け)において、「EMPORIO ARMANI」が、わが国における登録商標として掲載されていること。
(5)「外国ブランド権利者名簿」(1999年3月社団法人日本輸入団体連合会刊行)において、凡例として「本書は、外国ブランドの模倣商品の輸入、製造及び流通を阻止するため、政府関係機関並びに全国都道府県消費者センター等の、模倣商品に関する照会や相談等の便に供するために刊行したものである。」との文が掲載され、また、「EMPORIO ARMANI」が、ブランドであり、「ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社」が、専用使用権者名として掲載されていること。
(B)本件商標の登録出願前に発行されたものと認められる甲第22号証(「MEN’S CLU」1990年8月号)、甲第23号証(MEN’S CLUB」1991年1月号)、甲第24号証(「MEN’S CLUB」1991年8月)によれば、「EMPORIO ARMANI」、「エンポリオ アルマーニ」の商標は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」のデザインに係る商品「紳士服、ジャケット、スカーフ、帽子、靴」等に使用されている事実が認められる。
(C)上記(A)及び(B)で認定した事実によれば、「EMPORIO ARMANI」、「エンポリオ アルマーニ」は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」のデザインに係る商品群を表示するブランドとして、本件商標の登録出願前より、わが国ファッション関連の商品の分野において広く認識されていたものと認められ、その著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたということができる。
4.出所の混同について
(1)本件商標は、上記のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中に、上記1.及び2.で認定したデザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」のデザインに係る「紳士服、婦人服、ジャケット、ネクタイ、帽子、バッグ、ベルト、靴、香水」等に使用され、本件商標の登録出願前より、わが国においても取引者及び需要者の間に広く認識されているブランド「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ」の略称として、わが国において著名な「ARMANI」「アルマーニ」と同一の称呼を生ずる「ARMANI」の文字を含むものであり、かつ、「ARMANI」の文字は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」の略称として、わが国において著名である。
(2)本件商標の指定商品は、前記のとおりの商品よりなり、その指定商品中「布製身の回り品」は、ファッション関連の商品であり、その主たる需要者は、一般の消費者であると認められる。
(3)上記(1)(2)で認定した本件商標の構成並びに指定商品が、ファッション関連商品であること、その主たる需要者が一般の消費者であるということ、また、そのデフュージョンブランドとして「EMPORIO ARMANI」も使用されており、これもまた広く知られていること等を併せ考慮すれば、本件商標がこれらの商品に使用された場合には、取引者、需要者は、上記著名な「GIORGIO ARMANI」の商標に関連する別ブランドであるのではないかなどと連想、想起し、その商品が、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」又は同人と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものと判断するのが相当である。
5.被請求人の主張について
(1)請求人は、「ARMANI」は欧米において別段珍しい姓ではなく、しばしば見受けられるありふれた姓であり、また、デザイナーブランドの商品が多数流通している昨今では、姓名が特定されて、はじめてどのようなデザイナーブランドを指すかが取引者、需要者に理解されるべきであるから、「ARMANI」の文字を含むブランドが、単に「ARMANI」「アルマーニ」と略称されることはありえない。そして、「VALENTINO」がイタリア人のありふれた名前であるように、「ARMANI」も特定のデザイナーと決めつけることはできず、特許庁の過去の審査、審決例でも本件商標のような構成文字の商標が一体のものとして判断された例が多い旨主張する。
しかし、「ARMANI」がイタリアでありふれた姓であってもわが国においてありふれた姓であるとは認められないし、「ARMANI」の文字を含む商標は、それがイタリアでのありふれた姓であるかどうかに関係なく、上記認定のとおり、わが国においてファッション関連商品に使用された結果、取引者、需要者に広く認識されている商標といえるものである。
また、「ARMANI」や「アルマーニ」の文字を含む商標が他に存在するとしても、それらの商標と本件商標とは、その構成が相違するし、たとえ同一であったとしても、登録適格の判断時点が異なるものであり、事案を異にするものである。さらに、それらの商標が「ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社」によって使用される「ARMANI」の商標と明確に区別されていると認めるに足りる証拠はなく、むしろ、上記2.で認定した事実によれば、「ARMANI」、「アルマーニ」は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」のデザインに係る商品群を表示するブランドとして著名な「GIORGIO ARMANI」「ジョルジオ アルマーニ」の略称として、本件商標の登録出願前より、わが国のファッション関連商品の分野において広く認識されていたものと認め得るものであり、その著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたということができる「ARMANI」の商標と何らかの関連性のあるものと誤解している可能性も否定できないというべきである。
(2)被請求人は、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」は、その関連ブランド「EMPORIO ARMANI(エンポリオ・アルマーニ)」を含めて「ARMANI(アルマーニ)」単独の商標の使用はしていないから、本願商標は商品の出所の混同は生じないと主張する。
しかし、本件商標が他人の商品と混同を生ずるおそれがある理由は、本願商標に接する取引者、需要者が「GIORGIO ARMANI」の商標と関連性のある兄弟ブランドであるかのように連想、想起することによるものであって、デザイナー「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」が、「ARMANI」の商標を単独で使用していないかどうかとは直接関係のないものである。
(3)職権による証拠調べ通知書に対する被請求人の意見について
被請求人は、本件証拠調べ通知は、本件審判事件とは事案の異なる証拠についてなされたものであるから、その対象となった証拠は、本件商標について商標法第4条第1項第8号及び同第15号の適否を審理するための証拠としては極めて不適当である旨主張している。
しかし、証拠調べ通知書により通知した各証拠は、上記のとおり認定できる内容のものである。
よって、被請求人の主張は、いずれも採用できない。

第5 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ないから、請求人のその余の主張について判断するまでもなく、その登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
(1)本 件 商 標

(2)引 用 A 商 標

(3)引 用 C 商 標

(色彩は原本参照)
(4)引 用 D 商 標

(5)引 用 H 商 標

(6)引 用 I 商 標

(7)引 用 L 商 標

(色彩は原本参照)
(8)引 用 M 商 標

(9)引 用 Q 商 標

審理終結日 2002-05-28 
結審通知日 2002-05-31 
審決日 2002-06-28 
出願番号 商願平8-15174 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (024)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 薫箕輪 秀人 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 上村 勉
山下 孝子
登録日 1998-07-03 
登録番号 商標登録第4163407号(T4163407) 
商標の称呼 マリオットアルマーニ 
代理人 溝上 満好 
代理人 溝上 哲也 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 岩原 義則 
代理人 田中 克郎 

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