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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 122
審判 全部無効 称呼類似 無効としない 122
管理番号 1061530 
審判番号 審判1997-20429 
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-12-01 
確定日 2002-06-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第2506397号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2506397号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和62年11月25日に登録出願され、「VALENT」の欧文字を書してなり、第22類「はきもの(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成5年2月26日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
(イ)請求人が本件商標の無効の理由について商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第1786820号商標(以下「引用A商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日に登録出願され、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品として、同60年6月25日に設定登録がされたものである。
(ロ)また、同じく本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして、請求人の使用に係り引用する登録第1415314号商標(以下「引用B商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日に登録出願され、第17類「被服(運動用特殊衣服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同55年4月30日に設定登録がされたものである。同登録第972813号(以下「引用C商標」という。)は、「VALENTINO 」の欧文字を書してなり、昭和45年4月16日に登録出願され、第21類「宝玉、その他本類に属する商品但し、かばん類、袋物は除く」を指定商品として、同47年7月20日に設定登録がされたものである。同登録第1793465号商標(以下「引用D商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日に登録出願され、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同60年7月29日に設定登録がされたものである。同登録第1402916号商標(以下「引用E商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日に登録出願され、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として同54年12月27日に設定登録がされたものである。
そして、上記(イ)及び(ロ)の「引用AないしE商標」に係る商標権は、それぞれ、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第34号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効にされるべきものである。以下にその理由を詳述する。
(1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由について
本件商標について、請求人は自己の所有に係る引用A商標を引用する。
そして、請求人はイタリアの服飾デザイナーとして全世界に著名な「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を制作、販売し、これらの商品に「VALENTINO GARAVANI」或は「VALENTINO」の欧文字からなる商標を使用しているが、上記の「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名は単に「VALENTINO 」(ヴァレンティノ)と略称されており、この略称が本件商標の登録出願の日前より全世界に著名になっていることは甲第8号証(商願昭61-81516号に対する登録異議の申立てについての決定謄本写)をはじめとして、甲第13号証、同第15号証、同第16号証、同第20号証、同第23号証、同第32号証及び同第34号証によっても立証されているといわざるをえない。
そこで、本件商標と引用A商標が類似する商標である理由を述べるに、本件商標は「VALENT」の欧文字を書してなるものであるから、「ヴァレント」の称呼を生ずるものであることは明らかである。
一方、引用A商標は、上記の著名なデザイナーの氏名をあらわす「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなるものであって、被服、皮革製のバッグ類及びはき物、ライター等に使用された結果、全世界に著名なものとなっているところであり、これはその全体を称呼するときは「ヴァレンティノガラヴァーニ」と長い称呼となるものであるから、商標の構成文字中、前半の「VALENTINO 」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資されている場合が多いものである。したがって、引用A商標は「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるをえない。
