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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 117
管理番号 1063140 
審判番号 審判1997-8720 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-05-27 
確定日 2002-05-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2718785号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成11年6月11日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11年(行ケ)第254号、平成12年1月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第2718785号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2718785号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成からなり、平成4年1月14日に登録出願、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として同8年12月25日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第2691725号商標(以下、「引用商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成からなり、平成2年8月21日に登録出願、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として同6年8月31日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第11号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号に該当する理由
本件商標は、別掲(1)に表示したとおり、前脚を少し「く」の字に折った状態の馬に、顔面を斜め右下に向け、肩越し30度位の角度に先端を曲げたポロゲームに使用されるマレットとおぼしき棒状のものを振りかざして乗馬している人を斜め前方から描写して黒色で表したものである。
引用商標は、別掲(2)に表示したとおり、やはり前脚を少し「く」の字に折った状態の馬に、顔面を斜め右下に向け、肩越し40度位の角度にポロゲームに使用するマレットを振りかざして乗馬しているポロプレーヤーを、斜め前方から描写して黒色で表したものである。
上述のように両商標は、全体としてその外観が非常に近似しているものである。しかも、両者はその構成要素も以下に挙げるようにほとんど同じである。即ち、両者とも、
(ア)人が乗り前足を少し上げた状態の馬を斜め前方から描いた構図
(イ)馬の前脚がやや「く」の字状に折れている
(ウ)人物の向き及び背中の曲がりぐあいがほとんど同じ
(エ)人物の上半身と同程度の長さのマレット、マレットとおぼしき棒状のものを有し、それを同程度の角度で振りかざしている
(オ)全体を黒色で表現
以上のように本件及び引用商標は、その構成要素及び全体の構図をほぼ同じくするものであるから、これを時と処を異にして離隔的に観察するときは、外観において紛らわしい類似の商標というべきである。また、両者は指定商品を同一とするものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号に該当する理由
本件商標は、請求人が被服をはじめ種々の商品に長年使用し、また請求人が直営する直販店及び請求人とのライセンス契約に基づく専門店のシンボルマークとしても使用して世界的に著名な引用商標と外観において酷似するものである。
そして、引用商標は、本件商標の出願日以前既に著名となっていたものである。以下それらの点について詳述する。
請求人は、ニューヨーク州法に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップである。請求人が製造、販売する被服、革製品、日用品、装身具、香水、眼鏡等の商品は、全て実質的なオーナーであり世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレンによってデザインされたものであって、その英国の伝統を基調としそれに機能性を加えたデザインと、卓越した製造技術及び一貫した品質管理による良質の製品は、本拠地である米国のみならず、日本を含む数十カ国に及ぶ国々において多くの消費者の心をつかみ、現在では世界的規模で直営店及びライセンスに基づく専門店を開設して事業を展開するに至っている。そして、それらで扱う商品の全てに「POLO」、「POLO BY RALPH LAUREN」及びこれらと引用商標とを組み合わせた商標を付して販売しているところから、これらの商標は請求人の商品の信用力を表象するものとして、既に世界的に著名な商標としての知名度を確立しているといえるものである。
