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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Z28
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z28
管理番号 1061594 
審判番号 審判1999-19502 
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-06 
確定日 2002-07-11 
事件の表示 平成 9年商標登録願第101273号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第28類「投釣り用天秤」を指定商品とし、平成9年4月1日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりみて、釣り用仕掛けの天秤の一種類である『投釣り用天秤』そのものの形状からなる立体商標を表示するにすぎないから、これを本願指定商品に使用しても、自他商品の識別機能を有しないものと認める。なお、出願人は、上申書において、本願商標は商標法第3条第2項に該当する旨主張するが、提出の各甲号証を以てしては、本願商標が商品『投釣り用天秤』について使用された結果、立体商標として自他商品の識別機能を有するに至っているものということはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法上の立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおり、三枚の翼状片を設けた砲弾型の引き通し式おもりを装着した釣り用天秤と認められるものであるところ、該形状は「投げ釣り用天秤」の一形態を表すものであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に商品「投げ釣り用天秤」の形状を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
請求人は、「本願商標は、数多くの種類のある釣り用天秤の中で、従来、この種商品には見られなかった独創的な形状を表したものであるから、通常採用しうる立体的形状の範囲を超えているものである。」旨主張する。
しかしながら、原審において請求人も甲第1号証を提出しているように、「釣り用天秤」にあっては、仕掛けの投入・巻き上げがスムーズにできること、仕掛けや道糸が絡まないこと及び魚のあたりが手元に明確に伝わること等が要求されるため、「釣り具」を取り扱う業界においては、特徴をもたせた多種類の形状の釣り用天秤を製造・販売しているところであって、本願商標を構成する「投げ釣り用天秤」の特徴は、商品等の機能(投げ易さ、糸絡み防止等)や美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲内のものというべきである。
しかして、本願商標は、前記認定のとおり、ややその形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。
(4)立体的形状からなる商標で商品等の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、また、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」(前掲答申P31参照)としているが、商品等の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときには、識別力を認めて登録することは前示のとおりであり、諸外国と何ら異なるところはない。
(5)請求人は、「本願商標は、永年使用の結果、請求人の商品を表示するものとして著名になっているものであり、自他商品の識別機能を有するものであるから、商標法第3条第2項に該当する。」旨主張し、原審において甲第2号証ないし同第11号証(枝番を含む。)を提出し、さらに、当審において甲第10号証ないし同第14号証(枝番を含む。)を提出した。
そこで、請求人提出の各甲号証について検討するに、原審提出の甲第3号証、同第6号証、同第10号証及び当審提出の甲第11号証ないし同第14号証(枝番を含む。)は、その資料(釣り具価格表、商品カタログ、雑誌等)中に掲載されている本願商標と同一と認められる「投げ釣り用天秤」には、その大部分に「富士ジェット天秤」「ジェット天秤」「ジェットテンビン」の文字が併記されているものである。
しかして、前示のとおり、商品の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、或いは、その美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)には、商品の出所を表示し自他商品を識別する標識として採択されるとはいえないものであり、その識別機能を果たすものとしては文字、図形又は記号等が適しているため、専らこれらが自他商品の識別標識として採択、使用されていることは顕著な事実であること及び前示認定のとおり、本願商標に係る形状が商品の一形態を表示するに過ぎないものであることからすれば、前記甲号証中の商品「投げ釣り用天秤」は、「富士ジェット天秤」「ジェット天秤」「ジェットテンビン」の文字商標により識別されているというべきである。
また、甲第2号証及び同第7号証は、「侵害差止等請求併合事件」(昭和47年(ワ)第7232号及び昭和48年(ワ)第7442号、昭和53年10月30日東京地裁判決)に関するものであるところ、その判決において、「本件第1の物件(本願商標と同一と認められる立体的形状よりなる投げ釣り用天秤)の形態は、富士工業の商品であることを示す表示として、いわゆる周知性を獲得したものと解すべきである。・・・本件第1の物件と同一の態様を本件第3の物件に使用して、これを販売することは、富士工業の商品であるかのように一般需要者をして混同を生ぜしめ、また、将来にわたって右のような混同を生ぜしめるおそれがあるものといわなければならない。・・・不正競争防止法第1条第1項第1号に基づく差止請求は、理由がある。」旨の判断がなされていることが認められる。
しかしながら、商標法第3条第2項における当該出願商標が使用をされた結果自他商品の識別機能を有するに至っているものであるか否かと不正競争防止法第1条第1項第1号における当該商品等表示が需要者の間に広く認識されているものであるか否かの認定、判断は、東京高裁の判決においても「本件商標が不正競争防止法第1条第1項の規定により保護せられるためには、それが被控訴人の商品の表示として、わが国内において広く認識されていることを必要とするとともに、それをもつて足り、必ずしも商標法第3条の商標登録の要件を具備することを要するものでないことは、これら二つの法律が支配する対象を異にすることから、きわめて明白なことであり、本件において、被控訴人の商標が商標法第3条第1、2項の登録要件を具備するかどうかなどということを論ずべき余地は全く存しない。」(昭和42年(ネ)第2373号、昭和45年4月28日判決言渡)との判示がなされているように、それぞれの法律の目的によってその内容が異なるといい得るものであるから、前記「侵害差止等請求併合事件」に係る判決の存在をもって、「本願商標は、その指定商品について自他商品の識別機能を有するに至っているものである。」とする旨の請求人の主張は、直ちには採用し難い。
その他、請求人提出の各甲号証を総合してみても、本願商標それ自体が自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとするには十分とはいえないものであるから、先の認定を覆すに足りない。

4 結 論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本願商標


審理終結日 2000-11-28 
結審通知日 2000-12-08 
審決日 2000-12-19 
出願番号 商願平9-101273 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z28)
T 1 8・ 17- Z (Z28)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 忠雄和田 恵美 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 久保田 正文
小林 由美子
代理人 藤本 英介 
代理人 宮尾 明茂 
代理人 金原 正道 
代理人 鈴木 正勇 
代理人 神田 正義 

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