しかして、本件商標から生ずる称呼「ヴァレント」と引用A商標から生ずる称呼「ヴァレンティノ」は、称呼の識別上最も重要な部分である語頭の方の「ヴァレン」の音の部分を同じくし、僅かに末尾の方に「ト」の音と「ティノ」の音の差異があるにすぎず、しかも、「ト」の音と「ティ」の音は同行音に属する近似した音であるから、前者と後者は彼此相紛らわしいものである。
したがって、本件商標と引用A商標はその称呼上類似する商標であり、また、本件商標の指定商品と引用A商標のそれは同一のものであるから、結局、本件商標は商標法第4条第1頃第11号の規定に違反して登録されたものである。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由について
請求人は引用A商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用しているところであり、これらは、引用BないしE商標である。
しかして、請求人の「VALENTINO 」或いは「「VALENTINO GARAVANI」の文字からなる商標は、これが「被服、ネクタイ、バッグ、ベルト、靴、ライター」等に使用され、本件商標の登録出願の日前から周知、著名であることは特許庁においても明らかであることが甲第9号証(商願昭62-132065号に対する登録異議の申立てについての決定謄本)によって示されているばかりでなく、甲第10号証ないし同第34号証によって立証されているといわざるをえない。
そして、本件商標と引用BないしE商標(「VALENTINO 」或いは「VALENTINOGARAVANI」の文字からなるもの)がその称呼上類似する商標であることは上記(1)に述べたとおりであり、本件商標の指定商品と引用BないしE商標が使用されている商品はいずれも服飾品の範疇に属する密接な関係にある商品である。
したがって、本件商標は、これを被請求人がその指定商品に使用するときは、その商品が恰も請求人の製造、販売等の業務に係る商品であるか、又は請求人と経済的或は組織的に何等かの関係にある者、すなわち姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものといわざるをえない。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
(1)利害関係について
請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであることから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである旨主張している。
ところで、商標法第46条第1項柱書によれば、一般的に商標登録無効審判を請求する際に、当該請求人は、当該登録に対し利害関係を有することが必要とされる。しかしながら、請求人が提出した請求書を精査しても、請求人が本件登録に対して利害関係を有することの主張及び利害関係の存在を立証する如き何ら証拠の提示もない。
したがって、請求人は商標法第46条に定められた利害関係を有するものではなく、無効審判請求に際して有すべき請求人適格を欠如すると判断されることから、本件審判請求は却下されるべきものである。
(2)請求人が主張する無効理由について
商標法第47条によれば、商標登録が第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反してされたときは、その商標登録についての第46条第1項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求することができない。そして、本件の設定の登録は、平成5年2月26日である。したがって、平成10年2月27日以降、請求人の主張する理由により、本件登録を無効とすることはできず、本件請求は、理由なしとして棄却されるべきである。
(3)請求人の主張する理由は、前述の通り、本件については適用できないものであるので、本件登録が商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるか否かについては、検討するまでもない。しかし、本件登録が商標法のいかなる規定にも違反してされたものではないことは明らかであるので、この点に付き、念のため答弁する。
(イ)商標法第4条第1項第11号について
請求人は、本件商標は引用A商標と類似するものである旨主張する。
しかし、本願についての平成4年8月5日付登録異議由立についての決定謄本(乙第1号証)において認定されたとおり、本件商標と引用A商標とは、非類似のものである。すなわち、本件商標よりは、その構成前記のとおりであるので「バレント」の称呼を生ずるものであり、他方、引用A商標は、その構成前記のとおりであるので「バレンチノガラヴァニ」の称呼を生ずる。両者の類否を検討するに当たり、登録第1970394号商標と引用A商標との併存を考慮すれば、引用A商標からは「バレンチノ ガラヴァニ」の称呼のみが生ずると判断するのが相当である。
したがって、両商標は非類似の商標であること明らかであり、本件登録は、商標法第4条第1項第11号に反してされたものではない。
(ロ)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、「請求人の『VALENTINO』或いは『VALENTINO GARAVANI』の文字からなる商標は、これが『被服、ネクタイ、バッグ、ベルト、靴、ライター』等に使用され、本件商標の登録出願の日前から周知、著名であることは特許庁においても明らかである(請求書第4頁第13行目から第16行目)」旨主張する。しかしながら、商標「VALENTINO」と、本件商標「VALENT」は、先の平成4年8月5日付登録異議甲立についての決定謄本(乙第1号証)においても認定されたとおり、称呼の末尾において著しい差異音を有するものであり、彼比相紛れるおそれはないものである。商標「VALENTINO GARAVANI」についても、たとえこれより「バレンチノ」なる称呼が生ずるものと仮定しても、同様に、両者は非類似の商標である。したがって、請求人の主張する「VALENTINO」或いは「VALENTINO GARAVANI」の周知性に付き検討するまでもなく、本件登録は、商標法第4条第1項第15号に反してされたものではない。

4 当審の判断
(1)利害関係について