ラルフ・ローレンは1939年生まれのデザイナーであるが、ネクタイ製造会社ボーブルメルのデザイナーであった1967年に「Polo」のブランドでデザインした幅広のネクタイが爆発的な人気を博した。その後1968年に独立して、紳士服、スポーツウェア、ベルト、カバン、靴等の紳士ものへとデザイン分野を拡大し、いわゆるブリティッシュ・アメリカンといわれるデザインで紳士ものファッションデザイナーとしての確固たる地位を獲得し、その後婦人ものファッションにも進出して成功を収めた。1970年に最初のコティアメリカファッション批評家賞を受賞して以来、1977年までに紳士服、婦人服の両部門を合わせ6回のコティ賞を受賞し、さらに両部門について夫々2回以上の受賞者のみに与えられる栄誉であるコティ殿堂入り(Hall of Fame)を果した傑出した服飾デザイナーである。
したがって、遅くもそのころからラルフ・ローレンの名前は我が国の服飾業界においても広く知られるようになり、同人がデザインした商品は、独立当初から同人が理想としていた英国趣味を象徴するものとしてポロ競技から採った「Polo」の名前と引用商標をブランドとして使用していたところから、そのデザインに係るー群の商品は「ポロプレーヤーマーク」で認識され、「ポロ」の略称で呼ばれるようになったと言うことができる。日本においては、西武百貨店が昭和52年(1977年)からライセンシーの権利を取得し請求人のライセンスビジネスを手掛けてきた。当初は西武百貨店内においてショップ展開したが、その後松屋、東急、大丸、阪急等のデパートへ出店し、また昭和62年から鎌倉、東京の銀座、原宿に相次いで大型専門店を開設して、いずれも売上を大きく伸ばしている(甲第5号証及び同第11号証)。このような請求人の商品だけを扱うデパートのインショップや専門店は、ポロ・ショップと呼ばれ現在日本に約300店舗存在する。また、甲第6号証は原宿にあるポロ・ショップの正面景観であり、引用商標が入口の上方に大きく表示されているが、このようにポロ・ショップの店頭には必ず引用商標が表示されている。またポロ・ショップで扱う全ての商品にも引用商標を添付表示している。
さらに、甲第7号証及び同第8号証は、平成1年5月にラルフ・ローレンブランドの偽ポロシャツについて、警視庁が不正競争防止法違反容疑で捜査を行ったことを報じた新聞記事であるが、何れも引用商標が著名な商標であることを報じている。我国において不正競争防止法に基づく刑事事件は、著名性の立証が困難などの理由によって立件されるのは極めて希であるが、上記事件が立件されたことは、引用商標が不正競争防止法の下で刑事事件として保護されるほど著名であることを証明しているに外ならないものである。甲第9号証は「男の一流品大図鑑」(’78年版一創刊号)であるが、その中の「一流ブランド物語」という特集記事(以後の各年版に毎回連載)の中で、「Polo」ブランドが世界に通用する著名ブランドであることが記されており、また商標を表示した箇所に「Polo」と共に引用商標が掲載されている。このことは、この特集記事に同時に掲載されている陶磁器や家具等の他の分野における著名商標に互して、衣服の分野で既にこの時代に「Polo」及び引用商標が著名であったことを証明しているものである。さらに、当時の広告の実例を証拠として提出する(甲第9号証及び同第10号証)。
上述のとおり、引用商標は、本件商標出願日以前から著名であることは疑いのない事実である。そして、本件商標は、引用商標と外観において酷似するものであること前記のとおりである。
したがって、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合は、その商品があたかも請求人の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(3)以上の次第であるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同15号に該当し、無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第12号証を提出している。
(1)本件商標と引用商標の構成態様について
本件商標は、別掲(1)に示すとおり、外観が、足が太い走っている農耕馬に、鍬若しくはその農具を担いだ人が騎乗している様をやや斜め前方から描写し、これをシルエットにより現してなるものである。
したがって、本件商標からは、特定の称呼、観念を生じ得ないものである。
これに対し、引用商標は、別掲(2)に示すとおり、マレットを片手で振り上げている騎手が競争馬のようにスマートな馬に騎乗しポロをプレーしている様をやや斜め前方から陰影を用いて繊細に描写し、これをシルエット風に現してなるものである。
したがって、引用商標からは「ポロプレーヤーマーク」又はこれを略称し「ポロマーク」と称呼、観念されるものである。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かの点について
(ア)外観について
本件商標と引用商標との相違点としては、騎手の持ち物が前者は農具と思しきものに対し後者はマレット、騎手騎乗の態様が前者は農具を担ぎ跨っているのに対し後者はマレットを振り上げ立っている、馬の態様が前者は農耕馬のように足が太いのに対し後者は競走馬のように足が細くスマート、描写の方法が前者はシルエットに対し後者は陰影を用いた繊細なシルエットであること、共通点としては、両者とも馬の前脚がやや「く」の字状に曲がっていることである。
以上のように、両者が、外観において顕著に相違していることからみて細部の「馬の前脚がやや『く』の字状に曲がっている」点において共通点を有するとしても、両図形商標の要部、即ち、騎手が農具を担ぎ馬に跨っている点、マレットを振り上げ立ちあがっている点との差異と、本件商標の馬が農耕馬のように足が太く現されているのに対し、引用商標は、競争馬のように足か細くスマートである点など、顕著な差異を有するものである。これらを総合的に勘案してみると、本件商標は、農夫が農具を担いで農耕馬に跨り小走りしているように見えるのに対し、引用商標は正しく「ポロ」競技をしているようにみえるもので、本件商標と引用商標とは、外観が顕著に相違しているので時と所を異にして、隔離的観察した場合においても、外観において彼此相紛れるおそれのない、非類似の商標と認められるものである。
その他、馬のシルエット、馬に騎乗している人のシルエット又は馬に騎乗している人が、剣、棒、旗等を担持している様をやや斜め前方から描写し、これをシルエットにより現してなるもの等の登録商標は、乙第1号証ないし同第12号証に示されているように、極めて種々のものがあることは公知の事実である。それ故、本件商標のイメージとして需要者に記憶されるものは、請求人の引用商標とは明らかに異なったものとなるのである。引用商標を離れて本件商標に接した需要者は、引用商標を想起することはなく、別個の商標であると認識するのである。
(イ)呼称及び観念について
本件商標は、前記したように、足が太く農耕馬と外観される走っている馬に、鍬若しくはその他の農具と思しき道具(柄が太く先端が半円となっている)を担いだ人が騎乗している状態をやや斜め前方から描写し、これをシルエットにより現してなるものであるから、本件商標からは、特定の呼称、観念を生じ得ないものである。
これに対し、引用商標は、マレット(細い線でT字型打球具を表示している)を片手で振り上げている騎手が競争馬のようにスマートな馬に騎乗してポロをプレーしている状態を、やや斜め前方から白黒の陰影を用いて繊細に描写し、これをシルエット風に現してなるものがあるから、引用商標からは「ポロプレーヤーマーク」又はこれを略称し「ポロマーク」と称呼、観念されるものである。このことは請求人も主張しているところである。
したがって、本件商標と引用商標とは、呼称及び観念の点においても彼比相紛れるおそれはない非類似の商標と認められるものである。
(ウ)してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、呼称及び観念のいずれの点においても、非類似の商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの点について
請求人は、「本件商標は、請求人が被服をはじめ種々の商品に長年使用し、また請求人が直営する直売店及び請求人とのライセンス契約に基づく専門店のシンボルマークとしても使用して世界的に著名な引用商標と外観において酷似するものである。」と主張し、証拠を提出している。
そこで、本件商標が引用商標との関係において、商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの点について検討してみると、甲第5号証は、西武百貨店がポロ・ラルフローレンジャパン社を設立したことを報道する記事が掲載されているだけであり、本件商標と無関係である。甲第6号証に示す引用商標もいつから表示されているのか不明であり、また、これを記載した記事が掲載された雑誌等も何ら明らかでなく、何時雑誌等が頒布されたかも全く明らかでない。
そのポロプレーヤーマークと称する引用商標が本件商標と非類似であることは、既に述べたとおりである。
甲第7証、同第8号証には、被請求人と無関係の第三者が引用商標を付した商品を販売した記事が掲載されているだけであり、本件請求人とは無関係な証拠である。本件商標はすでに引用商標と非類似であるとして登録されているのであり、甲第7号証、同第8号証は証拠能力がない。
甲第9号証ないし同第11号証は、いずれも引用商標の著名性を証する証拠として提出している。請求人の主張のように、引用商標が、その指定商品について永年使用し、本件の登録出願前より請求人の業務に係る商品を表示するものとして周知著名であることを認めるが、乙第1号証ないし同第12号証に示されているところを参照すると、前記したとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標であるばかりでなく、他に両商標が取引上混同を生ずるとみるべき特段の事由を見出せないものであるから、本件商標をその指定商品に使用しても、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しないものである。

5 当審の職権証拠調べ結果通知
平成12年8月15日付けの職権証拠調べ結果通知書により、ラルフ・ローレンに係る 「Polo」、「by RALPH LAUREN」、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」標章についての周知性に関する下記の証拠資料の提示及びその内容について通知し、意見を求めた。

(1)(株)講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」の記載によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下、「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画「華麗なるギャツビ-」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナ-としての地位を確立した。
その頃からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字と共に「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている。