請求人は、請求人の使用する引用AないしE商標と本件商標が類似し、または出所の混同のおそれがあるときは、本件商標が障害となるものであって、これを排除する必要があり、審判の請求について法律上の利益があるものと認められ、利害関係を有するものであるから、この点についての被請求人の主張は理由がない。
(2)本件審判の無効に係る除斥期間について
本件商標は、前記1のとおりであって、その設定登録日は平成5年2月26日にされたものであることを特許庁備え付けの商標登録原簿により確認し得た。そうすると本件商標権に関しての本件審判の請求は、平成9年12月1日であるから、本件商標に係る設定登録の日から5年を経過していないこと明らかであって、本件審判は無効に係る除斥期間経過後の請求であるとする、請求人の主張は当たらない。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて
本件商標と引用A商標を比較するに、本件商標は、「VALENT」の欧文字を書してなり、これより「ヴァレント」が称呼が生じ特段の意味を有しない造語よりなるものと認められる。他方、引用A商標は「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなる構成であって、「ヴァレンティノガラヴァーニ」と称されるデザイナーの氏名、及びその氏名に由来する被服等の標章を表すものと認められる。してみれば、両商標は、その構成よりして外観が異なり、また観念は比較し得ない。
また、称呼にしても 前者の「ヴァレント」の称呼と、後者の「ヴァレンティノガラヴァーニ」の称呼とは、その称呼の構成音数及び音構成において相違し、明らかに区別し得るものである。
ところで、請求人は、提出の甲各号証により、「VALENTINO GARAVANI」の文字は、イタリアノ服飾デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏を表し、その氏名は単に「VALENTINO 」(ヴァレンティノ)と略称されており、これが被服、皮革製のバッグ類及びはき物、ライター等に使用された結果、本件商標の出願時には、全世界に周知、著名となっていると主張する。しかし、仮に「VALENTINO」の文字が同デザイナーに由来する被服等の著名な標章(ブランド)であるとしても、本件商標とはその類否についてみると以下の如く類似しない別異のものである。
そこで、本件商標の「VALENT」と引用A商標の前半部分の「VALENTINO」とを比較するに、両者は「INO」文字の有無において異なっており、この場合の引用A商標における「VALENT」と「INO」文字間は一体的に表され「VALENT」のみ特段注視すべき事情もなく、本件商標の「VALENT」とは外観上明らかに区別し得るものであり、また観念においては前記のとおり比較し得ない。
次に、称呼についてみるに、本件商標及び引用A商標の前半部分の「VALENTINO」からは、それぞれ「ヴァレント」及び「ヴァレンティノ」の称呼を生ずる。
しかして、両商標から生ずる「ヴァレント」及び「ヴァレンティノ」の称呼を対比すると、両称呼は語頭部からの「ヴァレン」の3音を共通にしている。しかしながら、両称呼は、「ヴァレン」に続く「ト」と「ティノ」の2音に著しい差異があって、また、そのアクセントは「ヴァレント」が「ヴァ」の音にあるのに対し、「ヴァレンティノ」は「レン」の音にあることに加え、「ヴァレンティノ」の音はいずれの部分に語幹があるか聴取し得ない融合した一体の音感であるから、比較的短い両称呼では、この差異が称呼に及ぼす影響は大きく、両称呼を一連に称呼しても語調、語感が異なり十分区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用A商標とは、その外観、称呼、観念のいずれについても区別し得るものであり、類似の商標とはいえない別異の商標と認められる。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用BないしE商標を挙げているところ、仮に、同商標について「VALENTINO GARAVANI」の文字、及び「VALENTINO 」の文字が「ヴァレンティノガラヴァーニ」と称されるデザイナーの氏名及びその略称に由来する被服等の著名な標章(ブランド)であるとしても、これらと本件商標に係る「VALENT」との文字とは、上記(3)のとおり、標章において類似しない別異な商標であること前記のとおりであるから、その余について検討するまでもなく、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者にあって何等、引用各商標を連想、想起することはなく、請求人または請求人と何らかの関係を有する者取り扱いに係る商品の如く出所の混同を生ずるおそれはないものであり、また他に出所の混同のおそれを生ずる特段の事情もないものである。
以上、本件商標は、標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当しないものである。
(5)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものということはできないから、その登録は同法第46条第1項第1号により無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-01-08 
結審通知日 2002-01-16 
審決日 2002-02-04 
出願番号 商願昭62-132067 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (122)
T 1 11・ 262- Y (122)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 茂鈴木 新五 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1993-02-26 
登録番号 商標登録第2506397号(T2506397) 
商標の称呼 バラン、バレント 
代理人 末野 徳郎 
代理人 杉村 暁秀 
代理人 河野 昭 
代理人 杉村 興作 

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