(2)(株)洋品界昭和55年4月15日発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」「ポロ/Polo」の項、ボイス情報(株)昭和59年9月25日発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述及び昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
(3)ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、昭和53年2月16日付け日本経済新聞(夕刊)の広告、前記「男の一流品大図鑑」、(株)講談社昭和54年5月20日発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、(株)チャネラー昭和54年9月20日発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年4月25日発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」(昭和55年6月20日発行)、「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年6月20日発行)、前記「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、(株)講談社昭和60年6月25日発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、メガネについては、前記「世界の一流品大図鑑’80年版」、「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」、「世界の一流品大図鑑’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることが認められる。
(4)引用商標を模倣したブランド商品が市場に出回り刑事摘発を受けた旨が、例えば、平成元年5月19日付朝日新聞夕刊、同4年9月23日付読売新聞(東京版)朝刊、同5年10月13日付読売新聞(大阪版)朝刊、同10年6月8日付朝日新聞夕刊に報道されている。
(5)引用商標の周知性について認定した判決として、東京高裁平成2年(行ケ)183号(平成3.7.11言渡)、東京地裁平成8年(わ)1519号(平成9.3.24言渡)があるほか、東京高裁平成11年(行ケ)250号、同251号、同252号、同267号、同290号(以上平成11年12月16日言渡)、同268号、同289号(以上平成11年12月21日言渡)、同288号(平成12年1月25日言渡)、同298号、同299号(以上平成12年2月1日言渡)、同192号(平成12年2月29日言渡)等がある。
(6)以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として遅くとも本件商標の登録出願時には既に我が国において取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。

6 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
当審において、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等について使用される「Polo」ないし「POLO」の文字よりなる標章、「by RALPH LAUREN」の文字よりなる標章、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形よりなる標章に関して行った職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
(ア)(株)講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」(以下、書証1という。)、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド(以下、書証2という。)の記載によれば、アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下、「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画「華麗なるギャツビ-」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナ-としての地位を確立した。
その頃(昭和52年頃、後記(イ)参照)からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、ラルフ・ローレンのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形及びこれらを組み合わせた標章(以下、「ラルフ・ローレン標章」という。別掲(3)に示したものはその組み合わせの一態様を表す。)が使用され、我が国では、これらは「ポロ」と総称し、略称されて紹介されていた。
(イ)(株)洋品界昭和55年4月15日発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」「ポロ/Polo」の項(以下、書証3という。)、ボイス情報(株)昭和59年9月25日発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述(以下、書証4という。)及び昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事(以下、書証5という。)によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から「Polo」の文字よりなる標章をはじめとするラルフ・ローレン標章などの使用許諾を受け同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
(ウ)ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、昭和53年2月16日付け日本経済新聞(夕刊)の広告(以下、書証6という。)、前出「男の一流品大図鑑」(書証1)、(株)講談社昭和54年5月20日発行「世界の一流品大図鑑’79年版」(以下、書証7という。)、(株)チャネラー昭和54年9月20日発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80年版」(以下、書証8という。)、昭和56年4月25日発行「男の一流品大図鑑’81年版」(以下、書証9という。)、昭和55年6月20日発行「世界の一流品大図鑑’80年版」(以下、書証10という。)、昭和56年6月20日発行「世界の一流品大図鑑’81年版」(以下、書証11という。)、前出「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」(書証2)、(株)講談社昭和60年6月25日発行「流行ブランド図鑑」(以下、書証12という。)のそれぞれにおいて、メガネについては、前記「世界の一流品大図鑑’80年版」、「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」、「世界の一流品大図鑑’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下、また「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」文字と「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形標章の組み合わせた標章が紹介されていることが認められる。
(エ)ラルフ・ローレン標章を模倣した、偽ブランド商品が市場に出回っている事実も少なくない。例えば、1989年(平成元年)5月19日付朝日新聞夕刊(以下、書証13という。)には、「昨年二月ごろから、米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の・・・『Polo』の商標と、乗馬の人がポロ競技をしているマークをつけたポロシャツを・・・売っていた疑い」なる記事が掲載された。また、1992年(平成4年)9月23日付け読売新聞(東京版、朝刊;以下、書証14という。)、平成5年10月13日付け読売新聞(大阪版、朝刊;以下、書証15という。)、1998年(平成10年)6月8日付け朝日新聞(西部夕刊;以下、書証16という。)等にも同様の記事が掲載され、昭和63年には既に我が国において「Polo」ないし「POLO」の文字、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形標章などを使用した偽ブランド商品が出回っていた事実が存在していた。
(オ)判決においても、ポロ競技のプレーヤーの図形標章の著名性については、例えば、「東京高等裁判所平成12年(行ケ)162号」(平成13年2月8日判決言渡)では「・・・以上の事実によれば、我が国において引用商標を構成する「Polo」「by RALPH LAUREN」、「Polo」「by Ralph Lauren」の各文字標章及びポロ図形標章は、その略称である「Polo」、「ポロ」の各文字標章と共にネクタイ、スーツ、・・・等ファッション関連の商標においてラルフ・ローレンがデザインし、その創設した会社の業務に係る商品に使用される商標として広く知られ、強い顧客吸引力を取得するに至っていることが認められるのであって、本件商標の出願(平成7年9月)前に既に需要者の間で周知になっていたことは明らかである。」と判示しており、その外に東京高裁平成2年(行ケ)183号(平成3年7月11日判決言渡)、東京地裁平成8年(わ)1519号(同9年3月24判決言渡)、東京高裁平成11年(行ケ)267号(同11年12月16日判決言渡)、同268号、同289号(同11年12月21日判決言渡)、同288号(同12年1月25日判決言渡)、同298号(同12年2月1日判決言渡)、同333号(同12年2月14判決言渡)があるほか、ラルフ・ローレン標章につき、これが単に「ポロ」と略称されて被告の主張を認めた東京高裁平成11年(行ケ)250号、同251号、同252号、同290号(以上、平成11年12月16日判決日言渡)、同299号(平成12年2月1日判決言渡)、同192号(平成12年2月29日判決言渡)等々の判決が存在する。
(カ)上記(ア)ないし(エ)で認定した事実及び(オ)の判決を総合すれば、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等について使用される標章は、「Polo」の文字よりなる標章、「by RALPH LAUREN」の文字よりなる標章、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形よりなる標章及びこれらを組み合わせた標章(ラルフ・ローレン標章)は、我が国において、単に、「Polo(ないしPOLO)」、「ポロ」と総称し、略称され、その略称はラルフ・ローレンのデザインに係る被服について使用される標章として、本件商標の登録出願時には既に、我が国において取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたものであり、その認識の度合いは現在においても継続していると認めることができる。
(2)そして、引用商標は、ラルフ・ローレン標章の「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形標章に該当し、同一または類似するものである。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するかどうかについて
本件商標は、別掲(1)に表示したとおり、前脚を少し「く」の字に折った状態の馬に、顔面を斜め右下に向け、先端を曲げた棒状のものを振りかざして乗っている人を斜め前方から描写してシルエット風に表したものである。これに対し、引用商標は、別掲(2)に表示したとおり、やはり前脚を少し「く」の字に折った状態の馬に、顔面を斜め右下に向け、ポロゲームに使用するマレットを振りかざして乗っているポロプレーヤを、斜め前方から描写して黒色で表したものである。
してみれば、両者は、仔細にみれば馬の脚の太さ、騎手の持ち物等において相違するところがあるとしても、上記状態の馬に騎乗した者が棒状の器物を振りかざしている点において構成の軌を一にするものであり、時と所を別にしてみるときは全体の外観において彼此相紛らわしいものといわざるを得ない。しかも、本件商標の指定商品の分野においては、例えば、被服について商標を胸部のワンポイントマークとして表示したり、靴下の布地に小さく直接表示し、襟首部分又は下げ礼に小さく表示する慣行があることからすれば、商標が常に鮮明に表示されるとは限らず、かかる場合にあっては本件商標と引用商標の相違点は直ちには判別し難いほどのものといえる。そうすると、本件商標をその指定商品である「被服等」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、上記(1)及び(2)で述べたように、明らかに引用商標と同一又は類似するものと認められ、著名である引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものというのが相当であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといわなければならない。
なお、被請求人は当庁における審査例を挙げて種々主張するところがあるも、事案を異にするものであり、上記認定判断に照らし、被請求人の主張は採用することができない。
(4)職権でした証拠調べに対する被請求人の意見について
(ア)被請求人は、証拠調べ通知書の(1)項の事実認定には、不正確さと、誤りと、論理の飛躍があり、公正厳密であるべき証拠調べの結果としては到底納得できるものではないと主張している。
(アー1)書証1、2に記載の「アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、・・・アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。」ことは書証1及び書証2には記載そのまゝには記載されていないについて
書証1に、「映画『華麗なるギャツビー』・・・この映画で主演したロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したのがポロ社の創業者であり、アメリカのファッションデザイナー界の旗手であるラルフ・ローレン」との記載、「・・・わずか10年でポロブランドをしかもファッションデザイン後進国アメリカブランドを、世界に通用させた」との記載、また、書証2に、「・・・世界的に知られるようになったのは、・・・映画『華麗なるギャツビー』のメンズウェアデザインを担当、・・・したことによる」との記載、「アメリカのファッション界では最も権威のある『コティ賞』を2回受賞などで高い評価を受けている」との記載、「今や名実ともにニューヨークのトップデザイナーの代表格として君臨するラルフ・ローレン」という記載があることからすれば、「アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。」との証拠調べにより、当審の前示7(1)(ア)の認定の判断をしても差し支えない〔東京高裁平成2年(行ケ)183号(平成3年7月11日判決言渡)、東京高裁平成11年(行ケ)267号(平成11年12月16日判決言渡)ほか参照〕。
(アー2)証拠調べ通知書の(1)項第11〜12行に記載の「その頃からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり」は書証1、2には記載されていない、との主張について
書証3、4、5の記載の事実からすれば、ラルフ・ローレンの名前が知られるようになったのは、ラルフ・ローレンの取り扱いに係る商品が昭和52年頃から販売されたことによるものである。なお、この事実の認定は、判決でもされている(同上判決ほか参照)。
(アー3)証拠調べ通知書の(1)項14行及び15行の「(以下、これらをまとめて『引用商標』という。)」いう概念規定は、四角形の中に描かれた「Polo」と、「by RALPH LAUREN」と、「馬に乗ったポロ競技者の図形」との三者結合したものを「引用商標」というのか、それとも三者のうちどれか1つずつでも引用商標というのか明らかでない。また、書証1、2の中には、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品に、各商標が用いられるべきことは文字として記述されてはいない、との主張について
しかしながら、まず、書証1には、184頁の3段の上段全スペースを使い横長四角形に囲まれた大きな「Polo」の文字と、その下に小さく表わされた「by RALPH LAUREN」の文字と、その下左寄りに「馬に乗ったポロ競技者の図形標章」が顕著に表示され、その説明としてラルフ・ローレンブランドを世界に通用させるに至るまでの経緯等が被服との関係で詳しく紹介され、さらに、同書証中の西武百貨店の広告において、ラルフ・ローレンのデザインの服が「ポロ」というブランド名としてポロプレーヤー図形標章を含むラルフ・ローレン標章と共に記載され、また、書証2には、「ポロ」の文字からなる標章がラルフ・ローレンのブランド名として表題に使用されて、同じく、ポロプレーヤー図形、「by RALPH LAUREN」の文字及び「Polo」の文字の標章が服飾との関係で表示され、そのブランド名の特徴、沿革、マークの由来等が記載されており、かつ、これらを「ラルフ・ローレン標章」と定義しているものであって、証拠調べ通知における「引用商標」とは、ラルフ・ローレンのデザインに係る一群の商品に表される横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形よりなる標章及びこれらを組み合わせた標章をいうことは明らかであり、「引用商標」としたのは使い分けしたことによるものである。そして、これらは、総称して単に、「ポロ」と略称されて呼ばれていたものである。したがって、当該「引用商標」についての証拠調べ通知には何らの事実の飛躍もなく、判決においても、これを認定している〔東京高裁平成11年(行ケ)267号(平成11年12月16日判決言渡)、東京高裁平成11年(行ケ)289号(平成11年12月16日判決言渡)ほか参照〕。
なお、請求人は、以下の項においても「引用商標」が明らかでない旨を述べるところであるが繰り返しであるから、その点に関する上記説明は、省略する。
(イ)証拠調べ通知書の(2)項
書証3の所在が不明であることについて
当該の書証3は、その122頁、123頁、195頁、196頁、221頁、224、頁281頁に渡って昭和51年頃ラルフ・ローレン標章の使用許諾を受けた西武百貨店が、「ネクタイと服飾雑貨」について、「日本製靴(株)、菱屋(株)、樫山(株)、中央繊維工業(株)」を製造・販売元として昭和51年頃から販売を開始し、また「(株)西武百貨店も昭和52年頃からラルフ・ローレン標章を使用し、商品を販売していたことが認められるものである。
(ウ)証拠調べ通知書の(3)項
この項は、概して記述はおおまかであって、例えば書証1、7にも紳士服が紹介されているとは云えない、また、POLOやポロとの関係で書いてない、書証8には、〔服種〕としてニットシャツ、ブラウスが挙げられ、〔対象〕として4〜16歳となっている。これを紳士服や紳士洋品に入れられるかどうか甚だ疑問である。
いずれにしても、ここにいう「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等は何のために持ち出されたのか、その意図が不明である。本件審判で問題になっている本件商標は、そもそもポロではなく、POLOでも、またポロ/ラルフ・ローレンでもない。この(3)項に示されている証拠調べは本件審判の主題とは無関係無用なもの、との主張について
しかしながら、書証1には西武百貨店の紳士服の広告がなされ、書証7には「紳士服・MEN’S WEAR」の表示より紳士服の紹介と認められ、書証8には菱屋株式会社の項にネクタイ外が扱われていることが示されており、その際に「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」、「馬に乗ったポロ競技プレーヤー」図形標章が表示されている。また、書証1、2、6、10には、本件商標と関係する「馬に乗ったポロ競技プレーヤー」図形標章が表示されているものである。
そして、書証7、8、9、11、12には「馬に乗ったポロ競技プレーヤー」図形標章が表示されていないが、ラルフ・ローレン標章に係る「Polo」の文字標章、「by RALPH LAUREN」の文字標章及び「馬に乗ったポロ競技プレーヤー」図形標章が「ポロ」と総称、略称され著名になっていること前示のとおりであることからして、同書証中に「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」の表示のある事実をもっても、その著名性が立証されるものである。
(エ)証拠調べ通知書の(4)項
書証13から書証16までの新聞記事に、引用商標を模倣したブランド商品が市場に出回り刑事摘発を受けたと報道されたことに関し、刑事摘発と、本件商標の有効無効とどう関係があるのか、刑事摘発の新聞記事を持ち出す証拠調べの意図が不明である、との主張について
書証13から書証16までの新聞記事は、「ラルフ・ローレン標章」は我が国のファッション関連の商品分野において昭和63年頃には既にこれら標章は、「ポロ」と略称されており、また、これを真似た偽ブランドが大量に販売して摘発された事実を明らかにし、これら事件が発生するほどに顧客吸引力を有し、同標章は著名性を有することを示すものである。
(オ)証拠調べ通知書の(5)項
引用商標の周知性を認定した判決例と、この項(5)の冒頭にいう引用商標とはその内容が相違している。(1)の項で定義された「引用商標」(横長四角形中に記載された「Polo」の文字と、「by RALPH LAUREN」の文字と、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形の各商標、(これらをまとめて「引用商標」という。)の周知性は、これら判決を援用することによって証明されるわけではない。特に、馬に乗ったポロプレーヤーの図形商標単独が周知であるとは、これら判決から導き出せないところである。
6番目の判決(東京高裁平成11年(行ケ)267号)は、1騎のポロブレーヤー標章と、2騎のポロプレ一ヤー商標との異同であり、8番目の判決(東京高裁平成11年(行ケ)268号)は、原告は自らその商標の図形部分がポロプレーヤーを表していると自認しているし、文字部分には「POLO」の文字も明瞭に使われており、11番目の判決、東京高裁平成11年(行ケ)298号も、原告の図形商標はポロプレヤーであることが判然としていて、これに対し引用商標(馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形)と混同を生じるものと判示されているのであるから、これらは本件商標の場合とは前提条件が異なっているので、直ちにこの結論を本件に適用することは妥当でない。また、引用されているその他の判決のうち、3、4、5、7、9、12、13の判決は文字商標(ポロなど)を対象としたもので、本件商標(図形のみ)とは無関係な引用であると思料される、との主張について
しかしながら、証拠調べ通知の内容からすれば、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る一群の商品に表される横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形よりなる標章及びこれらを組み合わせた標章をいうことは明らかで、判決に示された商標とは、同一又は類似のものであり、何等その内容は相違していない。
そして、「Polo」の文字と、「by RALPH LAUREN」の文字と、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形の各標章の周知性は、審決7(1)(オ)で示したとおりである。
付言するに、特許庁長官が被告となった審決取消訴訟事件(平成11年(行ケ)第267号、同第268号、同第289号、平成12年(行ケ)第5号など、被告がラルフ・ローレン標章につき、これが単に「Polo(ないし『POLO』)」、「ポロ」と略称されて、それぞれの事件の出願に係る商標の出願日には既に我が国において著名となっていた旨を主張し、その主張を裏付ける証拠として本件とほぼ同一の証拠である書証1ないし16を提出したところ、裁判所は、被告の主張を認めたものである。
したがって、要するに本件と判決における相違点があるやなしやにかかわらず、これら判決において重要な点は、裁判所が本件とほぼ同一の証拠である書証1ないし16についての証拠調べをした結果、ラルフ・ローレン標章が単に「Polo(ないし『POLO』)」、「ポロ」と略称されて我が国において著名であったと認定したことにあるのである。
さらに、ラルフ・ローレン標章につき、平成11年(行ケ)253号判決に対し、上告受理申立事件平成12年(行ヒ)第172号事件について、平成13年7月6日に最高裁判所は、東京高等裁判所の原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却するとの判決を行った。
同判決によれば、原審の適法に確定した事実関係として「ラルフ・ローレンは、アメリカ合衆国を代表するデザイナーの1人であり、そのデザインにかかる紳士服、紳士靴、ネクタイ、婦人服等の商品に引用商標を使用している。引用商標は、我が国において、遅くとも昭和55年ころまでに、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等の商品を表示するものとして、取引者及び需要者の間に広く認識されるに至り、その状態が現在においても継続している。」と認定されているものであり、上記事件と同じ引用商標の、その周知・著名性と継続性を否定する被請求人の主張は、認められない。
(カ)証拠調べ通知書の(6)の項
本件証拠調べ通知は、対象物である本件商標についての厳正な認定判断を経た上でなされるべき厳密な証拠調べと、その結果縛られた客観的公正な事実に基づく心証を述べたものと理解したいが、そうは納得し難いことは、上記各所に述べた意見の通りである。従って、さらに精細な審理を求めるものである、との主張について
しかしながら、本件証拠調べ通知、また本件商標に関する審決の認定は、前記のとおりであり、客観的公正な事実に基づくものである。
よって、被請求人の主張は、いずれも採用できない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)引用商標

(3)ラルフ・ローレン標章

審理終結日 1999-05-18 
結審通知日 1999-06-01 
審決日 1999-06-11 
出願番号 商願平4-2515 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (117)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小松 裕井出 英一郎 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 田口 善久
久我 敬史
中嶋 容伸
滝沢 智夫
登録日 1996-12-25 
登録番号 商標登録第2718785号(T2718785) 
代理人 黒岩 徹夫 
代理人 岡田 稔 
代理人 曾我 道照 
代理人 草野 浩一 

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